説明

溶接制御装置、その溶接制御方法および溶接システムならびに溶接制御プログラム

【課題】鉄骨構造物の溶接の際、溶接ロボットと鉄骨構造物との衝突が発生せず、オペレータの安全性が確保されると共に、溶接作業の自動化が可能となる溶接制御装置、その溶接制御方法および溶接システムならびに溶接制御プログラムを提供する。
【解決手段】溶接装置1を制御するために用いられる溶接制御装置8において、あらかじめ登録された複数の計測プログラムのパターンの中から、鉄骨構造物の形状に応じた計測プログラムを選定し、選定された計測プログラムを溶接装置1に送信する計測プログラム選定手段8Aと、送信された計測プログラムによってセンサ7で計測された計測データを受信し、その計測データの検出位置の座標を変換して鉄骨構造物の寸法データを算出するデータ算出手段8Eと、寸法データに基づいて、あらかじめ登録された溶接プログラムを修正し、修正された溶接プログラムを溶接装置1に送信する溶接プログラム修正手段8Fとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル建築等の柱構造として用いられる鉄骨構造物を溶接して組み立てるための溶接装置を制御するために用いられる溶接制御装置、その溶接制御方法および溶接システムならびに溶接制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨構造物の溶接には、以下のような構成の溶接装置が用いられている。例えば、特許文献1に記載された溶接装置は、鉄骨構造物(特許文献1では連結コラムコア)の両端を保持する一対のポジショナと、ポジショナに保持された鉄骨構造物を溶接する溶接ロボットと、溶接ロボットに備えられた鉄骨構造物の位置ずれ等を計測するセンサと、オペレータによって入力される鉄骨構造物の寸法データ、溶接ロボットの溶接動作についてのティーチングデータおよびセンサで計測された計測データに基づいて溶接ロボットを制御するコントローラとを備えている。
【0003】
そして、溶接装置の溶接制御方法としては、以下の手順が記載されている。(1)オペレータによって鉄骨構造物(特許文献1では連結コラムコア)の寸法データ(第2のデータ)をコントローラに入力する。(2)入力された寸法データに基づいて、あらかじめコントローラに記憶されているティーチングデータ(第1のデータ)を修正し、鉄骨構造物の位置ずれを計測する計測プログラム(第1のジョブ)をコントローラで作成をする。(3)コントローラで作成された計測プログラムに基づいて、センサ(溶接ロボット)を用いて鉄骨構造物の位置ずれ等を計測する。(4)センサの計測結果(計測データ)に基づいて、鉄骨構造物を溶接させるための溶接プログラム(第2のジョブ)をコントローラで作成する。(5)コントローラで作成された溶接プログラムに基づいて、溶接ロボットを動作させて、鉄骨構造物を溶接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−285637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の溶接制御方法においては、鉄骨構造物の寸法データの入力をオペレータが行う必要がある。そのため、寸法データの入力間違いによる溶接ロボットと鉄骨構造物との衝突が発生しやすいという問題がある。また、寸法データの入力は、通常では鉄骨構造物の図面を参照して行われるが、オペレータによっては鉄骨構造物の実物計測によって行うことがある。このような実物計測においては、溶接ロボットの安全柵内に立ち入って行われるため、溶接ロボットの誤動作、鉄骨構造物のポジショナからの落下等によって、オペレータが傷つけられることがあり、安全性が十分ではないという問題がある。加えて、溶接作業を自動化できないという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は前記問題を解決するために創案されたもので、その目的は、鉄骨構造物の溶接の際、溶接ロボットと鉄骨構造物との衝突が発生せず、オペレータの安全性が確保されると共に、溶接作業の自動化が可能となる溶接制御装置、その溶接制御方法および溶接制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る溶接制御装置は、ポジショナで保持された鉄骨構造物におけるあらかじめ設定された検出位置の座標を計測データとして計測するセンサを備えた溶接ロボットで前記鉄骨構造物を溶接する溶接装置を制御するために用いられる溶接制御装置において、あらかじめ登録された複数の計測プログラムのパターンの中から、前記鉄骨構造物の形状に応じた計測プログラムを選定し、選定された計測プログラムを前記溶接装置に送信する計測プログラム選定手段と、前記溶接装置に送信された計測プログラムによって前記センサで計測された計測データを受信し、その計測データの検出位置の座標を変換して前記鉄骨構造物の寸法データを算出するデータ算出手段と、前記寸法データに基づいて、あらかじめ登録された溶接プログラムを修正し、修正された溶接プログラムを前記溶接装置に送信する溶接プログラム修正手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記構成によれば、計測プログラム選定手段で選定された計測プログラムによって、センサで鉄骨構造物の複数の位置を計測する。そして、計測された計測データからデータ算出手段で鉄骨構造物の寸法データを算出し、その寸法データに基づいて溶接プログラム修正手段で溶接プログラムが修正される。そして、修正された溶接プログラムによって、溶接ロボットで鉄骨構造物を溶接する。その結果、従来のように、鉄骨構造物を溶接する際、オペレータが寸法データを入力する必要がないため、入力間違いが発生しない。また、寸法データの実測のためにオペレータが溶接ロボットの安全柵内に立ち入ることもなくなる。
【0009】
本発明の係る溶接制御方法は、前記溶接制御装置を用いて鉄骨構造物の溶接を制御する溶接制御方法において、前記計測プログラム選定手段にあらかじめ登録された複数の計測プログラムのパターンの中から、前記鉄骨構造物の形状に応じた計測プログラムを選定し、選定された計測プログラムを前記溶接装置に送信する第1ステップと、前記第1ステップで送信された計測プログラムによって、前記鉄骨構造物におけるあらかじめ設定された検出位置の座標を計測データとして前記センサで計測する第2ステップと、前記第2ステップで計測された計測データを前記データ算出手段で受信し、その計測データの検出位置の座標を変換して前記鉄骨構造体の寸法データを算出する第3ステップと、前記3ステップで算出された前記寸法データに基づいて、前記溶接プログラム修正手段にあらかじめ登録された溶接プログラムを修正し、修正された溶接プログラムを前記溶接装置に送信する第4ステップと、前記第4ステップで送信された溶接プログラムによって前記溶接装置で前記鉄骨構造物を溶接する第5ステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
前記手順によれば、第1ステップで選定された計測プログラムに基づいて、第2ステップで鉄骨構造物の位置をセンサで計測する。そして、第3ステップで鉄骨構造物の計測データを寸法データに変換し、その寸法データに基づいて、第4ステップで溶接プログラムを修正する。そして、修正された溶接プログラムに基づいて、第5ステップで鉄骨構造物を溶接ロボットで溶接する。その結果、従来のように、鉄骨構造物を溶接する際、オペレータが寸法データを入力する必要がないため、入力間違いが発生しない。また、寸法データの実測のためにオペレータが溶接ロボットの安全柵内に立ち入ることもなくなる。
【0011】
本発明に係る溶接システムは、前記溶接制御装置と、その溶接制御装置で制御される溶接装置とを備える溶接システムにおいて、前記溶接装置が、鉄骨構造物を保持するポジショナと、前記ポジショナで保持された鉄骨構造物を溶接する溶接ロボットと、前記溶接ロボットに備えられ前記鉄骨構造物におけるあらかじめ設定された検出位置の座標を計測データとして計測するセンサと、前記溶接ロボットを制御するコントローラとを備えることを特徴とする。また、本発明に係る溶接システムは、前記溶接装置が、前記溶接ロボットを前記ポジショナで保持された鉄骨構造物の軸方向に対して平行方向および直交方向の少なくとも1方向に移動させる移動手段をさらに備えてもよい。
【0012】
前記構成によれば、前記溶接制御装置を備えることによって、鉄骨構造物を溶接する際、オペレータが寸法データを入力する必要がないため、入力間違いが発生しない。また、寸法データの実測のためにオペレータが溶接ロボットの安全柵内に立ち入ることもなくなる。
【0013】
本発明に係る溶接制御プログラムは、ポジショナで保持された鉄骨構造物におけるあらかじめ設定された検出位置の座標を計測データとして計測するセンサを備えた溶接ロボットで前記鉄骨構造物を溶接する溶接装置を制御するために、コンピュータを、あらかじめ登録された複数の計測プログラムのパターンの中から、前記鉄骨構造物の形状に応じた計測プログラムを選定し、選定された計測プログラムを前記溶接装置に送信する計測プログラム選定手段、前記溶接装置に送信された計測プログラムによって前記センサで計測された計測データを受信し、その計測データの検出位置での座標を変換して前記鉄骨構造物の寸法データを算出するデータ算出手段、前記寸法データに基づいて、あらかじめ登録された溶接プログラムを修正し、修正された溶接プログラムを前記溶接装置に送信する溶接プログラム修正手段、として機能させることを特徴とする。
【0014】
前記構成によれば、計測プログラム選定手段で選定された計測プログラムによって、センサで鉄骨構造物の複数の位置を計測する。そして、計測された計測データからデータ算出手段で鉄骨構造物の寸法データを算出し、その寸法データに基づいて溶接プログラム修正手段で溶接プログラムが修正される。そして、修正された溶接プログラムによって、溶接ロボットで鉄骨構造物を溶接する。その結果、従来のように、鉄骨構造物を溶接する際、オペレータが寸法データを入力する必要がないため、入力間違いが発生しない。また、寸法データの実測のためにオペレータが溶接ロボットの安全柵内に立ち入ることもなくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る溶接制御装置、その溶接制御方法および溶接システムならびに溶接制御プログラムによれば、鉄骨構造物の溶接の際、溶接ロボットと鉄骨構造物との衝突が発生せず、オペレータの安全性が確保されるように溶接装置を制御できると共に、溶接作業の自動制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る溶接制御装置のブロック図である。
【図2】本発明に係る溶接装置および溶接システムの構成を示す斜視図である。
【図3】角型鋼管で構成された鉄骨構造物を示す斜視図である。
【図4】円形鋼管で構成された鉄骨構造物を示す斜視図である。
【図5】鉄骨構造物における開先部を示し、図3または図4のX−X線断面図である。
【図6】本発明に係る溶接制御方法の手順を示すフローである。
【図7】計測プログラム選定手段の構成を示す図である。
【図8】本発明に係る溶接制御装置の表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る溶接制御装置について、図面を参照して説明する。ここで、図1は溶接制御装置のブロック図、図2は、溶接装置および溶接システムの構成を示す斜視図、図3は角型鋼管で構成された鉄骨構造物を示す斜視図、図4は円形鋼管で構成された鉄骨構造物を示す斜視図、図5は鉄骨構造物における開先部を示し、図3または図4のX−X線断面図である。
【0018】
本発明に係る溶接制御装置を説明する前に、溶接制御装置で制御される溶接装置について説明する。図2に示すように、溶接装置1は、ポジショナ2で保持された鉄骨構造物Wを計測するセンサ7を備えた溶接ロボット3で鉄骨構造物Wを溶接するものである。また、溶接装置1は、溶接ロボット3を制御するコントローラ9を備え、溶接ロボット3全体を移動させる移動手段11、12をさらに備えてもよい。さらに、溶接装置1は、図示しないが、溶接ロボット3に電力を供給する溶接電源を備えている。以下、各構成について説明する。
【0019】
鉄骨構造物(以下、ワークと称す)Wは、例えば、図3〜図5に示すようなコアWである。図3に示すように、コアWは、所定長さの角型鋼管21と、この角型鋼管21両端のダイアフラム22、22とから構成され、角型鋼管21の両端にはダイアフラム22、22が組み立て溶接によりそれぞれ取り付けられている。また、図5に示すように、コアWは、角型鋼管21の内側に裏当て材27が取り付けられ、角型鋼管21とダイアフラム22との間に所定形状の開先部23が形成されている。
【0020】
図4に示すように、コアWは、角型鋼管21の代わりに円形鋼管24を用い、円形鋼管24の両端にダイアフラム25、25が取り付けられたものであってもよい。なお、図5に示すように、角型鋼管21の場合と同様に、円形鋼管24とダイアフラム25との間に所定形状の開先部26が形成されている。また、図示しないが、コアWは、複数のコアW、W・・・を仮組みして仮止め溶接されたもの、または、連結治具により連結されたものであってもよい。
【0021】
ポジショナ2は、ワークWを保持して、ワークWを軸方向に固定する面板である。また、ポジショナ2は、ワークWの溶接の際に、ワークWを周方向に旋回させる回転駆動部(図示せず)を備える。なお、図2ではワークWの片端を保持する片持ち方式のポジショナ2が記載されているが、ワークWの両端を保持する両持ち方式のポジショナ(図示せず)でもよい。
【0022】
溶接ロボット3は、ポジショナ2で保持されたワークWの各種溶接継手を溶接施工できる各種機能を有するものであればよく、アーク溶接ロボットが好ましい。そして、溶接ロボット3は、多関節のアーム4と、アーム4によって支持される溶接トーチ5と、溶接トーチ5の先端に備えられた溶接ワイヤ6とを備えている。
【0023】
センサ7は、溶接ロボット3に備えられ、溶接ロボット3を移動させることによって、ワークWにおけるあらかじめ設定された検出位置の座標を計測データとして計測するものである。センサ7は、ワークWの座標を計測データとして計測できるものであればよく、レーザ等の非接触式位置検出用センサ、タッチセンサ等の接触式位置検出用センサ等を用いることができる。また、センサ7で計測される計測データは、検出位置以外の位置での座標を含んでいてもよい。そして、検出位置は、ワークWの形状によって決定され、例えば、図3、図5に示すように、ワークWが角型鋼管21で構成されている場合にはP1〜P6およびP7〜P10、図4、図5に示すように、ワークWが円形鋼管24で構成されている場合にはP11〜P16およびP7〜P10である。
【0024】
コントローラ9は、後記する計測プログラム選定手段8Aで選定された計測プログラム、および、溶接プログラム修正手段8Fで修正された溶接プログラムによって溶接ロボット3を制御するものである。具体的には、選定された計測プログラムによって溶接ロボット3を移動させることによって、溶接ロボット3に備えられたセンサ7でワークWにおける検出位置の座標を計測データとして計測する。また、修正された溶接プログラムによって溶接ロボット3を移動させることによって、ワークWの溶接を行う。
【0025】
移動手段11、12は、溶接ロボット3をポジショナ2に保持されたワークWの軸方向に対して平行方向および直交方向の少なくとも1方向に移動させるものである。具体的には、移動手段(台車)12は、ポジショナ2の回転軸に平行な移動手段(レール)11に沿って走行移動することによって、台車12上に載置された溶接ロボット3をワークWの軸方向に対して平行に移動させる。また、台車12をレール11に直交する方向に移動可能に構成することによって、台車12上に載置された溶接ロボット3をワークWの軸方向に対して直交方向に移動させる。
【0026】
<溶接制御装置>
次に、本発明に係る溶接制御装置について説明する。図1に示すように、溶接制御装置8は、前記溶接装置を制御するために用いられるもので、計測プログラム選定手段8Aと、データ算出手段8Eと、溶接プログラム修正手段8Fとを備える。また、溶接制御装置8は、前記した溶接装置1(センサ7)の計測プログラム選定、および、溶接装置1(溶接ロボット3)の溶接プログラム修正を行うもので、溶接装置1(コントローラ9)に接続されたマイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータ等である。なお、前記した溶接装置1のコントローラ9のCPU能力に十分な余裕がある場合には、溶接制御装置8として使用してもよい。
【0027】
計測プログラム選定手段8Aでは、ワークWにおけるあらかじめ設定された検出位置の座標を計測データとしてセンサ7で計測する計測プログラムを選定し、選定された計測プログラムを溶接装置1(コントローラ9)に送信する。具体的には、計測プログラム選定手段8Aでは、オペレータによって溶接装置1の開始命令が入力され、計測プログラム選定手段8Aにあらかじめ登録された複数の計測プログラムのパターン(図7(a)参照)の中からワークWの形状(例えば、角型鋼管21または円形鋼管24)に応じた計測プログラムが選定される。そして、選定された計測プログラムは溶接装置1(コントローラ9)に送信される。また、図7(b)に示すように、計測プログラムは、オペレータによって入力されたワークWの所定情報に基づいて、所定の演算、算出処理を行うものであってもよい。ここで、図7(a)、(b)は計測プログラム選定手段の構成を示す図である。
【0028】
データ算出手段8Eでは、溶接装置1(コントローラ9)に送信された計測プログラムによってセンサ7で計測された計測データを受信し、その計測データの検出位置の座標を所定の変換手順で変換してワークWの寸法データを算出し、算出した寸法データを溶接プログラム修正手段8Fに送信する。
【0029】
具体的には、データ算出手段8Eでは、受信した計測データの中から検出位置(例えば、図3〜図5のP1〜P16)の座標を計測データ(検出位置データ)として取り出し、その検出位置データから、所定手順で変換して、ワークWの寸法データを算出する。
そして、図3〜図5に示すように、寸法データは、ワークWの長さL、コーナ部半径R(D)、板厚(T)、ルートギャップV等である。また、本発明においては、ワークWの高さHも寸法データに含まれるものとする。さらに、データ算出手段8Eには、検出位置、および、寸法データ算出手順に関する情報をあらかじめテーブルとして登録しておく。
なお、寸法データは、図8に示すように、溶接制御装置8(パソコン)の表示画面上に表示されるため、オペレータが寸法データの確認を行うことも可能である。また、オペレータによって、寸法データの補正を行うことも可能である。ここで、図8は、溶接制御装置の表示画面を示す図である。
【0030】
溶接プログラム修正手段8Fでは、算出した寸法データに基づいて、溶接プログラム修正手段8Fにあらかじめ登録された溶接プログラムを修正し、修正された溶接プログラムを溶接装置1(コントローラ9)に送信する。具体的には、溶接プログラム修正手段8Fでは、寸法データに基づいて、溶接ロボット3の移動軌跡、溶接電流、溶接電圧、溶接速度、ウィーピングの有無等の溶接データを生成する。
【0031】
本発明に係る溶接制御装置8は、計測プログラム選定手段8A、データ算出手段8Eおよび溶接プログラム修正手段8Fに加えて、プログラムおよびデータを記憶する記憶手段8Bと、プログラムおよびデータを送受信するプログラム送受信手段8Cと、計測または記憶した計測データから検出位置データを取り出す検出位置取り出し手段8Dとをさらに備えてもよい。なお、記憶手段8Bには、選定された計測プログラム、計測データ、検出位置データ、寸法データ、および、修正された溶接プログラムが記憶されている。また、検出位置取り出し手段8Dには、検出位置に関する情報があらかじめ登録されている。
【0032】
このような構成の溶接制御装置8は、以下のように機能する。すなわち、計測プログラム選定手段8Aで選定された計測プログラムは、記憶手段8Bに記憶され、プログラム送受信手段8Cから溶接装置1(コントローラ9)に送信される。次に、センサ7で計測された計測データは、プログラム送受信手段8Cで受信され、記憶手段8Bに記憶される。次に、記憶された計測データから検出位置取り出し手段8Dによって検出位置データが取り出され、取り出された検出位置データは記憶手段8Bに記憶される。次に、記憶された検出位置データから、データ算出手段8Eで寸法データが算出され、算出された寸法データは記憶手段8Bに記憶される。次に、記憶された寸法データに基づいて、溶接プログラム修正手段8Fで溶接プログラムが修正され、記憶手段8Bに記憶される。そして、記憶された溶接プログラムは、プログラム送受信手段8Cから溶接装置1(コントローラ9)に送信される。
【0033】
なお、溶接制御装置8において、計測プログラム選定手段8A、データ算出手段8E、溶接プログラム修正手段8Fおよび検出位置取り出し手段8Dはマイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータ等の処理演算装置、記憶手段8BはROM、RAM、HDD(ハードディスク)等の記憶媒体、プログラム送受信手段8Cはネットワーク通信等で構成することができる。
【0034】
<溶接システム>
次に、本発明に係る溶接システムについて説明する。
図2に示すように、溶接システム100は、溶接制御装置8と、その溶接制御装置8で制御される溶接装置1とを備える。そして、溶接装置1は、ポジショナ2と、溶接ロボット3と、センサ7と、コントローラ9とを備える。また、溶接装置1は、移動手段11、12、溶接電源(図示せず)を備えてもよい。なお、各構成については前記と同様であるので、説明を省略する。
【0035】
<溶接制御プログラム>
次に、本発明に係る溶接制御プログラムについて説明する。
図1に示すように、溶接制御プログラムは、前記溶接装置を制御するために、コンピュータを、計測プログラム選定手段8A、データ算出手段8E、溶接プログラム修正手段8F、として機能させることを特徴とする。また、溶接制御プログラムは、コンピュータを、前記手段に加えて、記憶手段8B、プログラム送受信手段8C、検出位置取り出し手段8D、として機能させてもよい。なお、各手段については前記溶接制御装置と同様であるので、説明を省略する。
【0036】
<溶接制御方法>
次に、本発明に係る溶接制御方法について、図面を参照して説明する。ここで、図6は溶接制御方法の手順を示すフローである。
溶接制御方法は、前記溶接制御装置を用いて鉄骨構造物(ワーク)の溶接を制御するもので、図6に示すように、以下のステップで行われる。なお、溶接制御装置(溶接装置)の各構成については図1〜図5を参照する。
【0037】
(第1ステップ:ステップ1〜2)
ステップ1(SI)では、オペレータによって、計測プログラム選定手段8Aにあらかじめ登録された複数の計測プログラムのパターン(図7(a)参照)の中から、ワークWの形状(例えば、角型鋼管21または円形鋼管24)に応じた計測プログラムが選定される。また、図7(b)に示すように、計測プログラムは、オペレータによって入力されたワークWの所定情報に基づいて、所定の演算、算出処理を行うものであってもよい。
【0038】
ステップ2(S2)では、ステップ1(S1)で選定された計測プログラムを溶接装置1(コントローラ9)に送信する。この際、図1に示すように、選定された計測プログラムを記憶手段8Bに記憶してもよい。また、選定または記憶された計測プログラムの送信は、プログラム送受信手段8Cで行ってもよい。
【0039】
(第2ステップ:ステップ3〜4)
ステップ3(S3)では、第1ステップで送信された計測プログラムによって溶接装置1(溶接ロボット3)を稼動(スタート)し、溶接ロボット3に備えられたセンサ7によるワークWの位置計測を開始する。なお、ポジショナ2の回転中心P0を計測原点として用い、溶接装置1の据付時に回転中心P0を計測し、計測プログラムにあらかじめ登録しておく。
ステップ4(S4)では、センサ7が終了位置に達したかどうかを判断し、終了位置に達した時点でセンサ7での計測を終了する。なお、終了位置については、あらかじめ計測プログラムに登録しておく。
【0040】
(第3ステップ:ステップ5〜7)
ステップ5(S5)では、第2ステップで計測された計測データをデータ算出手段8Eで受信する。ステップ6(S6)では、受信した計測データから、あらかじめ設定された検出位置の座標を計測データ(検出位置データ)として取り出す。ステップ7(S7)では、取り出された検出位置データを、あらかじめ登録された所定の変換手順で変換して、ワークWの寸法データ(高さH、長さL、コーナ部半径R(D)、板厚(T)、ルートギャップV等)を算出する。
【0041】
図3、図5に示すように、角型鋼管21で構成されたワークWでの寸法データへの変換手順は、以下のとおりである。検出位置P1の検出位置データを変換して、計測原点(回転中心P0)からのワークWの高さHを算出する。検出位置P2、P3の検出位置データを変換してワークWの長さLを算出する。検出位置P4、P5およびP6の検出位置データを変換してワークWのコーナ部半径Rを算出する。検出位置P7、P8の検出位置データを変換してワークWの板厚Tを算出する。検出位置P9、P10の検出位置データを変換してワークWのルートギャップVを算出する。
【0042】
ここで、コーナ部半径Rについては、角型鋼管21に形成されている4つのコーナ部で算出する。また、ルートギャップVについては、溶接開始点と4つのコーナ部での開先部23で算出し、コーナ部の開先部23では、コーナ部入口(検出位置P4)、コーナ部出口(検出位置P5)およびコーナ部頂点(検出位置P6)の3箇所で算出する。結果的に、13箇所でルートギャップVが算出される。なお、コーナ部頂点等の任意の部分を除いて算出してもよい。
【0043】
図4、図5に示すように、円形鋼管24で構成されたワークWでの寸法データへの変換手順は、以下のとおりである。検出位置P11の検出位置データを変換して、計測原点(回転中心P0)からのワークWの高さHを算出する。検出位置P12、P13の検出位置データを変換してワークWの長さLを算出する。検出位置P14、P15およびP16の検出位置データを変換してワークWのコーナ部半径Dを算出する。なお、ルートギャップVについては、角型鋼管21と同様であるので説明を省略する。
【0044】
なお、第3ステップでは、図1に示すように、計測データの受信をプログラム送受信手段8Cで行い、受信した計測データを記憶手段8Bに記憶し、記憶した計測データから検出位置データの取り出しを検出位置取り出し手段8Dで行い、取り出した検出位置データを記憶手段8Bに記憶し、記憶した検出位置データからデータ算出手段8Eで寸法データを算出し、算出された寸法データを記憶手段8Bに記憶してもよい。
【0045】
(第4ステップ:ステップ8〜9)
ステップ8(S8)では、第3ステップで算出された寸法データに基づいて、溶接プログラム修正手段8Fにあらかじめ登録された溶接プログラムを修正する(溶接データを生成する)。ステップ9(S9)では、修正された溶接プログラムを溶接装置1(コントローラ9)に送信する。なお、第4ステップでは、作成された溶接プログラムを記憶手段8Bに記憶し、記憶した溶接プログラムを溶接装置1(コントローラ9)にプログラム送受信手段8Cを介して送信してもよい。
【0046】
(第5ステップ:S10〜11)
ステップ10(S10)では、第4ステップで送信された溶接プログラムによって、溶接装置1(溶接ロボット3)を稼動(スタート)し、ワークWの溶接を開始する。ステップ11(S11)では、溶接が終了したかどうかを判断し、溶接が終了したら溶接ロボット3の稼動を終了する。なお、溶接が終了したかどうかの判断は、溶接トーチ5(溶接ワイヤ6)が終了位置に達したかどうかで判断され、終了位置の計測はセンサ7で行う。また、終了位置については、あらかじめ溶接プログラムに登録しておく。
【符号の説明】
【0047】
1 溶接装置
2 ポジショナ
3 溶接ロボット
7 センサ
8 溶接制御装置
8A 計測プログラム選定手段
8E データ算出手段
8F 溶接プログラム修正手段
9 コントローラ
100 溶接システム
W 鉄骨構造物(コア、ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジショナで保持された鉄骨構造物におけるあらかじめ設定された検出位置の座標を計測データとして計測するセンサを備えた溶接ロボットで前記鉄骨構造物を溶接する溶接装置を制御するために用いられる溶接制御装置において、
あらかじめ登録された複数の計測プログラムのパターンの中から、前記鉄骨構造物の形状に応じた計測プログラムを選定し、選定された計測プログラムを前記溶接装置に送信する計測プログラム選定手段と、
前記溶接装置に送信された計測プログラムによって前記センサで計測された計測データを受信し、その計測データの検出位置の座標を変換して前記鉄骨構造物の寸法データを算出するデータ算出手段と、
前記寸法データに基づいて、あらかじめ登録された溶接プログラムを修正し、修正された溶接プログラムを前記溶接装置に送信する溶接プログラム修正手段と、
を備えることを特徴とする溶接制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された溶接制御装置を用いて鉄骨構造物の溶接を制御する溶接制御方法において、
前記計測プログラム選定手段にあらかじめ登録された複数の計測プログラムのパターンの中から、前記鉄骨構造物の形状に応じた計測プログラムを選定し、選定された計測プログラムを前記溶接装置に送信する第1ステップと、
前記第1ステップで送信された計測プログラムによって、前記鉄骨構造物におけるあらかじめ設定された検出位置の座標を計測データとして前記センサで計測する第2ステップと、
前記第2ステップで計測された計測データを前記データ算出手段で受信し、その計測データの検出位置の座標を変換して前記鉄骨構造体の寸法データを算出する第3ステップと、
前記3ステップで算出された前記寸法データに基づいて、前記溶接プログラム修正手段にあらかじめ登録された溶接プログラムを修正し、修正された溶接プログラムを前記溶接装置に送信する第4ステップと、
前記第4ステップで送信された溶接プログラムによって前記溶接装置で前記鉄骨構造物を溶接する第5ステップと、
を含むことを特徴とする溶接制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載された溶接制御装置と、その溶接制御装置で制御される溶接装置とを備える溶接システムにおいて、
前記溶接装置が、鉄骨構造物を保持するポジショナと、前記ポジショナで保持された鉄骨構造物を溶接する溶接ロボットと、前記溶接ロボットに備えられ前記鉄骨構造物におけるあらかじめ設定された検出位置の座標を計測データとして計測するセンサと、前記溶接ロボットを制御するコントローラとを備えることを特徴とする溶接システム。
【請求項4】
前記溶接装置が、前記溶接ロボットを前記ポジショナで保持された鉄骨構造物の軸方向に対して平行方向および直交方向の少なくとも1方向に移動させる移動手段をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の溶接システム。
【請求項5】
ポジショナで保持された鉄骨構造物におけるあらかじめ設定された検出位置の座標を計測データとして計測するセンサを備えた溶接ロボットで前記鉄骨構造物を溶接する溶接装置を制御するために、コンピュータを、
あらかじめ登録された複数の計測プログラムのパターンの中から、前記鉄骨構造物の形状に応じた計測プログラムを選定し、選定された計測プログラムを前記溶接装置に送信する計測プログラム選定手段、
前記溶接装置に送信された計測プログラムによって前記センサで計測された計測データを受信し、その計測データの検出位置での座標を変換して前記鉄骨構造物の寸法データを算出するデータ算出手段、
前記寸法データに基づいて、あらかじめ登録された溶接プログラムを修正し、修正された溶接プログラムを前記溶接装置に送信する溶接プログラム修正手段、
として機能させることを特徴とする溶接制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−162554(P2010−162554A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4462(P2009−4462)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】