説明

炊飯器

【課題】鍋内で発生した排熱が炊飯器の外部に流出することをより一層抑えることができる炊飯器を提供する。
【解決手段】蓋本体3と内蓋4との間で環状のシール部12に囲まれて形成された空間20に、鍋2内で発生した排熱を含む排熱含有流体を強制的に導入して加熱空気層を形成する加熱空気層形成部14,22,23,24,25を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋の断熱性能を高めた炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炊飯器においては、ご飯の食味の良さが求められる一方で、二酸化炭素の排出量の削減の観点からより一層の省エネルギー化が求められている。炊飯器において、省エネルギー化を図るには、単純には炊飯時の総消費電力量を少なくすればよい。しかしながら、ご飯の食味を良くするには、より高火力で炊飯することが良いとされており、総消費電力量を少なくすることはご飯の食味を悪くすることにつながる。すなわち、省エネルギー化を図ることとご飯の食味を良くすることとは、トレードオフの関係にある。
【0003】
このような課題を改善する技術としては、例えば、特許文献1(特開平10−295540公報)に記載されたものがある。特許文献1には、微細な中空部を独立した状態で複数含有した断熱部材を、蓋の底壁とヒータとを蓋の内側から覆うように設けた炊飯器が記載されている。この特許文献1の炊飯器によれば、前記断熱部材により蓋の断熱性能が高まるので、鍋内で発生する排熱を鍋内に閉じこめて効率良くご飯に熱を与えることができる。従って、ご飯の食味を良好に保ちつつ、省エネルギー化を図ることができる。また、総消費電力量を従来と同じにした場合には、ご飯に加わる熱量を多くして、ご飯の食味をより良好にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−295540公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の構成では、蓋の内部空間の温度は、基本的に炊飯器の周囲温度(外気温ともいう)に依存する。熱は高温のところから低温のところに流れる性質を有するため、鍋内の温度と炊飯器の周囲温度との温度差が大きい場合には、前記断熱部材を設けたとしても、鍋内の排熱が炊飯器の外部に流出してしまう。この鍋内の排熱の流出量は、前記温度差に比例して多くなる。
【0006】
また、前記特許文献1の構成では、蓋の底壁にヒータを取り付けているため、当該底壁が炊飯等で汚れたときに蓋を丸洗いすることができない。一方、蓋の底壁にヒータを設けない構成とした場合には、この問題は解決することができる。しかしながら、この場合、鍋内の上部空間の温度が低くなり、ご飯の糊化が不足して食味が低下するという別の問題が生じる。従って、鍋内で発生した排熱が炊飯器の外部に流出するのを抑えることを、前記特許文献1とは違う構成で実現することが求められている。
【0007】
従って、本発明の目的は、前記従来の問題を解決することにあって、鍋内で発生した排熱が炊飯器の外部に流出することをより一層抑えることができる炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、内部に鍋収納部が形成された略有底筒状の炊飯器本体と、
前記鍋収納部に収納される鍋と、
前記鍋を加熱する鍋加熱装置と、
前記鍋の温度を検知する鍋温度検知部と、
前記鍋温度検知部の検知温度に基づいて前記鍋加熱装置の鍋加熱動作を制御し、前炊き工程、昇温工程、沸騰維持工程、蒸らし工程を含む炊飯工程を行う炊飯制御部と、
前記炊飯器本体の上部開口部を開閉可能な蓋本体と、
前記鍋の上部開口部を塞ぐことができるように前記蓋本体に着脱可能に取り付けられた内蓋と、
前記内蓋が前記蓋本体に取り付けられたときに、前記蓋本体と前記内蓋とを密着させる環状のシール部と、
前記蓋本体と前記内蓋との間で前記シール部に囲まれて形成された空間に、前記炊飯工程の進行に伴って前記鍋内に発生した排熱を含む排熱含有流体を強制的に導入して加熱空気層を形成する加熱空気層形成部と、
を備える炊飯器を提供する。
【0009】
ここで「加熱空気層」とは、前記空間内の空気が前記排熱含有流体の排熱により温められることにより形成される空気の層をいう。
【0010】
本発明の第2態様によれば、前記加熱空気層形成部は、循環ポンプを備え、
前記循環ポンプの吸引経路は、鍋内と連通し、
前記循環ポンプの排出経路は、前記空間と連通している、
第1態様に記載の炊飯器を提供する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、前記吸引経路が複数設けられている、第2態様に記載の炊飯器を提供する。
【0012】
本発明の第4態様によれば、前記炊飯制御部は、前記炊飯工程の進行に伴って前記鍋内に発生するおねばが前記内蓋に接触する前に、前記空間に前記排熱含有流体が導入されるように前記循環ポンプの駆動を制御する、第2又は3態様に記載の炊飯器を提供する。
【0013】
本発明の第5態様によれば、前記炊飯制御部は、前記昇温工程において、前記空間に前記加熱空気層が形成されるように前記循環ポンプの駆動を制御する、第2又は3態様に記載の炊飯器を提供する。
【0014】
本発明の第6態様によれば、前記炊飯制御部は、前記前炊き工程及び前記昇温工程において、前記空間に前記加熱空気層が形成されるように前記循環ポンプの駆動を制御する、第2又は3態様に記載の炊飯器を提供する。
【0015】
本発明の第7態様によれば、前記循環ポンプの吸引経路は、前記炊飯工程の進行に伴って前記鍋内に発生するおねばが前記循環ポンプに侵入するのを防止するように構成され、
前記炊飯制御部は、少なくとも前記沸騰維持工程において、前記空間に前記加熱空気層が形成されるように前記循環ポンプの駆動を制御する、第2又は3態様に記載の炊飯器を提供する。
【0016】
本発明の第8態様によれば、前記炊飯制御部は、前記炊飯工程の進行に伴って前記鍋内に発生するおねばが前記内蓋に接触しない温度に前記鍋温度検知部の検知温度を維持する、おねば接触防止工程が前記沸騰維持工程に含まれるように前記鍋加熱装置の鍋加熱動作を制御するとともに、前記おねば接触防止工程中に前記空間に前記加熱空気層が形成されるように前記循環ポンプの駆動を制御する、第2又は3態様に記載の炊飯器を提供する。
【0017】
本発明の第9態様によれば、前記炊飯制御部は、前記鍋加熱装置を間欠的に駆動させることにより前記沸騰維持工程を行い、当該沸騰維持工程において、前記鍋加熱装置の駆動が停止しているときに、前記空間に前記加熱空気層が形成されるように前記循環ポンプの駆動を制御する、第2又は3態様に記載の炊飯器を提供する。
【0018】
本発明の第10態様によれば、さらに、外気温を検知する外気温検知部を備え、
前記炊飯制御部は、前記外気温検知部の検知温度が閾値よりも高いとき、前記循環ポンプを駆動させない、第2又は3態様に記載の炊飯器を提供する。
【0019】
本発明の第11態様によれば、前記炊飯制御部は、前記前炊き工程の開始時点において、前記鍋温度検知部の検知温度が閾値よりも高いとき、前記循環ポンプを駆動させない、第2又は3態様に記載の炊飯器を提供する。
【0020】
本発明の第12態様によれば、さらに、前記循環ポンプの駆動状態を報知する報知部を備えている、第1〜11態様のいずれか1つに記載の炊飯器を提供する。
【0021】
本発明の第13態様によれば、前記加熱空気層形成部は、前記空間内に設けられた熱交換部材を備えている、第1態様に記載の炊飯器を提供する。
【0022】
本発明の第14態様によれば、前記熱交換部材は、前記排熱含有流体を結露させるように促す部材である、第13態様に記載の炊飯器を提供する。
【0023】
本発明の第15態様によれば、前記内蓋には、前記鍋内と前記空間とを連通する貫通孔が設けられ、
前記加熱空気層形成部は、前記内蓋の表面に取り付けられた断熱部材を備えている、第1態様に記載の炊飯器を提供する。
【0024】
本発明の第16態様によれば、前記鍋内の前記排熱含有流体を炊飯器の外部に排出するための流体排出経路が前記蓋本体及び前記内蓋を貫通するように設けられ、
前記加熱空気層形成部は、前記流体排出経路と前記空間とに跨って配置された熱伝導部材を備えている、第1態様に記載の炊飯器を提供する。
【0025】
本発明の第17態様によれば、前記鍋内の前記排熱含有流体を炊飯器の外部に排出するための流体排出経路が前記蓋本体及び前記内蓋を貫通するように設けられ、
前記加熱空気層形成部は、前記流体排出経路と前記空間とを連通する通路を備えている、第1態様に記載の炊飯器を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる炊飯器によれば、内蓋と蓋本体との間の空間(すなわち、蓋が閉められた際に内蓋を介して鍋内と隣接する空間)の温度が、前記排熱含有流体の導入によって外気温よりも上昇するので、前記鍋内と前記空間との温度差が従来よりも小さくなる。従って、鍋内で発生した排熱が炊飯器の外部に流出することをより一層抑えることができる。また、内蓋と蓋本体との間の空間は、シール部により囲まれ、いわゆる半閉鎖空間として形成されているので、前記加熱空間形成部により前記空間に導入された前記排熱含有流体が炊飯器の外部に流出することも抑えることができる。これにより、ご飯の食味を良好に保ちつつ、省エネルギー化を図ることができる。また、総消費電力量を従来と同じにした場合には、ご飯に加わる熱量を多くして、ご飯の食味をより良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる炊飯器の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる炊飯器において、循環ポンプを駆動せずに炊飯工程を行ったときの鍋内の温度推移及び半閉鎖空間の温度推移と、鍋底加熱ユニット及び内蓋加熱コイルの駆動タイミングを示す図である。
【図3】図2に、昇温工程において循環ポンプを駆動して炊飯工程を行ったときの半閉鎖空間の温度推移をさらに示した図である。
【図4】図2に、昇温工程において循環ポンプを駆動するとともに、蒸らし工程において内蓋加熱装置の電力を削減して炊飯工程を行ったときの半閉鎖空間の温度推移をさらに示した図である。
【図5】図2に、前炊き工程及び昇温工程において循環ポンプを駆動して炊飯工程を行ったときの半閉鎖空間の温度推移をさらに示した図である。
【図6】循環ポンプの駆動タイミングの変形例を示す図である。
【図7】循環ポンプの駆動タイミングの別の変形例を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる炊飯器の断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態にかかる炊飯器の断面図である。
【図10】図9の炊飯器が備える循環ポンプの構成を示す断面図である。
【図11】図9の炊飯器が備える内蓋の平面図である。
【図12】本発明の第4実施形態にかかる炊飯器の断面図である。
【図13】図2に、本発明の第4実施形態にかかる炊飯器を用いて炊飯工程を行ったときの半閉鎖空間の温度推移をさらに示した図である。
【図14】本発明の第5実施形態にかかる炊飯器の断面図である。
【図15】図2に、本発明の第5実施形態にかかる炊飯器を用いて炊飯工程を行ったときの半閉鎖空間の温度推移をさらに示した図である。
【図16】本発明の第6実施形態にかかる炊飯器の断面図である。
【図17】本発明の第7実施形態にかかる炊飯器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0029】
《第1実施形態》
図1を用いて、本発明の第1実施形態にかかる炊飯器の構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態にかかる炊飯器の断面図である。
【0030】
図1に示すように、本第1実施形態にかかる炊飯器は、内部に鍋収納部1aが形成された略有底筒状の炊飯器本体1と、鍋収納部1aに収納される鍋2とを備えている。炊飯器本体1の上部には、炊飯器本体1の上部開口部を開閉可能に蓋本体3が取り付けられている。蓋本体3の内側(鍋2の開口部を覆う側)には、鍋2の上部開口部を塞ぐことが可能な略円盤状の内蓋4が着脱可能に取り付けられている。
【0031】
炊飯器本体1の鍋収納部1aは、上枠1bとコイルベース1cとで構成されている。上枠1bは、収納された鍋2の側壁に対して所定の隙間が空くように配置される筒状部分1baと、筒状部分1baの上部から外方に突出し炊飯器本体1の上部開口部の内周部に嵌合するフランジ部1bbとで構成されている。コイルベース1cは、鍋2の形状に対応して有底円筒形状に形成され、その上部が上枠1bの筒状部分1baの下端部に取り付けられている。
【0032】
コイルベース1cの外周面には、鍋2を加熱(誘導加熱)する鍋加熱装置の一例である鍋底加熱ユニット5が取り付けられている。鍋底加熱ユニット5は、底内加熱コイル5aと底外加熱コイル5bとで構成されている。底内加熱コイル5aは、コイルベース1cを介して鍋2の底部の中央部周囲に対向するように配置されている。底外加熱コイル5bは、コイルベース1を介して鍋2の底部のコーナー部に対向するように配置されている。
【0033】
コイルベース1cの底部の中央部分には開口が設けられている。当該開口部分には、鍋2の温度を測定するための鍋温度検知部の一例である鍋温度センサ6が、鍋収納部1aに収納された鍋2の底部に当接可能に配置されている。
【0034】
炊飯器本体1の内部には、炊飯制御部7が搭載されている。炊飯制御部7は、米を炊飯するための炊飯プログラム(炊飯シーケンスともいう)を複数記憶する記憶部を備えている。各炊飯プログラムは、米の種類などに応じた複数の炊飯メニューのいずれかにそれぞれ対応している。炊飯制御部7は、鍋温度センサ6及び後述する内蓋温度センサ10の検知温度に基づいて、各部及び各装置の駆動を制御し、炊飯工程を実行する。より具体的には、炊飯制御部7は、蓋本体3に設けられた操作部(図示せず)を使用して行われた使用者の指示を受け取り、当該指示に対応する炊飯プログラムと、鍋温度センサ6及び内蓋温度センサ10の検知温度に基づいて、各部及び各装置の駆動を制御し、炊飯工程を実行する。
【0035】
炊飯器本体1の前壁上部(図1の左側上部)には、蓋本体3のフック3aに係合可能なフック1dが設けられている。フック1dと上枠1bの筒状部分1baとの間にはバネ1eが設けられている。フック1dは、バネ1eにより前方(図1の左側)に付勢されている。
【0036】
蓋本体3は、ヒンジ軸Aを備えている。ヒンジ軸Aは、蓋本体3の開閉軸であり、炊飯器本体1の上枠1cに両端部を回動自在に固定されている。ヒンジ軸Aの周りには、ねじりコイルバネなどの回動バネ(図示せず)が装着されている。この回動バネは、ヒンジ軸Aを回転中心として蓋本体3が炊飯器本体1から離れる方向に回転するように付勢している。従って、蓋本体3のフック3aと炊飯器本体1のフック1dとの係合が解除されたとき、蓋本体3が前記付勢力により自動的に回転して、炊飯器本体1の上部開口部が閉状態から開状態になる。
【0037】
蓋本体3には、その中央部付近を蓋本体3の厚み方向に貫通するように貫通穴3cが設けられ、当該貫通穴3cに蒸気筒8が着脱可能に取り付けられている。蒸気筒8の天壁及び底壁には、鍋2内(より詳しくは鍋2の内側の被調理物で満たされていない上部空間)の余分な蒸気を炊飯器の外部に排出できるように、蒸気逃がし孔8a,8bが設けられている。蓋本体2の内蓋4側の貫通穴3cの周囲には、ゴム等の弾性体で構成された環状の蒸気筒用パッキン9が取り付けられている。蒸気筒用パッキン9は、内蓋4が蓋本体3に取り付けられたときに内蓋4に密着するように設けられている。なお、蒸気筒用パッキン9は、内蓋4あるいは蒸気筒8に取り付けられていてもよい。内蓋4には、蒸気筒8の底壁と対向する位置に蒸気通過用孔4aが1ヶ所以上設けられている。本第1実施形態においては、蓋本体3の貫通孔3c(蒸気筒8を取り付けた状態では蒸気逃がし孔8a,8b)と蒸気筒用パッキン9と蒸気通過用孔4aとで流体排出経路30が形成されている。
【0038】
また、蓋本体3には、内蓋4の温度を検知する内蓋温度検知部の一例である内蓋温度センサ10が底壁3bを貫通するように取り付けられている。内蓋温度センサ10は、内蓋4が蓋本体3に取り付けられたときに、内蓋4に当接するように設けられている。
【0039】
蓋本体3の底壁3bの内面(蓋本体内側)には、内蓋加熱装置の一例である内蓋加熱コイル11が取り付けられている。内蓋加熱コイル11は、炊飯制御部7の制御により内蓋4を誘導加熱する。内蓋4は、誘導加熱が可能なステンレスなどの金属で構成されている。なお、蓋本体3の底壁3bの材質は、金属又は樹脂のどちらを用いてもよい。内蓋加熱コイル11が誘導加熱方式の加熱装置ではなくヒータ方式の加熱装置である場合は、蓋本体3の底壁3bの材質として金属を用いることが好ましい。
【0040】
蓋本体3の底壁3bの外面(鍋2側)には、ゴムなどの弾性体で構成された環状のシール部の一例であるパッキン12が取り付けられている。パッキン12は、内蓋4が蓋本体3に取り付けられたときに内蓋4に密着するように設けられている。なお、パッキン12は内蓋4に取り付けられていてもよい。パッキン12は、蒸気筒用パッキン9を包含するように、その直径が蒸気筒用パッキン9の直径よりも大きく形成されている。これにより、内蓋4と蓋本体3の底壁3bと蒸気筒用パッキン9とパッキン12とで空間20が形成されている。内蓋4には、空間20と鍋2内とを連通する貫通孔4bが設けられている。貫通孔4bの直径は、例えば2〜3mm程度である。空間20は、貫通孔4bと後述する循環ポンプ14の排出経路18以外は閉鎖された空間になっており、自然な空気の流れがほとんどない空間になっている。以下、この空間20を半閉鎖空間という。
【0041】
半閉鎖空間20の温度は、基本的には外気温に依存する。その理由は以下の通りである。すなわち、炊飯開始前において、半閉鎖空間20の温度は外気温とほぼ等しい。一方、炊飯を開始すると、鍋2内の温度が上昇する。この鍋2内の温度上昇により発生した熱は、半閉鎖空間20に伝達される。しかしながら、前記熱の半閉鎖空間20への伝達量は少量である。すなわち、熱の伝わり方(伝熱現象)は、大きく分けて対流、熱伝導、放射の3つに分類される。前述したように半閉鎖空間20は自然な空気の流れがほとんどない空間であるので、対流はほとんど発生しない。また、熱伝導は鍋2内の流体、内蓋4、半閉鎖空間20の順に行われるが、気体の熱伝導率が小さいことから、熱伝導量は少ない。また、放射による伝熱も少ない。一方、前述したように鍋2内で発生した蒸気は、基本的に自然対流によって上昇し、圧力差等の影響もあり、蒸気筒8の蒸気逃がし孔8a,8bを通じて炊飯器の外部に排出される。これらのことから、半閉鎖空間20の温度は、基本的には外気温に依存することとなる。
【0042】
内蓋4の外周部の鍋2側の面には、ゴムなどの弾性体で構成された環状の内蓋用パッキン13が取り付けられている。内蓋用パッキン13は、蓋本体3が閉状態にあるときに鍋2のフランジ部に密着するように設けられている。
【0043】
蓋本体3の内部には、鍋2内に発生した排熱を含む排熱含有流体を半閉鎖空間20内に導入する加熱空気層形成部の一例である循環ポンプ14が設けられている。ここで、「排熱」とは、鍋底加熱ユニット5により鍋2内の水が加熱されて、その水温が上昇するのに伴い、鍋2内に放出される熱をいう。また、「排熱含有流体」とは、前記排熱により温度上昇した空気、蒸気などの流体をいう。
【0044】
循環ポンプ14の吸引経路15は、蓋本体3の底壁3b及び内蓋4を貫通して、鍋2内と連通している。具体的には、吸引経路15は、吸引管16と、ゴムなどの弾性体で構成された環状の循環ポンプ用パッキン17と、内蓋4に設けられた貫通孔4cとで形成されている。吸引管16は、蓋本体3の底壁3bを貫通して循環ポンプ14と半閉鎖空間20とを連通させるように配置されている。循環ポンプ用パッキン17は、蓋本体3に内蓋4が取り付けられたときに吸引管16の端部開口と貫通孔4cとを接続するように蓋本体3の底壁3bに取り付けられている。なお、循環ポンプ用パッキン17は、内蓋4あるいは吸引管16に取り付けられてもよい。循環ポンプ14の排出経路18は、蓋本体3の底壁3bを貫通して半閉鎖空間20と連通している。具体的には、吸引経路18は、吸引管19で形成されている。
【0045】
循環ポンプ14は、吸引経路15を通じて鍋2内の排熱含有流体を吸引し、排出経路18を通じて当該排熱含有流体を半閉鎖空間20に排出(導入)する。これにより、基本的には外気温に依存する半閉鎖空間20の温度が、鍋2内の温度に近づくように上昇する。半閉鎖空間20に導入された排熱含有流体は、更なる循環ポンプ14の駆動により半閉鎖空間20に導入された排熱含有流体に押されて、貫通孔4bを通じて鍋2内に戻される。すなわち、循環ポンプ14の吸引及び排出動作により、鍋2内の排熱含有流体は、吸引経路15、循環ポンプ14、排出経路18、半閉鎖空間20、鍋2内の順に循環する。
【0046】
なお、循環ポンプ14は、高温(例えば130℃)の排熱含有流体を吸引するため、ポンプ部分が耐熱樹脂で構成されたものを使用することが好ましい。また、循環ポンプ14の機構は、鍋2内の排熱含有流体を搬送することができるものであれば、どのような方式(例えば弁方式、ファン方式など)のものであってもよい。
【0047】
なお、前記では、半閉鎖空間20を形成するために、蓋本体3の底壁3bの外面(鍋2側)にシール部としてパッキン12を設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、シール部は、蓋本体3の底壁3b又は内蓋4に一体的に構成された突起部であってもよい。また、例えば、蓋本体3の底壁3bと内蓋4とを嵌合構造として、当該嵌合構造の部分でシール部が形成されるようにしてもよい。
【0048】
次に、前記のように構成された本第1実施形態にかかる炊飯器の動作、作用について説明する。
【0049】
まず、図2を用いて、循環ポンプ14を駆動せずに炊飯工程を行ったときの鍋2内及び半閉鎖空間20の温度推移について説明する。図2は、本第1実施形態にかかる炊飯器において、循環ポンプ14を駆動せずに炊飯工程を行ったときの鍋2内及び半閉鎖空間20の温度推移と、鍋底加熱ユニット5及び内蓋加熱コイル11の駆動タイミングを示す図である。図2において、実線は鍋2内の温度推移を示し、一点破線は半閉鎖空間20の温度推移を示している。なお、ここでは、鍋2内の温度は、鍋2内の水温と同様に推移するものとして取り扱う。また、図2に示す温度推移は、従来の一般的な炊飯器と同様である。
【0050】
まず、使用者により、鍋2内に米と水が入れられ、蓋本体3に設けられた操作部(図示せず)にて炊飯メニューが選択された後、炊飯開始が指示されると、炊飯制御部7の制御により炊飯工程が開始される。ここで「炊飯工程」とは、前炊き工程(浸漬工程ともいう)と、昇温工程(炊き上げ工程ともいう)と、沸騰維持工程と、蒸らし工程の主として4つの工程で構成されるものである。これらの工程の間に米の糊化が進められて米が炊飯される。炊飯工程が開始されると、まず、前炊き工程が開始される。
【0051】
前炊き工程は、以降の工程において、米の中心部まで十分に糊化できるように、糊化温度よりも低温の水に米をひたして、予め米に吸水させる工程である。この前炊き工程において、炊飯制御部7は、鍋2内の水の温度を米の糊化が始まる温度(約60℃)近くまで昇温させた後、当該昇温後の温度を維持するように、鍋温度センサ6の検知温度に基づいて鍋底加熱ユニット5の鍋加熱動作を制御する。これにより、米の吸水が促進される。この前炊き工程においては、水が重量比で例えば約30wt%の割合になるまで米に吸水させる。この前炊き工程において、半閉鎖空間20は、内蓋4により鍋2内と隔離されているため、半閉鎖空間20の温度は、鍋2内の温度に対して約10℃以上低い温度で推移する。前炊き工程の開始から前記選択された炊飯メニューに応じて予め設定された時間(例えば20分)経過すると、昇温工程に移行する。
【0052】
昇温工程は、鍋2を強火で一気に加熱して、鍋2内の水を沸騰状態(約100℃)にする工程である。この昇温工程において、炊飯制御部7は、鍋2を急速に加熱して鍋2内の水を沸騰状態にするように、鍋底加熱ユニット5を制御する。この昇温工程において、鍋2内と半閉鎖空間20との温度差はさらに大きくなり、約40℃(=約100℃−約60℃)となる。昇温工程の実施により、鍋温度センサ6の検知温度が約100℃になると、沸騰維持工程に移行する。この昇温工程にかかる時間は、炊飯量(鍋2に入れられた被調理物の量)等により異なるが、例えば5分である。なお、昇温工程にかかる時間から、炊飯量を自動的に判定することができる。例えば、鍋温度センサ6の検知温度が80℃となったときから内蓋温度センサ10の検知温度が80℃になるまでの時間差を調べることにより、炊飯量を自動的に判定することができる。
【0053】
沸騰維持工程は、鍋2内の水の沸騰状態を維持して、米の澱粉を糊化させ、糊化度を50%〜60%程度まで引き上げる工程である。この沸騰維持工程において、炊飯制御部7は、鍋2内の水の沸騰状態を維持するように鍋底加熱ユニット5及び内蓋加熱コイル11を制御する。より具体的には、炊飯制御部7は、鍋底加熱ユニット5及び内蓋加熱コイル11の駆動(ON)、駆動停止(OFF)を一定時間間隔で繰り返すデューティー制御を行い、鍋2を間欠加熱する。この沸騰維持工程においては、鍋底加熱ユニット5に加えて内蓋加熱コイル11も駆動させるので、半閉鎖空間20の温度が上昇する。これにより、沸騰維持工程の後半では、半閉鎖空間20の温度も約100℃近く(約97℃)に到達し、鍋2内と半閉鎖空間20との温度差は小さくなる。
【0054】
沸騰維持工程においては、連続的に水を沸騰させるため、約100℃の蒸気が大量に発生する。ここでは循環ポンプ14を駆動させないので、前記発生した蒸気の略全部が、内蓋4の蒸気通過用孔4a及び蒸気筒8の蒸気逃がし孔8a,8bを通過して炊飯器の外部に放出される。これにより、鍋2内のほとんどの水がなくなると、鍋2の底面の温度が水の沸点以上に上昇する。鍋温度センサ6が鍋2の底面の温度が沸点以上(例えば130℃)に到達したことを検知すると、蒸らし工程に移行する。なお、沸騰維持工程にかかる時間は、炊飯量等により異なるが、例えば13分である。
【0055】
蒸らし工程は、予熱を利用して余分な水分を蒸発させ、米の糊化度を100%近くまで引き上げる工程である。この蒸らし工程において、炊飯制御部7は、鍋2の温度が一定温度以下に下がる毎に、鍋2を加熱するように鍋底加熱ユニット5及び内蓋加熱コイル11を制御する。より具体的には、炊飯制御部7は、沸騰維持工程と同様に、鍋底加熱ユニット5及び内蓋加熱コイル11の駆動(ON)、駆動停止(OFF)を一定時間間隔で繰り返すデューティー制御を行い、鍋2を間欠加熱する。蒸らし工程の開始から、炊飯量に応じて予め設定された時間(例えば12分)経過すると、蒸らし工程を終了(すなわち、炊飯工程を終了)する。
【0056】
前述したように、循環ポンプ14を駆動せずに炊飯工程を行った場合、すなわち、従来の炊飯器と同様な炊飯工程を行った場合、鍋2内と半閉鎖空間20の温度差は、昇温工程から沸騰維持工程に移行するときに最大になる。鍋2内から内蓋4への排熱量は、鍋2内と半閉鎖空間20との温度差に比例して大きくなる。このため、鍋2内の温度が下がり、ご飯の糊化が不足して食味が低下する。これを防ぐ方法としては、例えば、内蓋加熱コイル11による加熱を昇温工程又は前炊き工程から開始する方法、あるいは内蓋加熱コイル11の加熱量を増加させる方法が考えられる。しかしながら、この場合、当然ながら、省エネルギー化を実現することができない。
【0057】
次に、図3を用いて、循環ポンプ14を駆動して炊飯工程を行ったときの鍋2内及び半閉鎖空間20の温度推移について説明する。図3は、図2に、循環ポンプ14を駆動して炊飯工程を行ったときの半閉鎖空間20の温度推移を追加した図である。図3において、点線が、循環ポンプ14を駆動して炊飯工程を行ったときの半閉鎖空間20の温度推移を示している。ここでは、昇温工程の間、循環ポンプ14を駆動するようにしている。それ以外の点については、鍋底加熱ユニット5及び内蓋加熱コイル11の駆動タイミングなど、図2の場合と同条件で炊飯工程を行っている。
【0058】
昇温工程の開始と同時に循環ポンプ14の駆動を開始させた場合、前炊き工程にて発生した鍋2内の排熱含有流体は、吸引経路15を通じて循環ポンプ14に取り込まれ、排出経路18を通じて半閉鎖空間20に排出(導入)される。その後、昇温工程が進むにつれて、鍋2内の排熱含有流体の温度が上昇するので、当該排熱含有流体が導入される半閉鎖空間20の温度が上昇する。これにより、半閉鎖空間20に加熱空気層(ヒートカーテンともいう)が形成される。鍋2内の温度が約100℃に達したとき、半閉鎖空間20の温度、すなわち加熱空気層の温度は約90℃近くまで上昇する。このとき、鍋2内と半閉鎖空間20との温度差は約10℃である。すなわち、前述した循環ポンプ14を駆動しない場合に比べて、循環ポンプ14を駆動した場合には、鍋2内と半閉鎖空間20との温度差が約30℃(=約40℃−約10℃)低減される。これにより、鍋2内の排熱が炊飯器の外部に流出することをより一層抑えることができる。
【0059】
沸騰維持工程においては、内蓋加熱コイル11による加熱が開始されるので、半閉鎖空間20の温度は、沸騰維持工程の早い段階で約100℃に到達する。これにより、約100℃に達する前に蒸らし工程に移行する前述の循環ポンプ14を駆動せずに炊飯工程を行った場合に比べて、半閉鎖空間20の温度をより高い温度(ここでは約3℃程度高い温度)で維持することができる。すなわち、鍋2内と半閉鎖空間20との温度差を無くして、鍋2内の排熱が炊飯器の外部に流出することをより一層抑えることができる。
【0060】
なお、沸騰維持工程の前半においては、鍋2内におねば(粘性のある煮汁)が多量に発生する。このため、本第1実施形態においては、循環ポンプ14を駆動しないようにしている。これにより、吸引経路15におねばが侵入することによる循環ポンプ14の動作不良、カビの発生などの品質面の問題を回避することができる。
【0061】
なお、前記のように循環ポンプ14を駆動して炊飯したご飯を食味官能評価したところ、循環ポンプ14を駆動せずに炊飯されたご飯よりも甘味及び食感が良化していることを確認している。
【0062】
以上のように、本第1実施形態によれば、循環ポンプ14を用いて強制的に鍋2内の排熱含有流体を半閉鎖空間20に導入するようにしているので、鍋2内と半閉鎖空間20との温度差を低減して、鍋2内の排熱が炊飯器の外部に流出することをより一層抑えることができる。従って、鍋加熱装置4及び内蓋加熱コイル11による加熱量を増加させることなく、より多くの熱を米に加えることができる。すなわち、米への加熱効率を向上させることができる。
【0063】
また、本第1実施形態によれば、内蓋4と蓋本体3との間に蒸気通過用パッキン9,パッキン12,及びパッキン17を配置して半閉鎖空間20を形成しているので、排出経路18を通じて半閉鎖空間20に導入された排熱含有流体は、炊飯器の外部に流出することなく、確実に鍋2内に戻る。従って、米への加熱効率をより一層向上させることができる。
【0064】
また、本第1実施形態によれば、鍋加熱装置4及び内蓋加熱コイル11による加熱量を増加させることなく、より多くの熱を米に加えることができるので、ご飯の食味を良くすることができる。また、米に加える熱量を従来と同程度とした場合には、鍋加熱装置4及び内蓋加熱コイル11による加熱量を低減することができる。従って、省エネルギー化を図ることができる。例えば、蒸らし工程においては、循環ポンプ14の駆動により半閉鎖空間20の温度が上昇しているので、内蓋加熱コイル11により半閉鎖空間20を積極的に暖める必要性が少ない。このため、図4に示すように、蒸らし工程において、内蓋加熱コイル11への電力を削減して、半閉鎖空間20の温度を従来と同程度の温度となるようにしてもよい。この場合、例えば2〜3Whの消費電力を削減することができる。
【0065】
また、本第1実施形態によれば、鍋2内で発生した排熱を利用して半閉鎖空間20に加熱空気層を形成するようにしているので、当該加熱空気層を形成するために別途加熱装置を設けるなどの必要がない。従って、加熱空気層を形成するための電力は必要としないので、省エネルギー化を図ることができる。
【0066】
なお、本発明は前記第1実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、循環ポンプ14を昇温工程においてのみ駆動するようにしたが本発明はこれに限定されない。例えば、図5に示すように、循環ポンプ14の駆動を前炊き工程中に開始するようにしてもよい。この場合、循環ポンプ14を駆動させる電力は増加するが、鍋2内の温度と半閉鎖空間20との温度差をさらに小さくすることができるので、結果的に省エネルギー化を図ることができる。
【0067】
なお、循環ポンプ14の駆動中に、使用者が誤って蓋本体3を開状態にすることが無いように、循環ポンプの駆動状態を使用者に報知する報知部を設けることが好ましい。当該報知部は、音で報知するものであっても、光など視覚的に報知するものであってもよい。
【0068】
また、前記では、おねばが吸引経路15を通じて循環ポンプ14に取り込まれるのを防止するため、沸騰維持工程の開始よりも前に循環ポンプ14を駆動するようにしたが、本発明はこれに限定されない。おねばが内蓋4に接触する前に、半閉鎖空間20に排熱含有流体が導入されるように循環ポンプ14の駆動が制御されていればよい。
【0069】
例えば、昇温工程では、前述したように、鍋温度センサ6の検知温度が80℃となったときから内蓋温度センサ10の検知温度が80℃になるまでの時間差を調べることにより、炊飯量を自動的に判定することができる。しかしながら、このとき、鍋温度センサ6又は内蓋温度センサ10に異物が付着するなどしていた場合には、実際には鍋2又は内蓋4の温度が80℃に達しているにも関わらず、鍋温度センサ6又は内蓋温度センサ10の検知温度が80℃よりも低い場合が有り得る。この場合、鍋温度センサ6又は内蓋温度センサ10の検知温度が100℃になった時には、既に、鍋2内におねばが発生しておねばが循環ポンプ14に取り込まれていることになる。おねばが内蓋4に接触する前に循環ポンプ14を駆動させるようにすれば、この問題を回避することができる。
【0070】
また、おねばが内蓋4に接触するほど加熱した後であっても、鍋底加熱ユニット5の加熱量を弱めておねばが内蓋4に接触しないようにする期間を設けて、当該期間中に循環ポンプ14を駆動させるようにしてもよい。より具体的には、図6に示すように、沸騰維持工程において、おねばが内蓋4に接触しない温度で鍋温度センサ6の検知温度を維持するおねば接触防止工程を設けて、当該工程中に循環ポンプ14を駆動させるようにしてもよい。なお、おねばが内蓋4に接触しない温度とは、ここでは100℃未満を意味するが、少なくとも米の糊化が始まる温度(約60℃)よりも高くする必要がある。また、当該温度が低ければ低いほど、米を糊化させるのに時間がかかり、炊飯時間が長くなる。このため、米の糊化を加速させることができる温度であることが好ましく、沸騰直前の温度であることがより好ましい。また、ご飯の食味を良好にするには、炊飯工程の全体において、米の温度が98℃以上である状態が20分以上となるようにするのが良いとされている。このため、おねばが内蓋4に接触しない温度は、98℃以上であることがさらに好ましい。
【0071】
また、本第1実施形態のように、鍋底加熱ユニット5を間欠的に駆動させることにより沸騰維持工程を行う場合、おねばは、鍋底加熱ユニット5の駆動(ON)時においては内蓋4に接触するように上昇する一方で、鍋底加熱ユニット5の駆動停止(OFF)時においては内蓋4から離れるように下降する。このため、図7に示すように、沸騰維持工程において、鍋底加熱ユニット5の駆動が停止しているときに、循環ポンプ14を駆動させるようにしてもよい。
【0072】
また、例えば、吸引経路15内に弁を設けるなどして、吸引経路15におねばが侵入しないように構成した場合には、沸騰維持工程においても循環ポンプ14を連続的に駆動させることができる。すなわち、循環ポンプ14の駆動を複雑に制御することなく、前炊き工程から蒸らし工程まで循環ポンプ14を連続的に駆動させることができる。これにより、鍋2内の排熱が炊飯器の外部に流出することをより一層抑えることができる。
【0073】
《第2実施形態》
図8は、本発明の第2実施形態にかかる炊飯器の断面図である。本第2実施形態の炊飯器が前記第1実施形態の炊飯器と異なる点は、外気温検知部の一例である外気温センサ21を設け、当該外気温センサ21の検知温度が所定の閾値よりも高いとき、炊飯制御部7は循環ポンプ14を駆動させないように構成されている点である。
【0074】
外気温が高いとき、鍋2内と半閉鎖空間20との温度差は小さくなるので、鍋2内の排熱が炊飯器の外部に流出する量も少ない。このため、鍋2内の排熱が炊飯器の外部に流出することを抑えることによって削減される電力よりも、循環ポンプ14の駆動に要する電力が大きくなることが有り得る。
【0075】
本第2実施形態においては、外気温センサ21の検知温度が所定の閾値よりも高いとき、炊飯制御部7は循環ポンプ14を駆動させないので、更なる省エネルギー化を図ることができる。なお、閾値は、鍋2内の排熱が炊飯器の外部に流出することを抑えることにより削減される電力と、循環ポンプ14の駆動に要する電力とを比較考慮して、適宜設定すればよい。また、ここでは、外気温センサ21を蓋本体3の内部空間に配置したが、外気温センサ21の取付位置は、特に限定されない。
【0076】
《第3実施形態》
図9は、本発明の第3実施形態にかかる炊飯器の断面図である。図10は、図9の炊飯器が備える循環ポンプの構成を示す断面図である。図11は、図9の炊飯器が備える内蓋の平面図である。本第3実施形態の炊飯器が前記第1実施形態の炊飯器と異なる点は、内蓋4及び循環ポンプ14に代えて、2つの貫通孔4cが設けられた内蓋4Aと、2つの吸引経路15a,15bを備える循環ポンプ14Aとを有している点である。なお、その他の点については同様であるので、添付図面において同様の部品については同じ参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0077】
鍋2内の排熱が炊飯器の外部に流出することをより一層抑えるには、排熱含有流体の一成分である高温の蒸気を半閉鎖空間20により多く導入して、より迅速に半閉鎖空間20に加熱空気層を形成することが効果的と考えられる。半閉鎖空間20への蒸気の導入量を多くするには、単純には循環ポンプの排出流量を多くすればよいと考えられる。
【0078】
しかしながら、実験により検証したところ、循環ポンプの排出流量を1.7L/Minに設定したとき、半閉鎖空間20に導入される蒸気の量が3gであるのに対して、循環ポンプの排出流量を2.0L/Minに設定したとき、半閉鎖空間20に導入される蒸気の量は3.1gであった。また、循環ポンプの排出流量を2.2L/Minに設定したとき、半閉鎖空間20に導入される蒸気の量は3.2gであった。すなわち、循環ポンプの排出流量を多くしても、半閉鎖空間20への蒸気の導入量は僅かしか増加しなかった。なお、前記蒸気の量のデータは、吸引経路の断面積を7.1mmとし、吸引流体の流速を0.3m/secとしたときのデータである。
【0079】
これに対して、吸引経路を2つとして循環ポンプの排出流量を2.2L/Minに設定したとき、半閉鎖空間20に導入される蒸気の量は3.8gであった。すなわち、循環ポンプの排出流量を多くすることに比べて吸引経路を2つにすることの方が、半閉鎖空間20への蒸気の導入量を増加させるのに効果的であることが分かった。なお、前記蒸気の量のデータは、2つの吸引経路の断面積をそれぞれ7.1mmとし、吸引流体の流速を0.3m/sとし、2つの貫通孔4c,4cを互いに75mm離して配置したときのデータである。
【0080】
吸引経路を2つにすることが蒸気の導入量を増加させるのに効果的であることの理由は、以下のように推察される。
【0081】
循環ポンプの流量は、吸引流体の流速と吸引経路の断面積との積で決まる。従って、循環ポンプの排出流量及び吸引経路の断面積を同一とした場合において、吸引経路を1つとしたときの吸引流体の流速をVとすると、吸引経路を2つとしたときの吸引流体の流速はV/2となる。すなわち、吸引経路を2つとした場合、吸引経路1つの当たりの吸引流体の流速は遅くなり、鍋2内で発生した蒸気をゆっくり吸引することになる。循環ポンプが鍋2内の蒸気を吸引したとき、吸引孔となる貫通孔4cの近傍の鍋2内の空間の絶対湿度は低下する。吸引経路を2つとした場合、鍋2内で発生した蒸気をゆっくり吸引するので、前記絶対湿度の低下を抑えることができる。これにより、結果として、循環ポンプが吸引する蒸気の量が多くなり、半閉鎖空間20に導入される蒸気の量が多くなる。
【0082】
従って、本第3実施形態にかかる炊飯器によれば、循環ポンプ14Aが2つの吸引経路15a,15bを備えているので、半閉鎖空間20に導入される蒸気の量を多くして、より迅速に半閉鎖空間20に加熱空気層を形成することができる。これにより、鍋2内の排熱が炊飯器の外部に流出することをより一層抑えることができる。
【0083】
なお、流体排出経路30の一部である蒸気通過用孔4aの近傍の鍋2内の空間は、他の鍋2内の空間に比べて絶対湿度が低くなるので、吸引孔となる貫通孔4cは、蒸気通過用孔4aから50mm以上離して設けることが好ましい。また、2つの貫通孔4c,4cも、同様の理由により、互いに50mm以上離して設けることが好ましい。
【0084】
また、本第3実施形態においては、吸引経路を2つ設けたが、3つ以上設けてもよい。この場合、吸引経路を2つとする場合よりも更に、半閉鎖空間20に導入される蒸気の量を多くして、より迅速に半閉鎖空間20に加熱空気層を形成することが可能となる。
【0085】
《第4実施形態》
図12は、本発明の第4実施形態にかかる炊飯器の断面図である。本第4実施形態の炊飯器が前記第1実施形態の炊飯器と異なる点は、加熱空気層形成部として、循環ポンプ14に代えて熱交換部材22を備えている点である。
【0086】
図12において、熱交換部材22は、半閉鎖空間20内において、蓋本体3の底壁3bに設置されている。熱交換部材22は、半閉鎖空間20に導入された排熱含有流体(蒸気)を結露させて半閉鎖空間20を減圧状態にする。それにより生じた鍋2内と半閉鎖空間20との圧力差により、鍋2内の排熱含有流体(蒸気)は、内蓋4の貫通孔4bを通じて半閉鎖空間20に導入される。これにより、半閉鎖空間20に加熱空気層を形成され、鍋2内の排熱が炊飯器の外部に流出することが抑えられる。
【0087】
熱交換部材22の材質としては、半閉鎖空間20に導入された排熱含有流体(蒸気)を効率よく結露させるため、例えば、アルミニウム、真鍮などの熱伝導率の高い金属を用いることが好ましい。また、熱交換部材22は、図12に示すように複数の突起部を設けるなどして、表面積を大きくすることが好ましい。これにより、半閉鎖空間20に導入された排熱含有流体(蒸気)と熱交換部材22との接触率が高まり、排熱含有流体(蒸気)を効率よく結露させることができる。
【0088】
次に、図12及び図13を用いて、前記のように構成された本第4実施形態の炊飯器について、動作、作用を説明する。図13は、図2に、本第4実施形態の炊飯器を用いて炊飯工程を行ったときの半閉鎖空間20の温度推移をさらに示した図である。図13において、点線は、熱交換部材22を備える本第4実施形態の炊飯器を用いて炊飯工程を行ったときの半閉鎖空間の温度推移を示している。なお、熱交換部材22を備えない炊飯器を用いて炊飯工程を行ったときの半閉鎖空間の温度推移は、循環ポンプ14を駆動せずに炊飯工程を行ったときの半閉鎖空間の温度推移と同じである。以下、前記第1実施形態の炊飯器と重複する部分の説明は省略し、主に相違点について説明する。
【0089】
炊飯工程が開始されると、前炊き工程、昇温工程と進行するのに伴って鍋2内の温度が上昇する。これに伴い、鍋2内で発生した排熱含有流体が、内蓋4の蒸気通過用孔4a及び蒸気筒8の蒸気逃がし孔8a,8bを通じて炊飯器の外部に排出される。なお、半閉鎖空間20は、パッキン12によりシールされて空気の流れがほとんどない空間であるので、前炊き工程及び昇温工程において排熱含有流体は、半閉鎖空間20にはほとんど導入されない。
【0090】
昇温工程の終了時において鍋2内の温度が約100℃に到達すると、鍋2内で発生する排熱含有流体(蒸気)の量が急激に増加する。これにより、排熱含有流体(蒸気)の一部が、内蓋4の貫通孔4bを通じて半閉鎖空間20にも導入されることになる。
【0091】
本第4実施形態では、半閉鎖空間20に熱交換部材22を設けているので、半閉鎖空間20に導入された排熱含有流体(蒸気)は結露するように促される。排熱含有流体(蒸気)が結露すると半閉鎖空間20は減圧状態となり、それにより鍋2内と半閉鎖空間20との間に圧力差が生じる。この圧力差により、鍋2内の排熱含有流体(蒸気)が内蓋4の貫通孔4bを通じて半閉鎖空間20に連続的に導入される。これにより、図13に示すように半閉鎖空間20の温度が約100℃まで急激に上昇して、半閉鎖空間20に加熱空気層が形成される。これにより、鍋2内の排熱が炊飯器の外部に流出することをより一層抑えることができる。
【0092】
なお、熱交換部材22は、半閉鎖空間20内に配置されていればよく、内蓋4に設置されていてもよい。この場合でも、前記と同様の効果を得ることができる。また、熱交換部材22は、排熱含有流体を結露させる部材に限定されるものではなく、半閉鎖空間20を減圧状態にできるものであればよい。
【0093】
《第5実施形態》
図14は、本発明の第5実施形態にかかる炊飯器の断面図である。本第5実施形態の炊飯器が前記第1実施形態の炊飯器と異なる点は、加熱空気層形成部として、循環ポンプ14に代えて断熱部材23を備えている点である。
【0094】
図14において、断熱部材23は、内蓋4の鍋2側の表面に設けられている。断熱部材23には、内蓋4の蒸気通過用孔4aに対応する位置に蒸気通過用孔23aが設けられ、内蓋4の貫通孔4bに対応する位置に蒸気通過用孔23bが設けられている。断熱部材23は、熱伝導率が低い材料、例えば樹脂系材料で構成されている。断熱部材23の材料は、排熱含有流体(蒸気)と接触することを考慮して、耐熱性、耐蒸気性に優れた材料であることが好ましい。このような材料としては、例えば、ポリエーテルサルファイド樹脂が挙げられる。
【0095】
また、断熱部材23の内部には、断熱作用を高めるために、中空部分が多量に分散配置されていることが好ましい。当該中空部分は、例えば、無機材料で構成される中空ビーズを断熱部材23の材料に分散させたり、発泡塗装の技術を利用したりすることで形成することができる。例えば、断熱部材23は、ポリエーテルサルファイドと中空ガラスビーズを混合した塗料を内蓋4の鍋2側の表面に塗布することで形成することができる。
【0096】
次に、図14及び図15を用いて、前記のように構成された本第5実施形態の炊飯器について、動作、作用を説明する。図15は、図2に、本第5実施形態の炊飯器を用いて炊飯工程を行ったときの半閉鎖空間の温度推移をさらに示した図である。図15において、点線は、断熱部材23を備える本第5実施形態の炊飯器を用いて炊飯工程を行ったときの半閉鎖空間の温度推移を示している。なお、断熱部材23を備えない炊飯器を用いて炊飯工程を行ったときの半閉鎖空間の温度推移は、循環ポンプ14を駆動せずに炊飯工程を行ったときの半閉鎖空間の温度推移と同じである。以下、前記第1実施形態の炊飯器と重複する部分の説明は省略し、主に相違点について説明する。
【0097】
炊飯工程が開始されると、前炊き工程、昇温工程と進行するのに伴って鍋2内の温度が上昇する。これに伴い、鍋2内で発生した排熱含有流体が、内蓋4の蒸気通過用孔4a及び蒸気筒8の蒸気逃がし孔8a,8bを通じて炊飯器の外部に排出される。なお、半閉鎖空間20は、パッキン12によりシールされて空気の流れがほとんどない空間であるので、前炊き工程及び昇温工程において排熱含有流体は、半閉鎖空間20にはほとんど導入されない。また、半閉鎖空間20は、内蓋4の表面に設けた断熱部材23により鍋2内と断熱されるので、半閉鎖空間20の温度は、鍋2内よりも低い温度で推移する。
【0098】
昇温工程の終了時において鍋2内の温度が約100℃に到達すると、鍋2内で発生する排熱含有流体(蒸気)の量が急激に増加する。これにより、排熱含有流体(蒸気)の一部が、内蓋4の貫通孔4bを通じて半閉鎖空間20にも排出(導入)されることになる。このとき、半閉鎖空間20は、断熱部材23により低い温度で維持されていたため、半閉鎖空間20に導入された排熱含有流体(蒸気)は、急激な温度差により半閉鎖空間20内で凝縮することになる。すなわち、排熱含有流体(蒸気)が半閉鎖空間20で結露し易くなる。その結果、半閉鎖空間20に空気の流れが発生するとともに、半閉鎖空間20と鍋2内との間に圧力差が生じ、鍋2内の排熱含有流体(蒸気)が内蓋4の貫通孔4bを通じて半閉鎖空間20に連続的に導入される。これにより、図15に示すように半閉鎖空間20の温度が約100℃まで急激に上昇して、半閉鎖空間20に加熱空気層を形成される。これにより、鍋2内の排熱が炊飯器の外部に流出することをより一層抑えることができる。また、電力を要しないので、より一層の省エネルギー化を図ることができる。
【0099】
なお、前記では、断熱部材23を内蓋4の鍋2側の表面に設けたが、内蓋4の半閉鎖空間20側の表面に設けても同様の効果を得ることができる。また、内蓋4の表面に断熱部材23を設けるのではなく、内蓋4の厚みを厚くして内蓋4の熱容量を増加させることでも、同様の効果を得ることができる。
【0100】
《第6実施形態》
図16は、本発明の第6実施形態にかかる炊飯器の断面図である。本第6実施形態の炊飯器が前記第1実施形態の炊飯器と異なる点は、加熱空気層形成部として、循環ポンプ14に代えて熱伝導部材(熱架橋部材ともいう)24を備えている点である。
【0101】
図16において、熱伝導部材24は、半閉鎖空間20において、蓋本体3の底壁3bに設けられている。熱伝導部材24の一部は、蒸気筒用パッキン9を貫通し、蓋本体3の貫通孔3cと蒸気筒用パッキン9と蒸気通過用孔4aとで形成される流体排出経路30に突出している。すなわち、熱伝導部材24は、流体排出経路30と半閉鎖空間20とに跨って配置されている。このように配置されることにより、熱伝導部材24は、流体排出経路30を通る排熱含有流体(蒸気)の熱を、熱伝導により半閉鎖空間20に導入する。
【0102】
これにより、炊飯工程の進行に応じて流体排出経路30を通る排熱含有流体の温度が上昇することに伴い、半閉鎖空間20に加熱空気層を形成することができる。よって、鍋2内の排熱が炊飯器の外部に流出することをより一層抑えることができる。また、例えば連続的に炊飯を行うときなど、半閉鎖空間20の温度が高い状態で炊飯工程を開始した場合、半閉鎖空間20と鍋2内との温度差が小さいので、鍋2内の排熱含有流体が半閉鎖空間20に導入されにくくなる。これに対して、本第5実施形態においては、熱伝導部材24により、流体排出経路30を通る排熱含有流体の熱(蒸気)を半閉鎖空間20に直接導入するので、半閉鎖空間20の温度が高い状態で炊飯工程を開始した場合であっても、排熱含有流体の熱を確実に半閉鎖空間20に導入することができる。
【0103】
なお、熱伝導部材24の材料は、熱伝導率が高い金属材料であることが好ましい。このような材料としては、例えば、アルミニウム、真鍮などが挙げられる。
【0104】
また、前記では、熱伝導部材24の一部が蒸気筒用パッキン9を貫通して流体排出経路30に突出するように熱伝導部材24を構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、熱伝導部材24の一部が蒸気筒8の側壁を貫通して蒸気筒8の内部に突出するように熱伝導部材24を構成してもよい。この場合でも、同様の効果を得ることができる。
【0105】
《第7実施形態》
図17は、本発明の第7実施形態にかかる炊飯器の断面図である。本第7実施形態の炊飯器が前記第1実施形態の炊飯器と異なる点は、加熱空気層形成部として、循環ポンプ14に代えて、蒸気筒用パッキン9に排熱流体取込用の通路25を備えている点である。
【0106】
図17において、通路25は、流体排出経路30と半閉鎖空間20とを連通するように蒸気筒用パッキン9に設けられた貫通孔で形成されている。これにより、鍋2内で発生した排熱含有流体が流体排出経路30を通る際、鍋2内と流体排出経路30との圧力差から生じる空気の流れによって、通路25を通じて半閉鎖空間20内に排熱含有流体が取り込まれる。
【0107】
これにより、炊飯工程の進行に応じて流体排出経路30を通る排熱含有流体の温度が上昇することに伴い、半閉鎖空間20に加熱空気層を形成することができる。よって、鍋2内の排熱が炊飯器の外部に流出することをより一層抑えることができる。また、本第6実施形態においては、通路25により、流体排出経路30を通る排熱含有流体(蒸気)を半閉鎖空間20に直接導入するので、半閉鎖空間20の温度が高い状態で炊飯工程を開始した場合であっても、排熱含有流体の熱を確実に半閉鎖空間20に導入することができる。また、別途の部材又は装置を設置する必要がないので、安価に製造することができる。
【0108】
なお、通路25の直径は、1mm程度であることが好ましい。これにより、流体排出経路30を通るおねばが通路25を通じて半閉鎖空間20に多量に侵入することを抑制することができる。
【0109】
また、前記では、蒸気筒用パッキン9に設けた貫通孔により通路25を形成するようにしたが、本発明はこれに限定されない。通路25は、流体排出経路30と半閉鎖空間20とを連通するように設けられていればよい。例えば、通路25は、流体排出経路30と半閉鎖空間20とを連通するように設けられた配管により形成されてもよい。
【0110】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明にかかる炊飯器は、鍋内で発生した排熱が炊飯器の外部に流出することをより一層抑えることができるので、特に、省エネルギー化を求められる炊飯器に有用である。
【符号の説明】
【0112】
1 炊飯器本体
2 鍋
3 蓋本体
4 内蓋
5 鍋底加熱ユニット(鍋加熱装置)
6 鍋温度センサ(鍋温度検知部)
7 炊飯制御部
8 蒸気筒
9 蒸気筒用パッキン
10 内蓋温度センサ(内蓋温度検知部)
11 内蓋加熱コイル(内蓋加熱装置)
12 パッキン(シール部)
13 内蓋用パッキン
14 循環ポンプ
15 吸引経路
16 吸引管
17 循環ポンプ用パッキン
18 排出経路
19 排出管
20 半閉鎖空間(空間)
21 外気温センサ(外気温検知部)
22 熱交換部材
23 断熱部材
24 熱伝導部材
25 通路
A ヒンジ軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に鍋収納部が形成された略有底筒状の炊飯器本体と、
前記鍋収納部に収納される鍋と、
前記鍋を加熱する鍋加熱装置と、
前記鍋の温度を検知する鍋温度検知部と、
前記鍋温度検知部の検知温度に基づいて前記鍋加熱装置の鍋加熱動作を制御し、前炊き工程、昇温工程、沸騰維持工程、蒸らし工程を含む炊飯工程を行う炊飯制御部と、
前記炊飯器本体の上部開口部を開閉可能な蓋本体と、
前記鍋の上部開口部を塞ぐことができるように前記蓋本体に着脱可能に取り付けられた内蓋と、
前記内蓋が前記蓋本体に取り付けられたときに、前記蓋本体と前記内蓋とを密着させる環状のシール部と、
前記蓋本体と前記内蓋との間で前記シール部に囲まれて形成された空間に、前記炊飯工程の進行に伴って前記鍋内に発生した排熱を含む排熱含有流体を強制的に導入して加熱空気層を形成する加熱空気層形成部と、
を備える炊飯器。
【請求項2】
前記加熱空気層形成部は、循環ポンプを備え、
前記循環ポンプの吸引経路は、鍋内と連通し、
前記循環ポンプの排出経路は、前記空間と連通している、
請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記吸引経路が複数設けられている、請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記炊飯制御部は、前記炊飯工程の進行に伴って前記鍋内に発生するおねばが前記内蓋に接触する前に、前記空間に前記排熱含有流体が導入されるように前記循環ポンプの駆動を制御する、請求項2又は3に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記炊飯制御部は、前記昇温工程において、前記空間に前記加熱空気層が形成されるように前記循環ポンプの駆動を制御する、請求項2又は3に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記炊飯制御部は、前記前炊き工程及び前記昇温工程において、前記空間に前記加熱空気層が形成されるように前記循環ポンプの駆動を制御する、請求項2又は3に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記循環ポンプの吸引経路は、前記炊飯工程の進行に伴って前記鍋内に発生するおねばが前記循環ポンプに侵入するのを防止するように構成され、
前記炊飯制御部は、少なくとも前記沸騰維持工程において、前記空間に前記加熱空気層が形成されるように前記循環ポンプの駆動を制御する、請求項2又は3に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記炊飯制御部は、前記炊飯工程の進行に伴って前記鍋内に発生するおねばが前記内蓋に接触しない温度で前記鍋温度検知部の検知温度を維持する、おねば接触防止工程が前記沸騰維持工程に含まれるように前記鍋加熱装置の鍋加熱動作を制御するとともに、前記おねば接触防止工程中に前記空間に前記加熱空気層が形成されるように前記循環ポンプの駆動を制御する、請求項2又は3に記載の炊飯器。
【請求項9】
前記炊飯制御部は、前記鍋加熱装置を間欠的に駆動させることにより前記沸騰維持工程を行い、当該沸騰維持工程において、前記鍋加熱装置の駆動が停止しているときに、前記空間に前記加熱空気層が形成されるように前記循環ポンプの駆動を制御する、請求項2又は3に記載の炊飯器。
【請求項10】
さらに、外気温を検知する外気温検知部を備え、
前記炊飯制御部は、前記外気温検知部の検知温度が閾値よりも高いとき、前記循環ポンプを駆動させない、請求項2又は3に記載の炊飯器。
【請求項11】
前記炊飯制御部は、前記前炊き工程の開始時点において、前記鍋温度検知部の検知温度が閾値よりも高いとき、前記循環ポンプを駆動させない、請求項2又は3に記載の炊飯器。
【請求項12】
さらに、前記循環ポンプの駆動状態を報知する報知部を備えている、請求項1〜11のいずれか1つに記載の炊飯器。
【請求項13】
前記加熱空気層形成部は、前記空間内に設けられた熱交換部材を備えている、請求項1に記載の炊飯器。
【請求項14】
前記熱交換部材は、前記排熱含有流体を結露させるように促す部材である、請求項13に記載の炊飯器。
【請求項15】
前記内蓋には、前記鍋内と前記空間とを連通する貫通孔が設けられ、
前記加熱空気層形成部は、前記内蓋の表面に取り付けられた断熱部材を備えている、請求項1に記載の炊飯器。
【請求項16】
前記鍋内の前記排熱含有流体を炊飯器の外部に排出するための流体排出経路が前記蓋本体及び前記内蓋を貫通するように設けられ、
前記加熱空気層形成部は、前記流体排出経路と前記空間とに跨って配置された熱伝導部材を備えている、請求項1に記載の炊飯器。
【請求項17】
前記鍋内の前記排熱含有流体を炊飯器の外部に排出するための流体排出経路が前記蓋本体及び前記内蓋を貫通するように設けられ、
前記加熱空気層形成部は、前記流体排出経路と前記空間とを連通する通路を備えている、請求項1に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−56058(P2011−56058A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209274(P2009−209274)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】