説明

炊飯器

【課題】鍋内を加圧状態にしない構成にあって、減圧性能を向上させつつ、製品コストを安価にし、使い勝手を向上させることができる炊飯器を提供する
【解決手段】鍋11内を加圧する加圧手段を有しない炊飯器において、真空弁261と、この真空弁261を保持するカバー下部材263と、真空弁261を覆うカバー上部材264とにより調圧部251を構成する。また、調圧部251が内蓋56にではなく、蓋体31の内部に配置する。これにより、内蓋56を蓋体31から取外して清掃などを行なう際に重く感じることがなく、使い勝手が向上する。また、特に調圧部251のカバー下部材263から鍋11内に繋がる第1通路部275を、真空弁261の移動により開閉することで、鍋11内の調圧を確実に切替えることができ、鍋11内における減圧性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体の調圧を行なう炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、本体に鍋を収納自在に設け、この鍋を覆うように蓋体を設けると共に、調圧装置を備えた炊飯器が、例えば特許文献1などに開示されている。この特許文献1では、調圧装置によって本体内を調圧しながら、炊飯を行なうようにしている。
【0003】
また、本体内を大気圧よりも低い減圧状態にする減圧手段を設け、設定する行程中は本体内を減圧状態とし、炊飯を行なうようにしている。
【特許文献1】特開2006−350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の炊飯器の構造では、次のような問題点があった。
【0005】
本体内を調圧することで、炊き上がり性能を向上させた炊飯器が知られている。
【0006】
しかし、加圧機構を設けずに、本体内を減圧状態にすることのみを目的とする炊飯器では、鍋内を加圧状態にしないので、従来のように、内蓋に加圧機構部品を配置すると、内蓋の清掃時などにおいて使用性が悪くなる。そのため、本体内を加圧状態にしない構成で、減圧性能を向上させつつ、使い勝手を向上させることが可能な炊飯器が求められていた。
【0007】
また、鍋内を加圧状態と減圧状態の何れにもすることができる炊飯器では、鍋内を加圧状態にすると、内蓋ひいては蓋体は鍋内からの加圧力を受けて上方に移動し、逆に鍋内を減圧状態にすると、内蓋ひいては蓋体は加圧状態とは正反対の方向に力を受け、下方に移動する。そのため、鍋内の圧力に応じて上方若しくは下方の正反対に変形する内蓋に対して、所望のシール性能が必要になる。つまり、鍋内が加圧状態若しくは減圧状態の何れであっても、鍋内を密閉させなければならず、そのためには内蓋に設けられ、鍋内に連通する孔を密閉する必要がある。
【0008】
内蓋に設けた孔を開閉自在とするために、内蓋には開閉手段が設けられ、この開閉手段を蓋体に設けた操作手段で操作する構成となっている。しかし、操作手段に設けた弾性手段自体にバラツキがあることから、操作手段が開閉手段を押す際のストローク(移動距離)が変動し、開閉手段による孔の開閉が不安定になることがあった。そして、このような現象が起こると、鍋内の減圧状態時には内蓋が下方に移動して、開閉手段と孔との間に隙間を生じ、鍋内の密閉を保てない。逆に、鍋内の加圧状態時には内蓋が上方に移動して、操作手段に対し過剰な負荷が加わり、部品の耐久性に問題を生じる。部品の耐久性を向上させるために、操作手段などを金属部品で形成する方法もあるが、それでは製品コストが高くなる。
【0009】
また上述したように、鍋内を減圧状態にするためには、鍋内を密閉状態にする必要があるが、鍋内の減圧値は減圧機構の能力に依存しており、鍋内を減圧状態のまま一定の圧力値に保つには、高価な圧力調整装置が必要になる。そのため、こうした圧力調整装置を設けると、製品コストが著しく上昇する。一方、圧力調整装置を設けなければ、減圧手段の故障などで減圧動作が連続して行なわれた時に、鍋内の圧力が所定値以下に減圧したままの状態となり、例えば鍋内の米などが適切に吸水されなくなって、満足な調理性能が得られなくなる。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑み、本体内を加圧状態にしない構成にあって、減圧性能を向上させつつ、使い勝手を向上させることができる炊飯器を提供することを、その第1の目的とする。
【0011】
本発明の第2の目的は、開閉手段のストロークを安定化させ、且つ安価な構造を実現できる炊飯器を提供することにある。
【0012】
本発明の第3の目的は、高価な圧力調整装置に頼ることなく、減圧状態にある鍋内の圧力値を適切に設定し、製品コストを安価にしつつ、調理性能の低下を抑制すると共に、食材やメニューなどに応じて、減圧状態にある鍋内の圧力値を調整し、調理性能を向上させることができる炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1における炊飯器では、調圧手段が内蓋にではなく、蓋体の内部に配置されていることから、内蓋を蓋体から取外して清掃などを行なう際に重く感じることがなく、使い勝手が向上する。また、特に調圧手段の保持部から所定部に繋がる第1通路部を、弁体の移動により開閉することで、本体内の調圧を確実に切替えることができ、本体内における減圧性能を向上させることができる。
【0014】
本発明の請求項2における炊飯器では、調圧手段と、この調圧手段を操作するための操作手段を、何れも蓋体に取付けることで、製品のコンパクト化を実現し、且つ使い勝手を向上することができる。
【0015】
本発明の請求項3における炊飯器では、保持部に設けた座部に弁体が載置するので、弁体の自重を利用して、当該弁体により第1通路部を確実に閉塞することができる。そのため、鍋内の密閉性ひいては本体内における減圧性能をさらに向上させることが可能になる。
【0016】
本発明の請求項4における炊飯器では、弁体を取り囲む保持部またはカバー部との間が、シール部により挟持されるので、調圧手段として密閉構造を簡素化しつつも、確実に内部を密閉することができる。したがって、製品のコンパクト化を実現し、且つ調圧手段が外気と連通するのを防止して、減圧性能を向上することができる。
【0017】
本発明の請求項5における炊飯器では、保持部に設けた座部に弁体が載置するので、弁体の自重を利用して、当該弁体により第1通路部を確実に閉塞することができる。そのため、鍋内の密閉性ひいては本体内における減圧性能をさらに向上させることが可能になる。しかも、この座部がシール部としての機能を兼用するので、調圧手段としての密閉構造をさらに簡素化できる。
【0018】
本発明の請求項6における炊飯器では、弁体が第1通路部を開けた状態で、第2通路部に連通する減圧手段を動作させると、本体内の空気が外部に排出され、その後、弁体を移動させて第1通路部を閉じ、減圧手段を動作停止させることにより、本体内を減圧状態に維持することができる。このように、減圧手段の動作に関連して、弁体を移動させることで、本体内の調圧をより確実に切替えることができ、本体内における減圧性能をさらに向上させることができる。
【0019】
本発明の請求項7における炊飯器では、調圧手段を内蓋に取付けずに、調圧手段を構成する保持部またはカバー部を、蓋カバーに取付ける構成となっていることから、内蓋を蓋体から取外して清掃などを行なう際に重く感じることがなく、使い勝手が向上する。また保持部やカバー部を、蓋体への取付け部と兼用させることで、部品点数の増加を抑制して、製品コストを安価にすることができる。さらに調圧手段を、弁体,保持部,カバー部,第1通路部および第2通路部で構成して標準化することができ、多種多様な製品への展開が可能になることから、この点でも製品コストを抑制した安価な炊飯器を提供できる。
【0020】
本発明の請求項8における炊飯器では、弁体を保持する保持部に第1通路部を設け、この第1通路部を蓋カバーに設けた孔部に接続することで、調圧手段の保持部に設けた第1通路部を、弁体によって開閉することができる。そのため、本体内の調圧を確実に切替えることができ、本体内における減圧性能を向上させることができる。
【0021】
本発明の請求項9における炊飯器では、弁体が第1通路部を開けた状態で、第2通路部に連通する減圧手段を動作させると、本体内の空気が外部に排出され、その後、弁体を移動させて第1通路部を閉じ、減圧手段を動作停止させることにより、本体内を減圧状態に維持することができる。このように、減圧手段の動作に関連して、弁体を移動させることで、本体内の調圧をより確実に切替えることができ、本体内における減圧性能をさらに向上させることができる。
【0022】
本発明の請求項10における炊飯器では、調圧手段が第1通路部と第2通路部以外に、他の連通部を設けていないことから、調圧手段が外気と連通するのを防止することが可能となり、本体内を加圧状態にしない構成にあって、減圧性能を向上することができる。また、調圧手段の内部に弁体を設け、調圧手段そのものを動かすことで、弁体を動かして鍋と調圧手段の外部との間の経路を開閉できるので、減圧切替手段として安価な構造を採用でき、製品コストを抑制できる。
【0023】
本発明の請求項11の炊飯器によれば、調圧手段が内蓋にではなく、外蓋と蓋カバーで囲まれた蓋体の内部に配置されることから、内蓋を蓋体から取外して清掃などを行なう際に重く感じることがなく、製品をコンパクトにし、且つ使い勝手を向上させることができる。
【0024】
本発明の請求項12における炊飯器では、弾性部材の弾性力や寸法が個々にばらついていたとしても、操作手段が所定の位置で開閉手段を操作する。そのため、操作手段が開閉手段を操作する際のストロークが安定し、開閉手段により孔部を確実に閉止できるようになり、結果的に鍋内の調理性能の低下を抑制できる。
【0025】
本発明の請求項13における炊飯器では、本体内が減圧状態となり、開閉部材が操作手段から離れる方向に変形した場合であっても、操作部材とシール部材との間にある弾性部材によって、シール部材が開閉手段に当接する方向に付勢され、より確実に開閉手段が孔を閉止できる。また、本体内の圧力が所定値以上に達すると、弾性部材の弾性力に抗して開閉手段が孔部を開放するので、この弾性部材によって本体内の圧力を簡単に調整できる。
【0026】
本発明の請求項14における炊飯器では、操作部材を動作させて孔部を閉止すると、保持手段の保持解除を妨げる位置にフレーム部材が移動し、その後、本体内の圧力が所定値以上に上昇し、開閉手段が孔部を開放して本体内を大気圧に戻そうとするときにも、フレーム部材は引き続き保持手段の保持解除を妨げる位置に止まっていて、保持手段は動かないようになっている。そのため、鍋内が大気圧に戻りきらないうちに、不用意に蓋体が開くのを防ぐことができ、米の生煮えを防止することができる。また、本体内を加圧した時に内蓋が変形しても、この変形力は操作部材とシール部材との間にある弾性部材で緩和され、操作部材をわざわざ金属部品しなくても、操作手段に対し過剰な負荷が加わるのを防ぐことができる。
【0027】
本発明の請求項15における炊飯器では、ソレノイドを駆動源としてフレーム部材を動作させることで、孔部を開閉する開閉手段を確実に操作させることができる。
【0028】
本発明の請求項16における炊飯器では、例えば保温時に減圧手段を動作させて、密閉状態で本体内を減圧すれば、本体内の酸素濃度が下がると共に、被炊飯物の水分蒸発を防ぐことができ、食味のよいご飯を長期間得ることができる。
【0029】
本発明の請求項17における炊飯器では、調整手段に備えた弾性部材の弾性力を利用して、減圧状態で本体内の圧力が所定値以下に減圧しないように設定することができる。そのため、例えば減圧手段の故障などで減圧動作が連続して行なわれた場合でも、本体内の圧力が所定値以下に減圧するのを防止でき、高価な圧力調整装置に頼ることなく、減圧状態にある本体内の圧力値を適切に設定し、製品コストを安価にしつつ、調理性能の低下を抑制することができる。
【0030】
本発明の請求項18における炊飯器では、調整部を利用して弾性力を可変できるので、食材やメニューなどに応じて、減圧状態にある本体内の圧力値をその都度調整し、調理性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の請求項1の炊飯器によれば、本体内を加圧状態にしない構成にあって、減圧性能を向上させつつ、使い勝手を向上させることができる。
【0032】
本発明の請求項2の炊飯器によれば、製品のコンパクト化を実現し、且つ使い勝手を向上することができる。
【0033】
本発明の請求項3の炊飯器によれば、鍋内の密閉性ひいては本体内における減圧性能をさらに向上させることが可能になる。
【0034】
本発明の請求項4の炊飯器によれば、製品のコンパクト化を実現し、且つ減圧性能を向上することができる。
【0035】
本発明の請求項5の炊飯器によれば、鍋内の密閉性ひいては本体内における減圧性能をさらに向上させることが可能になる。加えて、調圧手段としての密閉構造をさらに簡素化できる。
【0036】
本発明の請求項6の炊飯器によれば、減圧手段の動作に関連して、弁体を移動させることで、本体内の調圧をより確実に切替えることができ、本体内における減圧性能をさらに向上させることができる。
【0037】
本発明の請求項7の炊飯器によれば、本体内を加圧状態にしない構成にあって、製品コストを安価にし、使い勝手を向上させることができる。
【0038】
本発明の請求項8の炊飯器によれば、本体内の調圧を確実に切替えることができ、本体内における減圧性能を向上させることができる。
【0039】
本発明の請求項9の炊飯器によれば、減圧手段の動作に関連して、弁体を移動させることで、本体内の調圧をより確実に切替えることができ、本体内における減圧性能をさらに向上させることができる。
【0040】
本発明の請求項10の炊飯器によれば、本体内を加圧状態にしない構成にあって、減圧性能を向上させつつ、製品コストを安価にすることができる。
【0041】
本発明の請求項11の炊飯器によれば、製品をコンパクトにし、且つ使い勝手を向上させることができる。
【0042】
本発明の請求項12の炊飯器によれば、開閉手段のストロークを安定化させることができる。
【0043】
本発明の請求項13の炊飯器によれば、弾性部材を利用して、より確実に開閉手段が孔を閉止できると共に、本体内の圧力を簡単に調整できる。
【0044】
本発明の請求項14の炊飯器によれば、本体を大気圧に戻そうとするときに、意図しない蓋開操作が行なわれても、蓋体が開かないようにすることができ、さらに本体内が加圧状態にあっても、操作手段に対し過剰な負荷が加わるのを防ぐことができ、部品や製品コストを安価にした炊飯器を提供できる。
【0045】
本発明の請求項15の炊飯器によれば、孔部を開閉する開閉手段を確実に操作させることができる。
【0046】
本発明の請求項16の炊飯器によれば、例えば保温時に減圧手段を動作させて、食味のよいご飯を長期間得ることができる。
【0047】
本発明の請求項17の炊飯器によれば、高価な圧力調整装置に頼ることなく、減圧状態にある本体内の圧力値を適切に設定し、製品コストを安価にしつつ、調理性能の低下を抑制することができる。
【0048】
本発明の請求項18の炊飯器によれば、食材やメニューなどに応じて、減圧状態にある本体内の圧力値を調整し、調理性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明における炊飯器の好ましい実施例を説明する。
【0050】
まず、図1に基づき、本発明の一例である炊飯器の構成について説明する。同図において、炊飯器の外郭をなす本体1は、その上面と上側面を構成する上枠2と、側面を構成するほぼ筒状の外枠3とにより形成され、外枠3の底部開口を覆う底板4が設けられている。その際、上枠2や底板4は、PP(ポリプロピレン)などの合成樹脂で形成される一方で、外枠3は清掃性や外観品位を向上させるために、例えばステンレスなどの金属部材で形成される。また、上枠2の上面内周部から一体に垂下させて形成されるほぼ筒状の鍋収容部6と、この鍋収容部6の下面開口を覆って設けられ、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂で形成される内枠8とにより、後述する鍋11を収納する有底筒状で非磁性材料からなる鍋収容体9が形成される。
【0051】
前記鍋収容体9内には、米や水などの被炊飯物を収容する有底筒状の鍋11が着脱自在に収容される。鍋11は、熱伝導性のよいアルミニウムを主材料とした鍋本体12と、この鍋本体12の外面の側面下部から底面部にかけて接合されたフェライト系ステンレスなどの磁性金属板からなる発熱体13とにより構成される。鍋11の側面中央から上部に発熱体13を設けないのは、鍋11の軽量化を図るためである。また、鍋11の上端周囲には、その外周側に延出する円環状のフランジ部14が形成される。なお、鍋収容部6の外周には加熱手段を設けない構成となっている。
【0052】
前記内枠8の外面の発熱体13に対向する側面下部および底面部には、鍋11の特に底部を電磁誘導加熱する加熱手段としての加熱コイル16が設けられている。そして、この加熱コイル16に高周波電流を供給すると、加熱コイル16から発生する交番磁界によって鍋11の発熱体13が発熱し、鍋11ひいては鍋11内の被炊飯物が加熱されるようになっている。
【0053】
また、内枠8の底部中央部には、鍋11の底部外面と弾発的に接触するように、鍋温度検出手段としての温度センサ21が配置され、鍋11の温度を検知し、加熱コイル16による鍋11の底部の加熱温度を主に温度管理するようになっている。
【0054】
前記鍋収容体9の上端には、鍋11の側面上部、特にフランジ部14を加熱するためのコードヒータ26が円環状に配置される。このコードヒータ26は電熱式ヒータからなり、鍋収容体9の上端に載置して取付けられた熱放散抑止部材としてのヒータリング27上に保持されると共に、コードヒータ26を上から覆うようにしてヒータリング27に取付けられ、かつ熱伝導性に優れた例えばアルミ板からなる固定金具と放熱部とを兼用する金属板29を備えて、フランジヒータを構成している。この金属板29は、炊飯器本体1と蓋体31との隙間に対向して位置している。そして、前記金属板29の上面に鍋11のフランジ部14の下面が載置し、これにより、鍋11が本体1の上枠2に吊られた状態で、鍋収容体9内に収容されるようになっている。したがって、鍋11とこの鍋11が収容された鍋収容体9の上端との間における隙間がほとんどない構成になる。しかも、鍋11のフランジ部14は、外形がコードヒータ26と同等以上の大きさに形成されており、これにより、コードヒータ26が鍋11のフランジ部14で上から覆われるようになっている。但し、図示していないが、鍋11の持ち手部(フランジ部14)は非接触にし、部分的に隙間を形成することで、鍋11の外面に水が付着した状態で炊飯したときに、当該隙間から蒸気が排出されるようにしてある。
【0055】
蓋体31は、その上面外殻をなす外観部品としての外蓋32と、蓋体31の内面である下面を形成し、ステンレスやアルミニウムをアルマイトした金属性の放熱板34と、外蓋32の下方に位置して前記鍋11の上方開口部を覆い、外蓋32および放熱板34を結合させて蓋体31の骨格を形成する蓋ベース材としての外蓋カバー35とを主たる構成要素としている。また、前記蓋体31の内部にあって、放熱板34の上面には、蓋加熱手段としての蓋ヒータ36が設けられている。この蓋ヒータ36は、コードヒータなどの電熱式ヒータや、電磁誘導加熱式による加熱コイルでもよい。
【0056】
前記上枠2の後方には、蓋体31と連結するヒンジ部38が設けられる。このヒンジ部38には、正面から見て左右方向に一対の孔(図示せず)が設けられていると共に、ねじりコイルバネなどで形成したヒンジバネ40が、その内部に収納される。一方、外蓋カバー35の後方にも、前記ヒンジ部38に設けた孔と対向するようにヒンジ受部としての外蓋カバーヒンジ孔(図示せず)が設けられる。そして、このヒンジ孔とヒンジ部38の孔に共通して、棒状のヒンジシャフト41を挿通することで、本体1と蓋体31がヒンジシャフト41を支点として開閉自在に軸支される。さらに、前記ヒンジバネ40の一端と他端が、外蓋カバー35と外枠2にそれぞれ引掛けられることで、蓋体31は常時開方向に付勢されている。
【0057】
蓋体31の前方上面には、蓋開ボタン46が露出状態で配設されており、この蓋開ボタン46を押すと、蓋体31と本体1との係合が解除され、ヒンジバネ40によって蓋体31が自動的に開く構成となっている。
【0058】
ここで、図2の断面図に基づいて、蓋開ボタン46周辺の構成をさらに詳しく説明すると、蓋体31には係合部に相当するクランプ44が配置される。このクランプ44は、蓋体31の内部に設けたクランプシャフト45を中心として、外蓋カバー35に対し回転自在に軸支される。蓋開閉手段に相当する蓋開ボタン46は、使用者が操作できるように蓋体31の前方上面から露出状態に配設される。蓋体31の内部には、クランプ44の基端部44Aを蓋開ボタン46側に付勢するバネなどのクランプ付勢手段(図示せず)が設けられ、これにより蓋開ボタン46を常時上方に押し上げる力が作用するようになっている。
【0059】
クランプ44は、蓋開ボタン46に当接する基端部44Aの他に、外蓋カバー35の下面にあるクランプ用孔48から下方に突出する垂下部44Bと、クランプ44の実質的な先端部に相当し、垂下部44Bの下端を起点として、そこから本体1の内方に延出する係合部44Cとにより構成される。クランプ44はステンレスなどの金属部品で形成し、係合部44Cは略L字状とする。そうすることで、クランプ44を合成樹脂で構成する場合と比べ、強度の強いクランプ受け50との係合を得られる。また、中央から左右の略均等位置に係合部44Cを設ける。これらの垂下部44Bや係合部44Cは、クランプ44の下側にあって左右一対に設けられる。クランプ44の回転中心となるクランプシャフト45は、垂下部44Bの上端に沿うように配置され、係合部44Cは本体1の略前後方向に遥動する。
【0060】
一方、上枠2に設けたヒンジ部38の略反対側に位置して、該上枠2の前方には係合受部に相当するクランプ受け50が配設されており、蓋体31を本体1側に閉じようとすると、クランプ付勢手段の付勢力により、クランプ44がクランプシャフト45を中心軸として回転し、当該クランプ受け50に係合することで、蓋体31を本体1に対し閉状態に保持するようになっている。クランプ受け50はステンレスなどの金属部品で形成する。そうすることで、クランプ受け50を合成樹脂で構成する場合と比べ、強度の強いクランプ44との係合を得られる。反対に蓋体31を開く場合には、蓋開ボタン46を押動操作し、クランプ44の基端部を下方に押下げてクランプ44を逆方向に回転させ、係合部44Cを本体1の前方に変位させて、クランプ44とクランプ受け50との係合を解除する。上枠2のクランプ受け下方部は、クランプ44がクランプシャフト45を軸として回転動作する際に、ぶつからない深さを有することが必要である。また、クランプ44とクランプ受け50下方部の隙間は、通常時のクランプ44とクランプ受け50の係合量よりも大となる寸法関係としておく。更に、外蓋カバー35と上枠2の隙間よりも大となる寸法関係としておく。
【0061】
なお、ここでは蓋体31側にある可動するクランプ44を係合部といい、本体1側にある固定したクランプ受け50を係合受部としているが、蓋体31に固定した係合部を設け、本体1に可動する係合受部を設けてもよい。
【0062】
55は、放熱板34の外側すなわち下側に設けられる内蓋組立体である。この内蓋組立体55は、鍋11の上方開口部とほぼ同径の円盤状を有し、ステンレスやアルミニウムをアルマイトした金属性の内蓋56と、鍋11と内蓋56との隙間を塞ぐために、当該内蓋56の外側全周に設けられ、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの弾性部材からなる蓋パッキン57と、内釜の内圧力を調整する調圧部58とを備えている。そして、内蓋56と蓋パッキン57はパッキンベース59で一体化され、これにより外蓋カバー35内面に内蓋組立体55が着脱可能に設けられる。また、環状に形成された蓋パッキン57は、蓋体31を閉じた時(蓋閉時)に、鍋11のフランジ部14上面に当接して、この鍋11と内蓋56との間の隙間を塞ぎ、鍋11から発生する蒸気を密閉するものである。
【0063】
再度図1に戻って説明すると、前記放熱板34には、蓋体31に装着される内蓋56の温度を検知する蓋温度検知手段として、蓋ヒータ36による内蓋56の温度管理を行なうためのサーミスタ式の蓋温度センサ61が設けられていている。また、蓋体31の上面後方寄り部には、蓋体31の上面側から着脱可能な蒸気口146が設けられる。
【0064】
前記内蓋56は、何れも鍋11の内部と連通する複数の孔すなわち連通孔77,181を備えている。また、これらの連通孔77,181を開閉する開閉手段として、調圧手段たる調圧部58と、開閉弁62がそれぞれ別個に設けられる。調圧部58および開閉弁62は、内蓋56を外蓋カバー35の下側に取付けたときに、何れも蒸気口146の入口側に臨んで設けられ、当該蒸気口146と蓋体31の内部で連通する。そして、これらの調圧部58や開閉弁62が連通孔77,181を開放または閉止することで、鍋11内の圧力をコントロールするようになっている。
【0065】
ここで、図4〜図6を参照しながら、連通孔77を開閉する調圧部58の構成をより詳しく説明する。前記調圧部58は、調圧用の調圧弁65と、調圧弁65を保持する調圧弁ホルダー組立体66と、調圧弁65を覆うドーム状の調圧弁カバー67とを備えて構成される。調圧弁65は耐食性に優れた材料で、ある程度の重量を有する部品であればよく、例えばオーステナイト系のステンレス球で形成される。
【0066】
調圧弁ホルダー組立体66は、第1ホルダー68と、第2ホルダー69と、減圧支持部材に相当する第1調圧パッキン71と、第2調圧パッキン72と、鍋11内からの圧力が第1調圧パッキン71に直接加わらないように、この第1調圧パッキン71の下方にあって、加圧支持部材に相当する弁支持体73と、第1調圧パッキン71の下面に弁支持体73が当接する方向に、当該弁支持体73を付勢する弾性体としての調圧バネ74と、により構成される。弁支持体73には、鍋11内の加圧時にボール状の調圧弁65の下方に当接する調圧孔70が設けられる。この調圧孔70は、鍋11と蓋体31外部とを連通させる為のもので、鍋11内の蒸気が調圧孔70を通過すると、蒸気口146から外気へ放出されるようになっている。また、第1ホルダー68と第2ホルダー69には、互いを嵌合する為の凸状の係合部75と凹状の被係合部76がそれぞれ設けられている。これらの第1ホルダー68と第2ホルダー69は、前記第1調圧パッキン71や弁支持体73などを保持する保持部材として、内蓋56に設けた連通孔77に装着される。第1ホルダー68は全体がキャップ状に形成され、その中央部に貫通孔68Aを有し、貫通孔68Aの周辺部68Bと第2ホルダー69の上端部69Aとにより、第1調圧パッキン71の基部を挟持するようになっている。また、第2ホルダー69は筒状で、その下側には内蓋56の連通孔77周辺の下面に当接するフランジ69Bが形成されると共に、フランジ69Bの上方外周には、リング状の前記第2調圧パッキン72を嵌合させる凹溝69Cが形成される。さらに、第2ホルダー69の内周側には、調圧バネ74の一端部を嵌め込むために、断面L字状の突片69dが形成される。
【0067】
調圧弁ホルダー組立体66の組立に際しては、まず第2ホルダー69の凹溝69Cに調圧パッキン72を嵌め込んだものを、内蓋56に設けた連通孔77に差込み、第2ホルダー69の内周側で調圧バネ74を挟むようにして、弁支持体73を第2ホルダー69の上方から挿入する。次に、弁支持体73および第2ホルダー69の上端部69Aを覆うようにして、第1調圧パッキン71を弁支持体73に載置し、その状態から更に第1調圧パッキン71を挟む様にして、第1ホルダー68を上方から被せ、係合部75と被係合部76とを互いに嵌合させて、第2ホルダー69に第1ホルダー68を取付ける。そして、図4や図5に示すように、調圧弁ホルダー組立体66を組立てた状態では、鍋11内部に第2ホルダー69の内側面と弁支持体73の下面が直接対向し、これらの第2ホルダー69や弁支持体73の上側に配置された第1調圧パッキン71は、鍋11内から直接圧力を受けずに済む構造になっている。
【0068】
この様に組立てた調圧弁ホルダー組立66で調圧弁65を保持し、上方から調圧弁カバー67を被せることで調圧部58を構成する。この時、調圧弁ホルダー組立66と調圧弁カバー67との取付けは爪嵌合でも良いし、ネジやリベットなどの止着部材を利用して止めてもよい。調圧弁カバー67は、調圧弁65の移動範囲を規制するためのもので、調圧孔70から放出する蒸気を蒸気口146に導く複数の孔(図示せず)が設けられている。また内蓋56は、調圧弁ホルダー組立66と調圧弁カバー67とで峡持されるので、内蓋56の連通孔77は露出しない。
【0069】
弁支持体73の調圧孔70の開口面積は、弁支持体73の下側に形成した脚部79の内側の、鍋11内から直接圧力を受ける面80の面積より小さくなっている。また、調圧弁65は調圧孔70を塞ぐように保持される。よって、調圧孔70の開口面積と調圧弁65との重量により、鍋11内の圧力を調整することができる。
【0070】
調圧弁65を動かして蓋体31の密閉度即ち鍋11の内圧を調節する動作源として、蓋体31内の外蓋カバー35には、調圧部58内にある調圧弁65を動かすソレノイド78が設けられる。ソレノイド78の非通電状態では、その先端部を進出位置に保持し、調圧弁65を調圧孔70から退避する一方、ソレノイド78の通電状態では、その先端部を退避させ、調圧弁65を調圧孔70に自重で転動させ、調圧孔70を塞いで鍋11内に圧力を投入する。
【0071】
第1調圧パッキン71および第2調圧パッキン72は、何れもシリコーンゴム等の弾性部材で構成する。これにより、特に図5に示す鍋11内の減圧時には、第1調圧パッキン71の弾性変形により、調圧弁65が当該第1調圧パッキン71に密着し、第1調圧パッキン71における開口部すなわち孔71Aのシール性が向上する。
【0072】
ここで、上記図1〜図6の他に、図7〜図9をもさらに参照しながら、前記調圧部58の操作手段について説明する。前述したように、蓋体31の内部には、電磁力により内部からプランジャー151を出没させて、調圧部58内にある調圧弁65を動かす調圧用ソレノイド78が設けられる。また、外蓋カバー35に向けてプランジャー151と共に可動する調圧フレーム152や、蓋体31内部を水密状態に保持する可撓性の調圧パッキン153も、同様に蓋体31内の外蓋カバー35に設けられる。調圧パッキン153は、調圧部58に臨んで外蓋カバー35に設けた取付け孔の周縁に嵌合する凹字状の取付部153Aが形成される。そして、図6にも示すように、これらの調圧用ソレノイド78や調圧フレーム152は、外蓋カバー35により蓋体31内に形成された調圧収容部154に収容配置される。
【0073】
調圧フレーム152は、図7や図8に示すように、調圧弁65に向けて突出した操作部としての調圧操作部161と、調圧用ソレノイド78を囲うようにして設けたフレーム部162と、調圧操作部161の略反対側に設けられたクランプ動作規制部163とを備えて構成される。ソレノイド78のプランジャー151ひいては調圧フレーム152は、鍋11内を非加圧状態とするために、調圧弁65を押すように常時位置しており、特に調圧弁65を操作する調圧フレーム152の部分を、前記調圧操作部161としている。こうすることで、蓋体31を開けようとする場合には、鍋11内を外気と連通させ、負圧の影響を受けずにスムーズな蓋開動作を得ることができる。
【0074】
上記連通孔77に対向する調圧部58とは別に、別な連通孔181に対向して、当該連通孔181を開閉する開閉弁62が内蓋56の上面側に設けられる。当該開閉弁62は、図11〜図13に示すように、上下動可能な開閉弁シャフト201と、シャフト押え202と、弾性体であるコイルスプリングからなるシャフトバネ203と、開閉弁シャフト201の下部に装着するシャフトパッキン204とを備えて構成される。シャフト押え202は筒状で、下端が内蓋56の連通孔181周囲に当接する一方で、上端から開閉弁シャフト201が挿通するようになっている。シャフトバネ203は、開閉弁シャフト201の外周に形成したフランジ201Aと前記シャフト押え202の上端とに間に設けられ、シャフトパッキン204が連通孔181から離れる方向に、開閉弁シャフト201を常時付勢する。このように、シャフトパッキン204を含む開閉シャフト201は、シャフトバネ203により連通孔181を開放する方向に常時付勢されているが、これは内蓋56の上部に溜まったオネバを、連通孔181から鍋11内に戻すことと、蓋体31を閉じる時に、鍋11内から連通孔181を通して外気に空気を抜け易くし、蓋閉時に掛かる力を低減させるためである。さらに、連通孔181に臨んで設けたシャフトパッキン204は、開閉弁シャフト201が下方に移動したときに連通孔181を確実に塞ぐように、柔軟性を有する材料で形成される。
【0075】
205は、前記開閉弁シャフト201やシャフトバネ203の外周を覆い、シャフト押え202の上部に被着される筒状の開閉弁カバーである。この開閉弁カバー205は、前記調圧弁カバー67に取付けてもよいし、調圧弁カバー67とは別個に設けて取付けてもよい。
【0076】
開閉弁62の上部に位置して、外蓋カバー35には操作手段としての開閉弁操作手段211が取付けられる。開閉弁操作手段211は、開閉弁62を操作するための操作部材212としての第1開閉シャフト212Aおよび第2開閉シャフト212Bと、操作部材212を上下に動作させるフレーム部材である開閉フレーム175と、前記第1開閉シャフト212Aと第2開閉シャフト212Bとの間にあって、コイルスプリングからなる弾性部材215と、外蓋カバー35の孔部216を塞ぐ可撓性のシール部材217と、シール部材217の上部に取付けられるキャップ218と、により構成される。シール部材217は、その外周部に蓋体31の内部をシールするシール部221が形成される一方で、中心部には前記操作部材212を覆う有底筒状の操作部222が設けられ、この操作部222が前記開閉弁シャフト201の上端面に当接するようになっている。ここでのシール部221は、断面がコ字状で、外蓋カバー35の孔部216周縁に装着されるようになっており、さらにこの孔部216の周縁とキャップ218の外周部との間に挟持される。また、シール部221と操作部222との間には、これらのシール部221や操作部222よりも肉薄で、柔軟性に富む繋ぎ部223で連結される。この繋ぎ部223は断面が湾曲した形状に形成されるが、操作部222が操作部材212に連動して、開閉弁シャフト201と同じ上下方向に可動する形状であれば、湾曲以外の形状であってもよい。
【0077】
前記キャップ218に挿通する操作部材212と、シール部材217の操作部222との間には、弾性部材215が装着される。また、操作部材212の上方には、前記開閉フレーム175の操作部材可動部188が貫通し当接する孔213が設けられる。
【0078】
有底筒状をなす第1開閉シャフト212Aの上部外周には、円環状の溝241が形成される一方で、第2開閉シャフト212Bの下部内周に形成され、前記溝241に爪242を嵌合させつつ、弾性部材215を介在した状態で、第1開閉シャフト212Aの上部に第2開閉シャフト212Bが上下動可能に装着される。ここで、溝241に一定の幅を持たせることにより、第2開閉シャフト212Bに対する第1開閉シャフト212Aの移動範囲が、溝241の幅で規制されるようになっており、これにより操作部材212は、弾性部材215の所定の取付け位置に設けられる。つまり、ここでの溝241と爪242は、弾性部材215間の弾性力や寸法のばらつきに依存せず、上下方向に可変可能な操作部材212の全長の上限と下限を、一律に規制する規制手段として設けられている。
【0079】
ここで開閉フレーム175とその周辺の構成を、前述した図7および図8や、図10に基づき説明すると、外蓋カバー35により蓋体31内に形成された調圧収容部154とは別の開閉収容部171に、開閉用ソレノイド172が配置される。この開閉用ソレノイド172も、前記調圧用ソレノイド78と同様に、電磁力により内部からプランジャー173を出没させる構成となっている。そして、前記開閉フレーム175は、開閉用ソレノイド172と共に開閉収容部171に収容配置され、プランジャー173と共に可動するようになっている。このように、開閉弁操作手段211を構成する開閉フレーム175が、好ましくはソレノイドである開閉用ソレノイド172を駆動源として動作することで、炊飯行程において確実に開閉フレーム175を移動させることが可能になる。また同様に、調圧フレーム152が、好ましくはソレノイドである調圧用ソレノイド78を駆動源として動作することで、炊飯行程において確実に調圧フレーム152を移動させることが可能になる。
【0080】
前記操作部材可動部188は、操作部材212と開閉用ソレノイド172のプランジャー173との間にあって、開閉フレーム175の後方に一体化して腕片状に形成される。また、この開閉フレーム175の前方には、操作部材可動部188の略反対側に位置して、突出したクランプ動作規制部189が設けられる。この操作部材可動部188は、その中央部188Aと先端部188Bで高低差を有する形状となっており、さらに操作部材212に設けた孔213に貫通した状態でセットされる。つまり、ここでの操作部材可動部188は、操作部材212との当接部にカム面188Cを形成しており、プランジャー173ひいてはこれに連動する操作部材可動部188が出没するのに伴い、操作部材212が接するカム面188Cの位置が変わることで、開閉用シャフト186ひいては開閉弁182が上下動するようになっている。
【0081】
251は、内蓋組立体55の内蓋56に設けられる安全弁である。この安全弁251は、鍋11内の圧力が何らかの要因で設定値以上である異常圧力に昇圧すると開弁して、鍋11の内圧を下げるものである。
【0082】
そして、内蓋組立体55を外蓋カバー35の下面に取付けると、シャフトバネ203によって上方に押し上げられた開閉弁シャフト201の上端面は、シール部材217の操作部222に当接する。このとき、開閉用ソレノイド172は非通電状態にあり、操作部材212の孔213には操作部材可動部188の中央部188Aが位置しているので、弾性部材215が撓んで操作部材212の第1開閉シャフト212Aが上方に押し上げられる。よって、シャフトパッキン204は連通孔181から離れて、当該連通孔181は開放された状態を保持する。つまり図11に示すように、通常時における開閉用ソレノイド172の非通電状態では、操作部材可動部188の中央部188Aに操作部材212が当接し、操作部材212の第1開閉シャフト212Aや開閉弁62の開閉弁シャフト201が上方に位置するので、内蓋56に形成した連通孔181は開放されたままの状態となる。
【0083】
逆に図12に示すように、炊飯の所定の行程が開始して、開閉用ソレノイド172が通電状態になると、開閉フレーム175が動作して、操作部材212の孔213内で操作部材可動部188が後退して貫通移動し、操作部材212は操作部材可動部188の先端部188Bに当接して保持される。前述のように、操作部材可動部188の中央部188Aと先端部188Bでは高低差を有しており、且つ先端部188Bは中央部188Aよりも操作部材212が当接するカム面188Cが下方に位置している。そのため、溝241と爪242との嵌合により操作部材212が一定範囲での全長を保ちながら、操作部材212およびシール部材217の操作部222は下方に移動し、内蓋組立体55に設けた開閉弁シャフト201が、シール部材217の操作部222によって下方に押し込まれることで、この開閉弁シャフト201の先端に取付けたシャフトパッキン204が連通孔181を閉止する。このとき、シャフトパッキン204が連通孔181を確実に閉塞するために、シール部材217の操作部222が開閉弁シャフト201を下方に押し込む力は、シャフトバネ203が開閉弁シャフト201を上方に付勢する力よりも大きくなるようにする。また本実施例では、開閉フレーム175の操作部材可動部188が開閉弁シャフト201を押す際のストローク(移動距離)が、溝241と爪242との嵌合により一定の範囲に規定されるため、シャフトパッキン204が連通孔181を安定して閉塞することができる。
【0084】
先に説明したように、調圧用ソレノイド78の周辺において、調圧フレーム152の後方には、調圧弁65を動かすための調圧操作部161が設けられる一方で、調圧フレーム152の前方には、突出したクランプ動作規制部163が設けられる。これと同様に、開閉用ソレノイド172の周辺において、開閉フレーム175の後方には、カム面188Cを有する操作部材可動部188が設けられ、開閉フレーム175の前方には、突出したクランプ動作規制部189が設けられる。そして、炊飯を開始し、加圧する所定の行程に移行するなどして、調圧用ソレノイド78のプランジャー151が後退位置に移動すると、クランプ44がクランプ受け50から係合解除する方向に動くのを規制するために、クランプ動作規制部163がクランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むように配置されると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173が後退位置に移動すると、クランプ動作規制部189がクランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むように配置される。このとき、蓋開ボタン46によりクランプ44を押し込もうとしても、クランプ44はその動きを規制されて、クランプ受け50との係合を解除できない。
【0085】
逆に、調圧用ソレノイド78のプランジャー151が進出位置にあるときには、クランプ動作規制部163がクランプ44の基端部44Aから離れると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173が進出位置にあるときにも、クランプ動作規制部189がクランプ44の基端部44Aから離れる。つまり、クランプ44の基端部44Aの下方に、クランプ動作規制部163とクランプ動作規制部189の両方またはどちらか一方が位置するときには、クランプ44の動作が規制され、クランプ44がクランプ受け50から係合解除できなくなるが、クランプ動作規制部163とクランプ動作規制部189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方から離れると、クランプ44の動作は規制されなくなり、蓋開ボタン46を押動操作すると、クランプ44がクランプ受け50から離脱して、蓋体31が開くようになっている。なお、クランプ動作規制部163,189は、クランプ44の基端部44Aの下方に潜り込まなくても、クランプ44の動作を規制する位置や形状を有していれば、どのようなものでも構わない。
【0086】
81は、蓋体31を本体1に閉じた状態で、鍋11内を通常の大気圧よりも低くするために設けた減圧手段である。この減圧手段81は、減圧駆動源としての減圧ポンプ82と、この減圧ポンプ82から本体1および蓋体31を経て、内蓋56に設けた孔83に至る管状の経路84とにより構成される。また、蓋体31の内部には、経路84の基端部を開閉する開閉体としての電磁弁87と、この電磁弁87を収容する弁収容体88が設けられる。弁収容体88には、前記内蓋56の孔83の周囲に向けて放熱板34から下方に突出した筒状の減圧パッキン89が接続される。ここでの内蓋56の孔83は、真空引き用の真空連通孔として設けられており、電磁弁87は孔83と減圧ポンプ82との間に設けられる。また経路84は、例えばゴムチューブなどの管で形成され、減圧ポンプ82と電磁弁87との間を連結する。なお、図1では減圧ポンプ82が本体1の後部に設けられているが、これは図7に示すように、蓋体31の後部に設けてもよい。
【0087】
そして、内蓋56を含む内蓋組立体55を蓋体31の下面に装着すると、減圧パッキン89が弾性変形しながら内蓋56の上面に密閉当接し、これにより孔83と減圧ポンプ82とを連通する経路84が形成される。また、内蓋組立体55を装着した状態で蓋体31を閉じると、蓋パッキン57が鍋11に密着して、連通孔77,181が閉塞状態にあれば、密閉した鍋11と電磁ポンプ82との間が経路84により連通する。この状態から減圧ポンプ82を起動させると、電磁弁87ひいては経路84が開放して、鍋11内の空気が経路84および減圧ポンプ82を通って本体1の外部に排出され、密閉した鍋11内の圧力が低下する。また、鍋11内の圧力が大気圧よりも一定値下がった場合に、電磁弁87ひいては経路84を閉塞して、鍋11内を減圧状態に保っている。さらに、スローリークにより鍋11内の圧力が上昇した場合にも、電磁弁87ひいては経路84を開放し、減圧ポンプ82を起動させて、鍋11内を大気圧よりも低い状態に維持している。
【0088】
この様な鍋11内が大気圧よりも低い減圧状態では、弁支持体73を構成する脚部79の内側の空気が鍋11内に吸引され、それに伴い調圧弁65や、この調圧弁65を載置支持する弁支持体73が、調圧バネ74の付勢に抗して下降する。しかし、弁支持体73の開口部70が第1調圧パッキン71の孔71Aよりも低い位置に移動すると、調圧弁65はそれまでの弁支持体73に代わって第1調圧パッキン71に載置され、当該第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保され、減圧を継続して行なえる(図5参照)。
【0089】
逆に炊飯時などにおいて、鍋11内を大気圧以上に加圧する時には、弁支持体脚79の内側が鍋11内から直接圧力を受けるため、調圧弁65の自重に抗して弁支持体73が上昇する。ここで、弁支持体73の開口部70が第1調圧パッキン71の孔71Aよりも高い位置に移動すると、調圧弁65はそれまでの第1調圧パッキン71に代わって弁支持体73に載置され、調圧孔70を塞ぐと共に、弁支持体73に載置している調圧弁65も、弁支持体73と同様に上昇する。そして、弁支持体73は上昇後、第1調圧パッキン71に当接し、それにより第1調圧パッキン71の孔71Aを通過しようとする蒸気などを遮断して、鍋11内の密閉を保持できる(図4参照)。
【0090】
再度図1に戻り、前記本体1の前部には操作パネル101が設けられている。この操作パネル101の内側には、時間や選択したメニューを表示するLCD102や、他にいずれも図示しないが、現在の行程を表示するLEDや、炊飯を開始させたり、メニューを選択させたりする操作スイッチ103(図5参照)の他に、鍋11内の減圧状態を選択する減圧選択スイッチなどを配置した基板が配設される。操作パネル101にはボタン名などが表示され、電子部品である制御手段にほこりや水が付着することも防止している。なお、操作パネル101を蓋体31の正面側に設けてもよい。
【0091】
111は、本体1の内部前方に設けられた加熱制御手段である。この加熱制御手段111は、加熱手段である加熱コイル16を駆動させるための発熱素子(図示せず)を基板に備えて構成される。この加熱コイル16を駆動する素子は、加熱コイル16の発振と共に加熱されるが、動作状態を保証する使用条件温度を有するので、一定温度以下で使用する必要がある。そのために、加熱コイル16を駆動する素子は、例えばアルミニウムのような熱伝導性の良好な材料で構成されるフィン状の放熱器112に熱的に接続され、冷却手段である冷却ファン113から発する風を放熱器112に当てて熱を奪うことにより、使用条件温度内で素子を駆動するようにしている。
【0092】
冷却ファン113は、加熱制御手段111に取付けられた放熱器112の下方、若しくは側部に配置されている。また、本体1の底部若しくは側部には、冷却ファン113から発し、加熱制御手段111に取付けられた放熱器112から熱を奪って温かくなった風を、本体1の外部へ排出するための孔(図示せず)が複数設けられている。加熱制御手段111は製品内部すなわち本体1内に収納されるが、鍋11の外周囲のどの位置に配置してもよい。また、本体1の底部若しくは側部に設けた孔も、どの位置に配置してもよい。しかし、近年は製品の小形化設計が求められている背景もあり、加熱制御手段111や冷却ファン113と、温かな風を排出する孔114は、鍋11をはさんで略反対位置に配置するのが好ましい。さらに、本体1の内部には、電源プラグ(図示せず)を巻き取るためのコードリール116が設けられる。
【0093】
また図2において、141は、蓋開ボタン46の裏(内)側部に取付けられた基板である。この基板141には、前記減圧手段81が動作すると点灯作動する警報手段としてのLED142と、磁気検知素子としてのホール素子143がそれぞれ実装される。LED142は、別な図3に示すように、蓋開ボタン46の上面に対向して設けられており、またホール素子143は、蓋開ボタン46が押されていない状態では、外蓋32に設けた磁性体としてのマグネット144に対向して配設される。ホール素子143は、前記クランプ44とクランプ受け50との係合を解除しようとしたときに、マグネット144から離れることにより、その動作を検知して後述する加熱制御手段111に検知信号を出力する検知手段として設けられる。なお、別なセンサにより同等の機能を有する検知手段を構成してもよい。
【0094】
LED142は、炊飯初期のひたしや保温の工程で減圧手段81が作動し、鍋11内が大気圧以下のときにのみ連続点灯すると共に、保温工程中に鍋11内が大気圧以下のときに、クランプ44とクランプ受け50との係合を解除しようとすると、ホール素子143からの検知出力を受けて所定時間点滅し、その後消灯する表示手段として設けられる。LED142に代わり、例えばLCDなどの他の表示手段を用いてもよいし、ブザーなどの報知手段を設けてもよい。この場合、報知手段も同様に工程や連動する構成としてよい。その他、前記蓋体31は、前述した蓋32,放熱板34,外蓋カバー35,および内蓋組立体55の他に、蓋体31としての外観品位を向上させるために、外蓋32の上面部を覆う三次元形状の金属蓋33を備えてもよい。
【0095】
次に制御系統について、図14を参照しながら説明する。同図において、111は前述の加熱制御手段で、これは前記鍋温度センサ21および蓋温度センサ61からの各温度情報や、操作スイッチ103からの操作信号の他に、前記蓋開ボタン46に設けたホール素子143や、蓋体31の開閉を検知する別なホール素子191からの検知信号を受け付けて、炊飯時および保温時に鍋11の底部を加熱する加熱コイル16と、鍋11の側部を加熱するコードヒータ26と、蓋体31を加熱する蓋ヒータ36とを各々制御すると共に、前述した減圧ポンプ82や、電磁弁87や、蓋体31の内部に設けたソレノイド78,172や、LED142を含む表示手段128を各々制御するものである。特に本実施例の加熱制御手段111は、鍋温度センサ21の検出温度に基づいて主に加熱コイル16が制御されて鍋11の底部を温度管理し、蓋温度センサ52の検出温度に基づいて主に蓋ヒータ26が制御されて放熱板34ひいては内蓋56を温度管理するようになっている。加熱制御手段111は、自身の記憶手段(図示せず)に記憶されたプログラムの制御シーケンス上の機能として、炊飯時に前記鍋11内の被炊飯物を炊飯加熱する炊飯制御手段118と、保温時に鍋11内のご飯を所定の保温温度に保温加熱する保温制御手段119とをそれぞれ備えている。
【0096】
ここで、蓋開閉検知手段であるホール素子191について説明すると、このホール素子191は例えば蓋体31の後方に設けられた磁性体であるマグネット(図示せず)に対向して、本体1の内部に取付けられる。なお、同様の機能を発揮できれば、ホール素子191に代わり他のセンサを用いてもよい。
【0097】
ここでの保温制御手段119はタイマー手段120を備えており、保温動作が開始するとタイマー手段120を起動させて保温経過時間を計時し、この保温経過時間が予め設定した時間(例えば1時間)に達したら、鍋11内の圧力が加圧状態からほぼ大気圧に戻り、且つ鍋11内の温度が保温温度にまで低下した、いわゆる保温が安定する状態と判断するようになっている。また、加熱制御手段11はその他に、操作スイッチ103からの予約炊飯開始の指令を受けて、予め記憶手段に記憶された所定時間に鍋11内の被炊飯物が炊き上がるように炊飯制御手段118を制御する予約炊飯コースを実行可能な予約炊飯制御手段121を備えている。なお、前記所定時間は、操作スイッチ103の例えば時間キーや分キーを操作することで、適宜変更することができる。
【0098】
122は、加熱制御手段111からの制御信号を受けて、加熱コイル16に所定の高周波電流を供給する高周波インバータ回路などを内蔵した加熱コイル駆動手段である。またこれとは別に、加熱制御手段111の出力側には、加熱制御手段111からの制御信号を受けて、放熱板34や内蓋56を加熱するように蓋ヒータ36を駆動させる蓋ヒータ駆動手段123と、コードヒータ26をオンにするコードヒータ駆動手段124と、ソレノイド78,172をオンまたはオフにするソレノイド駆動手段125と、減圧ポンプ82を駆動させるポンプ駆動手段126と、電磁弁89をオンまたはオフにする電磁弁駆動手段127と、表示手段128を駆動させる表示駆動手段129が各々設けられる。前記炊飯制御手段118による炊飯時、および保温制御手段119による保温時には、鍋温度センサ21と蓋温度センサ61からの各温度検出により、加熱コイル16による鍋11の底部への加熱と、コードヒータ26による鍋11の側面への加熱と、蓋ヒータ36による蓋体31への加熱が行なわれるように構成する。また、前記炊飯制御手段118による炊飯が終了し、鍋11内の被調理物がご飯として炊き上がった後は、保温制御手段119による保温に自動的に移行し、鍋温度センサ21の検知温度に基づき、加熱コイル16やコードヒータ26による鍋11への加熱を調節することで、ご飯を所定の保温温度(約70℃〜76℃)に保温するように構成している。
【0099】
特に前記コードヒータ26による加熱について補足説明すると、炊飯後にご飯の温度が約100℃から約73℃の保温温度に低下するまでと、約73℃の保温安定時に、コードヒータ26を発熱させて、蓋体31と本体1との隙間の空間に金属板29から熱放射して、この隙間からの外気の侵入による冷えを抑制すると共に、鍋11のフランジ部14を加熱する。また、保温時にご飯を再加熱する期間にもコードヒータ26により鍋11のフランジ部14を加熱し、ご飯の加熱により発生する水分が鍋11の内面上部に結露することを防止するように構成している。
【0100】
さらに、本実施例における加熱制御手段111は、予約炊飯制御手段121による予約炊飯の待機時の炊飯が開始するまでの期間や、炊飯制御手段118が実質的な炊飯を開始するまでのひたし行程の期間や、保温制御手段119により前述した保温が安定する状態と判断した後で、鍋11内が大気圧より低くなるように、減圧ポンプ82や減圧状態保持用の電磁弁87を動作させる減圧制御手段130としての機能をも備えている。
【0101】
次に、上記構成について、その作用を図15のタイミングチャートに基づき説明する。この図15において、最上段およびその次の段にある各グラフは、鍋11内における温度および圧力の各推移を示し、以下、調圧弁65(調圧用ソレノイド78)の動作タイミングと、開閉弁182(開閉用ソレノイド172)の動作タイミングとをそれぞれ示している(塗潰しの状態がオン)。
【0102】
炊飯や保温が行なわれていない切状態において、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172は共に非通電(オフ)状態にある。このとき、調圧用ソレノイド78のプランジャー151は進出位置にあって、調圧孔70が開放するように調圧弁65が移動すると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173も進出位置にあって、内蓋56の連通孔181が開放するように、開閉弁シャフト201が上方に移動する。したがって、鍋11内は調圧孔70および連通孔181を通して外部と連通し、大気圧に維持される。また、クランプ動作規制部163,189が、共にクランプ44の基端部44Aの下方から離れた位置にあるので、クランプ44の動作は規制されず、蓋開ボタン46を押動操作すれば、クランプ44がクランプ受け50から離脱する。すなわち切状態では、蓋体31を自由に開閉することができる。
【0103】
その後、鍋11内に被炊飯物である米および水を入れ、操作スイッチ103の例えば炊飯キーを操作すると、炊飯制御手段118による炊飯が開始する。ここで炊飯制御手段118は、実質的な炊飯を開始する前に、鍋11内の米に対する吸水を促進させるために、鍋温度センサ21による鍋11の底部の温度検知に基づいて、加熱コイル16とコードヒータ26で鍋11の底部と側面部をそれぞれ加熱し、鍋11内の水温を約45〜60℃に15〜20分間保持するひたしを行なう。このひたし中は、減圧手段81の減圧ポンプ82と電磁弁87が作動すると共に、鍋11内が大気圧以下のときには、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172が共に通電(オン)状態になって、調圧用ソレノイド78のプランジャー151と開閉用ソレノイド172のプランジャー173が各々後退位置に移動する。これにより、調圧操作部161が調圧弁65から離れて、調圧弁65が第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぎ、また操作部材可動部188の先端部188Bに操作部材212が当接して、開閉弁シャフト201が下方に押し込まれ、シャフトパッキン204が内蓋56の連通孔181を塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。また、クランプ動作規制部163,189が、何れもクランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むので、クランプ44の回動が規制され、蓋開ボタン46を押動操作しようとしても、クランプ44とクランプ受け50との係合が二重にロックされ、蓋体31が開かないようになる。
【0104】
また、ひたし行程が開始すると、減圧制御手段130は実質的な炊飯が開始する直前まで減圧選択スイッチをオンにすると共に、鍋11内が減圧中であることを表示手段128のLCDに表示させる。これにより、使用者は鍋11内が減圧中であることを知ることができる。その後、減圧制御手段130は減圧ポンプ82の駆動を停止させ、且つ電磁弁87ひいては経路84を閉じて、鍋11内を減圧状態に維持し、スローリークによる圧力上昇を考慮して、一定時間が経過すると、減圧制御手段130は再び減圧ポンプ82を駆動させると共に、電磁弁87ひいては経路84を開放させて、鍋11内から空気を排出する。このような動作を繰り返すことで、減圧ポンプ82と電磁弁87が同時にオン,オフ制御され、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。
【0105】
こうして、ひたし時には鍋11内は減圧状態が維持される。また、この減圧時には、調圧弁65が第1調圧パッキン71に載置され、当該第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。そのため、ひたし時に密閉状態で鍋11内を減圧することができ、鍋11内において米に水を十分に吸水させることが可能になる。
【0106】
その後、所定時間のひたしが終了すると、炊飯制御手段118は実質的な炊飯動作を開始すると共に、減圧制御手段130による鍋11への減圧制御は中断し、減圧選択スイッチはオフになると共に、LCDによる減圧状態である旨の表示も停止する。併せて、減圧ポンプ82および電磁弁87は、その後の保温が安定した状態になるまでオフ状態となる。
【0107】
炊飯行程に移行すると、炊飯制御手段118は加熱コイル16により鍋11を強加熱し、被炊飯物への沸騰加熱を行なう。この沸騰加熱時に鍋11の底部の温度が90℃以上になり、蓋体31の温度が90℃以上で安定したら、鍋11内が沸騰状態になったものとして、それまでよりも加熱量を低減した沸騰継続加熱に移行する。沸騰加熱の途中で、炊飯制御手段118はソレノイド78をオフ状態にして、調圧弁65を調圧孔70から退避させる。これにより鍋11はほぼ大気圧に維持されるが、開閉用ソレノイド172は引き続きオン状態にあり、クランプ動作規制部189がクランプ44の基端部44Aの下方に位置して、蓋体31を開けることができないようになっている。
【0108】
なお、上述の蓋体31の温度が90℃以上で安定したことは、蓋温度センサ61からの検出温度の温度上昇率により検知される。また、この沸騰検知において、鍋温度センサ21と蓋温度センサ61とにより、鍋11の底部および蓋体31がいずれも90℃以上になったことを確認でき、完全に鍋11内が沸騰したことを精度よく検知できる。
【0109】
また、前記鍋11の底部,鍋11の側面部または蓋体31のいずれかが120℃以上の通常ではあり得ない検知温度になったら、加熱制御手段111は何らかの異常があると判断して炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を停止する切状態にするか、後述するむらしに移行するか、保温を行ない、異常加熱を防止する。逆に、前記鍋11の底部または蓋体31のいずれかが90℃以上になって所定時間(例えば5分)経過しているのに、それ以外の鍋11の底部または蓋体31のいずれかが90℃未満で低い状態の場合、この温度の低い状態の鍋温度センサ21または蓋温度センサ61が、何らかの理由(汚れや傾きや接触不良など)で温度検知精度が悪化していると判断し、同様に炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を停止する切状態にするか、むらしに移行するか、保温を行ない、これに対処する。
【0110】
沸騰継続に移行すると、炊飯制御手段118は蓋ヒータ36による蓋加熱を開始させる。ここでの蓋加熱は、内蓋56の温度が100〜110℃になるように、蓋温度センサ61の検知温度により管理される。そして、鍋11の底部が所定の温度上昇を生じたら、鍋11内の炊上がりを検知して、炊飯制御手段118による炊飯行程を終了し、保温制御手段119により保温行程に移行して、最初のむらしに移行する。むらし中は蓋温度センサ61の検出温度による温度管理によって蓋ヒータ36を通断電し、内蓋56への露付きを防止すると共に、ご飯が焦げない程度に高温(98〜100℃)が保持されるように、鍋11の底部の温度を管理する。むらしは所定時間(15〜20分)続けられ、むらしが終了したら保温制御手段119による保温に移行する。
【0111】
保温になると、加熱コイル16にて鍋11の底部と側面下部を加熱すると共に、鍋11内に収容するご飯の温度よりも僅かに高く、蓋ヒータ36により蓋体31の下面を加熱し、さらに鍋11の側面をコードヒータ26でご飯が乾燥せず、かつ露が多量に付着しないように温度管理する。鍋11内のご飯の温度は70〜76℃に温度保持されるが、この保温時においても、鍋温度センサ21や蓋温度センサ61が相互に異常に高かったり、あるいは異常に低かったりした場合には、異常を検知してこの異常加熱を防止する。
【0112】
前述したように、鍋11内の沸騰状態を検知すると、炊き上げ(沸騰継続加熱)とむらしが続けて行なわれるが、むらしの途中までは鍋11内を大気圧以上にするために、炊飯制御手段118は減圧手段81の作動を停止させつつ、調圧用ソレノイド78および開閉用ソレノイド172を何れもオン状態にし、連通孔77を調圧部58で閉止すると共に、別な連通孔181を開閉弁62で閉止する。これにより、炊飯加熱の継続中は、鍋11内と外部との連通が遮断され、鍋11内の圧力が上昇する。このとき、クランプ動作規制部163とクランプ動作規制部189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むので、クランプ44とクランプ受け50との係合が二重にロックされ、蓋体31を開けることはできない。
【0113】
その後、鍋11内が所定の圧力に到達したことを検知すると、調圧用ソレノイド78がオン状態からオフ状態に切り換わるため、調圧操作部161が調圧弁65を押す方向に調圧フレーム152が移動し、調圧孔70が開放して鍋11内の圧力が大気圧に近づく。この状態では、調圧フレーム152のクランプ動作規制部163が、クランプ44の基端部44Aの下方から離れた位置に移動するものの、別な開閉フレーム175のクランプ動作規制部189が、引き続きクランプ44の基端部44Aの下方に位置しているため、蓋開ボタン46によりクランプ44を押し込もうとしても、クランプ44はその動きを規制されて、蓋体31を開けることはできない。
【0114】
むらしに移行すると、その後の保温開始直後に蓋体31が開けられることを考慮して、鍋11内を徐々に大気圧に戻す動作が行なわれる。そして炊飯制御手段118は、むらしの途中で調圧用ソレノイド78を先にオン状態からオフ状態に切り換えて、調圧弁65を調圧孔70から退避させ、連通孔77を開放して鍋11内を大気圧に戻す。その後で、開閉用ソレノイド172をオン状態からオフ状態に切り換え、別な連通孔181を開放する。こうすれば、少なくとも調圧孔70を開放した後も、開閉用ソレノイド172がオフ状態になるまでは、蓋体31を開けることができなくなり、鍋11内が大気圧に戻りきらないうちに、不用意に蓋体31が開くのを防止できる。
【0115】
実質的な炊飯であるむらしが終了して保温工程に移行した直後は、鍋11内が調圧孔70および連通孔181を通して外部と連通し、大気圧に維持される。それと共に、クランプ動作規制部163,189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方から離れた位置にあるので、蓋体31を自由に開閉することができる。
【0116】
保温制御手段119は、炊飯行程が終了するとタイマー手段120による保温経過時間の計時を開始する。このとき減圧制御手段130は、当該保温経過時間が予め設定した時間になるまで、すなわち保温が安定する状態と判断されるまで、表示手段128のLCDを利用して、減圧表示を短時間繰り返し行なわせる。これにより利用者は、炊き上げ後、鍋11内が未だ減圧状態に移行していないことを理解できる。保温制御手段119は、保温経過時間が予め設定した時間に達すると、減圧制御手段130により鍋11内の圧力が大気圧よりも低くなるように、減圧ポンプ82や電磁弁87が再び作動制御する。それと共に、鍋11内を密閉状態にするために、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172を同時にオン状態にする。これにより、クランプ動作規制部163とクランプ動作規制部189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方に潜り込んで、クランプ44の回動が規制される。なお、こうした動作は、保温工程の所定時間後ではなく、保温工程で鍋11内が所定温度に到達したのを鍋温度センサ21が検出したときに、行なわれるようにしてもよい。
【0117】
その後、減圧制御手段130は減圧ポンプ82の駆動を停止させ、且つ電磁弁87ひいては経路84を閉じて、鍋11内を減圧状態に維持し、スローリークによる圧力上昇を考慮して、一定時間が経過すると、減圧制御手段130は再び減圧ポンプ82を駆動させると共に、電磁弁87ひいては経路84を開放させて、鍋11内から空気を排出する。その後は上述した動作が繰り返されて、減圧ポンプ82と電磁弁87が同時にオン,オフ制御され、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。
【0118】
保温工程に移行すると、保温制御手段119は前記ホール素子143,191からの検知信号を受け付ける。すなわち、鍋11内を減圧状態にする減圧手段81の作動制御中であって、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172が同時にオンしている状態で、使用者が蓋体31を開けようと意図して蓋開ボタン46を押動操作しようとすると、クランプ44はその回動を規制されてはいるものの、蓋開ボタン46がクランプ44の弾性などにより若干下方に押し込まれ、ホール素子143がマグネット144から離れた位置に移動する。このときのホール素子143からの検知信号を保温制御手段119が受けると、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172は連動してオフ状態になり、双方のプランジャー151,173が進出して、調圧孔70および連通孔181を開放すると共に、クランプ44に対する回動規制も解除され、蓋開ボタン46を押し続けることで、蓋体31を開けることができるようになる。
【0119】
その後、鍋11内から炊き上がったご飯を取り出すなどして、蓋体31を再度閉じると、今度は別なホール素子191が蓋体31の閉状態を検知し、その信号を保温制御手段119に送出する。これを受けて保温制御手段119は、所定時間後に再び減圧手段81を作動させ、且つ不用意に蓋体31が開かないように、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172を同時にオン状態にする。
【0120】
このように、内蓋56に設けた2つの連通孔77,181をそれぞれ開閉する動作を繰り返すことで、鍋11内の圧力を自在に変化させることができる。そして、炊飯コースや炊飯量に応じて加圧時の圧力を変えることで、炊き上がりを可変することができるようになる。
【0121】
また、前記むらしや保温工程中において、減圧手段81が作動し、鍋11内が大気圧以下のときには、LED142を連続点灯させる制御信号を、加熱制御手段111が表示駆動手段129に送出する。これにより使用者は、鍋11内が減圧中であることにより、蓋体31と本体1が係合ロックされていることを直ぐに認識できる。また、蓋開ボタン46を押動操作しようと意図してから、実際に蓋体31を開放できるまでには、若干のタイムラグがあるので、蓋体31のクランプ44と本体1のクランプ受け50との係合を解除しようと意図したときの検知信号をホール素子143が出力すると、LED142が点滅動作に切り替わり、その後所定時間が経過したら、LED142を自動的に消灯させるようにすれば、何故直ぐに蓋体31が開かないのかを使用者に理解させることができる。
【0122】
上記一連の行程で、鍋11内が加圧状態にあるときに、調圧用ソレノイド78が通常の位置に復帰動作しなくなったり、或いは調圧弁65と調圧孔70との間に異物が挟まれたりすると、調圧孔70ひいては連通孔77が開放しなくなり、鍋11内の圧力を大気圧に近づけることができなくなる。この状態が継続すると、鍋11内は、調圧用ソレノイド78が復帰動作する所定の圧力値よりも上昇し、内蓋56自体も上方へ向けて変形する。この上昇した圧力が所定値に達した場合に、開閉弁操作手段211に設けた弾性部材215が動作する。本実施例では、弾性部材215としてコイルバネを用いている関係で、弾性部材215が開閉弁シャフト201を下方に押し込む力よりも、鍋11内から開閉弁シャフト201に加わる圧力が大きくなると、シャフトパッキン204を含む開閉弁シャフト201は、弾性部材215の付勢に抗して上方へ移動し、連通孔181を開放する。これにより、鍋11内の圧力を大気圧へと近づけることができる。また、開閉弁シャフト201が上方に移動しても、開閉フレーム175の動作には影響を及ぼさず、操作部材可動部188の先端部188Bに操作部材212が当接する状態を維持しているので、開閉フレーム175のクランプ動作規制部189は、クランプ44の動作を規制する位置に保持される。よって、不用意に蓋体31が開くのを防止できる。
【0123】
また、減圧ポンプ82や電磁弁87の動作時には、調圧弁65が調圧孔70を閉止すると共に、開閉弁62が連通孔181を閉止する。これは、鍋11内を密閉状態にシールするためである。鍋11内が大気圧未満に減圧されてゆくことで、開閉弁62を取付けた内蓋56は次第に下方に弾性変形する。ここで、シール部材217の操作部222が操作部材212に対して上下動しない構造であると、内蓋56が下方に変形したときに、それまで圧縮されていたシャフトバネ203が元の長さに戻ると、開閉弁シャフト201の上端面とシール部材217の操作部222との間に隙間を生じ、鍋11内の密閉が崩壊することになる。しかし、本実施例における開閉弁操作手段211は、シール部材217の操作部222が、弾性部材215によって開閉弁シャフト201に当接する方向に付勢され、且つ操作部材212に対して上下動できるようになっているので、シャフトバネ203が元の長さに戻る程度にまで、内蓋56が下方に変形した場合であっても、開閉弁シャフト201の上端面はシール部材217の操作部222に押されて隙間は生ぜず、鍋11内の密閉を維持できる。
【0124】
操作部材可動部188の先端部188Bに操作部材212が当接する位置に、開閉弁操作手段211の開閉フレーム175が動作したときに、操作部材212が下方に移動した移動量をAとする。またこの状態から、図12に示すように、内蓋組立体55を蓋体31の下側に装着したときに、シール部材217の操作部222が開閉弁シャフト201を押し込む量をBとする。操作部材212とシール部材217の操作部222とに間に設けたコイルバネからなる弾性部材215は、図12に示す状態で、(A−B)の長さ分だけ撓む。また、この弾性部材215の撓みと同様に、操作部222が上下動できるように、シール部材217の繋ぎ部223も撓む。
【0125】
減圧手段81を利用して、鍋11内を大気圧未満に減圧すると、内蓋56の下方への変形が発生する。この変形量をCとする(図13参照)。このとき、シャフトバネ203の撓み量が殆ど無視できるものとして考えると、前記弾性部材215の撓み分(A−B)が、減圧時における内蓋56の変形量Cよりも大きくなるように設定すればよい。これを数式で表わすと、(A−B)>Cとなる。こうすれば、内蓋組立体55に設けた開閉弁シャフト201と、外蓋カバー35に設けた開閉弁操作手段211を構成するシール部材217の操作部222との間が離れ始めようとしても、撓んでいる弾性部材215とシール部材217の繋ぎ部223が伸びて、開閉弁シャフト201とシール部材217の操作部222との間には隙間が生じない。
【0126】
また、鍋11内を大気圧よりも高く加圧した場合には、内蓋56が反対に上方に変形して、内蓋56に取付けた開閉弁62の開閉弁シャフト201も上方に移動するが、この開閉弁シャフト201は操作部材212により上方への動きを規制されているので、連通孔181が開放することはない。よって、鍋11内が加圧または減圧されるのに伴ない、内蓋56が上方または下方の何れに変形した場合であっても、開閉弁62は連通孔181を確実に閉止し、よって鍋11内の密閉を良好に維持することができる。また、鍋11内の加圧時に内蓋56が上方に変形しても、この変形力はシャフトバネ203や弾性部材215で緩和され、開閉弁シャフト201や操作部材212をわざわざ金属部品で形成する必要がない。よって、製品コストの上昇を抑えることができる。さらに、内蓋56が変形しないような特殊な構造を採用する必要もないので、この点でも製造コストの上昇を抑えることができ、併せて製品サイズをコンパクトにできる。
【0127】
このように本実施例では、鍋11と、鍋11を加熱する加熱手段としての加熱コイル16と、鍋11や加熱コイル16を収容する本体1と、本体1の上部を覆う蓋体31と、鍋11を直接覆い、蓋体31に着脱自在に設けられる内蓋56とを備え、内蓋56には、所定部である鍋11内と連通する孔部たる孔181と、所定部である孔181を開閉する開閉手段としての開閉弁62を設けた炊飯器において、開閉弁62を操作して孔181を閉止する操作手段としての開閉弁操作手段211を備え、この開閉弁操作手段211の操作部材212は、可動部材である第1開閉シャフト212Aおよび第2開閉シャフト212Bの間に介在して弾性部材215を備え、規制部材である溝241と爪242とによって、操作部材212が弾性手段215の所定の取付け位置に設けられている。
【0128】
こうすると、弾性部材215の弾性力や寸法が個々にばらついていたとしても、開閉弁操作手段211の操作部材212が所定の位置で開閉弁62の開閉弁シャフト201を操作する。そのため、操作部材212が開閉弁シャフト201を操作する際のストロークが安定し、開閉弁62のシャフトパッキン204により孔181を確実に閉止できるようになり、結果的に鍋11内の調理性能の低下を抑制できる。
【0129】
また、ここでの開閉弁操作手段211は、開閉弁62を操作する操作部材212と、操作部材212を動作させるフレーム部材としての開閉フレーム175と、シール部材217と、弾性部材215とを備え、シール部材217は、蓋体31に形成した孔部216をシールするためのシール部221と、開閉弁62の開閉弁シャフト201に当接する操作部222と、シール部221と操作部222を連結する柔軟性に富む繋ぎ部223とからなり、操作部材212とシール部材217の操作部222との間に弾性部材215を配置している。
【0130】
上記各構成において、本体1ひいては鍋11内が大気圧よりも低い減圧状態となり、開閉弁62が開閉弁操作手段211から離れる方向に内蓋56が変形した場合であっても、操作部材212とシール部材217との間にある弾性部材215によって、シール部材217が開閉弁62の開閉弁シャフト201に当接する方向に付勢され、より確実に開閉弁62が孔181を閉止できる。また、鍋11内の圧力が所定値以上に上昇した場合に、弾性部材215の付勢に抗して開閉弁62が孔181を開放するので、この弾性部材215によって本体1ひいては鍋11内の圧力を簡単に調整できる。
【0131】
また本実施例では、蓋体31は加熱コイル16を備えた本体1に開閉自在に設けられ、蓋体31と本体1とを所定の閉状態に保持する保持手段としてのクランプ44を備え、開閉フレーム175は、開閉弁62が孔181を閉止する開閉弁操作手段211の動作時に、クランプ44の保持解除を妨げる位置に移動し、このときの開閉フレーム175の位置と、鍋11内の圧力上昇によって開閉弁62が孔181を開放するときの開閉フレーム175の位置が同じになるように構成している。
【0132】
この場合、開閉弁62の開閉弁シャフト201を動作させて孔181を閉止すると、クランプ44の保持解除を妨げる位置に開閉フレーム175が移動し、その後、鍋11内の圧力が所定値以上に上昇し、開閉弁62が孔181を開放して鍋11内を大気圧に戻そうとするときにも、開閉フレーム175は引き続きクランプ44の保持解除を妨げる位置に止まっていて、クランプ44は動かないようになっている。そのため、鍋11内が大気圧に戻りきらないうちに、不用意に蓋体31が開くのを防ぐことができ、米の生煮えを防止することができる。また、鍋11内を加圧した時に内蓋56が変形しても、この変形力は操作部材212とシール部材217の操作部222との間にある弾性部材215で緩和され、操作部材212をわざわざ金属部品しなくても、開閉弁操作手段211に対し過剰な負荷が加わるのを防ぐことができる。
【0133】
また本実施例では、開閉フレーム175を動作させるソレノイドとしての開閉用ソレノイド172を設けているが、開閉用ソレノイド172を駆動源として開閉フレーム175を動作させることで、孔181を開閉する開閉弁62を確実に移動させることが可能になる。
【0134】
さらに本実施例のように、鍋11内を大気圧よりも低い状態にする減圧手段81を、予め炊飯器の内部に備えてあれば、例えば保温時に減圧手段81を利用して、密閉状態で鍋11内を減圧することで、鍋11内の酸素濃度が下がると共に、鍋11に収容した被炊飯物の水分蒸発を防ぐことができ、メイラード反応や酸化を十分抑制して、食味のよいご飯を長期間得ることができる。
【0135】
次に、鍋11を大気圧以上の加圧状態にする加圧手段を備えていないいわゆる真空式炊飯器について、蓋体31内部の要部構成を図16〜図18に基づき説明する。なお、上記図1〜図15の実施例と共通する箇所には共通する符号を付し、共通する部分の説明は重複を避けるため極力省略する。
【0136】
この変形例は、前記内蓋56に設けた調圧部58に代わって、蓋体31の内部にユニット化した状態で調圧部251を組み込んだ点が注目される。そのため、内蓋56には調圧部58が設けられておらず、代わりに蓋閉時において鍋11の内部に連通する孔252だけが設けられる。
【0137】
調圧部251は、鍋11内からの圧力が加わらない分、前述の調圧部58よりも簡素化した構成となっている。より具体的には、前記調圧弁65に相当する球状の真空弁261と、弁体としての真空弁261を載置する座部として設けられた真空弁パッキン262と、真空弁261が自重で調圧部251の下方から抜け出さないように保持する略平板状のカバー下部材263と、このカバー下部材263と共に真空弁261を覆うドーム状のカバー上部材264と、ねじ265などの止め具を利用して外蓋カバー35に取付けられる真空弁ベース266が、調圧部251のユニット化した組立部として、外蓋32と外蓋カバー35との間の内部空間に配設される。なお、図17に示すように、部品点数を減らす目的で、真空弁ベース266は外蓋カバー35の一部として、当該外蓋カバー35と一体に形成してもよい。
【0138】
真空弁パッキン262は、真空弁261が転動するように漏斗状に形成された載置面271と、この載置面271の中心部に設けられた貫通孔272を備えており、カバー下部材263とカバー上部材264との間に、その外周部が挟持される。そして、好ましくは弾性を有する柔軟な材料で真空弁パッキン262を形成することで、カバー下部材263やカバー上部材264と真空弁パッキン262との間が、外気と連通しない密着状態で挟持され、また真空弁261も真空弁パッキン262上を密着した状態で転動する。
【0139】
真空弁パッキン262を載せるカバー下部材263は、前記貫通孔272ひいては調圧部251の内部に連通する筒状の第1通路部275が一体に形成される。これとは別に、カバー上部材264にも、調圧部251の外部に連通する筒状の第2通路部276が一体に形成される。本実施例では、第2通路部276と減圧ポンプ82が可撓性を有するチューブ277で連通接続される。また、内蓋56に設けた孔252に臨むようにして、調圧部251の底面部を構成する真空弁ベース266には、別な筒状の第3通路部278が一体に形成される。第1通路部275と第3通路部278は、可撓性を有するチューブ279で連通接続され、これにより鍋11の内部から減圧ポンプ82に至る経路が形成される。
【0140】
前記孔252と第3通路部278との間を連通させるために、真空弁ベース266または外蓋カバー35と内蓋56との間には連通孔281が形成される。また、これらの部材間で空気抜けが生じるのを防ぐために、放熱板34の連通孔281周縁に装着されたパッキン部材282が、真空弁ベース266または外蓋カバー35と内蓋56にそれぞれ密着して取り付けられる。これにより、孔252から第1通路部275の間は密閉した空間が形成される。
【0141】
真空弁261を載せた真空弁パッキン262の外周部を挟んだ状態で、カバー下部材263の上部からカバー上部材264を被せると、調圧部251には真空弁261を収容する収容部284が形成される。この収容部284は、第1通路部275と第2通路部276以外に、調圧部251の外部と連通しない密閉した空間を形成している。つまり、ここでの調圧部251は、減圧経路の途中で空気抜けが生じないように、第1通路部275と第2通路部276以外に、外部との連通部を設けない構成となっている。
【0142】
少なくともカバー下部材263およびカバー上部材264で構成される収容部284は、蓋体31内で可動可能に設けられている。これを実現するために、前記カバー下部材263の下部には軸285が設けられると共に、前記真空弁ベース266または外蓋カバー35には、この軸283を回動可能な状態で支える軸支部286が設けられる。したがって収容部284は、軸283を中心として蓋体31の内部で遥動できるようになっている。また収容部284には、前記調圧操作部161に代わって調圧フレーム152に形成された減圧操作部288が取付けられ、調圧フレーム152と収容部284が連動する構成となっている。
【0143】
そして、この変形例では図17に示すように、鍋11内を減圧状態にする必要のない場合で、例えば切状態のときには、調圧用ソレノイド78のプランジャー151が進出位置にあって、収容部284が軸283の一側に傾き、真空弁261が貫通孔272から離れる方向に移動して、貫通孔272とそれに繋がる第1通路部275を開放すると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173も進出位置にあって、内蓋56の連通孔181が開放するように、開閉弁シャフト201が上方に移動する。また、減圧制御手段130は減圧ポンプ82を駆動させない。したがって、鍋11内は第1通路部275および連通孔181を通して外部と連通し、大気圧に維持される。また、クランプ動作規制部163,189が、共にクランプ44の基端部44Aの下方から離れた位置にあるので、蓋体31を自由に開閉することができる。
【0144】
また、同じ鍋11内を減圧状態にする必要のない場合でも、鍋11内から蒸気が発生する炊飯時には、開閉用ソレノイド172のプランジャー173を進出位置のままにする一方で、調圧用ソレノイド78のプランジャー151を後退位置に移動させる。すると図16に示すように、収容部284が軸283の中心上に移動し、真空弁261が貫通孔272を塞ぐ方向に移動して、貫通孔272とそれに繋がる第1通路部を閉塞する。そのため、鍋11内の蒸気は減圧ポンプ82に達せず、内蓋56の連通孔181から蒸気口146を通して外部に排出される。また、クランプ動作規制部163が、クランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むので、クランプ44の回動が規制され、蓋開ボタン46を押動操作しようとしても、クランプ44とクランプ受け50との係合がロックされ、蓋体31が開かないようになる。このときも、減圧制御手段130は減圧ポンプ82を駆動させない。
【0145】
さらに、鍋11内を減圧状態にする場合は、図17に示すような第1通路部275を開放した状態で、減圧制御手段130が減圧ポンプ82を駆動すると共に、連通孔181を開閉弁62で閉止するために、開閉用ソレノイド172のプランジャー173を後退位置に移動させる。すると、密閉した鍋11内から減圧ポンプ82を通して空気を排出し、鍋11内を大気圧未満の状態にすることができる。その後、連通孔181を開閉弁62で閉いだまま、減圧制御手段130は減圧ポンプ82の駆動を停止させると共に、調圧用ソレノイド78のプランジャー151を後退位置に移動させ、図16に示すように、真空弁261により貫通孔272とそれに繋がる第1通路部を閉塞することで、鍋11内を減圧状態に維持する。やがて、スローリークによる圧力上昇を考慮して、一定時間が経過すると、減圧制御手段130は再び減圧ポンプ82を駆動させると共に、図17に示すように第1通路部275を開放して、鍋11内から空気を排出する。その後は上述した動作が繰り返されて、減圧ポンプ82がオン,オフ制御され、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。なお、減圧中は開閉用ソレノイド172のプランジャー173が後退位置にあるので、蓋開ボタン46を押動操作しようとしても、クランプ44とクランプ受け50との係合がロックされ、蓋体31が開かないようになる。
【0146】
こうした一連の動作において、調圧部251には鍋11内からの加圧力が加わらないので、真空弁ベース266と収容部284とをチューブ279で繋いだだけの簡単な構成とすることができる。また、調圧部251全体を内蓋56にではなく、蓋体31の内部に設けることで、内蓋56を含めた内蓋組立体55の軽量化を図り、清掃時などにおける使い勝手を向上させることができる。
【0147】
以上のように、本例によれば、鍋11と、鍋11を備えた本体1と、本体1を覆う蓋体31と、調圧手段としての調圧部251とを備え、鍋11内を加圧する加圧手段を有しない炊飯器において、調圧部251は、弁体である真空弁261と、この真空弁261を保持する保持部としてのカバー下部材263と、真空弁261を覆うカバー部としてのカバー上部材264とからなり、蓋体31の内部に配置され、カバー下部材263に所定部である鍋11と連通する第1通路部275を設けると共に、カバー上部材264に調圧部251の外部に連通する第2通路部276を設け、第1通路部275に配置した真空弁261を移動させ、それにより第1通路部275を開閉するように構成している。
【0148】
こうすると、調圧部251が内蓋56にではなく、蓋体31の内部に配置されることから、内蓋56を蓋体31から取外して清掃などを行なう際に重く感じることがなく、使い勝手が向上する。また、特に調圧部251のカバー下部材263から鍋11内に繋がる第1通路部275を、真空弁261の移動により開閉することで、鍋11内の調圧を確実に切替えることができ、鍋11内における減圧性能を向上させることができる。
【0149】
またこの場合は、調圧部251と、この調圧部251を操作するための操作手段としての調圧用ソレノイド78の何れかを、蓋体31内部の外蓋カバー35に取付けることで、製品のコンパクト化を実現し、且つ使い勝手を向上することができる。
【0150】
本例では、真空弁261を載置する座部としての真空弁パッキン262を、カバー下部材263に設けている。このように、カバー下部材263に設けた座部としての真空弁パッキン262に真空弁261が載置するので、真空弁261の自重を利用して、当該真空弁261により第1通路部275を確実に閉塞することができる。そのため、鍋11内の密閉性ひいては鍋11内における減圧性能をさらに向上させることが可能になる。
【0151】
また、この真空弁パッキン262は、カバー下部材263とカバー上部材264とにより挟持され、カバー下部材263またはカバー上部材264に密着するシール部としても設けられている。こうすれば、真空弁261を取り囲むカバー下部材263とカバー上部材264との間が、シール部である真空弁パッキン262により挟持されるので、調圧部251として密閉構造を簡素化しつつも、確実に内部を密閉することができる。したがって、安価な製品コストと製品のコンパクト化を実現し、且つ調圧部251が外気と連通するのを防止して、減圧性能を向上することができる。
【0152】
また、特に本例では、座部をシール部と一体に形成した一部品の真空弁パッキン262が、調圧部251に組み込まれている。この場合、カバー下部材263に設けた真空弁パッキン262に真空弁261が載置するので、真空弁261の自重を利用して、当該真空弁261により第1通路部275を確実に閉塞することができる。そのため、鍋11内の密閉性ひいては鍋11内における減圧性能をさらに向上させることが可能になる。しかも、この真空弁パッキン262がシール部としての機能を兼用するので、調圧部251としての密閉構造をさらに簡素化でき、一層安価な製品コストを実現できる。
【0153】
さらに本例では、鍋11内を大気圧よりも低い減圧状態にする減圧手段81を備え、この減圧手段81を第2通路部276に繋いで連通させている。こうすると、真空弁261が第1通路部を開けた状態で、第2通路部276に連通する減圧手段81を動作させると、鍋11内の空気が外部に排出され、その後、真空弁261を移動させて第1通路部275を閉じ、減圧手段81を動作停止させることにより、鍋11内を減圧状態に維持することができる。このように、減圧手段81の動作に関連して、真空弁261を移動させることで、鍋11内の調圧をより確実に切替えることができ、鍋11内における減圧性能をさらに向上させることができる。
【0154】
また、本例の蓋体31は、その外観を形成する外蓋32と、外蓋32の上方以外の下方に位置し、鍋11を覆う蓋カバーとしての外蓋カバー35とを備えており、調圧部251は、真空弁261と、真空弁261を保持するカバー下部材263と、真空弁261を覆うカバー上部材264と、鍋11と連通する第1通路部275と、調圧部251の外部に連通する第2通路部276とからなり、収容部284を構成するカバー下部材263またはカバー上部材264を、外蓋カバー35に取付ける構成としている。
【0155】
こうすると、調圧部251を内蓋56に取付けずに、調圧部251を構成するカバー下部材263またはカバー上部材264を、外蓋カバー35に取付ける構成となっていることから、内蓋56を蓋体31から取外して清掃などを行なう際に重く感じることがなく、使い勝手が向上する。またカバー下部材263やカバー上部材264を、蓋体31への取付け部と兼用させることで、部品点数の増加を抑制して、製品コストを安価にすることができる。さらに調圧部251を、真空弁261,カバー下部材263,カバー上部材264,第1通路部275および第2通路部276で構成して標準化することができ、多種多様な製品への展開が可能になることから、この点でも製品コストを抑制した安価な炊飯器を提供できる。
【0156】
また本例では、外蓋カバー35に所定部である鍋11と連通する孔としての第3通路部278を設け、カバー下部材263に設けた第1通路部275を、例えばチューブ279で第3通路部278に接続している。真空弁261を保持するカバー下部材263に第1通路部275を設け、この第1通路部275を外蓋カバー35に設けた第3通路部278に接続することで、調圧部251のカバー下部材263に設けた第1通路部275を、真空弁261によって開閉することができる。そのため、鍋11内の調圧を確実に切替えることができ、鍋11内における減圧性能を向上させることができる。
【0157】
さらに本例では、鍋11内を大気圧よりも低い減圧状態にする減圧手段81を備え、この減圧手段81を第2通路部276に繋いで連通させている。こうすると、真空弁261が第1通路部275を開けた状態で、第2通路部276に連通する減圧手段81を動作させると、鍋11内の空気が外部に排出され、その後、真空弁261を移動させて第1通路部275を閉じ、減圧手段81を動作停止させることにより、鍋11内を減圧状態に維持することができる。このように、減圧手段81の動作に関連して、真空弁261を移動させることで、鍋11内の調圧をより確実に切替えることができ、鍋内における減圧性能をさらに向上させることができる。
【0158】
本例における調圧部251は、前記第1通路部275と第2通路部276以外に、連通部を設けない構成となっている。つまり、調圧部251が第1通路部275と第2通路部276以外に、他の連通部を設けていないことから、調圧部251が外気と連通するのを防止することが可能となり、鍋11内を加圧状態にしない構成にあって、減圧性能を向上することができる。また、調圧部251の内部に真空弁261を設け、調圧部251そのものを動かすことで、真空弁261を動かして鍋11と調圧部251の外部との間の経路を開閉できるので、減圧切替手段として安価な構造を採用でき、製品コストを抑制できる。
【0159】
しかも本例では、調圧部251を外蓋32と外蓋カバー35の内部に配置させたことにより、調圧部251が内蓋56にではなく、外蓋32と外蓋カバー35で囲まれた蓋体31の内部に配置されることから、内蓋56を蓋体31から取外して清掃などを行なう際に重く感じることがなく、製品をコンパクトにし、且つ使い勝手を向上させることができる。
【0160】
次に、図19および図20を参照しながら、鍋11内の圧力を大気圧未満の所定値にコントロールする調整手段301の構成を説明する。この圧力調整機構に相当する調整手段301は、図1〜図18に示す炊飯器に限らず、少なくとも減圧手段81を備えたあらゆる炊飯器に適用できる。
【0161】
ここでの調整手段301は、内蓋56に設けた孔302の周囲に設けられ、調整ケース303と、調整ばね304と、弁体305と、調整ワッシャー306とにより構成される。調整ケース303は上面を開口した筒状で、内蓋56の上面に載置固定されており、その内部に調整バネ304と、弁体305と、調整ワッシャー306が設けられる。また、調整ケース303と調整ワッシャー306との間に配設される調整ばね304は、調整ワッシャー306を上方に押し上げる弾性力を有している。調整ワッシャー306の上面には、後述する調整シャフト311のフランジ部314が嵌合可能な被嵌合部としての溝307が形成される。
【0162】
弁体305は、棒状の調整シャフト311と、調整シャフト311の下端に取付けられたフランジ状のシャフト押え312と、このシャフト押え312を利用して、調整シャフト311の下端部に装着される調整ゴム313とを備えて構成される。また、調整シャフト311の上端には、前記溝307に嵌合可能なフランジ314が設けられる。このフランジ314は、内蓋組立体55を蓋体31から外した時に露出するようになっており、当該フランジ314を利用して、ユーザが調整シャフト311を図19に示す矢印AまたはA’の方向に回転させることができるようになっている。調整シャフト311は、内蓋56に設けた孔302のみならず、調整ケース303と調整ワッシャー306の中心部を貫通しており、鍋11内に臨む調整ゴム313が孔302よりも大きな形状を有している。そのため、通常は調整ばね304の弾性力によって、調整シャフト311のフランジ314が調整ワッシャー306の上面に当接して押し上げられ、それにより調整ゴム313が内蓋56の下面に当接して孔302を塞ぐ構造となっている。
【0163】
そして、減圧手段81によって鍋11内が大気圧未満の減圧状態になり、鍋11内の圧力値が次第に低下すると、内蓋56を含む内蓋組立体55が鍋11側に引張られて下方に移動する。やがて、内蓋組立体55が鍋11に突き当たってそれ以上下方に移動できなくなると、今度は調整ばね304の弾性力に抗して、内蓋56の下面から調整ゴム313を引き離そうとする。鍋11内の圧力が低下して所定値に達すると、調整ゴム313が内蓋56の下面から離れて孔302が開放し、この孔302を通して鍋11内と炊飯器の外部が連通する。そのため、鍋11内の圧力は所定値よりも減圧しないようになる。鍋11内がどの程度の圧力値まで減圧したら、調整ゴム313が内蓋56から離れるのかは、調整ばね314の弾性力ひいては通常時の長さに依存する。
【0164】
前述した調整ワッシャー306の溝307と調整シャフト311のフランジ314は、弾性手段である調整ばね314の弾性力を可変する調整部に相当する。ここでは、調整シャフト311を矢印AまたはA’の方向に回転させることで、図19に示すように、フランジ314を溝307に嵌合させないようにしたり、或いは図20に示すように、フランジ314を溝307に嵌合させたりすることができる。図19において、フランジ314が溝307に嵌合していない場合の調整ばね314の荷重時長さをLとし、図20において、フランジ314が溝307に嵌合している場合の調整ばね314の荷重時長さをL’とすると、図20の場合は図19の場合と比べて、溝307の深さに相当する分だけ、調整ワッシャー306が内蓋56の上面から離れることになるので、L’>Lとなって、調整ばね314の弾性力が弱まる。したがって、図20の場合は図19の場合よりも、調圧ゴム313による孔302を閉塞する力が弱くなる。このように、調整ワッシャー306を動かして、調整シャフト311のフランジ314と溝307との位置関係を可変することで、減圧状態における鍋11内の圧力下限値を最適な値に調整することができる。
【0165】
本実施例では、調整ワッシャー306に単独の溝307を形成しているが、深さの異なる複数の溝307を形成して、何段階も調整が行なえるようにしてもよい。また、調整部としての構成も、図19や図20に示すような溝307とフランジ314に限定されるものではない。
【0166】
このように、図19や図20の例では、鍋11と、鍋11を加熱する加熱コイル16と、加熱コイル16を備えた本体1と、本体1を覆う蓋体31と、本体1ひいては鍋11内を大気圧よりも低い減圧状態にする減圧手段81とを備えた炊飯器において、減圧状態で鍋11内の圧力を所定値以下に減圧させない調整手段301を備え、この調整手段301は、弾性部材である調整ばね304により鍋11内の圧力を調整している。
【0167】
つまりここでは、調整手段301に備えた調整ばね304の弾性力を利用して、減圧状態で鍋11内の圧力が所定値以下に減圧しないように設定することができる。そのため、例えば減圧手段81の故障などで減圧動作が連続して行なわれた場合でも、鍋11内の圧力が所定値以下に減圧するのを防止でき、高価な圧力調整装置に頼ることなく、減圧状態にある鍋11内の圧力値を適切に設定し、製品コストを安価にしつつ、調理性能の低下を抑制することができる。
【0168】
また、この変形例では、調整ばね304の弾性力を可変する調整部としての溝307とフランジ314を備えたことにより、こうした調整部を利用して調整ばね304の弾性力を可変できる。したがって、食材やメニューなどに応じて、減圧状態にある鍋11内の圧力値をその都度調整し、調理性能を向上させることができる。
【0169】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】本発明の一実施例における炊飯器の全体断面図である。
【図2】同上、蓋開ボタン周辺の構造を示す要部断面図である。
【図3】同上、炊飯器の平面図である。
【図4】同上、加圧時における調圧部およびその周辺の拡大断面図である。
【図5】同上、減圧時における調圧部およびその周辺の拡大断面図である。
【図6】同上、図2とは別な断面であらわした加圧時における要部の拡大断面図である。
【図7】同上、外蓋を外した状態の蓋体内部の斜視図である。
【図8】同上、クランプと、調圧用ソレノイドおよび開閉用ソレノイドの周辺の構造を示す斜視図である。
【図9】同上、調圧用ソレノイドとその周辺の構造を示す斜視図である。
【図10】同上、開閉用ソレノイドとその周辺の構造を示す斜視図である。
【図11】同上、開閉用ソレノイドの非通電時における要部の断面図である。
【図12】同上、図11に示す状態から、内蓋組立体を装着した場合の要部の断面図である。
【図13】同上、図12に示す状態から、内蓋に変形を生じたときの要部の断面図である。
【図14】同上、電気的構成を示すブロック図である。
【図15】同上、鍋内の温度および圧力の推移と、各部の動作状態をあらわしたタイミングチャートである。
【図16】本発明の変形例を示し、真空弁が貫通孔を塞いでいる状態での調圧部およびその周辺の構成を示す縦断面図である。
【図17】同上、貫通孔を開放している状態での調圧部およびその周辺の構成を示す縦断面図である。
【図18】同上、図16とは別な方向から見た調圧部およびその周辺の構成を示す側面図である。
【図19】本発明の別な変形例を示し、フランジを溝に嵌合させない状態での調整手段の平面図および縦断面図である。
【図20】同上、フランジを溝に嵌合させた状態での調整手段の平面図および縦断面図である。
【符号の説明】
【0171】
11 鍋(所定部)
16 加熱コイル(加熱手段)
31 蓋体
32 外蓋
35 外蓋カバー(蓋カバー)
44 クランプ(係合手段)
56 内蓋
62 開閉弁(開閉手段)
77 孔(孔部)
81 減圧手段
172 開閉用ソレノイド(ソレノイド)
175 開閉フレーム(フレーム部材)
181 孔
211 開閉弁操作手段(操作手段)
212 操作部材
215 弾性部材
217 シール部材
221 シール部
222 操作部
223 繋ぎ部
251 調圧部(調圧手段)
261 真空弁(弁体)
262 真空弁パッキン(座部,シール部)
263 カバー下部材(保持部)
264 カバー上部材(カバー部)
275 第1通路部
276 第2通路部
301 調整手段
304 調整ばね(弾性部材)
307 溝(調整部)
314 フランジ(調整部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋と、前記鍋を備えた本体と、蓋体と、調圧手段とを備えた炊飯器において、
前記調圧手段は、弁体と、この弁体を保持する保持部と、前記弁体を覆うカバー部とからなり、前記蓋体の内部に配置され、
前記保持部に所定部と連通する第1通路部を設けると共に、前記カバー部に前記調圧手段の外部に連通する第2通路部を設け、
前記第1通路部に配置した前記弁体を移動させ、前記第1通路部を開閉する構成としたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記調圧手段または所定手段を操作する操作手段を前記蓋体に取付けたことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記弁体を載置する座部を前記保持部に設けたことを特徴とする請求項1または2記載の炊飯器。
【請求項4】
前記保持部と前記カバー部とにより挟持され、当該保持部または当該カバー部に密着するシール部を設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の炊飯器。
【請求項5】
座部を前記保持部に設け、前記座部を前記シール部と一体に形成したことを特徴とする請求項4記載の炊飯器。
【請求項6】
前記本体内を大気圧よりも低い減圧状態にする減圧手段を備え、
前記減圧手段を前記第2通路部に連通させたことを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の炊飯器。
【請求項7】
鍋と、前記鍋を備えた本体と、蓋体と、調圧手段とを備えた炊飯器において、
前記蓋体は、外観を形成する外蓋と、この外蓋の上方以外に位置し、前記鍋を覆う蓋カバーとを備え、
前記調圧手段は、弁体と、この弁体を保持する保持部と、前記弁体を覆うカバー部と、前記鍋と連通する第1通路部と、前記調圧手段の外部に連通する第2通路部とからなり、
前記保持部または前記カバー部を、前記蓋カバーに取付ける構成としたことを特徴とする炊飯器。
【請求項8】
前記蓋カバーに所定部と連通する孔部を設け、前記保持部に設けた前記第1通路部を、前記孔部に接続したことを特徴とする請求項7記載の炊飯器。
【請求項9】
前記本体内を大気圧よりも低い減圧状態にする減圧手段を備え、
前記減圧手段を前記第2通路部に連通させたことを特徴とする請求項7または8記載の炊飯器。
【請求項10】
鍋と、前記鍋を備えた本体と、蓋体と、調圧手段とを備えた炊飯器において、
前記調圧手段は、前記蓋体の内部に配置され、前記鍋と連通する第1通路部と、前記調圧手段の外部に連通する第2通路部が設けられ、
前記第1通路部と前記第2通路部以外に、前記調圧手段に連通部を設けない構成としたことを特徴とする炊飯器。
【請求項11】
前記蓋体は、外観を形成する外蓋と、この外蓋の上方以外に位置し、前記鍋を覆う蓋カバーとを備え、
前記調圧手段を、前記外蓋と前記蓋カバーの内部に配置させたことを特徴とする請求項10記載の炊飯器。
【請求項12】
鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、蓋体と、前記鍋を覆い、前記蓋体に設けられる内蓋とを備え、
前記内蓋に、所定部と連通する孔部と、所定部を開閉する開閉手段とを設けた炊飯器において、
前記開閉手段を操作して前記孔部を閉止する操作手段を備え、
この操作手段は弾性部材を備え、当該弾性部材の所定の取付け位置に設けられることを特徴とする炊飯器。
【請求項13】
前記操作手段は、前記開閉手段を操作する操作部材と、操作部材を動作させるフレーム部材と、シール部材と、前記弾性部材とを備え、
前記シール部材は、前記蓋体の内部をシールするシール部と、前記操作部材を覆う操作部と、前記シール部と前記操作部とを連結する繋ぎ部とからなり、
前記操作部材と前記シール部材との間に前記弾性部材を配置したことを特徴とする請求項12記載の炊飯器。
【請求項14】
前記蓋体は本体に設けられ、
前記蓋体と前記本体とを所定状態に保持する保持手段を備え、
前記フレーム部材は、前記開閉手段が前記操作手段の動作時に、前記保持手段の保持解除を妨げる位置に移動し、このときの前記フレーム部材の位置と、前記本体内の圧力変化により、前記孔部を開放するときの前記フレーム部材の位置が同じであることを特徴とする請求項13記載の炊飯器。
【請求項15】
前記フレーム部材がソレノイドで動作するものであることを特徴とする請求項13または14記載の炊飯器。
【請求項16】
前記本体内を大気圧よりも低い減圧状態にする減圧手段を備えたことを特徴とする請求項12〜15の何れか一つに記載の炊飯器。
【請求項17】
鍋と、鍋を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を備えた本体と、前記本体を覆う蓋体と、前記本体内を大気圧よりも低い減圧状態にする減圧手段とを備えた炊飯器において、
前記本体内を所定値以下に減圧させない調整手段を備え、
この調整手段は、弾性部材により前記本体内の圧力を調整するものであることを特徴とする炊飯器。
【請求項18】
弾性力を可変する調整部を備えたことを特徴とする請求項17記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−295498(P2008−295498A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141569(P2007−141569)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(390010168)東芝ホームテクノ株式会社 (292)
【Fターム(参考)】