火花点火内燃機関
【課題】可変圧縮比機構を具備する火花内燃機関において、僅かな違いであっても各気筒の吸気量のばらつきを検出可能とする。
【解決手段】可変圧縮比機構を具備する火花点火内燃機関において、各気筒の吸気量のばらつきを検出する際には(ステップ102)、各気筒の吸気量を変化させずに可変圧縮比機構により機械圧縮比を高める(ステップ104)と共に点火時期を遅角し(ステップ105)、各気筒の発生トルクに基づく値を測定する(ステップ107)。
【解決手段】可変圧縮比機構を具備する火花点火内燃機関において、各気筒の吸気量のばらつきを検出する際には(ステップ102)、各気筒の吸気量を変化させずに可変圧縮比機構により機械圧縮比を高める(ステップ104)と共に点火時期を遅角し(ステップ105)、各気筒の発生トルクに基づく値を測定する(ステップ107)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火花点火内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
各気筒へ供給される燃料量を所望燃料量に均一に制御し、エアフローメータ等を使用することにより全気筒合計の吸気量を所望全気筒吸気量に制御しても、各気筒へ供給される吸気量が所望吸気量に均一に制御することができなければ、全気筒の平均空燃比としては所望空燃比を実現することはできても、少なくとも二つの気筒においては所望空燃比による意図する燃焼を実現することができない。
【0003】
可変圧縮比機構を備える火花内燃機関において、各気筒のピストン頂面に肉盛部を形成し、各気筒の肉盛部の一部を削除することにより各気筒の燃焼室容積を等しくすることが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−008016
【特許文献2】特開平09−072809
【特許文献3】特開2009−281236
【特許文献4】特開2007−231798
【特許文献5】特開2004−52620
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のようにして各気筒の燃焼室容積を等しくしても、各気筒の吸気弁閉弁時期に僅かなずれが発生すれば、各気筒の吸気量は均一とはならない。各気筒の発生トルクから各気筒の吸気量を推定しようとしても、気筒毎の吸気量の僅かな違いを検出することは困難である。
【0006】
従って、本発明の目的は、可変圧縮比機構を具備する火花内燃機関において、僅かな違いであっても各気筒の吸気量のばらつきを検出可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による請求項1に記載の火花点火内燃機関は、可変圧縮比機構を具備する火花点火内燃機関において、各気筒の吸気量のばらつきを検出する際には、各気筒の吸気量を変化させずに前記可変圧縮比機構により機械圧縮比を高めると共に点火時期を遅角し、各気筒の発生トルクに基づく値を測定することを特徴とする。
【0008】
本発明による請求項2に記載の火花点火内燃機関は、請求項1に記載の火花点火内燃機関において、アイドル運転時に各気筒の吸気量のばらつきを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による請求項1に記載の火花点火内燃機関によれば、可変圧縮比機構を具備する火花点火内燃機関において、各気筒の吸気量のばらつきを検出する際には、点火時期を遅角することにより、各気筒の発生トルクの差が拡大され、僅かな違いであっても各気筒の吸気量のばらつきを検出することができる。しかしながら、単に点火時期を遅角すると、混合気を良好に着火燃焼させることができなくなるために、各気筒の吸気量を変化させずに可変圧縮比機構により機械圧縮比を高めることにより実圧縮比を高めて、点火時期を遅角しても混合気が良好に着火燃焼するようにしている。
【0010】
本発明による請求項2に記載の火花点火内燃機関によれば、請求項1に記載の火花点火内燃機関において、低回転ほど膨張行程間の時間が長くなって各気筒の発生トルクを検出し易くなるために、アイドル運転時に各気筒の吸気量のばらつきを検出するようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】内燃機関の全体図である。
【図2】可変圧縮比機構の分解斜視図である。
【図3】図解的に表した内燃機関の側面断面図である。
【図4】可変バルブタイミング機構を示す図である。
【図5】吸気弁および排気弁のリフト量を示す図である。
【図6】機械圧縮比、実圧縮比および膨張比を説明するための図である。
【図7】理論熱効率と膨張比との関係を示す図である。
【図8】通常のサイクルおよび超高膨張比サイクルを説明するための図である。
【図9】機関負荷に応じた機械圧縮比等の変化を示す図である。
【図10】各気筒の吸気量のばらつきを検出するためのフローチャートである。
【図11】点火時期と一気筒の発生トルクとの関係を示すグラフである。
【図12】吸気量ずれ率を算出するためのマップである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明による可変圧縮比機構を備える内燃機関の側面断面図を示す。図1を参照すると、1はクランクケース、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は燃焼室5の頂面中央部に配置された点火栓、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートを夫々示す。吸気ポート8は吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、各吸気枝管11には夫々対応する吸気ポート8内に向けて燃料を噴射するための燃料噴射弁13が配置される。なお、燃料噴射弁13は各吸気枝管11に取付ける代りに各燃焼室5内に配置してもよい。
【0013】
サージタンク12は吸気ダクト14を介してエアクリーナ15に連結され、吸気ダクト14内にはアクチュエータ16によって駆動されるスロットル弁17と例えば熱線を用いた吸入空気量検出器18とが配置される。一方、排気ポート10は排気マニホルド19を介して例えば三元触媒を内蔵した触媒装置20に連結され、排気マニホルド19内には空燃比センサ21が配置される。
【0014】
一方、図1に示される実施例ではクランクケース1とシリンダブロック2との連結部にクランクケース1とシリンダブロック2のシリンダ軸線方向の相対位置を変化させることによりピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更可能な可変圧縮比機構Aが設けられており、更に実際の圧縮作用の開始時期を変更可能な実圧縮作用開始時期変更機構Bが設けられている。なお、図1に示される実施例ではこの実圧縮作用開始時期変更機構Bは吸気弁7の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構からなる。
【0015】
図1に示されるようにクランクケース1とシリンダブロック2にはクランクケース1とシリンダブロック2間の相対位置関係を検出するための相対位置センサ22が取付けられており、この相対位置センサ22からはクランクケース1とシリンダブロック2との間隔の変化を示す出力信号が出力される。また、可変バルブタイミング機構Bには吸気弁7の閉弁時期を示す出力信号を発生するバルブタイミングセンサ23が取付けられており、スロットル弁駆動用のアクチュエータ16にはスロットル弁開度を示す出力信号を発生するスロットル開度センサ24が取付けられている。
【0016】
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。吸入空気量検出器18、空燃比センサ21、相対位置センサ22、バルブタイミングセンサ23およびスロットル開度センサ24の出力信号は夫々対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して点火栓6、燃料噴射弁13、スロットル弁駆動用アクチュエータ16、可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bに接続される。
【0017】
図2は図1に示す可変圧縮比機構Aの分解斜視図を示しており、図3は図解的に表した内燃機関の側面断面図を示している。図2を参照すると、シリンダブロック2の両側壁の下方には互いに間隔を隔てた複数個の突出部50、すなわち、シリンダブロック側サポートが形成されており、各突出部50内には夫々断面円形のカム挿入孔51が形成されている。一方、クランクケース1の上壁面上には互いに間隔を隔てて夫々対応する突出部50の間に嵌合せしめられる複数個の突出部52、すなわち、クランクケース側サポートが形成されており、これらの各突出部52内にも夫々断面円形のカム挿入孔53が形成されている。
【0018】
図2に示されるように一対のカムシャフト54,55が設けられており、各カムシャフト54,55上には一つおきに各カム挿入孔53内に回転可能に挿入される同心部分58が位置している。各同心部分58は各カムシャフト54,55の回転軸線と共軸をなす。一方、各同心部分58の両側には図3に示すように各カムシャフト54,55の回転軸線に対して偏心配置された偏心部57が位置しており、この偏心部57上に別の円形カム56が偏心して回転可能に取付けられている。図2に示されるようにこれら円形カム56は各同心部分58の両側に配置されており、これら円形カム56は対応する各カム挿入孔51内に回転可能に挿入されている。また、図2に示されるようにカムシャフト55にはカムシャフト55の回転角度を表す出力信号を発生するカム回転角度センサ25が取付けられている。
【0019】
図3(A)に示すような状態から各カムシャフト54,55の同心部分58を図3(A)において矢印で示される如く互いに反対方向に回転させると偏心部57が互いに離れる方向に移動するために円形カム56がカム挿入孔51内において同心部分58とは反対方向に回転し、図3(B)に示されるように偏心部57の位置が高い位置から中間高さ位置となる。次いで更に同心部分58を矢印で示される方向に回転させると図3(C)に示されるように偏心部57は最も低い位置となる。
【0020】
なお、図3(A)、図3(B)、図3(C)には夫々の状態における同心部分58の中心aと偏心部57の中心bと円形カム56の中心cとの位置関係が示されている。
【0021】
図3(A)から図3(C)とを比較するとわかるようにクランクケース1とシリンダブロック2の相対位置は同心部分58の中心aと円形カム56の中心cとの距離によって定まり、同心部分58の中心aと円形カム56の中心cとの距離が大きくなるほどシリンダブロック2はクランクケース1から離れる。即ち、可変圧縮比機構Aは回転するカムを用いたクランク機構によりクランクケース1とシリンダブロック2間の相対位置を変化させていることになる。シリンダブロック2がクランクケース1から離れるとピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積は増大し、従って各カムシャフト54,55を回転させることによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更することができる。
【0022】
図2に示されるように各カムシャフト54,55を夫々反対方向に回転させるために駆動モータ59の回転軸には夫々螺旋方向が逆向きの一対のウォーム61,62が取付けられており、これらウォーム61,62と噛合するウォームホイール63,64が夫々各カムシャフト54,55の端部に固定されている。この実施例では駆動モータ59を駆動することによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を広い範囲に亘って変更することができる。
【0023】
一方、図4は図1において吸気弁7を駆動するためのカムシャフト70の端部に取付けられた可変バルブタイミング機構Bを示している。図4を参照すると、この可変バルブタイミング機構Bは機関のクランク軸によりタイミングベルトを介して矢印方向に回転せしめられるタイミングプーリ71と、タイミングプーリ71と一緒に回転する円筒状ハウジング72と、吸気弁駆動用カムシャフト70と一緒に回転しかつ円筒状ハウジング72に対して相対回転可能な回転軸73と、円筒状ハウジング72の内周面から回転軸73の外周面まで延びる複数個の仕切壁74と、各仕切壁74の間で回転軸73の外周面から円筒状ハウジング72の内周面まで延びるベーン75とを具備しており、各ベーン75の両側には夫々進角用油圧室76と遅角用油圧室77とが形成されている。
【0024】
各油圧室76,77への作動油の供給制御は作動油供給制御弁78によって行われる。この作動油供給制御弁78は各油圧室76,77に夫々連結された油圧ポート79,80と、油圧ポンプ81から吐出された作動油の供給ポート82と、一対のドレインポート83,84と、各ポート79,80,82,83,84間の連通遮断制御を行うスプール弁85とを具備している。
【0025】
吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を進角すべきときは図4においてスプール弁85が右方に移動せしめられ、供給ポート82から供給された作動油が油圧ポート79を介して進角用油圧室76に供給されると共に遅角用油圧室77内の作動油がドレインポート84から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印方向に相対回転せしめられる。
【0026】
これに対し、吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を遅角すべきときは図4においてスプール弁85が左方に移動せしめられ、供給ポート82から供給された作動油が油圧ポート80を介して遅角用油圧室77に供給されると共に進角用油圧室76内の作動油がドレインポート83から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印と反対方向に相対回転せしめられる。
【0027】
回転軸73が円筒状ハウジング72に対して相対回転せしめられているときにスプール弁85が図4に示される中立位置に戻されると回転軸73の相対回転動作は停止せしめられ、回転軸73はそのときの相対回転位置に保持される。従って可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を所望の量だけ進角させることができ、遅角させることができることになる。
【0028】
図5において実線は可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相が最も進角されているときを示しており、破線は吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相が最も遅角されているときを示している。従って吸気弁7の開弁期間は図5において実線で示す範囲と破線で示す範囲との間で任意に設定することができ、従って吸気弁7の閉弁時期も図5において矢印Cで示す範囲内の任意のクランク角に設定することができる。
【0029】
図1および図4に示される可変バルブタイミング機構Bは一例を示すものであって、例えば吸気弁の開弁時期を一定に維持したまま吸気弁の閉弁時期のみを変えることのできる可変バルブタイミング機構等、種々の形式の可変バルブタイミング機構を用いることができる。
【0030】
次に図6を参照しつつ本願において使用されている用語の意味について説明する。なお、図6の(A),(B),(C)には説明のために燃焼室容積が50mlでピストンの行程容積が500mlであるエンジンが示されており、これら図6の(A),(B),(C)において燃焼室容積とはピストンが圧縮上死点に位置するときの燃焼室の容積を表している。
【0031】
図6(A)は機械圧縮比について説明している。機械圧縮比は圧縮行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積のみから機械的に定まる値であってこの機械圧縮比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(A)に示される例ではこの機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
【0032】
図6(B)は実圧縮比について説明している。この実圧縮比は実際に圧縮作用が開始されたときからピストンが上死点に達するまでの実際のピストン行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの実圧縮比は(燃焼室容積+実際の行程容積)/燃焼室容積で表される。即ち、図6(B)に示されるように圧縮行程においてピストンが上昇を開始しても吸気弁が開弁している間は圧縮作用は行われず、吸気弁が閉弁したときから実際の圧縮作用が開始される。従って実圧縮比は実際の行程容積を用いて上記の如く表される。図6(B)に示される例では実圧縮比は(50ml+450ml)/50ml=10となる。
【0033】
図6(C)は膨張比について説明している。膨張比は膨張行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの膨張比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(C)に示される例ではこの膨張比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
【0034】
次に図7および図8を参照しつつ本発明において用いられている超膨張比サイクルについて説明する。なお、図7は理論熱効率と膨張比との関係を示しており、図8は本発明において負荷に応じ使い分けられている通常のサイクルと超高膨張比サイクルとの比較を示している。
【0035】
図8(A)は吸気弁が下死点近傍で閉弁し、ほぼ吸気下死点付近からピストンによる圧縮作用が開始される場合の通常のサイクルを示している。この図8(A)に示す例でも図6の(A),(B),(C)に示す例と同様に燃焼室容積が50mlとされ、ピストンの行程容積が500mlとされている。図8(A)からわかるように通常のサイクルでは機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11であり、実圧縮比もほぼ11であり、膨張比も(50ml+500ml)/50ml=11となる。即ち、通常の内燃機関では機械圧縮比と実圧縮比と膨張比とがほぼ等しくなる。
【0036】
図7における実線は実圧縮比と膨張比とがほぼ等しい場合の、即ち通常のサイクルにおける理論熱効率の変化を示している。この場合には膨張比が大きくなるほど、即ち実圧縮比が高くなるほど理論熱効率が高くなることがわかる。従って通常のサイクルにおいて理論熱効率を高めるには実圧縮比を高くすればよいことになる。しかしながら機関高負荷運転時におけるノッキングの発生の制約により実圧縮比は最大でも12程度までしか高くすることができず、斯くして通常のサイクルにおいては理論熱効率を十分に高くすることはできない。
【0037】
一方、このような状況下で機械圧縮比と実圧縮比とを厳密に区分しつつ理論熱効率を高めることが検討され、その結果理論熱効率は膨張比が支配し、理論熱効率に対して実圧縮比はほとんど影響を与えないことが見い出されたのである。即ち、実圧縮比を高くすると爆発力は高まるが圧縮するために大きなエネルギーが必要となり、斯くして実圧縮比を高めても理論熱効率はほとんど高くならない。
【0038】
これに対し、膨張比を大きくすると膨張行程時にピストンに対し押下げ力が作用する期間が長くなり、斯くしてピストンがクランクシャフトに回転力を与えている期間が長くなる。従って膨張比は大きくすれば大きくするほど理論熱効率が高くなる。図7の破線ε=10は実圧縮比を10に固定した状態で膨張比を高くしていった場合の理論熱効率を示している。このように実圧縮比εを低い値に維持した状態で膨張比を高くしたときの理論熱効率の上昇量と、図7の実線で示す如く実圧縮比も膨張比と共に増大せしめられる場合の理論熱効率の上昇量とは大きな差がないことがわかる。
【0039】
このように実圧縮比が低い値に維持されているとノッキングが発生することがなく、従って実圧縮比を低い値に維持した状態で膨張比を高くするとノッキングの発生を阻止しつつ理論熱効率を大巾に高めることができる。図8(B)は可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bを用いて、実圧縮比を低い値に維持しつつ膨張比を高めるようにした場合の一例を示している。
【0040】
図8(B)を参照すると、この例では可変圧縮比機構Aにより燃焼室容積が50mlから20mlまで減少せしめられる。一方、可変バルブタイミング機構Bによって実際のピストン行程容積が500mlから200mlになるまで吸気弁の閉弁時期が遅らされる。その結果、この例では実圧縮比は(20ml+200ml)/20ml=11となり、膨張比は(20ml+500ml)/20ml=26となる。図8(A)に示される通常のサイクルでは前述したように実圧縮比がほぼ11で膨張比が11であり、この場合に比べると図8(B)に示される場合には膨張比のみが26まで高められていることがわかる。これが超高膨張比サイクルと称される所以である。
【0041】
一般的に言って内燃機関では機関負荷が低いほど熱効率が悪くなり、従って機関運転時における熱効率を向上させるためには、即ち燃費を向上させるには機関負荷が低いときの熱効率を向上させることが必要となる。一方、図8(B)に示される超高膨張比サイクルでは圧縮行程時の実際のピストン行程容積が小さくされるために燃焼室5内に吸入しうる吸入空気量は少なくなり、従ってこの超高膨張比サイクルは機関負荷が比較的低いときにしか採用できないことになる。従って本発明では機関負荷が比較的低いときには図8(B)に示す超高膨張比サイクルとし、機関高負荷運転時には図8(A)に示す通常のサイクルとするようにしている。
【0042】
次に図9を参照しつつ運転制御全般について概略的に説明する。図9には或る機関回転数における機関負荷に応じた吸入空気量、吸気弁閉弁時期、機械圧縮比、膨張比、実圧縮比およびスロットル弁17の開度の各変化が示されている。なお、図9は、触媒装置20内の三元触媒によって排気ガス中の未燃HC,COおよびNOXを同時に低減しうるように燃焼室5内における平均空燃比が空燃比センサ21の出力信号に基いて理論空燃比にフィードバック制御されている場合を示している。
【0043】
さて、前述したように機関高負荷運転時には図8(A)に示される通常のサイクルが実行される。従って図9に示されるようにこのときには機械圧縮比は低くされるために膨張比は低く、図9において実線で示されるように吸気弁7の閉弁時期は図5において実線で示される如く早められている。また、このときには吸入空気量は多く、このときスロットル弁17の開度は全開に保持されているのでポンピング損失は零となっている。
【0044】
一方、図9において実線で示されるように機関負荷が低くなるとそれに伴って吸入空気量を減少すべく吸気弁7の閉弁時期が遅くされる。またこのときには実圧縮比がほぼ一定に保持されるように図9に示される如く機関負荷が低くなるにつれて機械圧縮比が増大され、従って機関負荷が低くなるにつれて膨張比も増大される。なお、このときにもスロットル弁17は全開状態に保持されており、従って燃焼室5内に供給される吸入空気量はスロットル弁17によらずに吸気弁7の閉弁時期を変えることによって制御されている。
【0045】
このように機関高負荷運転状態から機関負荷が低くなるときには実圧縮比がほぼ一定のもとで吸入空気量が減少するにつれて機械圧縮比が増大せしめられる。即ち、吸入空気量の減少に比例してピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積が減少せしめられる。従ってピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は吸入空気量に比例して変化していることになる。なお、このとき図9に示される例では燃焼室5内の空燃比は理論空燃比となっているのでピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は燃料量に比例して変化していることになる。
【0046】
機関負荷が更に低くなると機械圧縮比は更に増大せしめられ、機関負荷がやや低負荷寄りの中負荷L1まで低下すると機械圧縮比は燃焼室5の構造上限界となる限界機械圧縮比(上限機械圧縮比)に達する。機械圧縮比が限界機械圧縮比に達すると、機械圧縮比が限界機械圧縮比に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では機械圧縮比が限界機械圧縮比に保持される。従って低負荷側の機関中負荷運転時および機関低負荷運転時には即ち、機関低負荷運転側では機械圧縮比は最大となり、膨張比も最大となる。別の言い方をすると機関低負荷運転側では最大の膨張比が得られるように機械圧縮比が最大にされる。
【0047】
一方、図9に示される実施例では機関負荷がL1まで低下すると吸気弁7の閉弁時期が燃焼室5内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期となる。吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達すると吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持される。
【0048】
吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持されるともはや吸気弁7の閉弁時期の変化によっては吸入空気量を制御することができない。図9に示される実施例ではこのとき、即ち吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域ではスロットル弁17によって燃焼室5内に供給される吸入空気量が制御され、機関負荷が低くなるほどスロットル弁17の開度は小さくされる。
【0049】
一方、図9において破線で示すように機関負荷が低くなるにつれて吸気弁7の閉弁時期を早めることによってもスロットル弁17によらずに吸入空気量を制御することができる。従って、図9において実線で示される場合と破線で示される場合とをいずれも包含しうるように表現すると、本発明による実施例では吸気弁7の閉弁時期は、機関負荷が低くなるにつれて、燃焼室内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期L1まで吸気下死点BDCから離れる方向に移動せしめられることになる。このように吸入空気量は吸気弁7の閉弁時期を図9において実線で示すように変化させても制御することができるし、破線に示すように変化させても制御することができる。
【0050】
前述したように図8(B)に示す超高膨張比サイクルでは膨張比が26とされる。この膨張比は高いほど好ましいが図7からわかるように実用上使用可能な下限実圧縮比ε=5に対しても20以上であればかなり高い理論熱効率を得ることができる。従って本実施例では膨張比が20以上となるように可変圧縮比機構Aが形成されている。
【0051】
ところで、全気筒へ供給される吸気量の合計は、吸入空気量検出器18により検出することができ、機関運転状態(機関回転数及び機関負荷)毎に、吸気弁7の閉弁時期の制御又はスロットル弁17の開度制御により所望の合計吸気量を実現することにより、各気筒の燃料噴射弁13により所望量の燃料が供給されれば、排気マニホルド19の排気合流部より下流側においては、空燃比センサ21により検出される排気ガスの空燃比を所望空燃比(例えば、理論空燃比)に制御することができる。
【0052】
しかしながら、機関運転状態毎の所望の合計吸気量が各気筒へ均一に分配されているとは限らず、各気筒において吸気量がばらついていることがあり、その結果、少なくとも二つの気筒においては所望空燃比の意図する燃焼が実現されていないことがある。特に、本実施例のように、可変バルブタイミング機構Bによって各気筒の吸気弁7の閉弁時期を制御する場合には、吸気弁の閉弁時期の僅かなずれによって、各気筒の吸気量がばらつくこととなる。また、本実施例のように、可変圧縮比機構Aによって機械圧縮比が高くされて上死点の燃焼室容積が小さくされている場合には、吸気弁7の閉弁時期の僅かなずれに対する各気筒の吸気量のばらつきは顕著となる。
【0053】
各気筒において燃料噴射弁13から気筒内へ供給される燃料量は均一に制御し易いために、各気筒へは所望燃料量が供給されているとすることができ、吸気量が所望吸気量より多い気筒では発生トルクが大きくなり、吸気量が所望吸気量より少ない気筒では発生トルクが小さくなる。それにより、各気筒の発生トルクを検出することにより、各気筒の吸気量のばらつきを検出することが考えられるが、各気筒の吸気量が僅かしか違わない場合には、各気筒の発生トルクには十分な違いが発生せず、単に各気筒の発生トルクを検出しても各気筒の吸気量のばらつきを検出することができないことがある。
【0054】
本実施例の火花点火内燃機関は、電子制御ユニット30によって図10に示すフローチャートに従って可変圧縮比機構A及び点火栓6を制御することにより各気筒の吸気量のばらつきを検出するようになっている。
【0055】
先ず、ステップ101において、現在の機関運転状態がアイドル運転であるか否かが判断される。例えば、車両停止中において負荷センサ41により検出されるアクセルペダル40の踏込み量が零(0)であり、すなわち、アクセルペダルが踏み込まれておらず、クランク角センサ42により機関回転数が検出されれば、アイドル運転中であると判断することができる。この判断が否定されるときにはそのまま終了するが、アイドル運転中であるときには、ステップ101の判断は肯定されてステップ102へ進む。
【0056】
ステップ102では、フラグFが1であるか否かが判断される。各気筒の吸気量のばらつきを検出する際には、フラグFは1とされる。例えば、機関運転毎に、又は、複数回の機関運転毎に、一度だけフラグFは1とされる。機関始動直後のアイドル運転は、燃焼が不安定であるために、各気筒の吸気量のばらつきを正確に検出することは困難であり、フラグFを1としないことが好ましい。ステップ102の判断が否定されるときにはそのまま終了するが、各気筒の吸気量のばらつきを検出する際には、ステップ102の判断は肯定され、ステップ103において、目標機械圧縮比EtをE1とする。
【0057】
機関始動直後ではなく燃焼が安定しているアイドル運転時には、吸気弁の閉弁時期は最大に遅角されていると共に、スロットル弁は最小開度とされている(図9参照)。また、アイドル運転時の実圧縮比は、振動を抑制するために、機械圧縮比を上限値より小さなアイドル機械圧縮比E0とすることにより、図9に示す一定値より低くされている。
【0058】
ステップ103において目標機械圧縮比Etとされた機械圧縮比E1は、アイドル機械圧縮比E0より高い機械圧縮比であり、好ましくは、機械圧縮比の上限値である。次いで、ステップ104において、可変圧縮比機構Aにより機械圧縮比Eを高めるように制御する。その際に、各気筒において吸気量は変化させておらず、機械圧縮比Eが高められることにより実圧縮比が高められるために、各気筒において混合気を良好に着火燃焼可能な点火時期の遅角限界が遅角側へ拡大する。ステップ105では、各気筒の点火時期ITを現在の実圧縮比に対する遅角限界とするように制御する。次いで、ステップ106では、機械圧縮比Eが目標機械圧縮比Et(E1)となったか否かが判断され、この判断が肯定されるまで、ステップ104及び105の処理が繰り返される。
【0059】
図11は、アイドル運転時の点火時期ITと一気筒の発生トルクとの関係を示すグラフであり、実線は気筒内へアイドル運転時の所望吸気量が供給されている場合であり、点線は気筒内へアイドル運転時の所望吸気量より僅かに多い吸気が供給されている場合であり、一点鎖線は気筒内へアイドル運転時の所望吸気量より僅かに少ない吸気が供給されている場合である。実線、点線、及び、一点鎖線のいずれの場合においても、気筒内へはアイドル運転時の所望燃料量が供給されている。所望燃料量が供給されている場合には、気筒へ供給される吸気量が多いほど発生トルクは大きくなる。
【0060】
IT0は、アイドル運転時の全気筒共通の最適点火時期であり、実線で示すアイドル運転時の所望吸気量の吸気が供給されている気筒だけでなく、点線で示すアイドル運転時の所望吸気量より僅かに多い吸気が供給されている気筒においても、一点鎖線で示す気筒内へアイドル運転時の所望吸気量より僅かに少ない吸気が供給されている気筒においても、最適点火時期IT0において、発生トルクがほぼ最大となる。図11に示すように、点火時期が最適点火時期IT0に制御されているときには、各気筒の吸気量の違いが僅かであると、各気筒の発生トクルは殆ど差がなく、このような各気筒の僅かな発生トルク差を正確に検出することは困難である。
【0061】
しかしながら、図11に示すように、点火時期を最適点火時期IT0から遅角するほど、各気筒の吸気量の違いが僅かであっても、各気筒の発生トクルの違いは顕著になり、各気筒の発生トルク差を正確に検出し易くなる。そのために、図10に示すフローチャートでは、ステップ105において点火時期を遅角しており、点火時期を遅角しても混合気を確実に着火燃焼させるために、ステップ104において機械圧縮比を高めることにより実圧縮比を高めている。
【0062】
ステップ106の判断が肯定されるときには、機械圧縮比Eは目標機械圧縮比Etまで高められ、点火時期ITは、このときの遅角限界IT1まで遅角されており、各気筒の発生トクル差は大きくされている。それにより、ステップ107において、各気筒の発生トルクに基づく値として、各気筒のTDC時間Tiが検出される。例えば、点火順序が#1気筒、#3気筒、#4気筒、#2気筒の場合において、#1気筒のTDC時間T1は、#1気筒の圧縮上死点から#3気筒の圧縮上死点までの時間であり、#2気筒のTDC時間T2は、#2気筒の圧縮上死点から#1気筒の圧縮上死点までの時間であり、#3気筒のTDC時間T3は、#3気筒の圧縮上死点から#4気筒の圧縮上死点までの時間であり、#4気筒のTDC時間T4は、#4気筒の圧縮上死点から#2気筒の圧縮上死点までの時間である。
【0063】
TDC時間Tiが短い気筒ほど、発生トルクが大きいこととなる。各気筒のTDC時間Tiに基づき、各気筒のTDC時間比ΔTiが算出される。#1気筒のTDC時間比ΔT1は、(#1気筒のTDC時間T1−TDC時間平均)/TDC時間平均により算出され、#2気筒のTDC時間比ΔT2は、(#2気筒のTDC時間T2−TDC時間平均)/TDC時間平均により算出され、#3気筒のTDC時間比ΔT3は、(#3気筒のTDC時間T3−TDC時間平均)/TDC時間平均により算出され、#4気筒のTDC時間比ΔT4は、(#4気筒のTDC時間T4−TDC時間平均)/TDC時間平均により算出される。ここで、TDC時間平均は、TDC時間Tiの平均値であり、(T1+T2+T3+T4)/4により算出され、所望量の吸気が供給された気筒のTDC時間となる。
【0064】
TDC時間比ΔTiが正である気筒は、所望空気量より少ない吸気が供給されている気筒であり、TDC時間比ΔTiの絶対値が大きいほど少量の吸気しか供給されていないこととなる。TDC時間比ΔTiが零である気筒は、所望空気量の吸気が供給されている気筒である。TDC時間比ΔTiが負である気筒は、所望空気量より多い吸気が供給されている気筒であり、TDC時間比ΔTiの絶対値が大きいほど多量の吸気が供給されていることとなる。こうして算出される各気筒のTDC時間比ΔTiが全て零でなければ、各気筒の吸気量がばらついていると判断することができ、各気筒のTDC時間比ΔTiに基づき各気筒へ供給されている吸気量を推定することができる。
【0065】
次いで、ステップ108において、各気筒のTDC時間比ΔTiに基づき、例えば、図12に示すマップから各気筒の吸気量ずれ率Ci(%)を決定する。TDC時間Tiの測定などにおける誤差を排除するために、TDC時間比ΔTiが零近傍である気筒は、吸気量ずれ率Ciは0%とされる。吸気量ずれ率Ciは、TDC時間比ΔTiが零近傍である場合を除いて、TDC時間比ΔTiが正であるときには吸気量不足を示す負とされ、TDC時間比ΔTiが負であるときには吸気量過多を示す正とされ、TDC時間比ΔTiの絶対値が大きいほど、吸気量ずれ率の絶対値も大きくされる。こうして決定される各気筒の吸気量ずれ量Ciが全て零でなければ、各気筒の吸気量がばらついていると判断することができ、各気筒の吸気量ずれ率Ciに基づき各気筒へ供給されている吸気量を推定することができる。図12に示すマップは、アイドル運転時に実圧縮比を高めて点火時期を遅角限界IT1まで遅角させた場合のTDC時間比ΔTiに対して吸気量ずれ率Ciを決定するための特有のマップである。
【0066】
次いで、ステップ109においては、各気筒の空燃比を所望空燃比とするために、各気筒の燃料噴射補正係数Kiが算出される。各気筒の燃料噴射補正係数Kiは、1+Ci−dにより算出され、ここで、dは各気筒の吸気量ずれ率Ciの平均値である(d=(C1+C2+C3+C4)/4)。各気筒の吸気量のばらつきが発生していても、各気筒の平均吸気量は所望吸気量となっていることが前提となっているために、dによる補正が必要とされる。例えば、#1気筒の吸気量ずれ率C1が4%(0.04)であり、#2気筒から#4気筒の吸気量ずれ率C2、C3、及びC4が0%(0)である場合には、dは1%となり、#1気筒の燃料噴射補正係数K1は1.03となり、#2気筒から#4気筒の燃料噴射補正係数K2、K3、及びK4は、0.09となる。
【0067】
それにより、#1気筒では供給される燃料が3%増量され、#2気筒から#4気筒では供給される燃料が1%減量される。それにより、各気筒の発生トルク差は、吸気量の違いだけなく、吸気量が多いほど燃料量も多くされるために、各気筒の発生トルク差は大きくなる。しかしながら、各気筒において所望空燃比での燃焼を実現することができる。各気筒の発生トルク差を大きくしない方が好ましい場合には、ステップ109の処理を省略すれば良い。次いで、ステップ110において、各気筒の吸気量のばらつきは検出されたために、フラグFは0とされ終了する。
【0068】
アイドル運転時は、機関回転数が低いために、各気筒の発生トルクに基づく値であるTDC時間Tiが長くなって正確に測定し易くなる。また、吸気量が少ないために、吸気弁の閉弁時期の僅かなずれに対して吸気量のばらつきが大きくなるために、吸気量のばらつきを検出し易くなる。それにより、本実施例では、アイドル運転時に各気筒の吸気量のばらつきを検出するようにしている。
【0069】
しかしながら、これは本発明を限定するものではなく、アイドル運転時以外の定常運転時において同様に各気筒の吸気量のばらつきを検出するようにしても良い。この場合において、各気筒の発生トルク差が現在の最適点火時期において小さくても、アイドル時と同様に、機械圧縮比を高めて実圧縮比を高めることにより可能となる点火時期の遅角によって、各気筒の発生トルク差を大きくすることができ、各気筒の発生トルクに基づく値から各気筒の吸気量のばらつきを確実に検出することができる。
【0070】
この際に、各気筒の吸気量ずれ率Ciまで算出することが必要ならば、吸気量のばらつきを検出するときの機関運転状態において実圧縮比を高めて点火時期を特定遅角限界IT’まで遅角させた場合のTDC時間比ΔTiに対して吸気量ずれ率Ciを決定するための図12に示すようなマップを予め設定しておけば良い。
【符号の説明】
【0071】
1 クランクケース
2 シリンダブロック
6 点火栓
A 可変圧縮比機構
B 可変バルブタイミング機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、火花点火内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
各気筒へ供給される燃料量を所望燃料量に均一に制御し、エアフローメータ等を使用することにより全気筒合計の吸気量を所望全気筒吸気量に制御しても、各気筒へ供給される吸気量が所望吸気量に均一に制御することができなければ、全気筒の平均空燃比としては所望空燃比を実現することはできても、少なくとも二つの気筒においては所望空燃比による意図する燃焼を実現することができない。
【0003】
可変圧縮比機構を備える火花内燃機関において、各気筒のピストン頂面に肉盛部を形成し、各気筒の肉盛部の一部を削除することにより各気筒の燃焼室容積を等しくすることが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−008016
【特許文献2】特開平09−072809
【特許文献3】特開2009−281236
【特許文献4】特開2007−231798
【特許文献5】特開2004−52620
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のようにして各気筒の燃焼室容積を等しくしても、各気筒の吸気弁閉弁時期に僅かなずれが発生すれば、各気筒の吸気量は均一とはならない。各気筒の発生トルクから各気筒の吸気量を推定しようとしても、気筒毎の吸気量の僅かな違いを検出することは困難である。
【0006】
従って、本発明の目的は、可変圧縮比機構を具備する火花内燃機関において、僅かな違いであっても各気筒の吸気量のばらつきを検出可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による請求項1に記載の火花点火内燃機関は、可変圧縮比機構を具備する火花点火内燃機関において、各気筒の吸気量のばらつきを検出する際には、各気筒の吸気量を変化させずに前記可変圧縮比機構により機械圧縮比を高めると共に点火時期を遅角し、各気筒の発生トルクに基づく値を測定することを特徴とする。
【0008】
本発明による請求項2に記載の火花点火内燃機関は、請求項1に記載の火花点火内燃機関において、アイドル運転時に各気筒の吸気量のばらつきを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による請求項1に記載の火花点火内燃機関によれば、可変圧縮比機構を具備する火花点火内燃機関において、各気筒の吸気量のばらつきを検出する際には、点火時期を遅角することにより、各気筒の発生トルクの差が拡大され、僅かな違いであっても各気筒の吸気量のばらつきを検出することができる。しかしながら、単に点火時期を遅角すると、混合気を良好に着火燃焼させることができなくなるために、各気筒の吸気量を変化させずに可変圧縮比機構により機械圧縮比を高めることにより実圧縮比を高めて、点火時期を遅角しても混合気が良好に着火燃焼するようにしている。
【0010】
本発明による請求項2に記載の火花点火内燃機関によれば、請求項1に記載の火花点火内燃機関において、低回転ほど膨張行程間の時間が長くなって各気筒の発生トルクを検出し易くなるために、アイドル運転時に各気筒の吸気量のばらつきを検出するようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】内燃機関の全体図である。
【図2】可変圧縮比機構の分解斜視図である。
【図3】図解的に表した内燃機関の側面断面図である。
【図4】可変バルブタイミング機構を示す図である。
【図5】吸気弁および排気弁のリフト量を示す図である。
【図6】機械圧縮比、実圧縮比および膨張比を説明するための図である。
【図7】理論熱効率と膨張比との関係を示す図である。
【図8】通常のサイクルおよび超高膨張比サイクルを説明するための図である。
【図9】機関負荷に応じた機械圧縮比等の変化を示す図である。
【図10】各気筒の吸気量のばらつきを検出するためのフローチャートである。
【図11】点火時期と一気筒の発生トルクとの関係を示すグラフである。
【図12】吸気量ずれ率を算出するためのマップである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明による可変圧縮比機構を備える内燃機関の側面断面図を示す。図1を参照すると、1はクランクケース、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は燃焼室5の頂面中央部に配置された点火栓、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートを夫々示す。吸気ポート8は吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、各吸気枝管11には夫々対応する吸気ポート8内に向けて燃料を噴射するための燃料噴射弁13が配置される。なお、燃料噴射弁13は各吸気枝管11に取付ける代りに各燃焼室5内に配置してもよい。
【0013】
サージタンク12は吸気ダクト14を介してエアクリーナ15に連結され、吸気ダクト14内にはアクチュエータ16によって駆動されるスロットル弁17と例えば熱線を用いた吸入空気量検出器18とが配置される。一方、排気ポート10は排気マニホルド19を介して例えば三元触媒を内蔵した触媒装置20に連結され、排気マニホルド19内には空燃比センサ21が配置される。
【0014】
一方、図1に示される実施例ではクランクケース1とシリンダブロック2との連結部にクランクケース1とシリンダブロック2のシリンダ軸線方向の相対位置を変化させることによりピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更可能な可変圧縮比機構Aが設けられており、更に実際の圧縮作用の開始時期を変更可能な実圧縮作用開始時期変更機構Bが設けられている。なお、図1に示される実施例ではこの実圧縮作用開始時期変更機構Bは吸気弁7の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構からなる。
【0015】
図1に示されるようにクランクケース1とシリンダブロック2にはクランクケース1とシリンダブロック2間の相対位置関係を検出するための相対位置センサ22が取付けられており、この相対位置センサ22からはクランクケース1とシリンダブロック2との間隔の変化を示す出力信号が出力される。また、可変バルブタイミング機構Bには吸気弁7の閉弁時期を示す出力信号を発生するバルブタイミングセンサ23が取付けられており、スロットル弁駆動用のアクチュエータ16にはスロットル弁開度を示す出力信号を発生するスロットル開度センサ24が取付けられている。
【0016】
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。吸入空気量検出器18、空燃比センサ21、相対位置センサ22、バルブタイミングセンサ23およびスロットル開度センサ24の出力信号は夫々対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して点火栓6、燃料噴射弁13、スロットル弁駆動用アクチュエータ16、可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bに接続される。
【0017】
図2は図1に示す可変圧縮比機構Aの分解斜視図を示しており、図3は図解的に表した内燃機関の側面断面図を示している。図2を参照すると、シリンダブロック2の両側壁の下方には互いに間隔を隔てた複数個の突出部50、すなわち、シリンダブロック側サポートが形成されており、各突出部50内には夫々断面円形のカム挿入孔51が形成されている。一方、クランクケース1の上壁面上には互いに間隔を隔てて夫々対応する突出部50の間に嵌合せしめられる複数個の突出部52、すなわち、クランクケース側サポートが形成されており、これらの各突出部52内にも夫々断面円形のカム挿入孔53が形成されている。
【0018】
図2に示されるように一対のカムシャフト54,55が設けられており、各カムシャフト54,55上には一つおきに各カム挿入孔53内に回転可能に挿入される同心部分58が位置している。各同心部分58は各カムシャフト54,55の回転軸線と共軸をなす。一方、各同心部分58の両側には図3に示すように各カムシャフト54,55の回転軸線に対して偏心配置された偏心部57が位置しており、この偏心部57上に別の円形カム56が偏心して回転可能に取付けられている。図2に示されるようにこれら円形カム56は各同心部分58の両側に配置されており、これら円形カム56は対応する各カム挿入孔51内に回転可能に挿入されている。また、図2に示されるようにカムシャフト55にはカムシャフト55の回転角度を表す出力信号を発生するカム回転角度センサ25が取付けられている。
【0019】
図3(A)に示すような状態から各カムシャフト54,55の同心部分58を図3(A)において矢印で示される如く互いに反対方向に回転させると偏心部57が互いに離れる方向に移動するために円形カム56がカム挿入孔51内において同心部分58とは反対方向に回転し、図3(B)に示されるように偏心部57の位置が高い位置から中間高さ位置となる。次いで更に同心部分58を矢印で示される方向に回転させると図3(C)に示されるように偏心部57は最も低い位置となる。
【0020】
なお、図3(A)、図3(B)、図3(C)には夫々の状態における同心部分58の中心aと偏心部57の中心bと円形カム56の中心cとの位置関係が示されている。
【0021】
図3(A)から図3(C)とを比較するとわかるようにクランクケース1とシリンダブロック2の相対位置は同心部分58の中心aと円形カム56の中心cとの距離によって定まり、同心部分58の中心aと円形カム56の中心cとの距離が大きくなるほどシリンダブロック2はクランクケース1から離れる。即ち、可変圧縮比機構Aは回転するカムを用いたクランク機構によりクランクケース1とシリンダブロック2間の相対位置を変化させていることになる。シリンダブロック2がクランクケース1から離れるとピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積は増大し、従って各カムシャフト54,55を回転させることによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更することができる。
【0022】
図2に示されるように各カムシャフト54,55を夫々反対方向に回転させるために駆動モータ59の回転軸には夫々螺旋方向が逆向きの一対のウォーム61,62が取付けられており、これらウォーム61,62と噛合するウォームホイール63,64が夫々各カムシャフト54,55の端部に固定されている。この実施例では駆動モータ59を駆動することによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を広い範囲に亘って変更することができる。
【0023】
一方、図4は図1において吸気弁7を駆動するためのカムシャフト70の端部に取付けられた可変バルブタイミング機構Bを示している。図4を参照すると、この可変バルブタイミング機構Bは機関のクランク軸によりタイミングベルトを介して矢印方向に回転せしめられるタイミングプーリ71と、タイミングプーリ71と一緒に回転する円筒状ハウジング72と、吸気弁駆動用カムシャフト70と一緒に回転しかつ円筒状ハウジング72に対して相対回転可能な回転軸73と、円筒状ハウジング72の内周面から回転軸73の外周面まで延びる複数個の仕切壁74と、各仕切壁74の間で回転軸73の外周面から円筒状ハウジング72の内周面まで延びるベーン75とを具備しており、各ベーン75の両側には夫々進角用油圧室76と遅角用油圧室77とが形成されている。
【0024】
各油圧室76,77への作動油の供給制御は作動油供給制御弁78によって行われる。この作動油供給制御弁78は各油圧室76,77に夫々連結された油圧ポート79,80と、油圧ポンプ81から吐出された作動油の供給ポート82と、一対のドレインポート83,84と、各ポート79,80,82,83,84間の連通遮断制御を行うスプール弁85とを具備している。
【0025】
吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を進角すべきときは図4においてスプール弁85が右方に移動せしめられ、供給ポート82から供給された作動油が油圧ポート79を介して進角用油圧室76に供給されると共に遅角用油圧室77内の作動油がドレインポート84から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印方向に相対回転せしめられる。
【0026】
これに対し、吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を遅角すべきときは図4においてスプール弁85が左方に移動せしめられ、供給ポート82から供給された作動油が油圧ポート80を介して遅角用油圧室77に供給されると共に進角用油圧室76内の作動油がドレインポート83から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印と反対方向に相対回転せしめられる。
【0027】
回転軸73が円筒状ハウジング72に対して相対回転せしめられているときにスプール弁85が図4に示される中立位置に戻されると回転軸73の相対回転動作は停止せしめられ、回転軸73はそのときの相対回転位置に保持される。従って可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を所望の量だけ進角させることができ、遅角させることができることになる。
【0028】
図5において実線は可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相が最も進角されているときを示しており、破線は吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相が最も遅角されているときを示している。従って吸気弁7の開弁期間は図5において実線で示す範囲と破線で示す範囲との間で任意に設定することができ、従って吸気弁7の閉弁時期も図5において矢印Cで示す範囲内の任意のクランク角に設定することができる。
【0029】
図1および図4に示される可変バルブタイミング機構Bは一例を示すものであって、例えば吸気弁の開弁時期を一定に維持したまま吸気弁の閉弁時期のみを変えることのできる可変バルブタイミング機構等、種々の形式の可変バルブタイミング機構を用いることができる。
【0030】
次に図6を参照しつつ本願において使用されている用語の意味について説明する。なお、図6の(A),(B),(C)には説明のために燃焼室容積が50mlでピストンの行程容積が500mlであるエンジンが示されており、これら図6の(A),(B),(C)において燃焼室容積とはピストンが圧縮上死点に位置するときの燃焼室の容積を表している。
【0031】
図6(A)は機械圧縮比について説明している。機械圧縮比は圧縮行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積のみから機械的に定まる値であってこの機械圧縮比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(A)に示される例ではこの機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
【0032】
図6(B)は実圧縮比について説明している。この実圧縮比は実際に圧縮作用が開始されたときからピストンが上死点に達するまでの実際のピストン行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの実圧縮比は(燃焼室容積+実際の行程容積)/燃焼室容積で表される。即ち、図6(B)に示されるように圧縮行程においてピストンが上昇を開始しても吸気弁が開弁している間は圧縮作用は行われず、吸気弁が閉弁したときから実際の圧縮作用が開始される。従って実圧縮比は実際の行程容積を用いて上記の如く表される。図6(B)に示される例では実圧縮比は(50ml+450ml)/50ml=10となる。
【0033】
図6(C)は膨張比について説明している。膨張比は膨張行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの膨張比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(C)に示される例ではこの膨張比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
【0034】
次に図7および図8を参照しつつ本発明において用いられている超膨張比サイクルについて説明する。なお、図7は理論熱効率と膨張比との関係を示しており、図8は本発明において負荷に応じ使い分けられている通常のサイクルと超高膨張比サイクルとの比較を示している。
【0035】
図8(A)は吸気弁が下死点近傍で閉弁し、ほぼ吸気下死点付近からピストンによる圧縮作用が開始される場合の通常のサイクルを示している。この図8(A)に示す例でも図6の(A),(B),(C)に示す例と同様に燃焼室容積が50mlとされ、ピストンの行程容積が500mlとされている。図8(A)からわかるように通常のサイクルでは機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11であり、実圧縮比もほぼ11であり、膨張比も(50ml+500ml)/50ml=11となる。即ち、通常の内燃機関では機械圧縮比と実圧縮比と膨張比とがほぼ等しくなる。
【0036】
図7における実線は実圧縮比と膨張比とがほぼ等しい場合の、即ち通常のサイクルにおける理論熱効率の変化を示している。この場合には膨張比が大きくなるほど、即ち実圧縮比が高くなるほど理論熱効率が高くなることがわかる。従って通常のサイクルにおいて理論熱効率を高めるには実圧縮比を高くすればよいことになる。しかしながら機関高負荷運転時におけるノッキングの発生の制約により実圧縮比は最大でも12程度までしか高くすることができず、斯くして通常のサイクルにおいては理論熱効率を十分に高くすることはできない。
【0037】
一方、このような状況下で機械圧縮比と実圧縮比とを厳密に区分しつつ理論熱効率を高めることが検討され、その結果理論熱効率は膨張比が支配し、理論熱効率に対して実圧縮比はほとんど影響を与えないことが見い出されたのである。即ち、実圧縮比を高くすると爆発力は高まるが圧縮するために大きなエネルギーが必要となり、斯くして実圧縮比を高めても理論熱効率はほとんど高くならない。
【0038】
これに対し、膨張比を大きくすると膨張行程時にピストンに対し押下げ力が作用する期間が長くなり、斯くしてピストンがクランクシャフトに回転力を与えている期間が長くなる。従って膨張比は大きくすれば大きくするほど理論熱効率が高くなる。図7の破線ε=10は実圧縮比を10に固定した状態で膨張比を高くしていった場合の理論熱効率を示している。このように実圧縮比εを低い値に維持した状態で膨張比を高くしたときの理論熱効率の上昇量と、図7の実線で示す如く実圧縮比も膨張比と共に増大せしめられる場合の理論熱効率の上昇量とは大きな差がないことがわかる。
【0039】
このように実圧縮比が低い値に維持されているとノッキングが発生することがなく、従って実圧縮比を低い値に維持した状態で膨張比を高くするとノッキングの発生を阻止しつつ理論熱効率を大巾に高めることができる。図8(B)は可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bを用いて、実圧縮比を低い値に維持しつつ膨張比を高めるようにした場合の一例を示している。
【0040】
図8(B)を参照すると、この例では可変圧縮比機構Aにより燃焼室容積が50mlから20mlまで減少せしめられる。一方、可変バルブタイミング機構Bによって実際のピストン行程容積が500mlから200mlになるまで吸気弁の閉弁時期が遅らされる。その結果、この例では実圧縮比は(20ml+200ml)/20ml=11となり、膨張比は(20ml+500ml)/20ml=26となる。図8(A)に示される通常のサイクルでは前述したように実圧縮比がほぼ11で膨張比が11であり、この場合に比べると図8(B)に示される場合には膨張比のみが26まで高められていることがわかる。これが超高膨張比サイクルと称される所以である。
【0041】
一般的に言って内燃機関では機関負荷が低いほど熱効率が悪くなり、従って機関運転時における熱効率を向上させるためには、即ち燃費を向上させるには機関負荷が低いときの熱効率を向上させることが必要となる。一方、図8(B)に示される超高膨張比サイクルでは圧縮行程時の実際のピストン行程容積が小さくされるために燃焼室5内に吸入しうる吸入空気量は少なくなり、従ってこの超高膨張比サイクルは機関負荷が比較的低いときにしか採用できないことになる。従って本発明では機関負荷が比較的低いときには図8(B)に示す超高膨張比サイクルとし、機関高負荷運転時には図8(A)に示す通常のサイクルとするようにしている。
【0042】
次に図9を参照しつつ運転制御全般について概略的に説明する。図9には或る機関回転数における機関負荷に応じた吸入空気量、吸気弁閉弁時期、機械圧縮比、膨張比、実圧縮比およびスロットル弁17の開度の各変化が示されている。なお、図9は、触媒装置20内の三元触媒によって排気ガス中の未燃HC,COおよびNOXを同時に低減しうるように燃焼室5内における平均空燃比が空燃比センサ21の出力信号に基いて理論空燃比にフィードバック制御されている場合を示している。
【0043】
さて、前述したように機関高負荷運転時には図8(A)に示される通常のサイクルが実行される。従って図9に示されるようにこのときには機械圧縮比は低くされるために膨張比は低く、図9において実線で示されるように吸気弁7の閉弁時期は図5において実線で示される如く早められている。また、このときには吸入空気量は多く、このときスロットル弁17の開度は全開に保持されているのでポンピング損失は零となっている。
【0044】
一方、図9において実線で示されるように機関負荷が低くなるとそれに伴って吸入空気量を減少すべく吸気弁7の閉弁時期が遅くされる。またこのときには実圧縮比がほぼ一定に保持されるように図9に示される如く機関負荷が低くなるにつれて機械圧縮比が増大され、従って機関負荷が低くなるにつれて膨張比も増大される。なお、このときにもスロットル弁17は全開状態に保持されており、従って燃焼室5内に供給される吸入空気量はスロットル弁17によらずに吸気弁7の閉弁時期を変えることによって制御されている。
【0045】
このように機関高負荷運転状態から機関負荷が低くなるときには実圧縮比がほぼ一定のもとで吸入空気量が減少するにつれて機械圧縮比が増大せしめられる。即ち、吸入空気量の減少に比例してピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積が減少せしめられる。従ってピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は吸入空気量に比例して変化していることになる。なお、このとき図9に示される例では燃焼室5内の空燃比は理論空燃比となっているのでピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は燃料量に比例して変化していることになる。
【0046】
機関負荷が更に低くなると機械圧縮比は更に増大せしめられ、機関負荷がやや低負荷寄りの中負荷L1まで低下すると機械圧縮比は燃焼室5の構造上限界となる限界機械圧縮比(上限機械圧縮比)に達する。機械圧縮比が限界機械圧縮比に達すると、機械圧縮比が限界機械圧縮比に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では機械圧縮比が限界機械圧縮比に保持される。従って低負荷側の機関中負荷運転時および機関低負荷運転時には即ち、機関低負荷運転側では機械圧縮比は最大となり、膨張比も最大となる。別の言い方をすると機関低負荷運転側では最大の膨張比が得られるように機械圧縮比が最大にされる。
【0047】
一方、図9に示される実施例では機関負荷がL1まで低下すると吸気弁7の閉弁時期が燃焼室5内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期となる。吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達すると吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持される。
【0048】
吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持されるともはや吸気弁7の閉弁時期の変化によっては吸入空気量を制御することができない。図9に示される実施例ではこのとき、即ち吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域ではスロットル弁17によって燃焼室5内に供給される吸入空気量が制御され、機関負荷が低くなるほどスロットル弁17の開度は小さくされる。
【0049】
一方、図9において破線で示すように機関負荷が低くなるにつれて吸気弁7の閉弁時期を早めることによってもスロットル弁17によらずに吸入空気量を制御することができる。従って、図9において実線で示される場合と破線で示される場合とをいずれも包含しうるように表現すると、本発明による実施例では吸気弁7の閉弁時期は、機関負荷が低くなるにつれて、燃焼室内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期L1まで吸気下死点BDCから離れる方向に移動せしめられることになる。このように吸入空気量は吸気弁7の閉弁時期を図9において実線で示すように変化させても制御することができるし、破線に示すように変化させても制御することができる。
【0050】
前述したように図8(B)に示す超高膨張比サイクルでは膨張比が26とされる。この膨張比は高いほど好ましいが図7からわかるように実用上使用可能な下限実圧縮比ε=5に対しても20以上であればかなり高い理論熱効率を得ることができる。従って本実施例では膨張比が20以上となるように可変圧縮比機構Aが形成されている。
【0051】
ところで、全気筒へ供給される吸気量の合計は、吸入空気量検出器18により検出することができ、機関運転状態(機関回転数及び機関負荷)毎に、吸気弁7の閉弁時期の制御又はスロットル弁17の開度制御により所望の合計吸気量を実現することにより、各気筒の燃料噴射弁13により所望量の燃料が供給されれば、排気マニホルド19の排気合流部より下流側においては、空燃比センサ21により検出される排気ガスの空燃比を所望空燃比(例えば、理論空燃比)に制御することができる。
【0052】
しかしながら、機関運転状態毎の所望の合計吸気量が各気筒へ均一に分配されているとは限らず、各気筒において吸気量がばらついていることがあり、その結果、少なくとも二つの気筒においては所望空燃比の意図する燃焼が実現されていないことがある。特に、本実施例のように、可変バルブタイミング機構Bによって各気筒の吸気弁7の閉弁時期を制御する場合には、吸気弁の閉弁時期の僅かなずれによって、各気筒の吸気量がばらつくこととなる。また、本実施例のように、可変圧縮比機構Aによって機械圧縮比が高くされて上死点の燃焼室容積が小さくされている場合には、吸気弁7の閉弁時期の僅かなずれに対する各気筒の吸気量のばらつきは顕著となる。
【0053】
各気筒において燃料噴射弁13から気筒内へ供給される燃料量は均一に制御し易いために、各気筒へは所望燃料量が供給されているとすることができ、吸気量が所望吸気量より多い気筒では発生トルクが大きくなり、吸気量が所望吸気量より少ない気筒では発生トルクが小さくなる。それにより、各気筒の発生トルクを検出することにより、各気筒の吸気量のばらつきを検出することが考えられるが、各気筒の吸気量が僅かしか違わない場合には、各気筒の発生トルクには十分な違いが発生せず、単に各気筒の発生トルクを検出しても各気筒の吸気量のばらつきを検出することができないことがある。
【0054】
本実施例の火花点火内燃機関は、電子制御ユニット30によって図10に示すフローチャートに従って可変圧縮比機構A及び点火栓6を制御することにより各気筒の吸気量のばらつきを検出するようになっている。
【0055】
先ず、ステップ101において、現在の機関運転状態がアイドル運転であるか否かが判断される。例えば、車両停止中において負荷センサ41により検出されるアクセルペダル40の踏込み量が零(0)であり、すなわち、アクセルペダルが踏み込まれておらず、クランク角センサ42により機関回転数が検出されれば、アイドル運転中であると判断することができる。この判断が否定されるときにはそのまま終了するが、アイドル運転中であるときには、ステップ101の判断は肯定されてステップ102へ進む。
【0056】
ステップ102では、フラグFが1であるか否かが判断される。各気筒の吸気量のばらつきを検出する際には、フラグFは1とされる。例えば、機関運転毎に、又は、複数回の機関運転毎に、一度だけフラグFは1とされる。機関始動直後のアイドル運転は、燃焼が不安定であるために、各気筒の吸気量のばらつきを正確に検出することは困難であり、フラグFを1としないことが好ましい。ステップ102の判断が否定されるときにはそのまま終了するが、各気筒の吸気量のばらつきを検出する際には、ステップ102の判断は肯定され、ステップ103において、目標機械圧縮比EtをE1とする。
【0057】
機関始動直後ではなく燃焼が安定しているアイドル運転時には、吸気弁の閉弁時期は最大に遅角されていると共に、スロットル弁は最小開度とされている(図9参照)。また、アイドル運転時の実圧縮比は、振動を抑制するために、機械圧縮比を上限値より小さなアイドル機械圧縮比E0とすることにより、図9に示す一定値より低くされている。
【0058】
ステップ103において目標機械圧縮比Etとされた機械圧縮比E1は、アイドル機械圧縮比E0より高い機械圧縮比であり、好ましくは、機械圧縮比の上限値である。次いで、ステップ104において、可変圧縮比機構Aにより機械圧縮比Eを高めるように制御する。その際に、各気筒において吸気量は変化させておらず、機械圧縮比Eが高められることにより実圧縮比が高められるために、各気筒において混合気を良好に着火燃焼可能な点火時期の遅角限界が遅角側へ拡大する。ステップ105では、各気筒の点火時期ITを現在の実圧縮比に対する遅角限界とするように制御する。次いで、ステップ106では、機械圧縮比Eが目標機械圧縮比Et(E1)となったか否かが判断され、この判断が肯定されるまで、ステップ104及び105の処理が繰り返される。
【0059】
図11は、アイドル運転時の点火時期ITと一気筒の発生トルクとの関係を示すグラフであり、実線は気筒内へアイドル運転時の所望吸気量が供給されている場合であり、点線は気筒内へアイドル運転時の所望吸気量より僅かに多い吸気が供給されている場合であり、一点鎖線は気筒内へアイドル運転時の所望吸気量より僅かに少ない吸気が供給されている場合である。実線、点線、及び、一点鎖線のいずれの場合においても、気筒内へはアイドル運転時の所望燃料量が供給されている。所望燃料量が供給されている場合には、気筒へ供給される吸気量が多いほど発生トルクは大きくなる。
【0060】
IT0は、アイドル運転時の全気筒共通の最適点火時期であり、実線で示すアイドル運転時の所望吸気量の吸気が供給されている気筒だけでなく、点線で示すアイドル運転時の所望吸気量より僅かに多い吸気が供給されている気筒においても、一点鎖線で示す気筒内へアイドル運転時の所望吸気量より僅かに少ない吸気が供給されている気筒においても、最適点火時期IT0において、発生トルクがほぼ最大となる。図11に示すように、点火時期が最適点火時期IT0に制御されているときには、各気筒の吸気量の違いが僅かであると、各気筒の発生トクルは殆ど差がなく、このような各気筒の僅かな発生トルク差を正確に検出することは困難である。
【0061】
しかしながら、図11に示すように、点火時期を最適点火時期IT0から遅角するほど、各気筒の吸気量の違いが僅かであっても、各気筒の発生トクルの違いは顕著になり、各気筒の発生トルク差を正確に検出し易くなる。そのために、図10に示すフローチャートでは、ステップ105において点火時期を遅角しており、点火時期を遅角しても混合気を確実に着火燃焼させるために、ステップ104において機械圧縮比を高めることにより実圧縮比を高めている。
【0062】
ステップ106の判断が肯定されるときには、機械圧縮比Eは目標機械圧縮比Etまで高められ、点火時期ITは、このときの遅角限界IT1まで遅角されており、各気筒の発生トクル差は大きくされている。それにより、ステップ107において、各気筒の発生トルクに基づく値として、各気筒のTDC時間Tiが検出される。例えば、点火順序が#1気筒、#3気筒、#4気筒、#2気筒の場合において、#1気筒のTDC時間T1は、#1気筒の圧縮上死点から#3気筒の圧縮上死点までの時間であり、#2気筒のTDC時間T2は、#2気筒の圧縮上死点から#1気筒の圧縮上死点までの時間であり、#3気筒のTDC時間T3は、#3気筒の圧縮上死点から#4気筒の圧縮上死点までの時間であり、#4気筒のTDC時間T4は、#4気筒の圧縮上死点から#2気筒の圧縮上死点までの時間である。
【0063】
TDC時間Tiが短い気筒ほど、発生トルクが大きいこととなる。各気筒のTDC時間Tiに基づき、各気筒のTDC時間比ΔTiが算出される。#1気筒のTDC時間比ΔT1は、(#1気筒のTDC時間T1−TDC時間平均)/TDC時間平均により算出され、#2気筒のTDC時間比ΔT2は、(#2気筒のTDC時間T2−TDC時間平均)/TDC時間平均により算出され、#3気筒のTDC時間比ΔT3は、(#3気筒のTDC時間T3−TDC時間平均)/TDC時間平均により算出され、#4気筒のTDC時間比ΔT4は、(#4気筒のTDC時間T4−TDC時間平均)/TDC時間平均により算出される。ここで、TDC時間平均は、TDC時間Tiの平均値であり、(T1+T2+T3+T4)/4により算出され、所望量の吸気が供給された気筒のTDC時間となる。
【0064】
TDC時間比ΔTiが正である気筒は、所望空気量より少ない吸気が供給されている気筒であり、TDC時間比ΔTiの絶対値が大きいほど少量の吸気しか供給されていないこととなる。TDC時間比ΔTiが零である気筒は、所望空気量の吸気が供給されている気筒である。TDC時間比ΔTiが負である気筒は、所望空気量より多い吸気が供給されている気筒であり、TDC時間比ΔTiの絶対値が大きいほど多量の吸気が供給されていることとなる。こうして算出される各気筒のTDC時間比ΔTiが全て零でなければ、各気筒の吸気量がばらついていると判断することができ、各気筒のTDC時間比ΔTiに基づき各気筒へ供給されている吸気量を推定することができる。
【0065】
次いで、ステップ108において、各気筒のTDC時間比ΔTiに基づき、例えば、図12に示すマップから各気筒の吸気量ずれ率Ci(%)を決定する。TDC時間Tiの測定などにおける誤差を排除するために、TDC時間比ΔTiが零近傍である気筒は、吸気量ずれ率Ciは0%とされる。吸気量ずれ率Ciは、TDC時間比ΔTiが零近傍である場合を除いて、TDC時間比ΔTiが正であるときには吸気量不足を示す負とされ、TDC時間比ΔTiが負であるときには吸気量過多を示す正とされ、TDC時間比ΔTiの絶対値が大きいほど、吸気量ずれ率の絶対値も大きくされる。こうして決定される各気筒の吸気量ずれ量Ciが全て零でなければ、各気筒の吸気量がばらついていると判断することができ、各気筒の吸気量ずれ率Ciに基づき各気筒へ供給されている吸気量を推定することができる。図12に示すマップは、アイドル運転時に実圧縮比を高めて点火時期を遅角限界IT1まで遅角させた場合のTDC時間比ΔTiに対して吸気量ずれ率Ciを決定するための特有のマップである。
【0066】
次いで、ステップ109においては、各気筒の空燃比を所望空燃比とするために、各気筒の燃料噴射補正係数Kiが算出される。各気筒の燃料噴射補正係数Kiは、1+Ci−dにより算出され、ここで、dは各気筒の吸気量ずれ率Ciの平均値である(d=(C1+C2+C3+C4)/4)。各気筒の吸気量のばらつきが発生していても、各気筒の平均吸気量は所望吸気量となっていることが前提となっているために、dによる補正が必要とされる。例えば、#1気筒の吸気量ずれ率C1が4%(0.04)であり、#2気筒から#4気筒の吸気量ずれ率C2、C3、及びC4が0%(0)である場合には、dは1%となり、#1気筒の燃料噴射補正係数K1は1.03となり、#2気筒から#4気筒の燃料噴射補正係数K2、K3、及びK4は、0.09となる。
【0067】
それにより、#1気筒では供給される燃料が3%増量され、#2気筒から#4気筒では供給される燃料が1%減量される。それにより、各気筒の発生トルク差は、吸気量の違いだけなく、吸気量が多いほど燃料量も多くされるために、各気筒の発生トルク差は大きくなる。しかしながら、各気筒において所望空燃比での燃焼を実現することができる。各気筒の発生トルク差を大きくしない方が好ましい場合には、ステップ109の処理を省略すれば良い。次いで、ステップ110において、各気筒の吸気量のばらつきは検出されたために、フラグFは0とされ終了する。
【0068】
アイドル運転時は、機関回転数が低いために、各気筒の発生トルクに基づく値であるTDC時間Tiが長くなって正確に測定し易くなる。また、吸気量が少ないために、吸気弁の閉弁時期の僅かなずれに対して吸気量のばらつきが大きくなるために、吸気量のばらつきを検出し易くなる。それにより、本実施例では、アイドル運転時に各気筒の吸気量のばらつきを検出するようにしている。
【0069】
しかしながら、これは本発明を限定するものではなく、アイドル運転時以外の定常運転時において同様に各気筒の吸気量のばらつきを検出するようにしても良い。この場合において、各気筒の発生トルク差が現在の最適点火時期において小さくても、アイドル時と同様に、機械圧縮比を高めて実圧縮比を高めることにより可能となる点火時期の遅角によって、各気筒の発生トルク差を大きくすることができ、各気筒の発生トルクに基づく値から各気筒の吸気量のばらつきを確実に検出することができる。
【0070】
この際に、各気筒の吸気量ずれ率Ciまで算出することが必要ならば、吸気量のばらつきを検出するときの機関運転状態において実圧縮比を高めて点火時期を特定遅角限界IT’まで遅角させた場合のTDC時間比ΔTiに対して吸気量ずれ率Ciを決定するための図12に示すようなマップを予め設定しておけば良い。
【符号の説明】
【0071】
1 クランクケース
2 シリンダブロック
6 点火栓
A 可変圧縮比機構
B 可変バルブタイミング機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変圧縮比機構を具備する火花点火内燃機関において、各気筒の吸気量のばらつきを検出する際には、各気筒の吸気量を変化させずに前記可変圧縮比機構により機械圧縮比を高めると共に点火時期を遅角し、各気筒の発生トルクに基づく値を測定することを特徴とする火花点火内燃機関。
【請求項2】
アイドル運転時に各気筒の吸気量のばらつきを検出することを特徴とする請求項1に記載の火花点火内燃機関。
【請求項1】
可変圧縮比機構を具備する火花点火内燃機関において、各気筒の吸気量のばらつきを検出する際には、各気筒の吸気量を変化させずに前記可変圧縮比機構により機械圧縮比を高めると共に点火時期を遅角し、各気筒の発生トルクに基づく値を測定することを特徴とする火花点火内燃機関。
【請求項2】
アイドル運転時に各気筒の吸気量のばらつきを検出することを特徴とする請求項1に記載の火花点火内燃機関。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−149629(P2012−149629A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10978(P2011−10978)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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