説明

火災警報器

【課題】信頼性があり、使い勝手の良い複合式の火災警報器を提供する。
【解決手段】誤報が多いものの早期発見ができる煙検出部11と、誤報が少なく動作が遅い熱検出部12とを設け、煙により警報発生部33から警報を発した場合に、音響停止スイッチ32を押すと音響を停止し、所定時間は煙によっては再動作せず、熱によってのみ動作する。そのため、火災警報器1を台所等に設置しても、煙検出部11により早期発見ができ、使用者が火災ではないと判断した場合には、調理等が終了する程度の間は、誤報が少ない熱検出部12のみで火災監視を継続し、所定時間経過後は再び煙検出部11及び熱検出部12により火災監視を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災により発生する煙、熱、炎、ガス等をそれぞれ検出する複数の検出部を備え、各検出部が予め定められた閾値を超えた時に、音響や表示等により警報を告知する複合式の火災警報器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複合式の火災警報器としては、例えば、次のような文献に記載されるものがあった。
【0003】
【特許文献1】特開2004−86566号公報
【0004】
この特許文献1に記載された複合式の火災警報器は、住宅用に設置されるものであり、熱検出部、煙検出部、及び設置場所を選択する設置場所設定スイッチ等を備えている。そして、設置場所設定スイッチによって設置場所が選択されたときには、その設置場所に応じて予め割り付けられている熱検出部又は煙検出部のいずれか一方を有効な火災検出部として自動的に設定して機能させるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の複合式の火災警報器では、次の(A)〜(C)のような課題があった。
【0006】
(A) 例えば、台所等で煙が発生するからと云って煙検出部の機能を停止してしまっては、複数個の検出部を持つ意味がないばかりか、本来であれば早期発見する機会があるものを逸してしまう。
【0007】
(B) 一般的な火災警報器には、誤報等により鳴動する音響を一時的に停止する機能が設けられているが、異なる検出原理の複数個の検出部が設けられていない場合、長時間音響を停止すると危険である。この危険を回避するために、短時間で監視を再開すると、再鳴動してしまう課題があった。
【0008】
(C) 火災警報器を各部屋に設置してこれらを複数台接続(即ち、マルチ接続)して連動させるシステムを構築する場合、各火災警報器内に移報信号送出部を設け、例えば、台所に設置した火災警報器が作動すると、この火災警報器から移報信号を送出して2階の寝室等に設置された他の火災警報器へ送る。これにより、例えば、2階の寝室の火災警報器も作動するので、2階の寝室において台所での火災発生を知ることができる。このようなシステムの場合、台所の火災警報器が誤報等により鳴動すると、移報信号が2階の寝室等の他の火災警報器へ送られて鳴動するため、混乱を生じ、使い勝手が悪いという課題もあった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決して信頼性があり、使い勝手の良い複合式の火災警報器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の内の請求項1に係る発明は、火災警報器において、異なる検出原理により火災の発生原因をそれぞれ検出するX個(但し、Xは2以上の正の整数)の検出手段と、前記各検出手段の検出結果を予め定められた各閾値とそれぞれ比較し、前記検出結果が前記閾値を超えたときに警報信号をそれぞれ出力するX個の検出処理手段と、前記X個の検出処理手段の内のいずれかの検出処理手段から第1の警報信号が出力されたときに応答して時間を計測し、この計測時間が所定時間になると計時信号を出力する計時手段と、前記X個の検出処理手段から出力される前記X個の警報信号の内のいずれか1つの警報信号に応答して、音響や表示により警報を発する警報発生手段と、音響停止手段とを備えている。
【0011】
前記音響停止手段は、前記X個の警報信号の内のいずれか1つの警報信号に応答して発生した前記警報の内の前記音響を、停止入力により停止状態にし、前記X個の警報信号の内の前記第1の警報信号を除いた他の警報信号の内のいずれか1つの第2の警報信号、又は前記計時信号に応答して前記停止状態を復帰させるものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、火災警報器において、異なる検出原理により火災の発生原因をそれぞれ検出するX個(但し、Xは2以上の正の整数)の検出手段と、前記各検出手段の検出結果を予め定められた各閾値とそれぞれ比較し、前記検出結果が前記閾値を超えたときに警報信号をそれぞれ出力するX個の検出処理手段と、前記X個の検出処理手段から出力される前記X個の警報信号の内のいずれか1つの第1の警報信号に応答して、音響や表示により警報を発する警報発生手段と、音響制御手段とを備えている。
【0013】
前記音響制御手段は、前記第1の警報信号に応答して所定時間の間、前記警報発生手段による前記音響の発生を維持し、前記所定時間経過後に、前記X個の警報信号の内の前記第1の警報信号を除いた他の警報信号の内のいずれか1つの第2の警報信号が出力されないときには、前記音響の発生を停止させるか又は前記音響の発生音量を低下させ、前記所定時間経過後に、前記第2の警報信号が出力されたときには、前記音響発生手段から前記音響を連続的に発生させるものである。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2の火災警報器において、前記第1の警報信号に基づく前記警報発生手段の音響発生の停止期間又は音量低下期間に関し、前記X個の検出処理手段の内の前記第2の警報信号を出力する検出処理手段の前記閾値を低下させる構成にしている。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項の火災警報器において、前記他の火災警報器から送られてくる移報信号を受信する移報信号受信手段を備え、当該移報信号受信手段が、前記他の火災警報器からの移報信号を受信した際には、前記第1の警報信号に基づく前記警報発生手段の音響発生の停止期間又は音量低下期間であっても、前記警報発生手段から前記警報を発生させる構成にしている。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項の火災警報器において、前記X個の検出処理手段から出力される2以上の警報信号に応答して前記警報発生手段から前記警報を発生した場合のみ、連動用の移報信号を外部へ送出する移報信号送出手段を設けている。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項の火災警報器において、前記X個の検出処理手段から出力されるX個の警報信号の内のいずれか1つの警報信号に応答して、前記警報発生手段から前記警報を発生させ、所定時間内に前記警報発生手段の前記警報を停止させるための停止入力がないときには、連動用の移報信号を外部へ送出し、前記所定時間内に前記停止入力があったときには、前記移報信号の送出を停止する構成にしている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、例えば、誤報が多いものの早期発見ができる第1の検出手段と、誤報が少なく動作が遅いその他の第2の検出手段とを設けたので、火災警報器を台所等に設置しても、第1の検出手段により早期発見ができ、使用者が火災ではないと判断した場合には、調理等が終了する程度の間は、誤報が少ない他の第2の検出手段のみで火災監視を継続し、所定時間経過後は再び第1の検出手段及びその他の第2の検出手段により火災監視を行うことができる。
【0019】
即ち、この請求項1に係る発明では、他の第2の検出手段により火災を検出した場合は火災の報知ができるため、第1の検出手段を比較的長時間停止しても問題はない。又、火災警報器が電池駆動式の場合、誤報発生時に音響を長時間停止できるため、電池寿命を長くできる。よって、信頼性が高く、使い勝手の良い、省電力型の火災警報器を実現できる。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、例えば、第1の検出手段により火災を検出すると、所定時間、所定の音量で警報を発した後、他の第2の検出手段により火災が検出できない場合には、一旦音響を停止又は音量を下げる構成にしている。そのため、請求項1に係る発明のようにわざわざ音響停止手段を操作して音響を停止させる必要がないので、請求項1に係る発明よりも使い勝手が良い。しかも、一旦音響を停止又は音量を下げた後、他の第2の検出手段により火災を検出した場合には、連続的に音響を発生させる構成にしているので、火災監視の信頼性が高い。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、一旦音響を停止又は音量を下げた場合、第2の警報信号を出力する検出処理手段の閾値を低下させる構成にしたので、この第2の警報信号を出力する検出処理手段による火災の検出感度が高くなって火災監視の信頼性を向上できる。
【0022】
請求項4、5に係る発明によれば、例えば、第1の検出手段の出力により火災を検出した段階では、連動用の移報信号を送出せず、他の第2の検出手段においても火災を検出した段階で、移報信号を送出する構成にしたので、誤報による混乱や迷惑を防止できる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、ある火災監視領域に人がいない場合、火災発生から所定時間経過すると、自動的に移報信号が他の火災監視領域へ送出されて警報が発せられるので、他の火災監視領域の火災を早期発見できると共に、誤報が発生した場合でも問題を生じさせない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の火災警報器は、X個(但し、Xは2以上の正の整数)の検出手段と、X個の検出処理手段と、計時手段と、警報発生手段と、音響停止手段と、移報信号受信手段と、移報信号送出手段とを備えている。
【0025】
各検出手段は、検出原理がそれぞれ異なるため、火災が発生してからその検出までに時間の差が生じ、結果として異なる検出速度で火災をそれぞれ検出する。各検出処理手段は、各検出手段の検出結果を予め定められた各閾値とそれぞれ比較し、前記検出結果が前記閾値を超えたときに警報信号をそれぞれ出力する。計時手段は、X個の検出処理手段の内のいずれかの検出処理手段から警報信号が出力されたときに応答してそこから時間を計測し、この計測時間が所定時間になると計時信号を出力する。音響停止手段は、X個の警報信号の内のいずれか1つの警報信号に応答して警報発生手段で発生したときの音響を、停止入力により停止状態にし、又はX個の警報信号の内の第1の警報信号を除いた他の警報信号のいずれか1つの警報信号(第2の警報信号)の入力、又は前述の計時信号に応答して前記停止状態を復帰させる。
【0026】
移報信号送出手段は、X個の検出処理手段から出力される2以上の警報信号に応答して警報発生手段から警報を発生した場合のみ、連動用の移報信号を外部へ送出する。又、移報信号受信手段は、他の火災警報器から送られてくる移報信号を受信し、警報発生手段から警報を発生させる。
【実施例1】
【0027】
(構成)
図2は、本発明の実施例1における複合式の火災警報器を用いた警報システムを示す概略の構成図である。
【0028】
この警報システムは、例えば、一般住宅の台所や寝室、居間の他、オフィスの一室等の比較的に小さな監視領域にそれぞれ設置された複数個の複合式の火災警報器1−1〜1−N(但し、Nは2以上の正の整数)を備え、これらの火災警報器1−1〜1−Nが連動用リード線2によって相互に通信可能にマルチ接続されている。各火災警報器1−1〜1−Nには、固有のアドレスが付されている。
【0029】
このような警報システムにおいて、火災警報器(例えば、1−1)は、監視領域で発生した火災を検出して自ら警報を行うだけでなく、他の火災警報器(例えば、1−2〜1−N)に対して警報のためのアドレス付きの移警報信号を送出すると共に、他の火災警報器(例えば、1−3)からの警報のためのアドレス付きの移警報信号を受信して連動警報を行うようになっている。
【0030】
図1は、図2中における本発明の実施例1の各火災警報器1−1〜1−Nを示す概略の構成図である。
【0031】
例えば、各火災警報器1(1−1〜1−N)は、同一の構成である。各火災警報器1(1−1〜1−N)にはそれぞれX個の検出手段(例えば、煙検出部11及び熱検出部12の2つの)が内蔵され、これらが火災警報器全体を制御する制御部20に接続されている。
【0032】
煙検出部11は、監視領域における火災時に発生する煙の濃度を検出して煙検出信号S11を出力するものであり、例えば、所定の角度をもって対向配置された発光素子及び受光素子からなる煙検出センサ、この煙検出センサの出力電流を電圧に変換する電流/電圧変換回路、及びこの電流/電圧変換回路の出力電圧をディジタル信号である煙検出信号S11に変換するアナログ/ディジタル変換回路等により構成されている。この煙検出部11では、発光素子と受光素子との間に煙が流入すると、この煙の濃度に対応して該受光素子の出力電流が変化するので、この出力電流が電流/電圧変換回路で出力電圧に変換された後、アナログ/ディジタル変換回路でディジタル信号の煙検出信号S11に変換され、制御部20に与えられるようになっている。
【0033】
熱検出部12は、火災時に発生する熱を検出して熱検出信号S12を出力するものであり、例えば、周囲温度を検出するサーミスタ等の温度検出センサ、及びこの温度検出センサの出力電圧をディジタル信号の熱検出信号S12に変換するアナログ/ディジタル変換回路等により構成されている。この熱検出部12では、火災時の熱発生によって周囲温度が上昇すると、この周囲温度が温度検出センサにより検出され、この検出電圧がアナログ/ディジタル変換回路でディジタル信号の熱検出信号S12に変換され、制御部20に与えられるようになっている。
【0034】
制御部20は、X個の検出処理手段(例えば、煙検出部11に接続された煙検出処理部21と、熱検出部12に接続された熱検出処理部22)、3入力ORゲート23,25、計時手段である計時部24、及び2入力ANDゲート26等を有し、これらが中央処理装置(以下、「CPU」という。)等により構成されている。この制御部20には、連動用リード線2から送られてくるアドレス付きの移報信号を受信して警報信号S31を出力する受信回路等で構成された移報信号受信手段である移報信号受信部31、音響停止手段(例えば、ノーマリオン型の音響停止スイッチ)32、音響発生手段である警報発生部33、及び移報信号送出手段である移報信号送出部34等が接続されている。
【0035】
制御部20内の煙検出処理部21は、煙検出部11から与えられる煙検出信号S11を所定の閾値TH1と比較してS11≧TH1の時には警報信号S21を出力するものであり、この出力端子に、ORゲート23の入力端子、計時部24の入力端子、及びANDゲート26の入力端子が接続されている。計時部24は、警報信号S21を入力すると、所定時間後に計時信号S24を出力する回路であり、この出力端子にORゲート25の入力端子が接続されている。ORゲート23,25の入力端子は、移報信号受信部31の出力端子にも接続されている。熱検出処理部22は、熱検出部12から与えられる熱検出信号S12を所定の閾値TH2と比較してS12≧TH2の時には警報信号S22を出力するものであり、この出力端子に、ORゲート23,25の入力端子、及びANDゲート26の入力端子が接続されている。
【0036】
ORゲート23は、警報信号S21,S22,S31の論理和を求めて警報信号S23を出力する回路である。ORゲート25は、計時信号S24及び警報信号S22,S31の論理和を求めて復帰信号S25を出力する回路である。更に、ANDゲート26は、警報信号S21,S22の論理積を求めて警報信号S26を出力する回路である。
【0037】
ORゲート23の出力端子には、音響停止スイッチ32の入力端子が接続され、この音響停止スイッチ32の制御端子が、ORゲート25の出力端子に接続されている。音響停止スイッチ32は、例えば、これを押すことにより入出力端子間がオフ状態になり、復帰信号S25が制御端子に入力されると、入出力端子間がオン状態に復帰するスイッチであり、この出力端子に、警報発生部33が接続されている。警報発生部33は、音響停止スイッチ32を通して警報信号S23が与えられると、音響や表示等によって火災発生の警報を発するものであり、増幅回路等の駆動回路、スピーカ、ランプ等で構成されている。
【0038】
ANDゲート26の出力端子には、移報信号送出部34が接続されている。移報信号送出部34は、警報信号S26が入力されると、この警報信号S26にアドレスを付加して移報信号S34を生成し、この移報信号S34を連動用リード線2へ送出するものであり、例えば、送信回路等で構成されている。
【0039】
このような構成の火災警報器1は、電池、或いは交流(以下、「AC」という。)電源により動作するようになっている。
【0040】
(動作)
図3は、図1及び図2の火災監視動作を示すフローチャートである。
【0041】
電源を印加すると、ステップST1−1において煙検出部11により火災の煙監視動作が開始され、他方、ステップST1−2において熱検出部12により熱監視動作が開始される。ステップST2−1において、煙検出処理部21により、監視領域の煙の濃度の検出値が閾値TH1を超えたか否かが検出される。他方、ステップST2−2において、熱検出処理部部22により、監視領域の検出温度が閾値TH2を超えたか否かが検出される。
【0042】
例えば、火災警報器1−1が設置された台所等の所定の監視領域において、火災により煙が発生すると、その火災警報器1−1内の煙検出部11により煙が検出され、該煙検出部11から煙検出信号S11が出力されて煙検出処理部21へ送られる。煙検出処理部21において、煙の濃度が閾値TH1を超えると、警報信号S21が出力され、計時部24により所定時間が計数される。ステップST3において、警報信号S21により、ORゲート23から出力される警報信号S23が“H”レベルとなり、警報停止スイッチ32を通して警報発生部33が動作し、音響や表示等により警報が発せられる。
【0043】
警報を確認した使用者がステップST4において音響停止スイッチ32を押すと、この音響停止スイッチ32がオフ状態になる。これにより、ステップST5において、警報発生部33への警報信号S23の入力が遮断されて音響(鳴動)が停止する。この際、音響以外の表示等の警報は、同時に停止するか、或いは継続動作させるかを予め設定しておく。
【0044】
ステップST5の後のステップST6おいて、煙検出処理部21及び熱検出処理部22により、煙検出及び熱検出の有無の判定が行われ、判定結果が煙検出であったので、ステップST7へ進む。ステップST7において、計時部24により計数された所定時間が経過すると、この計時部24から計時信号S24が出力され、ORゲート25から出力される復帰信号S25が“H”レベルになり、音響停止スイッチ32がオン状態に復帰してステップST2−1,ST2−2へ戻る。
【0045】
上記の火災による煙発生後に周囲温度が上昇し、熱検出処理部22において、熱検出部12から与えられる熱検出信号S12が所定の閾値TH2を超えると、該熱検出処理部22から警報信号S22が出力される。この警報信号S22の出力時期により、次のような処理が行われる。
【0046】
警報信号S22がステップST5の鳴動停止前に出力された場合、この警報信号S22がORゲート23及びANDゲート26へ送られる。既に警報信号S21が出力されているので、ステップST3において警報発生が継続される。これと同時に、警報信号S21及びS22により、ANDゲート26から出力される警報信号S26が“H”レベルとなり、移報信号送出部34から、アドレスが付された移報信号S34が出力される。このアドレス付きの移報信号S34は、連動用リード線2を介して寝室等の他の監視領域に設置された火災警報器1−2〜1−Nへ送られる。そのため、他の火災警報器1−2〜1−Nでは、火災警報器1−1から送られてきたアドレス付きの移報信号S34を移報信号受信部(31)で受信し、ORゲート(23)及び音響停止スイッチ(32)を介して警報発生部(33)から、火災警報器1−1側の火災発生を警報する。
【0047】
警報信号S22がステップST5の鳴動停止後に出力された場合、ステップST6の判定処理の結果が熱検出有りとなるので、ステップST2−2へ戻る。そして、ステップST3において、ORゲート25から出力される復帰信号S25が“H”レベルになり、音響停止スイッチ32がオン状態に復帰して警報発生部33から火災警報が発せられる。
【0048】
(効果)
本実施例1では、次の(1)、(2)のような効果がある。
【0049】
(1) 本実施例1では、誤報が多いものの早期発見ができる煙検出部11と、誤報が少なく動作が遅い熱検出部12とを設け、煙により警報を発した場合に、音響停止スイッチ32を押すと音響を停止し、所定時間は煙によっては再動作せず、熱の検出によっては動作する構成にしている。そのため、火災警報器1を台所等に設置しても、煙検出部11により早期発見ができ、使用者が火災ではないと判断した場合には、調理等が終了する程度の間は、誤報が少ない熱検出部12のみで火災監視を継続し、所定時間経過後は再び煙検出部11及び熱検出部12により火災監視を行うことができる。
【0050】
即ち、従来も音響停止機能を持った火災警報器はあったが、音響停止中は火災の報知ができないため、音響停止時間を15分以下の短時間としていたが、本実施例1では、他の検出部である熱検出部12により火災を検出した場合は火災の報知ができるため、1つの検出部である煙検出部11を比較的長時間停止しても問題はない。又、火災警報器が電池駆動式の場合、誤報で連続的に鳴動すると電池の消耗が激しいが、本実施例1では、誤報発生時に音響を長時間停止できるため、電池寿命を長くできる。よって、信頼性が高く、使い勝手の良い、省電力型の複合式火災警報器1を実現できる。
【0051】
(2) 1つの検出部である煙検出部11の出力により火災を検出した段階では、連動用の移報信号S34を送出せず、他の検出部である熱検出部12においても火災を検出した段階で、移報信号S34を送出する構成にしたので、誤報による混乱や迷惑を防止できる。
【実施例2】
【0052】
(構成)
図4は、本発明の実施例2を示す複合式の火災警報器の概略の構成図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0053】
この火災警報器1は、X個の検出手段(例えば、図1と同様の煙検出部11及び熱検出部12)を有し、これらが火災警報器全体を制御するための図1とは構成の異なる制御部20Aに接続されている。
【0054】
制御部20Aは、X個の検出処理手段(例えば、煙検出部11に接続された図1と同様の煙検出処理部21と、熱検出部12に接続された図1とは構成の異なる熱検出処理部22A)、図1と同様の3入力ORゲート23、図1と同様の2入力ANDゲート26、図1には設けられていない新たな警報制御手段である警報制御部27、及び図1には設けられていない新たなノーマリオフ型スイッチ28等を有し、これらがCPU等により構成されている。この制御部20Aには、図1とほぼ同様の警報発生手段である警報発生部33A、及び図1と同様の移報信号受信手段である移報信号受信部31や移報信号送出手段である移報信号送出部34等が接続されている。
【0055】
制御部20A内の煙検出処理部21は、煙検出部11から与えられる煙検出信号S11を所定の閾値TH1と比較してS11≧TH1の時には警報信号S21を出力するものであり、この出力端子に、ORゲート23の入力端子、及びANDゲート26の入力端子が接続されている。更に、この煙検出処理部21は、スイッチ28を介して熱検出処理部22Aの制御端子に接続されている。熱検出処理部22Aは、熱検出部12から与えられる熱検出信号S12を所定の閾値TH2と比較してS12≧TH2の時には警報信号S22Aを出力し、警報信号S21がスイッチ28を介して制御端子から入力されると、閾値TH2を例えば通常時の70°Cの値TH2−1から60°Cの値TH2−2に低下させて動作し易くしたものであり、この出力端子に、ORゲート23の入力端子、及びANDゲート26の入力端子が接続されている。ORゲート23の入力端子は、移報信号受信部31の出力端子にも接続されている。
【0056】
ORゲート23は、警報信号S21,S22A,S31の論理和を求めて警報信号S23を出力する回路である。ANDゲート26は、警報信号S21,S22Aの論理積を求めて警報信号S26を出力する回路であり、この出力端子が警報制御部27の制御端子に接続されている。警報制御部27は、“H”レベルの警報信号S23が入力されると、所定時間(例えば、1分間)だけ警報制御信号S27−1を出力し、制御端子から“L”レベルの警報信号S26が入力されると、該警報制御信号S27−1のレベルを低下させるか、或いは該警報制御信号S27−1の出力を遮断して、スイッチ28をオン状態にするための警報制御信号S27−2を出力し、“H”レベルの警報信号S26が入力されると、該警報制御信号S27−1を連続的に出力するものであり、計時手段、スイッチ手段、信号低下手段等で構成されている。
【0057】
警報制御部27の出力端子に警報発生部33Aが接続され、更に、ANDゲート26の出力端子に移報信号送出部34が接続されている。警報発生部33Aは、警報制御信号S27−1が与えられると、音響や表示等によって火災発生の警報を発するものであり、増幅回路等の駆動回路、スピーカ、ランプ等で構成されている。
【0058】
このような構成の火災警報器1は、図1と同様に、電池、或いはAC電源により動作するようになっている。
【0059】
(動作)
図5は、図2及び図4の火災監視動作を示すフローチャートである。
【0060】
電源を印加すると、ステップST11−1において煙検出部11により火災の煙監視動作が開始される。一方、ステップST11−2において熱検出部12により熱監視動作が開始される。ステップST12−1において、煙検出処理部21により、監視領域の煙の濃度の検出値が閾値TH1を超えたか否かが検出される。ステップST12−2において、熱検出処理部22Aにより、監視領域の検出温度が閾値TH2−1を超えたか否かが検出される。
【0061】
例えば、火災警報器1−1が設置された台所等の所定の監視領域において、火災により煙が発生すると、その火災警報器1−1内の煙検出部11により煙が検出され、該煙検出部11から煙検出信号S11が出力されて煙検出処理部21へ送られる。煙検出処理部21において煙の濃度が閾値TH1を超えると、警報信号S21が出力されてORゲート23へ送られる。ステップST13において、警報信号S21により、ORゲート23から出力される警報信号S23が“H”レベルとなり、警報制御部27から警報制御信号S27−1が出力されて警報発生部33Aが動作し、音響や表示等により警報が発せられる。
【0062】
ステップST14において、警報制御部27が所定時間(例えば、1分間)を計数して所定時間が経過すると、該警報制御部27から警報制御信号S27−2が出力されてスイッチ28がオン状態になる。これにより、煙検出処理部21から出力されている警報信号S21がスイッチ28を介して熱検出処理部22Aに入力され、該熱検出処理部22Aの閾値TH2−1が低下して閾値TH2−2になり、熱の発生が検出されやすくなる。
【0063】
次に、ステップST15において、警報制御部27は他の検出信号(例えば、熱検出信号S12の発生による“H”レベルの警報信号S26)が入力されたか否かを判定する。熱検出処理部22Aから警報信号S22Aが出力されていないと、ANDゲート26から出力される警報信号S26が“L”レベルであるので、警報制御部27は、ステップST16において、警報制御信号S27−1により警報発生部33Aからの警報音(鳴動)を停止状態、又は音量の低下状態を継続する。その後、ステップST17において、警報制御部27は他の検出信号(例えば、熱検出信号S12の発生による“H”レベルの警報信号S26)が入力されたか否かを判定し、該“H”レベルの警報信号S26が入力されていないときには、ステップST12−1,12−2へ戻る。
【0064】
上記の火災による煙発生後に周囲温度が上昇し、熱検出処理部22Aにおいて、熱検出部12から与えられる熱検出信号S12が閾値TH2−2を超えると、該熱検出処理部22Aから警報信号S22Aが出力される。すると、ANDゲート26から“H”レベルの警報信号S26が出力されて警報制御部27に入力されるので、ステップST15において、該警報制御部27から警報制御信号S27−1が出力され、ステップST18において、警報発生部33Aが連続的に鳴動すると共に、移報信号送出部34からアドレス付きの移報信号S34が送出される。又、ステップST17において、H”レベルの警報信号S26が警報制御部27に入力されていると、ステップST18において、警報発生部33Aが連続的に鳴動すると共に、移報信号送出部34からアドレス付きの移報信号S34が送出される。
【0065】
(効果)
本実施例2では、次の(a)〜(c)のような効果がある。
【0066】
(a) 本実施例2では、1つの検出部である煙検出部11により火災を検出すると、所定時間(例えば、1分間)、所定の音量で警報を発した後、他の検出部である熱検出部12により火災が検出できない場合には、一旦鳴動を停止又は音量を下げる構成にしている。そのため、実施例1のようにわざわざ音響停止スイッチ32を押して音響を停止させる必要がないので、実施例1よりも使い勝手が良い。しかも、一旦鳴動を停止又は音量を下げた後、他の熱検出部12により火災を検出した場合には、連続的に鳴動させる構成にしているので、火災監視の信頼性が高い。
【0067】
(b) 一旦鳴動を停止又は音量を下げた場合、熱検出処理部22Aの閾値TH2を例えば、通常時には70°Cの閾値TH2−1であったものを60°の閾値TH2−2に低下する構成にしたので、熱検出部12による火災の検出感度が高くなって火災監視の信頼性を向上できる。
【0068】
(c) 実施例1の効果(2)と同様の効果がある。
【実施例3】
【0069】
本発明は、上記実施例1、2に限定されず、種々の変形が可能である。この変形例である実施例3としては、例えば、次の(A)〜(E)のようなものがある。
【0070】
(A) 図1において、煙検出処理部21及び熱検出処理部22の出力を、図示しない2入力ORゲート29−1及び2入力ANDゲート29−2を介して、図示しない計時部29−3に入力する(なお、この計時部29−3としては新たに追加せずに、計時部24の構造を変えて用いても良い)。煙検出処理部21又は熱検出処理部22からの警報信号S21又はS22が、ORゲート29−1を介して計時部29−3に入力されると、この計時部29−3で一定時間(例えば、30秒)を計数し、30秒内に音響停止スイッチ32が押されなければ、移報信号送出部34から移報信号S34を送出させ、30秒内に音響停止スイッチ32が押されれば、その計数動作をリセットして移報信号送出部34から移報信号S34を送出させない。その後、計時部29−3で所定時間(例えば、5分以上)を計数し、ORゲート29−1を介して該計時部29−3に入力される1つの検出処理部(例えば、煙検出処理部21)からの警報信号S21が5分以上連続した場合や、ANDゲート29−2を介して他の検出処理部(例えば、熱検出処理部22)からの警報信号S22が該計時部29−3に入力された場合には、その時点で移報信号送出部34から移報信号S34を送出するような構成に変更しても良い。
【0071】
このような構成にすれば、ある火災監視領域に人がいない場合、火災発生から30秒を経過すると、自動的に移報信号S34が他の火災監視領域へ送出されて警報が発せられるので、他の火災監視領域の火災を早期発見できると共に、誤報が発生した場合でも問題を生じさせない。
【0072】
(B) 図4の警報制御部27内には、計時手段を設けて所定時間(例えば、1分間)を計数しているが、この計時手段を設けないで図5のステップST14を省略し、ステップST13の警報発生後に直ちにステップST15の判定処理を行う構成にしても良い。これにより、警報制御部27の構成や機能をより簡素化できる。
【0073】
(C) 上記実施例1、2や上記(A)、(B)では、煙検出部11及び熱検出部12という2つの検出部を有する火災警報器1の構成例を説明したが、これに限定されず、炎検出、ガス検出等の他の検出部を用いたり、或いは3以上の検出部を設けても良い。この際、検出部の種類や個数に応じて、これらの出力を入力する検出処理部の構成や数等を適宜変更すれば良い。つまり、図1や図4の制御部20,20Aの内部の回路構成は、図示のものに限定されず、種々の回路構成に変更が可能である。
【0074】
(D) 上記実施例1、2や上記(A)、(B)では、複数個の火災報知器1−1〜1−Nを連動用リード線2でマルチ接続して使用しているが、リード線2に代えて、無線等でマルチ接続しても良い。この際、図1や図4の移報信号受信部31を無線受信構造等に変更すれば良い。
【0075】
(E) 各火災報知器1−1〜1−Nは、マルチ接続しなくて単体でも使用できる。当初から単体専用構造にするのであれば、図1や図4の移報信号受信部31及び移報信号送出部34を省略でき、これによって構造の簡単化と低コスト化が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、複合式の火災警報器に限らず、ガス漏れ警報機能を追加する等して住警器等の種々の利用形態が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施例1を示す火災警報器の概略の構成図である。
【図2】本発明の実施例1の火災警報器を用いた警報システムを示す概略の構成図である。
【図3】図1及び図2の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例2を示す火災警報器の概略の構成図である。
【図5】図2及び図4の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1,1−1〜1−N 火災警報器
2 連動用リード線
11 煙検出部
12 熱検出部
20,20A 制御部
21 煙検出処理部
22,22A 熱検出処理部
27 警報制御部
31 移報信号受信部
32 音響停止スイッチ
33,33A 警報発生部
34 移報信号送出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる検出原理により火災の発生原因をそれぞれ検出するX個(但し、Xは2以上の正の整数)の検出手段と、
前記各検出手段の検出結果を予め定められた各閾値とそれぞれ比較し、前記検出結果が前記閾値を超えたときに警報信号をそれぞれ出力するX個の検出処理手段と、
前記X個の検出処理手段の内のいずれかの検出処理手段から第1の警報信号が出力されたときに応答して時間を計測し、この計測時間が所定時間になると計時信号を出力する計時手段と、
前記X個の検出処理手段から出力される前記X個の警報信号の内のいずれか1つの警報信号に応答して、音響や表示により警報を発する警報発生手段と、
前記X個の警報信号の内のいずれか1つの警報信号に応答して発生した前記警報の内の前記音響を、停止入力により停止状態にし、前記X個の警報信号の内の前記第1の警報信号を除いた他の警報信号の内のいずれか1つの第2の警報信号、又は前記計時信号に応答して前記停止状態を復帰させる音響停止手段と、
を備えたことを特徴とする火災警報器。
【請求項2】
異なる検出原理により火災の発生原因をそれぞれ検出するX個(但し、Xは2以上の正の整数)の検出手段と、
前記各検出手段の検出結果を予め定められた各閾値とそれぞれ比較し、前記検出結果が前記閾値を超えたときに警報信号をそれぞれ出力するX個の検出処理手段と、
前記X個の検出処理手段から出力される前記X個の警報信号の内のいずれか1つの第1の警報信号に応答して、音響や表示により警報を発する警報発生手段と、
前記第1の警報信号に応答して所定時間の間、前記警報発生手段による前記音響の発生を維持し、前記所定時間経過後に、前記X個の警報信号の内の前記第1の警報信号を除いた他の警報信号の内のいずれか1つの第2の警報信号が出力されないときには、前記音響の発生を停止させるか又は前記音響の発生音量を低下させ、前記所定時間経過後に、前記第2の警報信号が出力されたときには、前記音響発生手段から前記音響を連続的に発生させる音響制御手段と、
を備えたことを特徴とする火災警報器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の火災警報器において、
前記第1の警報信号に基づく前記警報発生手段の音響発生の停止期間又は音量低下期間に関し、前記X個の検出処理手段の内の前記第2の警報信号を出力する検出処理手段の前記閾値を低下させる構成にしたことを特徴とする火災警報器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の火災警報器において、
前記他の火災警報器から送られてくる移報信号を受信する移報信号受信手段を備え、当該移報信号受信手段が、前記他の火災警報器からの移報信号を受信した際には、前記第1の警報信号に基づく前記警報発生手段の音響発生の停止期間又は音量低下期間であっても、前記警報発生手段から前記警報を発生させることを特徴とする火災警報器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の火災警報器において、
前記X個の検出処理手段から出力される2以上の警報信号に応答して前記警報発生手段から前記警報を発生した場合のみ、連動用の移報信号を外部へ送出する移報信号送出手段を設けたことを特徴とする火災警報器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の火災警報器において、
前記X個の検出処理手段から出力されるX個の警報信号の内のいずれか1つの警報信号に応答して、前記警報発生手段から前記警報を発生させ、所定時間内に前記警報発生手段の前記警報を停止させるための停止入力がないときには、連動用の移報信号を外部へ送出し、前記所定時間内に前記停止入力があったときには、前記移報信号の送出を停止する構成にしたことを特徴とする火災警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−31449(P2006−31449A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210106(P2004−210106)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】