説明

漏水検知システム

【課題】 複雑な配線をする必要がなく安価で容易に漏水位置を特定でき、しかも、メンテナンスも容易な漏水感知システムを提供する。
【解決手段】 直列に接続され、漏水により導通されて抵抗値により漏水位置を特定可能にされた複数の漏水検知センサ22と、
前記漏水検知センサ22による検出位置を読みとる情報読取り手段26と、
前記情報読取り手段26で読みとった情報を記憶する記憶手段24と、
を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏水検知システムに関し、特に、建物や管理型最終処分場などにおける防水の漏水検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物や管理型最終処分場など各種漏水の事実及びその発生箇所を特定して、早急に対策を講じることが必要とされる。
【0003】
そのため、例えば、水溶性物質中に抱持され互いに離隔して並設される2本の導電線で形成した触水スイッチ手段を建造物の下地面と防水層との間に格子状に配置し、水との接触により溶融制物質が溶融して2本の導電線が導通することで動作するようにして、漏水に事実及び発生箇所を的確容易に把握し、修復をする場所を必要最小限に特定し、低廉で所要箇所への施工性も良い漏水検知システムが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−55015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような漏水検知システムにあっては、触水スイッチ手段が水溶性物質中に抱持され互いに離隔して並設される2本の導電線で形成されており、しかも、このような触水スイッチ手段が格子状に配置されるため、高価なものとなってしまう。
【0005】
また、触水スイッチの水溶性物質が一旦溶融して導電線が導通したあとは、その触水スイッチは再使用できなくなってしまい、交換を余儀なくさせられるものである。
【0006】
本発明の目的は、複雑な配線をする必要がなく安価で容易に漏水位置を特定でき、しかも、メンテナンスも容易な漏水感知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前記目的を達成するため、本発明の漏水検知システムは、直列に接続され、漏水により導通されて抵抗値により漏水位置を特定可能にされた複数の漏水検知センサと、
前記漏水検知センサによる検出位置を読みとる情報読取り手段と、
前記情報読取り手段で読みとった情報を記憶する記憶手段と、
を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、直列に接続され、漏水により導通されて抵抗値により漏水位置を特定可能にされた複数の漏水検知センサを用いているため、複雑な配線をすることなく、安価な構成で漏水位置を特定することができ、しかも、単純な配線とすることで、メンテナンスも容易となる。
(2)本発明においては、(1)において、
前記漏水検知センサは、インターフェイスを介してパッシブ型RFIDと接続され、
前記情報読取り手段は、無線アンテナを介して前記パッシブ型RFIDと送受信可能なリーダ・ライタとされ、
前記パッシブ型RFIDは、前記リーダ・ライタにより起電力を付与されて前記漏水検知センサに通電可能にされたものとすることができる。
【0009】
このような構成とすることにより、パッシブ型RFIDを用いることで、バッテリーが不要で、常時電源供給の必要がなく、検査測定時にのみ情報読取り手段によりRFIDを起電させて情報を読みとればよく、安価かつメンテナンスも容易となる。
(3)本発明においては、(1)において、
前記漏水検知センサは、インターフェイスを介してUSBと接続され、
前記情報読取り手段は、前記USBに接続可能にされたものとすることができる。
【0010】
このような構成とすることにより、必要時にUSBにて情報読取り手段とインターフェイスとを接続すればよく、漏水検知センサ側の情報を容易かつ安価に読みとることができる。
(4)本発明においては、(1)において、
前記漏水検知センサは、インターフェイスを介してアクティブ型ICタグと接続され、
前記情報読取り手段は、無線アンテナを介して前記アクティブ型ICタグと送受信可能なリーダ・ライタとされたものとすることができる。
【0011】
このような構成とすることにより、アクティブ型ICタグを用いることで、漏水検知センサによる検知回数を上げ、より精度の高い漏水検知を行うことが可能となる。
(5)本発明においては、(1)〜(4)において、
前記漏水検知センサは、2芯リード線の被覆を複数箇所で除去し、導線の露出部を保水性及び導電性を有する材料にて被覆してなるものとすることができる。
【0012】
このような構成とすることにより、1本の配線に複数の漏水検知センサの設置を容易に行うことができ、しかも、寿命が長く、安価で、メンテナンスフリーなものとすることができる。
(6)本発明においては、(5)において、
前記漏水検知センサは、ロール状の防水材の裏面に予め一体に組み込まれて、防水材の敷設時に同時に敷設されることができる。
【0013】
このような構成とすることにより、漏水検知センサの配設を用意かつ確実に行うことができる。
(7)本発明の他の漏水検知システムは、直列に接続され、漏水により導通されて抵抗値により漏水位置を特定可能にされた複数の漏水検知センサと、
前記漏水検知センサによる検出位置を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶した情報を読みとる情報読取り手段と、
を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、(1)の場合と同様に、複雑な配線をすることなく、安価な構成で漏水位置を特定することができ、しかも、単純な配線とすることで、メンテナンスも容易となる。
【発明を実施実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1〜図5は、本発明の一実施の形態にかかる漏水検知システムを示す図である。
【0017】
図1は、本実施の形態にかかる漏水検知システムを建造物の屋上スラブ上に設置した状態を示す断面図で、この建造物10はパラペット12で囲まれた屋上スラブ14の上面及びパラペット12の内側面に防水シート等からなる防水層16が形成され、この防水層16と屋上スラブ14との間に漏水検知システム20が配設されるようになっている。
【0018】
この漏水検知システム20は、図2にも示すように、複数の漏水検知センサ22と、外部の情報読取り手段26と、記憶手段24とを有している。
【0019】
漏水検知センサ22は、直列に接続され、漏水により導通されて抵抗値により漏水位置を特定可能にされている。
【0020】
具体的には、図3に示すように、2芯リード線28の被覆30を所定の間隔で複数箇所除去して所定間隔で離隔した状態で導線32を露出させ、この導電線32の露出部34を保水性及び導電性を有する材料35で被覆して形成された状態となっている。
【0021】
このように、1本の2芯リード線28に複数の漏水検知センサ22を所定間隔で形成することにより、漏水検知センサ22の設置を容易に行うことができ、しかも、寿命が長く、安価で、メンテナンスフリーなものとすることができる。
【0022】
また、漏水検知センサ22は、図4に示すように、漏水検知センサ22を形成した2芯リード線28を所定の長さに形成しておき、これを施工現場でコネクタ36により接続するようにしておけば、容易に施工現場に合わせた長さにすることができる。
【0023】
この場合、例えば、コネクタ36の両端から導線38を突出させておき、この導線38を2芯リード線28の端部に形成した孔40に差し込むようにすると安価でかつ接続部の太さに変化のない状態にすることができる。
【0024】
なお、接続最終端の2芯リード線28の終端部42側は、孔のない状態にして防水処理を施すようにすると良い。
【0025】
また、図2に示すように、この漏水検知センサ22を有する複数本の2芯リード線28が、インターフェイス46を介してパッシブ型RFID44に接続された状態となっている。
【0026】
このパッシブ型RFID44には、無線アンテナ48が設けられており、この無線アンテナ48を介して情報読取り手段26と送受信可能にされている。
【0027】
そして、情報読取り手段26からの信号を受信すると、パッシブ型RFID44に起電力が生じて、漏水検知センサ22側に通電され、通電状態になっている漏水検知センサ22があると、インターフェース46及びパッシブ型RFID44を介してその位置がリーダ・ライタ56に読みとられるようになっている。
【0028】
このように、パッシブ型RFID44を用いることで、バッテリーが不要で、常時電源供給の必要がなく、検査測定時にのみ情報読取り手段26によりパッシブ型RFID44を起電させて情報を読みとればよく、安価かつメンテナンスも容易となる。
【0029】
また、この漏水位置検出の性能を向上させるために、図5に示すように、各漏水検知センサ22間に抵抗50を配置するようにしても良い。
【0030】
さらに、この漏水検知センサ22と、インターフェイス46と、パッシブ型RFID44とが、屋上スラブ14と防水層16との間に配設されるされるものであるため、例えば、図8に示すように、防水シート等のロール状の防水材52を敷設して防水層16を形成する場合には、防水材52の裏面に予め漏水検知センサ22と、インターフェイス46と、パッシブ型RFID44とを一体に組み込んでおけば、防水材52の敷設時に同時に漏水検知センサ22と、インターフェイス46と、パッシブ型RFID44との配設も完了することとなり、配設作業の簡略化を図ることが可能となる。
【0031】
情報読取り手段26は、リーダ・ライタ56と、無線アンテナ58とを有し、リーダ・ライタ56より無線アンテナ58及び48を介してパッシブ型RFID44に送信することにより、パッシブ型RFID44に起電力を生じさせ、インターフェイス46を介して漏電検知センサ22側に通電し、漏水箇所を漏水検知センサ22よりインターフェイス46及びパッシブ型RFID44を通して漏水情報をを読みとるようになっている。
【0032】
リーダ・ライタ56で読みとった漏水情報は、リーダ・ライタ56に搭載した記憶手段24に書き込まれて、記憶手段26に記憶されるようになっている。
【0033】
記憶手段26に記憶された漏水情報は、図1及び図2に示すように、リーダ・ライタ56を所定のアプリケーションを組み込んだパーソナルコンピュータ54に接続することにより、パーソナルコンピュータ54に表示されるようになっている。
【0034】
図6は、本発明の他の実施の形態にかかる漏水検知システムを示す図である。
【0035】
この実施の形態では、建造物の屋上スラブ14上に防水層16を形成し、この防水層16と屋上スラブ14との間の脱気を行う脱気装置60を有する場合に、前記実施の形態におけるパッシブ型RFID44を脱気装置60の開口部62に取り付けることで、漏水検出作業を容易に行えるようにしている。
【0036】
他の構成及び作用は、前記実施の形態と同様につき説明を省略する。
【0037】
図7は、本発明のさらに他の実施の形態にかかる漏水検知システムを示す図である。
【0038】
この実施の形態では、建造物10のパラペット12で囲まれた屋上スラブ14の上面及びパラペット12の内側面に防水シート等からなる防水層16が形成され、さらに、この防水層16上に断熱層64が形成される場合を示している。
【0039】
この場合、屋上スラブ14と防水層16との間には漏水検知センサ22のみを配設し、インターフェイス46及びパッシブ型RFID44は化粧天井66上に配設し、漏水検知センサ22とインターフェイス46及びパッシブ型RFID44とを2芯リード線68にて接続するようにしている。
【0040】
リーダ・ライタ56とパッシブ型RFID44との送受信は室内70側から行うようにしている。
【0041】
これによって、断熱層64が屋上に設けられる場合でも漏水検出が行えるようにしている。
【0042】
他の構成及び作用は、前記各実施の形態と同様につき説明を省略する。
【0043】
図9は、本発明のさらに他の実施の形態にかかる漏水検知システムを示す図である。
【0044】
この実施の形態では、インターフェイス46を介してパッシブ型RFID44に接続されたリード線28に直列に異なる抵抗値の複数、例えば3つの抵抗A、抵抗B、抵抗Cを設け、各抵抗A、抵抗B、抵抗Cにバイパスする状態で漏水検知センサ22A、22B、22Cを取り付けるようにしている。
【0045】
そして、各漏水検知センサ22A、22B、22Cが漏水を検知していない状態では、抵抗A、抵抗B、抵抗C側に電流が流れ、、各漏水検知センサ22A、22B、22Cのいずれかが漏水を検知すると、該当位置の漏水検知センサ22A、22B、22Cが導通状態となり、その位置の抵抗A、抵抗Bまたは抵抗C側に電流が流れなくなるようになっている。
【0046】
したがって、漏水位置の抵抗A、抵抗Bまたは抵抗Cの抵抗値分だけ抵抗値が減少することとなり、その減少した抵抗値によって漏水位置を確認することができるようになっている。
【0047】
他の構成及び作用は、前記各実施の形態と同様につき説明を省略する。
【0048】
本発明は、前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変形可能である。
【0049】
例えば、前記各実施の形態では、記憶手段側にパッシブ型RFIDを用いているが、この例に限らず、パッシブ型RFIDに代えてアクティブ型ICタグを用いることも可能である。
【0050】
また、図6の実施の形態では、脱気装置の開口部にパッシブ型RFIDを設置する場合について説明したが、このパッシブ型RFIDに代えてUSBやコンセントを設置して直接電源を供給し漏水検出を行ったり、バッテリやソーラー電源を用いた無線センサネットワークを設置したりすることも可能である。
【0051】
さらに、前記各実施の形態では、建造物の屋上防水の漏水検出の場合について説明したが、この例に限らず、管理型最終処分場その他の漏水検出にも適用が可能である。
【0052】
また、前記実施の形態では、パッシブ型RFID側には記憶手段がなく、リーダ・ライタ側に記憶手段を搭載した場合について説明したが、パッシブ型RFIDに記憶手段を搭載し、まず漏水検知センサによる検出位置を記憶手段に記憶させ、その後記憶手段に記憶した情報を情報読取り手段にて読みとるようにしてもよい。
【0053】
この場合、情報読取り手段としてリーダ・ライタを用い、このリーダ・ライタ側にも記憶手段を搭載してもよく、あるいは、直接パーソナルコンピュータにて情報を読みとるようにしても良い。
【0054】
を含む
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる漏水検知システムを建造物の屋上スラブ上に設置した状態を示す断面図である。
【図2】図1の漏水検知システムの詳細図である。
【図3】漏水検知センサの拡大斜視図である。
【図4】2芯リード線の接続状態を示す拡大斜視図である。
【図5】2芯リード線の各漏水検知センサ間に抵抗を設けた例を示す平面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態にかかる漏水検知システムを示す断面図である。
【図7】本発明のさらに他の実施の形態にかかる漏水検知システムを示す断面図である。
【図8】ロール状の防水材に漏水検知センサ、インターフェイス及びパッシブ型RFIDを予め一体に組み込んだ例を示す平面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施の形態にかかる漏水検知システムを示す平面図である。
【符号の説明】
【0056】
20 漏水検知システム
22、22A、22B、22C 漏水検知センサ
24 記憶手段
26 情報読取り手段
28 2芯リ−ド線
30 被覆
32 導線
34 露出部
44 パッシブ型RFID
46 インターフェース
48、58 無線アンテナ
52 防水材
56 リーダ・ライタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続され、漏水により導通されて抵抗値により漏水位置を特定可能にされた複数の漏水検知センサと、
前記漏水検知センサによる検出位置を読みとる情報読取り手段と、
前記情報読取り手段で読みとった情報を記憶する記憶手段と、
を含むことを特徴とする漏水検知システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記漏水検知センサは、インターフェイスを介してパッシブ型RFIDと接続され、
前記情報読取り手段は、無線アンテナを介して前記パッシブ型RFIDと送受信可能なリーダ・ライタとされ、
前記パッシブ型RFIDは、前記リーダ・ライタにより起電力を付与されて前記漏水検知センサに通電可能にされていることを特徴とする漏水検知システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記漏水検知センサは、インターフェイスを介してUSBと接続され、
前記情報読取り手段は、前記USBに接続可能にされていることを特徴とする漏水検知システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記漏水検知センサは、インターフェイスを介してアクティブ型ICタグと接続され、
前記情報読取り手段は、無線アンテナを介して前記アクティブ型ICタグと送受信可能なリーダ・ライタとされていることを特徴とする漏水検知システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記漏水検知センサは、2芯リード線の被覆を複数箇所で除去し、導線の露出部を保水性及び導電性を有する材料にて被覆してなることを特徴とする漏水検知システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記漏水検知センサは、ロール状の防水材の裏面に予め一体に組み込まれて、防水材の敷設時に同時に敷設されることを特徴とする漏水検知システム。
【請求項7】
直列に接続され、漏水により導通されて抵抗値により漏水位置を特定可能にされた複数の漏水検知センサと、
前記漏水検知センサによる検出位置を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶した情報を読みとる情報読取り手段と、
を含むことを特徴とする漏水検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−233031(P2008−233031A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76910(P2007−76910)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(390036515)株式会社鴻池組 (41)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】