説明

測定装置

【課題】大気中における抗原濃度を測定または推測する際に、大気中に含まれる微小物質を効率よく捕集する。
【解決手段】測定器3の開口部に測定用チップ8を挿入すると、測定器3の制御部31は、測定用チップ8に備えられた吸引ポンプに対向する押圧部を駆動部34により駆動させる。これにより、吸引ポンプの容量が変動し、吸引口から吸着室へ向かう気流が発生する。この発生した気流に伴って、旋回翼が回転するので、吸着室の内部の気体は旋回する。そして、旋回した気体は吸着室の吸着面にあたった後、排出口から排出される。制御部31は、吸引ポンプにこの動作を行わせ、所定時間が経過すると吸引ポンプを停止させる。これにより、吸着室の底に備えられた吸着面には、吸引した大気に含まれる粒子が吸着す
る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー原因物質の濃度に関係した測定を行う測定装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
花粉症をはじめとするアレルギー症の患者数は毎年、増加の一途をたどっている。アレルギー発症を適切に予防するためには、アレルギーの原因物質である抗原が大気中にどの程度含まれているかを測定することが有効である。例えば、大気中に高濃度の抗原が測定された場合に、マスクなどを装着して抗原に接触しないようにすることで、アレルギー患者等はアレルギー発症を予防する。ところで、一般に花粉予報は、特定の測定地点のデータに基づいて、きわめて広い範囲に対する警告を行うことが多い。しかし、大気中の気流の状況など、局所的な要因が影響するので、患者周辺の実際の花粉量は、花粉予報と乖離
する場合がある。アレルギー発症を予防するには、患者周辺における抗原の濃度を正確に測定しなければならないため、周囲の抗原濃度を測定する測定装置が必要である。このような測定装置の技術として、特許文献1には、外部環境から取り込まれた粒子からアレルゲンタンパク質をキャリア液中に抽出して、アレルゲンタンパク質を検出する検出用チップを用いた測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−69997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術においてスギ花粉は、抽出部の上部開口への自然落下か、単純な吸引などによって捕集されている(段落0061参照)。自然落下を待つのであれば、比較的長期間の測定期間を待たなければ予防対策に十分な精度で測定をすることができない。また、単純な吸引により捕集する場合には、花粉が捕集部に留まらずに気流に同伴して外部へ通過する量が多く、十分な精度で測定をすることができない。
そこで、本発明は、大気中における抗原濃度を測定または推測する際に、大気中に含まれる微小物質を効率よく捕集することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明に係る測定装置は、大気を吸引する吸引手段と、前記吸引手段により吸引された大気が流れる流路に設けられた吸着部材と、前記流路において前記吸着部材よりも上流に設けられ、前記吸引手段により吸引された大気を旋回させる旋回手段と、溶媒を供給し、前記吸着部材により吸着された被吸着物を前記溶媒中に分散させて予め定められた位置へ搬送する搬送手段と、前記搬送手段により前記位置へと搬送された前記被吸着物を測定する測定手段とを具備することを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る測定装置は、大気を吸引するとともに、旋回させる旋回手段と、前記旋回手段により旋回させられた大気が流れる流路において、前記旋回手段よりも下流に設けられた吸着部材と、溶媒を供給し、前記吸着部材により吸着された被吸着物を前記溶媒中に分散させて予め定められた位置へ搬送する搬送手段と、前記搬送手段により前記位置へと搬送された前記被吸着物を測定する測定手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
好ましくは、前記吸引手段は、第1の駆動力を受けることにより前記大気に流れを生じさせる気流発生部と、前記第1の駆動力を前記気流発生部に与える第1駆動力付与部とを有し、前記搬送手段は、第2の駆動力を受けることにより前記被吸着物を分散させた前記
溶媒に流れを生じさせる溶媒流発生部と、前記第2の駆動力を前記溶媒流発生部に与える第2駆動力付与部とを有し、前記吸着部材、前記旋回手段、前記気流発生部、および前記溶媒流発生部は、マイクロチップに備えられ、前記測定手段、前記第1駆動力付与部、および前記第2駆動力付与部は、前記マイクロチップを装着する装着部を有する測定器に備えられ、前記マイクロチップを前記測定器の前記装着部に装着した状態で、前記第1駆動力付与部が前記第1の駆動力を与えることにより、前記気流発生部は前記大気に流れを生じさせ、前記第2駆動力付与部が前記第2の駆動力を与えることにより、前記溶媒流発生
部は前記溶媒に流れを生じさせ、前記測定手段は前記位置へと搬送された前記被吸着物を
測定するとよい。
【0008】
また、好ましくは、前記旋回手段は、第1の駆動力を受けることにより前記大気に旋回流を生じさせる旋回流発生部と、前記第1の駆動力を前記旋回流発生部に与える第1駆動力付与部とを有し、前記搬送手段は、第2の駆動力を受けることにより前記被吸着物を分散させた前記溶媒に流れを生じさせる溶媒流発生部と、前記第2の駆動力を前記溶媒流発生部に与える第2駆動力付与部とを有し、前記吸着部材、前記旋回流発生部、および前記溶媒流発生部は、マイクロチップに備えられ、前記測定手段、前記第1駆動力付与部、および前記第2駆動力付与部は、前記マイクロチップを装着する装着部を有する測定器に備
えられ、前記マイクロチップを前記測定器の前記装着部に装着した状態で、前記第1駆動力付与部が前記第1の駆動力を与えることにより、前記旋回流発生部は前記大気に旋回流を生じさせ、前記第2駆動力付与部が前記第2の駆動力を与えることにより、前記溶媒流発生部は前記溶媒に流れを生じさせ、前記測定手段は前記位置へと搬送された前記被吸着物を測定するとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大気中における抗原濃度を測定または推測する際に、大気中に含まれる微小物質を効率よく捕集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る抗原測定システムを表す外観図である。
【図2】抗原測定システムの全体構成を表すブロック図である。
【図3】測定用チップを表す外観図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図3のV−V線矢視断面図である。
【図6】図4のVI−VI線矢視断面図である。
【図7】図4のVII−VII線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.構成
1−1.全体構成
図1は、本発明に係る抗原測定システム9を表す外観図である。抗原測定システム9は、測定器3と測定用チップ8を含む。ユーザは、測定用チップ8を測定器3の開口部30に挿入して抗原の測定を行う。この開口部30は、測定用チップ8を挿入すると、この測定用チップ8に設けられた吸引口20(後述)が外部空間に接し、かつ、検出部16(後述)が測定器3の筐体で覆った状態で測定用チップ8を固定するように構成されている。測定器3は、測定結果を表示する表示部32と、ユーザによる測定器3への操作を受け付ける操作部33とを備えている。表示部32は、7セグメントディスプレイやドットマトリックスディスプレイなどにより測定値を表示する表示手段である。操作部33は各種の指示を入力するための操作ボタンを備えており、ユーザによる操作を受け付けてその操作内容に応じた信号を供給する。なお、本実施形態において測定器3の筐体は、110mm×50mm×20mmの直方体であり、測定用チップ8は、20mm×5mm×0.5mmの板状体であるが、これらのサイズは様々に設計し得る。
【0012】
図2は、抗原測定システム9の全体構成を表すブロック図である。同図は、抗原測定システム9による測定が、測定用チップ8を測定器3に挿入した状態で行われることを示している。測定器3には、上述した表示部32と操作部33に加えて、制御部31、駆動部34、測定部35および電界発生部36が備えられている。制御部31は、制御回路であるCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの記憶装置とを備えている。制御部31のCPUは、ROMに記憶されているブートローダやEEPROMに記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより測定器3の各部を制御する。
【0013】
駆動部34は制御部31によって制御され、測定器3の開口部30に挿入された測定用チップ8を機械的に押圧する装置である。この押圧力を発生させる駆動源は種々のものを用いることができる。例えば、押圧する部材はゴムなどの弾性体でできた袋状をしており、この部材の内部空洞に注入する空気の量により、この部材の形状を変化させて押圧力を発生させる。また、ソレノイドなどの電磁的機構により押圧力を発生させてもよい。
【0014】
測定部35は、制御部31により制御され、測定用チップ8により捕集された粒子の量を測定する。この測定部35による測定には種々のものを用いることができるが、ここでは、測定用チップ8に照射した光の吸光度を測定する。具体的には、測定部35は、LED(Light Emitting Diode)351と光センサ352を備えており、LED351が測定用チップ8の検出部16に向けて光を照射し、検出部16を透過した光を光センサ352で検出することにより、照射した光の吸光度を測定する。電界発生部36は、制御部31により制御され、図示しない端子を介して測定用チップ8の陽極141と陰極142との間に電位差を発生させることにより、測定用チップ8の直交型電気泳動分離部14を作動させる。
【0015】
1−2.測定用チップの構成
図3は、測定用チップ8を表す外観図である。測定用チップ8は、透明な樹脂等を成型した2枚の板を重ね合わせた構造である。図3(a)に示すように、下方側にはチップ基板層1があり、このチップ基板層1の上方にチップ吸引層2が重ねて張り合わされている。チップ吸引層2の上方側の面には、吸引口20が設けられている。そして、チップ吸引層2の側面側には、排出口23が設けられている。測定用チップ8は、吸引口20から大気を吸引して、排出口23から排出する。大気と同伴して搬送される粒子は、測定用チップ8の内部に捕集される。図3(b)には、この測定用チップ8を排出口23のある側面
側から見た様子が示されており、同図に示したIV−IV線とV−V線は、後述する図4および図5の断面図の観察方向を表す。
【0016】
1−3.チップ基板層の構成
図4は、図3のIV−IV線矢視断面図である。すなわち、図4にはチップ基板層1の断面が示されている。同図に示す溶媒タンク11は、2mm×2mm×0.25mmの空洞であり、1μLの容量を有している。この溶媒タンク11には、粒子を搬送する溶媒として蒸留水が封入されている。溶媒供給路181は、ゴムなどの弾性体で構成された管であり、測定器3の駆動部34が駆動させる押圧部(図示せず)により押圧されると閉塞するようになっている。そして、この押圧部が押圧をやめると、溶媒供給路181は、ゴム自体の弾性力により復元し、開通するようになっている。すなわち、溶媒供給路181は、測定器3の駆動部34による押圧されたときに閉塞する開閉弁として機能する。
【0017】
溶媒供給ポンプ12は、円筒状の空間を有し、互いに対向する天井面と底面が、いずれもゴムなどの弾性体で構成されている。天井面の周辺と底面の周辺とは固定されている。そして、溶媒供給路181が開になっているときにこの天井面または底面を、測定器3の駆動部34が駆動させる押圧部(図示せず)が押圧することにより、天井面の中央部と底面の中央部とが、近づいたり遠ざかったりし、その結果、溶媒供給ポンプ12の内部空間の容量が変化する。これにより溶媒供給ポンプ12の内部空間の圧力が溶媒タンク11よりも負圧になり、溶媒供給ポンプ12は、溶媒タンク11に封入された溶媒を吸着室13へ搬送する。すなわち、溶媒供給ポンプ12は、測定器3の駆動部34により押圧されて、ダイヤフラムポンプとして機能する。なお、このときの溶媒の供給速度は様々な値に設定することができるが、本実施形態においては約0.005μL/sである。
【0018】
吸着室13は、上述したチップ吸引層2に設けられた吸引口20の直下に設けられた円
筒状の空間である。吸着室13の大きさは直径1mmで深さ50μmであるから、吸着室13の容量は、約0.039μLである。この吸着室13は、大気に含まれる粒子を吸着する吸着面を底に備えている。つまり、この吸着面は、吸引手段により吸引された大気が流れる流路に設けられた吸着部材の一例である。この吸着面に吸着された粒子は、溶媒タンク11から溶媒供給ポンプ12によって吸着室13に供給された溶媒(ここでは蒸留水)によって溶解ないし分散される。溶液排出路182は、溶媒供給路181と同様、開閉弁として機能し、これが開となったときに、吸着室13に満たされた溶液は直交型電気泳
動分離部14へ供給される。
【0019】
直交型電気泳動分離部14は、溶液が通過する方向に対して直交する方向に電界をかけて、粒子を濃縮する機能を有した流路である。溶液排出路182から排出された溶液は、電気泳動領域143に供給され、図4における右方向へ流れる。この流れに直交する方向に電界を生じさせるように、陽極141と陰極142は配置されている。この陽極141と陰極142は図示しない端子をそれぞれ有しており、測定用チップ8が測定器3の開口部30に挿入されたときに、この各端子は、測定器3の電界発生部36に接続する。これにより、測定器3の制御部31の制御の下、電界発生部36に発生した電位差にしたがって、陽極141と陰極142の間に電界が発生し、電気泳動領域143を通過する溶液中の粒子は、この電界の影響を受けて電気泳動する。本実施形態において、粒子は負に帯電しているので、溶液中の粒子は陽極141に近づくように移動(電気泳動)する。すなわち、溶液中の粒子は、陽極141側に濃縮される。
【0020】
送液ポンプ150は、溶媒供給ポンプ12と同様、ダイヤフラムポンプとして機能し、陽極側分離流路144を通過した溶媒を、送液路183を介して検出部16に搬送する。検出部16は、測定器3の測定部35によって粒子の濃度が測定される空間である。この検出部16は、光を透過するガラスや樹脂などによって囲まれており、測定器3の測定部35によって照射光が照射され、検出部16を透過した透過光の強度が測定される。この透過光の強度と照射光の強度に基づいて吸光度が算出され、算出された吸光度に基づいて検出部16に搬送された溶液中の粒子濃度が測定される。
【0021】
第1廃液ポンプ151も、溶媒供給ポンプ12と同様、ダイヤフラムポンプとして機能する。第1廃液路184が開けられ、第1廃液ポンプ151が駆動することにより、検出部16に満たされた溶液は廃液タンク17に送液される。また、第2廃液ポンプ152も、溶媒供給ポンプ12と同様、ダイヤフラムポンプとして機能する。第2廃液路185が開けられ、第2廃液ポンプ152が駆動することにより、陰極側分離流路145に満たされた溶液は廃液タンク17に送液される。
【0022】
1−4.チップ吸引層の構成
図5は、図3のV−V線矢視断面図である。すなわち、図5にはチップ吸引層2の断面図が示されている。上述したように、チップ基板層1のうち、チップ吸引層2の吸引口20の直下には旋回翼21が設けられており、この旋回翼21の下方のチップ基板層1には、吸着室13が設けられている。吸着室13からは、排出口23へ繋がる流路が設けられている。
【0023】
吸引ポンプ22は、吸着室13から排出口23までの流路の間に設けられている。この吸引ポンプ22は、溶媒供給ポンプ12と同様、ダイヤフラムポンプとして機能する。吸引ポンプ22が吸着室13の内部の気体を排出口23に向けて排出することにより、吸着室13の内部は吸引口20近傍の周辺大気よりも負圧になり、吸引口20から吸着室13へ流れる気流が発生する。なお、この気流の流速は、様々な値に設計することができるが、本実施形態においては、1〜10L/分である。また、上記の吸引ポンプ22は、第1の駆動力を受けることにより大気に流れを生じさせる気流発生部の一例であり、上記の駆
動部34と、吸引ポンプ22の天井面または底面を押圧する押圧部は、第1の駆動力を気流発生部に与える第1駆動力付与部の一例である。そして、第1駆動力付与部と気流発生部は、大気を吸引する吸引手段に含まれる。
【0024】
上述したとおり、チップ吸引層2には、吸引口20から吸着室13までの間に旋回翼21が設けられている。旋回翼21は、チップ吸引層2またはチップ基板層1の少なくともいずれか一方によって固定された軸と、この軸を中心として回転可能に取り付けられたファンを備えている。このファンは複数の翼を有しており、各翼は軸方向に対して垂直でも平行でもなく、所定の角度で傾斜している。これにより、吸引口20から吸着室13へ向かう気流が発生すると、旋回翼21は、これに伴って回転するため、発生した気流を旋回させる。吸引ポンプ22により発生した気流の流路において、旋回翼21は吸着室13の
吸着面よりも上流に設けられているので、吸着室13の吸着面には、旋回翼21で旋回させられた気流があたる。すなわち、旋回翼21は、気流の流路において吸着部材よりも上流に設けられ、吸引手段により吸引された大気を旋回させる旋回手段の一例である。
【0025】
2.動作
本発明に係る抗原測定システム9の動作を説明する。抗原測定システム9の動作は主に「吸引工程」「溶解工程」「搬送工程」「測定工程」「排出工程」の5つの工程で構成されている。以下に、各工程について図を用いて説明する。なお、図6は、図4のVI−VI線矢視断面図である。また、図7は、図4のVII−VII線矢視断面図である。
【0026】
2−1.吸引工程の動作
まず、測定器3の開口部30に測定用チップ8を挿入すると、測定器3の制御部31は、溶媒供給路181と溶液排出路182とが閉塞するように、駆動部34を駆動させる。そして、溶媒供給路181と溶液排出路182が閉塞すると、制御部31は、駆動部34により吸引ポンプ22に対向する押圧部(図示せず)を駆動する。これにより、吸引ポンプ22の容量が変動し、吸引口20から吸着室13へ向かう気流が発生する。この発生した気流に伴って、旋回翼21が回転するので、吸着室13の内部の気体は旋回する。そして、旋回した気体は吸着室13の吸着面にあたった後、排出口23から排出される。制御
部31は、吸引ポンプ22にこの動作を行わせ、所定時間が経過すると吸引ポンプ22を停止させる。これにより、吸着室13の底に備えられた吸着面には、吸引した大気に含まれる粒子が吸着する。以上が吸引工程の動作である。
【0027】
2−2.溶解工程の動作
次に、制御部31は、溶媒供給路181が開通し、かつ、溶液排出路182が閉塞状態に保たれるように、駆動部34を駆動させる。溶媒供給路181が開通すると、制御部31は、駆動部34を駆動させて溶媒供給ポンプ12に対向する位置に配置された押圧部341(図6に図示)を動かすことにより溶媒供給ポンプ12を作動させる。溶媒供給ポンプ12により、溶媒タンク11に封入されている溶媒が溶媒供給路181を通って吸着室13に流れ込む。そして、流れ込んだ溶媒は、吸着室13の吸着面に吸着した粒子を分散して、粒子の濃度が均一な溶液になる。以上が溶解工程の動作である。
【0028】
2−3.搬送工程の動作
次に、制御部31は、溶媒供給路181、第1廃液路184および第2廃液路185を閉塞し、かつ、溶液排出路182と送液路183とが開通するように、駆動部34を駆動させる。続いて、制御部31は、駆動部34を駆動させて送液ポンプ150に対向する位置に配置された押圧部343(図7に図示)を動かすことにより、送液ポンプ150を作動させる。これにより送液ポンプ150は、吸着室13の内部に満たされている溶液を電気泳動領域143へと搬送する。すなわち、上記の溶媒供給ポンプ12および送液ポンプ150は、第2の駆動力を受けることにより吸着室13に吸着された粒子を分散させた溶媒に流れを生じさせる溶媒流発生部の一例である。また、上記の押圧部341および押圧部343は、第2の駆動力を溶媒流発生部に与える第2駆動力付与部の一例である。そして、第2駆動力付与部と溶媒流発生部は、溶媒を供給し、吸着部材により吸着された被吸着物を溶媒中に分散させて予め定められた位置へ搬送する搬送手段に含まれる。
【0029】
また、制御部31は、電界発生部36を制御し、陽極141と陰極142に電位差を付与する。これにより、電気泳動領域143には電界が発生し、溶液中の粒子は、陽極141側に濃縮される。このとき、制御部31は、送液ポンプ150の作動速度を調整することにより、電気泳動による溶液中の粒子の移動が十分に行われるようにしているので、粒子は全て陽極141側に濃縮される。そして、制御部31は、所定時間に亘り、送液ポンプ150を作動させ続けた後、これを停止する。これにより、検出部16には、粒子を含んだ溶液が満たされる。以上が搬送工程の動作である。
【0030】
2−4.測定工程の動作
次に、制御部31は、溶液排出路182と送液路183が閉塞するように、駆動部34を駆動させる。続いて、制御部31は、測定部35に備えられたLED351を制御して、測定用チップ8の検出部16に向けて光を照射させる。そして、制御部31は、光センサ352を制御して、検出部16を透過した光を検出する。光センサ352は検出した透過光に応じた信号を制御部31に出力し、制御部31は、LED351の光量に応じて予め定められた値と光センサ352が出力した透過光に応じた信号が示す値とに基づいて、照射した光の吸光度を測定する。制御部31は、測定した吸光度と、予め定められた吸収係数に基づき、ランベルト・ベールの法則に従って粒子濃度を算出する。そして算出した粒子濃度を表示部32に表示させる。なお、この粒子濃度の算出には、吸着室13の吸着面で吸着された粒子の割合や、電気泳動により濃縮された割合など、予め定められた値を用いてもよい。以上が測定工程の動作である。
【0031】
2−5.排出工程の動作
次に制御部31は、第1廃液路184と第2廃液路185が開通するように、駆動部34を駆動させる。続いて、制御部31は、駆動部34を駆動させて第1廃液ポンプ151に対向する位置に配置された押圧部344(図7に図示)を動かすことにより、第1廃液ポンプ151を作動させる。これにより第1廃液ポンプ151は、検出部16の内部に満たされている溶液を廃液タンク17へと搬送する。また、制御部31は、駆動部34を駆動させて第2廃液ポンプ152に対向する位置に配置された押圧部342(図6に図示)を動かすことにより、第2廃液ポンプ152を作動させる。これにより第2廃液ポンプ1
52は、電気泳動領域143から陰極側分離流路145にかけて残っている溶液を廃液タンク17へと搬送する。そして、制御部31は、所定時間に亘り、第1廃液ポンプ151および第2廃液ポンプ152を作動させ続けた後、これらを停止する。これにより、検出部16と電気泳動領域143および陰極側分離流路145に残っていた溶液が廃液タンク17に移される。以上が排出工程の動作である。
【0032】
以上により、大気が旋回した状態で測定用チップ8の吸着室13に吸引されるため、このような旋回翼21を設けない場合に比べて、大気中の粒子が吸着室13の吸着面に接触する頻度が増す。その結果、粒子が吸着面に吸着されずに通過する割合が低減され、従来の測定用チップに比較して効率よく捕集される。これにより、抗原の測定精度が向上する。
【0033】
3.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
3−1.変形例1
上述の実施形態においては、測定器3の制御部31は、駆動部34を駆動させて、吸引ポンプ22を作動させることにより、吸引口20から吸着室13へ向かう気流を発生させており、吸引口20から吸着室13までの間に設けられた旋回翼21は、この吸引ポンプ22により発生した気流に伴って回転して、この気流を旋回させた。しかし、旋回翼21が自ら回転することにより、上記の気流を発生させてもよい。
【0034】
この場合、測定用チップ8に吸引ポンプ22は必要ない。また、旋回翼21は、自ら回転する機構を有していればよい。この機構としては、例えば、光を受けると回転する光駆動アクチュエータを用いてもよい。具体的には、以下の通りである。すなわち、旋回翼21の所定の位置に光をあてると、その光が屈折・反射する際に生じる光の運動量変化の反作用によって、旋回翼21が捕そくされる。そして、旋回翼21を捕そくした光を動かすことで、旋回翼21を動かす、といった具合である。測定器3には、旋回翼21の上述した位置に向けてレーザ光を照射する照射部が設けられている。照射部が照射したレーザ光により旋回翼21を捕そくし、制御部31の制御の下、照射部がレーザ光を回転させることで、旋回翼21が回転する。旋回翼21が回転すると、この旋回翼21のファンの周辺空気がファンに伴って移動する。このファンは旋回翼21の軸方向に対して傾いているため、移動する周辺空気は旋回しながら、吸引口20から吸着室13へ流れて排出口23から排出される。
【0035】
これにより、旋回翼21はファンに設けられた複数の翼の全てで、周辺空気を吸引するので、吸引ポンプ22を用いた場合に比較して、吸引力の場所によるばらつきを減らすことができる。なお、この変形例においては、旋回翼21を回転させるために、光駆動アクチュエータを用いたが、他の動力源を用いてもよい。例えば、電動機や超音波モータを用いて旋回翼21を回転させてもよい。
【0036】
3−2.変形例2
上述の実施形態においては、測定用チップ8の検出部16に搬送した粒子そのものの濃度を吸光度に基づいて測定したが、粒子に含まれる抗原の濃度を測定してもよい。この場合、抗原に反応する抗体を検出部16に注入して、粒子に含まれる抗原との間で抗原抗体反応を起こすことにより、抗原の濃度を測定してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…チップ基板層、11…溶媒タンク、12…溶媒供給ポンプ、13…吸着室、14…直交型電気泳動分離部、141…陽極、142…陰極、143…電気泳動領域、144…陽極側分離流路、145…陰極側分離流路、150…送液ポンプ、151…第1廃液ポンプ、152…第2廃液ポンプ、16…検出部、17…廃液タンク、181…溶媒供給路、182…溶液排出路、183…送液路、184…第1廃液路、185…第2廃液路、2…チップ吸引層、20…吸引口、21…旋回翼、22…吸引ポンプ、23…排出口、3…測定器、30…開口部、31…制御部、32…表示部、33…操作部、34…駆動部、35…測定部、352…光センサ、36…電界発生部、8…測定用チップ、9…抗原測定システ
ム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気を吸引する吸引手段と、
前記吸引手段により吸引された大気が流れる流路に設けられた吸着部材と、
前記流路において前記吸着部材よりも上流に設けられ、前記吸引手段により吸引された
大気を旋回させる旋回手段と、
溶媒を供給し、前記吸着部材により吸着された被吸着物を前記溶媒中に分散させて予め
定められた位置へ搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により前記位置へと搬送された前記被吸着物を測定する測定手段と
を具備することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
大気を吸引するとともに、旋回させる旋回手段と、
前記旋回手段により旋回させられた大気が流れる流路において、前記旋回手段よりも下流に設けられた吸着部材と、
溶媒を供給し、前記吸着部材により吸着された被吸着物を前記溶媒中に分散させて予め定められた位置へ搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により前記位置へと搬送された前記被吸着物を測定する測定手段と
を具備することを特徴とする測定装置。
【請求項3】
前記吸引手段は、第1の駆動力を受けることにより前記大気に流れを生じさせる気流発生部と、前記第1の駆動力を前記気流発生部に与える第1駆動力付与部とを有し、
前記搬送手段は、第2の駆動力を受けることにより前記被吸着物を分散させた前記溶媒に流れを生じさせる溶媒流発生部と、前記第2の駆動力を前記溶媒流発生部に与える第2駆動力付与部とを有し、
前記吸着部材、前記旋回手段、前記気流発生部、および前記溶媒流発生部は、マイクロチップに備えられ、
前記測定手段、前記第1駆動力付与部、および前記第2駆動力付与部は、前記マイクロチップを装着する装着部を有する測定器に備えられ、
前記マイクロチップを前記測定器の前記装着部に装着した状態で、前記第1駆動力付与部が前記第1の駆動力を与えることにより、前記気流発生部は前記大気に流れを生じさせ、前記第2駆動力付与部が前記第2の駆動力を与えることにより、前記溶媒流発生部は前記溶媒に流れを生じさせ、前記測定手段は前記位置へと搬送された前記被吸着物を測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記旋回手段は、第1の駆動力を受けることにより前記大気に旋回流を生じさせる旋回流発生部と、前記第1の駆動力を前記旋回流発生部に与える第1駆動力付与部とを有し、
前記搬送手段は、第2の駆動力を受けることにより前記被吸着物を分散させた前記溶媒に流れを生じさせる溶媒流発生部と、前記第2の駆動力を前記溶媒流発生部に与える第2駆動力付与部とを有し、
前記吸着部材、前記旋回流発生部、および前記溶媒流発生部は、マイクロチップに備えられ、
前記測定手段、前記第1駆動力付与部、および前記第2駆動力付与部は、前記マイクロチップを装着する装着部を有する測定器に備えられ、
前記マイクロチップを前記測定器の前記装着部に装着した状態で、前記第1駆動力付与部が前記第1の駆動力を与えることにより、前記旋回流発生部は前記大気に旋回流を生じさせ、前記第2駆動力付与部が前記第2の駆動力を与えることにより、前記溶媒流発生部は前記溶媒に流れを生じさせ、前記測定手段は前記位置へと搬送された前記被吸着物を測定する
ことを特徴とする請求項2に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−197136(P2010−197136A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40520(P2009−40520)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(399008210)松栄電子工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】