説明

潤滑油添加剤および潤滑油組成物

【課題】 抗乳化性に優れた潤滑油添加剤を提供する。
【解決手段】 全構成単量体のうちアルキル基の炭素数が10〜36の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)が45重量%以上である重合体(A)からなる潤滑油添加剤であって、該(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)中の硫黄原子含有量が50ppm以下である潤滑油添加剤である。該(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)は、好ましくは固体酸触媒(α)の存在下に、炭素数が10〜36のアルカノールと(メタ)アクリル酸またはその低級アルキルエステルとの反応により得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油添加剤および潤滑油組成物に関する。詳しくは、硫黄原子含有量が50ppm以下の特定の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を必須構成単量体としてなる重合体(A)を含有する潤滑油添加剤およびそれを含む潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、省燃費や使用温度域の観点から、油圧作動油などの工業用潤滑油には、優れた粘度指数と低温流動性が求められている。高粘度指数化や低温流動性を改良する手段としては粘度指数向上剤や流動点降下剤などの潤滑油添加剤が効果的であり、特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体とする共重合体が従来から多く用いられてきた。(特許文献−1〜5参照)
しかしながら、従来のこれらの潤滑油添加剤を添加した潤滑油組成物は、微量の水が混入した場合に乳化しやすく、いわゆる抗乳化性が低いという問題があった。
従って潤滑油組成物の潤滑性や応答性が損なわれ、性能を十分に発揮することができなかった。
【特許文献−1】特開昭54−70305号公報
【特許文献−2】特開平7−48421号公報
【特許文献−3】特開平7−62372号公報
【特許文献−4】特開平7−70247号公報
【特許文献−5】特表平7−509023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、抗乳化性に優れた潤滑油添加剤およびそれを含む潤滑油組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意検討した結果、潤滑油添加剤を構成する重合体に使用される単量体において、硫黄原子含有量が少ない単量体を用いた場合に、潤滑油添加剤が優れた抗乳化性を示すことを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、全構成単量体のうちアルキル基の炭素数が10〜36の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)が45重量%以上である重合体(A)からなる潤滑油添加剤であって、該(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)中の硫黄原子含有量が50ppm以下である潤滑油添加剤;並びに、該潤滑油添加剤と基油からなる潤滑油組成物;である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の潤滑油添加剤は、粘度指数向上能、低温粘度、流動点降下能およびせん断安定性だけでなく抗乳化性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の潤滑油添加剤は重合体(A)[以下において、単に重合体(A)または(A)と表記する場合がある]からなり、重合体(A)の構成単量体のうちの45重量%以上を占める単量体(a)[以下において、単に単量体(a)または(a)と表記する場合がある]は、硫黄原子含有量が、抗乳化性の観点から、通常50ppm以下、好ましくは30ppm以下、特に好ましくは10ppm以下であることを特徴とする。
以下において、まず単量体(a)について説明する。
【0007】
単量体(a)には、アルキル基の炭素数が10〜15の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)およびアルキル基の炭素数が16〜30の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)が含まれる。
【0008】
アルキル基の炭素数が10〜15の(直鎖または分岐)(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)としては;(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−イソデシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルウンデシル、(メタ)アクリル酸n−トリデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルドデシル、(メタ)アクリル酸n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルトリデシル、(メタ)アクリル酸n−ペンタデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルテトラデシル、およびオキソ合成により製造されたアルコール[例えば、商品名「ドバノール23」(三菱化学製)、「NEODOL23」(シェル化学製)、「トリデカノール」(協和発酵製)、「オキソコール1213」(日産化学製)、「ドバノール45」(三菱化学製)、「NEODOL45」(シェル化学製)、「オキソコール1415」(日産化学製)の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる(以下、「ドバノール23」のメタクリル酸エステルをD23、「ドバノール45」のメタクリル酸エステルをD45と略す)。
(a1)のうちで好ましいのは、炭素数12〜15の直鎖もしくは分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびこれらの2種以上の混合物である。
【0009】
アルキル基の炭素数が16〜30(直鎖または分岐)の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)としては;アクリル酸n−ヘキサデシル、メタクリル酸n−ヘキサデシル(以下HMAと略す)、アクリル酸n−オクタデシル、メタクリル酸n−オクタデシル(以下OMAと略す)、(メタ)アクリル酸n−エイコシル、(メタ)アクリル酸n−ドコシル、(メタ)アクリル酸2メチルペンタデシル、(メタ)アクリル酸2−ヘキシルデシル基、(メタ)アクリル酸2−メチルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2−オクチルデシル、(メタ)アクリル酸2−ヘキシルドデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルオクタデシル基、(メタ)アクリル酸2−オクチルドデシル、および(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシルなどが挙げられる。
(a2)のうちで好ましいのは、炭素数16〜18の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシルおよびこれらの2種以上の混合物である。
【0010】
単量体(a)を製造する方法としては、炭素数が10〜36のアルカノール[以下において、単にアルカノールと表記する場合がある]と(メタ)アクリル酸またはその低級アルキルエステル[以下において、単に(メタ)アクリル酸と略記する場合がある]とをエステル化反応もしくはエステル交換反応させる方法が挙げられる。
触媒としては、固体酸触媒、従来から公知の液体酸触媒(硫酸など)、および従来から公知の系内で均一に溶解して作用する触媒(p−トルエンスルホン酸など)が挙げられる。
これらの触媒のうちで、本発明における硫黄原子含有量が50ppm以下の単量体(a)を製造するためには、固体酸触媒(α)が好ましく、固体酸触媒(α)の存在下に、アルカノール(メタ)アクリル酸とを反応させる方法が特に好ましい。固体酸触媒以外の触媒では、副反応によって、原料アルカノールの硫酸化生成物や、原料(メタ)アクリル酸への硫酸などの付加生成物などが生成しやすく、かつその分離・精製には膨大な工程とコストがかかる。そして単量体中にこれらの硫黄化合物が多く残存すると、単量体を重合して重合体となった後でもこれらの硫黄化合物はそのまま残存するため、潤滑油と水分との乳化剤として作用するものと考えられる。
本発明の重合体(A)中の、単量体(a)中の硫黄化合物に由来する硫黄原子含有量の最大値は、単量体(a)のみを構成単量体としてなる重合体の場合であって50ppmであり、例えば単量体(a)が45重量%からなる重合体の場合の最大値は、50×0.45=22.5ppmである。
なお、重合体(A)中の全硫黄原子含有量としては、後述のように、製造工程中に使用される連鎖移動剤などの硫黄化合物に由来する硫黄原子が重合体中に大量に含まれるため、通常は50ppmを超えるが、これらの連鎖移動剤などに由来する硫黄化合物は抗乳化性には影響を及ぼさない。
【0011】
固体酸触媒(α)としては、無機多孔体(シリカゲル、アルミナゲル、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト、クレイ、モレキュラーシーブス、チタニア、マグネシアおよびジルコニア、「キョーワード」(協和化学(株)製)および珪藻土など)や高分子担持体(ポリマーやデンドリマー)に酸性の官能基(スルホン酸基、リン酸基、ヘテロポリ酸基など)を担持したものが挙げられる。
これらのうち触媒活性の観点から好ましいものは無機多孔体であるシリカ、アルミナ、ゼオライトおよび「キョーワード」であり、特に好ましいものはシリカゲルおよび「キョーワード」である。
また、触媒活性の観点から好ましい酸性の官能基はスルホン酸基である。
固体酸触媒(α)のうち、触媒活性の観点から特に好ましいのはスルホン酸基担持無機多孔体(α1)である。
【0012】
スルホン酸基担持無機多孔体(α1)において、無機多孔体にスルホン酸基を担持させる方法としては、無機多孔体を、スルホン酸基に変換可能なスルホン酸前駆体基含有化合物(s)[以下において、単に(s)と表記する場合がある]と反応させ、その後スルホン酸前駆体基をスルホン酸基に変換する方法などが挙げられる。
【0013】
(s)は、その分子中に、無機多孔体の表面の官能基と反応する基およびスルホン酸基に変換可能な基を有する化合物である。
無機多孔体の表面の官能基としては水酸基、アミノ基およびカルボキシル基などが挙げられる。好ましいのは無機多孔体の表面を修飾しやすいという観点から水酸基である。
【0014】
一方、(s)が含有する、無機多孔体の表面の官能基と反応する基としては、表面の官能基が水酸基またはアミノ基の場合はトリアルコキシシリル基、グリシジル基およびカルボキシル基などが挙げられ、表面の官能基がカルボキシル基の場合はトリアルコキシシリル基、グリシジル基およびアミノ基などが挙げられる。
これらのうち好ましいのは表面の官能基との反応が進行し易いという観点からトリアルコキシシリル基およびグリシジル基、特にトリアルコキシシリル基である。
(s)が含有するスルホン酸基に変換可能なスルホン酸前駆体基としては、メルカプト基(酸化してスルホン酸基に変換)およびフェニル基(スルホン化してスルホフェニル基に変換)などが挙げられる。
【0015】
(s)の具体例としては、メルカプト基含有シランカップリング剤(メルカプトプロピルトリメトキシシランおよびメルカプトプロピルトリエトキシシランなど)、フェニル基含有シランカップリング剤(フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなど)およびフェニル基含有グリシジル化合物(フェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテルなど)が挙げられる。これらのうち好ましいものはメルカプト基含有シランカップリング剤である。
【0016】
シランカップリング剤と無機多孔体との反応は、種々の反応条件で行うことができる。例えば、シランカップリング剤を無機多孔体の重量に基づいて30〜60%(以下において、特に限定しない限り%は重量%を表す)の割合で仕込み、溶剤の存在下に加熱撹拌し、シランカップリング剤中のトリアルコキシシリル基と無機多孔体の表面の官能基(水酸基など)を反応させた後、精製して得ることができる。
反応溶剤としては有機溶剤(トルエン、キシレン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトンおよび/または低級アルコール等)を使用することができ、水とこれらの有機溶剤との混合溶剤でもよい。
水は無機多孔体表面の水酸基およびシランカップリング剤の活性を促進させるため少量使用する方が好ましく、水の割合はシランカップリング剤に対して3倍モル以下が特に好ましい。
また反応溶剤の使用量は無機多孔体の重量に基づいて、通常80〜300%、好ましくは100〜250%である。
【0017】
反応温度は通常60〜150℃であり、生成するアルコキシ基由来物質(例えばメタノール、エタノール等の低級アルコール)を除去しながら反応してもよい。
反応後は粒状物をろ過もしくは遠心分離機等を用いて分離・回収し、未反応物質(未反応シランカップリング剤など)除去のために、上記の有機溶剤で数回洗浄した後、減圧乾燥(通常100〜120℃、10〜20mmHgで3〜5時間)させる。
【0018】
メルカプト基含有シランカップリング剤を反応させた後、メルカプト基をスルホン酸基に変換するには、反応溶剤の存在下に酸化反応を行う。用いる酸化剤としては種々の酸化剤、例えば硝酸、過酸化水素、次亜塩素酸塩、過マンガン酸カリウム、クロム酸または過酸化物などが挙げられ、好ましいのは過酸化水素である。反応溶剤としてはアセトン、低級アルコール、アセトニトリル、ピリジン、クロロホルムおよび/またはジクロロメタンなどが通常使用される。反応温度は通常0〜100℃である。過酸化水素による酸化反応は米国特許5912385号明細書記載の反応条件でも行うことができる。
【0019】
フェニル基含有シランカップリング剤を反応させた後、フェニル基をスルホン化するには、種々のスルホン化方法が適用できる。スルホン化剤としては例えば濃硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、クロロ硫酸、フルオロ硫酸またはアミド硫酸等を用いる方法が挙げられる。この場合の反応溶剤としては酢酸、無水酢酸、酢酸エチル、アセトニトリル、ジクロロエタンおよび/または四塩化炭素などが使用できる。反応温度は通常−10〜180℃である。
【0020】
酸化反応またはスルホン化反応のいずれの場合でも反応後の精製処理操作として前述と同様の操作(分離・回収、洗浄および乾燥)を行うことによりスルホン酸基担持無機多孔体(α1)が得られる。
【0021】
スルホン酸基担持無機多孔体(α1)の製造方法のうち好ましいのは、メルカプト基含有シランカップリング剤を無機多孔体に反応させた後、スルホン酸基に変換する方法である。
【0022】
固体酸触媒(α)は、好ましくは5〜250mgKOH/g、さらに好ましくは10〜150mgKOH/g、特に好ましくは15〜100mgKOH/gの酸価を有する。
酸価が5mgKOH/g以上であることで触媒活性が向上し、少量の触媒でエステル化反応が進行し、酸価を100mgKOH/g以下であることで副反応が起こりにくくなる。
固体酸触媒(α)の酸価の測定はイオン交換水に固体酸触媒(α)を浸し、過剰の水酸化ナトリウムを加えて攪拌し、0.1N塩酸水溶液で中和滴定するという方法で測定できる。
【0023】
固体酸触媒(α)は通常は粒状物であり、その形状としては、不定形粒子、球状粒子またはペレット状などが挙げられる。
これらのうち球状粒子およびペレット状、特に球状粒子が、流通法で反応させる際の圧力損失が小さい点で好ましい。
【0024】
固体酸触媒(α)の粒径は、d50(平均粒子径)として、好ましくは1〜8,000μm、さらに好ましくは10〜6,000μm、特に好ましくは40〜500μmである。1μm以上にすることで取り扱いが容易になり、8,000μm以下が触媒活性の面で好ましい。またd50はJIS K1150に規定される粒度分布測定法において測定できる。
【0025】
固体酸触媒(α)の比表面積は、BET比表面積として、好ましくは30m2/g以上、さらに好ましくは50〜1,500m2/g、特に好ましくは100〜800m2/gである。30m2/g以上であることが、触媒活性が高くなりかつ副反応が少なくなる点で好ましい。またBET比表面積はJIS K1150に規定される比表面積測定法により測定できる。
【0026】
固体酸触媒(α)のアスペクト比は、1.0〜1.25が好ましく、さらに好ましくは1.0〜1.18、特に好ましくは1.0〜1.11である。なお、アスペクト比とは粒子の最長直径と最短直径の比であり、1.0に近いほど真球状であることを表す。アスペクト比が1.25以下であれば、流通法で反応させる際の圧力損失が小さい点で好ましい。
本発明においてアスペクト比は、粒子を顕微鏡観察し、その最長直径と最短直径を計測し、100個の粒子について平均することにより測定できる。
【0027】
本発明における単量体(a)の製造において、アルカノールと(メタ)アクリル酸の仕込み当量比は、通常1:3〜3:1、好ましくは1:2〜2:1、さらに好ましくは1:1.5〜1.5:1、特に好ましくは1:1.5〜1:1.02である。
アルカノールと(メタ)アクリル酸のうち除去が容易な方を過剰に用い、反応完了後、いずれか過剰の成分を除去するのが反応率向上の観点で有利である。
【0028】
単量体(a)の製造方法において、不飽和基の重合を防止する目的で重合禁止剤を添加することもできる。
重合禁止剤としては、フェノール系重合禁止剤(ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、クレゾール、ジ−t−ブチルクレゾール、ジ−t−ブチルフェノール、トリ−t−ブチルフェノールなど)、およびアミン系重合禁止剤(フェノチアジン、ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミンなど)などが挙げられる。
これらのうち好ましいものはフェノール系重合禁止剤である。
重合禁止剤の添加量は、アルカノールと(メタ)アクリル酸の総重量に基づいて通常0.001〜2%、好ましくは0.01〜1%、さらに好ましくは0.01〜0.5%、特に好ましくは0.01〜0.2%である。
【0029】
固体酸触媒(α)の使用量はアルカノールと(メタ)アクリル酸の総重量に対して、通常0.1〜70%、好ましくは1〜60%、さらに好ましくは2〜50%、特に好ましくは3〜40%である。
0.1%以上用いることで効率的にエステル化反応が進行し、70%以下が経済面から
好ましい。
また、固体酸触媒(α)の使用量は、アルカノールの仕込み当量に対する固体酸触媒(α)中の酸基の当量の比が好ましくは0.005〜0.3、さらに好ましくは0.01〜0.2となる添加量である。0.005以上であれば反応速度の観点から好ましく、0.3以下であれば副反応が抑制されるという観点から好ましい。
【0030】
エステル化反応の形態としては、バッチ法または流通法のいずれの方法でも実施することができる。
【0031】
バッチ法の場合は、固体酸触媒(α)、アルカノール、(メタ)アクリル酸、および必要により反応溶剤を反応槽の中に仕込み、加熱撹拌し、生成する水または低級アルコールを除去しながら反応を進行させる。反応完了後、反応生成物と固体酸触媒(α)をデカンテーション、ろ過、遠心分離などによって分離する。アルカノールまたは(メタ)アクリル酸を過剰に用いた場合は、固体酸触媒(α)を分離する前または分離後に
過剰の原料を除去することで、単量体(a)を得ることができる。
【0032】
エステル化反応温度は、通常60〜180℃、好ましくは80〜160℃、さらに好ましくは100〜140℃である。60℃以上が反応速度の観点から好ましく、180℃以下が副反応を抑制する観点から好ましい。
反応時間は、通常10分〜24時間、好ましくは30分〜10時間、特に好ましくは1〜5時間である。
反応溶剤としては、炭化水素系溶剤(トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素など)、ケトン系溶剤(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、およびエーテル系溶剤(テトラヒドロフランなど)などが使用できる。これらの反応溶剤のうち、反応生成水を分離して除去し易いという観点から炭化水素系溶剤が好ましい。
生成する水または低級アルコールを除去する方法としては、常圧または減圧下に溜去させる方法、分液や遠心分離する方法、モレキュラシーブス、硫酸マグネシウムなどの脱水剤と接触させる方法、水分離膜などの選択膜により膜分離する方法などが挙げられる。上記バッチ法の場合は、常圧または減圧下に溜去させる方法が好ましい。
【0033】
流通法の場合は、固体酸触媒(α)を充填したカラム、固定床または流動床などに、所定の温度に温調したアルカノールと(メタ)アクリル酸の混合物を通液することでエステル化反応させることができる。
1パス後の反応混合物を蒸留することにより単量体(a)を得ることもできるが、反応率を高くすることができるという観点から、固体酸触媒(α)の存在下にアルカノールと(メタ)アクリル酸とを反応させる工程(1)と、アルカノールと(メタ)アクリル酸との反応によって生成した水または低級アルコールを反応混合物から除去する工程(2)とからなる製造方法が好ましい。
特に、工程(1)と工程(2)とを繰り返すことで反応率をさらに高めることができる。 工程(1)において通液するアルカノールと(メタ)アクリル酸の混合物の温度は、通常60〜180℃、好ましくは80〜160℃、さらに好ましくは100〜140℃である。60℃以上が反応速度の観点から好ましく、180℃以下が副反応を抑制する観点から好ましい。
工程(1)における1パスあたりの平均通液時間(触媒と反応液の平均接触時間)は、通常0.1〜60分、好ましくは0.2〜10分、さらに好ましくは0.5〜5分である。工程(2)における水または低級アルコールを除去する方法としては、連続式エバポレーターで留去する方法、コンデンサーを付した反応槽などを用いて常圧または減圧下に溜去させる方法、並びに水分離膜、遠心分離もしくは脱水剤によって脱水する方法などが挙げられる。これらのうち、連続式エバポレーター、コンデンサーを付した反応槽およびそれらの併用が生産効率の観点から好ましい。
工程(1)と工程(2)の繰り返し回数は、通常1〜500回、好ましくは3〜200回、さらに好ましくは5〜100回である。
【0034】
単量体(a)の製造方法において、(メタ)アクリル酸および生成物の重合を禁止する目的で、反応液中に酸素を溶存させることもできる。酸素の供給源としては、酸素ガス、空気、および空気と窒素の混合気(以下、(混合気)と略記する場合がある)などが挙げられ、これらを反応液中に通気することで酸素を溶存させられる。こららのうち安全性の観点から、空気および混合気、特に混合気が好ましい。
【0035】
混合気の空気と窒素の混合体積比率は、通常1:9〜9:1、好ましくは1:9〜5:5、特に好ましくは2:8〜4:6である。空気の比率を高めることで重合禁止効果が高まり、窒素の比率を高めることで生成物の着色が少なくなる点で好ましい。
空気または混合気の通気量は、アルカノールと(メタ)アクリル酸の総和1kgあたり、好ましくは1〜5,000mL/分、さらに好ましくは20〜1,000mL/分、特に好ましくは30〜500mL/分である。
空気または混合気を通気する方法としては、バッチ法の場合は反応槽下部からエステル化反応中に常時通気する方法が挙げられる。
流通法の場合は、工程(1)、工程(2)およびそれらの途中の配管中に通気する方法が挙げられるが、工程(2)において通気することが反応速度と重合禁止の両立の観点で特に好ましい。
【0036】
重合禁止剤としては、前述のフェノール系重合禁止剤およびアミン系重合禁止剤からなる群から選ばれる1種以上の重合禁止剤が挙げられる。
重合禁止剤の含有量は単量体(a)の重量に基づいて0.001〜0.2%、好ましくは0.01〜0.06%である。
【0037】
硫黄原子含有化合物は、単量体(a)の重量に基づいて、硫黄原子含有量として、通常50ppm以下、抗乳化性の観点から好ましくは30ppm、特に好ましくは10ppm(検出限界)以下である。
【0038】
なお、単量体(a)中の硫黄原子含有量は蛍光X線分析装置(パナリティカル社製)により定量できる。
【0039】
本発明の潤滑油添加剤は、上記の単量体(a)の単独重合体からなるものであってもよいが、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、さらに単量体(a)以外の他の単量体を共重合した共重合体からなるものである。
【0040】
重合体(A)の構成単量体として使用できる、単量体(a)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)としては、前述の(a1)および(a2)に対応する、硫黄原子含有量が50ppmを超える下記の単量体(b1)および(b2)、並びに(a)よりもアルキル基の炭素数が少ない下記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b3)および(b4)が挙げられる。
(b1)硫黄原子含有量が50ppmを超えるアルキル基の炭素数が10〜15の(メタ)アクリル酸アルキルエステル
(b2)硫黄原子含有量が50ppmを超えるアルキル基の炭素数が16〜36の(メタ)アクリル酸アルキルエステル
なお、(b1)および(b2)の化学的組成は上記の(a1)および(a2)と同様のものが挙げられる。
【0041】
(b3)アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステル:
(メタ)アクリル酸メチル(このうち、メタクリル酸メチルを以下MMAと略記する)、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−または、iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−、iso−またはsec−ブチル(このうち、メタクリル酸n−ブチルをBMAと略記する)などが挙げられる。
(b4)アルキル基の炭素数が5〜9(直鎖または分岐)の(メタ)アクリル酸アルキルエステル:
(メタ)アクリル酸n−、iso−、sec−およびネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、などが挙げられる。
(b)のうちで、抗乳化性と溶解性の観点から好ましいのは(b3)、さらに好ましいのはMMAである。
【0042】
単量体(a)以外の単量体としては、さらに以下の(d)〜(n)が挙げられる。
【0043】
(d)窒素原子含有単量体;
【0044】
(d1)ニトロ基含有単量体:
例えば、4−ニトロスチレンなど、
(d2)1〜3級アミノ基含有ビニル単量体:
1級アミノ基含有ビニル単量体、例えば、炭素数3〜6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン、クロチルアミンなど]、アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレートなど]、2級アミノ基含有ビニル単量体、例えば、アルキル(炭素数1〜6)アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[t−ブチルアミノエチルメタクリレート、メチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど]、ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド[4−ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド、2−ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミドなど]、炭素数6〜12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミンなど]、3級アミノ基含有ビニル単量体、例えば、ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど、ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリルアミド[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなど]、3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体[N,N−ジメチルアミノスチレン、など]、含窒素複素環含有ビニル系単量体[モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルチオピロリドンなど]、
(d3)第4級アンモニウム塩基含有ビニル単量体:
例えば、前述の3級アミノ基含有ビニル単量体を、4級化剤(炭素数1から12のアルキルクロライド、ジアルキル硫酸、ジアルキルカーボネート、およびベンジルクロライド等)を用いて4級化したものなどが挙げられる。具体的には、アルキル(メタ)アクリレート系第4級アンモニウム塩としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルモルホリノアンモニウムクロライドなど;アルキル(メタ)アクリルアミド系第4級アンモニウム塩としては、例えば、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなど;その他の第4級アンモニウム塩基含有ビニル系単量体としては、例えば、ジメチルジアリルアンモニウムメチルサルフェート、トリメチルビニルフェニルアンモニウムクロライドなど、
(d4)両性ビニル単量体:
N−(メタ)アクリロイルオキシ(もしくはアミノ)アルキル(炭素数1〜10)N,N−ジアルキル(炭素数1〜5)アンモニウム−N−アルキル(炭素数1〜5)カルボキシレート(もしくはサルフェート)、例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウムN−メチルカルボキシレート、N−(メタ)アクリロイルアミノプロピルN,N−ジメチルアンモニウムN−メチルカルボキシレート、およびN−(メタ)アクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウムプロピルサルフェートなど、
(d5)ニトリル基含有単量体:
(メタ)アクリロニトリルなど、
【0045】
(e)脂肪族炭化水素系ビニル単量体:
例えば、炭素数2〜20のアルケン[エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセンなど]、および炭素数4〜12のアルカジエン[ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6ヘプタジエン、1,7−オクタジエンなど]、
【0046】
(f)脂環式炭化水素系ビニル単量体:
例えば、シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン、およびエチリデンビシクロヘプテンなど、
【0047】
(g)芳香族炭化水素系ビニル単量体:
例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−ブチルスチレン、4−フェニルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ベンジルスチレン、4−クロチルベンゼン、および2−ビニルナフタレンなど、
【0048】
(h)ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類:
例えば、炭素数2〜12の飽和脂肪酸のビニルエステル[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、オクタン酸ビニルなど]、炭素数1〜12のアルキル、アリールもしくはアルコキシアルキルのビニルエーテル[メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル2−メトキシエチルエーテル、ビニル2−ブトキシエチルエーテルなど]、および炭素数1〜8のアルキルもしくはアリールのビニルケトン[メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、フェニルビニルケトンなど]、
【0049】
(i)エポキシ基含有ビニル単量体;
例えば、グリシジル(メタ)アクリレートグリシジル(メタ)アリルエーテルなど、
【0050】
(j)ハロゲン元素含有ビニル単量体;
例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル、ハロゲン化スチレン(ジクロルスチレンなど)など、
【0051】
(k)不飽和ポリカルボン酸のエステル;
例えば、不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキルもしくはアラルキルエステルが挙げられ、このうち不飽和ジカルボン酸[マレイン酸、フマール酸、イタコン酸など]の炭素数1〜8のアルキルジエステル[ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート、ジオクチルマレエート]など、
【0052】
(l)ヒドロキシル基含有ビニル単量体;
例えば、ヒドロキシル基含有芳香族ビニル単量体[p−ヒドロキシスチレンなど]、ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2または3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど]、モノ−またはジ−ヒドロキシアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N−ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミドなど]、ビニルアルコール(酢酸ビニル単位の加水分解により形成される)、炭素数3〜12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−オクテノール、1−ウンデセノールなど]、炭素数4〜12のアルケンジオール[1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオールなど]、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜6)アルケニル(炭素数3〜10)エーテル[2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテルなど]、多価(3〜8価)アルコール(アルカンポリオール、その分子内もしくは分子間脱水物、糖類、例えばグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、蔗糖)のアルケニル(炭素数3〜10)エーテルもしくは(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル]など、
【0053】
(m)ポリオキシアルキレン鎖含有ビニル単量体;
例えば、ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜50)、もしくはポリオキシアルキレンポリオール[上記3〜8価のアルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキル基の炭素数2〜4、重合度2〜100)]、またはそれらのアルキル(炭素数1〜4)エーテルのモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(分子量100〜300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量130〜500)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(分子量110〜310)(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキシド付加物(2〜30モル)(メタ)アクリレート、モノ(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン(分子量150〜230)ソルビタン]など、
【0054】
(n)カルボキシル基含有ビニル単量体;
モノカルボキシル基含有ビニル単量体、例えば、不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、α−メチル(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸など]、不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル[マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなど];2個以上のカルボキシル基を含有するビニル単量体、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸など、が挙げられる。
【0055】
これらの(d)〜(n)の単量体のうち、スラッジ分散性の観点から好ましいものは(d)、(l)およびこれらの併用、さらに好ましいものは(d)、特に好ましいものは(d2)、とりわけ好ましいものはジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート(以下DAEと略す)、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびモルホリノエチル(メタ)アクリレートである。
【0056】
重合体(A)を構成する単量体(a)の割合は、抗乳化性と希釈溶剤および基油に対する溶解性の観点から、(A)を構成する全単量体の重量に基づいて、通常45%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは、60%以上である。
【0057】
本発明の潤滑油添加剤は粘度指数向上剤として使用できる。
重合体(A)が粘度指数向上剤として使用される場合の(A)を構成する単量体中の(a1)、(a2)および(b3)のそれぞれの割合は、粘度指数と溶解性の観点から;
(a1)が、好ましくは0.1〜100%、さらに好ましくは20〜95%、特に好ましくは30〜95%、とりわけ好ましくは40〜95%、最も好ましくは50〜95%であり;
(a2)は、好ましくは0〜75%、さらに好ましくは5〜65%、特に好ましくは5〜50%、とりわけ好ましくは5〜40%、最も好ましくは5〜20%であり;
(b3)は、好ましくは0〜45%、さらに好ましくは5〜40%、特に好ましくは10〜35%、とりわけ好ましくは10〜25%、最も好ましくは10〜22%である。
【0058】
重合体(A)が粘度指数向上剤として使用される場合の(b3)/(a)は、(5〜30)/(70〜95)、さらに好ましくは(10〜22)/(78〜90)である。
【0059】
重合体(A)が粘度指数向上剤として使用される場合の(A)の具体例としては、例えばメタクリル酸メチル/アルキル基の炭素数12〜15のメタクリル酸エステル/アルキル基の炭素数16〜20のメタクリル酸エステル(0〜22%/20〜90%/0〜20%)共重合体などが挙げられる。
【0060】
なお、重合体(A)が粘度指数向上剤として使用される場合の重合体(A)を構成する単量体中の(d)の重量割合は、通常0%、スラッジ分散性の観点から好ましくは0.1〜10%、さらに好ましくは1〜7%、特に好ましくは2〜5%である。
【0061】
本発明の潤滑油添加剤は流動点降下剤として用いることができる。
重合体(A)が流動点降下剤として使用される場合の(A)を構成する単量体中の(a1)、(a2)および(b3)のそれぞれの割合は、低温粘度と希釈剤および基油への溶解性の観点から;
(a1)が、好ましくは30〜100%、さらに好ましくは40〜95%、特に好ましくは50〜90%であり;
(a2)は、好ましくは0〜70%、さらに好ましくは5〜60%、特に好ましくは10〜50%であり;
(b3)は、好ましくは0〜20%、さらに好ましくは0〜10%、特に好ましくは0%である。
【0062】
重合体(A)が流動点降下剤として使用される場合の(b3)/(a)は、(0〜10)/(100〜90)、さらに好ましくは(0)/(100)である。
【0063】
重合体(A)が流動点降下剤として使用される場合の、(A)を構成する(a)のアルキル基の好ましい平均炭素数は12〜16である。
重合体(A)が流動点降下剤として使用される場合の(A)の具体例としては、メタクリル酸ドデシル/メタクリル酸ヘキサデシル(10〜50%/50〜90%)共重合体[平均炭素数:14.0〜15.6]、メタクリル酸ドデシル/メタクリル酸テトラデシル(90〜70%/10〜30%)共重合体[平均炭素数:12.2〜12.6]、およびD23/HMA/OMA(30〜70%/5〜50%/3〜20%)共重合体[平均炭素数:13.7〜15.4]などが挙げられる。
【0064】
なお、重合体(A)が粘度指数向上剤または流動点降下剤として使用される場合において、単量体(b)を構成単量体として使用する場合は、(b)中の硫黄原子含有量と(a)中の硫黄原子含有量から算出される平均の硫黄原子含有量が50ppm以下であることが好ましい。
【0065】
重合体(A)の重量平均分子量(以下、Mwと略記する)は、好ましくは5,000〜1,000,000、さらに好ましくは15,000〜500,000、特に好ましくは20,000〜400,000である。本発明におけるMwはゲルパーミュエーションクロマトグラフィーにより、ポリスチレンを標準として測定されるものである。
Mwを調整する手段としては、例えば、後述の重合時の温度、単量体濃度(希釈剤濃度)、触媒量および連鎖移動剤量などにより調整できる。
【0066】
重合体(A)は、公知の製造方法によって得ることができる。例えば前記の単量体を、必要により希釈溶剤(D)を使用して、重合触媒存在下にラジカル重合することにより得られる。
【0067】
希釈溶剤(D)としては、脂肪族溶剤[炭素数6〜18の脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、デカリン、灯油など)];芳香族溶剤{炭素数7〜15の芳香族溶剤[トルエン、キシレン、エチルベンゼン、炭素数9の芳香族混合溶剤(トリメチルベンゼン、エチルトルエンなどの混合物)、炭素数10〜11の芳香族混合溶剤など]、鉱物油[例えば、溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有するおよびまたは水素化分解による高粘度指数油、ナフテン油]、合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリαオレフィン系合成潤滑油)、エステル系合成潤滑油]などであり、これらのうち好ましいものは鉱物油である。
【0068】
稀釈溶剤(D)として好ましいのは120℃以上、さらに好ましくは130℃以上、特に好ましくは150℃以上、とりわけ好ましくは160℃以上の引火点を有する稀釈溶剤である。稀釈溶剤(D)の引火点が120℃以上であると、稀釈溶剤(D)を含む粘度指数向上剤組成物を高温でも安全に取り扱うことができる。
引火点が120℃以上の稀釈溶剤としては、「SK Corporation製;YUBASE 2」(引火点:160℃)、「SK Corporation製;YUBASE 3」(引火点:194℃)などが挙げられる。
希釈溶剤(D)は重合後に減圧下に加熱留去などの方法で除去してもよいが、取り扱い性の観点から好ましいのは希釈溶剤(D)をそのまま残存させる方法である。希釈溶剤(D)を残存させた場合は後述の潤滑油添加剤組成物として得られる。
重合触媒としては、アゾ系触媒(例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(以下AMBNと略す)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下ADVNと略す)、ジメチル2,2−アゾビスイソブチレートなど)や過酸化物系(例えば、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、ベンゾイルパーオキシド、クミルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、クミルパーオキシド、ラウリルパーオキシドなど)を用いることができる。
さらに、必要により連鎖移動剤を併用してもよく、このようなものとしては、例えばチオール類(n−ラウリルメルカプタン(以下DMと略す)、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール等)、チオール酸類(チオグリコール酸、チオリンゴ酸等)、アミン類(ジブチルアミン等)等を挙げることができ、連鎖移動剤の量は単量体の質量に対して、好ましくは0.001〜5%、さらに好ましくは0.05〜3%である。反応温度としては、50〜140℃、好ましくは70〜120℃である。また、上記の希釈溶剤(D)を使用した溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合または懸濁重合により得ることもできる。さらに、(A)が共重合体の場合の重合様式としては、ランダム共重合、交互共重合またはブロック共重合のいずれでもよく、また(A)は直鎖状または分岐状のいずれでもよい。
【0069】
本発明の潤滑油添加剤は通常は重合体(A)のみからなる。
【0070】
本発明の潤滑油添加剤組成物は、重合体(A)および希釈溶剤(D)を含有する。
重合体(A)は、潤滑油添加剤組成物の形態の方が、重合体(A)のみでは粘稠であっても稀釈溶剤(D)を含有させることによって、基油に添加する際に容易に溶解できる点で好ましい。
本発明の潤滑油添加剤組成物は好ましくは10〜90%、さらに好ましくは20〜90%、特に好ましくは30〜90%の潤滑油添加剤および好ましくは10〜90%、さらに好ましくは10〜80%、特に好ましくは10〜70%の希釈溶剤(D)からなる潤滑油添加剤組成物が好ましい。
希釈溶剤(D)の比率が高いほうが基油に容易に溶解する点で好ましいが、あまり多いのは経済的ではない。
稀釈溶剤(D)としては、前述の重合工程で使用したものをそのまま使用してもよく、新たに加えてもよい。希釈溶剤(D)の例としては、前述と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0071】
本発明の潤滑油組成物は、上記の潤滑油添加剤および基油を含有し、基油が2〜10mm2/sの100℃での動粘度と160℃以上の引火点を有し、潤滑油組成物の重量に基づいて重合体(A)を0.1〜30%含むことを特徴とする。
潤滑油添加剤が潤滑油添加剤組成物の形態で基油に添加される場合は、潤滑油組成物には希釈溶剤(D)も含まれる。
【0072】
基油としては前述の鉱物油および合成潤滑油などが挙げられる。
これらのうち好ましくは、イソパラフィンを含有するおよびまたは水素化分解による高粘度指数油およびポリαオレフィン系合成潤滑油、エステル系合成潤滑油である。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0073】
基油の100℃での動粘度は、潤滑油組成物の用途に応じて表1に示した好ましい範囲がある。
基油の動粘度が2mm2/s未満であると油膜切れを生じて焼きつけを起こし易い。また10mm2/sを超えると低温粘度が悪化する。
また、基油の引火点は、通常160℃以上、好ましくは180℃以上、さらに好ましくは190℃以上、特に好ましくは200℃以上である。引火点が160℃未満の基油を使用すると、潤滑油組成物の引火点が低くなり、火災の危険性が高く、安全に使用できない。
【0074】
また、基油の粘度指数は好ましくは80以上、さらに好ましくは100以上、特に好ましくは105〜180である。このような基油を使用すると、粘度指数がさらに高くなり省燃費性がさらに良好となる。
【0075】
また、基油の曇点(JIS K2269−1993年)は−5℃以下が好ましい。さらに好ましくは−15℃〜−60℃である。基油の曇点がこの範囲であるとワックスの析出量が少なく低温粘度が良好である。
【0076】
潤滑油組成物の重量に基づく共重合体(A)の含量は通常0.1〜30%であり、潤滑油組成物の用途に応じて表1に示した好ましい範囲がある。
【0077】
【表1】

【0078】
本発明の潤滑油組成物はさらに従来から公知の他の添加剤(C)を含有してもよい。
他の添加剤(C)としては、以下のものが使用できる。
分散剤:ポリアルケニルコハク酸イミド(ビス−およびモノ−ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物およびボレート類;
清浄剤:塩基性、過塩基性または中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート、アルキルナフタレンスルフォネートなど)の過塩基性またはアルカリ土類金属塩]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類およびこれらの混合物;
酸化防止剤:ヒンダードフェノール類および芳香族2級アミン類;
消泡剤:シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステルおよびフォスフェート化合物など;
油性向上剤:長鎖脂肪酸およびそれらのエステル(オレイン酸およびオレイン酸エステルなど)、長鎖アミンおよびそれらのアミド(オレイルアミンおよびオレイルアミドなど);
摩擦摩耗調整剤:モリブデン系および亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメートおよびジンクジアルキルジチオフォスフェートなど)、有機リン化合物(モノアルキルホスフェート、モノアリールホスフェート、ジアルキルホスフェート、ジアリールホスフェートなどと、モノアルキルアミンまたはジアルキルアミンとの塩。モノアルキルホスファイト、ジアルキルホスファイト、トリアルキルホスファイト、またはこれらに相当するアリールホスファイト。モノアルキルホスファイト、モノアリールホスファイト、ジアルキルホスファイト、ジアリルアリールホスファイトなどと、モノアルキルアミンまたはジアルキルアミンとの塩);
極圧剤:硫黄系化合物(モノ−およびジ−スルフィド、スルフォキシドおよび硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物および塩素系化合物(塩素化パラフィン)など;
抗乳化剤:第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩)、硫酸化油、フォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート)など;
腐食防止剤:窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾールおよび1,3,4−チオジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート)など。
【0079】
他の添加剤(C)は、以下の表2記載の量(重量%、但し消泡剤はppm)を潤滑油組成物の重量に基づいて使用することができる。
【0080】
【表2】

【0081】
添加剤合計の添加量は潤滑油組成物の重量に基づいて、30%以下、好ましくは10〜20%である。
【0082】
本発明の潤滑油組成物の100℃での動粘度は、好ましくは2〜16mm2/sであり、潤滑油組成物の用途に応じて表3に示した好ましい範囲がある。潤滑油組成物の動粘度が2mm2/s以上であれば、漏れや焼き付きを起こしにくくなり、16mm2/s以下であれば、粘性抵抗が少なくなり、エネルギーロスを起こしにくい。
【0083】
【表3】

【0084】
本発明の潤滑油組成物は、デファレンシャル油および工業用ギヤ油などのギヤ油、マニュアルトランスミッション油(以下、MTFと略記)、オートマチックトランスミッション油(以下、ATFと略記)およびベルト−CVTFなどの変速機油、トロイダル−CVT油などのトラクション油、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、建設機械用作動油および工業用作動油などの作動油、並びにエンジン油などに好適に用いられる。これらのうち好ましいのは建設機械用作動油および工業用作動油である。
【0085】
<実施例>
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、製造例、実施例、比較例中の部は重量部を表す。
(GPCによる重量平均分子量の測定法)
装置 : 東洋曹達製 HLC−802A
カラム : TSK gel GMH6 2本
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.5重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 200μl
検出装置 : 屈折率検出器
標準 : ポリスチレン
【0086】
<引火点の試験法>
JIS K2265のクリーブランド開放式で行った。
<低温粘度の試験方法>
JPI−5S−26−85の方法で−40℃の粘度を測定した。
<粘度指数の試験方法>
JIS K2283の方法で行った。
<剪断安定性の試験方法>
JASO M347−95の方法に従い100℃の動粘度低下率を算出した。
<動粘度の測定方法>
JIS K2283の方法で行った。
<抗乳化性の試験方法>
JIS K2520に従い、30分後の抗乳化性を評価した。
<流動点の測定方法>
JIS K2269の方法で行った。
【0087】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)の製造>
製造例1
攪拌装置、加熱冷却装置、温度計、分水管を備えた反応容器に、n−ドデシルアルコール1800部とメタクリル酸1,100部を仕込み(モル比1:1.3)、これに触媒(α−1)(スルホプロピル基担持シリカゲル、d50は220μm、BET比表面積は287m2/g、酸価は43mgKOH/g、アスペクト比は1.02)を580部および重合禁止剤としてハイドロキノン0.3部を加えた。反応温度115〜125℃にて攪拌しながら生成水を分水管により連続的に系外へ除去し2時間エステル化反応させた。さらに250〜300mmHgの減圧下に115〜125℃で1時間反応させ、次いで10〜20mmHg、120〜130℃で過剰のメタクリル酸を留去した後、冷却し、触媒をろ過で除去することで、メタクリル酸n−ドデシルエステル(以下、DMA−aと略す)を2,500部得た。
得られたDMA−a中の硫黄原子含有量を蛍光X線分析装置(パナリティカル社製)により定量した結果、検出限界以下(10ppm以下)であった。
【0088】
製造例2〜4
表4記載の製造例2〜4の原料と部数で、それ以外は製造例1と同様にして、メタクリル酸n−テトラデシルエステル(以下、TMA−aと略す)、メタクリル酸n−ヘキサデシルエステル(以下、HMA−aと略す)およびメタクリル酸n−オクタデシルエステル(以下、OMA−aと略す)を製造した。
生成物の分析結果を表4に示す。
【0089】
比較製造例1〜4
触媒以外は製造例1と同様にして表4記載の部数の原料を使用してエステル化反応を行い、その後生成物を10%水酸化ナトリウム水溶液50部で中和した後分液操作することにより、比較のメタクリル酸n−ドデシルエステル(以下、DMA−bと略す)、メタクリル酸n−テトラデシルエステル(以下、TMA−bと略す)、メタクリル酸n−ヘキサデシルエステル(以下、HMA−bと略す)およびメタクリル酸n−オクタデシルエステル(以下、OMA−bと略す)を製造した。
分析結果を表4に示す。
【0090】
【表4】

【0091】
実施例1
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、および窒素吹き込み管を備えた反応容器に、鉱油(「YUBASE 2」;SK Corporation製、引火点:160℃)25部を仕込み、別のガラス製ビーカーに、メチルメタクリレート(三菱ガス化学製、硫黄含量10ppm以下;以下MMAと略す)と表2に記載の単量体を合計100部、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル:ADVNと略記)を表2記載の量仕込み、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに仕込んだ。反応容器の気相部の窒素置換を行い、気相酸素濃度を500〜1,000ppmとした。密閉下85℃で4時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から2時間、85℃で熟成した後、得られたポリマーを130℃、3時間、減圧度4kPa以下で2時間かけて低沸成分を留去し、「YUBASE 2」で60%の濃度まで希釈した後、潤滑油添加剤組成物(A−1)を得た。Mwの測定結果を表5に示す。(A−1)に含まれる重合体は粘度指数向上剤として適している。
【0092】
実施例2、3および比較例1〜3
単量体を表5記載の部数使用したこと以外は実施例1と同様に本発明の潤滑油添加剤組成物(A−2)および(A−3)、並びに比較の潤滑油添加剤組成物(X−1)、(X−2)および(X−3)を得た。
(A−2)に含まれる重合体は粘度指数向上剤として適しており、(A−3)に含まれる重合体は流動点降下剤として適している。(X−1)および(X−2)はそれぞれ(A−1)および(A−2)の比較品であり、(X−3)は(A−3)の比較品である。
Mwの測定結果を表5に示す。
【0093】
【表5】

【0094】
<潤滑油組成物の調製と抗乳化性試験>
実施例4〜7、比較例4〜7
(A−1)〜(A−3)、(X−1)〜(X−3)と基油1(100℃動粘度:4.3mm2/s、40℃動粘度:20.3mm2/s、粘度指数:121)を表6記載の重量部で混合溶解し潤滑油組成物を調製した。低温粘度、粘度指数、流動点、せん断安定性および抗乳化性の結果を表6に示す。
【0095】
【表6】

【0096】
表6から分かるように、本発明の潤滑油添加剤は、低温粘度、粘度指数、流動点、せん断安定性だけでなく抗乳化性にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の潤滑油添加剤は、低温粘度、粘度指数、流動点、せん断安定性だけでなく抗乳化性にも優れていることから、油圧作動油などの工業用潤滑油だけなく駆動系潤滑油(マニュアルトランスミッション油、デファレンシャルギヤ油、オートマチックトランスミッション油、ベルトCVT油など)、作動油(パワーステアリング油、ショックアブソーバー油など)、エンジン油(ガソリン用、ディーゼル用など)、トラクション油などに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全構成単量体のうちアルキル基の炭素数が10〜36の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)が45重量%以上である重合体(A)からなる潤滑油添加剤であって、該(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)中の硫黄原子含有量が50ppm以下である潤滑油添加剤。
【請求項2】
該(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)が、固体酸触媒(α)の存在下に、炭素数が10〜36のアルカノールと(メタ)アクリル酸またはその低級アルキルエステルとの反応により得られる(メタ)アクリル酸エステルである請求項1記載の潤滑油添加剤。
【請求項3】
固体酸触媒(α)が、スルホン酸基担持無機多孔体(α1)である請求項2記載の潤滑油添加剤。
【請求項4】
粘度指数向上剤である請求項1〜3のいずれか記載の潤滑油添加剤。
【請求項5】
流動点降下剤である請求項1〜3のいずれか記載の潤滑油添加剤。。
【請求項6】
組成物の重量に基づいて10〜90重量%の請求項1〜5のいずれか記載の潤滑油添加剤および10〜90重量%の希釈溶剤(D)を含有する潤滑油添加剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか記載の潤滑油用添加剤および基油を含有する潤滑油組成物。

【公開番号】特開2007−238663(P2007−238663A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59280(P2006−59280)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】