溶液プロセスによる電解質をベースにした電解デバイス
【課題】溶液プロセスによる電解質をベースにした電解デバイス。
【解決手段】本開示は、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層と、第一および第二金属層とを含む固体電解質デバイスに関する。アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、第一金属層と第二金属層との間に配置される。アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、金属カルコゲニドのヒドラジン・ベースの前駆物質の溶液を得、該溶液を基材上に塗布し、しかる後、前駆物質をアニールして該前駆物質をアモルファス金属カルコゲニドに変換することによって調製される。また、本開示は、固体電解質デバイスを作製するプロセスにも関する。
【解決手段】本開示は、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層と、第一および第二金属層とを含む固体電解質デバイスに関する。アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、第一金属層と第二金属層との間に配置される。アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、金属カルコゲニドのヒドラジン・ベースの前駆物質の溶液を得、該溶液を基材上に塗布し、しかる後、前駆物質をアニールして該前駆物質をアモルファス金属カルコゲニドに変換することによって調製される。また、本開示は、固体電解質デバイスを作製するプロセスにも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は改良型の電解デバイスに関する。具体的には、本開示によれば、比較的に高スループット/低温の溶液堆積法によって得られる高品質のアモルファス金属または半金属カルコゲニド膜が、固体電解デバイス中の活性電解層として用いられる。さらに、本開示は固体電解デバイスを作製するプロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解デバイスにおいて、固体電解デバイス材料は、一般にAg、Cu、Zn、またはLiでドープされたアモルファス・カルコゲニド(最も典型的には、GeS2、GeSe2、As2S3、As2Se3)から成り、これらは、イオン(Ag+、Cu+、Zn2+、Li+など)の優れた伝導体のように振舞う。該アモルファス・カルコゲニドは、二元組成のもの(GeS2−x、GeSe2−x、As2S3、As2Se3など)とすることも、あるいは、これに3つ以上の元素を包含させること(Ge1−xSnxS2−ySey、GeSbxSy,As2−xSbxS3−ySey、GeSe2−yTeyなど)もできる。アモルファス・カルコゲニドのドーピングは、金属または半金属と共堆積するか、あるいは先に堆積したアモルファス・カルコゲニド中に、金属または半金属を電気/熱またはUV拡散して得ることができる。通常、UV拡散は好適な技法であり、材料中に飽和した均一なドーパント濃度を有する系が得られる(出発物質の化学量論組成の如何による)。未ドープおよびドープされたカルコゲニドの両方とも非常に高い抵抗値を有する(典型的には、30×30×30nm立方で>1ギガオーム)。
【0003】
かかるドープされたアモルファス・カルコゲニド材料を、一つが反応性金属(すなわち、ドーパントのAg、Cu、Zn、Liを包含する:以降、陽極という)であり他方が不活性材料(例、W、TiN、TaN、Al、Niなど:以降、陰極という)である2つの金属の間に挟むとこのとき以下の電気的効果がもたらされる。
【0004】
(a)小さな正バイアスを印加すると(バイアスは陽極に印加)、イオンが陽極および固体電解材料から陰極に向けて拡散し、陰極から発端し陽極に向かって増進する導電性の「金属の」フィラメントが形成されると考えられる。これは、印加されたバイアスが、該形成のための「閾値」電圧よりも大きければ発生する(この電圧は、材料および底面電極の如何によるが、一般には0Vから1.0Vの間である)。フィラメントが完全に形成されると2つの電極の間は短絡することになる。これにより非常に低い抵抗状態がもたらされる(通常<1Mオーム)。この導電性フィラメントは、印加バイアスを取り去った後でもある期間残存する。形成されたフィラメントは、一般論的には恒久的なものであるが(バイアス印加なしに)電解質中に再拡散する性向があり、時間経過とともに(高温ではより速く)オン(印加)状態抵抗率が増加する。通常、このオン抵抗はプログラミング過程の定常電流の関数であり、Ron=Vth/Ionとなる。Vthは電解析出閾値である(これは通常は形成のための閾値電圧よりも低い)。典型的なプログラミング時間は、50〜100nsかそれより高速であるが、アモルファス・カルコゲニドの堆積方法を含め、さまざまなファクタの如何によっては、これよりずっと遅くなることがある。
【0005】
(b)負バイアスが陽極に印加されると(且つ導電フィラメントが既に存在すると)、イオンは、導電フィラメントから放出され、固体電解質中にそして最終的には陽極に戻る。この金属のフィラメントが破断されると高抵抗が生ずることになる。通常、時間<100ns内に、金属フィラメント全体が消去され、極めて高い抵抗が得られる。
【0006】
このデバイス特性が図1に示されている。図1は、Ag−Ge−Sデバイスの電解デバイス特性を図示している。非常に小さな正電圧(Va=0.2V)でデバイスは低抵抗状態に切替わる。Vb=−0.2Vでデバイスは高抵抗状態に切替わる。Va(ターンオン電圧)およびVb(ターンオフ電圧)は、0Vから+/−1Vの範囲にあり、材料および陰極の如何による。固体電解質メモリのオン抵抗は、プログラム電流の関数である(すなわち、Ron=Vth/Ion)。オフ抵抗は、固体電解質の抵抗率とインタフェースの二重層との関数である。このデバイスは、不活性電極と被酸化性電極との間に細い金属のブリッジを形成することによってターン・オン(導通)する。Vthは電解析出閾値であり、Ionはプログラミングに使われるオン電流である(コジッキ(Kozicki)らの「Programmable Metallization Cell Memory based on Ag−Ge−S and Cu−Ge−S」2005年NVMTS抄録83〜89頁を参照)。
【0007】
以下は、固定電解質材料の可能な用途の一部である。
【0008】
(a)メモリ材料としての使用 − 低抵抗状態と高抵抗状態とをそれぞれ1と0として標識することができる(IEEE Trans.Nanotech.4,331(2005)のコジッキ(Kozicki)らの論文、およびJ.Appl.Phys.91,10110(2002)のテラベ(Terabe)らの論文を参照)。
【0009】
(b)ダイオードの材料として − 特に、高電流密度メモリ・エレメント用として。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
通常、アモルファス・カルコゲニド材料は(ドープ型または前ドープ型いずれも)、スパッタリングまたは熱蒸発など真空ベースの技法を使って堆積される。こういった技法は、堆積の前に密閉区間に高度な真空環境を達成することに依存しているので、比較的にコスト高で時間がかかる。さらに、複合ターゲットの選択的スパッタリング、複数の蒸発源に対する蒸発率のバランスを取る必要性、および硫黄の高い蒸気圧からくる硫黄化合物を真空蒸着する別の難しさなどの影響により、組成制御を達成するのが困難なことがある。最後に、指向性スパッタリング技法では、複雑な表面(すなわち、ビアおよび溝を包含するもの)に対する蒸着が問題となる可能性がある。
【0011】
従って、電解デバイス用のアモルファス・カルコゲニド活性層を堆積するための別の方法を開発することが大きく望まれていよう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、これに応じ、第一態様において、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層と、第一金属層と、第二金属層とを含む固体電解質デバイスを提供し、このアモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、第一金属層と第二金属層との間に配置され、該アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、金属カルコゲニドの前駆物質または半金属カルコゲニドの前駆物質の溶液を得て、該溶液を基材の上に塗布し、しかる後、前駆物質をアニールして該前駆物質を金属カルコゲニドまたは半金属カルコゲニドに変換して調製される。
【0013】
望ましくは、上記の溶液は、金属カルコゲニドをヒドラジン化合物および随意的に余分のカルコゲンの中に直接に溶解して調製される。
【0014】
望ましくは、上記の溶液は、単離された、金属カルコゲニドのヒドラジン・ベースの前駆物質と、溶剤とを接触させこれらによる溶液を形成することによって調製される。
【0015】
望ましくは、上記の溶液は、金属カルコゲニドの対応金属を、金属カルコゲニドの形成と溶液中への溶解とを促進するために少なくとも十分なカルコゲンを加えたヒドラジン化合物中に直接溶解することによって調製される。
【0016】
望ましくは、上記の溶液は、前形成されたヒドラジニウム・ベースの前駆物質を、非ヒドラジン・ベースの溶剤中に溶解して調製される。
【0017】
望ましくは、上記の溶液は、金属カルコゲニドとアミンの塩とを接触させ、金属カルコゲニドのアンモニウム・ベースの前駆物質を生成し、次に、該物質を、ヒドラジン化合物および随意的に元素カルコゲンに接触させて調製される。
【0018】
望ましくは、上記の溶液は、スピン被覆、ディップ被覆、ドクタ・ブレード法、ドロップ・キャスティング、スタンピング、および印刷、から成る群から選択されたプロセスを使って塗布される。
【0019】
望ましくは、アニールは、約50℃から約400℃の温度で実施される。
【0020】
望ましくは、アニールは、約100℃から約350℃の温度で実施される。
【0021】
望ましくは、アニールは、約0.2時間から約6時間の間実施される。
【0022】
望ましくは、アニールは、ホットプレート、オーブン/炉、レーザ・アニール、またはマイクロウエーブを用いて実施される。
【0023】
望ましくは、固体電解質デバイスは、第一金属層と第二金属層との間に位置するビア、を有する層間誘電体をさらに含む柱状セル型であって、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は該層間誘電体中のビアの中に配置される。
【0024】
望ましくは、固体電解質デバイスは、第一金属層と第二金属層との間に位置する金属導体で満たされたビア、を有する層間誘電体をさらに含む、マッシュルーム・セル型であって、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は層間誘電体の上部に配置される。
【0025】
望ましくは、固体電解質デバイスは、第一金属層と第二金属層との間に位置するビア、を有する層間誘電体をさらに含む細孔セル型であって、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層はビアの中と層間誘電体の上部とに配置される。
【0026】
望ましくは、固体電解質デバイスは、アモルファス・カルコゲニド固体電解層の下に配置された埋め込み金属導通部を有する層間誘電体をさらに含み、上記の埋め込み金属導通部は第一金属の層を含む。
【0027】
望ましくは、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層はドーパントを含む。
【0028】
望ましくは、該ドーパントは、Ag、Cu、Zn、およびLiから成る群から選択された少なくとも一つの部材である。
【0029】
望ましくは、カルコゲニドの金属または半金属の構成材は、錫、ゲルマニウム、鉛、インジウム、アンチモン、水銀、ガリウム、タリウム、カリウム、銅、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、タングステン、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、ニオブ、およびこれらの組合せから成る群から選択され、カルコゲンは、S、Se、Te、およびこれらの組合せから成る群から選択される。
【0030】
第二態様において、固体電解質デバイスを作製する方法が提供され、該方法は、金属カルコゲニドの前駆物質の溶液を調製する工程と、該溶液を基材に塗布する工程と、しかる後、該前駆物質をアニールし該前駆物質をアモルファス金属カルコゲニド層に変換する工程と、第一金属層および第二金属層を形成する工程とを含み、該アモルファス金属カルコゲニドは第一金属層と第二金属層との間に配置される。
【0031】
望ましくは、上記の溶液は、金属カルコゲニドを、ヒドラジン化合物および随意的に余分のカルコゲン中に直接に溶解して調製される。
【0032】
望ましくは、上記の溶液は、単離された、金属カルコゲニドのヒドラジン・ベースの前駆物質と、溶剤とを接触させそれらの溶液を形成することによって調製される。
【0033】
望ましくは、上記の溶液は、金属カルコゲニドの対応金属を、金属カルコゲニドの形成と溶液中への溶解とを促進するために少なくとも十分なカルコゲンを加えたヒドラジン化合物中に直接溶解することによって調製される。
【0034】
望ましくは、上記の溶液は、前形成されたヒドラジニウム・ベースの前駆物質を、非ヒドラジン・ベースの溶剤中に溶解して調製される。
【0035】
望ましくは、上記の溶液は、金属カルコゲニドとアミンの塩とを接触させ、金属カルコゲニドのアンモニウム・ベースの前駆物質を生成し、次に、該物質をヒドラジン化合物および随意的に元素カルコゲンに接触させて調製される。
【0036】
望ましくは、上記の溶液は、スピン被覆、ディップ被覆、ドクタ・ブレード法、ドロップ・キャスティング、スタンピング、および印刷から成る群から選択されたプロセスを使って塗布される。
【0037】
望ましくは、アニールは、約50℃から約400℃の温度で実施される。
【0038】
望ましくは、アニールは、約100℃から約350℃の温度で実施される。
【0039】
望ましくは、アニールは、約0.2時間から約6時間の間実施される。
【0040】
望ましくは、アニールは、ホットプレート、オーブン/炉、レーザ・アニール、またはマイクロウエーブを用いて実施される。
【0041】
望ましくは、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層はドーパントを含む。
【0042】
望ましくは、該ドーパントは、Ag、Cu、Zn、およびLiから成る群から選択された、少なくとも一つの部材である。
【0043】
本開示は、上記により従来技術の懸案事項に対処する。具体的には、本開示によれば、溶液堆積法によって得られた高品質のアモルファス・カルコゲニド膜が固体電解デバイス中の活性電解層として使われる。
【0044】
具体的に、本開示の固体電解デバイスは、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層と、第一金属層と、第二金属層とを含む。アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は第一金属層と第二金属層との間に配置される。
【0045】
該アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、ヒドラジン・ベースの溶液など金属カルコゲニドまたは半金属カルコゲニドの前駆物質の溶液を調製し、該溶液を基材の上に塗布し、しかる後、前駆物質をアニールして該前駆物質をアモルファス金属カルコゲニドまたはアモルファス半金属ベース・カルコゲニドに変換して調製される。本開示の目的の上で、「金属カルコゲニド」という用語は、最も一般的な意味で使用され、金属および金属位置内の半金属(例、Ge)を包含する。
【0046】
また、本開示は固体電解質デバイスを作製するプロセスにも関する。このプロセスは、ヒドラジン・ベースの溶液など金属または半金属カルコゲニドの前駆物質の溶液を調製する工程と、該溶液を基材に塗布する工程と、しかる後、前駆物質をアニールし該前駆物質をアモルファス金属または半金属カルコゲニド層に変換する工程と、第一金属層および第二金属層を形成する工程とを含み、アモルファス金属または半金属カルコゲニドは、第一金属層と第二金属層との間に配置される。
【0047】
次いで、単に例示としての添付の図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】Ag−Ge−Sデバイスの電解デバイス特性を示す。
【図2】本開示の固体電解質(PMC(programmable metallization cell)またはプログラム可能メタライゼーション・セル)を用いた柱状セル型の概略図である。
【図3】本開示の、固体電解質(PMC)を用いたマッシュルーム・セル型の概略図である。
【図4】本開示の、固体電解質を用いた細孔セル型の概略図である。
【図5】本開示の、固体電解質を用いたさらなるデバイスの概略図である。
【図6】本開示の方法によって調製された、GeSXの粉末X線回析パターンを表す。
【図7】SiO2(白色の材料)上に調製されたGeS2−x膜(灰色の材料)の断面SEMである。
【図8】SiO2上に調製されたGeS2−x膜の断面SEMである。
【図9】20nmのAgを被覆された2つの膜(UV処理なし)のRBSスペクトルを示す。
【図10】図10(A)および図10(B)を含み、Agを被覆された2つの膜(UV処理あり)のRBSスペクトルを示す。
【図11】Ag上にスピン被覆されたGeS2−x膜の断面SEM像である。
【図12】電解メモリ・セル(逆マッシュルーム型)のデバイス特性を示す。
【図13】別の電解メモリ・セル(逆マッシュルーム型)のデバイス特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本開示は、固体電解デバイス中の活性層として、溶液堆積された高品質のアモルファス金属または半金属カルコゲニド膜を用いた、改良型電解メモリ・デバイスに関する。前述したように、本開示の目的の上で、「金属カルコゲニド」という用語は、最も一般的な意味で使用され、金属および金属位置内の半金属(例、Ge)を包含する。
【0050】
該溶液堆積は、後記で説明するように、ヒドラジン・ベースの溶剤を用いて実現される。本開示の重要な点は、結晶膜でなくアモルファス膜を堆積することである。前述したように、電解デバイスをうまく作製するにはアモルファス膜が必要である。
【0051】
この溶液ベースの堆積プロセスは、以下の3つの工程を必要とする。
1)ヒドラジン・ベースの前駆物質溶液を調製する。
2)該溶液を基材の上に塗布または堆積する。
3)前駆物質をアニールして該前駆物質をアモルファス・カルコゲニド膜に変換する。
【0052】
金属カルコゲニド材料の溶液は、米国特許第6,875,661号および第7,094,651号、並びに、米国特許出願第11/0955,976号および第11/432,484号、並びに、米国特許出願公開第2005−0009225号および米国特許出願公開第2005−0158909号に開示された技法の一つを使って調製することができる。
【0053】
通常、該プロセスには、金属または半金属カルコゲニドを、室温近くで、随意的に溶解性を向上させるため余分のカルコゲンを加えたヒドラジン(またはヒドラジン類似の溶剤)などの溶剤に溶解する工程が必要である。典型的なヒドラジン化合物は式:
R1R2N-NR3R4
で表され、この式のR1、R2、R3、およびR4の各々は、それぞれ独立した、水素、フェニルなどのアリール、メチルおよびエチルなどの1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル、または3〜6個の炭素原子を有する環状アルキルである。最も典型的な溶剤はヒドラジンである。本開示はヒドラジンの使用に限定されるものでなく、以下に限らないが、1,1−ジメチルヒドラジンおよびメチルヒドラジンなど上記に開示したヒドラジン類似の溶剤、または、ヒドラジン類似の溶剤と、以下に限らないが、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、およびN,N−ジメチルホルムアミドを含む他の溶剤との混合剤などを含め、他の溶剤を使って本開示を用いることもできる。但し、例えば、ナトリウム、カリウム、および他のアルカリ金属など、特定の高反応性の金属に対しては、溶剤は無水であることが望ましい。
【0054】
また、米国特許出願第11/432,484号に記載されているように、該溶液は、カルコゲニドの対応金属または半金属を、金属カルコゲニドの形成と、溶液中への溶解とを促進するため少なくとも十分なカルコゲンを加えたヒドラジンに直接溶解することによっても調製できる。これに換えて、該溶液は、米国特許第7,094,651号に記載されているように、前形成されたヒドラジニウム・ベースの前駆物質を、エタノールアミンとジメチルスルホキシド(DMSO)との混合剤など非ヒドラジン・ベースの溶剤中に溶解して形成することもできる。他の溶剤の例として、n−ブチルアミン、n−プロピルアミン、ジエタノールアミン、アルコール類、水、ジメチルホルムアミド(DMF)およびこれらの混合剤がある。他の溶剤については、Adv.Mater.17、1285(2005)のミツィー(Mitzi)らの論文も参照。
【0055】
該溶液を調製する別の方法では、最初にカルコゲニドとアミンとが接触させられてアンモニウム・ベースの金属カルコゲニドの前駆物質が生成され、次いで、これが、ヒドラジン化合物、および随意的に元素カルコゲンと接触させられる。この方法は、
少なくとも一つの金属カルコゲニドと、H2S、H2Se、またはH2Teを有するアミン化合物の塩と、を接触させて金属カルコゲニドのアンモニウム・ベースの前駆物質を生成する工程であって、該アミン化合物は、式:
NR5R6R7
で表され、この式のR5、R6、およびR7の各々は、それぞれ独立した、水素、フェニルなどのアリール、メチルおよびエチルなど1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル、または3〜6個の炭素原子を有する環状アルキルである、該工程と、
上記金属カルコゲニドのアンモニウム・ベースの前駆物質を、式:
R1R2N−NR3R4
で表されるヒドラジン化合物と接触させて、ヒドラジン化合物中に金属または半金属カルコゲニドのヒドラジニウム・ベースの前駆物質が含まれる溶液を生成する工程であって、この式のR1、R2、R3、およびR4の各々は、それぞれ独立した、水素、フェニルなどのアリール、メチルやエチルなどの1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル、または3〜6個の炭素原子を有する環状アルキル、および随意的に、S、Se、Teなどの元素カルコゲンまたはこれらの組合せである、該工程と、
を含む。
【0056】
典型的には、上記アミン化合物は、NH3、CH3NH2、CH3CH2NH2、CH3CH2CH2NH2、(CH3)2CHNH2、CH3CH2CH2CH2NH2、フェネチルアミン、2−フルオロフェネチルアミン、2−クロロフェネチルアミン、2−ブロモフェネチルアミン、3−フルオロフェネチルアミン、3−クロロフェネチルアミン、3−ブロモフェネチルアミン、4−ブロモフェネチルアミン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェネチルアミン、またはこれらの組合せである。
【0057】
金属カルコゲニドに適した金属の例には、錫、ゲルマニウム、鉛、インジウム、アンチモン、水銀、ガリウム、タリウム、カリウム、銅、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、タングステン、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、ニオブ、またはこれらの組合せを含む、遷移または非遷移の金属または半金属がある。カルコゲンは、典型的にはS、Se、Teまたはこれらの組合せである。
【0058】
ヒドラジン化合物中の金属カルコゲニド前駆物質の濃度は、典型的には約10モル以下であり、さらに典型的には0.01モルから約10モルの間であり、さらになお典型的には、約0.05から約5モル、あるいは約0.05から約1モルの間である。
【0059】
一つの実施形態において、金属カルコゲニドは、MX,MX2またはM2X3の式で表すことができ、これらの式のMは、カリウム、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、ビスマス、ガリウム、およびインジウムなどの主族ないし非遷移の金属または半金属であるか、もしくは、銅、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、タングステン、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、ニオビウムまたはこれらの組合せなどの遷移金属であり、Xは、S、Se、Teなどのカルコゲンまたはこれらの組合せである。
【0060】
別の実施形態において、金属カルコゲニドは、MXまたはM2X3の式で表すことができ、Mは、ランタン、あるいは、ランタン、イットリウム、ガドリニウム、ネオジムまたはこれらの組合せなどのランタニド金属であり、Xは、S、Se、Teなどのカルコゲンまたはこれらの組合せである。
【0061】
さらに別の実施形態において、金属カルコゲニドは、M2Xの式で表すことができ、Mは、CuまたはKなどの金属であり、Xは、S、Se、Teなどのカルコゲンまたはこれらの組合せである。
【0062】
ヒドラジン・ベースの前駆物質は、金属または半金属カルコゲニドのアニオンとヒドラジニウムのカチオンとから成るイオン性固体、あるいは、共有結合したヒドラジン分子を有する伸張金属カルコゲニド骨格から成るもっと共有結合性の高い化合物のいずれかとすることができる。イオン性前駆物質の例として、(N2H5)4Sn2S6、(N2H4)3(N2H5)4Sn2Se6、および(N2H5)4Ge2Se6があり、これらの各々は、ヒドラジニウム・カチオンで分離された、辺共有MX44−(M=SnまたはGe;X=SまたはSe)四面体の二量体から成る。共有結合前駆物質の例として(N2H4)2ZnTeがある。
【0063】
上記で開示のようにして調製された溶液を使って、金属または半金属カルコゲニド前駆物質膜が基材の上に堆積される。膜堆積に適した基材には、シリコン、水晶、ガラス、サファイア、金属、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム、ゲルマニウム、シリコン・ゲルマニウム、インジウムスズ酸化物、アルミナ(Al2O3)、およびプラスチック(例、カプトン、ポリカーボネート)が含まれる。
【0064】
この基材は剛体または柔軟体とすることができる。スピン被覆、スタンピング、ディップ被覆、ドクタ・ブレード法、ドロップ・キャスティング、または印刷などの高スループットの技法を使って、基材に溶液が塗布され、溶剤が気化されて前駆物質の薄膜に変形される。一部の溶液処理技法(例、印刷、スタンピング)では、膜堆積とパターニングとを同時に行うことが可能である。この工程におけるキー・ポイントは、選択された溶剤が準備された基材を適切に濡らすことであり(例、酸化シリコンの表面は、使われる溶剤の性質に応じて、濡れ性を向上するために親水性あるいは疎水性に調製することができる)、これにより、乾燥後に均一な膜がうまく形成できるようにする。
【0065】
基材は、通常汚染がないことが望ましく、洗浄または前表面処理あるいはその両方によって溶液堆積に対する準備をすることができる。洗浄は、エタノール、メタノールまたはアセトンなど各種の溶剤中で超音波処理することによって、または、硫酸/過酸化水素(ピラニア液)または水酸化アンモニウム溶液などの各種の洗浄液中で加熱することによって、あるいはその両方を行うことによって実施できる。また、この洗浄は、UV−オゾンまたは酸素プラズマ処理を使っても実施することができる。
【0066】
低温熱処理を使って、基材上に得られた金属カルコゲニド前駆物質膜を分解し、金属カルコゲニド・アモルファス膜の形成を得る。前駆物質膜が被覆された基材は、これをホット・プレート上、または、窒素、フォーミング・ガス、またはアルゴンなどの適切な不活性ガスの雰囲気の下で、箱型または円筒型炉の中に置いて加熱することができる。これに換えて、レーザ・ベースのまたはマイクロウェーブ・ベースのアニールによって、はるかに高速な処理で加熱を実施することもできる。加熱は、ヒドラジン・ベースの前駆物質が、目的の金属カルコゲニドに完全に分解することができるのに十分な高さの温度と十分な長さの時間で、だが、実質的な結晶化を生じさせないのに十分な低さの温度と十分な短さの時間で実施される。望ましくは、該加熱は、約100から約400℃、さらに典型的には約100から約350℃の温度で、約0.2から約60分の時間長の間実施される。さらに、金属カルコゲニドを選択することによって、アモルファス膜の形成を促進することができる。アモルファス膜を得るため使われる具体的な温度は、カルコゲニド前駆物質の如何により、当業者は、本開示に照らしながら過度な実験をすることなく算定することができよう。例えば、軽金属または軽半金属をベースにした金属または半金属カルコゲニドは、結晶化する性向が小さく、従って、アモルファス膜を維持しながら、所定範囲内のより高めの温度を用いることができる。
【0067】
溶液ベースの技法は、スピン被覆、ディップ被覆、ドクタ・ブレード法、インクジェット印刷、スタンピングなどを含め、高スループットでの膜堆積に利用可能な広い選択肢があるため特に魅力がある。これらの技法は、潜在的に低コスト、高スループットの技法である利点を有し、容易にロールツーロール処理に対応できる。本開示以前は、活性層は、通常、スパッタリングまたは蒸着などもっと低速でコスト高な真空ベースの技法を使って堆積されていた。
【0068】
本プロセスの利点は、真空状態や特殊化されたCVD反応装置の必要がなく、電解デバイスに使われるアモルファス金属カルコゲニド膜の、潜在的に低コストで非常に高スループットの堆積を可能にすることにある。また、溶液プロセス技法は比較的に低温のプロセスであり、カプトンおよび他のポリイミドベースのプラスチックなど、高温柔軟性のプラスチック基材材料の選択に対応が可能である。さらに、溶液プロセスは、基材上のビアおよび溝を充填するための自然なメカニズムを提供するが、こういった充填は、スパッタリングなどもっと指向性の高い堆積技法を使って実現するのが困難なことが多い(2006年11月3日に出願された、米国特許出願第11/556,385号、名称「Method for Filling Holes with Metal Chalcogenides」を参照)。最後に、溶液プロセス・メカニズムは、アモルファス金属カルコゲニド層のドーピングの便利な手段を提供する。というのは、溶液プロセスの前に、対応するドーパント金属をターゲット先の金属カルコゲニドと一緒に溶液中に溶解しておくことができるからである(すなわち、UV拡散の必要がない)。
【0069】
溶液プロセスによる固体電解質(SE:solid electrolyte)層(上記による堆積)を用いることのできる代表的な電解デバイスの構造の例が、図2〜5に概略的に示されている。例えば、図2は、柱状セル型を示す。この構造は、多くのシーケンスを使って作製することができ、その一つを以下に説明する。
【0070】
(a)底面電極が、直接に、あるいはダマシン・プロセスを介して、堆積され、パターン設定される。底部電極1は、WまたはTiNとして示されているが、これに換えて、TiN/TaN障壁層を有するCuまたはAgまたは他の何らかの金属とすることもできよう。
【0071】
(b)第2の工程は、底面金属上に停留面を有するILD2(inter−level dielectric:層間誘電体)の堆積および形成である。
【0072】
(c)次に、固体電解質が、基材の上にスピン被覆される(スピン被覆の過程で同時ドープされるか、あるいは堆積後に飽和状態にUVドープされる)。図2のPMC(programmable metallization cell:プログラム可能メタライゼーション・セル)3は、溶液プロセスによるアモルファス金属カルコゲニドまたは固体電解質(SE:solid electrolyte)を表す。
【0073】
(d)誘電体上の停留面の材料表面が(例えば、CMPまたは化学機械研磨(chemical mechanical polishing)によって)平坦化される。
【0074】
(e)上面電極4が、標準(従来式のリソ+金属パターン)プロセス、またはダマシン・プロセス(ILD中にパターンを生成し、次にそれらに金属を充填し、該金属を研磨する工程を含む逆プロセスをいう)のいずれかを使って、堆積され、パターン設定される。上面電極4は、任意の適切な障壁層を有するAg/Cu/W/Alまたは他の任意の金属とすることができよう。さらに、全体の堆積方向を反転させることができよう。
【0075】
図3は、マッシュルーム・セル型を示す。この構造は、多くのシーケンスを使って作製することができ、その一つを以下に説明する。
【0076】
(a)底面電極1のパターニングおよび平坦化(灰色領域で表されたILD2とともに)。
【0077】
(b)固体電解質材料3のスピン・オン(スピン被覆の過程においてAg/Cuで同時ドープされるか、あるいは堆積後に飽和状態にUVドープされる)。なお、この場合は、固体電解質3(SEまたはPMCと表す)をパターン設定する必要はない。
【0078】
(c)上面電極4の堆積およびパターニング − 標準またはダマシン・プロセスのいずれかを使用。
【0079】
図4は、細孔セル型を示す。このセルは、PMCは平坦化されるがその平坦化作業が酸化物上でなくそれより手前で停止することを除き、柱状セルが(図2)に非常に類似している。なお、この構造においては、(図2と同様)SE(またはPMC)の堆積過程でビアまたは溝を充填する必要がある。
【0080】
図5はさらなる実施形態を示す。この実施形態では、固体電解質材料3は平面形であり、金属群1と4との2つの層(一つは上側、一つは下側で両方ともパターン設定されている)の間に堆積される。底部層は、埋め込みの金属1(例えば、W、Cu、TiNとすることができ、黒色で表されている)を有するILD2(酸化物、窒化物、または低誘電率材料することができ、灰色で表されている)から成る。固体電解質3は、パターン設定されることもされないこともある。理想的には、固体電解質3は連続一体の層である。しかし、パターニングをして、隣接するセルの間の干渉を低減する一助とすることができる。
【0081】
メモリ加工(揮発性および不揮発性の双方)の密度を増大するために、クロスポイント設計は、一つの望ましい選択肢である。かかる最適化設計においては、ワード線およびビット線(以降、メモリ線という)を最小ピッチで相互垂直方向に走らせる。記憶エレメントは、これら相互垂直方向の線に挟まれて配置される。可能な2つの設計が存在する。
【0082】
(a)メモリ線がサブリソグラフィのピッチで走る、ナノクロスバ設計。これは、メモリ・セルの面積を4F2から4Fs2に減少させる。2Fsがナノスケールのピッチである。通常Fs<<Fであり、Fはリソグラフのピッチである。これらのサブリソグラフィ特性を、リソグラフィ的に定義されたワード線およびビット線のドライバ/デコーダ回路に、どのようにしてインタフェースするかを述べた開示が、サウンダララジャン(Soundararajan)名義で2007年2月18日に出願され、本出願の譲受人であるインターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション(International Business Machines Corporation)に譲渡された、米国特許出願第11/679,785号に記載されている。
【0083】
(b)メモリ線はリソグラフィ的ピッチで走るが、メモリが多重層になっている3D設計。実効セル・サイズは、4F2/nに減少し、このnは3Dの層の数(n≧1)である。
【0084】
両方の場合とも、メモリ線の交差点に、メモリ・エレメントおよびダイオードの2つのデバイス構成要素が必要である。本明細書に記載する、溶液プロセスによる固体電解質材料は、これら構成要素の両方として用いることができる。すなわち、ある実施形態においては、これをメモリ・エレメントとして使用することができ、別のある実施形態においてはダイオードとして使うことができる。
【0085】
(a)データ/情報を格納するため使用されるメモリ・エレメント。これについては(例えば、相変化メモリ、MRAM、固体電解質メモリ、およびFeRAMなどを含め)多くの選択肢がある。本開示の場合は、溶液プロセスによるアモルファス金属カルコゲニドをベースとする固体電解質材料の使用について述べている。
【0086】
(b)どのクロスポイントにもトランジスタが存在しないので、整流が可能なデバイスも必要となる(非線形特性のもの)。これにより、選択されていないワード線およびビット線に位置するセルが、何かの具合でプログラムされたり、相互短絡されたりしないことを確実にする。
【0087】
溶液プロセスによるアモルファス金属カルコゲニドを活性層として用いる改良型電解デバイス構造の、いくつかの代表的例を具体的に示してきたが、当業者は、他の多くの例を構想することができよう。それらも本開示の範囲内に含まれる。
【0088】
本開示をさらに説明するため、以下に限定されない事例を提示する。
【0089】
アモルファス流化ゲルマニウム(IV)、GeS2−xは、容易にガラスを形成し、得られたガラスが結晶化に関して安定的なので、電解セル中での使用のための主要候補の一つである。さらに、この材料の膜の中には、金属(例、Ag、Cu、Li)を容易に拡散できる。本開示の第一の例証として、GeS2−xの膜が溶液から堆積され特性付けられる。この場合、金属カルコゲニド膜は、スピン被覆で堆積されことになるが、スタンピング、印刷、ディップ被覆、またはドクタ・ブレード法など、他の溶液ベースの技法を使ってこれを堆積することもできよう。なお、本明細書で流化ゲルマニウム(IV)をGeS2−xと記しているのは、この系で、硫黄の化学量論的な多少の調整が可能な範囲があるという事実を反映するためである。
【0090】
GeS2の溶液は、0.164gのGeS2(1.2mモル)を受入状態の無水ヒドラジン(98%)4.8mL中に溶解して生成される。反応および得られた溶液は、不活性雰囲気(例、窒素またはアルゴン)中で維持される。この溶解は、室温では比較的速く、清澄で基本的には無色の溶液を生成するのに、攪拌しながら<0.5時間が必要である。該溶液は、スピン被覆処理のため基材上に投与される過程で、0.2μmのシリンジ・フィルタを通してろ過される。また、該溶剤の一部は、ガラス・スライド上に蒸着され、窒素下350℃で1/2時間までの間分解され、X線回析(図6)に示されるようなアモルファス材料が生成される。これは、ヒドラジン・ベースの前駆物質から、少なくとも350℃までの温度でアニールされて調製されたGeSx材料の、一般的にアモルファスな性質を実証している。
【0091】
図6は、硫化ゲルマニウム前駆物質溶液をガラス・スライド上に蒸着させ、しかる後、(不活性雰囲気中の)ホット・プレート上で350℃の温度で該前駆物質を分解することによって形成されたGeSx堆積の粉末X線回析パターンを表す。該堆積のアモルファスな性質は、回析パターン中に鋭角的X線ピークがないことで示されている。
【実施例1】
【0092】
Si/SiO2上のGeS2
GeS2前駆物質の膜は、スピン被覆技法と上記の溶液とを使って、清浄な熱酸化シリコン基材上に容易に堆積される。各基材は、最初に石鹸ブラシ洗浄を行い、次に、エタノール中とジクロロメタン中とで連続的に超音波洗浄し、最後にピラニア洗浄(過酸化水素:硫酸)を用い、脱イオン(DI:deionized)水でリンスして、前洗浄される。GeS2前駆物質の薄膜は、前述のGeS2溶液を基材の上に2〜3滴たらし、約10秒間ほど溶液が基材の上に拡がるのを待ち、該基材を、窒素を充満させたドライボックス中で、2000rpmで約2分間スピンすることによって形成される。
【0093】
得られた前駆物質膜は、不活性雰囲気中で、100℃のホット・プレート上で約5分間乾燥され、次に、同じホット・プレート上で約10分間、250℃の分解加熱処理をされる(1/2時間かけて徐々にこの温度に加熱する)。後者の分解加熱処理により、アモルファスGeS2の薄膜が生成される。膜の厚さは、溶液濃度と堆積過程のスピン速度とを選ぶことにより制御することができる。スピン被覆溶液に余分なSを加えることによって、溶液の特性および膜の化学量論組成に対するさらなる制御を得ることができる。上記の条件を用いて、膜の厚さおよび組成が以下のように実現される(ラザフォード後方散乱分光法−RBS:Rutherford Backscattering Spectroscopyを用いて測定)。
【0094】
膜 [Ge]% [S]% 厚さ(Å)
A 42.7 ±0.5 57.3 ±0.5 261 ±20
B 34.7 ±0.5 65.3 ±0.5 349 ±20
C 34.2 ±0.5 65.8 ±0.5 389 ±20
D 33.7 ±0.5 66.3 ±0.5 400 ±20
【0095】
以下に、得られた膜の、いくつかの代表的断面SEM(scanning electron microscope:走査型電子顕微鏡)像を示す。
【0096】
図7は、SiO2(白色部分の材料)上に調製されたGeS2−x膜(灰色部分の材料)の断面SEMである。底面部はSiである。
【0097】
図8は、SiO2(白色部分の材料)上に調製されたGeS2−x膜(灰色部分の材料)の断面SEMである。底面部はSiである。
【0098】
2つの代表的膜(膜AおよびC)の上面には、Agが堆積(約20nm)されている。得られたコンポジット膜のRBSから、以下のRBSスペクトルが得られる。
【0099】
図9は、20nmのAgを被覆された2つの膜(AおよびC)に対するRBSスペクトルを示す。2.05MeVあたりに中心を持つ大きなピークは、Agに対応するものであり、約1.9MeVのピークはGeに対応し、約1.6MeVのピークはSに対応する。
【0100】
なお、Agが堆積される前は一般的な化学量論組成のGeS2であった膜Cは、Ag堆積後はもっと非対称的なRBSピークを見せており、Agの上側層とGeS2―X下地膜との間の相互作用を表している。矢印(図9)は、相互作用を指し示しており、これはGeピークに対するよりもAgおよびSのピークに対してより顕著なように見える。これは、SはAgカチオンとだけ反応しており、Geはより「傍観者的」であることを示している可能性がある。このことは、[S]濃度がより高い膜Cだけが、Ag上側層と実質的に反応しているという事実とも整合している。
【0101】
RBS分析の後、該2つの膜は次いでUV曝露にさらされる。この曝露は、窒素環境中で7mW/cm2の処理(OAI(R)パワー・メータの253.7nm検出ヘッドを使って測定)を15分間隔で連続3回行うことから成る。従って、曝露合計は、18,900mJ/cm2となる。図10で明らかなように、膜Cは、UV処理過程でAgと大きく相互作用し、一方、膜Aは、曝露の結果として実質的な変化はない。膜Cについては、UV処理により、約30%のAgのGeS2−x膜全体への均一な拡散がもたらされた。これらのデータは、まさしく膜の化学量論組成が、溶液プロセスによるアモルファスGeS2−x膜中へのAgの拡散能力に実質的な影響を与え得ることを示唆している。電解デバイスの動作のために金属の拡散が決定的な重要性を持つことを考えれば、(前述したように)膜の化学量論組成の制御は、作動性のよい最適化されたデバイス形成のため重要であるといえよう。
【0102】
図10は、20nmのAgを被覆された2つの膜のRBSスペクトルを示す。実線のカーブはAgが堆積されたばかりの膜(図9と同じ)に対応し、点線はUV処理されたものである。
【0103】
実施例1で説明したドープ済みおよび未ドープのGeS2膜は、前述したデバイスの構成形状のいずれにも使うことができよう。
【実施例2】
【0104】
Ag被覆されたSi/SiO2上のGeS2およびデバイスの結果
GeS2の溶液は、0.055gのGeS2(0.4mモル)を1.6mLの無水ヒドラジンに溶解して生成される(実施例1と同じ濃度)。該溶液は、この実施例では使用される前に約4週間保管される。反応および得られた溶液は、不活性雰囲気(例、窒素またはアルゴン)中に維持される。該溶液は、スピン被覆処理のため基材上に投与される過程で、0.2μmのシリンジ・フィルタを通してろ過される。
【0105】
GeS2前駆物質の膜は、スピン被覆技法と上記の溶液とを使って、Ag被覆された(約200nm、電子ビーム蒸着で堆積)p+シリコン基材上に容易に堆積される。Ag被覆され各基材は、スピン被覆される前に、水酸化アンモニウム/水混合液で約10分洗浄され、DI水でリンスされ、圧縮空気で吹きつけ乾燥される。GeS2前駆物質の薄膜は、上記のGeS2溶液を基材の上に2〜3滴たらし、約10秒間ほど溶液が基材の上に拡がるのを待ち、該基材を、窒素を充満させたドライボックス中で、2000rpmで約2分間スピンすることによって形成される。
【0106】
得られた前駆物質膜は、不活性雰囲気中で、120℃のホット・プレート上で5分間乾燥され、次に、(徐々の加熱でなく前もって熱された)同じホット・プレート上で10分間、260℃の分解加熱処理される。後者の分解加熱処理により、Agの下被覆層を有するアモルファスGeS2の薄膜が生成される(図11の断面SEMを参照)。膜の厚さは、溶液濃度と堆積過程のスピン速度とを選ぶことにより制御することができる。上記の条件を用いて、約36nm膜厚、および、RBSからの算定で、約1.75の[S]/[Ge]比率(すなわち、理想的なGeS2に対してSがやや不足)が得られる。また一方、実施例1で説明したUV処理されたGeS2膜については、アモルファス・カルコゲニド膜中に、かなりの濃度のAg(>30%:相対的に薄い金属カルコゲニド層に下にある厚いAg層のため、RBSデータからこれより精度のあるAg含有量を導出するのは困難である)が存在する。これら上記の膜は、UV拡散処理を受けなかったので、そのことは、前駆物質膜からアモルファス・カルコゲニド膜を形成するため行われる分解加熱処理の過程のそのままの条件(すなわち、260℃、20分間の加熱)でAg拡散が行われたということである。該Ag拡散GeS2−x膜は、上記で示したようにさまざまな電解デバイス構造に使用するのに適している。
【0107】
図11は、Ag上にスピン被覆されたGeS2−x膜の断面SEM像である。
【0108】
単純な試験構造体を作製するため、Ag上に得られたAgyGexSz膜を、Wティップ(約10ミクロン×10ミクロンのティップ面積。陰極として機能)を使ってプローブし、逆マッシュルーム型構造がうまく得られた(上記の図3を参照。この場合はAgが底部でWが最上部となる)。隣接するp+シリコン基材を貫通して、Ag陽極へのコンタクトが設けられる。(Wティップで金属カルコゲニド膜を突き抜かないように)注意深くプローブして、典型的な固体電解質デバイスの挙動を示す機能デバイスが調製された(図12および13を図1と比較する)。おそらくは、空気中での作動および比較的に粗い表面に起因して、該デバイスの使用サイクリングに対する耐久性は芳しくないが、これらの結果は、スピン被覆されたアモルファス金属カルコゲニド膜を電解デバイスの活性層として用いる実現可能性を明確に立証している。
【0109】
図12および13は、Ag(陽極)を底部に、スピン被覆されたAgyGexSzを中間に(固体電解質)、Wティップ(陰極)を最上部に有する、2個の電解メモリ・セル(逆マッシュルーム型)のデバイス特性を示す。
【実施例3】
【0110】
Si/SiO2上のCuドープされたGeS2
GeS2の溶液は、0.055gのGeS2(0.4mモル)を1.6mLの実施例2で使ったのと同じ無水ヒドラジンに溶解して生成される。該溶液は、使用の前に24時間保管される。Cu2Sの溶液は、5mLの無水ヒドラジン中の0.159gのCu2S(1mモル)および0.064gのS(2mモル)を約2週間攪拌して調製される。得られた黄色の溶液には、まだ少量の黒色しみが残っており、これは、溶液投与の過程で、0.2μmのシリンジ・フィルタを通してろ過して除去された。スピン被覆用の複合液が、0.4mLのGeS2溶液(0.1mモルのGeS2を含有)を0.25mLのろ過されたCu2S溶液(0.05mモルのCu2Sを含有)と(2分間)攪拌して調製された。全ての処理は、酸素および水分レベルが1ppmより低い、窒素充満のグローブ・ボックス中で行われる。
【0111】
スピン被覆される各基材は、最初に石鹸ブラシ洗浄を行い、次に、エタノール中とジクロロメタン中とで連続的に超音波洗浄し、最後にピラニア洗浄(過酸化水素:硫酸)を用い、脱イオン(DI)水でリンスして、前洗浄される。Ge−Cu−S前駆物質の薄膜は、上記の複合液を基材の上に2〜3滴たらし、約10秒位の間溶液が基材の上に拡がるのを待ち、該基材を、窒素を充満させたドライボックス中で、2000rpmで約2分間スピンすることによって形成される。
【0112】
得られた前駆物質膜は、不活性雰囲気中で、100℃のホット・プレート上で5分間乾燥され、次に、同じホット・プレート(事前に熱されたホット・プレート)上で20分間、300℃の分解加熱処理をされる。後者の分解加熱処理により、金属カルコゲニドの薄膜が生成される。膜の厚さは、溶液濃度と堆積過程のスピン速度とを選ぶことにより制御することができる。上記の条件を用いて、Ge19.1%、Cu28.8%、S52.1%で、24(1)nm厚さ(ラザフォード後方散乱分光法−RBSを用いて測定)の膜組成および膜厚が得られる。得られた膜中のGe−Sに相当量のCuが首尾よく取り込まれ、このことから、ドーパント金属を溶液中に組み入れることによりスピン被覆の過程でドーピング処理が実現できることが立証される(UV処理の必要がない)。
【技術分野】
【0001】
本開示は改良型の電解デバイスに関する。具体的には、本開示によれば、比較的に高スループット/低温の溶液堆積法によって得られる高品質のアモルファス金属または半金属カルコゲニド膜が、固体電解デバイス中の活性電解層として用いられる。さらに、本開示は固体電解デバイスを作製するプロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解デバイスにおいて、固体電解デバイス材料は、一般にAg、Cu、Zn、またはLiでドープされたアモルファス・カルコゲニド(最も典型的には、GeS2、GeSe2、As2S3、As2Se3)から成り、これらは、イオン(Ag+、Cu+、Zn2+、Li+など)の優れた伝導体のように振舞う。該アモルファス・カルコゲニドは、二元組成のもの(GeS2−x、GeSe2−x、As2S3、As2Se3など)とすることも、あるいは、これに3つ以上の元素を包含させること(Ge1−xSnxS2−ySey、GeSbxSy,As2−xSbxS3−ySey、GeSe2−yTeyなど)もできる。アモルファス・カルコゲニドのドーピングは、金属または半金属と共堆積するか、あるいは先に堆積したアモルファス・カルコゲニド中に、金属または半金属を電気/熱またはUV拡散して得ることができる。通常、UV拡散は好適な技法であり、材料中に飽和した均一なドーパント濃度を有する系が得られる(出発物質の化学量論組成の如何による)。未ドープおよびドープされたカルコゲニドの両方とも非常に高い抵抗値を有する(典型的には、30×30×30nm立方で>1ギガオーム)。
【0003】
かかるドープされたアモルファス・カルコゲニド材料を、一つが反応性金属(すなわち、ドーパントのAg、Cu、Zn、Liを包含する:以降、陽極という)であり他方が不活性材料(例、W、TiN、TaN、Al、Niなど:以降、陰極という)である2つの金属の間に挟むとこのとき以下の電気的効果がもたらされる。
【0004】
(a)小さな正バイアスを印加すると(バイアスは陽極に印加)、イオンが陽極および固体電解材料から陰極に向けて拡散し、陰極から発端し陽極に向かって増進する導電性の「金属の」フィラメントが形成されると考えられる。これは、印加されたバイアスが、該形成のための「閾値」電圧よりも大きければ発生する(この電圧は、材料および底面電極の如何によるが、一般には0Vから1.0Vの間である)。フィラメントが完全に形成されると2つの電極の間は短絡することになる。これにより非常に低い抵抗状態がもたらされる(通常<1Mオーム)。この導電性フィラメントは、印加バイアスを取り去った後でもある期間残存する。形成されたフィラメントは、一般論的には恒久的なものであるが(バイアス印加なしに)電解質中に再拡散する性向があり、時間経過とともに(高温ではより速く)オン(印加)状態抵抗率が増加する。通常、このオン抵抗はプログラミング過程の定常電流の関数であり、Ron=Vth/Ionとなる。Vthは電解析出閾値である(これは通常は形成のための閾値電圧よりも低い)。典型的なプログラミング時間は、50〜100nsかそれより高速であるが、アモルファス・カルコゲニドの堆積方法を含め、さまざまなファクタの如何によっては、これよりずっと遅くなることがある。
【0005】
(b)負バイアスが陽極に印加されると(且つ導電フィラメントが既に存在すると)、イオンは、導電フィラメントから放出され、固体電解質中にそして最終的には陽極に戻る。この金属のフィラメントが破断されると高抵抗が生ずることになる。通常、時間<100ns内に、金属フィラメント全体が消去され、極めて高い抵抗が得られる。
【0006】
このデバイス特性が図1に示されている。図1は、Ag−Ge−Sデバイスの電解デバイス特性を図示している。非常に小さな正電圧(Va=0.2V)でデバイスは低抵抗状態に切替わる。Vb=−0.2Vでデバイスは高抵抗状態に切替わる。Va(ターンオン電圧)およびVb(ターンオフ電圧)は、0Vから+/−1Vの範囲にあり、材料および陰極の如何による。固体電解質メモリのオン抵抗は、プログラム電流の関数である(すなわち、Ron=Vth/Ion)。オフ抵抗は、固体電解質の抵抗率とインタフェースの二重層との関数である。このデバイスは、不活性電極と被酸化性電極との間に細い金属のブリッジを形成することによってターン・オン(導通)する。Vthは電解析出閾値であり、Ionはプログラミングに使われるオン電流である(コジッキ(Kozicki)らの「Programmable Metallization Cell Memory based on Ag−Ge−S and Cu−Ge−S」2005年NVMTS抄録83〜89頁を参照)。
【0007】
以下は、固定電解質材料の可能な用途の一部である。
【0008】
(a)メモリ材料としての使用 − 低抵抗状態と高抵抗状態とをそれぞれ1と0として標識することができる(IEEE Trans.Nanotech.4,331(2005)のコジッキ(Kozicki)らの論文、およびJ.Appl.Phys.91,10110(2002)のテラベ(Terabe)らの論文を参照)。
【0009】
(b)ダイオードの材料として − 特に、高電流密度メモリ・エレメント用として。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
通常、アモルファス・カルコゲニド材料は(ドープ型または前ドープ型いずれも)、スパッタリングまたは熱蒸発など真空ベースの技法を使って堆積される。こういった技法は、堆積の前に密閉区間に高度な真空環境を達成することに依存しているので、比較的にコスト高で時間がかかる。さらに、複合ターゲットの選択的スパッタリング、複数の蒸発源に対する蒸発率のバランスを取る必要性、および硫黄の高い蒸気圧からくる硫黄化合物を真空蒸着する別の難しさなどの影響により、組成制御を達成するのが困難なことがある。最後に、指向性スパッタリング技法では、複雑な表面(すなわち、ビアおよび溝を包含するもの)に対する蒸着が問題となる可能性がある。
【0011】
従って、電解デバイス用のアモルファス・カルコゲニド活性層を堆積するための別の方法を開発することが大きく望まれていよう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、これに応じ、第一態様において、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層と、第一金属層と、第二金属層とを含む固体電解質デバイスを提供し、このアモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、第一金属層と第二金属層との間に配置され、該アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、金属カルコゲニドの前駆物質または半金属カルコゲニドの前駆物質の溶液を得て、該溶液を基材の上に塗布し、しかる後、前駆物質をアニールして該前駆物質を金属カルコゲニドまたは半金属カルコゲニドに変換して調製される。
【0013】
望ましくは、上記の溶液は、金属カルコゲニドをヒドラジン化合物および随意的に余分のカルコゲンの中に直接に溶解して調製される。
【0014】
望ましくは、上記の溶液は、単離された、金属カルコゲニドのヒドラジン・ベースの前駆物質と、溶剤とを接触させこれらによる溶液を形成することによって調製される。
【0015】
望ましくは、上記の溶液は、金属カルコゲニドの対応金属を、金属カルコゲニドの形成と溶液中への溶解とを促進するために少なくとも十分なカルコゲンを加えたヒドラジン化合物中に直接溶解することによって調製される。
【0016】
望ましくは、上記の溶液は、前形成されたヒドラジニウム・ベースの前駆物質を、非ヒドラジン・ベースの溶剤中に溶解して調製される。
【0017】
望ましくは、上記の溶液は、金属カルコゲニドとアミンの塩とを接触させ、金属カルコゲニドのアンモニウム・ベースの前駆物質を生成し、次に、該物質を、ヒドラジン化合物および随意的に元素カルコゲンに接触させて調製される。
【0018】
望ましくは、上記の溶液は、スピン被覆、ディップ被覆、ドクタ・ブレード法、ドロップ・キャスティング、スタンピング、および印刷、から成る群から選択されたプロセスを使って塗布される。
【0019】
望ましくは、アニールは、約50℃から約400℃の温度で実施される。
【0020】
望ましくは、アニールは、約100℃から約350℃の温度で実施される。
【0021】
望ましくは、アニールは、約0.2時間から約6時間の間実施される。
【0022】
望ましくは、アニールは、ホットプレート、オーブン/炉、レーザ・アニール、またはマイクロウエーブを用いて実施される。
【0023】
望ましくは、固体電解質デバイスは、第一金属層と第二金属層との間に位置するビア、を有する層間誘電体をさらに含む柱状セル型であって、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は該層間誘電体中のビアの中に配置される。
【0024】
望ましくは、固体電解質デバイスは、第一金属層と第二金属層との間に位置する金属導体で満たされたビア、を有する層間誘電体をさらに含む、マッシュルーム・セル型であって、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は層間誘電体の上部に配置される。
【0025】
望ましくは、固体電解質デバイスは、第一金属層と第二金属層との間に位置するビア、を有する層間誘電体をさらに含む細孔セル型であって、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層はビアの中と層間誘電体の上部とに配置される。
【0026】
望ましくは、固体電解質デバイスは、アモルファス・カルコゲニド固体電解層の下に配置された埋め込み金属導通部を有する層間誘電体をさらに含み、上記の埋め込み金属導通部は第一金属の層を含む。
【0027】
望ましくは、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層はドーパントを含む。
【0028】
望ましくは、該ドーパントは、Ag、Cu、Zn、およびLiから成る群から選択された少なくとも一つの部材である。
【0029】
望ましくは、カルコゲニドの金属または半金属の構成材は、錫、ゲルマニウム、鉛、インジウム、アンチモン、水銀、ガリウム、タリウム、カリウム、銅、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、タングステン、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、ニオブ、およびこれらの組合せから成る群から選択され、カルコゲンは、S、Se、Te、およびこれらの組合せから成る群から選択される。
【0030】
第二態様において、固体電解質デバイスを作製する方法が提供され、該方法は、金属カルコゲニドの前駆物質の溶液を調製する工程と、該溶液を基材に塗布する工程と、しかる後、該前駆物質をアニールし該前駆物質をアモルファス金属カルコゲニド層に変換する工程と、第一金属層および第二金属層を形成する工程とを含み、該アモルファス金属カルコゲニドは第一金属層と第二金属層との間に配置される。
【0031】
望ましくは、上記の溶液は、金属カルコゲニドを、ヒドラジン化合物および随意的に余分のカルコゲン中に直接に溶解して調製される。
【0032】
望ましくは、上記の溶液は、単離された、金属カルコゲニドのヒドラジン・ベースの前駆物質と、溶剤とを接触させそれらの溶液を形成することによって調製される。
【0033】
望ましくは、上記の溶液は、金属カルコゲニドの対応金属を、金属カルコゲニドの形成と溶液中への溶解とを促進するために少なくとも十分なカルコゲンを加えたヒドラジン化合物中に直接溶解することによって調製される。
【0034】
望ましくは、上記の溶液は、前形成されたヒドラジニウム・ベースの前駆物質を、非ヒドラジン・ベースの溶剤中に溶解して調製される。
【0035】
望ましくは、上記の溶液は、金属カルコゲニドとアミンの塩とを接触させ、金属カルコゲニドのアンモニウム・ベースの前駆物質を生成し、次に、該物質をヒドラジン化合物および随意的に元素カルコゲンに接触させて調製される。
【0036】
望ましくは、上記の溶液は、スピン被覆、ディップ被覆、ドクタ・ブレード法、ドロップ・キャスティング、スタンピング、および印刷から成る群から選択されたプロセスを使って塗布される。
【0037】
望ましくは、アニールは、約50℃から約400℃の温度で実施される。
【0038】
望ましくは、アニールは、約100℃から約350℃の温度で実施される。
【0039】
望ましくは、アニールは、約0.2時間から約6時間の間実施される。
【0040】
望ましくは、アニールは、ホットプレート、オーブン/炉、レーザ・アニール、またはマイクロウエーブを用いて実施される。
【0041】
望ましくは、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層はドーパントを含む。
【0042】
望ましくは、該ドーパントは、Ag、Cu、Zn、およびLiから成る群から選択された、少なくとも一つの部材である。
【0043】
本開示は、上記により従来技術の懸案事項に対処する。具体的には、本開示によれば、溶液堆積法によって得られた高品質のアモルファス・カルコゲニド膜が固体電解デバイス中の活性電解層として使われる。
【0044】
具体的に、本開示の固体電解デバイスは、アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層と、第一金属層と、第二金属層とを含む。アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は第一金属層と第二金属層との間に配置される。
【0045】
該アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、ヒドラジン・ベースの溶液など金属カルコゲニドまたは半金属カルコゲニドの前駆物質の溶液を調製し、該溶液を基材の上に塗布し、しかる後、前駆物質をアニールして該前駆物質をアモルファス金属カルコゲニドまたはアモルファス半金属ベース・カルコゲニドに変換して調製される。本開示の目的の上で、「金属カルコゲニド」という用語は、最も一般的な意味で使用され、金属および金属位置内の半金属(例、Ge)を包含する。
【0046】
また、本開示は固体電解質デバイスを作製するプロセスにも関する。このプロセスは、ヒドラジン・ベースの溶液など金属または半金属カルコゲニドの前駆物質の溶液を調製する工程と、該溶液を基材に塗布する工程と、しかる後、前駆物質をアニールし該前駆物質をアモルファス金属または半金属カルコゲニド層に変換する工程と、第一金属層および第二金属層を形成する工程とを含み、アモルファス金属または半金属カルコゲニドは、第一金属層と第二金属層との間に配置される。
【0047】
次いで、単に例示としての添付の図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】Ag−Ge−Sデバイスの電解デバイス特性を示す。
【図2】本開示の固体電解質(PMC(programmable metallization cell)またはプログラム可能メタライゼーション・セル)を用いた柱状セル型の概略図である。
【図3】本開示の、固体電解質(PMC)を用いたマッシュルーム・セル型の概略図である。
【図4】本開示の、固体電解質を用いた細孔セル型の概略図である。
【図5】本開示の、固体電解質を用いたさらなるデバイスの概略図である。
【図6】本開示の方法によって調製された、GeSXの粉末X線回析パターンを表す。
【図7】SiO2(白色の材料)上に調製されたGeS2−x膜(灰色の材料)の断面SEMである。
【図8】SiO2上に調製されたGeS2−x膜の断面SEMである。
【図9】20nmのAgを被覆された2つの膜(UV処理なし)のRBSスペクトルを示す。
【図10】図10(A)および図10(B)を含み、Agを被覆された2つの膜(UV処理あり)のRBSスペクトルを示す。
【図11】Ag上にスピン被覆されたGeS2−x膜の断面SEM像である。
【図12】電解メモリ・セル(逆マッシュルーム型)のデバイス特性を示す。
【図13】別の電解メモリ・セル(逆マッシュルーム型)のデバイス特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本開示は、固体電解デバイス中の活性層として、溶液堆積された高品質のアモルファス金属または半金属カルコゲニド膜を用いた、改良型電解メモリ・デバイスに関する。前述したように、本開示の目的の上で、「金属カルコゲニド」という用語は、最も一般的な意味で使用され、金属および金属位置内の半金属(例、Ge)を包含する。
【0050】
該溶液堆積は、後記で説明するように、ヒドラジン・ベースの溶剤を用いて実現される。本開示の重要な点は、結晶膜でなくアモルファス膜を堆積することである。前述したように、電解デバイスをうまく作製するにはアモルファス膜が必要である。
【0051】
この溶液ベースの堆積プロセスは、以下の3つの工程を必要とする。
1)ヒドラジン・ベースの前駆物質溶液を調製する。
2)該溶液を基材の上に塗布または堆積する。
3)前駆物質をアニールして該前駆物質をアモルファス・カルコゲニド膜に変換する。
【0052】
金属カルコゲニド材料の溶液は、米国特許第6,875,661号および第7,094,651号、並びに、米国特許出願第11/0955,976号および第11/432,484号、並びに、米国特許出願公開第2005−0009225号および米国特許出願公開第2005−0158909号に開示された技法の一つを使って調製することができる。
【0053】
通常、該プロセスには、金属または半金属カルコゲニドを、室温近くで、随意的に溶解性を向上させるため余分のカルコゲンを加えたヒドラジン(またはヒドラジン類似の溶剤)などの溶剤に溶解する工程が必要である。典型的なヒドラジン化合物は式:
R1R2N-NR3R4
で表され、この式のR1、R2、R3、およびR4の各々は、それぞれ独立した、水素、フェニルなどのアリール、メチルおよびエチルなどの1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル、または3〜6個の炭素原子を有する環状アルキルである。最も典型的な溶剤はヒドラジンである。本開示はヒドラジンの使用に限定されるものでなく、以下に限らないが、1,1−ジメチルヒドラジンおよびメチルヒドラジンなど上記に開示したヒドラジン類似の溶剤、または、ヒドラジン類似の溶剤と、以下に限らないが、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、およびN,N−ジメチルホルムアミドを含む他の溶剤との混合剤などを含め、他の溶剤を使って本開示を用いることもできる。但し、例えば、ナトリウム、カリウム、および他のアルカリ金属など、特定の高反応性の金属に対しては、溶剤は無水であることが望ましい。
【0054】
また、米国特許出願第11/432,484号に記載されているように、該溶液は、カルコゲニドの対応金属または半金属を、金属カルコゲニドの形成と、溶液中への溶解とを促進するため少なくとも十分なカルコゲンを加えたヒドラジンに直接溶解することによっても調製できる。これに換えて、該溶液は、米国特許第7,094,651号に記載されているように、前形成されたヒドラジニウム・ベースの前駆物質を、エタノールアミンとジメチルスルホキシド(DMSO)との混合剤など非ヒドラジン・ベースの溶剤中に溶解して形成することもできる。他の溶剤の例として、n−ブチルアミン、n−プロピルアミン、ジエタノールアミン、アルコール類、水、ジメチルホルムアミド(DMF)およびこれらの混合剤がある。他の溶剤については、Adv.Mater.17、1285(2005)のミツィー(Mitzi)らの論文も参照。
【0055】
該溶液を調製する別の方法では、最初にカルコゲニドとアミンとが接触させられてアンモニウム・ベースの金属カルコゲニドの前駆物質が生成され、次いで、これが、ヒドラジン化合物、および随意的に元素カルコゲンと接触させられる。この方法は、
少なくとも一つの金属カルコゲニドと、H2S、H2Se、またはH2Teを有するアミン化合物の塩と、を接触させて金属カルコゲニドのアンモニウム・ベースの前駆物質を生成する工程であって、該アミン化合物は、式:
NR5R6R7
で表され、この式のR5、R6、およびR7の各々は、それぞれ独立した、水素、フェニルなどのアリール、メチルおよびエチルなど1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル、または3〜6個の炭素原子を有する環状アルキルである、該工程と、
上記金属カルコゲニドのアンモニウム・ベースの前駆物質を、式:
R1R2N−NR3R4
で表されるヒドラジン化合物と接触させて、ヒドラジン化合物中に金属または半金属カルコゲニドのヒドラジニウム・ベースの前駆物質が含まれる溶液を生成する工程であって、この式のR1、R2、R3、およびR4の各々は、それぞれ独立した、水素、フェニルなどのアリール、メチルやエチルなどの1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル、または3〜6個の炭素原子を有する環状アルキル、および随意的に、S、Se、Teなどの元素カルコゲンまたはこれらの組合せである、該工程と、
を含む。
【0056】
典型的には、上記アミン化合物は、NH3、CH3NH2、CH3CH2NH2、CH3CH2CH2NH2、(CH3)2CHNH2、CH3CH2CH2CH2NH2、フェネチルアミン、2−フルオロフェネチルアミン、2−クロロフェネチルアミン、2−ブロモフェネチルアミン、3−フルオロフェネチルアミン、3−クロロフェネチルアミン、3−ブロモフェネチルアミン、4−ブロモフェネチルアミン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェネチルアミン、またはこれらの組合せである。
【0057】
金属カルコゲニドに適した金属の例には、錫、ゲルマニウム、鉛、インジウム、アンチモン、水銀、ガリウム、タリウム、カリウム、銅、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、タングステン、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、ニオブ、またはこれらの組合せを含む、遷移または非遷移の金属または半金属がある。カルコゲンは、典型的にはS、Se、Teまたはこれらの組合せである。
【0058】
ヒドラジン化合物中の金属カルコゲニド前駆物質の濃度は、典型的には約10モル以下であり、さらに典型的には0.01モルから約10モルの間であり、さらになお典型的には、約0.05から約5モル、あるいは約0.05から約1モルの間である。
【0059】
一つの実施形態において、金属カルコゲニドは、MX,MX2またはM2X3の式で表すことができ、これらの式のMは、カリウム、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、ビスマス、ガリウム、およびインジウムなどの主族ないし非遷移の金属または半金属であるか、もしくは、銅、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、タングステン、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、ニオビウムまたはこれらの組合せなどの遷移金属であり、Xは、S、Se、Teなどのカルコゲンまたはこれらの組合せである。
【0060】
別の実施形態において、金属カルコゲニドは、MXまたはM2X3の式で表すことができ、Mは、ランタン、あるいは、ランタン、イットリウム、ガドリニウム、ネオジムまたはこれらの組合せなどのランタニド金属であり、Xは、S、Se、Teなどのカルコゲンまたはこれらの組合せである。
【0061】
さらに別の実施形態において、金属カルコゲニドは、M2Xの式で表すことができ、Mは、CuまたはKなどの金属であり、Xは、S、Se、Teなどのカルコゲンまたはこれらの組合せである。
【0062】
ヒドラジン・ベースの前駆物質は、金属または半金属カルコゲニドのアニオンとヒドラジニウムのカチオンとから成るイオン性固体、あるいは、共有結合したヒドラジン分子を有する伸張金属カルコゲニド骨格から成るもっと共有結合性の高い化合物のいずれかとすることができる。イオン性前駆物質の例として、(N2H5)4Sn2S6、(N2H4)3(N2H5)4Sn2Se6、および(N2H5)4Ge2Se6があり、これらの各々は、ヒドラジニウム・カチオンで分離された、辺共有MX44−(M=SnまたはGe;X=SまたはSe)四面体の二量体から成る。共有結合前駆物質の例として(N2H4)2ZnTeがある。
【0063】
上記で開示のようにして調製された溶液を使って、金属または半金属カルコゲニド前駆物質膜が基材の上に堆積される。膜堆積に適した基材には、シリコン、水晶、ガラス、サファイア、金属、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム、ゲルマニウム、シリコン・ゲルマニウム、インジウムスズ酸化物、アルミナ(Al2O3)、およびプラスチック(例、カプトン、ポリカーボネート)が含まれる。
【0064】
この基材は剛体または柔軟体とすることができる。スピン被覆、スタンピング、ディップ被覆、ドクタ・ブレード法、ドロップ・キャスティング、または印刷などの高スループットの技法を使って、基材に溶液が塗布され、溶剤が気化されて前駆物質の薄膜に変形される。一部の溶液処理技法(例、印刷、スタンピング)では、膜堆積とパターニングとを同時に行うことが可能である。この工程におけるキー・ポイントは、選択された溶剤が準備された基材を適切に濡らすことであり(例、酸化シリコンの表面は、使われる溶剤の性質に応じて、濡れ性を向上するために親水性あるいは疎水性に調製することができる)、これにより、乾燥後に均一な膜がうまく形成できるようにする。
【0065】
基材は、通常汚染がないことが望ましく、洗浄または前表面処理あるいはその両方によって溶液堆積に対する準備をすることができる。洗浄は、エタノール、メタノールまたはアセトンなど各種の溶剤中で超音波処理することによって、または、硫酸/過酸化水素(ピラニア液)または水酸化アンモニウム溶液などの各種の洗浄液中で加熱することによって、あるいはその両方を行うことによって実施できる。また、この洗浄は、UV−オゾンまたは酸素プラズマ処理を使っても実施することができる。
【0066】
低温熱処理を使って、基材上に得られた金属カルコゲニド前駆物質膜を分解し、金属カルコゲニド・アモルファス膜の形成を得る。前駆物質膜が被覆された基材は、これをホット・プレート上、または、窒素、フォーミング・ガス、またはアルゴンなどの適切な不活性ガスの雰囲気の下で、箱型または円筒型炉の中に置いて加熱することができる。これに換えて、レーザ・ベースのまたはマイクロウェーブ・ベースのアニールによって、はるかに高速な処理で加熱を実施することもできる。加熱は、ヒドラジン・ベースの前駆物質が、目的の金属カルコゲニドに完全に分解することができるのに十分な高さの温度と十分な長さの時間で、だが、実質的な結晶化を生じさせないのに十分な低さの温度と十分な短さの時間で実施される。望ましくは、該加熱は、約100から約400℃、さらに典型的には約100から約350℃の温度で、約0.2から約60分の時間長の間実施される。さらに、金属カルコゲニドを選択することによって、アモルファス膜の形成を促進することができる。アモルファス膜を得るため使われる具体的な温度は、カルコゲニド前駆物質の如何により、当業者は、本開示に照らしながら過度な実験をすることなく算定することができよう。例えば、軽金属または軽半金属をベースにした金属または半金属カルコゲニドは、結晶化する性向が小さく、従って、アモルファス膜を維持しながら、所定範囲内のより高めの温度を用いることができる。
【0067】
溶液ベースの技法は、スピン被覆、ディップ被覆、ドクタ・ブレード法、インクジェット印刷、スタンピングなどを含め、高スループットでの膜堆積に利用可能な広い選択肢があるため特に魅力がある。これらの技法は、潜在的に低コスト、高スループットの技法である利点を有し、容易にロールツーロール処理に対応できる。本開示以前は、活性層は、通常、スパッタリングまたは蒸着などもっと低速でコスト高な真空ベースの技法を使って堆積されていた。
【0068】
本プロセスの利点は、真空状態や特殊化されたCVD反応装置の必要がなく、電解デバイスに使われるアモルファス金属カルコゲニド膜の、潜在的に低コストで非常に高スループットの堆積を可能にすることにある。また、溶液プロセス技法は比較的に低温のプロセスであり、カプトンおよび他のポリイミドベースのプラスチックなど、高温柔軟性のプラスチック基材材料の選択に対応が可能である。さらに、溶液プロセスは、基材上のビアおよび溝を充填するための自然なメカニズムを提供するが、こういった充填は、スパッタリングなどもっと指向性の高い堆積技法を使って実現するのが困難なことが多い(2006年11月3日に出願された、米国特許出願第11/556,385号、名称「Method for Filling Holes with Metal Chalcogenides」を参照)。最後に、溶液プロセス・メカニズムは、アモルファス金属カルコゲニド層のドーピングの便利な手段を提供する。というのは、溶液プロセスの前に、対応するドーパント金属をターゲット先の金属カルコゲニドと一緒に溶液中に溶解しておくことができるからである(すなわち、UV拡散の必要がない)。
【0069】
溶液プロセスによる固体電解質(SE:solid electrolyte)層(上記による堆積)を用いることのできる代表的な電解デバイスの構造の例が、図2〜5に概略的に示されている。例えば、図2は、柱状セル型を示す。この構造は、多くのシーケンスを使って作製することができ、その一つを以下に説明する。
【0070】
(a)底面電極が、直接に、あるいはダマシン・プロセスを介して、堆積され、パターン設定される。底部電極1は、WまたはTiNとして示されているが、これに換えて、TiN/TaN障壁層を有するCuまたはAgまたは他の何らかの金属とすることもできよう。
【0071】
(b)第2の工程は、底面金属上に停留面を有するILD2(inter−level dielectric:層間誘電体)の堆積および形成である。
【0072】
(c)次に、固体電解質が、基材の上にスピン被覆される(スピン被覆の過程で同時ドープされるか、あるいは堆積後に飽和状態にUVドープされる)。図2のPMC(programmable metallization cell:プログラム可能メタライゼーション・セル)3は、溶液プロセスによるアモルファス金属カルコゲニドまたは固体電解質(SE:solid electrolyte)を表す。
【0073】
(d)誘電体上の停留面の材料表面が(例えば、CMPまたは化学機械研磨(chemical mechanical polishing)によって)平坦化される。
【0074】
(e)上面電極4が、標準(従来式のリソ+金属パターン)プロセス、またはダマシン・プロセス(ILD中にパターンを生成し、次にそれらに金属を充填し、該金属を研磨する工程を含む逆プロセスをいう)のいずれかを使って、堆積され、パターン設定される。上面電極4は、任意の適切な障壁層を有するAg/Cu/W/Alまたは他の任意の金属とすることができよう。さらに、全体の堆積方向を反転させることができよう。
【0075】
図3は、マッシュルーム・セル型を示す。この構造は、多くのシーケンスを使って作製することができ、その一つを以下に説明する。
【0076】
(a)底面電極1のパターニングおよび平坦化(灰色領域で表されたILD2とともに)。
【0077】
(b)固体電解質材料3のスピン・オン(スピン被覆の過程においてAg/Cuで同時ドープされるか、あるいは堆積後に飽和状態にUVドープされる)。なお、この場合は、固体電解質3(SEまたはPMCと表す)をパターン設定する必要はない。
【0078】
(c)上面電極4の堆積およびパターニング − 標準またはダマシン・プロセスのいずれかを使用。
【0079】
図4は、細孔セル型を示す。このセルは、PMCは平坦化されるがその平坦化作業が酸化物上でなくそれより手前で停止することを除き、柱状セルが(図2)に非常に類似している。なお、この構造においては、(図2と同様)SE(またはPMC)の堆積過程でビアまたは溝を充填する必要がある。
【0080】
図5はさらなる実施形態を示す。この実施形態では、固体電解質材料3は平面形であり、金属群1と4との2つの層(一つは上側、一つは下側で両方ともパターン設定されている)の間に堆積される。底部層は、埋め込みの金属1(例えば、W、Cu、TiNとすることができ、黒色で表されている)を有するILD2(酸化物、窒化物、または低誘電率材料することができ、灰色で表されている)から成る。固体電解質3は、パターン設定されることもされないこともある。理想的には、固体電解質3は連続一体の層である。しかし、パターニングをして、隣接するセルの間の干渉を低減する一助とすることができる。
【0081】
メモリ加工(揮発性および不揮発性の双方)の密度を増大するために、クロスポイント設計は、一つの望ましい選択肢である。かかる最適化設計においては、ワード線およびビット線(以降、メモリ線という)を最小ピッチで相互垂直方向に走らせる。記憶エレメントは、これら相互垂直方向の線に挟まれて配置される。可能な2つの設計が存在する。
【0082】
(a)メモリ線がサブリソグラフィのピッチで走る、ナノクロスバ設計。これは、メモリ・セルの面積を4F2から4Fs2に減少させる。2Fsがナノスケールのピッチである。通常Fs<<Fであり、Fはリソグラフのピッチである。これらのサブリソグラフィ特性を、リソグラフィ的に定義されたワード線およびビット線のドライバ/デコーダ回路に、どのようにしてインタフェースするかを述べた開示が、サウンダララジャン(Soundararajan)名義で2007年2月18日に出願され、本出願の譲受人であるインターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション(International Business Machines Corporation)に譲渡された、米国特許出願第11/679,785号に記載されている。
【0083】
(b)メモリ線はリソグラフィ的ピッチで走るが、メモリが多重層になっている3D設計。実効セル・サイズは、4F2/nに減少し、このnは3Dの層の数(n≧1)である。
【0084】
両方の場合とも、メモリ線の交差点に、メモリ・エレメントおよびダイオードの2つのデバイス構成要素が必要である。本明細書に記載する、溶液プロセスによる固体電解質材料は、これら構成要素の両方として用いることができる。すなわち、ある実施形態においては、これをメモリ・エレメントとして使用することができ、別のある実施形態においてはダイオードとして使うことができる。
【0085】
(a)データ/情報を格納するため使用されるメモリ・エレメント。これについては(例えば、相変化メモリ、MRAM、固体電解質メモリ、およびFeRAMなどを含め)多くの選択肢がある。本開示の場合は、溶液プロセスによるアモルファス金属カルコゲニドをベースとする固体電解質材料の使用について述べている。
【0086】
(b)どのクロスポイントにもトランジスタが存在しないので、整流が可能なデバイスも必要となる(非線形特性のもの)。これにより、選択されていないワード線およびビット線に位置するセルが、何かの具合でプログラムされたり、相互短絡されたりしないことを確実にする。
【0087】
溶液プロセスによるアモルファス金属カルコゲニドを活性層として用いる改良型電解デバイス構造の、いくつかの代表的例を具体的に示してきたが、当業者は、他の多くの例を構想することができよう。それらも本開示の範囲内に含まれる。
【0088】
本開示をさらに説明するため、以下に限定されない事例を提示する。
【0089】
アモルファス流化ゲルマニウム(IV)、GeS2−xは、容易にガラスを形成し、得られたガラスが結晶化に関して安定的なので、電解セル中での使用のための主要候補の一つである。さらに、この材料の膜の中には、金属(例、Ag、Cu、Li)を容易に拡散できる。本開示の第一の例証として、GeS2−xの膜が溶液から堆積され特性付けられる。この場合、金属カルコゲニド膜は、スピン被覆で堆積されことになるが、スタンピング、印刷、ディップ被覆、またはドクタ・ブレード法など、他の溶液ベースの技法を使ってこれを堆積することもできよう。なお、本明細書で流化ゲルマニウム(IV)をGeS2−xと記しているのは、この系で、硫黄の化学量論的な多少の調整が可能な範囲があるという事実を反映するためである。
【0090】
GeS2の溶液は、0.164gのGeS2(1.2mモル)を受入状態の無水ヒドラジン(98%)4.8mL中に溶解して生成される。反応および得られた溶液は、不活性雰囲気(例、窒素またはアルゴン)中で維持される。この溶解は、室温では比較的速く、清澄で基本的には無色の溶液を生成するのに、攪拌しながら<0.5時間が必要である。該溶液は、スピン被覆処理のため基材上に投与される過程で、0.2μmのシリンジ・フィルタを通してろ過される。また、該溶剤の一部は、ガラス・スライド上に蒸着され、窒素下350℃で1/2時間までの間分解され、X線回析(図6)に示されるようなアモルファス材料が生成される。これは、ヒドラジン・ベースの前駆物質から、少なくとも350℃までの温度でアニールされて調製されたGeSx材料の、一般的にアモルファスな性質を実証している。
【0091】
図6は、硫化ゲルマニウム前駆物質溶液をガラス・スライド上に蒸着させ、しかる後、(不活性雰囲気中の)ホット・プレート上で350℃の温度で該前駆物質を分解することによって形成されたGeSx堆積の粉末X線回析パターンを表す。該堆積のアモルファスな性質は、回析パターン中に鋭角的X線ピークがないことで示されている。
【実施例1】
【0092】
Si/SiO2上のGeS2
GeS2前駆物質の膜は、スピン被覆技法と上記の溶液とを使って、清浄な熱酸化シリコン基材上に容易に堆積される。各基材は、最初に石鹸ブラシ洗浄を行い、次に、エタノール中とジクロロメタン中とで連続的に超音波洗浄し、最後にピラニア洗浄(過酸化水素:硫酸)を用い、脱イオン(DI:deionized)水でリンスして、前洗浄される。GeS2前駆物質の薄膜は、前述のGeS2溶液を基材の上に2〜3滴たらし、約10秒間ほど溶液が基材の上に拡がるのを待ち、該基材を、窒素を充満させたドライボックス中で、2000rpmで約2分間スピンすることによって形成される。
【0093】
得られた前駆物質膜は、不活性雰囲気中で、100℃のホット・プレート上で約5分間乾燥され、次に、同じホット・プレート上で約10分間、250℃の分解加熱処理をされる(1/2時間かけて徐々にこの温度に加熱する)。後者の分解加熱処理により、アモルファスGeS2の薄膜が生成される。膜の厚さは、溶液濃度と堆積過程のスピン速度とを選ぶことにより制御することができる。スピン被覆溶液に余分なSを加えることによって、溶液の特性および膜の化学量論組成に対するさらなる制御を得ることができる。上記の条件を用いて、膜の厚さおよび組成が以下のように実現される(ラザフォード後方散乱分光法−RBS:Rutherford Backscattering Spectroscopyを用いて測定)。
【0094】
膜 [Ge]% [S]% 厚さ(Å)
A 42.7 ±0.5 57.3 ±0.5 261 ±20
B 34.7 ±0.5 65.3 ±0.5 349 ±20
C 34.2 ±0.5 65.8 ±0.5 389 ±20
D 33.7 ±0.5 66.3 ±0.5 400 ±20
【0095】
以下に、得られた膜の、いくつかの代表的断面SEM(scanning electron microscope:走査型電子顕微鏡)像を示す。
【0096】
図7は、SiO2(白色部分の材料)上に調製されたGeS2−x膜(灰色部分の材料)の断面SEMである。底面部はSiである。
【0097】
図8は、SiO2(白色部分の材料)上に調製されたGeS2−x膜(灰色部分の材料)の断面SEMである。底面部はSiである。
【0098】
2つの代表的膜(膜AおよびC)の上面には、Agが堆積(約20nm)されている。得られたコンポジット膜のRBSから、以下のRBSスペクトルが得られる。
【0099】
図9は、20nmのAgを被覆された2つの膜(AおよびC)に対するRBSスペクトルを示す。2.05MeVあたりに中心を持つ大きなピークは、Agに対応するものであり、約1.9MeVのピークはGeに対応し、約1.6MeVのピークはSに対応する。
【0100】
なお、Agが堆積される前は一般的な化学量論組成のGeS2であった膜Cは、Ag堆積後はもっと非対称的なRBSピークを見せており、Agの上側層とGeS2―X下地膜との間の相互作用を表している。矢印(図9)は、相互作用を指し示しており、これはGeピークに対するよりもAgおよびSのピークに対してより顕著なように見える。これは、SはAgカチオンとだけ反応しており、Geはより「傍観者的」であることを示している可能性がある。このことは、[S]濃度がより高い膜Cだけが、Ag上側層と実質的に反応しているという事実とも整合している。
【0101】
RBS分析の後、該2つの膜は次いでUV曝露にさらされる。この曝露は、窒素環境中で7mW/cm2の処理(OAI(R)パワー・メータの253.7nm検出ヘッドを使って測定)を15分間隔で連続3回行うことから成る。従って、曝露合計は、18,900mJ/cm2となる。図10で明らかなように、膜Cは、UV処理過程でAgと大きく相互作用し、一方、膜Aは、曝露の結果として実質的な変化はない。膜Cについては、UV処理により、約30%のAgのGeS2−x膜全体への均一な拡散がもたらされた。これらのデータは、まさしく膜の化学量論組成が、溶液プロセスによるアモルファスGeS2−x膜中へのAgの拡散能力に実質的な影響を与え得ることを示唆している。電解デバイスの動作のために金属の拡散が決定的な重要性を持つことを考えれば、(前述したように)膜の化学量論組成の制御は、作動性のよい最適化されたデバイス形成のため重要であるといえよう。
【0102】
図10は、20nmのAgを被覆された2つの膜のRBSスペクトルを示す。実線のカーブはAgが堆積されたばかりの膜(図9と同じ)に対応し、点線はUV処理されたものである。
【0103】
実施例1で説明したドープ済みおよび未ドープのGeS2膜は、前述したデバイスの構成形状のいずれにも使うことができよう。
【実施例2】
【0104】
Ag被覆されたSi/SiO2上のGeS2およびデバイスの結果
GeS2の溶液は、0.055gのGeS2(0.4mモル)を1.6mLの無水ヒドラジンに溶解して生成される(実施例1と同じ濃度)。該溶液は、この実施例では使用される前に約4週間保管される。反応および得られた溶液は、不活性雰囲気(例、窒素またはアルゴン)中に維持される。該溶液は、スピン被覆処理のため基材上に投与される過程で、0.2μmのシリンジ・フィルタを通してろ過される。
【0105】
GeS2前駆物質の膜は、スピン被覆技法と上記の溶液とを使って、Ag被覆された(約200nm、電子ビーム蒸着で堆積)p+シリコン基材上に容易に堆積される。Ag被覆され各基材は、スピン被覆される前に、水酸化アンモニウム/水混合液で約10分洗浄され、DI水でリンスされ、圧縮空気で吹きつけ乾燥される。GeS2前駆物質の薄膜は、上記のGeS2溶液を基材の上に2〜3滴たらし、約10秒間ほど溶液が基材の上に拡がるのを待ち、該基材を、窒素を充満させたドライボックス中で、2000rpmで約2分間スピンすることによって形成される。
【0106】
得られた前駆物質膜は、不活性雰囲気中で、120℃のホット・プレート上で5分間乾燥され、次に、(徐々の加熱でなく前もって熱された)同じホット・プレート上で10分間、260℃の分解加熱処理される。後者の分解加熱処理により、Agの下被覆層を有するアモルファスGeS2の薄膜が生成される(図11の断面SEMを参照)。膜の厚さは、溶液濃度と堆積過程のスピン速度とを選ぶことにより制御することができる。上記の条件を用いて、約36nm膜厚、および、RBSからの算定で、約1.75の[S]/[Ge]比率(すなわち、理想的なGeS2に対してSがやや不足)が得られる。また一方、実施例1で説明したUV処理されたGeS2膜については、アモルファス・カルコゲニド膜中に、かなりの濃度のAg(>30%:相対的に薄い金属カルコゲニド層に下にある厚いAg層のため、RBSデータからこれより精度のあるAg含有量を導出するのは困難である)が存在する。これら上記の膜は、UV拡散処理を受けなかったので、そのことは、前駆物質膜からアモルファス・カルコゲニド膜を形成するため行われる分解加熱処理の過程のそのままの条件(すなわち、260℃、20分間の加熱)でAg拡散が行われたということである。該Ag拡散GeS2−x膜は、上記で示したようにさまざまな電解デバイス構造に使用するのに適している。
【0107】
図11は、Ag上にスピン被覆されたGeS2−x膜の断面SEM像である。
【0108】
単純な試験構造体を作製するため、Ag上に得られたAgyGexSz膜を、Wティップ(約10ミクロン×10ミクロンのティップ面積。陰極として機能)を使ってプローブし、逆マッシュルーム型構造がうまく得られた(上記の図3を参照。この場合はAgが底部でWが最上部となる)。隣接するp+シリコン基材を貫通して、Ag陽極へのコンタクトが設けられる。(Wティップで金属カルコゲニド膜を突き抜かないように)注意深くプローブして、典型的な固体電解質デバイスの挙動を示す機能デバイスが調製された(図12および13を図1と比較する)。おそらくは、空気中での作動および比較的に粗い表面に起因して、該デバイスの使用サイクリングに対する耐久性は芳しくないが、これらの結果は、スピン被覆されたアモルファス金属カルコゲニド膜を電解デバイスの活性層として用いる実現可能性を明確に立証している。
【0109】
図12および13は、Ag(陽極)を底部に、スピン被覆されたAgyGexSzを中間に(固体電解質)、Wティップ(陰極)を最上部に有する、2個の電解メモリ・セル(逆マッシュルーム型)のデバイス特性を示す。
【実施例3】
【0110】
Si/SiO2上のCuドープされたGeS2
GeS2の溶液は、0.055gのGeS2(0.4mモル)を1.6mLの実施例2で使ったのと同じ無水ヒドラジンに溶解して生成される。該溶液は、使用の前に24時間保管される。Cu2Sの溶液は、5mLの無水ヒドラジン中の0.159gのCu2S(1mモル)および0.064gのS(2mモル)を約2週間攪拌して調製される。得られた黄色の溶液には、まだ少量の黒色しみが残っており、これは、溶液投与の過程で、0.2μmのシリンジ・フィルタを通してろ過して除去された。スピン被覆用の複合液が、0.4mLのGeS2溶液(0.1mモルのGeS2を含有)を0.25mLのろ過されたCu2S溶液(0.05mモルのCu2Sを含有)と(2分間)攪拌して調製された。全ての処理は、酸素および水分レベルが1ppmより低い、窒素充満のグローブ・ボックス中で行われる。
【0111】
スピン被覆される各基材は、最初に石鹸ブラシ洗浄を行い、次に、エタノール中とジクロロメタン中とで連続的に超音波洗浄し、最後にピラニア洗浄(過酸化水素:硫酸)を用い、脱イオン(DI)水でリンスして、前洗浄される。Ge−Cu−S前駆物質の薄膜は、上記の複合液を基材の上に2〜3滴たらし、約10秒位の間溶液が基材の上に拡がるのを待ち、該基材を、窒素を充満させたドライボックス中で、2000rpmで約2分間スピンすることによって形成される。
【0112】
得られた前駆物質膜は、不活性雰囲気中で、100℃のホット・プレート上で5分間乾燥され、次に、同じホット・プレート(事前に熱されたホット・プレート)上で20分間、300℃の分解加熱処理をされる。後者の分解加熱処理により、金属カルコゲニドの薄膜が生成される。膜の厚さは、溶液濃度と堆積過程のスピン速度とを選ぶことにより制御することができる。上記の条件を用いて、Ge19.1%、Cu28.8%、S52.1%で、24(1)nm厚さ(ラザフォード後方散乱分光法−RBSを用いて測定)の膜組成および膜厚が得られる。得られた膜中のGe−Sに相当量のCuが首尾よく取り込まれ、このことから、ドーパント金属を溶液中に組み入れることによりスピン被覆の過程でドーピング処理が実現できることが立証される(UV処理の必要がない)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層と、
第一金属層と、
第二金属層と、
を含む固体電解質デバイスであって、
前記アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、前記第一金属層と第二金属層との間に配置され、前記アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、金属カルコゲニドの前駆物質または半金属カルコゲニドの前駆物質の溶液を得て、
前記溶液を基材の上に塗布し、
しかる後、前記前駆物質をアニールし、前記前駆物質を前記金属カルコゲニドまたは半金属カルコゲニドに変換することによって調製される、
前記固体電解質デバイス。
【請求項2】
前記溶液は、
金属カルコゲニドを、ヒドラジン化合物および随意的に余分のカルコゲンの中に直接溶解する工程、
単離された、金属カルコゲニドのヒドラジン・ベースの前駆物質と、溶剤とを接触させてこれらの溶液を形成する工程、
前記金属カルコゲニドの対応金属を、前記金属カルコゲニドの形成と溶液中への溶解とを促進するため少なくとも十分なカルコゲンを加えたヒドラジン化合物中に直接溶解する工程、
前形成されたヒドラジニウム・ベースの前駆物質を非ヒドラジン・ベースの溶剤中に溶解する工程、または
金属カルコゲニドとアミンの塩とを接触させて、前記金属カルコゲニドのアンモニウム・ベースの前駆物質を生成し、次にこれをヒドラジン化合物および随意的に元素カルコゲンと接触させる工程、
の一つによって調製される、請求項1に記載の固体電解質デバイス。
【請求項3】
柱状セル型であって、前記第一金属層と第二金属層との間に位置するビア有する層間誘電体をさらに含み、前記アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、前記層間誘電体中の前記ビアの中に配置される、請求項1または請求項2に記載の固体電解質デバイス。
【請求項4】
マッシュルーム・セル型であって、前記第一金属層と第二金属層との間に位置して金属導体を充填されたビアを有する層間誘電体をさらに含み、前記アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、前記層間誘電体の上部に配置される、請求項1または請求項2に記載の固体電解質デバイス。
【請求項5】
細孔セル型であって、前記第一金属層と第二金属層との間に位置するビア有する層間誘電体をさらに含み、前記アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、前記ビア中と前記層間誘電体の上部とに配置される、請求項1または請求項2に記載の固体電解質デバイス。
【請求項6】
前記アモルファス・カルコゲニド固体電解層の下部に配置された埋め込み金属導通部を有する層間誘電体をさらに含み、前記埋め込み金属導通部は前記第一金属の層を含む、請求項1に記載の固体電解質デバイス。
【請求項7】
固体電解質デバイスを製作する方法であって、
金属カルコゲニドの前駆物質の溶液を調製する工程と、
前記溶液を基材上に塗布する工程と、
しかる後、前記前駆物質をアニールして、前記前駆物質をアモルファス金属カルコゲニド層に変換する工程と、
第一金属層を形成し第二金属層を形成する工程と、
を含み、
前記アモルファス金属カルコゲニドは前記第一金属層と第二金属層との間に配置される、
前記方法。
【請求項8】
前記溶液は、
金属カルコゲニドを、ヒドラジン化合物および随意的に余分のカルコゲンの中に直接溶解する工程、
単離された、金属カルコゲニドのヒドラジン・ベースの前駆物質と、溶剤を接触させてこれらの溶液を形成する工程、
前記金属カルコゲニドの対応金属を、前記金属カルコゲニドの形成と溶液中への溶解とを促進するため少なくとも十分なカルコゲンを加えたヒドラジン化合物中に直接溶解する工程、
前形成されたヒドラジニウム・ベースの前駆物質を非ヒドラジン・ベースの溶剤中に溶解する工程、または
金属カルコゲニドとアミンの塩とを接触させて、前記金属カルコゲニドのアンモニウム・ベースの前駆物質を生成し、次にこれをヒドラジン化合物および随意的に元素カルコゲンと接触させる工程、
の一つによって調製される、請求項18に記載の方法。
【請求項9】
前記カルコゲニドの金属または半金属の構成材は、錫、ゲルマニウム、鉛、インジウム、アンチモン、水銀、ガリウム、タリウム、カリウム、銅、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、タングステン、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、ニオブ、およびこれらの組合せから成る群から選択され、前記カルコゲンは、S、Se、Te、およびこれらの組合せから成る群から選択される、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項1】
アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層と、
第一金属層と、
第二金属層と、
を含む固体電解質デバイスであって、
前記アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、前記第一金属層と第二金属層との間に配置され、前記アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、金属カルコゲニドの前駆物質または半金属カルコゲニドの前駆物質の溶液を得て、
前記溶液を基材の上に塗布し、
しかる後、前記前駆物質をアニールし、前記前駆物質を前記金属カルコゲニドまたは半金属カルコゲニドに変換することによって調製される、
前記固体電解質デバイス。
【請求項2】
前記溶液は、
金属カルコゲニドを、ヒドラジン化合物および随意的に余分のカルコゲンの中に直接溶解する工程、
単離された、金属カルコゲニドのヒドラジン・ベースの前駆物質と、溶剤とを接触させてこれらの溶液を形成する工程、
前記金属カルコゲニドの対応金属を、前記金属カルコゲニドの形成と溶液中への溶解とを促進するため少なくとも十分なカルコゲンを加えたヒドラジン化合物中に直接溶解する工程、
前形成されたヒドラジニウム・ベースの前駆物質を非ヒドラジン・ベースの溶剤中に溶解する工程、または
金属カルコゲニドとアミンの塩とを接触させて、前記金属カルコゲニドのアンモニウム・ベースの前駆物質を生成し、次にこれをヒドラジン化合物および随意的に元素カルコゲンと接触させる工程、
の一つによって調製される、請求項1に記載の固体電解質デバイス。
【請求項3】
柱状セル型であって、前記第一金属層と第二金属層との間に位置するビア有する層間誘電体をさらに含み、前記アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、前記層間誘電体中の前記ビアの中に配置される、請求項1または請求項2に記載の固体電解質デバイス。
【請求項4】
マッシュルーム・セル型であって、前記第一金属層と第二金属層との間に位置して金属導体を充填されたビアを有する層間誘電体をさらに含み、前記アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、前記層間誘電体の上部に配置される、請求項1または請求項2に記載の固体電解質デバイス。
【請求項5】
細孔セル型であって、前記第一金属層と第二金属層との間に位置するビア有する層間誘電体をさらに含み、前記アモルファス・カルコゲニド固体活性電解層は、前記ビア中と前記層間誘電体の上部とに配置される、請求項1または請求項2に記載の固体電解質デバイス。
【請求項6】
前記アモルファス・カルコゲニド固体電解層の下部に配置された埋め込み金属導通部を有する層間誘電体をさらに含み、前記埋め込み金属導通部は前記第一金属の層を含む、請求項1に記載の固体電解質デバイス。
【請求項7】
固体電解質デバイスを製作する方法であって、
金属カルコゲニドの前駆物質の溶液を調製する工程と、
前記溶液を基材上に塗布する工程と、
しかる後、前記前駆物質をアニールして、前記前駆物質をアモルファス金属カルコゲニド層に変換する工程と、
第一金属層を形成し第二金属層を形成する工程と、
を含み、
前記アモルファス金属カルコゲニドは前記第一金属層と第二金属層との間に配置される、
前記方法。
【請求項8】
前記溶液は、
金属カルコゲニドを、ヒドラジン化合物および随意的に余分のカルコゲンの中に直接溶解する工程、
単離された、金属カルコゲニドのヒドラジン・ベースの前駆物質と、溶剤を接触させてこれらの溶液を形成する工程、
前記金属カルコゲニドの対応金属を、前記金属カルコゲニドの形成と溶液中への溶解とを促進するため少なくとも十分なカルコゲンを加えたヒドラジン化合物中に直接溶解する工程、
前形成されたヒドラジニウム・ベースの前駆物質を非ヒドラジン・ベースの溶剤中に溶解する工程、または
金属カルコゲニドとアミンの塩とを接触させて、前記金属カルコゲニドのアンモニウム・ベースの前駆物質を生成し、次にこれをヒドラジン化合物および随意的に元素カルコゲンと接触させる工程、
の一つによって調製される、請求項18に記載の方法。
【請求項9】
前記カルコゲニドの金属または半金属の構成材は、錫、ゲルマニウム、鉛、インジウム、アンチモン、水銀、ガリウム、タリウム、カリウム、銅、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、タングステン、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、ニオブ、およびこれらの組合せから成る群から選択され、前記カルコゲンは、S、Se、Te、およびこれらの組合せから成る群から選択される、請求項7または請求項8に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−530624(P2010−530624A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512635(P2010−512635)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057167
【国際公開番号】WO2008/155251
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057167
【国際公開番号】WO2008/155251
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】
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