説明

湯水混合水栓

【課題】専門的な知識を有しない水栓の使用者であっても、温調ハンドルの操作にて設定された温度と実際の吐水温度とのズレを容易に解消することのできる湯水混合水栓を提供する
【解決手段】混合弁体32に対して感温ばね54の付勢力とバイアスばね52の付勢力とを逆向きに作用させ、温調ハンドル12により温調軸42を回転させることで進退部材48を軸方向に進退移動させて、バイアスばね52を介し混合弁体32を移動させ、混合水の温度を調節する湯水混合水栓において、進退部材48を、温調軸42にて直接結合された主部材88と、バイアスばね52を押圧する部材であって主部材88に対し軸方向位置が調節可能であり、軸方向位置の調節により混合弁体32の位置の補正を行う補正部材90とを含んで伸縮可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は湯水混合水栓に関し、詳しくは温調ハンドルによる設定温度と、実際の吐水温度とのズレを解消するための技術手段に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水と湯とを混合し且つその混合比率を変化させて吐水の温度調節を行う湯水混合水栓として、混合水温度を自動的に設定した温度に調節し吐水する自動温度調節機能付き(サーモスタット式)の湯水混合水栓が広く用いられている。
【0003】
この自動温度調節機能付きの湯水混合水栓では、混合弁体に対して感温ばねの付勢力とバイアスばねの付勢力とを軸方向の逆向きに作用させ、温調ハンドルにより温調軸を回転させることで、温調軸と前記バイアスばねとの間に介在した進退部材を軸方向に進退移動させて、バイアスばねを介して混合弁体を移動させ、混合水の温度を調節(設定)する。
【0004】
ところで、このような湯水混合水栓では、温調ハンドルが現在どのような操作位置にあるか、具体的には温調ハンドルの操作による現在の吐水の設定温度を表すために、通常は温調ハンドル側に温度表示部が、また水栓本体部の側に温度表示部の特定の部位を指し示す指示部が設けられる。
この場合、指示部が指し示した部位の温度が現在の設定温度を表す。
【0005】
図5はそれらの具体例を示している。
図5において200は水栓本体部,202は回転式の温調ハンドル、204は温調ハンドル202に設けられた温度表示部,206は水栓本体部200の側に設けられた指示部である。
ここでは指示部206が指し示している表示40・の温度が現在の設定温度(ここでは適温の40℃)であることを表している。
【0006】
図5(A)において、214は内周面と外周面とにセレーション部を有するリング状のセレーション部材で、その内周面のセレーション部に対して温調軸216がセレーション結合され、また外周面のセレーション部に対して温調ハンドル202がセレーション結合され、以ってかかるセレーション部材214を介して温調ハンドル202と温調軸216とが一体回転するようになっている。
ここで温調ハンドル202は、水栓本体部200に対して軸方向に抜止状態に組みつけられている。
【0007】
図5に示すものにおいては、温調ハンドル202を回転操作すると温調軸216が回転し、これにより水栓本体部200の内部の混合弁体が位置移動して水と湯との混合比率を変化させる。即ち吐水温度を変化させる。
【0008】
ところで湯水混合水栓を工場で生産し出荷するときには、温調ハンドル202側の温度表示部204と水栓本体部200側の指示部206とにより表される設定温度が実際の吐水温度と合致するように、温調ハンドル202の回転方向の組付位置が調節されているが、実際に湯水混合水栓を様々な設置現場で設置施工したとき、設置現場の給水圧その他の条件の相異によって、温度表示部204と指示部206とで表される設定温度よりも実際の吐水温度が高かったり或いは低かったりする等、温調ハンドル202による設定温度と実際の吐水温度との間にズレが生じるといったことが起り得る。
【0009】
この場合、水栓の使用者が温度表示部204と指示部206とに基づいて温調ハンドル202を回転操作し、吐水の温度設定を行っても、求める温度で吐水させることができず、水栓の使い勝手が悪化する。
【0010】
このような設定温度と実際の吐水温度とのズレを解消するため、従来にあっては、温調ハンドル202を一旦水栓本体部200から取外して、即ち温調ハンドル202の取付構造を一旦ばらした上で、温調ハンドル202の回転方向の位置を調整して再組付けするといったことを設置現場毎に行うが、この作業は面倒な作業となる。
特に専門的な知識を有しない水栓の使用者が、こうした調整を行うといったことは実際上困難である。
【0011】
尚本発明に関連する先行技術として、下記特許文献1にはCリング状の弾性を有する安全リング(ロックリング)を取り外すことで、温調ハンドルを軸方向に押し込んでこれを空回転可能とし、その状態で温調ハンドルの回転方向の位置を調節した上で、温調ハンドルを再び元の位置まで軸方向に戻し、その後に安全リングを再装着するようになした点が開示されている。
この特許文献1に開示のものは、温調ハンドルの操作により設定された温度と実際の吐水温度とを一致させることを目的としている点で本願発明と共通しているが、この特許文献1に開示のものは、温調ハンドル自体の位置を変更し調節するもので、本発明とは解決手段が異なっている。
【0012】
一方特許文献2には「バルブ」についての発明が示され、そこにおいてトイレの洗浄タンク内の水を便器に向けて流し続ける凍結防止用の流動弁のスピンドルにインタースピンドルを付加して、スピンドルとインタースピンドルとをセレーション結合し、それら全体を伸縮可能となした点が開示されている。
しかしながらこの特許文献2に開示のものは、スピンドルの移動によってハンドルが一体に位置移動してしまうことを防止することを目的としたものであって、本発明とは対象においてまた目的において異なっており、本発明とは別異のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−138734号公報
【特許文献2】特開平10−213249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は以上のような事情を背景とし、専門的な知識を有しない水栓の使用者であっても、温調ハンドルの操作にて設定された温度と実際の吐水の温度とのズレを容易に解消することのできる湯水混合水栓を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
而して請求項1のものは、混合弁体に対して感温ばねの付勢力とバイアスばねの付勢力とを軸方向の逆向きに作用させ、温調ハンドルにより温調軸を回転させることで、該温調軸と前記バイアスばねとの間に介在した進退部材を軸方向に進退移動させて、該バイアスばねを介して前記混合弁体を移動させ、混合水の温度を調節する湯水混合水栓において、前記進退部材を、前記温調軸に進退移動可能に結合された主部材と、前記バイアスばねを押圧する部材であって該主部材に対し軸方向の位置が調節可能であり、該軸方向の位置の調節により前記混合弁体の位置の補正を行う補正部材とを含んで伸縮可能に構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項2のものは、請求項1において、前記補正部材には軸方向の位置調節用の操作部が設けてあり、該操作部が前記温調軸を貫通して該温調軸の外部まで突出していることを特徴とする。
【0017】
請求項3のものは、請求項2において、前記温調ハンドルには前記位置調節用の操作部に対し軸方向に対向する面に開口部が設けてあって、該開口部が脱着可能なキャップにて閉鎖されており、前記位置調節用の操作部が該開口部を通じ操作可能な位置まで前記温調ハンドル内部に突出していることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0018】
以上のように本発明は、温調ハンドルにより温調軸を回転させることで進退移動する進退部材を、温調軸に進退移動可能に結合された主部材と、バイアスばねを押圧する部材であって主部材に対し軸方向の位置が調節可能であり、軸方向の位置の調節により混合弁体の位置の補正を行う補正部材とを含んで伸縮可能に構成したものである。
【0019】
本発明によれば、温調ハンドルの操作による設定温度と実際の吐水温度との間にズレがある場合、進退部材を伸縮させることによって、具体的には主部材に対する補正部材の軸方向の位置を調節し、混合弁体の位置の補正を行うことで、実際の吐水の温度を温調ハンドルの操作による設定温度に正しく合せることができ、設定温度と実際の吐水温度とのズレを解消することができる。
【0020】
かかる本発明では、温調ハンドルの回転位置を調整する必要が無く、単に補正部材の位置の調整操作を行うだけで良いので、専門的な知識を有しない水栓の使用者であっても、容易に設定温度と実際の吐水温度とを合せることができる。
ここで上記の補正部材は主部材に対して螺合しておき、回転により主部材に対する軸方向の位置を調節可能となしておくことができる。
このようにすれば、単に補正部材を回転操作するだけで容易にその軸方向の位置を調節することができる。即ち混合弁体の位置を補正して、実際の吐水温度を設定温度に合せることができる。
【0021】
本発明では、補正部材に位置調節用の操作部を設けておき、その操作部を温調軸を貫通してその外部まで突出させておくことができる(請求項2)。
このようにすれば、温調軸の外部において補正部材を操作することができ、そしてその操作によって、補正部材の主部材に対する軸方向の位置を容易に調節することができる。即ち混合弁体の位置の補正により実際の吐水温度を設定温度に合せる作業を行うことができる。
【0022】
この場合において温調ハンドルには、位置調節用の上記の操作部に対し軸方向に対向する面に開口部を設けて、その開口部を脱着可能なキャップにて閉鎖する一方、上記の位置調節用の操作部を、その開口部を通じて操作可能な位置まで温調ハンドル内に突出させておくことができる(請求項3)。
【0023】
このようにすれば、温調ハンドルを装着したまま単にキャップを開くことで、補正部材に対する位置調節の操作を行うことができ、水栓の使用者がより一層簡単に実際の吐水温度と温調ハンドルによる設定温度とのズレを解消させる作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態である湯水混合水栓の断面図である。
【図2】同実施形態における温調ハンドルと水栓本体部の要部を外観状態で示した図である。
【図3】同実施形態の作用説明図である。
【図4】同実施形態における補正部材の操作部の操作を説明するための説明図である。
【図5】従来の湯水混合水栓の要部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態の湯水混合水栓における水栓本体部で、12は回転式の温調ハンドル(温度調節ハンドル)である。
この実施形態の湯水混合水栓は、自動温度調節機能付き(サーモスタット式)の湯水混合水栓で、円筒形状のハウジング14の内部に温調ユニット16が組み込まれている。
【0026】
図2に示しているように温調ハンドル12の外面、詳しくは水栓本体部10に近接した位置の外面には温度表示部18が設けられている。
ここで温度表示部18は、適温(ここでは40℃)を表示する適温表示部18Aと、これよりも高温域を表す高温域表示部18Bと、低温域を表す低温域表示部18Cとを有している。
【0027】
一方水栓本体部10の温調ハンドル12側の端部の外面には、温調ハンドル12の温度表示部18と協働して、温調ハンドル12による現在の設定温度を表すための指示部20が設けられている。
図2では指示部20に対して、温調ハンドル12側の適温表示部18Aの位置が合った状態にあり、この状態の下では混合水即ち吐水の温度が適温の40℃に設定される。
【0028】
上記温調ユニット16の具体的構成が図1に詳しく示してある。
22は温調ユニット16における弁ケースで、軸方向に離隔した位置に水流入口24と、湯流入口26とが設けられており、それら水流入口24と湯流入口26とから水と湯とが弁ケース22内部に流入する。
流入した水と湯とは図中右方向に流れて混合室28へと到り、そこで水と湯とが混合されて混合水が流出口30から吐水部に向けて図中右方向に流出する。
【0029】
32は、水と湯とを混合し且つその混合比率を変化させる混合弁体で、軸方向の反対側に水側弁部34と湯側弁部36とを有している。
一方弁ケース22には、混合弁体32に対して軸方向の外側の位置に、水側弁部34,湯側弁部36にそれぞれ対応した水側弁座38,湯側弁座40が設けられている。
【0030】
42は、温調ハンドル12の回転操作により回転運動する温調軸で、弁ケース22の内部においてその内面に回転可能に嵌合する大径の円筒部44を有している。
この円筒部44の内周面には雌ねじ部46が設けられており、そこに進退部材48における後述の主部材88の外周面に設けられた雄ねじ部50が螺合され、主部材88が温調軸42に対して進退移動可能に結合(ねじ結合)されている。
【0031】
進退部材48は、これら雌ねじ部46と雄ねじ部50との螺合により、温調軸42の回転によりねじ送りで図中左右方向に進退移動せしめられる。
この進退部材48と混合弁体32との間には、コイルばねからなるバイアスばね52が介挿されており、混合弁体32に対してバイアスばね52の付勢力が図中右向き、即ち水側弁部34を閉弁させ、湯側弁部36を開弁させる方向に及ぼされている。
【0032】
一方、混合室28の内部には形状記憶合金製のコイル形状の感温ばね54が収容されており、混合弁体32に対してこの感温ばね54による付勢力が、上記バイアスばね52による付勢方向と逆方向の図中左向き、即ち湯側弁部36を閉弁させ、水側弁部34を開弁させる方向に及ぼされている。
混合弁体32は、これらバイアスばね52による右向きの付勢力と感温ばね54による左向きの付勢力とが釣合う位置に保持される。
【0033】
本実施形態の湯水混合水栓では、バイアスばね52による付勢力が一定の下で、混合水温度の上昇により感温ばね54の付勢力が増大すると、混合弁体32が、それらバイアスばね52と感温ばね54との付勢力が釣合う位置に図中左向きに位置をシフトさせ、水流入口24からの水の流入量を増大、湯流入口26からの湯の流入量を減少させて混合水温度を設定温度に保つように動作する。
【0034】
また逆に混合水温度が低下し、感温ばね54による付勢力が低下したときには図中右方向に位置をシフトさせ、水流入口24からの水の流入量を減少、湯流入口26からの湯の流入量を増大させて、混合水温度を設定温度に保つように動作する。
【0035】
上記温調軸42は、温調ハンドル12の操作により回転して進退部材48を図中左右方向に進退移動させ、これによりバイアスばね52による付勢力を増減させて混合弁体32の位置を図中左右方向に変化させる。
【0036】
図1において、56は円形のリング状をなすセレーション部材(ダブルセレーション部材)で、内周面に雌セレーション部58を、外周面に雄セレーション部60をそれぞれ有しており、そしてその内周面の雌セレーション部58に対し、温調軸42の雄セレーション部62がセレーション結合され、また外周面の雄セレーション部60に対し、温調ハンドル12の雌セレーション部64がセレーション結合されている。
これにより、温調ハンドル12がセレーション部材56を介して温調軸42に一体回転状態に連結されている。
【0037】
温調ハンドル12は、水栓本体部10からの抜止めのための弾性片から成る固定片66を一体に有している。この固定片66の先端部(図中左端部)は押圧部68とされている。
一方温調軸42には、図1中の左端側の先端部に外面形状が球面状をなす被押圧部70が形成されている。
【0038】
72は抜止部材を兼ねたキャップで、脚部74を固定片66の外周側の溝76に差し込むことで、固定片66の先端部の押圧部68を、温調軸42の被押圧部70に押圧し、以て温調ハンドル12を水栓本体部10に対して軸方向に抜止めする。
【0039】
78は、温調ハンドル12に一体回転状態に保持された、温調ハンドル12の回転規制のための当り部で、貫通孔80から外部に突出した安全ボタン82と一体に構成されている。
これら当り部78及び安全ボタン82は、板ばね84にて径方向外方に常時付勢されている。
【0040】
86は水栓本体部10側に固定された筒状のストッパ部材で、周方向に間隔を隔てた複数個所に図中左向きの軸方向に突出した複数のストッパを有しており、それらストッパに対して温調ハンドル12側の当り部78を当接させることで、温調ハンドル12を一定の回転角度位置で回転規制する。
【0041】
上記進退部材48は、温調軸42の上記の円筒部44に螺合されて温調軸42に直接結合された主部材88と、これとは別体をなして主部材88に保持され、混合弁体32の位置を補正する補正部材90との2部材から成っている。
ここで補正部材90は主部材88に対して軸方向の位置が調節可能とされており、それら主部材88と補正部材90とから成る進退部材48が軸方向に伸縮可能とされている。
【0042】
詳しくは、補正部材90は主部材88を貫通する、主部材88と同心の軸部92を有していて、その軸部92の、主部材88を貫通する部分の外周面に雄ねじ部94が形成され、その雄ねじ部94が、主部材88の雌ねじ部96に螺合されており、それら雄ねじ部94と雌ねじ部96とによるねじ送りで補正部材90が主部材88に対して軸方向に移動可能とされている。
ここで主部材88は径方向外方に突出した係合凸部98を有しており、その係合凸部98を弁ケース22の係合溝100に係合させることによって、弁ケース22に対して回転防止されている。
【0043】
主部材88にはまた、図中右端側の中心部に嵌合凹部102が設けられている。一方補正部材90には嵌合凹部102に嵌入する嵌合凸部104と、これよりも大径をなすばね押圧部106とが設けられており、そのばね押圧部106にて上記のバイアスばね52を図中右向きに押圧するようになっている。
尚本実施形態では、ばね押圧部106と嵌合凸部104とを一体に成形しているが、ばね押圧部106と嵌合凸部104とを別体に設けてそれらを当接させ或いは接着しておいてもよい。
【0044】
この補正部材90の上記の軸部92は、図中左部が主部材88に対する補正部材90の軸方向の位置を調節操作するための操作部108をなしており、この操作部108が温調軸42の軸方向の貫通孔112を貫通して、温調軸42の図中左方の外部且つ温調ハンドル12の内部に突出している。
そしてその外部の突出した部分に、マイナスドライバ等の工具を係合させる係合溝110が設けられている。
【0045】
一方温調ハンドル12には、この操作部108に対して軸方向に対向する面に開口部114が設けられており、この開口部114が、上記の抜止部材を兼ねたキャップ72にて閉鎖されている。
ここでキャップ72は、温調ハンドル12に対して脱着可能とされている。
【0046】
本実施形態では、温調ハンドル12を回転させると温調軸42が回転し、そしてその回転により進退部材48全体をねじ送りで図1中左右方向に進退移動させ、バイアスばね52の付勢力を増大させ又は減少変化させる。
これにより混合弁体32の位置が軸方向に移行せしめられる。
即ち温調ハンドル12の回転操作に基づいて、混合水の温度が設定される。
【0047】
この場合、その設定温度と実際の吐水温度との間にズレがあるとき、従来にあっては温調ハンドル12を一旦取り外してその回転位置を調節し、その上で温調ハンドル12を再組付けしていたが、本実施形態では温調ハンドル12の回転方向の位置の調節を行うことなく、設定温度と実際の吐水温度とを合致させることができる。
【0048】
具体的には、実際の吐水温度が設定温度よりも低いとき、例えば図2において温調ハンドル12の適温表示部18Aを指示部20に合せた状態で、実際の吐水温度が適温よりも低いときには、図3(A)に示しているように進退部材90の操作部108を回転操作して、補正部材90全体をねじ送りで主部材88から図中右方向に移動させる。
するとバイアスばね52が圧縮されて付勢力を強め、混合弁体32の位置を図中右方向、即ち水側弁部34の弁開度を小さく、湯側弁部36の弁開度を大とする方向に移動させる。
この結果、実際の吐水温度は上昇する。
そこで吐水温度が適温に達したところで、補正部材90の軸方向の移動を停止させる。
ここにおいて補正部材90の補正動作により、温調ハンドル12により設定した温度と実際の吐水温度とが一致した状態となる。
【0049】
逆に実際の吐水温度が設定温度即ち適温の40℃よりも高かったときには、図3(B)に示しているように補正部材90の操作部108を上記とは逆方向に回転させて、補正部材90の主部材88に対する位置を図中左向きに移動させ、バイアスばね52に対する押圧力を弱める。
すると混合弁体32に対するバイアスばね52の付勢力が低下し、ここにおいて混合弁体32が図1中左方向に移行し、混合水温度を低める。
そこで実際の吐水温度が適温となったところで、補正部材90の図中左方向の移動を停止させる。
ここにおいて温調ハンドル12により設定した温度と実際の吐水温度とが一致した状態となる。
【0050】
この補正部材90の操作部108に対する操作は、図4に示しているようにキャップ72を外すことにより開放された開口部114を通じ、温調ハンドル12を取り付けた状態のまま行うことができる。
【0051】
以上のように本実施形態によれば、温調ハンドル12の操作による設定温度と実際の吐水温度との間にズレがある場合、進退部材48を伸縮させることによって、具体的には主部材88に対する補正部材90の軸方向の位置を調節し、混合弁体32の位置の補正を行うことで、実際の吐水の温度を温調ハンドル12の操作による設定温度に正しく合せることができ、設定温度と実際の吐水温度とのズレを解消することができる。
【0052】
本実施形態では、温調ハンドル12の回転位置を調整する必要が無く、単に補正部材90の位置の調整操作を行うだけで良いので、専門的な知識を有しない水栓の使用者であっても、容易に設定温度と実際の吐水温度とを合せることができる。
【0053】
しかも補正部材90に対する位置調節の操作は、単に温調ハンドル12のキャップ72を外すだけで水栓の使用者が極めて簡単に行うことができる。
【0054】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上記の例では補正部材90を主部材88に対して螺合し、ねじ送りで主部材88に対する補正部材90の軸方向位置を調整するようにしているが、ねじ以外の他の手段にて主部材88に対する補正部材90の軸方向位置を調整するようになすといったことも可能である。
その他本発明は上記例示した以外の構造の湯水混合水栓に適用することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0055】
12 温調ハンドル
32 混合弁体
42 温調軸
48 進退部材
52 バイアスばね
54 感温ばね
72 キャップ
88 主部材
90 補正部材
108 操作部
114 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合弁体に対して感温ばねの付勢力とバイアスばねの付勢力とを軸方向の逆向きに作用させ、温調ハンドルにより温調軸を回転させることで、該温調軸と前記バイアスばねとの間に介在した進退部材を軸方向に進退移動させて、該バイアスばねを介して前記混合弁体を移動させ、混合水の温度を調節する湯水混合水栓において、
前記進退部材を、前記温調軸に進退移動可能に結合された主部材と、前記バイアスばねを押圧する部材であって該主部材に対し軸方向の位置が調節可能であり、該軸方向の位置の調節により前記混合弁体の位置の補正を行う補正部材とを含んで伸縮可能に構成したことを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項2】
請求項1において、前記補正部材には軸方向の位置調節用の操作部が設けてあり、該操作部が前記温調軸を貫通して該温調軸の外部まで突出していることを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項3】
請求項2において、前記温調ハンドルには前記位置調節用の操作部に対し軸方向に対向する面に開口部が設けてあって、該開口部が脱着可能なキャップにて閉鎖されており、前記位置調節用の操作部が該開口部を通じ操作可能な位置まで前記温調ハンドル内部に突出していることを特徴とする湯水混合水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−241722(P2012−241722A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108806(P2011−108806)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】