説明

潤滑油組成物

【課題】減少された量、例えば、30質量%未満の、グループIV及び/又はグループV原料油、並びに1200ppm以下のリンを潤滑剤に導入する量のリン系耐磨耗剤を有するヘビーデューティディーゼル(HDD)エンジン用の低粘度SAE 0W及びSAE 5Wマルティグレード・クランクケース潤滑剤(これらの潤滑剤はAPI CJ-4、API CI-4及び/又はACEA E7仕様の磨耗性能要件を満足する)をブレンドするための手段を提供すること。
【解決手段】潤滑粘度の油の全質量を基準として、約30質量%以下のグループIV原料油及び/又はグループV原料油を含む過半量の潤滑粘度の油、少なくとも約0.3質量%の非水素化オレフィンポリマー、及び約40ppmより多いホウ素で配合された、1.0質量%以下の硫酸塩灰分、0.4質量%以下の硫黄含量、及び0.12質量%以下のリン含量を有する、API CJ-4、API CI-4、及び/又はACEA E7仕様の少なくとも一つの性能要件を満足するヘビーデューティディーゼル(HDD)エンジン用のSAE 0W及び5Wマルティグレードクランクケース潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は50質量%未満のグループIV原料油及びグループV原料油を含み、1200ppm以下のリンを潤滑剤に導入する量のリンをベースとする耐磨耗剤を含む、ヘビーデューティディーゼル(HDD)エンジンのためのSAE 0Wマルティグレードクランクケース潤滑剤及びSAE 5Wマルティグレードクランクケース潤滑剤(これらの潤滑剤はAPI CJ-4仕様、API CI-4仕様、及び/又はACEA E7仕様の磨耗性能要件を満足する)に関する。
【背景技術】
【0002】
クランクケース潤滑剤は原料油及び原料油の分解を遅延し、かつその性能を改良する添加剤を含む。このような添加剤として、典型的には分散剤、有機酸の過塩基化(overbased)塩及び中性塩、腐食抑制剤、耐磨耗剤、酸化防止剤、摩擦改質剤、消泡剤、及び解乳化剤が挙げられる。これらの添加剤は、しばしば洗剤インヒビター(又はDI)パッケージと称されるパッケージ中で合わされる。このようなパッケージ中の添加剤は官能化ポリマーを含んでもよいが、これらは典型的には7000以下の数平均分子量

を有する比較的短い鎖を有する。
マルティグレード潤滑剤は広い温度範囲にわたって機能する。典型的には、それらは二つの数字、例えば、10W-30又は5W-30により同定される。マルティグレード表示における最初の数字は高せん断速度下の低温クランキングシミュレーター(CCS)により測定されるようなそのマルティグレード・オイルについての安全クランキング温度(例えば、-20℃)粘度要件(ASTM D5293)と関連する。一般に、低CCS粘度を有する潤滑剤はエンジンが低温で一層容易に始動することを可能にし、こうしてこれらの周囲温度でエンジン始動性を改良する。
マルティグレード表示における2番目の数字は通常の運転温度における潤滑剤の粘度と関連し、100℃における動的粘度(kV)に関して測定される(ASTM D445)。高温粘度要件は100℃における最小動的粘度及び最大動的粘度を分類する。高温における粘度は潤滑剤がエンジン運転中にあまりにも大きく薄められた場合に結果として生じるようなエンジン磨耗を防止することが望ましい。しかしながら、潤滑剤は粘稠でありすぎるべきではない。何とならば、過度の粘度が不要な粘稠ドラッグを生じ、潤滑剤をポンプ輸送するように作用することがあり、これが順に燃料消費を増大し得るからである。一般に、潤滑剤の100℃におけるkVが低い程、潤滑剤が燃料経済試験で到達するスコアが良好である。
こうして、所定のマルティグレード・オイル表示について適格にするために、特別なマルティグレード・オイルはSAE仕様、例えば、SAE J300により定められる厳密な低温及び高温粘度要件の両方を同時に満足する必要がある。SAE J300に定められる現在の粘度制限は下記のとおりである。
【0003】
【表1】

【0004】
SAE J300スキームでは、マルティグレード・オイルは低温性能及び高温性能の両方の要件を満足する。例えば、SAE 5W-30マルティグレード・オイルは5W粘度グレード要件及び30粘度グレード要件の両方、即ち、-25℃で3500x10-3Pa.sの最大CCS粘度、9.3mm2/sの最小kV100℃及び<12.5mm2/sの最大kV100℃を満足する粘度特性を有する。
潤滑剤の粘度特性は主として原料油の粘度特性及び粘度改質剤の粘度特性に依存する。潤滑剤中にしばしば見られるその他の添加剤のうち、高分子量分散剤のみが粘度に影響すると考えられ、それらの影響が原料油及び粘度改質剤と較べて小さいと思われていた。
潤滑油がベースとする原料油の粘度特性は典型的には油のニュートラル値(例えば、S150N)により表され、高いニュートラル値は所定の温度における高粘度と関連している。この値はセイボルトユニバーサル秒で40℃で測定された原料油の粘度と定義される。原料油をブレンドすることは得られる潤滑油の粘度特性を改質する一つの方法である。例えば、S100Nで完全配合された潤滑剤はS150N原料油で完全配合された潤滑剤よりも低いkV 100及び低いCCSの両方を有するであろう。S100N及びS150Nのブレンドを含む原料油はストレートカットのCCSの間のCCSを有するであろう。ストレートカットのブレンドの平均原料油ニュートラル値(平均BSNN)は下記の式に従って測定されてもよい。
【0005】
【数1】

【0006】
式中、
BSRn=原料油nについての原料油比
=(原料油nの重量%/油中の全原料油の重量%)x100%
BSNNn=原料油nについての原料油ニュートラル値
異なる粘度特性の原料油を単にブレンドすることは配合者が或る種のマルティグレード・オイルの低温及び高温粘度要件を満足することを可能にしないかもしれない。この目標を達成するための配合者の主たる手段は粘度改質剤又は粘度指数(V.I.)改良剤と通常称される添加剤である。通常、必要とされる最小の高温粘度に達するために、かなりの量の粘度改質剤を添加することが必要である。しかしながら、増加された量の粘度改質剤の使用は増大された低温潤滑剤粘度をもたらす。燃料経済試験で改良された性能を発するクランクケース潤滑剤を配合するためにたえず増大する要望がその工業を低粘度グレード、例えば、0W20、0W30、5W20及び5W30のHDDエンジン潤滑剤へと強要している。
低粘度の高い燃料経済潤滑剤についての要求と同時に、環境上の関心及び最新エンジンと組み合わせて使用される公害制御装置(例えば、三方向触媒コンバーター及び粒状物トラップ)との適合性を保証することの両方のためにクランクケース潤滑剤中の硫酸塩灰分、リン及び硫黄の含量を減少しようとする絶え間ない努力があった。潤滑剤配合者に入手し得る酸化防止剤-耐磨耗添加剤の特に有効なクラスはジアルキルジチオホスフェートの金属塩、特にその亜鉛塩(普通、ZDDPと称される)である。このような添加剤は優れた性能を与えるが、ZDDPは潤滑剤について硫酸塩灰分、リン及び硫黄の夫々に寄与する。
ヨーロッパ(ACEA E7)及び米国(API CJ-4)の夫々におけるヘビーデューティディーゼル(HDD)エンジンクランクケース潤滑剤についての最近の仕様は従来の規格に対して硫酸塩灰分、リン及び硫黄の許容レベルの減少を必要とし、こうして使用し得るZDDPの量を制限する。同時に、最新潤滑剤は改良された磨耗保護を与えるように要求される。減少された量のZDDPが使用される場合、エンジン磨耗保護を与える別の手段、好ましくは潤滑剤への追加の硫酸塩灰分、リン及び/又は硫黄の導入を生じない手段が同定される必要がある。磨耗保護を与える別の手段は、先に注目されたように、高温で耐磨耗性能に寄与し得ることが少ない低粘度原料油と配合される低粘度潤滑剤で特に重要である。
API CJ-4、API CI-4及び/又はACEA E7性能規格を満足することができる低粘度、低リン潤滑油組成物を提供するために、潤滑剤製造業者らは完全合成潤滑剤並びにグループIV原料油(ポリアルファオレフィン又はPAO原料油)及び/又はグループV原料油、例えば、エステル原料油として特定される合成原料油のかなりの比率を含む潤滑剤を配合していた。グループI、グループII及びグループIII原料油と比較して、グループIV及びグループV原料油は高い粘度指数(VI)を有し、これは原料油の動的粘度が温度によりそれ程変化しないことを意味する。こうして、例えば、低粘度、高VI PAOを使用することにより、低CCS粘度及び高kV100を有する潤滑剤が提供し得る。しかしながら、グループIV及びグループV原料油はグループI、グループII及びグループIII鉱油原料油に対し高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故、減少された量、例えば、30質量%未満の、グループIV及び/又はグループV原料油、並びに1200ppm以下のリンを潤滑剤に導入する量のリン系耐磨耗剤を有するヘビーデューティディーゼル(HDD)エンジン用の低粘度SAE 0W及びSAE 5Wマルティグレード・クランクケース潤滑剤(これらの潤滑剤はAPI CJ-4、API CI-4及び/又はACEA E7仕様の磨耗性能要件を満足する)をブレンドするための手段を提供することは有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くことに、30質量%未満の、グループIV及び/又はグループV原料油、並びに1200ppm以下のリンを潤滑剤に導入する量のリン系耐磨耗剤を有するヘビーデューティディーゼル(HDD)エンジン用のSAE 0W及びSAE 5Wマルティグレード・クランクケース潤滑剤は、少量の非水素化オレフィンポリマー及び少なくとも40ppmのホウ素と配合された場合にAPI CJ-4、API CI-4、及び/又はACEA E7仕様の磨耗性能要件を含む、性能要件を満足することができることがわかった。
本発明の第一の局面によれば、1.0質量%以下、例えば、約0.7質量%から1.0質量%までの硫酸塩灰分、0.4質量%以下の硫黄含量、及び0.12質量%(1200ppm)以下、例えば、約0.08質量%から0.12質量%までのリン含量を有し、API CJ-4、API CI-4、及び/又はACEA E7仕様の少なくとも一つの性能要件を満足するSAE 0W及び5Wマルティグレードクランクケース潤滑油組成物が提供され、その潤滑油組成物は過半量の潤滑粘度の油(潤滑粘度の油の合計質量を基準として約30質量%以下、好ましくは10質量%以下のグループIV原料油及び/又はグループV原料油を含む)、少なくとも0.3質量%、例えば、0.3〜5質量%の非水素化オレフィンポリマー、及び約40ppmより多く、例えば、40〜600ppmのホウ素を含む。
本発明の第二の局面によれば、約7から約15までのTBNを有する、第一の局面に記載された、潤滑油組成物が提供される。
本発明の第三の局面によれば、前記組成物に少なくとも0.09質量%(900ppm)、好ましくは少なくとも0.10質量%(1000ppm)、更に好ましくは少なくとも0.115質量%(1150ppm)のマグネシウムを与える量のマグネシウム洗剤を含む、第一又は第二の局面に記載された、潤滑油組成物が提供される。
本発明の第四の局面によれば、潤滑油組成物に少なくとも0.08質量%の窒素を与える量の窒素含有分散剤を更に含む、第一、第二又は第三の局面に記載された、潤滑油組成物が提供される。
本発明の第五の局面によれば、無硫黄ヒンダードフェノール酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、及びこれらの組み合わせから選ばれた少なくとも0.5質量%、例えば、少なくとも0.6質量%、好ましくは少なくとも0.8質量%、更に好ましくは少なくとも1.0質量%の少なくとも一種の無灰酸化防止剤を含む、第一〜第五の局面に記載された、潤滑油組成物が提供される。
本発明の第六の局面によれば、第一〜第五の局面のいずれかに記載された潤滑油組成物で潤滑された、ヘビーデューティディーゼル(HDD)エンジンが提供される。
本発明の第七の局面によれば、ヘビーデューティディーゼル(HDD)エンジンの燃料経済及び磨耗性能の改良方法が提供され、その方法はエンジンを第一〜第五の局面のいずれかに記載された潤滑油組成物で潤滑する工程、及び潤滑されたエンジンを運転する工程を含む。
本発明の第八の局面によれば、ヘビーデューティディーゼル(HDD)エンジンの燃料経済及び磨耗性能を改良するための第一〜第五の局面のいずれかに記載された潤滑油組成物の使用が提供される。
本発明のその他の目的及び更なる目的、利点並びに特徴が以下の明細書を参照して理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施に有益な潤滑粘度の湯は100℃で測定して約2mm2/秒(センチストークス)から約40mm2/秒まで、特に約3mm2/秒から約20mm2/秒まで、最も好ましくは約9mm2/秒から約17mm2/秒までの粘度の範囲であってもよい。
天然油として、動物油及び植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油);液体石油並びにパラフィン型、ナフテン型及び混合パラフィン-ナフテン型の水素化精製され、溶剤処理され、又は酸処理された鉱油が挙げられる。石炭又はシェールに由来する潤滑粘度の油がまた有益なベースオイルとして利用できる。
合成潤滑油として、炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えば、重合オレフィン及び共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);並びにアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド及びこれらの誘導体、類似体及び同族体が挙げられる。
【0010】
アルキレンオキサイドポリマー並びにこれらのインターポリマー及び誘導体(末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等により変性されていた)が既知の合成潤滑油の別のクラスを構成する。これらはエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの重合により調製されたポリオキシアルキレンポリマー、並びにポリオキシアルキレンポリマーのアルキルエーテル及びアリールエーテル(例えば、1000の分子量を有するメチル-ポリイソ-プロピレングリコールエーテル又は1000〜1500の分子量を有するポリ-エチレングリコールのジフェニルエーテル);並びにこれらのモノ-及びポリカルボン酸エステル、例えば、テトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合C3-C8脂肪酸エステル及びC13オキソ酸ジエステルにより例示される。
合成潤滑油の別の好適なクラスはジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)と種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)のエステルを含む。このようなエステルの特別な例として、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、並びに1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2-エチルヘキサン酸と反応させることにより生成された複雑なエステルが挙げられる。
合成油として有益なエステルとして、C5-C12モノカルボン酸及びポリオール並びにポリオールエステル、例えば、ネオペンチルグリコール、テトラメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトールからつくられたものがまた挙げられる。
【0011】
ケイ素をベースとする油、例えば、ポリアルキルシリコーン油、ポリアリールシリコーン油、ポリアルコキシシリコーン油又はポリアリールオキシシリコーン油及びシリケート油が合成潤滑剤の別の有益なクラスを構成する。このような油として、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ-(2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(p-tert-ブチル-フェニル)シリケート、ヘキサ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン及びポリ(メチルフェニル)シロキサンが挙げられる。その他の合成潤滑油として、リン含有酸の液体エステル(例えば、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、デシルホスホン酸のジエチルエステル)及びポリマー状テトラヒドロフランが挙げられる。
ベースオイルのその他の例は合成軽油(gas-to-liquid(“GTL”))ベースオイルであり、即ち、ベースオイルはフィッシャー-トロプッシュ触媒を使用して水素及び一酸化炭素を含む合成ガスからつくられたフィッシャー-トロプッシュ合成炭化水素から誘導されたオイルであってもよい。これらの炭化水素は典型的にはベースオイルとして有益であるために更なる加工を必要とする。例えば、それらは、当業界で知られている方法により、水素異性化されてもよく、ハイドロクラッキングされ、水素異性化されてもよく、脱蝋されてもよく、又は水素異性化され、脱蝋されてもよい。
本発明における原料油及びベースオイルに関する定義は米国石油協会(API)刊行物“エンジンオイルライセンシング及び認可システム”、工業サービス部門、第14編、1996年12月、補遺1、1998年12月に見られるものと同じである。前記刊行物は原料油を以下のとおりにカテゴリー化する。
a)グループI原料油は90%未満の飽和物及び/又は0.03%より多い硫黄を含み、表1に明記された試験方法を使用して80以上かつ120未満の粘度指数を有する。
b)グループII原料油は90%以上の飽和物及び0.03%以下の硫黄を含み、表1に明記された試験方法を使用して80以上かつ120未満の粘度指数を有する。
c)グループIII原料油は90%以上の飽和物及び0.03%以下の硫黄を含み、表1に明記された試験方法を使用して120以上の粘度指数を有する。
d)グループIV原料油はポリアルファオレフィン(PAO)である。
e)グループV原料油はグループI、II、III、又はIVに含まれない全てのその他の原料油を含む。
【0012】
【表2】

【0013】
本発明の実施に有益な潤滑粘度の油はグループI、グループII、グループIIIの原料油又は上記原料油のベースオイルブレンドを含んでもよい。潤滑粘度の油はまた一種以上のグループI、グループII、及び/又はグループIIIの原料油並びに潤滑粘度の油の全質量を基準として、30質量%未満の一種以上のグループIV及び/又はグループVの原料油のベースオイルブレンドを含んでもよい。好ましくは、潤滑粘度の油は一種以上のグループII及び/又はグループIIIの原料油並びに潤滑粘度の油の全質量%を基準として、30質量%未満、好ましくは10質量%未満の量の一種以上のグループIVもしくはグループVの原料油の混合物である。グループIII原料油及び原料油ブレンド、並びに一種以上のグループIII原料油及び潤滑粘度の油の全質量を基準として、0〜10質量%の一種以上のグループIV原料油のブレンドが特に好ましい。原料油、又は原料油ブレンドは好ましくは少なくとも65%、更に好ましくは少なくとも75%、例えば、少なくとも85%の飽和物含量を有する。
最も好ましくは、原料油、又は原料油ブレンドは、90%より大きい飽和物含量を有する。好ましくは、油又は油ブレンドは1質量%未満、好ましくは0.6質量%未満、最も好ましくは0.4質量%未満、例えば、0.3質量%未満の硫黄含量を有するであろう。
【0014】
好ましくは、ノアク試験(ASTM D5800)により測定されるような、原料油又は原料油ブレンドの揮発度は、30質量%以下、例えば、約25質量%未満、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、最も好ましくは13質量%以下である。好ましくは、原料油又は原料油ブレンドの粘度指数(VI)は少なくとも85、好ましくは少なくとも100、最も好ましくは約105から140までである。
或る量の潤滑粘度の油が種々の添加剤のための希釈剤として潤滑油組成物に導入されてもよく、普通グループI原料油である。上記された好ましい質量%、飽和物含量、ノアク及びVIは添加剤希釈剤として導入されてもよい油を除いて、潤滑油組成物を配合するのに使用される原料油又は原料油ブレンドについてのものである。
本発明の実施に有益な非水素化オレフィン(コ)ポリマーは一種以上のアクリルオレフィンモノマーのポリマー又はコポリマーであることが好ましい。一般に、本発明に有益な非水素化オレフィン(コ)ポリマーはポリマー鎖当り約1個の二重結合を有し、又は平均で、約1個の二重結合を有する。
(コ)ポリマーはアルファ-オレフィンモノマー、もしくはアルファ-オレフィンモノマーの混合物、又はエチレン及び少なくとも一種のC3-C28アルファ-オレフィンモノマーを含む混合物を、少なくとも一種のメタロセン(例えば、シクロペンタジエニル-遷移金属化合物)及びアルモキサン化合物を含む触媒系の存在下で重合することにより調製されてもよい。この方法を使用して、ポリマー鎖の95%以上が末端エテニリデン型不飽和を有するポリマーが得られる。末端エテニリデン不飽和を示すポリマー鎖の%はFTIR分光分析、滴定、又はC13 NMRにより測定されてもよい。この後者の型のインターポリマーは式POLY-C(R1)=CH2(式中、R1はC1-C26アルキル、好ましくはC1-C18アルキル、更に好ましくはC1-C8アルキル、最も好ましくはC1-C2アルキル(例えば、メチル又はエチル)であり、かつPOLYはポリマー鎖を表す)により特徴づけられてもよい。R1アルキル基の鎖長は重合における使用に選ばれた一種以上のコモノマーに応じて変化するであろう。少量のポリマー鎖が末端エテニル、即ち、ビニル、不飽和、即ち、POLY-CH=CH2を含むことができ、またポリマーの一部が内部モノ不飽和、例えば、POLY-CH=CH(R1)(式中、R1は先に定義されたとおりである)を含むことができる。これらの末端不飽和インターポリマーは既知のメタロセン化学により調製されてもよく、また米国特許第5,498,809号、同第5,663,130号、同第5,705,577号、同第5,814,715号、同第6,022,929号及び同第6,030,930号に記載されたように調製されてもよい。
【0015】
(コ)ポリマーの別の有益なクラスはイソブテン、スチレン等のカチオン重合により調製された(コ)ポリマーである。このクラスからの普通の(コ)ポリマーとして、ルイス酸触媒、例えば、三塩化アルミニウム又は三フッ化ホウ素(三塩化アルミニウムが好ましい)の存在下の、約35質量%〜約75質量%のブテン含量、及び約30重量%〜約60重量%のイソブテン含量を有するC4製油所流の重合により得られたポリイソブテンが挙げられる。ポリ-n-ブテンをつくるのに好ましいモノマーの源は石油供給原料流、例えば、ラフィネートIIである。これらの供給原料が当業界で、例えば、米国特許第4,952,739号に開示されている。ポリイソブチレンが本発明の最も好ましいポリマーである。何とならば、それがブテン流からのカチオン重合(例えば、AlCl3又はBF3触媒を使用する)により容易に入手し得るからである。このようなポリイソブチレンは一般にポリマー鎖当り約1個のエチレン性二重結合(その鎖に沿って位置される)の量の残留不飽和を含む。好ましい実施態様は末端ビニリデンオレフィンを有する反応性イソブチレンポリマーを調製するために純粋なイソブチレン流又はラフィネートI流から調製されたポリイソブチレンを利用する。好ましくは、これらのポリマー(高度に反応性のポリイソブチレン(HR-PIB)と称される)は、少なくとも65%、例えば、70%、更に好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは、少なくとも85%の末端ビニリデン含量を有する。このようなポリマーの調製が、例えば、米国特許第4,152,499号に記載されている。HR-PIBは知られており、例えば、商品名グリッソパールTM(BASFから)及びウルトラビスTM(BP-アモコから)として商業上入手し得る。
【0016】
別の実施態様において、非水素化オレフィン(コ)ポリマー、例えば、ポリイソブチレンは、末端二重結合(もしくは末端エテニリデン型不飽和又は末端ビニリデン不飽和)を有するせいぜい10%、例えば、5〜10%のポリマー鎖を有する。このようなポリマーは高度に反応性ではないと考えられる。商業上入手し得るポリマーの例は商品名ナプビスTM(BP-アモコから)であり、通常触媒として三塩化アルミニウムを用いる重合により得られる。
(コ)ポリマーは2〜10個、例えば、3〜8個の炭素原子を有する一種以上のオレフィンの重合により誘導されることが好ましい。特に好ましいオレフィンはブテン、有利にはイソブテンである。
本発明に有益な非水素化オレフィン(コ)ポリマーの数平均分子量は好ましくは約450から約2300まで、例えば、約450から約1300まで、好ましくは約450から約950までの範囲である。分子量は幾つかの既知の技術により測定し得る。このような測定に便利な方法はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によるものであり、これは更に分子量分布情報を与える(W.W. Yau、J.J. Kirkland及びD.D. Bly著“最新サイズ排除液体クロマトグラフィー”John Wiley and Sons, New York, 1979を参照のこと)。更に、100℃で、ASTM D445に従って測定されるような、非水素化オレフィンポリマーの動的粘度が、少なくとも9又は15、例えば、100又は150〜3000、有利には200〜2500又は2700mm2s-1であることが好ましい。本発明の一実施態様において、450〜2300の数平均分子量、及び100℃で約200〜2400mm2s-1の動的粘度を有するポリイソブチレンポリマーが特に有益な性質を与えることがわかった。本発明の潤滑油組成物は少なくとも0.3質量%、例えば、約0.3質量%から約5.0質量%まで、特に約0.5質量%から約3.0質量%まで、好ましくは約1.0質量%から約2.5質量%までの量の非水素化オレフィンポリマーを含み得る。好ましくは、本発明の潤滑油組成物は潤滑粘度の油及び非水素化オレフィンポリマーの合計全質量を基準として、約35質量%未満、好ましくは約15質量%未満の、グループIV及び/又はグループV原料油及び非水素化オレフィンポリマーの組み合わせを含む。
【0017】
本発明の潤滑油組成物は約40ppmより大きく、例えば、40〜600ppm、好ましくは約50〜200ppm、更に好ましくは約50〜100ppmのホウ素を含む。ホウ素はホウ化分散剤、ホウ化洗剤、もしくはその他のホウ素含有添加剤、又はこれらの混合物により、或いは元素のホウ素又はその他のホウ素化合物の添加により潤滑油組成物に導入し得る。
金属含有洗剤又は灰形成洗剤は付着物を減少又は除去するための洗剤及び酸中和剤又は錆抑制剤の両方として機能し、それにより磨耗及び腐食を軽減し、エンジン寿命を延長する。洗剤は一般に長い疎水性尾部を有する極性頭部を含む。その極性頭部は酸性有機化合物の金属塩を含む。塩は実質的に化学量論量の金属を含んでもよく、その場合にはそれらは通常又は中性の塩として通常記載され、0から150未満まで、例えば、0〜約80又は100の全アルカリ価即ちTBN(ASTM D2896により測定し得る)を有する。多量の金属塩基が過剰の金属化合物(例えば、酸化物又は水酸化物)を酸性ガス(例えば、二酸化炭素)と反応させることにより混入し得る。得られる過塩基化洗剤は金属塩基(例えば、炭酸塩)ミセルの外層として中和された洗剤を含む。このような過塩基化洗剤は150以上のTBNを有し、典型的には250から450以上までのTBNを有するであろう。
使用し得る洗剤として、金属、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えば、バリウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムの油溶性の中性また過塩基化されたスルホン酸塩、フェネート、硫化フェネート、チオホスホン酸塩、サリチル酸塩、及びナフテン酸塩並びにその他の油溶性カルボン酸塩が挙げられる。最も普通に使用される金属はカルシウム及びマグネシウムであり、これらは両方とも潤滑剤中に使用される洗剤中に、またカルシウム及び/又はマグネシウムとナトリウムの混合物中に存在してもよい。洗剤(過塩基化もしくは中性又はその両方)の組み合わせが使用されてもよい。
【0018】
スルホン酸塩はスルホン酸(これらは典型的にはアルキル置換芳香族炭化水素、例えば、石油の分別から、又は芳香族炭化水素のアルキル化により得られたもののスルホン化により得られる)から調製されてもよい。例として、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニル又はそれらのハロゲン誘導体、例えば、クロロベンゼン、クロロトルエン及びクロロナフタレンをアルキル化することにより得られたものが挙げられる。アルキル化は触媒の存在下で約3個から70個以上までの炭素原子を有するアルキル化剤を用いて行なわれてもよい。アルカリールスルホン酸塩は通常アルキル置換芳香族部分当り約9個から約80個以上までの炭素原子、好ましくは約16個から約60個までの炭素原子を含む。
油溶性スルホン酸塩又はアルカリールスルホン酸は金属の酸化物、水酸化物、アルコキシド、炭酸塩、カルボン酸塩、硫化物、水硫化物、硝酸塩、ホウ酸塩及びエーテルで中和されてもよい。金属化合物の量は最終生成物の所望のTBNに関して選ばれるが、典型的には化学量論上必要とされる量の約100質量%から220質量%まで(好ましくは少なくとも125質量%)の範囲である。
フェノール及び硫化フェノールの金属塩は適当な金属化合物、例えば、酸化物又は水酸化物との反応により調製され、中性生成物又は過塩基化生成物は当業界で公知の方法により得られてもよい。硫化フェノールはフェノールを硫黄又は硫黄含有化合物、例えば、硫化水素、モノハロゲン化硫黄もしくはジハロゲン化硫黄と反応させて、一般に2以上のフェノールが硫黄含有ブリッジによりブリッジされている化合物の混合物である生成物を生成することにより調製されてもよい。
カルボン酸塩洗剤、例えば、サリチル酸塩は、芳香族カルボン酸を適当な金属化合物、例えば、酸化物又は水酸化物と反応させることにより調製でき、中性生成物又は過塩基化生成物は当業界で公知の方法により得られてもよい。芳香族カルボン酸の芳香族部分はヘテロ原子、例えば、窒素及び酸素を含み得る。その部分は炭素原子のみを含むことが好ましく、その部分は6個以上の炭素原子を含むことが更に好ましい。例えば、ベンゼンが好ましい部分である。芳香族カルボン酸は一つ以上の芳香族部分、例えば、一つ以上のベンゼン環(縮合されているか、又はアルキレンブリッジを介して連結されている)を含んでもよい。カルボン酸部分は芳香族部分に直接又は間接に結合されていてもよい。カルボン酸基は芳香族部分の炭素原子、例えば、ベンゼン環の炭素原子に直接結合されていることが好ましい。芳香族部分はまた第二の官能基、例えば、ヒドロキシ基又はスルホン酸塩基を含むことが更に好ましく、これらは芳香族部分の炭素原子に直接又は間接に結合し得る。
【0019】
芳香族カルボン酸の好ましい例はサリチル酸及びこれらの硫化誘導体、例えば、ヒドロカルビル置換サリチル酸及びこれらの誘導体である。例えば、ヒドロカルビル置換サリチル酸を硫化する方法が、当業者に知られている。サリチル酸は典型的にはフェノキシドのカルボキシル化、例えば、コルベ-シュミット方法により調製され、その場合には、一般に通常希釈剤中で、非カルボキシル化フェノールとの混合物中で得られるであろう。
油溶性サリチル酸中の好ましい置換基はアルキル置換基である。アルキル置換サリチル酸中で、アルキル基は有利には5〜100個、好ましくは9〜30個、特に14〜20個の炭素原子を含む。一つより多くのアルキル基がある場合、全てのアルキル基中の炭素原子の平均数は適切な油溶性を確実にするために少なくとも9であることが好ましい。
潤滑油組成物の配合に一般に有益な洗剤はまた、例えば、米国特許第6,153,565号、同第6,281,179号、同第6,429,178号、及び同第6,429,178号に記載されているような、混合表面活性剤系、例えば、フェネート/サリチル酸塩、スルホン酸塩/フェネート、スルホン酸塩/サリチル酸塩、スルホン酸塩/フェネート/サリチル酸塩で生成された“ハイブリッド”洗剤を含む。
【0020】
ホウ化洗剤及び洗剤をホウ化するための方法が公知であり、例えば、米国特許第3,929,650号、同第3,480,548号、及び同第4,792,410号に記載されている。ホウ化洗剤は本発明の潤滑油組成物に必要量の全部又は一部のホウ素を与えるのに使用し得る。
本発明の潤滑油組成物は好ましくは潤滑油組成物に少なくとも0.09質量%(900ppm)、好ましくは少なくとも0.10質量%(1000ppm)、更に好ましくは少なくとも0.115質量%(1150ppm)の元素のマグネシウムを与える量のマグネシウム洗剤、更に好ましくは過塩基化マグネシウム洗剤を含む。好ましくは、過塩基化マグネシウム洗剤は少なくとも約200、例えば、約200から約500まで、好ましくは少なくとも約250、例えば、約250から約500まで、更に好ましくは少なくとも約300、例えば、約300から約450までのTBNを有し、又は平均でこのようなTBNを有する。
マグネシウム以外の金属をベースとする過塩基化灰含有洗剤は過塩基化洗剤により寄与される潤滑油組成物のTBNの40%以下に寄与する量で存在することが好ましい。本発明の潤滑油組成物は過塩基化洗剤により潤滑油組成物に寄与される全TBNの約20%以下を与える量のマグネシウム以外の金属をベースとする過塩基化灰含有洗剤を含むことが更に好ましい。
本発明の潤滑油組成物はまた無灰(無金属)洗剤、例えば、米国特許第2005-0277559-A1に記載された油溶性ヒドロカルビルフェノールアルデヒド縮合物を含んでもよい。
好ましくは、洗剤は合計で約0.35質量%から約1.0質量%まで、例えば、約0.5質量%から約0.9質量%まで、更に好ましくは約0.6質量%から約0.8質量%までの硫酸塩灰分(SASH)を潤滑油組成物に与える量で使用される。好ましくは、潤滑油組成物は約7から約15まで、例えば、約8から約13まで、更に好ましくは約9から約11までのTBNを有する。TBNは洗剤以外の添加剤により潤滑油組成物に寄与し得る。分散剤、酸化防止及び耐磨耗剤が或る場合に潤滑剤TBNの合計量の40%以上に寄与し得る。
通常、ヘビーデューティディーゼルエンジン中の使用のために配合された潤滑油組成物は配合された潤滑油組成物の合計質量を基準として、約0.5質量%から約10質量%まで、好ましくは約1.5質量%から約5質量%まで、最も好ましくは約2質量%から約3質量%までの洗剤を含む。洗剤は通常希釈剤油中で生成される。通常、洗剤はTBNにより言及され、これは希釈剤中の活性洗剤のTBNである。それ故、その他の添加剤は活性成分(A.I.)の量に関してしばしば言及されるが、洗剤の記述された量は希釈剤を含む洗剤の合計質量を表す。
【0021】
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩が耐磨耗剤及び酸化防止剤として頻繁に使用される。金属はアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケルもしくは銅であってもよい。亜鉛塩が潤滑油組成物の合計重量を基準として、0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜2質量%の量で潤滑油中に最も普通に使用される。それらは既知の技術に従って最初に通常一種以上のアルコール又はフェノールとP2S5との反応により、ジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を生成し、次いで生成されたDDPAを亜鉛化合物で中和することにより調製されてもよい。例えば、ジチオリン酸は一級アルコールと二級アルコールの混合物を反応させることによりつくられてもよい。また、一方のヒドロカルビル基が特性上完全に二級であり、かつ他方のヒドロカルビル基が特性上完全に一級である場合、多種のジチオリン酸が調製し得る。亜鉛塩をつくるために、あらゆる塩基性又は中性亜鉛化合物が使用し得るが、酸化物、水酸化物及び炭酸塩が殆ど一般に使用される。市販の添加剤は中和反応中の過剰の塩基性亜鉛化合物の使用のために過剰の亜鉛を頻繁に含む。
好ましい亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートはジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩であり、下記の式により表し得る。
【0022】
【化1】

【0023】
式中、R及びR'は1個から18個まで、好ましくは2〜12個の炭素原子を含み、かつアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、アルカリール基及び脂環式基の如き基を含む同じ又は異なるヒドロカルビル基であってもよい。2〜8個の炭素原子のアルキル基がR基及びR'基として特に好ましい。こうして、これらの基は、例えば、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルであってもよい。油溶性を得るために、ジチオリン酸中の炭素原子の合計数(即ち、R及びR')は一般に約5個以上であろう。それ故、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート(ZDDP)は亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含み得る。本発明の潤滑剤組成物は約0.12質量%(1200ppm)以下のリン含量を有する。通常、ZDDPは許される最大量に近い量又はそれに等しい量で使用される。こうして、ヘビーデューティディーゼルエンジン中の使用のために配合される、本発明の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の合計質量を基準として、約0.08質量%から約0.12質量%までのリンを導入する量で、ZDDP又はジヒドロカルビルジチオホスフェートのその他の金属塩を含むことが好ましいであろう。ZDDPが存在する唯一のリン含有添加剤であることが好ましい。
酸化抑制剤又は酸化防止剤は鉱油が使用中に劣化する傾向を減少する。酸化劣化は潤滑剤中のスラッジ、金属表面上のワニスのような付着物、及び増粘により証明し得る。このような酸化抑制剤として、ヒンダードフェノール、好ましくはC5-C12アルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノールスルフィド、油溶性フェネート及び硫化フェネート、リン硫化又は硫化炭化水素又はエステル、リンエステル、金属チオカルバメート、米国特許第4,867,890号に記載されたような油溶性銅化合物、及びモリブデン含有化合物が挙げられる。
【0024】
窒素に直接結合された少なくとも二つの芳香族基を有する芳香族アミンが酸化防止に頻繁に使用される化合物の別のクラスを構成する。一つのアミン窒素に直接結合された少なくとも二つの芳香族基を有する典型的な油溶性芳香族アミンは6個から16個までの炭素原子を含む。アミンは二つより多い芳香族基を含んでもよい。合計少なくとも三つの芳香族基を有する化合物(二つの芳香族基が共有結合又は原子もしくは基(例えば、酸素原子もしくは硫黄原子、又は-CO-基、-SO2-基もしくはアルキレン基)により結合されており、二つが一つのアミン窒素に直接結合されている)がまた窒素に直接結合された少なくとも二つの芳香族基を有する芳香族アミンと考えられる。芳香族環は典型的にはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、ヒドロキシ基、及びニトロ基から選ばれた1個以上の置換基により置換されている。一つのアミン窒素に直接結合された少なくとも二つの芳香族基を有するあらゆるこのような油溶性芳香族アミンの量は0.4重量%を超えないことが好ましい。
耐磨耗剤ZDDPは強い酸化防止信用を潤滑剤に与える。少ないZDDPがリン制限及びSASH制限を満足するために使用される場合、潤滑剤配合者は、好ましくは高度に有効な、無灰の、無硫黄酸化防止剤の使用により、結果として生じる酸化抑制の低下を相殺する必要がある。それ故、本発明の潤滑油組成物は少なくとも約0.5質量%、好ましくは少なくとも約0.6質量%、例えば、少なくとも0.8質量%、更に好ましくは、少なくとも1.0質量%の無灰酸化防止剤(無硫黄フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、又はこれらの組み合わせからなる群から選ばれる)を含むことが好ましい。本発明の潤滑油組成物は無硫黄フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤の組み合わせを含むことが好ましい。
分散剤は油に不溶性である使用中の酸化から得られる物質を懸濁して維持し、こうしてスラッジ凝集及び沈殿、又は金属部分上の付着を防止する。本発明の潤滑油組成物は少なくとも一種の分散剤を含み、また多種の分散剤を含んでもよい。一種以上の分散剤は窒素含有分散剤であることが好ましく、合計で、約0.08質量%から約0.19質量%まで、例えば、約0.09質量%から約0.18質量%まで、最も好ましくは約0.09質量%から約0.16質量%までの窒素を潤滑油組成物に寄与することが好ましい。
【0025】
本発明の状況に有益な分散剤は潤滑油に添加された場合に、ガソリンエンジン及びディーゼルエンジン中の使用後に付着物の形成を減少するのに有効であると知られている窒素含有、無灰(無金属)分散剤の範囲を含み、分散される粒子と会合することができる官能基を有する油溶性ポリマー長鎖主鎖を含む。典型的には、このような分散剤は、しばしばブリッジ基を介して、ポリマー主鎖に結合されたアミン、アミン-アルコール又はアミド極性部分を有する。無灰分散剤は、例えば、長鎖炭化水素置換モノカルボン酸及びポリカルボン酸又はこれらの酸無水物の油溶性塩、エステル、アミノ-エステル、アミド、イミド及びオキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボン酸塩誘導体;それに直接結合されたポリアミン部分を有する長鎖脂肪族炭化水素;並びに長鎖置換フェノールをホルムアルデヒド及びポリアルキレンポリアミンと縮合することにより生成されたマンニッヒ縮合生成物から選ばれてもよい。
一般に、夫々のモノカルボン酸又はジカルボン酸生成部分は求核性基(アミン又はアミド)と反応し、ポリアルケニル置換カルボン酸アシル化剤中の官能基の数が完成分散剤中の求核性基の数を決めるであろう。
本発明の分散剤のポリアルケニル部分は約700から約3000まで、好ましくは950〜3000、例えば、950〜2800、更に好ましくは約950〜2500、最も好ましくは約950から約2400までの数平均分子量を有する。本発明の一実施態様において、分散剤は低分子量分散剤(例えば、約700から1100までの数平均分子量を有する)及び少なくとも約1500、好ましくは1800〜3000、例えば、2000〜2800、更に好ましくは約2100から2500まで、最も好ましくは約2150から約2400までの数平均分子量を有する高分子量分散剤の組み合わせを含む。分散剤の分子量は一般にポリアルケニル部分の分子量に関して表される。何とならば、分散剤の正確な分子量範囲が分散剤を誘導するのに使用されるポリマーの型、官能基の数、及び使用される求核性基の型を含む多くのパラメーターに依存するからである。
高分子量分散剤が誘導されるポリアルケニル部分は重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比により決められるような、狭い分子量分布(MWD)(また、多分散性と称される)を有することが好ましい。詳しくは、本発明の分散剤が誘導されるポリマーは約1.5から約2.0まで、好ましくは約1.5から約1.9まで、最も好ましくは約1.6から約1.8までのMw/Mnを有する。
【0026】
本発明の分散剤の生成に使用される好適な炭化水素又はポリマーとして、ホモポリマー、インターポリマー又は低分子量炭化水素が挙げられる。このようなポリマーの一つのファミリーはエチレン及び/又は式H2C=CHR1(式中、R1は1〜26個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基である)を有する少なくとも一種のC3-C28アルファ-オレフィンのポリマーを含み、そのポリマーは炭素-炭素不飽和、好ましくは高度の末端エテニリデン不飽和を含む。このようなポリマーはエチレン及び上記式(式中、R1は1個から18個までの炭素原子のアルキルであり、更に好ましくは1個から8個までの炭素原子、更に好ましくは1個から2個までの炭素原子のアルキルである)の少なくとも一種のアルファ-オレフィンのインターポリマーを含むことが好ましい。それ故、有益なアルファ-オレフィンモノマー及びコモノマーとして、例えば、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチルペンテン-1、デセン-1、ドデセン-1、トリデセン-1、テトラデセン-1、ペンタデセン-1、ヘキサデセン-1、ヘプタデセン-1、オクタデセン-1、ノナデセン-1、及びこれらの混合物(例えば、プロピレン及びブテン-1の混合物等)が挙げられる。このようなポリマーの例示はプロピレンホモポリマー、ブテン-1ホモポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-ブテン-1コポリマー、プロピレン-ブテンコポリマー等であり、そのポリマーは少なくとも幾つかの末端不飽和及び/又は内部不飽和を含む。好ましいポリマーはエチレンとプロピレンの不飽和コポリマー及びエチレンとブテン-1の不飽和コポリマーである。本発明のインターポリマーは少量、例えば、0.5〜5モル%のC4-C18非共役ジオレフィンコモノマーを含んでもよい。しかしながら、本発明のポリマーはアルファ-オレフィンホモポリマー、アルファ-オレフィンコモノマーのインターポリマー及びエチレンとアルファ-オレフィンコモノマーのインターポリマーのみを含むことが好ましい。本発明に使用されるポリマーのモルエチレン含量は好ましくは0〜80%、更に好ましくは0〜60%の範囲である。プロピレン及び/又はブテン-1がエチレンとの一種以上のコモノマーとして使用される場合、このようなコポリマーのエチレン含量は15〜50%であることが最も好ましいが、それよりも高い又は低いエチレン含量が存在してもよい。
【0027】
これらのポリマーはアルファ-オレフィンモノマー、もしくはアルファ-オレフィンモノマーの混合物、又はエチレン及び少なくとも一種のC3-C28アルファ-オレフィンモノマーを含む混合物を、少なくとも一種のメタロセン(例えば、シクロペンタジエニル-遷移金属化合物)及びアルモキサン化合物を含む触媒系の存在下で重合することにより調製されてもよい。この方法を使用して、ポリマー鎖の95%以上が末端エテニリデン型不飽和を有するポリマーが得られる。末端エテニリデン不飽和を示すポリマー鎖の%はFTIR分光分析、滴定、又はC13 NMRにより測定されてもよい。この後者の型のインターポリマーは式POLY-C(R1)=CH2(式中、R1はC1-C26アルキル、好ましくはC1-C18アルキル、更に好ましくはC1-C8アルキル、最も好ましくはC1-C2アルキル(例えば、メチル又はエチル)であり、かつPOLYはポリマー鎖を表す)により特徴づけられてもよい。R1アルキル基の鎖長は重合における使用に選ばれた一種以上のコモノマーに応じて変化するであろう。少量のポリマー鎖が末端エテニル、即ち、ビニル、不飽和、即ち、POLY-CH=CH2を含むことができ、またポリマーの一部が内部モノ不飽和、例えば、POLY-CH=CH(R1)(式中、R1は先に定義されたとおりである)を含むことができる。これらの末端不飽和インターポリマーは既知のメタロセン化学により調製されてもよく、また米国特許第5,498,809号、同第5,663,130号、同第5,705,577号、同第5,814,715号、同第6,022,929号及び同第6,030,930号に記載されたように調製されてもよい。
【0028】
ポリマーの別の有益なクラスはイソブテン、スチレン等のカチオン重合により調製されたポリマーである。このクラスからの普通のポリマーとして、ルイス酸触媒、例えば、三塩化アルミニウム又は三フッ化ホウ素の存在下の、約35質量%〜約75質量%のブテン含量、及び約30重量%〜約60重量%のイソブテン含量を有するC4製油所流の重合により得られたポリイソブテンが挙げられる。ポリ-n-ブテンをつくるのに好ましいモノマーの源は石油供給原料流、例えば、ラフィネートIIである。これらの供給原料が当業界で、例えば、米国特許第4,952,739号に開示されている。ポリイソブチレンが本発明の最も好ましい主鎖である。何とならば、それがブテン流からのカチオン重合(例えば、AlCl3又はBF3触媒を使用する)により容易に入手し得るからである。このようなポリイソブチレンは一般にポリマー鎖当り約1個のエチレン性二重結合(その鎖に沿って位置される)の量の残留不飽和を含む。好ましい実施態様は末端ビニリデンオレフィンを有する反応性イソブチレンポリマーを調製するために純粋なイソブチレン流又はラフィネートI流から調製されたポリイソブチレンを利用する。好ましくは、これらのポリマー(高度に反応性のポリイソブチレン(HR-PIB)と称される)は、少なくとも65%、例えば、70%、更に好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは、少なくとも85%の末端ビニリデン含量を有する。このようなポリマーの調製が、例えば、米国特許第4,152,499号に記載されている。HR-PIBは知られており、HR-PIBは、例えば、商品名グリッソパールTM(BASFから)及びウルトラビスTM(BP-アモコから)として商業上入手し得る。
使用し得るポリイソブチレンポリマーは一般に約700から3000までの炭化水素鎖をベースとする。ポリイソブチレンをつくるための方法は知られている。ポリイソプテイレンはハロゲン化(例えば、塩素化)、熱“エン”反応、又は以下に記載されるような、触媒(例えば、過酸化物)を使用する遊離基グラフト化により官能化し得る。
炭化水素又はポリマー主鎖は、例えば、ポリマーもしくは炭化水素鎖の炭素-炭素不飽和の部位で選択的に、又は上記三つの方法もしくはこれらの組み合わせのいずれかをあらゆる順序で使用して鎖に沿ってランダムに、カルボン酸生成部分(好ましくは酸部分又は酸無水物部分)で官能化し得る。
【0029】
ポリマー炭化水素を不飽和カルボン酸、酸無水物又はエステルと反応させる方法及びこのような化合物からの誘導体の調製が米国特許第3,087,936号、同第3,172,892号、同第3,215,707号、同第3,231,587号、同第3,272,746号、同第3,275,554号、同第3,381,022号、同第3,442,808号、同第3,565,804号、同第3,912,764号、同第4,110,349号、同第4,234,435号、同第5,777,025号、同第5,891,953号だけでなく、EP 0 382 450 B1、CA-1,335,895及びGB-A-1,440,219に開示されている。ポリマー又は炭化水素は、例えば、ハロゲン補助官能化(例えば、塩素化)方法又は熱“エン”反応を使用して主として炭素-炭素不飽和(また、エチレン性不飽和又はオレフィン性不飽和と称される)の部位でポリマー又は炭化水素鎖への官能性部分又は薬剤、即ち、酸部分、酸無水物部分、エステル部分等の付加をもたらす条件下でポリマー又は炭化水素を反応させることによりカルボン酸生成部分(好ましくは酸又は酸無水物)で官能化されてもよい。
選択的官能化は、塩素又は臭素を60〜250℃、好ましくは110〜160℃、例えば、120〜140℃の温度で約0.5〜10時間、好ましくは1〜7時間にわたってポリマーに通すことにより、ポリマー又は炭化水素の重量を基準として、約1〜8質量%、好ましくは3〜7質量%の塩素、又は臭素まで不飽和α-オレフィンポリマーをハロゲン化、例えば、塩素化又は臭素化することにより達成し得る。ハロゲン化されたポリマー又は炭化水素(以下、主鎖と称す)はその後に必要とされる数の官能性部分を主鎖に付加し得る充分なモノ不飽和反応体、例えば、モノ不飽和カルボン酸反応体と、100〜250℃、通常約180℃〜235℃で、約0.5〜10時間、例えば、3〜8時間にわたって反応させられ、その結果、得られた生成物はハロゲン化主鎖1モル当り所望のモル数のモノ不飽和カルボン酸反応体を含むであろう。また、主鎖及びモノ不飽和カルボン酸反応体が混合され、塩素をその熱物質に添加しながら加熱される。
塩素化は通常モノ不飽和官能化反応体との出発オレフィンポリマーの反応性を増大することを助けるが、それは本発明における使用に意図されているポリマー又は炭化水素、特に高い末端結合含量及び反応性を有するこれらの好ましいポリマー又は炭化水素の一部では必要ではない。それ故、主鎖及びモノ不飽和官能性反応体、例えば、カルボン酸反応体は、高温で接触させられて初期の熱“エン”反応を行なわせることが好ましい。エン反応は知られている。
炭化水素又はポリマー主鎖は種々の方法によりポリマー鎖に沿った官能性部分のランダム結合により官能化し得る。例えば、溶液中又は固体形態の、ポリマーが遊離基開始剤の存在下で、上記のように、モノ不飽和カルボン酸反応体でグラフト化されてもよい。溶液中で行なわれる場合、グラフト化は約100〜260℃、好ましくは120〜240℃の範囲の高温で起こる。遊離基開始グラフト化は初期の全油溶液を基準として、例えば、1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%のポリマーを含む潤滑鉱油溶液中で行なわれることが好ましいであろう。
【0030】
使用し得る遊離基開始剤は過酸化物、ヒドロペルオキシド、及びアゾ化合物、好ましくは約100℃より高い沸点を有し、かつグラフト化温度範囲内で熱分解して遊離基を与えるものである。これらの遊離基開始剤の代表はアゾブチロニトリル、2,5-ジメチルヘキサ-3-エン-2,5-ビス-ターシャリー-ブチルペルオキシド及びジクメンペルオキシドである。開始剤は、使用される場合には、反応混合物溶液の重量を基準として典型的には0.005重量%〜1重量%の量で使用される。典型的には、前記モノ不飽和カルボン酸反応体物質及び遊離基開始剤は約1.0:1から30:1まで、好ましくは3:1から6:1までの重量比範囲で使用される。グラフト化は不活性雰囲気、例えば、窒素シール下で行なわれることが好ましい。得られるグラフト化ポリマーはポリマー鎖に沿ってランダムに結合されたカルボン酸(又はエステルもしくは酸無水物)部分を有することを特徴とする。勿論、ポリマー鎖の一部がグラフト化されないで残ることが理解される。上記遊離基グラフト化は本発明のその他のポリマー及び炭化水素に使用し得る。
主鎖を官能化するのに使用される好ましいモノ不飽和反応体は、(i)モノ不飽和C4-C10ジカルボン酸((a)そのカルボキシル基は近接であり(即ち、隣接炭素原子に配置され)、かつ(b)前記隣接炭素原子の少なくとも一つ、好ましくは両方が前記モノ不飽和の一部である)、(ii)(i)の誘導体、例えば、酸無水物又は(i)のモノエステル又はジエステルから誘導されたC1-C5アルコール、(iii)モノ不飽和C3-C10モノカルボン酸(その炭素-炭素二重結合はカルボキシ基と共役され、即ち構造-C=C-CO-のものである)、及び(iv)(iii)の誘導体、例えば、(iii)のモノエステル又はジエステルから誘導されたC1-C5アルコールを含む、モノカルボン酸物質及びジカルボン酸物質、即ち、酸、酸無水物、又は酸エステル物質を含む。また、モノ不飽和カルボン酸物質(i)-(iv)の混合物が使用されてもよい。主鎖との反応後に、モノ不飽和カルボン酸反応体のモノ不飽和が飽和されるようになる。こうして、例えば、無水マレイン酸が主鎖置換無水コハク酸になり、アクリル酸が主鎖置換プロピオン酸になる。このようなモノ不飽和カルボン酸反応体の例示はフマル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロロマレイン酸、無水クロロマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、及び以上の低級アルキル(例えば、C1-C4アルキル)酸エステル、例えば、マレイン酸メチル、フマル酸エチル、及びフマル酸メチルである。
【0031】
必要とされる官能性を与えるために、モノ不飽和カルボン酸反応体、好ましくは無水マレイン酸は、典型的にはポリマー又は炭化水素のモル数を基準として、約等モル量から約100質量%過剰まで、好ましくは5〜50質量%過剰までの範囲の量で使用されるであろう。未反応の過剰のモノ不飽和カルボン酸反応体は、必要とされる場合には、例えば、通常真空下の、ストリッピングにより最終分散剤生成物から除去し得る。
次いで官能化された油溶性ポリマー炭化水素主鎖は窒素含有求核性反応体、例えば、アミン、アミノ-アルコール、アミド、又はこれらの混合物で誘導体化されて相当する誘導体を生成する。アミン化合物が好ましい。官能化されたポリマーを誘導体化するのに有益なアミン化合物は少なくとも一種のアミンを含み、また一種以上の付加的なアミン又はその他の反応性基もしくは極性基を含み得る。これらのアミンはヒドロカルビルアミンであってもよく、又は主としてヒドロカルビル基がその他の基、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミド基、ニトリル、イミダゾリン基等を含むヒドロカルビルアミンであってもよい。特に有益なアミン化合物として、モノアミン及びポリアミン、例えば、分子当り約1〜12個、例えば、3〜12個、好ましくは3〜9個、最も好ましくは約6〜約7個の窒素原子を有する約2〜60個、例えば、2〜40個(例えば、3〜20個)の合計炭素原子のポリアルケンポリアミン及びポリオキシアルキレンポリアミンが挙げられる。アミン化合物の混合物、例えば、アルキレンジハライドとアンモニアの反応により調製されたものが有利に使用し得る。好ましいアミンは、例えば、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、ポリエチレンアミン、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、並びにポリプロピレンアミン、例えば、1,2-プロピレンジアミン、及びジ-(1,2-プロピレン)トリアミンを含む、脂肪族飽和アミンである。PAMとして知られている、このようなポリアミン混合物が、市販されている。特に好ましいポリアミン混合物は軽質エンドをPAM製品から蒸留することにより誘導された混合物である。“ヘビー”PAM、又はHPAMとして知られている、得られる混合物がまた市販されている。PAM及び/又はHPAMの両方の性質及び属性が、例えば、米国特許第4,938,881号、同第4,927,551号、同第5,230,714号、同第5,241,003号、同第5,565,128号、同第5,756,431号、同第5,792,730号、及び同第5,854,186号に記載されている。
【0032】
その他の有益なアミン化合物として、脂環式ジアミン、例えば、1,4-ジ(アミノメチル)シクロヘキサン及び複素環窒素化合物、例えば、イミダゾリンが挙げられる。アミンの別の有益なクラスは米国特許第4,857,217号、同第4,956,107号、同第4,963,275号、及び同第5,229,022号に開示されたようなポリアミドアミン及び関連アミドアミンである。また、米国特許第4,102,798号、同第4,113,639号、同第4,116,876号、及び英国特許第989,409号に記載されたようなトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TAM)が使用できる。また、デントリマー、星状アミン、及びコーム構造のアミンが使用されてもよい。同様に、米国特許第5,053,152号に記載されたような縮合アミンを使用してもよい。官能化されたポリマーは、例えば、米国特許第4,234,435号及び同第5,229,022号だけでなく、EP-A-208,560に記載されたような通常の技術を使用してアミン化合物と反応させられる。
好ましい分散剤組成物は少なくとも一種のポリアルケニルスクシンイミド(これは約0.65から約1.25まで、好ましくは約0.8から約1.1まで、最も好ましくは約0.9から約1までのカップリング比を有するポリアルケニル置換無水コハク酸(例えば、PIBSA)とポリアミン(PAM)の反応生成物である)を含むものである。この開示の文脈において、“カップリング比”はPIBSA中のスクシニル基の数対ポリアミン反応体中の一級アミン基の数の比と定義し得る。
【0033】
高分子量無灰分散剤の別のクラスはマンニッヒ塩基縮合生成物を含む。一般に、これらの生成物は、例えば、米国特許第3,442,808号に開示されたように、約1モルの長鎖アルキル置換モノ又はポリヒドロキシベンゼンを約1〜2.5モルの一種以上のカルボニル化合物(例えば、ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒド)及び約0.5〜2モルのポリアルキレンポリアミンと縮合することにより調製される。このようなマンニッヒ塩基縮合生成物はベンゼン基の置換基としてメタロセン触媒重合のポリマー生成物を含んでもよく、又は米国特許第3,442,808号に記載された様式と同様の様式で無水コハク酸で置換されたこのようなポリマーを含む化合物と反応させられてもよい。メタロセン触媒系を使用して合成された官能化され、かつ/又は誘導体化されたオレフィンポリマーの例が上記の同定された刊行物に記載されている。
本発明の一種以上の分散剤は非ポリマーである(例えば、モノ-又はジ-スクシンイミドである)ことが好ましい。
一種以上の分散剤、特に低分子量分散剤は、必要によりホウ化されてもよい。このような分散剤は、一般に米国特許第3,087,936号、同第3,254,025号及び同第5,430,105号に教示されたような、通常の手段によりホウ化し得る。分散剤のボレーションはアシル窒素含有分散剤をアシル化窒素組成物各1モルについて約0.1〜約20原子比のホウ素を与えるのに充分な量の、ホウ素化合物、例えば、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ素酸、及びホウ素酸のエステルで処理することにより容易に達成される。ホウ化分散剤は本発明の潤滑油組成物にホウ素の必要量の全部、又は一部を与えるのに使用し得る。
高度に反応性のポリイソブチレンから誘導された分散剤は通常のポリイソブチレンから誘導された相当する分散剤に対し磨耗信用を潤滑油組成物に与えることがわかった。この磨耗信用は灰含有耐磨耗剤、例えば、ZDDPの減少されたレベルを含む潤滑剤に特に重要である。こうして、一つの好ましい実施態様において、本発明の潤滑油組成物中に使用される少なくとも一種の分散剤が高度に反応性のポリイソブチレンから誘導される。
【0034】
非分散剤/洗剤ホウ素源はホウ素化合物を油溶性又は油分散性添加剤又は化合物と反応させることにより調製される。ホウ素化合物として、酸化ホウ素、酸化ホウ素水和物、三酸化ホウ素、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、ホウ素酸、例えば、ボロン酸、ホウ酸、テトラホウ酸及びメタホウ酸、ホウ素水素化物、ホウ素アミド並びにホウ素酸の種々のエステルが挙げられる。好適な“非分散剤ホウ素源”はあらゆる油溶性の、ホウ素含有化合物を含んでもよいが、高められた性質を潤滑油組成物に付与することが知られている一種以上のホウ素含有添加剤を含むことが好ましい。このようなホウ素含有添加剤として、例えば、ホウ化分散剤VI改良剤、アルカリ金属、混合アルカリ金属又はアルカリ土類金属のホウ酸塩、ホウ化過塩基化金属洗剤、ホウ化エポキシド、ホウ酸エステル、及びホウ酸アミドが挙げられる。
アルカリ金属ホウ酸塩及びアルカリ土類金属ホウ酸塩は一般に水和粒状金属ホウ酸塩であり、これらは当業界で知られている。アルカリ金属ホウ酸塩は混合されたアルカリ金属ホウ酸塩及びアルカリ土類金属ホウ酸塩を含む。これらの金属ホウ酸塩は市販されている。好適なアルカリ金属ホウ酸塩及びアルカリ土類金属ホウ酸塩並びにそれらの製造方法を記載する代表的な特許として、米国特許第3,997,454号、同第3,819,521号、同第3,853,772号、同第3,907,601号、同第3,997,454号、及び同第4,089,790号が挙げられる。
ホウ化アミンは一種以上の上記ホウ素化合物を一種以上の脂肪アミン、例えば、4個から18個までの炭素原子を有するアミンと反応させることにより調製されてもよい。ホウ化アミンはアミンを50℃から300℃まで、好ましくは100℃から250℃までの温度で3:1から1:3までのアミンの当量対ホウ素化合物の当量の比でホウ素化合物と反応させることにより調製されてもよい。
ホウ化脂肪エポキシドは一般に一種以上の上記ホウ素化合物と少なくとも一種のエポキシドの反応生成物である。エポキシドは一般に8個から30個まで、好ましくは10個から24個まで、更に好ましくは12個から20個までの炭素原子を有する脂肪族エポキシドである。有益な脂肪族エポキシドの例として、ヘプチルエポキシド及びオクチルエポキシドが挙げられる。エポキシドの混合物、例えば、14個から16個までの炭素原子を有するエポキシドと14個から18個までの炭素原子を有するエポキシドの市販の混合物がまた使用されてもよい。ホウ化脂肪エポキシドが一般に知られており、米国特許第4,584,115号に記載されている。
【0035】
ホウ酸エステルは一種以上の上記ホウ素化合物を一種以上の好適な親油性のアルコールと反応させることにより調製されてもよい。典型的には、アルコールは6個から30個まで、又は8個から24個までの炭素原子を含む。このようなホウ酸エステルの製造方法が当業界で知られている。
ホウ酸エステルはホウ化リン脂質であってもよい。このような化合物、及びこのような化合物の製造方法が、EP-A-0 684 298に記載されている。ホウ化過塩基化金属洗剤が当業界で知られており、この場合、ホウ酸塩がコアー中の炭酸塩を一部又は全部置換する。
付加的な添加剤が本発明の組成物に混入されて特別な性能要件が満足されることを可能にし得る。本発明の潤滑油組成物中に含まれてもよい添加剤の例は金属錆抑制剤、粘度指数改良剤、腐食抑制剤、酸化抑制剤、摩擦改質剤、消泡剤、耐磨耗剤及び流動点降下剤である。幾つかが以下に更に詳しく説明される。
上記分散剤に加えて、潤滑油組成物、特にHDDエンジン用の潤滑油組成物は、すすの分散に有効な添加剤を含むことが好ましい。Beraらの米国公開特許出願2006/0189492 A1はアシル化剤と下記の構造を有するオリゴマーの或る種の反応生成物を開示している。
【0036】
【化2】

【0037】
式中、夫々のArは独立にアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、ハロ及びこれらの組み合わせから選ばれた0〜3個の置換基を有する芳香族部分を表し、夫々のLは独立に炭素-炭素単結合又は結合基を含む結合部分であり、夫々のY'は独立に式Z(O(CR2)n)yX-(式中、Xは(CR'2)z、O及びSから選ばれ、R及びR'は夫々独立にH、C1-C6アルキル及びアリールから選ばれ、zは1〜10であり、nはXが(CR'2)zである場合には0〜10であり、またXがO又はSである場合には2〜10であり、yは1〜30であり、ZはH、アシル基、アルキル基又はアリール基である)の部分であり、夫々のaは独立に0〜3であり、少なくとも一つのAr部分は少なくとも一つの基Y(その場合、ZはHではない)を有し、かつmは1〜100である。このような化合物が有益なすす分散剤として記載されている(また、米国特許第6,495,496号及び同第6,750,183号並びに米国特許出願第11/672,660号を参照のこと)。
最終油のその他の成分と相溶性である摩擦改質剤及び燃料経済剤がまた含まれてもよい。このような物質の例として、高級脂肪酸のグリセリルモノエステル、例えば、グリセリルモノ-オレエート;長鎖ポリカルボン酸とジオールのエステル、例えば、2量体化された不飽和脂肪酸のブタンジオールエステル;オキサゾリン化合物;並びにアルコキシル化アルキル置換モノ-アミン、ジアミン及びアルキルエーテルアミン、例えば、エトキシル化牛脂アミン及びエトキシル化牛脂エーテルアミンが挙げられる。
その他の既知の摩擦改質剤は油溶性有機モリブデン化合物を含む。このような有機モリブデン摩擦改質剤はまた潤滑油組成物に酸化防止信用及び耐磨耗信用を与える。このような油溶性有機モリブデン化合物の例として、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、ジチオホスフィネート、キサンテート、チオキサンテート、スルフィド等、及びこれらの混合物が挙げられる。モリブデンジチオカルバメート、ジアルキルジチオホスフェート、アルキルキサンテート及びアルキルチオキサンテートが特に好ましい。
更に、モリブデン化合物は酸性モリブデン化合物であってもよい。これらの化合物はASTM試験D-664又はD-2896滴定操作により測定して塩基性窒素化合物と反応し、典型的には6価である。モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、並びにその他のアルカリ性金属モリブデン酸塩及びその他のモリブデン塩、例えば、モリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデン又は同様の酸性モリブデン化合物が含まれる。
【0038】
本発明の組成物中の有益なモリブデン化合物の中に、式
Mo(ROCS2)4及び
Mo(RSCS2)4
(式中、Rは一般に1個から30個までの炭素原子、好ましくは2-12個の炭素原子の、アルキル、アリール、アラルキル及びアルコキシアルキルからなる群から選ばれた有機基、最も好ましくは2〜12個の炭素原子のアルキルである)
の有機モリブデン化合物がある。モリブデンのジアルキルジチオカルバメートが特に好ましい。
本発明の潤滑組成物中の有益な有機モリブデン化合物の別のグループは3核モリブデン化合物、特に式Mo3SkLnQzのもの及びこれらの混合物であり、式中、Lはその化合物を油に可溶性又は分散性にするのに充分な数の炭素原子を有する有機基を有する独立に選ばれたリガンドであり、nは1から4までであり、kは4から7まで変化し、Qは中性電子供与性化合物、例えば、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルのグループから選ばれ、かつzは0から5までの範囲であり、非化学量論値を含む。少なくとも21個の合計炭素原子、例えば、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子が全てのリガンドの有機基中に存在すべきである。
上記モリブデン化合物は、摩擦減少特性を与えることに加えて、また耐磨耗信用を与え、それ故、モリブデン化合物は減少された量のZDDPで配合された潤滑油組成物中に使用されていた。このような減少されたリン潤滑油組成物中に使用される場合、モリブデン化合物は約10ppmから約1000ppm、例えば、10ppm〜約350ppm、又は10ppm〜約100ppmのモリブデン(モリブデンの原子として測定される)を導入する量で使用されていた。
【0039】
原料油の粘度指数はその中に粘度改質剤(VM)又は粘度指数改良剤(VII)として機能する或る種のポリマー物質を混入することにより、増大、又は改良される。一般に、粘度改質剤として有益なポリマー物質は約5,000から約250,000まで、好ましくは約15,000から約200,000まで、更に好ましくは約20,000から約150,000までの数平均分子量(Mn)を有するものである。これらの粘度改質剤はグラフト化物質、例えば、無水マレイン酸でグラフト化でき、グラフト化された物質が、例えば、アミン、アミド、窒素含有複素環化合物又はアルコールと反応させられて、多機能性粘度改質剤(分散剤-粘度改質剤)を生成し得る。ポリマー分子量、特に

は、種々の既知技術により測定し得る。一つの便利な方法はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)であり、これは更に分子量分布情報を与える(W.W. Yau、J.J. Kirkland及びD.D. Bly著“最新サイズ排除液体クロマトグラフィー”John Wiley and Sons, New York, 1979を参照のこと)。特に低分子量ポリマーについて、分子量を測定するのに有益な別の方法は、蒸気圧浸透圧法(例えば、ASTM D3592を参照のこと)である。
粘度改質剤として有益なジブロックコポリマーの一つのクラスは、例えば、オレフィンコポリマー粘度改質剤に対し磨耗信用を与えることがわかった。この磨耗信用は灰含有耐磨耗剤、例えば、ZDDPの減少されたレベルを含む潤滑剤に特に重要である。こうして、一つの好ましい実施態様において、本発明の潤滑油組成物中に使用される少なくとも一種の粘度改質剤は主として、好ましくは圧倒的に、ビニル芳香族炭化水素モノマーから誘導された一つのブロック、及び主として、好ましくは圧倒的に、ジエンモノマーから誘導された一つのブロックを含む線状ジブロックコポリマーである。有益なビニル芳香族炭化水素モノマーとして、8個から約16個までの炭素原子を含むもの、例えば、アリール置換スチレン、アルコキシ置換スチレン、ビニルナフタレン、アリール置換ビニルナフタレン等が挙げられる。ジエン、又はジオレフィンは、普通1,3関係で共役して配置された、二つの二重結合を含む。二つより多くの二重結合を含むオレフィン(時折ポリエンと称される)がまた本明細書に使用される“ジエン”の定義内と考えられる。有益なジエンとして、4個から約12個までの炭素原子、好ましくは8個から約16個までの炭素原子を含むもの、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、メチルペンタジエン、フェニルブタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエンが挙げられ、1,3-ブタジエン及びイソプレンが好ましい。
【0040】
ポリマーブロック組成物に関して本明細書に使用される“圧倒的に”はそのポリマーブロック中の主成分である特定モノマー又はモノマー型がそのブロックの少なくとも85重量%の量で存在することを意味する。
ジオレフィンで調製されたポリマーはエチレン性不飽和を含み、このようなポリマーは水素化されることが好ましい。ポリマーが水素化される場合、その水素化は先行技術で知られている技術のいずれかを使用して行なわれてもよい。例えば、水素化はエチレン性不飽和及び芳香族不飽和の両方が、例えば、米国特許第3,113,986号及び同第3,700,633号に教示された方法の如き方法を使用して変換(飽和)されるように行なわれてもよく、又はその水素化は、例えば、米国特許第3,634,595号、同第3,670,054号、同第3,700,633号及び米国再発行特許第27,145号に教示されるようにエチレン性不飽和のかなりの部分が変換されるものの、芳香族不飽和が殆ど又は全く変換されないように選択的に行なわれてもよい。これらの方法のいずれかがまたエチレン性不飽和のみを含むポリマー(これらは芳香族不飽和を含まない)を水素化するのに使用し得る。
ブロックコポリマーは異なる分子量及び/又は異なるビニル芳香族含量を有する、先に開示されたような線状ジブロックポリマーの混合物だけでなく、異なる分子量及び/又は異なるビニル芳香族含量を有する線状ブロックコポリマーの混合物を含んでもよい。2種以上の異なるポリマーの使用はその製品が配合エンジンオイルを製造するのに使用される場合に付与することが意図されているレオロジー特性に応じて単一ポリマーよりも好ましいかもしれない。市販のスチレン/水素化イソプレン線状ジブロックコポリマーの例として、インフィネウムUSA L.P.及びインフィネウムUK社から入手し得る、インフィネウムSV140TM、インフィネウムSV150TM及びインフィネウムSV160TM;ルブリゾール・コーポレーションから入手し得るルブリゾール(登録商標)7318;並びにアメリカのセプトン社(クラレグループ)から入手し得る、セプトン1001TM及びセプトン1020TMが挙げられる。好適なスチレン/1,3-ブタジエン水素化ブロックコポリマーがBASFにより商品名グリッソビスカルTMとして販売されている。
【0041】
流動点降下剤(PPD)(また、潤滑油流動性改良剤(LOFI)として知られている)はその温度を低下する。VMと較べて、LOFIは一般に低い数平均分子量を有する。VMのように、LOFIはグラフト化物質、例えば、無水マレイン酸でグラフト化でき、グラフト化された物質が、例えば、アミン、アミド、窒素含有複素環化合物又はアルコールと反応させられて多機能性添加剤を生成し得る。
本発明において、ブレンドの粘度の安定性を維持する添加剤を含むことが必要であるかもしれない。こうして、極性基含有添加剤がプレ-ブレンド段階で好適な低粘度を達成するが、或る種の組成物が延長された期間にわたって貯蔵される場合に増粘することが観察された。この増粘を調節するのに有効である添加剤は先に開示されたような無灰分散剤の調製に使用されるモノ-もしくはジカルボン酸又は酸無水物との反応により官能化された長鎖炭化水素を含む。別の好ましい実施態様において、本発明の潤滑油組成物はモノカルボン酸もしくはジカルボン酸又はこれらの酸無水物との反応により官能化された有効量の長鎖炭化水素を含む。
潤滑組成物が一種以上の上記添加剤を含む場合、夫々の添加剤は典型的には添加剤がその所望される機能を与える量でベースオイルにブレンドされる。クランクケース潤滑剤中に使用される場合の、このような添加剤の代表的な有効量が、以下にリストされる。リストされた全ての値は、金属洗剤と称されるものを除いて、活性成分(A.I.)質量%として記述される。
【0042】
【表3】

【0043】
完全配合潤滑油組成物(潤滑粘度の油+全ての添加剤)のノアク揮発度は20質量%以下、例えば、15質量%以下、好ましくは13質量%以下であろう。
添加剤を含む一種以上の添加剤濃厚物(濃厚物は時折添加剤パッケージと称される)を調製することは、必須ではないが、望ましいかもしれず、それにより数種の添加剤が油に同時に添加されて潤滑油組成物を生成し得る。
最終組成物は5〜25質量%、好ましくは5〜22質量%、典型的には10〜20質量%の濃厚物を使用してもよく、残部は潤滑粘度の油である。
本発明に使用される、リン含量、ホウ素含量、モリブデン含量、マグネシウム含量、カルシウム含量等という用語はASTM D5185により測定されたような含量を表し、また硫酸塩灰分はASTM D874により測定されたような含量を表す。
本発明は下記の実施例を参照して更に理解され、全ての部数は、特にことわらない限り、質量部であり、これらの実施例は本発明の好ましい実施態様を含む。
【実施例】
【0044】
原料油、分散剤(ホウ化分散剤及び非ホウ化分散剤の組み合わせ)、洗剤(カルシウムフェネート、スルホン酸カルシウム及びスルホン酸マグネシウム洗剤の組み合わせ)、ZDDP、すす分散剤、無灰の、硫黄を含まないフェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤の組み合わせ(合計0.7質量%)、モリブデンジチオカルバメート化合物、粘度改質剤、流動点降下剤及び1質量%の950Mnのポリブテン(PIB)を含むSAE 5W40グレード潤滑剤を4及び6cStのグループIII原料油のブレンド中でAPI CJ-4仕様及びCI-4仕様(1.0質量%のSASH、0.4質量%の硫黄及び0.12質量%のリン)に合致して配合した。得られる油は65ppmのホウ素含量、1156ppmのマグネシウム含量、44ppmのモリブデン含量及び9.9のTBNを有し;過塩基化洗剤により寄与されるTBNの79%(組成物のTBNの52%)が過塩基化マグネシウム洗剤により与えられた。
上記潤滑剤の使用から得られるバルブトレイン磨耗をカミンズISBエンジン試験;HDD潤滑剤に関するAPI CJ-4/CI-4仕様のためのエンジン試験の一種で測定した。ISBエンジン試験は二つのステージを含む。ステージ1は100時間運転してすすを油中に生じる。ステージ2は重付加を短いバーストでエンジンに生じることを目的とした、250時間のサイクル部分である。試験の終了時に、バルブトレイン部分を磨耗について測定し、タペット重量損失(ミリグラム数)、及びカムシャフトローブ磨耗(ミクロン数)として報告する。
例示された油で得られた結果を表2に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
示されたように、全グループIII原料油で配合され、かつ1200ppm未満のリン含量を有する5W40グレード潤滑剤は、API CJ-4/CI-4仕様の磨耗性能要件を満足することができた。
本明細書に記載された全ての特許、文献及びその他の物質の開示が言及によりこの明細書に、そのまま、含まれる。
複数の特定成分を“含む”と記載された組成物は特定の複数の特定成分を混合することにより生成された組成物を含むと見なされるべきである。本発明の原理、好ましい実施態様及び運転の様式が以上の明細書に記載された。本件出願人が提示するものは彼らの発明であるが、開示された特別な実施態様に限定されると見なされるべきではない。何とならば、開示された実施態様は限定よりもむしろ例示と見なされるからである。変化が本発明の精神から逸脱しないで当業者によりなされてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1質量%以下の硫酸塩灰分、0.4質量%以下の硫黄含量、及び0.12質量%以下のリン含量を有し、かつAPI CJ-4、API CI-4、及びACEA E7の少なくとも一つの磨耗性能要件を満足するSAE 0W又は5Wマルティグレード潤滑油組成物であって、前記潤滑油組成物が
(a) 過半量の潤滑粘度の油(前記潤滑粘度の油は約30質量%以下の一種以上のグループIV原料油及び/又はグループV原料油を含む)、
(b) 少なくとも約0.3質量%の非水素化オレフィンポリマー、及び
(c) 少なくとも40ppmのホウ素
を含むことを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
前記潤滑粘度の油が約10質量%以下の一種以上のグループIV原料油及び/又はグループV原料油を含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記潤滑粘度の油が実質的にグループIII原料油からなる、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
約0.7質量%から約1.0質量%までの硫酸塩灰分を有する、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
約0.08質量%から約0.12質量%までのリン含量を有する、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
約0.3質量%から約5質量%までの前記非水素化オレフィンポリマーを含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
約0.5質量%から約5.0質量%までの前記非水素化オレフィンポリマーを含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記非水素化オレフィンポリマーがポリブテン、ポリイソブテン及びこれらの混合物から選ばれる、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記非水素化オレフィンポリマーが約450から約2300までの数平均分子量を有する、請求項8記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
約40ppmから約600ppmまでのホウ素を含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
約50ppmから約100ppmまでのホウ素を含む、請求項10記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
前記組成物に少なくとも約0.09質量%のマグネシウムを与える量のマグネシウム洗剤を含む一種以上の金属洗剤を更に含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
前記マグネシウム洗剤が前記組成物に少なくとも約0.115質量%のマグネシウムを与える、請求項12記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
7から約15までのTBNを有する、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
前記組成物に約10ppmから約350ppmまでのモリブデンを与える量のモリブデン化合物を更に含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項16】
無硫黄フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも約0.5質量%の無灰酸化防止剤を更に含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項17】
前記潤滑油組成物に少なくとも0.08質量%の窒素を与える量の少なくとも一種の窒素含有分散剤を更に含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項18】
前記窒素含有分散剤が高度に反応性のポリイソブチレンから誘導された少なくとも一種の分散剤を含む、請求項17記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
少量の式:
【化1】

[式中、夫々のArは独立にアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、ハロ及びこれらの組み合わせから選ばれた0〜3個の置換基を有する芳香族部分を表し、夫々のLは独立に炭素-炭素単結合又は結合基を含む結合部分であり、夫々のY'は独立に式Z(O(CR2)n)yX-(式中、Xは(CR'2)z、O及びSから選ばれ、R及びR'は夫々独立にH、C1-C6アルキル及びアリールから選ばれ、zは1〜10であり、nはXが(CR'2)zである場合には0〜10であり、またXがO又はSである場合には2〜10であり、yは1〜30であり、ZはH、アシル基、アルキル基又はアリール基である)の部分であり、夫々のaは独立に0〜3であり、少なくとも一つのAr部分は少なくとも一つの基Y(その場合、ZはHではない)を有し、かつmは1〜100である]
の少なくとも一種のすす分散化合物を更に含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
主としてビニル芳香族炭化水素モノマーから誘導された一つのブロック、及び主としてジエンモノマーから誘導された一つのブロックを含む少量の線状ブロックコポリマーを更に含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項21】
0.1質量%以下の硫酸塩灰分、0.4質量%以下の硫黄含量、及び約0.08質量%から0.12質量%までのリン含量、並びに約7から約15までのTBNを有し、かつAPI CJ-4、API CI-4、及びACEA E7の少なくとも一つの磨耗性能要件を満足するSAE 0W又は5Wマルティグレード潤滑油組成物であって、前記潤滑油組成物が
(a) 過半量の潤滑粘度の油(前記潤滑粘度の油は約10質量%以下の一種以上のグループIV原料油及び/又はグループV原料油を含む)、
(b) 0.3質量%から約5.0質量%までの非水素化オレフィンポリマー(約450から約2300までの数平均分子量を有し、ポリブテン、ポリイソブテン及びこれらの混合物からなる群から選ばれる)、
(c) 前記潤滑油組成物に少なくとも0.09質量%のマグネシウムを与える量の過塩基化マグネシウム洗剤、
(d) 少なくとも0.5質量%の無灰酸化防止剤(無硫黄フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる)、
(e) 前記潤滑油組成物に少なくとも0.08質量%の窒素を与える量の少なくとも一種の窒素含有分散剤、及び
(f) 前記潤滑油組成物に約10ppmから約350ppmまでのモリブデンを与える量のモリブデン化合物
を含み、
前記潤滑油組成物が約50ppmから約100ppmまでのホウ素含量を有することを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項22】
前記潤滑粘度の油が実質的にグループIII原料油からなる、請求項21記載の潤滑油組成物。
【請求項23】
少量の式:
【化2】

[式中、夫々のArは独立にアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、ハロ及びこれらの組み合わせから選ばれた0〜3個の置換基を有する芳香族部分を表し、夫々のLは独立に炭素-炭素単結合又は結合基を含む結合部分であり、夫々のY'は独立に式Z(O(CR2)n)yX-(式中、Xは(CR'2)z、O及びSから選ばれ、R及びR'は夫々独立にH、C1-C6アルキル及びアリールから選ばれ、zは1〜10であり、nはXが(CR'2)zである場合には0〜10であり、またXがO又はSである場合には2〜10であり、yは1〜30であり、ZはH、アシル基、アルキル基又はアリール基である)の部分であり、夫々のaは独立に0〜3であり、少なくとも一つのAr部分は少なくとも一つの基Y(その場合、ZはHではない)を有し、かつmは1〜100である]
の少なくとも一種のすす分散化合物を更に含む、請求項21記載の潤滑油組成物。
【請求項24】
主としてビニル芳香族炭化水素モノマーから誘導された一つのブロック、及び主としてジエンモノマーから誘導された一つのブロックを含む少量の線状ブロックコポリマーを更に含む、請求項21記載の潤滑油組成物。
【請求項25】
請求項1記載の潤滑油組成物で潤滑されたヘビーデューティディーゼル(HDD)エンジン。
【請求項26】
請求項21記載の潤滑油組成物で潤滑されたヘビーデューティディーゼル(HDD)エンジン。
【請求項27】
ヘビーデューティディーゼル(HDD)エンジンの磨耗性能の改良方法であって、その方法がエンジンを請求項1記載の潤滑油組成物で潤滑する工程、及び潤滑されたエンジンを運転する工程を含むことを特徴とする上記エンジンの磨耗性能の改良方法。
【請求項28】
ヘビーデューティディーゼル(HDD)エンジンの磨耗性能の改良方法であって、その方法がエンジンを請求項21記載の潤滑油組成物で潤滑する工程、及び潤滑されたエンジンを運転する工程を含むことを特徴とする上記エンジンの磨耗性能の改良方法。

【公開番号】特開2009−197230(P2009−197230A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−33193(P2009−33193)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(500010875)インフィニューム インターナショナル リミテッド (132)
【Fターム(参考)】