説明

潤滑装置

【課題】適正に微細気泡を用いた潤滑を行うことができる潤滑装置を提供することを目的とする。
【解決手段】潤滑装置1は、車両の走行用駆動源3から駆動輪へ動力を伝達する動力伝達装置に供給する液状媒体を制御する制御弁30に設けられ当該制御弁30内から液状媒体を排出する際の減圧により当該液状媒体中に微細気泡を発生させる排出口33と、排出口33と動力伝達装置の摩擦係合要素18、19とを接続する微細気泡混入媒体供給通路34とを備えることを特徴とする。したがって、潤滑装置1は、適正に微細気泡を用いた潤滑を行うことができる、という効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の動力伝達装置に適用される従来の潤滑装置として、例えば、特許文献1には、旋回流式のマイクロバブル発生装置で潤滑油中に空気を混入してマイクロバブルを発生させ、このマイクロバブルが混入された潤滑油を湿式多板クラッチに供給して潤滑することで、湿式多板クラッチでの引き摺りトルクの低減を図った、マイクロバブルを用いた潤滑装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−71420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような特許文献1に記載のマイクロバブルを用いた潤滑装置は、例えば、マイクロバブルを発生させ湿式多板クラッチに供給するための構成の点で、更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、適正に微細気泡を用いた潤滑を行うことができる潤滑装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る潤滑装置は、車両の走行用駆動源から駆動輪へ動力を伝達する動力伝達装置に供給する液状媒体を制御する制御弁に設けられ当該制御弁内から前記液状媒体を排出する際の減圧により当該液状媒体中に微細気泡を発生させる排出口と、前記排出口と前記動力伝達装置の摩擦係合要素とを接続する微細気泡混入媒体供給通路とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、上記潤滑装置では、前記微細気泡混入媒体供給通路に設けられ、当該微細気泡混入媒体供給通路内の圧力が予め設定された所定圧力以上となった際に、当該微細気泡混入媒体供給通路の内部から外部に前記液状媒体を排出する排出装置を備えるものとすることができる。
【0008】
また、上記潤滑装置では、前記車両の状態に応じて、前記微細気泡が混入した前記液状媒体の前記摩擦係合要素への供給を禁止する切替装置を備えるものとすることができる。
【0009】
また、上記潤滑装置では、前記切替装置は、前記摩擦係合要素の係合動作中に前記微細気泡が混入した前記液状媒体の前記摩擦係合要素への供給を禁止するものとすることができる。
【0010】
また、上記潤滑装置では、前記切替装置は、前記摩擦係合要素の回転速度が予め設定された所定速度以上である場合に前記微細気泡が混入した前記液状媒体の前記摩擦係合要素への供給を禁止するものとすることができる。
【0011】
また、上記潤滑装置では、前記切替装置は、前記液状媒体の圧力に応じて変速動作を行うベルト式無段変速機のプライマリ圧とセカンダリ圧との圧力差に応じて作動するものとすることができる。
【0012】
また、上記潤滑装置では、前記排出口を介さずに前記摩擦係合要素に前記液状媒体を供給可能である切替供給通路を備え、前記切替装置は、前記微細気泡が混入した前記液状媒体の前記摩擦係合要素への供給を禁止する際に、前記摩擦係合要素に前記液状媒体を供給する通路を、前記微細気泡混入媒体供給通路から前記切替供給通路に切り替えるものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る潤滑装置は、適正に微細気泡を用いた潤滑を行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施形態1に係る潤滑装置を搭載する車両の概略構成図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る潤滑装置の概略構成図である。
【図3】図3は、実施形態2に係る潤滑装置の概略構成図である。
【図4】図4は、実施形態3に係る潤滑装置の概略構成図である。
【図5】図5は、実施形態4に係る潤滑装置の概略構成図である。
【図6】図6は、実施形態5に係る潤滑装置の概略構成図の断面図である。
【図7】図7は、実施形態5に係る潤滑装置における切替制御の一例を説明するフローチャートである。
【図8】図8は、実施形態6に係る潤滑装置の概略構成図である。
【図9】図9は、クラッチ回転数と引き摺トルクとの関係の一例を表す線図である。
【図10】図10は、実施形態6に係る潤滑装置における切替制御の一例を説明するフローチャートである。
【図11】図11は、実施形態7に係る潤滑装置の概略構成図である。
【図12】図12は、クラッチ回転数と引き摺トルクとの関係の一例を表す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る潤滑装置を搭載する車両の概略構成図、図2は、実施形態1に係る潤滑装置の概略構成図である。
【0017】
本実施形態の潤滑装置1は、例えば、図1に示すように、車両2の動力伝達装置5に供給される液状媒体としてのオイルの圧力を制御する油圧制御装置6の油圧制御回路に組み込まれる形で構成され、動力伝達装置5の所定の箇所の潤滑を行うものである。
【0018】
潤滑装置1が適用される車両2は、走行用駆動源としてのエンジン3と、駆動輪4と、動力伝達装置5と、油圧制御装置6と、制御装置としてのECU7とを備える。
【0019】
エンジン3は、車両2を走行させる走行用駆動源(原動機)であり、燃料を消費して車両2の駆動輪4に作用させる動力を発生させる。エンジン3は、燃料の燃焼に伴って機関出力軸であるクランクシャフト8に機械的な動力(エンジントルク)を発生させ、この機械的動力をクランクシャフト8から駆動輪4に向けて出力可能である。
【0020】
動力伝達装置5は、エンジン3から駆動輪4へ動力を伝達するものである。動力伝達装置5は、エンジン3から駆動輪4への動力の伝達経路中に設けられ液状媒体としてのオイルの圧力(油圧)によって作動する。
【0021】
より詳細には、動力伝達装置5は、トルクコンバータ9、前後進切替機構10、変速機11、減速機構12、デファレンシャルギヤ13等を含んで構成される。動力伝達装置5は、エンジン3のクランクシャフト8と変速機11のインプットシャフト14とがトルクコンバータ9、前後進切替機構10等を介して接続され、変速機11のアウトプットシャフト15が減速機構12、デファレンシャルギヤ13、駆動軸16等を介して駆動輪4に接続される。
【0022】
トルクコンバータ9は、クランクシャフト8と一体回転可能に結合されるフロントカバーに伝達された動力を、ポンプやタービンからなる流体伝達機構を介してトルクを増幅して、あるいは、ロックアップクラッチを介してそのままのトルクで、前後進切替機構10に伝達する。トルクコンバータ9は、後述の油圧制御装置6から供給されるオイルの圧力に応じてロックアップクラッチが解放状態(ロックアップOFF)と係合状態(ロックアップON)とに切り替えられる。
【0023】
前後進切替機構10は、エンジン3からの動力(回転出力)を変速可能であると共にその回転方向を切り替え可能である。前後進切替機構10は、遊星歯車機構17、摩擦係合要素としての前後進切替クラッチ(フォワードクラッチ)18及び前後進切替ブレーキ(リバースブレーキ)19等を含んで構成される。遊星歯車機構17は、相互に差動回転可能な複数の回転要素として、サンギヤ、リングギヤ、キャリヤ等を含んで構成される差動機構であり、前後進切替クラッチ18及び前後進切替ブレーキ19は、遊星歯車機構17の作動状態を切り替えるための係合要素であり、例えば、多板クラッチなどの摩擦式の係合機構等によって構成することができ、ここでは、油圧式の湿式多板クラッチを用いる。
【0024】
前後進切替機構10は、後述の油圧制御装置6から供給されるオイルの圧力によって前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19が作動し作動状態が切り替えられる。前後進切替機構10は、前後進切替クラッチ18が係合状態(ON状態)、前後進切替ブレーキ19が解放状態(OFF状態)である場合に、エンジン3からの動力を正転回転(車両2が前進する際にインプットシャフト14が回転する方向)でインプットシャフト14に伝達する。前後進切替機構10は、前後進切替クラッチ18が解放状態、前後進切替ブレーキ19が係合状態である場合に、エンジン3からの動力を逆転回転(車両2が後進する際にインプットシャフト14が回転する方向)でインプットシャフト14に伝達する。前後進切替機構10は、ニュートラル時には、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19共に解放状態とされる。
【0025】
変速機11は、エンジン3から駆動輪4への動力の伝達経路における前後進切替機構10と駆動輪4との間に設けられエンジン3の動力を変速して出力可能である。変速機11は、後述の油圧制御装置6から供給されるオイルの圧力によって作動する。
【0026】
変速機11は、インプットシャフト14に伝達(入力)されるエンジン3からの回転動力(回転出力)を所定の変速比で変速して変速機出力軸であるアウトプットシャフト15に伝達し、このアウトプットシャフト15から駆動輪4に向けて変速された動力を出力する。ここでは、変速機11は、その一例として、インプットシャフト(プライマリシャフト)14に連結されたプライマリプーリ20、アウトプットシャフト(セカンダリシャフト)15に連結されたセカンダリプーリ21、プライマリプーリ20とセカンダリプーリ21との間に掛け渡されたベルト22などを含んで構成されるベルト式の無段自動変速機(CVT)を例示している。変速機11は、後述の油圧制御装置6からプライマリプーリ20のプライマリシーブ油圧室23、セカンダリプーリ21のセカンダリシーブ油圧室24に供給されるオイルの圧力(プライマリ圧、セカンダリ圧)に応じて、変速動作を行い、プライマリプーリ20の入力回転速度に相当する入力回転数(プライマリ回転数)とセカンダリプーリ21の出力回転速度に相当する出力軸回転数(セカンダリ回転数)との比である変速比を無段階に変更し、また、セカンダリプーリ21等がベルト22を挟圧する力(ベルト挟圧力)が調節され、これに応じたトルク容量で動力を伝達する。
【0027】
減速機構12は、変速機11からの動力の回転速度を減速してデファレンシャルギヤ13に伝達する。デファレンシャルギヤ13は、減速機構12からの動力を、各駆動軸16を介して各駆動輪4に伝達する。デファレンシャルギヤ13は、車両2が旋回する際に生じる旋回の中心側、つまり内側の駆動輪4と、外側の駆動輪4との回転速度の差を吸収する。
【0028】
上記のように構成される動力伝達装置5は、エンジン3が発生させた動力をトルクコンバータ9、前後進切替機構10、変速機11、減速機構12、デファレンシャルギヤ13等を介して駆動輪4に伝達することができる。この結果、車両2は、駆動輪4の路面との接地面に駆動力[N]が生じ、これにより走行することができる。
【0029】
油圧制御装置6は、流体としてのオイルの油圧によってトルクコンバータ9のロックアップクラッチ、前後進切替機構10の前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19等の係合要素を含む動力伝達装置5を作動させるものである。油圧制御装置6は、例えば、ECU7により制御される種々の油圧制御回路を含んで構成される。油圧制御装置6は、複数の油路、オイルリザーバ、オイルポンプ、複数の電磁弁などを含んで構成され、後述するECU7からの信号に応じて、動力伝達装置5の各部に供給されるオイルの流量あるいは油圧を制御する。また、この油圧制御装置6は、後述するように動力伝達装置5の所定の箇所の潤滑を行う潤滑油供給装置としても機能する。
【0030】
ECU7は、車両2の各部の駆動を制御するものである。ECU7は、CPU、ROM、RAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路である。ECU7は、例えば、車両2の各部に設けられた種々のセンサ、検出装置が電気的に接続される。ECU7は、エンジン3の燃料噴射装置、点火装置、スロットル装置や油圧制御装置6等が電気的に接続される。ECU7は、種々のセンサから検出した検出結果に対応した電気信号が入力され、入力された検出結果に応じてこれら各部に駆動信号を出力しこれらの駆動を制御する。ECU7は、例えば、アクセル開度、車速等に基づいてスロットル開度を調整しエンジン3への吸入空気量を調節して、その変化に対応して燃料噴射量を制御し、燃焼室に充填される混合気の量を調節してエンジン3の出力を制御する。また、ECU7は、アクセル開度、車速等に基づいて変速比、典型的には変速機11への入力回転数を調節して、変速機11の変速制御を行う。
【0031】
ところで、本実施形態の油圧制御装置6の油圧制御回路に組み込まれる形で構成される潤滑装置1は、図2に示すように、液状媒体としてのオイル中に微細気泡を発生させる排出口としてのドレーン33と、このドレーン33と動力伝達装置5の摩擦係合要素としての前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19とを接続する微細気泡混入媒体供給通路としての供給油路34とを備えることで、適正に微細気泡を用いた潤滑を行うことができるようにしている。
【0032】
ここで、潤滑装置1が組み込まれる油圧制御装置6は、オイルパン25、オイルポンプ26、プライマリレギュレータ弁27、セカンダリレギュレータ弁28、ライン圧制御弁29、シーブ圧制御弁30等の種々の制御弁と、これら種々の制御弁やプライマリシーブ油圧室23、セカンダリシーブ油圧室24、トルクコンバータ9のロックアップクラッチ、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19を作動させる各クラッチ油圧室31、32等の動力伝達装置5の各部とを、オイルが流通可能に相互に接続する種々の油路等を含んで構成される。
【0033】
オイルパン25は、貯留手段であり、液状媒体としてのオイルを貯留するものである。オイルポンプ26は、エンジン3のクランクシャフト8(図1参照)の回転に同期して駆動し、オイルパン25に貯留されているオイルを吸入、加圧し、吐出するものである。ここでは、オイルポンプ26は、駆動源としてエンジン3を用いるものとして説明するが、これに限らず、駆動源として電動機等を用いてもよい。
【0034】
プライマリレギュレータ弁27、セカンダリレギュレータ弁28は、第1ライン圧を調圧するものであり、例えば、不図示のソレノイド弁から入力されるソレノイド圧に応じてこの第1ライン圧を所定の大きさの圧力に調整する。第1ライン圧は、動力伝達装置5に供給するオイルを制御する油圧制御装置6の油圧制御回路全体でのオイルの元圧である。プライマリレギュレータ弁27は、スプール弁子や複数のポート(入力ポート、出力ポート、ドレーンポート等。以下、同様。)を有し、例えば、入力ポートにオイルポンプ26の吐出口が接続され、出力ポートにセカンダリレギュレータ弁28の入力ポート、各部潤滑孔等が接続される。また、プライマリレギュレータ弁27は、例えば、出力ポートにロックアップ圧を制御するための不図示のロックアップ制御弁等を介してトルクコンバータ9のロックアップクラッチが接続される。セカンダリレギュレータ弁28は、スプール弁子や複数のポートを有し、例えば、入力ポートにプライマリレギュレータ弁27の出力ポートが接続され、出力ポートにオイルポンプ26の吸入口が接続される。
【0035】
ライン圧制御弁29は、第2ライン圧を調圧するものであり、例えば、この第2ライン圧を所定以上の一定圧に調節する。第2ライン圧は、各クラッチ油圧室31、32に導入されるクラッチ圧を制御するための不図示のクラッチ制御弁等に導入するオイルの元圧である。ライン圧制御弁29は、スプール弁子や複数のポートを有し、例えば、入力ポートにオイルポンプ26の吐出口が接続され、出力ポートに不図示のクラッチ制御弁等を介して各クラッチ油圧室31、32等が接続される。
【0036】
シーブ圧制御弁30は、シーブ圧を制御するものである。シーブ圧は、プライマリシーブ油圧室23、あるいは、セカンダリシーブ油圧室24に供給されるオイルの圧力(プライマリ圧、セカンダリ圧)である。シーブ圧制御弁30は、スプール弁子や複数のポートを有し、例えば、入力ポートにオイルポンプ26の吐出口が接続され、出力ポートに不図示の制御弁等を介してプライマリシーブ油圧室23、セカンダリシーブ油圧室24等が接続される。
【0037】
上記のように構成される油圧制御装置6は、ライン圧制御弁29や不図示のクラッチ圧制御弁等を介して各クラッチ油圧室31、32に、シーブ圧制御弁30等を介してプライマリシーブ油圧室23、セカンダリシーブ油圧室24に、プライマリレギュレータ弁27や不図示のロックアップ制御弁等を介してトルクコンバータ9のロックアップクラッチに、それぞれ所定の圧力のオイルを作動油として供給する。
【0038】
そして、本実施形態の潤滑装置1のドレーン33は、油圧制御装置6において動力伝達装置5に供給するオイルを制御する制御弁、典型的には、導入されるオイルの油圧が相対的に高圧となる傾向にあり、微細気泡を発生させるために十分な減圧量を確保することができる制御弁、一例としてここではシーブ圧制御弁30に設けられる。このドレーン33は、シーブ圧制御弁30内からオイルを排出する際の減圧によりオイル中に微細気泡を発生させる。
【0039】
ここでいう微細気泡とは、典型的には、直径が数十μm以下の微小な気泡、いわゆるマイクロバブルであり、視認が容易な大きさの気泡ではなく、視認が困難なほど微細な気泡である。このマイクロバブルは、バブルどうしが合体や吸収し難く、液体中に長時間浮遊する傾向にあり、最終的には液体であるオイルに溶け込みながら消滅するものである。なお、微細気泡は、例えば、直径が1μm以下の極微小な気泡、いわゆるナノバブルであってもよい。
【0040】
そして、潤滑装置1の供給油路34は、このシーブ圧制御弁30のドレーン(ドレーンポート)33と前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔とを接続する。供給油路34は、ドレーン33から排出される際に発生した微細気泡が混入したオイルを、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給する。
【0041】
上記のように構成される潤滑装置1は、シーブ圧制御弁30のドレーン33からオイルが排出され、このときの急激な減圧によりオイル中に微細気泡が発生する。そして、潤滑装置1は、この微細気泡が混入されたオイルを、供給油路34を通して前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができる。これにより、潤滑装置1は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19を微細気泡が混入されたオイルによって適正に潤滑、冷却することができるので、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に生じる引き摺りトルクを低減することができ、よって、例えば、動力損失を低減し、燃費を向上することができる。
【0042】
そして、潤滑装置1は、例えば、シーブ圧制御弁30等の既設の制御弁を用いて発生させた微細気泡が混入したオイルを、供給油路34を通して前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給する構成であることから、微細気泡を発生させるために別個に微細気泡発生装置を設ける必要がないので、構成部品点数が増加することを抑制することができる。この結果、潤滑装置1は、省スペースでかつ低コストで微細気泡を用いた潤滑を行う構成を実現することができる。
【0043】
また、潤滑装置1は、シーブ圧制御弁30等の既設の制御弁を用いて発生した微細気泡が混入したオイルを、供給油路34を通して前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給する構成であることから、微細気泡を発生させるためのポンプ、圧力調節部、コンプレッサ等を必要としないため、微細気泡を発生させることによるエネルギ損失の増加を抑制することができ、この点でも、動力損失を低減し、燃費を向上することができる。
【0044】
また、潤滑装置1は、微細気泡が混入したオイルを、オイルポンプ26や不図示のフィルタ等を介さずに、供給油路34を介して前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができるので、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給される前にオイル中の混入気泡量が低下することを抑制することができ、十分な量の微細気泡を前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができる。さらに、潤滑装置1は、オイルポンプ26におけるエア噛み等を防止することができ、ポンプ負荷の増大、ポンプ効率の低下等を抑制することができ、この点でも、動力損失を低減し、燃費を向上することができる。
【0045】
以上で説明した実施形態に係る潤滑装置1によれば、車両2のエンジン3から駆動輪4へ動力を伝達する動力伝達装置5に供給するオイルを制御するシーブ圧制御弁30に設けられこのシーブ圧制御弁30内からオイルを排出する際の減圧によりこのオイル中に微細気泡を発生させるドレーン33と、ドレーン33と動力伝達装置5の前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19とを接続する供給油路34とを備える。
【0046】
したがって、潤滑装置1は、シーブ圧制御弁30のドレーン33からオイルが排出される際の急激な減圧によりオイル中に微細気泡が発生し、この微細気泡が混入されたオイルを、供給油路34を通して摩擦係合要素としての前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することから、例えば、より簡易な構成で、適正に微細気泡を用いた潤滑を行うことができる。
【0047】
なお、以上の説明では、供給油路34は、シーブ圧制御弁30のドレーン33と前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19とを接続するものとして説明したが、これに限らない。供給油路34が接続される排出口は、制御弁内からオイルを排出する際の減圧によって微細気泡が発生する排出口であればよく、オイルの排出時に微細気泡が発生するのであれば、例えば、ライン圧制御弁29のドレーン等であってもよい。また、供給油路34に接続される摩擦係合要素は、前後進切替機構10の前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に限らず、動力伝達装置5に含まれる摩擦係合要素であれば、他のものであってもよい。
【0048】
[実施形態2]
図3は、実施形態2に係る潤滑装置の概略構成図である。実施形態2に係る潤滑装置は、排出装置を備える点で実施形態1とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略する(以下で説明する実施形態も同様である。)。
【0049】
本実施形態に係る潤滑装置201は、図3に示すように、ドレーン33と、供給油路34と共に、さらに、排出装置としてのチェック弁235を備える。
【0050】
チェック弁235は、供給油路34に設けられる。つまり、チェック弁235は、供給油路34において、シーブ圧制御弁30のドレーン(ドレーンポート)33と前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔との間に設けられる。
【0051】
チェック弁235は、供給油路34内の圧力が予め設定された所定圧力以上となった際に、この供給油路34の内部から外部にオイルを排出する。チェック弁235は、供給油路34内の圧力が予め設定された所定の開弁圧力以上となると開弁し、系外にオイルを吐出する。
【0052】
以上で説明した実施形態に係る潤滑装置201によれば、シーブ圧制御弁30のドレーン33からオイルが排出される際の急激な減圧によりオイル中に微細気泡が発生し、この微細気泡が混入されたオイルを、供給油路34を通して摩擦係合要素としての前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することから、例えば、より簡易な構成で、適正に微細気泡を用いた潤滑を行うことができる。
【0053】
そして、この潤滑装置201は、供給油路34に設けられ、この供給油路34内の圧力が予め設定された所定圧力以上となった際に、供給油路34の内部から外部にオイルを排出するチェック弁235を備える。したがって、この潤滑装置201は、供給油路34が所定以上になった際にチェック弁235からオイルを排出するので、供給油路34等の回路油圧が過剰に上昇することを防止することができる。この結果、潤滑装置201は、例えば、シーブ圧制御弁30によるシーブ圧の制御応答性が低下することを抑制することができ、変速応答性が低下することを抑制することができ、すなわち、動力伝達装置5の制御性の低下を抑制することができる。
【0054】
[実施形態3]
図4は、実施形態3に係る潤滑装置の概略構成図である。実施形態3に係る潤滑装置は、切替装置を備える点で実施形態1、2とは異なる。
【0055】
本実施形態に係る潤滑装置301は、図4に示すように、ドレーン33と、供給油路34と、チェック弁235と共に、さらに、切替供給通路としての切替油路336と、切替装置としてのマニュアル弁337とを備える。
【0056】
切替油路336は、微細気泡を発生させるドレーン33を介さずに前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19にオイルを供給可能である。切替油路336は、供給油路34とは異なる油路として別個に形成される。切替油路336は、セカンダリレギュレータ弁28の出力ポートに接続されると共に、ライン圧制御弁29の出力ポートからの分岐油路も合流している。
【0057】
マニュアル弁337は、供給油路34と切替油路336とが接続され、状況に応じて一方を前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔に接続し、他方をドレーンに接続するものである。
【0058】
マニュアル弁337は、微細気泡が混入したオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給する場合、供給油路34を前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔に接続する一方、切替油路336をドレーンに接続する。これにより、潤滑装置301は、供給油路34を通して微細気泡が混入したオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができる。
【0059】
マニュアル弁337は、微細気泡が混入していないオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給する場合、切替油路336を前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔に接続する一方、供給油路34をドレーンに接続する。これにより、潤滑装置301は、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止して、切替油路336を通して微細気泡が混入していないオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができる。
【0060】
マニュアル弁337は、車両2の状態に応じて、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止する。マニュアル弁337は、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止する際に、上述のように前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19にオイルを供給する通路を、供給油路34から切替油路336に切り替える。
【0061】
そして、このマニュアル弁337は、車両2の状態として、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合状態に応じて供給油路34と切替油路336とを切り替える。ここでは、マニュアル弁337は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合動作中に、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止する。本実施形態のマニュアル弁337は、運転者がシフトレバーを介してシフトレンジ操作を行った際に、このシフトレンジ操作に機械的に連動して通路を切り替える。
【0062】
マニュアル弁337は、シフトレンジとして、前進走行を行うドライブレンジ(Dレンジ)が選択されている際に、供給油路34を前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔に接続するように設定される。これにより、潤滑装置301は、シフトレンジとして、ドライブレンジが選択されている場合に、供給油路34を通して微細気泡が混入したオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができる。この結果、潤滑装置301は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に生じる引き摺りトルクを低減することができる。
【0063】
一方、マニュアル弁337は、ドライブレンジが選択されている状態から運転者がシフトレバーを介してシフトレンジ操作を行って、シフトレンジとして他のレンジ(例えば、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ等)が選択されると、このシフトレンジ操作に連動して、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19にオイルを供給する通路を、供給油路34から切替油路336に切り替える。これにより、潤滑装置301は、少なくとも前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合動作中、すなわち、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19のクラッチ締結制御中に、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止して、切替油路336を通して微細気泡が混入していないオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができる。
【0064】
以上で説明した実施形態に係る潤滑装置301によれば、シーブ圧制御弁30のドレーン33からオイルが排出される際の急激な減圧によりオイル中に微細気泡が発生し、この微細気泡が混入されたオイルを、供給油路34を通して摩擦係合要素としての前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することから、例えば、より簡易な構成で、適正に微細気泡を用いた潤滑を行うことができる。
【0065】
そして、この潤滑装置301は、車両2の状態に応じて、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止するマニュアル弁337を備えることから、このマニュアル弁337によって前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑状態を車両2の状態に応じて適正に切り替えることができる。
【0066】
すなわち、この潤滑装置301は、マニュアル弁337が前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合動作中に微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止することから、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19のクラッチ締結制御中に微細気泡によって摩擦係合面の摩擦特性(μ特性)、油膜性状等の面性状が変動してしまうことを抑制することができる。この結果、潤滑装置301は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19のクラッチ締結制御中に前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19にて、いわゆるジャダーやすべりが発生することを抑制することができる。
【0067】
また、この潤滑装置301は、例えば、既設のマニュアル弁337を用いて、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止する構成を実現することができることから、低コストでかつシフトレンジ操作に応じて確実に前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑状態を切り替えることができる。すなわち、潤滑装置301は、ドライブレンジへの切替終了後に、微細気泡が混入したオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができ、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合動作中に、微細気泡が混入したオイルが供給されることを確実に防止することができる。
【0068】
[実施形態4]
図5は、実施形態4に係る潤滑装置の概略構成図である。実施形態4に係る潤滑装置は、切替装置の構成の点で実施形態3とは異なる。
【0069】
本実施形態に係る潤滑装置401は、図5に示すように、ドレーン33と、供給油路34と、チェック弁235と共に、さらに、切替供給通路としての切替油路336と、切替装置としてのシフト弁437とを備える。
【0070】
シフト弁437は、供給油路34と切替油路336とが接続され、状況に応じて一方を前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔に接続し、他方をドレーンに接続するものである。シフト弁437は、車両2の状態に応じて、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止する。
【0071】
そして、このシフト弁437は、車両2の状態として、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合状態に応じて供給油路34と切替油路336とを切り替える。シフト弁437は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合動作中に微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止する。本実施形態のシフト弁437は、クラッチ油圧室31、32に対するオイルの給排出に連動して、すなわち、前後進切替ブレーキ19の係合/係合解除動作に連動して通路を切り替える。シフト弁437は、例えば、クラッチ油圧室31、32に対するオイルの給排出に連動して変動する油圧とバネによる付勢力との大小関係に応じて、通路を切り替える。
【0072】
シフト弁437は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19が完全係合状態、あるいは、完全解放状態である場合に、供給油路34を前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔に接続するように設定される。これにより、潤滑装置401は、前後進切替ブレーキ19が完全係合状態、あるいは、完全解放状態である場合に、供給油路34を通して微細気泡が混入したオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができる。この結果、潤滑装置401は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に生じる引き摺りトルクを低減することができる。
【0073】
一方、シフト弁437は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19が係合動作中、典型的には、半係合状態である場合に、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19にオイルを供給する通路を、供給油路34から切替油路336に切り替える。これにより、潤滑装置401は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合動作中、すなわち、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19のクラッチ締結制御中に、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止して、切替油路336を通して微細気泡が混入していないオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができる。
【0074】
以上で説明した実施形態に係る潤滑装置401によれば、シーブ圧制御弁30のドレーン33からオイルが排出される際の急激な減圧によりオイル中に微細気泡が発生し、この微細気泡が混入されたオイルを、供給油路34を通して摩擦係合要素としての前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することから、例えば、より簡易な構成で、適正に微細気泡を用いた潤滑を行うことができる。
【0075】
そして、この潤滑装置401は、車両2の状態に応じて、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止するシフト弁437を備えることから、このシフト弁437によって前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑状態を車両2の状態に応じて適正に切り替えることができる。
【0076】
すなわち、この潤滑装置401は、シフト弁437が前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合動作中に微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止することから、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19のクラッチ締結制御中に微細気泡によって摩擦係合面の摩擦特性(μ特性)が変動してしまうことを抑制することができる。この結果、潤滑装置401は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19のクラッチ締結制御中に前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19にていわゆるジャダーやすべりが発生することを抑制することができる。
【0077】
また、この潤滑装置401は、例えば、既設のシフト弁437を用いて、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止する構成を実現することができることから、低コストで前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑状態を切り替えることができる。また、この潤滑装置401は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合動作中に微細気泡が混入したオイルが供給されることを防止することができると共に、ドライブレンジ以外のレンジが選択されている場合であっても微細気泡が混入したオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができ、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に生じる引き摺りトルクを低減することができる。
【0078】
[実施形態5]
図6は、実施形態5に係る潤滑装置の概略構成図、図7は、実施形態5に係る潤滑装置における切替制御の一例を説明するフローチャートである。実施形態5に係る潤滑装置は、切替装置の構成の点で実施形態3、4とは異なる。
【0079】
本実施形態に係る潤滑装置501は、図6に示すように、ドレーン33と、供給油路34と、チェック弁235と共に、さらに、切替供給通路としての切替油路336と、切替装置としてのソレノイド弁537とを備える。
【0080】
ソレノイド弁537は、供給油路34と切替油路336とが接続され、状況に応じて一方を前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔に接続し、他方をドレーンに接続するものである。ソレノイド弁537は、車両2の状態に応じて、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止する。
【0081】
そして、このソレノイド弁537は、車両2の状態として、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合状態に応じて供給油路34と切替油路336とを切り替える。ソレノイド弁537は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合動作中に、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止する。本実施形態のソレノイド弁537は、いわゆる電磁弁であり、制御装置としてのECU7からの制御信号により駆動する。ECU7は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合状態に応じてソレノイド弁537に制御信号を出力し、通路を切り替える。
【0082】
ECU7は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19が完全係合状態、あるいは、完全解放状態である場合に、ソレノイド弁537を非作動状態(非通電状態)とする。この場合、ソレノイド弁537は、供給油路34を前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔に接続するように設定される。これにより、潤滑装置501は、前後進切替ブレーキ19が完全係合状態、あるいは、完全解放状態である場合に、供給油路34を通して微細気泡が混入したオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができる。この結果、潤滑装置501は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に生じる引き摺りトルクを低減することができる。
【0083】
一方、ECU7は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19が係合動作中、典型的には、半係合状態である場合に、ソレノイド弁537を作動状態(通電状態)とする。この場合、ソレノイド弁537は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19にオイルを供給する通路を、供給油路34から切替油路336に切り替える。これにより、潤滑装置501は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合動作中、すなわち、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19のクラッチ締結制御中に、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止して、切替油路336を通して微細気泡が混入していないオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができる。
【0084】
次に、図7のフローチャートを参照して潤滑装置501における制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0085】
まず、ECU7は、種々の信号を計測し(ST1)、信号の計測結果に基づいて前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19のクラッチ締結制御信号があるか否かを判定する(ST2)。
【0086】
ECU7は、クラッチ締結制御信号がないと判定した場合(ST2:No)、すなわち、クラッチ締結制御中でなく、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19が完全係合状態、あるいは、完全解放状態であると判定した場合、ソレノイド弁537を非作動状態(非通電状態)とし(ST3)、ソレノイド弁537にて供給油路34が前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔に接続した状態とし、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0087】
ECU7は、クラッチ締結制御信号があると判定した場合(ST2:Yes)、すなわち、クラッチ締結制御中であり、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19が半係合状態であると判定した場合、ソレノイド弁537を作動状態(通電状態)とし(ST4)、ソレノイド弁537にて切替油路336が前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔に接続した状態とし、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0088】
以上で説明した実施形態に係る潤滑装置501によれば、シーブ圧制御弁30のドレーン33からオイルが排出される際の急激な減圧によりオイル中に微細気泡が発生し、この微細気泡が混入されたオイルを、供給油路34を通して摩擦係合要素としての前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することから、例えば、より簡易な構成で、適正に微細気泡を用いた潤滑を行うことができる。
【0089】
そして、この潤滑装置501は、車両2の状態に応じて、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止するソレノイド弁537を備えることから、このソレノイド弁537によって前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑状態を車両2の状態に応じて適正に切り替えることができる。
【0090】
すなわち、この潤滑装置501は、ソレノイド弁537が前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合動作中に微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止することから、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19のクラッチ締結制御中に微細気泡によって摩擦係合面の摩擦特性(μ特性)が変動してしまうことを抑制することができる。この結果、潤滑装置501は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19のクラッチ締結制御中に前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19にていわゆるジャダーやすべりが発生することを抑制することができる。
【0091】
また、この潤滑装置501は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の係合動作中に微細気泡が混入したオイルが供給されることを防止することができると共に、ドライブレンジ以外のレンジ(例えば、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ等)が選択されている場合であっても微細気泡が混入したオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができ、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に生じる引き摺りトルクを低減することができる。また、この潤滑装置501は、例えば、新設のソレノイド弁537を用いて、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止する構成を実現することができることから、設置箇所の自由度を確保することができる。
【0092】
[実施形態6]
図8は、実施形態6に係る潤滑装置の概略構成図、図9は、クラッチ回転数と引き摺トルクとの関係の一例を表す線図、図10は、実施形態6に係る潤滑装置における切替制御の一例を説明するフローチャートである。実施形態6に係る潤滑装置は、切替制御の制御内容の点で実施形態5とは異なる。
【0093】
本実施形態に係る潤滑装置601は、図8に示すように、ドレーン33と、供給油路34と、チェック弁235と、切替油路336と、ソレノイド弁537と共に、さらに、クラッチ回転数センサ638を備える。
【0094】
クラッチ回転数センサ638は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の回転速度としてのクラッチ回転数をそれぞれ検出し、検出結果をECU7に出力する。
【0095】
そして、本実施形態のソレノイド弁537は、車両2の状態として、摩擦係合要素としての前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の回転状態に応じて供給油路34と切替油路336とを切り替える。ソレノイド弁537は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19のクラッチ回転数(回転速度)が予め設定された所定回転数(速度)以上である場合に微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止する。ECU7は、クラッチ回転数センサ638が検出した前後進切替クラッチ18のクラッチ回転数、あるいは、前後進切替ブレーキ19のクラッチ回転数に応じてソレノイド弁537に制御信号を出力し、通路を切り替える。
【0096】
ここで、図9は、横軸をクラッチ回転数、縦軸を前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19で生じる引き摺トルクとしている。図中、実線L1は、微細気泡が混入していないオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給した場合のクラッチ回転数と引き摺トルクとの関係の一例を表しており、点線L2は、微細気泡が混入したオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給した場合のクラッチ回転数と引き摺トルクとの関係の一例を表している。
【0097】
図9からも明らかなように、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19で生じる引き摺トルクは、クラッチ回転数が相対的に低い状態では、微細気泡が混入したオイルを供給した方が、微細気泡が混入していないオイルを供給した場合よりも、相対的に低くなる傾向にある。しかしながら、エンジン回転数が徐々に高くなり、これに伴ってクラッチ回転数が徐々に高くなると、オイル中に混入される微細気泡によりオイルの見掛け上の粘度が大きくなる傾向にある。このため、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19で生じる引き摺トルクは、クラッチ回転数が所定の回転数以上の高回転域になると、微細気泡が混入していないオイルを供給した方が、微細気泡が混入しているオイルを供給した場合よりも、相対的に低くなる傾向にある。
【0098】
ここでは、ECU7は、微細気泡が混入していないオイルを供給した場合と微細気泡が混入しているオイルを供給した場合とで引き摺トルクの大小関係が逆転する所定の回転数を、微細気泡による引き摺トルク低減効果が得られる上限回転数Nとして予め設定しておく。そして、ECU7は、クラッチ回転数センサ638が検出した前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の各クラッチ回転数Ncを取得し、このクラッチ回転数Ncと上限回転数Nとを比較し、比較結果に応じてソレノイド弁537の駆動を制御する。
【0099】
ECU7は、クラッチ回転数センサ638が検出したクラッチ回転数Ncが上限回転数Nより低いと判定した場合に、ソレノイド弁537を非作動状態(非通電状態)とする。これにより、潤滑装置601は、クラッチ回転数Ncが上限回転数Nより低い場合に、供給油路34を通して微細気泡が混入したオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができる。この結果、潤滑装置601は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に生じる引き摺りトルクを低減することができる。
【0100】
一方、ECU7は、クラッチ回転数センサ638が検出したクラッチ回転数Ncが上限回転数N以上であると判定した場合に、ソレノイド弁537を作動状態(通電状態)とする。これにより、潤滑装置601は、クラッチ回転数Ncが上限回転数N以上である場合、すなわち、クラッチ回転数Ncが、微細気泡による引き摺トルク低減効果がうすくなる高回転域である場合に、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止して、切替油路336を通して微細気泡が混入していないオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができる。この結果、潤滑装置601は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の高回転域においても前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に生じる引き摺りトルクをさらに低減することができる。
【0101】
次に、図10のフローチャートを参照して潤滑装置601における制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0102】
まず、ECU7は、クラッチ回転数センサ638の検出結果に基づいて、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19のクラッチ回転数Ncを計測し(ST21)、このクラッチ回転数Ncが予め設定された上限回転数Nより低いか否かを判定する(ST22)。
【0103】
ECU7は、クラッチ回転数Ncが上限回転数Nより低いと判定した場合(Yes:ST22:Yes)、種々の信号を計測し(ST23)、この信号の計測結果に基づいて前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19のクラッチ締結制御信号があるか否かを判定する(ST24)。
【0104】
ECU7は、クラッチ締結制御信号がないと判定した場合(ST24:No)、ソレノイド弁537を非作動状態(非通電状態)とし(ST25)、ソレノイド弁537にて供給油路34が前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔に接続した状態とし、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0105】
ECU7は、ST22にて、クラッチ回転数Ncが上限回転数N以上であると判定した場合(Yes:ST22:No)、ST24にて、クラッチ締結制御信号があると判定した場合(ST24:Yes)、ソレノイド弁537を作動状態(通電状態)とし(ST26)、ソレノイド弁537にて切替油路336が前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔に接続した状態とし、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0106】
以上で説明した実施形態に係る潤滑装置601によれば、シーブ圧制御弁30のドレーン33からオイルが排出される際の急激な減圧によりオイル中に微細気泡が発生し、この微細気泡が混入されたオイルを、供給油路34を通して摩擦係合要素としての前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することから、例えば、より簡易な構成で、適正に微細気泡を用いた潤滑を行うことができる。
【0107】
そして、この潤滑装置601は、車両2の状態に応じて、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止するソレノイド弁537を備えることから、このソレノイド弁537によって前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑状態を車両2の状態に応じて適正に切り替えることができる。
【0108】
すなわち、この潤滑装置601は、ソレノイド弁537が前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の回転速度(クラッチ回転数Nc)が予め設定された所定速度(上限回転数N)以上である場合に微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止することから、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の高回転域でも動力損失を低減することができ、例えば、より広い運転領域で燃費を向上することができる。
【0109】
[実施形態7]
図11は、実施形態7に係る潤滑装置の概略構成図、図12は、クラッチ回転数と引き摺トルクとの関係の一例を表す線図である。実施形態7に係る潤滑装置は、切替装置の構成の点で実施形態6とは異なる。
【0110】
本実施形態に係る潤滑装置701は、図11に示すように、オイル中に微細気泡を発生させる排出口としてのドレーン733と、供給油路34と、チェック弁235と、切替油路336と共に、切替装置としての油圧切替弁737を備える。
【0111】
ここで、本実施形態の潤滑装置701が組み込まれる油圧制御装置706は、オイルパン25、オイルポンプ26、プライマリレギュレータ弁27、セカンダリレギュレータ弁28、ライン圧制御弁29、シーブ圧制御弁30等に加えて、さらに制御弁としてのライン圧制御弁739を備える。
【0112】
本実施形態のシーブ圧制御弁30は、シーブ圧としてプライマリシーブ油圧室23に供給されるオイルのプライマリ圧をするものである。このシーブ圧制御弁30は、スプール弁子や複数のポートを有し、例えば、入力ポートにオイルポンプ26の吐出口が接続され、出力ポートに不図示の制御弁等を介してプライマリシーブ油圧室23等が接続される。
【0113】
ライン圧制御弁739は、第3ライン圧を調圧するものであり、例えば、この第3ライン圧を所定以上の一定圧に調節する。第3ライン圧は、セカンダリシーブ油圧室24に導入されるセカンダリ圧を制御するための不図示のシーブ制御弁等に導入するオイルの元圧である。ライン圧制御弁739は、スプール弁子や複数のポートを有し、例えば、入力ポートにオイルポンプ26の吐出口が接続され、出力ポートに不図示のシーブ制御弁等を介してセカンダリシーブ油圧室24等が接続される。
【0114】
そして、本実施形態の潤滑装置1のドレーン733は、ライン圧制御弁739に設けられる。このドレーン733は、ライン圧制御弁739内からオイルを排出する際の減圧によりオイル中に微細気泡を発生させる。そして、潤滑装置701の供給油路34は、このライン圧制御弁739のドレーン(ドレーンポート)733と動力伝達装置5の前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔とを接続する。供給油路34は、ドレーン733から排出される際に発生した微細気泡が混入したオイルを摩擦係合要素としての前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給する。
【0115】
そして、本実施形態の油圧切替弁737は、車両2の状態として、摩擦係合要素としての前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の回転状態に応じて供給油路34と切替油路336とを切り替える。油圧切替弁737は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19のクラッチ回転数(回転速度)が予め設定された所定回転数(速度)以上である場合に微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止する。
【0116】
ここでは、油圧切替弁737は、オイルの圧力に応じて変速動作を行うベルト式無段変速機としての変速機11のプライマリ圧(プライマリシーブ油圧室23内の圧力)とセカンダリ圧(セカンダリシーブ油圧室24内の圧力)との圧力差に応じて作動する。油圧切替弁737は、プライマリ圧とセカンダリ圧との圧力差に応じて通路を切り替える。油圧切替弁737は、プライマリ圧とセカンダリ圧とが導入され、プライマリ圧とセカンダリ圧との大小関係に応じて、通路を切り替える。
【0117】
ここで、本実施形態の動力伝達装置5は、図12に例示するように、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19で生じる引き摺りトルクのピークが高速巡行時に使用するクラッチ回転数域T内に位置するように、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の性能が設定されている。
【0118】
そして、油圧切替弁737は、プライマリ圧とセカンダリ圧との大小関係が、変速機11の変速比が1以下の増速側となる関係にある場合、典型的にはプライマリ圧Ppri>セカンダリ圧Psecの関係にある場合に、供給油路34を前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔に接続するように、バネの付勢力等が設定される。これにより、潤滑装置701は、変速機11の変速比が1以下の増速側であり、例えば高速巡行時でクラッチ回転数Ncが予め設定された所定回転数より低い場合に、供給油路34を通して微細気泡が混入したオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができる。この結果、潤滑装置701は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に生じる引き摺りトルクを低減することができる。
【0119】
一方、油圧切替弁737は、プライマリ圧とセカンダリ圧との大小関係が、変速機11の変速比が1より大きい減速側となる関係にある場合、典型的にはプライマリ圧Ppri<セカンダリ圧Psecの関係にある場合に、切替油路336を前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑孔に接続する。これにより、潤滑装置701は、変速機11の変速比が1より大きい減速側であり、例えばクラッチ回転数Ncが予め設定された所定回転数以上である場合に、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止して、切替油路336を通して微細気泡が混入していないオイルを前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することができる。この結果、潤滑装置701は、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の高回転域においても前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に生じる引き摺りトルクをさらに低減することができる。
【0120】
以上で説明した実施形態に係る潤滑装置701によれば、ライン圧制御弁739のドレーン733からオイルが排出される際の急激な減圧によりオイル中に微細気泡が発生し、この微細気泡が混入されたオイルを、供給油路34を通して摩擦係合要素としての前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19に供給することから、例えば、より簡易な構成で、適正に微細気泡を用いた潤滑を行うことができる。
【0121】
そして、この潤滑装置701は、車両2の状態に応じて、微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止する油圧切替弁737を備えることから、この油圧切替弁737によって前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の潤滑状態を車両2の状態に応じて適正に切り替えることができる。
【0122】
すなわち、この潤滑装置701は、油圧切替弁737がオイルの圧力に応じて変速動作を行う変速機11のプライマリ圧とセカンダリ圧との圧力差に応じて作動し、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の回転速度(クラッチ回転数Nc)が予め設定された所定速度(上限回転数N)以上である場合に微細気泡が混入したオイルの前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19への供給を禁止することから、低コストで大型化を抑制しつつ、前後進切替クラッチ18、前後進切替ブレーキ19の高回転域でも動力損失を低減することができ、例えば、広い運転領域で燃費を向上することができる。
【0123】
なお、上述した本発明の実施形態に係る潤滑装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係る潤滑装置は、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよい。
【0124】
以上で説明した走行用駆動源は、エンジンに限られない。以上で説明した変速機は、例えば、手動変速機(MT)、有段自動変速機(AT)、トロイダル式の無段自動変速機(CVT)、マルチモードマニュアルトランスミッション(MMT)、シーケンシャルマニュアルトランスミッション(SMT)、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)などを用いてもよい。以上の説明では、液状媒体は、オイル(潤滑油)であるものとして説明したがこれに限らない。
【符号の説明】
【0125】
1、201、301、401、501、601、701 潤滑装置
2 車両
3 エンジン(走行用駆動源)
4 駆動輪
5 動力伝達装置
6、706 油圧制御装置
7 ECU
10 前後進切替機構
11 変速機(ベルト式無段変速機)
17 遊星歯車機構
18 前後進切替クラッチ(摩擦係合要素)
19 前後進切替ブレーキ(摩擦係合要素)
20 プライマリプーリ
21 セカンダリプーリ
22 ベルト
23 プライマリシーブ油圧室
24 セカンダリシーブ油圧室
30 シーブ圧制御弁(制御弁)
31、32 クラッチ油圧室
33 ドレーン(排出口)
34 供給油路(微細気泡混入媒体供給通路)
235 チェック弁(排出装置)
336 切替油路(切替供給通路)
337 マニュアル弁(切替装置)
437 シフト弁(切替装置)
537 ソレノイド弁(切替装置)
733 ドレーン(排出口)
737 油圧切替弁(切替装置)
739 ライン圧制御弁(制御弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行用駆動源から駆動輪へ動力を伝達する動力伝達装置に供給する液状媒体を制御する制御弁に設けられ当該制御弁内から前記液状媒体を排出する際の減圧により当該液状媒体中に微細気泡を発生させる排出口と、
前記排出口と前記動力伝達装置の摩擦係合要素とを接続する微細気泡混入媒体供給通路とを備えることを特徴とする、
潤滑装置。
【請求項2】
前記微細気泡混入媒体供給通路に設けられ、当該微細気泡混入媒体供給通路内の圧力が予め設定された所定圧力以上となった際に、当該微細気泡混入媒体供給通路の内部から外部に前記液状媒体を排出する排出装置を備える、
請求項1に記載の潤滑装置。
【請求項3】
前記車両の状態に応じて、前記微細気泡が混入した前記液状媒体の前記摩擦係合要素への供給を禁止する切替装置を備える、
請求項1又は請求項2に記載の潤滑装置。
【請求項4】
前記切替装置は、前記摩擦係合要素の係合動作中に前記微細気泡が混入した前記液状媒体の前記摩擦係合要素への供給を禁止する、
請求項3に記載の潤滑装置。
【請求項5】
前記切替装置は、前記摩擦係合要素の回転速度が予め設定された所定速度以上である場合に前記微細気泡が混入した前記液状媒体の前記摩擦係合要素への供給を禁止する、
請求項3又は請求項4に記載の潤滑装置。
【請求項6】
前記切替装置は、前記液状媒体の圧力に応じて変速動作を行うベルト式無段変速機のプライマリ圧とセカンダリ圧との圧力差に応じて作動する、
請求項5に記載の潤滑装置。
【請求項7】
前記排出口を介さずに前記摩擦係合要素に前記液状媒体を供給可能である切替供給通路を備え、
前記切替装置は、前記微細気泡が混入した前記液状媒体の前記摩擦係合要素への供給を禁止する際に、前記摩擦係合要素に前記液状媒体を供給する通路を、前記微細気泡混入媒体供給通路から前記切替供給通路に切り替える、
請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の潤滑装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−211611(P2012−211611A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76631(P2011−76631)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】