説明

溶射ガン内への軸方向注入の混合を改善する装置および方法

【課題】キャリアストリーム内の軸方向に供給される微粒子の、加熱流出物ストリームとの混合を、流出物またはキャリアストリームのいずれの内にも著しい乱れを導入することなく促進させる改善された溶射装置および方法を提供すること。
【解決手段】軸方向注入ポートは、ポートの遠位端に複数のシェブロンを含む。このシェブロンは、ポート出口のところの2つの流れストリームの間の共有領域を増加させるように、軸方向注入ポートの遠位端の円周周りに半径方向に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に改善された溶射塗布装置に関し、詳しくは加熱されたガスの下流流れ内に供給原料材料を軸方向に注入するための供給原料注入器に関する。
【背景技術】
【0002】
溶射は一般に、加熱され、加速されまたはそれらの両方がされる活性化されたガスのストリーム内に粉体または他の供給原料材料が供給される被覆方法として説明することができる。この供給原料材料は、熱および/または運動エネルギをそこから受け取る活性化ガスのストリームによって捕えられる。次いでこの活性化された供給原料は表面上に衝突させられ、そこでそれは接着し固化し、引き続く薄い層の繰り返されるクラッディングによって比較的厚い溶射被覆を形成する。
【0003】
いくつかの溶射用途の場合に、活性化されたガス流内に供給原料を軸方向に注入することは、他の供給原料注入方法より優れたいくつかの利点を示すことが以前に認められてきている。通常、供給原料は、半径方向注入として一般的に説明される方向に、換言すればストリームの移動の方向と多かれ少なかれ直角な方向に、ストリーム内に供給される。半径方向注入は、流出物ストリーム内に微粒子を混合させる効果的な手段を与え、したがって、短区間で微粒子にエネルギを伝達するので一般的に使用される。それは、被覆を適切に付着させるプロセスのために短溶射距離および高熱負荷が、迅速な混合およびエネルギ伝達を必要とするプラズマについての場合がそのようなものである。軸方向注入は、軸方向に注入されるとき供給原料微粒子の軌跡の直線性および方向をより良く制御する潜在的能力に起因する、半径方向注入より優れた利点をもたらす可能性がある。他の利点には、エネルギ密度が最高でありそうな流出物ストリームの中央区域内に粒子状物質を有し、その結果粒子状物質内へのエネルギ取得に対し最大限の潜在的能力を与えることが含まれる。最後に、軸方向注入は、現行実施される半径方向注入より流出物ストリームを乱す傾向が少ない。
【0004】
したがって多くの溶射プロセスガンでは、キャリアガスを使用して、この明細書では単純に流出物と呼ばれる加熱された、かつ/または加速されたガス内に微粒子を注入する、供給原料微粒子の軸方向注入が好ましい。この流出物は、プラズマ、電気的に加熱されたガス、燃焼加熱されたガス、コールドスプレーガス、またはそれらの組み合わせであることができる。エネルギは、流出物からキャリアガスストリーム内の微粒子に伝達される。ストリーム流れおよび2相流れの性質に起因して、この混合および引き続くエネルギの伝達は軸方向流れ内に制限され、2つのストリーム、流出物および粒子状物質を運搬するキャリアは、2つの流れの間の境界層が壊れ、その結果混合が起きるのが可能になるための十分な時間および移動距離が与えられるのを必要とする。この移動距離中に、エネルギは熱伝達および摩擦を介して周囲に失われ、結果として効率が失われることになる。それゆえ、軸方向注入を利用する多くの溶射プロセスガンは、この混合および引き続くエネルギ伝達が起き得るように、通常必要とされるであろうより長く設計される。
【0005】
粒子状物質運搬キャリアと流出物ストリームを混合させるためのこれらの制限は、粒子状物質運搬キャリア流体が液体であるときさらにより顕著になり、多くの場合それらの制限が、軸方向注入溶射プロセスガン内への液体供給の使用を阻んできている。液体注入技術に対しては、細かな液滴ストリームを生じさせるガスアトマイゼーションの使用が、液体注入がとにかく正常に機能するのをより容易に可能にするように、液体を流出物ストリームと混合させるのを助けるが、この方法は、ガスと細かな液滴ストリームと流出物ストリームが混合しかつエネルギを伝達するのを可能にするあるかなりの距離を依然として必要とする。この方法は、ストリーム流れ内にある量の乱れも生じさせる。
【0006】
不連続性の導入および流れの衝突などの混合を促進させることへの試みも乱れを生じさせる。短距離での混合を確実にするためにプラズマなどの溶射プロセスで通常使用される半径方向注入も、2つのストリームが直角で交差するとき乱れを生じさせる。実際、迅速混合を促進させる注入のほとんどの受け入れ可能な方法は、混合を促進させるための手段として故意に乱れを導入する方法を現在使用する。この乱れは、流れ間の境界層を壊すのに役立ち、これが達成された後、混合が起きることができる。
【0007】
この追加の乱れによりしばしば、流れ場が常に流動的で、エネルギ伝達に影響する流れ場内での変動を生じさせるとき、流出物と粒子状物質運搬キャリアストリームの間の予知できないエネルギ伝達が生じる。乱れは無秩序状態のプロセスを示し、異なる長さ規模の渦形成を生じさせる。乱れ運動の運動エネルギのほとんどは、大規模構造内に含まれる。大規模構造からより小規模構造へのエネルギ「カスケード」は、慣性力および本質的に無粘性のメカニズムによって生じる。このプロセスは、ますます小さな構造を作り続け、それが渦の階層を生じさせる。最後にこのプロセスは、分子拡散が重要になるのに十分小さな構造を作り出し、エネルギの粘性消散が起きる。これが起きる規模はKolmogorov長さ規模である。したがって、この乱れはいくらかの運動エネルギの熱エネルギへの転換に結果としてなる。この結果は、微粒子への伝達に対し、運動エネルギよりも多くの熱エネルギを生じさせるプロセスになり、そのような機器の性能を制限する。複数の乱れたストリームを有することによってプロセスを複雑化させ、結果は述べたように予期できないものになる。
【0008】
この乱れが、流出物流れ場内の少なくともいくつかの境界層の喪失に結果としてなり、したがって周囲へのエネルギ伝達、ならびに流れが壁内に入っているとき流れ内の摩擦作用を促進するので、乱れは周囲へのエネルギ損失も増加させる。チューブ内の流れに対しては、層流に対する圧力低下は流れの速度に比例するが、乱流に対してはこの圧力低下は速度の二乗に比例する。これが周囲および内部摩擦に対するエネルギ損失の規模の良好な目安を与える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがってこの分野で、溶射プロセスガン内への軸方向注入物質の迅速な混合を促進し、かつ結果としての流れストリーム内の乱れの発生も制限する、改善された方法および装置が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
記載されているように本発明は、キャリアストリーム内で軸方向に供給される微粒子の加熱された、かつ/または加速された流出物ストリームとの混合を、流出物またはキャリアストリームのいずれの内にも著しい乱れを導入することなく促進するための改善された装置および方法を提供する。本発明の実施形態は、シェブロンノズルを伴う軸方向注入ポートを有する溶射装置を利用する。この出願の目的のために、用語「シェブロンノズル」は、円周方向に一様でない任意の型式のノズルを含むことができる。
【0011】
本発明の一実施形態は、溶射プロセス(ここで、本発明の目的のために、用語「溶射プロセス」はコールドスプレープロセスも含むことができる)を実施するための方法を提供する。この方法は、高速度の流出物ガスストリームを形成させるように流出物ガスを加熱する、かつ/または加速するステップと、混合ストリームを形成するように粒子状物質運搬ストリームを軸方向注入ポートを介して前記流出物ガスストリーム内に供給するステップであって、前記軸方向注入ポートが前記軸方向注入ポートの遠位端に配置される複数のシェブロンを備えるステップと、被覆を形成するように混合されたストリームを基板上に衝突させるステップとを含む。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、流出物ガスストリームを加熱する、かつ/または加速するための手段と、粒子状物質運搬ストリームを前記流出物ガスストリーム内に軸方向に供給するように構成される注入ポートであって、前記軸方向注入ポートが前記軸方向注入ポートの遠位端に配置される複数のシェブロンを備える注入ポートと、前記加速手段および前記注入ポートと流体接続するノズルとを備える溶射装置を提供する。
【0013】
本発明のさらに別の実施形態では、溶射装置が提供される。この装置は、流出物ガスストリームを生じさせるように構成される流出物ガス加速構成部品と、流体ストリームを前記流出物ガスストリーム内に軸方向に供給するように構成される複数のシェブロンを有する軸方向注入ポートと、前記流出物ガス加速構成部品および前記注入ポートと流体接続するノズルとを含む。
【0014】
さらに別の実施形態では、溶射ガン用の軸方向注入ポートが提供される。この注入ポートは、入口および出口を有する円筒状チューブを備え、前記入口は前記円筒状チューブを介して流体の流れを受け取るように構成され、前記出口は前記出口の円周周りに半径方向に配置される複数のシェブロンを備える。
【0015】
本発明の追加の利点は以下の説明内に記載され、部分的にこの記載から明らかになるであろうし、または本発明の実施によって学ぶことができる。本発明の利点は、本明細書で後で具体的に指摘する手段および組み合わせを用いて実現しかつ得ることができる。
【0016】
本発明のさらなる理解を与えるために含まれ、この明細書に組み込まれかつこの明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の一実施形態を示し、かつその説明と共に本発明の原理を明らかにするのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、それらの例が添付の図面に示されている、本発明の好ましい実施形態に対し詳細に参照する。
【0018】
図1は、本発明によって使用できる典型的な溶射ガン100の概略図を提供する。このガンは、燃料ガス供給ライン104および酸素(または他のガス)供給ライン106を含むハウジング102を含む。この燃料ガス供給ライン104および酸素供給ライン106は、混合チャンバ108内に流れ込み、そこで燃料と酸素は混ぜ合わされ、供給原料とキャリア流体軸方向注入ポート114の周りに通常半径方向に配置される複数のポート112を介して燃焼チャンバ110内に供給される。このガンハウジング102は、供給原料およびキャリア流体用の供給ライン116も含む。この供給原料およびキャリア流体供給ラインは、燃焼チャンバ110内に流れ込み、軸方向注入ポート114は一般に溶射ガン100の出口ノズル118と軸方向に位置合わせされる。
【0019】
動作では、この酸素/燃料混合物はポート112を介して燃焼チャンバ内に入り、供給原料およびキャリア流体は同時に軸方向注入ポート114を出る。この酸素/燃料混合物は燃焼チャンバ内で点火され、供給原料を出口ノズル118に向かって加速する。2つの流れストリーム(Fとして示す半径方向ポート112からの点火されたガス流出物およびFとして示す軸方向注入ポート114からのキャリアガス/供給原料ストリーム)の適切な混合が、溶射プロセスの効率に影響を与える。供給原料および加熱されたガスストリームの混合および引き続くエネルギの伝達は、軸方向注入ポート114上の刻み目を入れられたシェブロンノズルの使用によって最適化することができる。
【0020】
図1の実施形態では、燃料ガス供給ライン104、酸素供給ライン106、混合チャンバ108、燃焼チャンバ110、および複数のポート112は一般に、流出物ガスストリームを加速するのに必要な構成部品または手段として言及される。他の溶射プロセスは、本発明に同等に適用可能な、異なる流出物加速構成部品およびガスを使用することができる。本発明の実施形態は、軸方向注入を使用するまたは潜在的に使用可能な非常に様々な溶射プロセスに適用可能である。本発明の実施形態と共に使用できるプロセスの例には、限定ではなく、コールドスプレー、フレーム溶射、高速酸素燃料(HVOF)溶射、高速液体燃料(HVLF)溶射、高速空気燃料(HVAF)溶射、アーク溶射、プラズマ溶射、爆発ガン溶射、および1つまたは複数の溶射プロセスを組み合わせるハイブリッドプロセスを利用する溶射が含まれる。キャリア流体は通常、各プロセスに従って約1μmから100μmより大きな様々なサイズ範囲の通常の溶射粒子状物質を含む、限定ではなくアルゴンおよび窒素を含む溶射ガンで使用されるキャリアガスである。改善される混合から結果として生じる可能性のある本発明の1つの利益は、この混合がより少ない排エネルギを伴う良好なエネルギ伝達を促進させるので、粒子状物質のより高い物質流量を処理する能力にある。粒子状物質、または溶液内の溶解供給材料、または前駆物質としての粒子状物質を含む液体ベースのキャリア流体も、特に軸方向注入ポート出口直前に発生するガスアトマイズされたストリームの形態での高められた混合から利益を受けるであろう。
【0021】
図2は、コールドスプレーガンの収束チャンバ110および発散出口ノズル118区域の概略図を提供する。軸方向注入ポート114が、出口を画成するポートの遠位端に複数のシェブロン120を有して示されている。このシェブロンの各々は、形状が全体的に三角形である。このシェブロン120は、軸方向注入ポート114の遠位端の円周周りに半径方向に(かつ、いくつかの実施形態では等間隔に)配置される。軸方向注入ポート114にシェブロン120を導入することは、2つの流れストリームFおよびFが交わるとき、それらの間の混合を増加させる。チャンバ110を通過し、ノズル118内で加速される流出物ストリームのエネルギによって、流出物流れの熱および運動特性は、これらのシェブロンの使用によって、キャリア流れおよび粒子状物質により容易に伝達される。
【0022】
図3は、従来型の軸方向注入ポートの遠位端の概略図を提供する。対照的に図4は、本発明の一実施形態による4つのシェブロン120を含む軸方向注入ポート114の遠位端の概略図を提供する。いくつかの実施形態では、各シェブロン120は、軸方向注入ポート114の全体的に3角形形状の延長部を含む。図4の実施形態では、各シェブロン120は、シェブロンが連結される軸方向注入ポート114の壁に対して全体的に平行である。図5に示す別の実施形態は、ラッパ状にし、湾曲させ、曲げ、またはさもなければ軸方向注入ポート114の遠位端を画成する平面に対して半径方向外向きに向けたシェブロン130を内蔵する。別の実施形態では、このシェブロンは、ラッパ状にし、湾曲させ、曲げ、またはさもなければ軸方向注入ポートの遠位端を画成する平面に対して半径方向内向きに向けることができる。シェブロンの90度までの内向きまたは外向きの傾斜の角度は混合を高めることができるが、好ましい傾斜角は0度と約20度の間にある可能性がある。約20度より大きな傾斜角は混合を高めることができるが、相対的な流れ速度および密度による所望されない渦流れおよび乱れの可能性も生じさせる傾向にもある可能性がある。
【0023】
図5は均一ラッパ状のシェブロン130を示すが、他の企図される実施形態は、溶射ガンにしばしば存在する旋回の影響を補償する非対称のガン形状、または他の所望の非対称の必要性に対応できる非対称のラッパ状シェブロンを有することができる。他の実施形態では、図4および5に示すシェブロン形状の代わりに異なる形状および/または配置を使用することができる。本出願の目的のために、用語「シェブロンノズル」は、円周方向に一様でない任意の型式のノズルを含むことができる。代替のシェブロン形状の非限定的な例には、半径方向に間隔のあいた長方形、湾曲した先端のシェブロン、半円形状、等が含まれる。本出願の目的のために、そのような代替の形状は一般的な用語シェブロンの下に含まれる。別の実施形態では、各シェブロンの壁厚は、シェブロン先端に向かってテーパの付いていることができる。
【0024】
シェブロンのほとんど任意の数を混合を助けるために使用することができる。4つのシェブロン120、130が図4および5の実施形態にそれぞれ示されている。いくつかの実施形態では、4から6もの数のシェブロンがほとんどの用途に対し理想的である可能性がある。しかしながら、他の実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなくより多くのまたはより少ないシェブロンを使用することができる。図2に示す溶射ガンに対しては、軸方向注入ポート114の遠位端上のシェブロンの数は、流れパターン内の対称性が燃焼チャンバ110内の均一なかつ予想可能な混合を生じさせることができるように、半径方向注入ポート112の数と一致させることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、様々な図に示すシェブロンは一般に軸方向注入ポートの均一な延長部である。他の実施形態では、シェブロンは、例えば機械的な取り付けによって既存の従来型の軸方向注入ポート上に後から取り付けることができる。後からの取り付けは、クランプ、バンド、溶接、リベット、ネジまたはこの分野で知られている他の機械的な取付け具の使用を含むことができる。このシェブロンは通常軸方向注入ポートと同じ材料で作られるであろうが、材料が同じであることは要件ではない。このシェブロンは、軸方向供給ポート環境の流れ、温度および圧力に適した、この分野で知られた様々な材料から作ることができる。
【0026】
図6は、本発明の一実施形態の溶射ガン用にモデル化された流れ溶射進路の様々なコンピュータモデル化された横断面の概略図を提供する。図の底部はノズル118および軸方向注入ポート114の側面図を示し、上部は様々な点のところの流出物およびキャリア流れ進路の横断面204a、204b、204c、204dを示す。図6を参照すると、粒子状物質運搬キャリア流れFと加熱された、かつ/または加速された流出物Fがシェブロン120に到達するとき、この流れ間の圧力、密度等などの物理的な差が流れ間の境界を、横断面202に示す当初の、軸方向注入ポート114の形状によって決定されるような通常は円筒状の界面形状から、横断面204aに示す花のような、または星印のような、流れFとFの間の共通境界面積を増加させる形状に変化させる。流れFとFの間存在する圧力差は、流れFとFがシェブロン120の長さを下って前進するとき、この圧力を均等にするように、流出物FまたはキャリアFのいずれかのより高い圧力の流れをこの圧力差(潜在的流れ)に応答して半径方向に加速させる。この半径方向加速は、シェブロンの下の圧力を均等にするようにシェブロンの周りの流れも同様に駆動するように変形させられるであろう。引き続く形状横断面204b、204cおよび204dに示すように、この星印のような形状は、流れFとFが一緒に移動するとき、流れFとFの間の共通境界面積をさらに増加させながら広がり続ける。これらのストリームの混合は境界面積の関数であるので、境界面積の増加は図6に例示するように混合速度を増加させる。内向きまたは外向きに傾斜するシェブロンの使用は、これらの流れ間の圧力差を増加させることによって混合作用を増加させ、したがって、境界面積のより迅速な形成および形状の広がりを生じさせる。この傾斜は2つのストリームの相対的な特性および所望の作用に応じて内向きまたは外向きのいずれかに向けることができる。
【0027】
図3、4および5に示すノズル形状を出る溶射進路は、図2に示すガンに類似するコールドスプレーガンでモデル化された。図7は、図3に示すようなシェブロンの使用なしで、図2にモデル化されたようなコールドスプレープロセスに対する軸方向注入微粒子速度ストリームの計算流体力学(CFD)モデルの実行の結果を提供する。図8は、本発明の一実施形態による図4に示すようなシェブロンの使用を伴う、図2にモデル化されたようなコールドスプレープロセスに対する軸方向注入微粒子速度ストリームのCFDモデルの実行の結果を提供する。軸方向注入コールドスプレーガンにCFDモデル化を適用することは、粒子状物質運搬キャリアストリームFと加熱されたかつ/または加速された流出物ストリームFの混合、および流出物ガスから供給原料微粒子への直接エネルギ伝達におけるかなりの改善を示してきている。図7では、結果として得られる微粒子速度および噴射幅は、シェブロンノズル追加によって得られる改善された混合の結果として、図8に示す微粒子速度および溶射幅より小さくなる。さらに図9は、本発明の一実施形態による図5に示すような外向きに傾斜するシェブロンの使用を伴う、図2にモデル化されたようなコールドスプレープロセスに対する軸方向注入微粒子速度ストリームのCFDモデルの実行の結果を提供する。図9に示すように、微粒子速度は直線のシェブロンによるよりもさらに高く増加し(図8)、外向きに傾斜するシェブロンを使用するとき流出物ガスから微粒子へのより良好なエネルギ伝達が起きることを示す。したがって、シェブロンの導入は、および傾斜シェブロンの導入ならなおさら、微粒子の全体速度を増加させかつ微粒子場を流出物ストリーム内へかなり拡大させてきている。
【0028】
軸方向注入ポートにシェブロンを含めることは、軸方向注入を使用するどのような溶射プロセスにも利益を与えることができる。したがって、本発明の実施形態は、軸方向に供給される液体粒子状物質運搬ストリーム、ならびにガス粒子状物質運搬ストリームに良く適している。別の実施形態では、2つの粒子状物質運搬ストリームを混合させることができる。さらに別の実施形態では、1つの粒子状物質運搬キャリアストリーム内に混合させるための追加の段と共に、軸方向注入ポートを順次多段式にすることによって2つ以上のガスストリームを混合させることができる。さらに別の実施形態では、このシェブロンは、流出物ストリームチャンバに入るときのポートの前縁のところに1つまたは複数のシェブロンを組み込むことによって、斜めの角度で流出物流れに入るポートに適用することができる。
【0029】
別の実施形態では、本発明によるストリーム混合は、周囲空気内で、低圧環境内で、真空内で、または制御された雰囲気環境内で実行することができる。同様に、本発明によるストリーム混合は、従来型の溶射プロセスに適した任意の温度で実行することができる。
【0030】
当業者は、この装置に対するさらなる増強ならびにシェブロンに対する三角形以外の形状の使用も想定することができる。この装置は、粒子状物質運搬キャリアガスならびに液体、追加の流出物ストリーム、および反応性ガスを導入するために軸方向注入を使用する任意の溶射ガンで機能するであろう。
【0031】
追加の利点および改変は、容易に当業者は思いつくであろう。したがって、そのより広い態様での本発明は、本明細書で示され説明された特定の詳細および代表的な実施形態に限定されない。したがって、様々な改変は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義される全体的な発明概念の趣旨および範囲から逸脱することなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に使用するのに適した溶射ガンの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による溶射ガンの燃焼チャンバおよび出口ノズル区域の切欠き概略図である。
【図3】従来型の軸方向注入ポートの遠位端の概略図である。
【図4】本発明の一実施形態による、シェブロンを含む軸方向注入ポートの遠位端の詳細概略図である。
【図5】本発明の別の実施形態による、シェブロンを含む軸方向注入ポートの遠位端の詳細概略図である。
【図6】本発明の一実施形態による、ノズルから放射された2つの流れの間の移動距離にわたる境界面積変化の図である。
【図7】シェブロンの使用なしでの軸方向注入速度微粒子ストリームの概略図である。
【図8】本発明の一実施形態による、傾いていないシェブロンを使用した軸方向注入速度微粒子ストリームの概略図である。
【図9】本発明の一実施形態による、20度外向きに傾いたシェブロンを使用した軸方向注入速度微粒子ストリームの概略図である。
【符号の説明】
【0033】
100 溶射ガン
102 ハウジング
104 燃料ガス供給ライン
106 酸素供給ライン
108 混合チャンバ
110 燃焼チャンバ
112 ポート
114 軸方向注入ポート
116 供給原料、キャリア流体用供給ライン
118 出口ノズル
120 シェブロン
130 シェブロン
202 横断面
204a、204b、204c、204d 流出物およびキャリア流れ進路の横断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流出物ガスストリームを形成させるように、ガスを加熱する、かつ/または加速するステップと、
混合ストリームを形成するように、粒子状物質運搬キャリアストリームを軸方向注入ポートを介して前記流出物ガスストリーム内に供給するステップであって、前記軸方向注入ポートが前記軸方向注入ポートの遠位端に配置される複数のシェブロンを備えるステップと、
被覆を形成するように、前記混合されたストリームを基板上に衝突させるステップとを含む、溶射プロセスを実施する方法。
【請求項2】
前記複数のシェブロンが、前記流出物ガスストリームと前記粒子状物質運搬ストリームの混合を促進させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
真空で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
周囲条件で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
制御される雰囲気条件で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記粒子状物質運搬キャリアストリームがガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子状物質運搬キャリアストリームが液体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子状物質運搬キャリアストリームがガスアトマイズされた液体である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のシェブロンが、前記注入ポートの遠位端より大きな直径まで外向きに傾いている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のシェブロンが、0と約20度の間で外向きに傾いている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のシェブロンが、前記注入ポートの遠位端より小さな直径まで内向きに傾いている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のシェブロンが、0と約20度の間で内向きに傾いている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数のシェブロンが異なるサイズである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記シェブロンが前記遠位端の円周周りに半径方向に位置決めされる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
流出物ガスストリームを加熱する、かつ/または加速するための手段と、
粒子状物質運搬ストリームを前記流出物ガスストリーム内に軸方向に供給するように構成される軸方向注入ポートであって、前記軸方向注入ポートの遠位端に配置される複数のシェブロンを備える軸方向注入ポートと、
前記加速手段および前記注入ポートと流体接続するノズルとを備える、溶射装置。
【請求項16】
前記シェブロンが、前記軸方向注入ポートの前記遠位端を画成する平面に対して内向きまたは外向きに90度までの角度で位置決めされる、請求項15に記載の溶射装置。
【請求項17】
流出物ガスストリームを生じさせるように構成される、流出物ガス加熱および/または加速構成部品と、
流体ストリームを前記流出物ガスストリーム内に軸方向に供給するように構成される、複数のシェブロンを備える軸方向注入ポートと、
前記流出物ガス加速構成部品および前記注入ポートと流体接続するノズルとを備える、溶射装置。
【請求項18】
入口および出口を有する円筒状チューブを備え、前記入口が前記円筒状チューブを介して流体の流れを受け取るように構成され、前記出口が前記出口の円周周りに半径方向に配置される複数のシェブロンを備える、溶射ガン用の軸方向注入ポート。
【請求項19】
前記複数のシェブロンが前記注入ポートの出口より大きな直径まで外向きに傾いている、請求項18に記載の軸方向注入ポート。
【請求項20】
前記複数のシェブロンが前記注入ポートの出口より大きな直径まで内向きに傾いている、請求項18に記載の軸方向注入ポート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−131834(P2009−131834A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−273320(P2008−273320)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(300047884)サルツァー・メトコ(ユーエス)・インコーポレーテッド (15)
【Fターム(参考)】