説明

炊飯器およびそれに用いるオーブン容器

【課題】簡単にオーブン加熱を可能にする。
【解決手段】従来と同様の炊飯動作が可能な炊飯器の内鍋3に、金属よりも熱容量が大きい陶器で形成されると共に、外周面にフランジ部19,碍子22a,22b,22cおよび碍子23が設けられたオーブン容器18を収納する。その際に、内鍋3の内面にフランジ部19,碍子22a,22b,22cおよび碍子23が当接して、内鍋3とオーブン容器18との間に均一な間隔を有する空間24が形成される。したがって、全体が略均一に加熱された上記空間内の空気によってオーブン容器18の全体を略均一に加熱することができる。その結果、オーブン容器18の内部温度が略均一となり、表面に美味しそうな焼き目が付けられたパンを焼き上げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オーブン加熱が可能な炊飯器およびそれに用いるオーブン容器に関する。
【背景技術】
【0002】
パンの焼き上げを簡易的に行う制御モードを備えた電気炊飯器として、特開2004‐275478号公報(特許文献1)に開示されたパン焼き上げモード付電気炊飯器がある。このパン焼き上げモード付電気炊飯器においては、ケース本体と、このケース本体の上部開口内に着脱自在に装着される内釜と、上記ケース本体の上部開口を開閉する蓋部材とを備えている。そして、炊飯メニューが選択されると、マイクロコンピュータ(MPU)によって誘導加熱(IH)コイルが駆動されて、米と水とが入れられた上記内釜が加熱され、温度が制御される。こうして、米の炊き上げ,蒸らしおよび保温が行われる。
【0003】
一方、パン発酵モードが選択されると、練り上げられたパン生地が入れられた上記内釜が上記MPUによって加熱制御され、パン生地の発酵および保温が行われる。引き続き、パン焼き上げモードが選択されると、上記MPUによって上記IHコイル,側面ヒータおよび上部ヒータが制御されて、発酵されたパン生地が入れられた上記内釜が加熱制御される。ここで、上記側面ヒータは、上記内釜の側部に設けられた保温用のヒータである。また、上記上部ヒータは、上記蓋部材の内蓋を加熱して結露を防止するヒータである。こうして、パン焼き上げおよびパン保温が行われる。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来のパン焼き上げモード付電気炊飯器においては、以下のような問題がある。
【0005】
すなわち、上記パン焼き上げモード付電気炊飯器では、米を炊く上記内釜に直接発酵されたパン生地を入れて上記IHコイルによって加熱するようにしている。この場合、上記内釜の温度は、上記IHコイルの直上が局所的に高くなる。そのため、その部分が過加熱状態となって焦げ、パン全体を均一に焼くことができないという問題がある。尚、この問題は、パンのみならず、上記内釜内に薩摩芋等の食品を直接入れてオーブン加熱する場合に生ずることであり、どうしても過加熱の部分と非過加熱の部分との焼け状態の落差が大きくなる。
【0006】
すなわち、通常、炊飯器は御飯を炊くために開発されたものであるため、上記内釜(内鍋)を直接加熱して加熱効率を高めて高火力化を実現するようになっている。そのため、水に浸されていないパン等の半固形物を加熱する場合には熱拡散が悪く、焼き斑が生じやすいのである。
【0007】
そのため、上記パン焼き上げモード付電気炊飯器においては、オーブン加熱時には、上記IHコイルに加えて、上記側面ヒータおよび上記上部ヒータをも駆動制御するようにしており、上記MPUによる加熱制御が複雑になるという問題がある。尚、上述の問題は、上記内釜を直接ヒータ上に乗せて熱伝導で加熱する構成の炊飯器の場合も同様に生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004‐275478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明の課題は、簡単にオーブン加熱が可能な炊飯器およびそれに用いるオーブン容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明の炊飯器は、
炊飯を行うための内鍋と、
上記内鍋が収納される炊飯器本体と、
上記炊飯器本体内に配置されると共に、上記内鍋を加熱する加熱部と、
上記内鍋内に出し入れ可能に収納されると共に、オーブン加熱を行うためのオーブン容器と、
上記オーブン容器が上記内鍋内に収納された際に、上記内鍋と上記オーブン容器との間に空気の層を形成する空気層形成部材と
を備えたことを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、オーブン加熱を行う食材が入れられたオーブン容器を炊飯器の内鍋内に収納し、炊飯器本体内に配置された加熱部によって上記内鍋を加熱して、上記食材に対してオーブン加熱が行われる。その際に、空気層形成部材によって、上記内鍋と上記オーブン容器との間に空気の層が形成される。
【0012】
したがって、上記オーブン容器は、上記内鍋を介して略均一に加熱された熱容量が大きい上記空気の層で包まれることになり、上記オーブン容器の内部温度が略均一となる。その結果、オーブン加熱を行う食材を上記内鍋内に直接入れた場合のように、上記オーブン容器における上記加熱部近傍の内部に過加熱された部分が生ずることがなく、上記オーブン容器内の食材が過加熱の部分で焦げることなく略均一に加熱される。
【0013】
こうして、上記食材全体の温度を所定温度に継続して安定に保つことができ、焼き斑が少なく、上記食材の表面に美味しそうな焼き目を付けることが可能なオーブン加熱調理を行うことができるのである。
【0014】
一方、炊飯を行う場合には、上記オーブン容器を炊飯器の上記内鍋から取りだし、米と水とを直接上記内鍋内に入れ、上記加熱部によって上記内鍋を加熱することによって従来と同様に行われる。
【0015】
また、1実施の形態の炊飯器では、
上記空気層形成部材は、
上記オーブン容器の上端部に設けられると共に、外方向に向かって水平に延在して、上記オーブン容器が上記内鍋内に収納された際に上記内鍋の内壁に先端が当接するフランジ部と、
上記オーブン容器の外壁面および上記内鍋の内壁面の何れか一方に設けられて、上記オーブン容器が上記内鍋内に収納された際に、上記オーブン容器の外壁面および上記内鍋の内壁面の他方に当接して、上記オーブン容器と上記内鍋との間に所定間隔の空間を形成する空間形成部材と
を含んでいる。
【0016】
この実施の形態によれば、上記オーブン容器の上端部には、上記オーブン容器が上記内鍋内に収納された際に上記内鍋の内壁に先端が当接するフランジ部が設けられており、上記オーブン容器の外壁面および上記内鍋の内壁面の何れか一方には、上記オーブン容器が上記内鍋内に収納された際に、上記オーブン容器の外壁面および上記内鍋の内壁面の他方に当接する空間形成部材が設けられている。したがって、上記オーブン容器を上記内鍋内に収納するだけで、自動的に、上記内鍋と上記オーブン容器との間に、所定の隙間を有する空気の層が形成される。
【0017】
また、1実施の形態の炊飯器では、
上記オーブン容器には、当該オーブン容器を上記内鍋内に出し入れする際に用いる取っ手が設けられる。
【0018】
この実施の形態によれば、上記取っ手を持つことによって、火傷等の危険性がなく安全に、且つ操作性良く、上記オーブン容器を上記内鍋内に出し入れすることができる。
【0019】
また、1実施の形態の炊飯器では、
上記オーブン加熱を選択するための選択キーと、
上記選択キーによって上記オーブン加熱が選択された場合に、上記加熱部による上記内鍋の加熱動作を、上記炊飯を行う場合の加熱動作とは異なるように制御する加熱制御部と
を備えている。
【0020】
この実施の形態によれば、上記オーブン加熱が選択された場合には、加熱制御部によって、上記加熱部による上記内鍋の加熱動作を、上記炊飯を行う場合の加熱動作とは異なるように制御するようにしている。したがって、例えば、加熱制御部による炊飯時の加熱動作が、1KWの電力で、給水時には60℃に、炊き上げ時には略100℃に、蒸らし時には略107℃に制御するようになっているため、オーブン加熱時に理想温度180℃を得ようとすると安全装置が機能する場合であっても、例えば300Wの電力で、上記オーブン容器内の温度を略150℃に維持するように制御することが可能になる。したがって、従来の炊飯器の構成で、理想的なオーブン加熱調理を行うことが可能になる。
【0021】
また、この発明は、
炊飯を行うための内鍋と、上記内鍋が収納される炊飯器本体と、上記炊飯器本体内に配置されて上記内鍋を加熱する加熱部とを含む炊飯器に用いられて、オーブン加熱を可能にするオーブン容器であって、
上記炊飯器の上記内鍋内に出し入れ可能に収納されると共に、
上記内鍋内に収納された場合に、上記内鍋との間に空気の層を形成する空気層形成部材を有する
ことを特徴としている。
【0022】
上記構成によれば、オーブン加熱を行う食材が入れられたオーブン容器を、内鍋と炊飯器本体と加熱部とを含む市販されている公知の炊飯器の上記内鍋内に収納し、上記加熱部によって上記内鍋を加熱することによって、上記食材に対してオーブン加熱が行われる。その際に、空気層形成部材によって、上記内鍋と上記オーブン容器との間に空気の層が形成される。
【0023】
したがって、上記オーブン容器は、上記内鍋を介して略均一に加熱される熱容量が大きい上記空気の層で包まれることになり、上記オーブン容器の内部温度が略均一となる。その結果、オーブン加熱を行う食材を上記炊飯器の上記内鍋に直接入れた場合のように、上記オーブン容器における上記加熱部近傍の内部に過加熱された部分が生ずることがなく、上記オーブン容器内の食材が過加熱の部分で焦げることなく略均一に加熱される。
【0024】
こうして、上記食材全体の温度を所定温度に継続して安定に保つことができ、焼き斑が少なく、上記食材の表面に美味しそうな焼き目を付けることが可能なオーブン加熱調理を行うことができるのである。
【発明の効果】
【0025】
以上より明らかなように、この発明の炊飯器は、オーブン加熱を行う食材が入れられたオーブン容器を内鍋内に収納し、炊飯器本体内に配置された加熱部によって上記内鍋を加熱して、上記食材に対してオーブン加熱を行う際に、空気層形成部材によって、上記内鍋と上記オーブン容器との間に空気の層を形成するので、上記オーブン容器を、上記内鍋を介して略均一に加熱された熱容量が大きい上記空気の層で包むことができ、上記オーブン容器の内部温度を略均一にできる。したがって、上記オーブン容器における上記加熱部近傍の内部が過加熱状態になることがなく、上記オーブン容器内の食材が、過加熱の部分で焦げることを防止できる。
【0026】
すなわち、この発明によれば、上記食材全体の温度を所定温度に安定して保つことによって、焼き斑が少なく、上記食材の表面に美味しそうな焼き目を付けることが可能なオーブン加熱調理を行うことができる。
【0027】
また、この発明のオーブン容器は、オーブン加熱を行う食材を入れて炊飯器の内鍋内に収納し、上記炊飯器の加熱部によって上記内鍋を加熱して、上記食材に対してオーブン加熱を行う際に、空気層形成部材によって、上記内鍋と上記オーブン容器との間に空気の層を形成するので、上記オーブン容器を、上記内鍋を介して略均一に加熱された熱容量が大きい上記空気の層で包むことができ、上記オーブン容器の内部温度を略均一にできる。したがって、上記オーブン容器における上記加熱部近傍の内部が過加熱状態になることがなく、上記オーブン容器内の食材が、過加熱の部分で焦げることを防止できる。
【0028】
すなわち、この発明によれば、オーブン加熱を行う食材を入れて市販されている公知の炊飯器の内鍋内に収納するだけで、上記食材全体の温度を所定温度に安定して保って、焼く斑が少なく、上記食材の表面に美味しそうな焼き目を付けることが可能なオーブン加熱調理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の炊飯器における概略断面図である。
【図2】図1における内鍋とオーブン容器との平面図である。
【図3】図2におけるA‐A'矢視断面図である。
【図4】図2および図3とは異なる内鍋とオーブン容器との断面図である。
【図5】図2〜図4とは異なる内鍋とオーブン容器との平面図である。
【図6】図5におけるB‐B'矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0031】
・第1実施の形態
図1は、本実施の形態のオーブン加熱が可能な炊飯器における概略断面図である。
【0032】
上記炊飯器は、炊飯器本体1と、この炊飯器本体1に開閉自在に取り付けられた蓋体2と、炊飯器本体1に収納され、例えば米や水を収容する有底円筒形状の内鍋3とを備えている。尚、上記米および水は被加熱物の一例である。
【0033】
上記炊飯器本体1は、外ケース4と、内鍋3が収納される内ケース5とを有している。また、炊飯器本体1にはラッチ機構(図示せず)が設けられており、蓋体2は上記ラッチ機構によって解除可能に係止されて閉じた状態となる。そして、この状態で、フックボタン6を押すと、上記ラッチ機構の係止が解除されて、コイルバネ(図示せず)の付勢力によって蓋体2が開くようになっている。
【0034】
上記外ケース4の前面上側には液晶表示部7が設けられている。また、外ケース4における液晶表示部7の上側には操作ボタン8が設けられている。そして、液晶表示部7には調理メニューや調理状況等が表示され、操作ボタン8の押圧によって液晶表示部7の表示変更あるいは調理メニュー(炊飯やオーブン加熱等)の選択が行われる。
【0035】
上記内ケース5は耐熱性と電気絶縁性を有する材料で形成されており、底部の中央部には穴5aが形成されている。この内ケース5の穴5aにはコイルバネ9が挿通され、このコイルバネ9の下端は外ケース4の底部の内側に取り付け固定される一方、内ケース5内に位置する上端には可動部材10が取り付けられている。さらに、可動部材10の上部には接触式の温度センサ11が取り付けられている。また、内ケース5の底部内側には可動部材10を取り囲むように伝熱板12が設置されており、伝熱板12の上面は内鍋3の底面に密着できるような形状を有している。尚、伝熱板12内には環状のヒータ13が埋め込まれており、ヒータ13の熱によって伝熱板12を介して内鍋3の底部3aを加熱するようになっている。
【0036】
上記内ケース5,コイルバネ9,可動部材10,温度センサ11および伝熱板12の構成において、内鍋3を内ケース5に収納すると、温度センサ11と伝熱板12の上面とが内鍋3の底部3aの外面(底面)に接触する。その際に、コイルバネ9は可動部材10を上方に付勢しているため、温度センサ11が内鍋3の底部3aに確実に接触する。ここで、コイルバネ9のバネ定数が大き過ぎると、内鍋3の底部3aが伝熱板12から浮き上がってしまう。そこで、コイルバネ9のバネ定数は、内鍋3の底部3aが伝熱板12の上面に確実に密着し、且つ温度センサ11が内鍋3の底部3aに確実に接触するように調整されている。
【0037】
上記蓋体2は、炊飯器本体1に回動自在に支持された外蓋14と、その外蓋14の内鍋3側に着脱自在に取り付けられた内蓋15とで構成されている。そして、蓋体2を閉じた際に、パッキン16によって内蓋15と内鍋3のフランジ部3bとの間がシールされるようになっている。17は、操作ボタン8からの操作信号を受けて液晶表示部7やヒータ13等を制御する制御部である。
【0038】
上記内鍋3は、上端部が開口しており、この開口の周囲に設けられた環状のフランジ部3bと、このフランジ部3bの内周縁部から鉛直下方に延在する円筒状の周壁部3cと、この周壁部3cの下端に湾曲して連なる底部3aとを有している。この内鍋3は、例えばアルミニウム等の高熱伝導部材で形成され、内面には被加熱物の付着を防ぐためのフッ素樹脂がコーティングされている。
【0039】
以上の構成は、公知の炊飯器の構成と全く同様である。
【0040】
本実施の形態においては、上記内鍋3内に出し入れ可能に収納されると共に、内鍋3の内面との間に空間を形成するオーブン容器18を備えている。以下、本実施の形態の特徴であるオーブン容器18について、詳細に説明する。
【0041】
図2は、上記内鍋3と内鍋3内に収納されたオーブン容器18との拡大平面図である。また、図3は、図2におけるA‐A'矢視断面図である。上述したように、オーブン容器18は、内鍋3内に出し入れ可能に収納される。そして、炊飯を行う場合には、オーブン容器18を内鍋3内から取り出し、内鍋3内に直接米および水を入れる。また、本炊飯器によってオーブン加熱を行う場合には、オーブン容器18を内鍋3内に装着し、オーブン容器18内に、例えばパンを焼く際には発酵させたパン生地を入れる。
【0042】
上記オーブン容器18は、内鍋3を一回り小さくしたような内鍋3とは相似形の断面形状を有している。すなわち、オーブン容器18の上端部は開口しており、この開口の周囲には環状のフランジ部19を有している。さらに、フランジ部19の内周縁部から鉛直下方に延在する円筒状の周壁部20と、この周壁部20の下端に湾曲して連なる底部21とを有している。そして、オーブン容器18を内鍋3内に収納した際には、フランジ部19の外周縁は、内鍋3における周壁部3cの内面に接触するようになっている。このオーブン容器18は、金属よりも熱容量が大きい例えば陶器で形成されている。
【0043】
また、上記オーブン容器18の周壁部20における外周面には、周方向に等間隔に3つの球状の碍子22a,22b,22cが設けられている。そして、オーブン容器18を内鍋3内に収納した際には、3つの碍子22a,22b,22cは、内鍋3における周壁部3cの内面に当接するようになっている。さらに、オーブン容器18の底部21における中央の外面には、球状の碍子23が設けられている。そして、オーブン容器18を内鍋3内に収納した際には、碍子23は、内鍋3における底部3aの内面に当接するようになっている。
【0044】
したがって、上記フランジ部19,碍子22a,22b,22cおよび碍子23の機能によって、オーブン容器18を内鍋3内に収納した場合には、内鍋3とオーブン容器18との間には、碍子22a,22b,22cおよび碍子23の直径分の均一な間隔の空間24が形成されることになる。尚、その場合における内鍋3とオーブン容器18との間隔は、略5mm程度が望ましい。
【0045】
すなわち、本実施の形態においては、上記フランジ部19,碍子22a,22b,22cおよび碍子23によって、特許請求の範囲における上記空気層形成部材および上記空間形成部材を構成するのである。
【0046】
上記構成において、オーブン加熱を行う場合には、例えばパンを焼く際には発酵させたパン生地が入れられたオーブン容器18が、内鍋3内に装着される。そして、操作ボタン8によって、オーブン加熱が選択されると、操作ボタン8からの操作信号を受けた制御部17によってヒータ13が駆動され、ヒータ13の熱によって伝熱板12を介して内鍋3の底部3aが加熱される。さらに、上述したように内鍋3は高熱伝導部材で形成されているため、底部3aの熱が速やかに周壁部3cに伝達され、内鍋3が略均一に加熱される。
【0047】
そうすると、上記内鍋3とオーブン容器18との間に形成された均一な空間24内の空気が略均一に加熱される。そして更に、全体が略均一に加熱された内鍋3とオーブン容器18との間の空気によってオーブン容器18が、全体に略均一に加熱されることになる。その結果、オーブン容器18が熱容量の大きい陶器で形成されており、且つオーブン容器18の周囲全体が熱容量の大きい空気で包まれていることと相まって、オーブン容器18の内部温度が略均一となり、パン生地全体の温度を100℃以上の所定温度に約1時間継続させることが可能になる。したがって、焼き斑が少なく、表面に美味しそうな焼き目が付けられたパンを焼き上げることができるのである。
【0048】
その際に、上記オーブン容器18のフランジ部19における外周縁は、上記内鍋3の周壁部3cにおける内面に単に接触しているだけである。同様に、オーブン容器18の碍子22a,22b,22cは内鍋3の周壁部3cにおける内面に、オーブン容器18の碍子23は内鍋3の底部3aにおける内面に、夫々単に接触しているだけである。したがって、内鍋3とオーブン容器18との間の空気が加熱によって膨張した際に、圧力がオーブン容器18のフランジ部19と内鍋3の周壁部3cとの間から逃がされる。
【0049】
こうして、簡単な構造によって、安全に、均一な焼き目が付けられたパンが焼き上げられるのである。
【0050】
ところで、御飯を炊く炊飯モードおよびパンやお菓子を焼くオーブン加熱モードでは、温度センサ11からの温度信号に基づいて制御部17によってヒータ13を制御して、内鍋3の温度が設定される。そして、通常、炊飯モードでは、米に吸水させる吸水時には内鍋3内の温度を60℃に保ち、昇温時には内鍋3内の温度が100℃に昇温され、炊き上げ時には沸騰状態を維持するために内鍋3内の温度が略100℃に保たれ、内鍋3内の水が無くなって120℃に到達すると蒸らしに移行し、蒸らし時には内鍋3内の温度が略107℃に保たれる。
【0051】
これに対し、上記オーブン加熱モードでは、食品の表面に均一な焼き目を付ける場合には、オーブン容器18内の温度を略180℃にするのが理想である。ところが、上述のような炊飯モードでのヒータ13制御がメインになっている炊飯器の構成で、オーブン容器18内の温度を略180℃まで上げようとすると、ヒューズ等の安全装置が機能するため温度制御ができなってしまう。
【0052】
そこで、本実施の形態においては、上記オーブン加熱モード時には、御飯を炊く場合の熱量である1KWよりも低い300Wの電力で、オーブン容器18内の温度も180℃より低い150℃を維持するようにヒータ13を制御するのである。
【0053】
すなわち、上記操作ボタン8によって、炊飯モードとオーブン加熱モードとを切り換え選択するようにしておく。そして、炊飯モードが選択された場合には、上記吸水,昇温,炊き上げおよび蒸らしの各動作が可能なように制御部17によってヒータ13を制御する。また、オーブン加熱モードが選択された場合には、300Wの電力で、オーブン容器18内の温度が150℃を維持するように、制御部17によってヒータ13を制御するのである。
【0054】
以上のごとく、本実施の形態によれば、従来と同様の炊飯動作が可能な炊飯器の内鍋3内に、金属よりも熱容量が大きい例えば陶器で形成されると共に、内鍋3内に収納した際に内鍋3の内面に当接して空間24を形成するフランジ部19,碍子22a,22b,22cおよび碍子23が設けられたオーブン容器18を収納するだけで、簡単にオーブン容器18内の食品をオーブン加熱することができる。
【0055】
その際に、上記内鍋3とオーブン容器18との間に均一な間隔を有する空間24を形成することができ、上記空間24内の空気を略均一に加熱することができる。したがって、全体が略均一に加熱された空間24内の空気によって、オーブン容器18の全体を略均一に加熱することができる。その結果、オーブン容器18が熱容量の大きい陶器で形成されており、且つオーブン容器18の周囲全体が熱容量の大きい空気で包まれていることと相まって、オーブン容器18の内部温度が略均一となり、パン生地全体の温度を100℃以上の略150℃に約1時間継続させることが可能になる。したがって、焼き斑が少なく、表面に美味しそうな焼き目が付けられたパンを焼き上げることができるのである。
【0056】
尚、本実施の形態においては、パンを焼き上げる場合を例にオーブン容器18を用いたオーブン加熱について説明している。しかしながら、パンに限らず、薩摩芋やお菓子を焼くことも可能であることは言うまでもない。
【0057】
・第2実施の形態
本実施の形態における炊飯器本体,蓋体および内鍋は、上記第1実施の形態における炊飯器本体1,蓋体2および内鍋3と同じ構成を有している。そこで、上記炊飯器本体,上記蓋体および上記内鍋の詳細な説明は省略する。また、以下の説明において、上記内鍋に関して、必要に応じ上記第1実施の形態で用いた番号と同じ番号を用いる。
【0058】
本実施の形態は、上記内鍋3内に出し入れ可能に収納されると共に、内鍋3の内面との間に空間を形成するオーブン容器に、取っ手を設けた点を特徴としている。尚、本実施の形態における上記オーブン容器は、上記第1実施の形態におけるオーブン容器18と基本構成は全く同じである。そこで、本実施の形態における上記オーブン容器には、上記第1実施の形態と同じ番号を付して、詳細な説明は省略する。
【0059】
図4は、上記内鍋3と内鍋3内に収納されたオーブン容器18との部分断面図である。但し、上記第1実施の形態の図3は、碍子22a,23を通る平面と碍子23,22cを通る平面との2つの平面での断面を示しているのに対して、図4は、碍子22a,23を通る1つの平面での断面を示している。したがって、図4では、碍子22cは現れていない。
【0060】
図4に示すように、上記取っ手25は、オーブン容器18の上端部に設けられた円形の開口と略同じ直径を有する半円形に湾曲された棒状体の両端に環25aが形成されて構成されている。そして、この取っ手25の両端に形成された環25aを、オーブン容器18のフランジ部19における互いに対向する位置の夫々に形成された2つの孔に挿通することによって、取っ手25をオーブン容器18のフランジ部19に揺動自在に取り付けている。尚、図4では、取っ手25が向こう側に倒れている状態を実線で示しており、オーブン容器18が取っ手25で持ち上げられる際の取っ手25の状態を破線で示している。
【0061】
したがって、本実施の形態によれば、使用者は、上記取っ手25を持つことによって、火傷等の危険が無く安全に、且つ作業性良く、内鍋3に対してオーブン容器18を出し入れすることができる。
【0062】
尚、本実施の形態における上記オーブン容器18の機能は、上記第1実施の形態の場合と全く同様である。
【0063】
また、本実施の形態においては、上記取っ手25を、環25aによってオーブン容器18のフランジ部19に揺動自在に取り付けている。しかしながら、この発明はこれに限定されるものではなく、安全に且つ作業性良く内鍋3に対してオーブン容器18を出し入れ可能な構成を有していればよいのである。例えば、取っ手の両端部をフック状に形成し、この取っ手をオーブン容器18に対して着脱可能に構成することも可能である。
【0064】
・第3実施の形態
本実施の形態における炊飯器本体,蓋体および内鍋は、上記第1実施の形態における炊飯器本体1,蓋体2および内鍋3と同じ構成を有している。また、上記内鍋内に出し入れ可能に収納されると共に、上記内鍋の内面との間に空間を形成するオーブン容器は、上記第2実施の形態におけるオーブン容器18と同じ基本構成を有している。そこで、上記炊飯器本体,上記蓋体,上記内鍋および上記オーブン容器の詳細な説明は省略する。また、以下の説明において、上記内鍋および上記オーブン容器に関して、必要に応じ上記第1実施の形態および上記第2実施の形態で用いた番号と同じ番号を用いる。
【0065】
図5は、上記内鍋3とこの内鍋3内に収納されたオーブン容器18との平面図である。また、図6は、図5におけるB‐B'矢視断面図である。
【0066】
図5および図6に示すように、本実施の形態においては、上記オーブン容器18のフランジ部19に、円周方向に等間隔に、オーブン容器18を内鍋3内に装着した際に内鍋3とオーブン容器18との間に形成される空間24を外部と連通させるための通気口26を設けている。こうすることによって、空間24内に温度の不均一な箇所が生じた場合、他の箇所よりも温度が高くなって空間24内の上側に上昇している空気が、通気口26から外部に積極的に逃がされるため、空間24内の温度の均一性が高まる。
【0067】
したがって、結果的に、上記オーブン容器18内の温度の均一性も高めることができ、より安定して高品位なオーブン加熱を行うことができるのである。
【0068】
尚、本実施の形態においては、上記オーブン容器18に取っ手25を設けている。しかしながら、取っ手25は必ずしも設ける必要はない。
【0069】
また、上記各実施の形態においては、上記オーブン容器18を、金属よりも熱容量が大きい陶器で形成している。しかしながら、この発明のオーブン容器18は陶器に限定されるものではない。要は、熱容量が大きく、オーブン容器18の温度を一定の温度で長時間保つことができるものであって、且つ耐熱性を有するものであればよく、鉄,アルミニウム,ステンレス等の金属であっても厚み等を工夫すれば使用可能である。また、耐熱性の樹脂でもよく、オーブン容器18の材料は、特に限定されるものではない。
【0070】
また、上記各実施の形態においては、上記空間形成部材である碍子22a,22b,22cおよび碍子23は、内鍋3からオーブン容器18への熱伝導が無く、且つ内鍋3とオーブン容器18との間に略均一な間隔を有する空間24を確保できるように設置されるものであり、略球状をなして内鍋3とオーブン容器18とに点接触するように構成されている。尚、碍子22a,22b,22cおよび碍子23は、熱伝導性が低く、且つ、内鍋3とオーブン容器18との間に略均一な間隔を有する空間24を確保できるものであれば、他の素材や他の形状であっても何ら差し支えない。また、碍子22a,22b,22cおよび碍子23は、オーブン容器18側に限らず内鍋3側に取り付けてもよい。要は、上記空間形成部材は、オーブン容器18の外壁面および内鍋3の内壁面の何れか一方に設けられて、オーブン容器18と内鍋3との間に所定間隔の空間を形成できれば、その素材や形状や設置数や設置箇所は特に限定されるものではない。
【0071】
ここで、上記碍子22a,22b,22cおよび碍子23に代わって内鍋3とオーブン容器18との間に設置された上記空間形成部材が熱伝導性を有している場合には、上記空間形成部材を介して内鍋3からオーブン容器18に熱が伝導されるため、オーブン容器18における上記空間形成部材の近傍が局所的に加熱される。そのため、上記空間形成部材の近傍が過加熱状態となって、オーブン容器18の内部温度が略均一とはなり難いのである。
【0072】
また、上記各実施の形態においては、上記内ケース5の底部内側に、環状のヒータ13が埋め込まれた伝熱板12を設置して、ヒータ13の熱によって伝熱板12を介して内鍋3の底部3aを加熱するようにしている。しかしながら、内鍋3の加熱構造は、上記構造に限定されるものではなく、例えば内ケース5の底部内側に誘導コイルを設置し、この誘導コイルによって内鍋3を誘導加熱するようにしても差し支えない。すなわち、この発明に用いられる炊飯器は、従来と同様の炊飯動作が可能な炊飯器であればよく、内鍋3の加熱構造に限定されるものではない。
【0073】
また、上記内鍋3とオーブン容器18との間に形成される空間24の間隔は5mmが望ましく、3mm,2mmと薄くなると空間24内の空気の層も薄くなって熱容量が小さくなり、オーブン容器18の加熱が不均一になる。逆に、5mmよりも熱くなると、オーブン容器18内が所望の温度に加熱されるまでに時間が掛かり過ぎることになる。
【0074】
また、上記各実施の形態においては、上記内鍋3と内鍋3内に収納されるオーブン容器18とを、お釜の形状に形成している。しかしながら、この発明はこれに限定されるものではなく、底部を半球状等に形成しても構わない。要は、オーブン容器18は、内鍋3を一回り小さくしたような内鍋3とは相似形の断面形状を有して、内鍋3内に収納した場合に内鍋3との間に略均一な間隔の空間24を形成できる形状であればよいのである。
【0075】
また、上記各実施の形態においては、炊飯器本体1蓋体2と内鍋3と内鍋3内に出し入れ可能に収納されるオーブン容器18を備えた炊飯器を提供している。しかしながら、既に市販されている炊飯器の内鍋3内に出し入れ可能に構成されたオーブン容器18を提供しても構わない。
【符号の説明】
【0076】
1…炊飯器本体、
2…蓋体、
3…内鍋、
3a…内鍋の底部、
3b…内鍋のフランジ部、
3c…内鍋の周壁部、
4…外ケース、
5…内ケース、
11…温度センサ、
12…伝熱板、
13…ヒータ、
17…制御部、
18…オーブン容器、
19…オーブン容器のフランジ部、
20…オーブン容器の周壁部、
21…オーブン容器の底部、
22a,22b,22c,23…碍子、
24…空間、
25…取っ手、
26…通気口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯を行うための内鍋と、
上記内鍋が収納される炊飯器本体と、
上記炊飯器本体内に配置されると共に、上記内鍋を加熱する加熱部と、
上記内鍋内に出し入れ可能に収納されると共に、オーブン加熱を行うためのオーブン容器と、
上記オーブン容器が上記内鍋内に収納された際に、上記内鍋と上記オーブン容器との間に空気の層を形成する空気層形成部材と
を備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
請求項1に記載の炊飯器において、
上記空気層形成部材は、
上記オーブン容器の上端部に設けられると共に、外方向に向かって水平に延在して、上記オーブン容器が上記内鍋内に収納された際に上記内鍋の内壁に先端が当接するフランジ部と、
上記オーブン容器の外壁面および上記内鍋の内壁面の何れか一方に設けられて、上記オーブン容器が上記内鍋内に収納された際に、上記オーブン容器の外壁面および上記内鍋の内壁面の他方に当接して、上記オーブン容器と上記内鍋との間に所定間隔の空間を形成する空間形成部材と
を含むことを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2に記載の炊飯器において、
上記オーブン容器には、当該オーブン容器を上記内鍋内に出し入れする際に用いる取っ手が設けられる
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一つに記載の炊飯器において、
上記オーブン加熱を選択するための選択キーと、
上記選択キーによって上記オーブン加熱が選択された場合に、上記加熱部による上記内鍋の加熱動作を、上記炊飯を行う場合の加熱動作とは異なるように制御する加熱制御部と
を備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項5】
炊飯を行うための内鍋と、上記内鍋が収納される炊飯器本体と、上記炊飯器本体内に配置されて上記内鍋を加熱する加熱部とを含む炊飯器に用いられて、オーブン加熱を可能にするオーブン容器であって、
上記炊飯器の上記内鍋内に出し入れ可能に収納されると共に、
上記内鍋内に収納された場合に、上記内鍋との間に空気の層を形成する空気層形成部材を有する
ことを特徴とするオーブン容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−244836(P2011−244836A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117539(P2010−117539)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】