説明

炭化処理装置および方法

【課題】処理対象物の炭化処理に要する燃料消費を少なくする。
【解決手段】炭化処理装置1が、畜糞(処理対象物)を加熱して乾燥処理を行う乾燥炉3と、畜糞を乾燥部内に供給するためのホッパ2と、乾燥部3に連通し乾燥部3において乾燥処理を施した畜糞を電熱ヒータ48により加熱して炭化処理する炭化炉4と、廃棄物を焼却処理する焼却発熱炉5に一体に設けられ廃棄物の燃焼熱により炭化炉4において発生する乾留ガスを加熱し乾燥炉3において乾燥処理を行うための熱ガスを発生する乾留ガス加熱室51と、乾留ガス加熱室51と乾燥炉3とを繋ぎ乾留ガス加熱室51からの熱ガスを乾燥炉3に導く熱ガス供給路62,63と、炭化炉4と乾留ガス加熱室51とを繋ぎ炭化炉4において発生する乾留ガスを乾留ガス加熱室51に導く乾留ガス路61,65とを有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の炭化処理装置および方法に関し、特に、廃棄物を加熱させて乾燥処理を行う乾燥部と、乾燥部により乾燥処理を施した後に炭化処理を行う炭化部を有する炭化処理装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の炭化処理装置としては以下に示すようなものが知られている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、このような炭化処理装置は、廃棄物を加熱することで含水率を低下させる乾燥部と、この乾燥部における処理を終えた廃棄物を燃焼させることで炭化させる炭化部と、乾燥部での加熱を行うための乾燥用のバーナーと、炭化部での加熱を行うための炭化用のバーナーと、炭化部において発生する乾留ガスを乾留ガス加熱バーナーにより加熱して乾燥部および炭化部に供給する乾留ガス加熱供給部とを備えている。
【特許文献1】特許第2974067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記ように、従来の炭化処理装置は、乾燥部と、炭化部と、乾留ガス加熱供給部とに各々重油や灯油を燃料とする加熱バーナーが設けられ、これらが同時に稼動し、もしくはこれらのうち一部が稼動して廃棄物の炭化処理を行うようになっている。しかしながら、特に複数のバーナーを稼動する場合には、重油や灯油といった化石燃料を加熱源として大量に消費してしまい、有害物質を含む燃焼ガスが大量に放出されて大気を汚染するという問題がある。ここで、乾留ガス加熱供給部から出る熱ガスと、炭化部における炭化処理の過程で発生する排ガスとを混合して乾燥部や炭化部に供給することで、炭化部での加熱源を乾燥部での加熱源と炭化部自体での加熱源とに再利用することで燃料消費をなるべく抑えるような構成も考案されているが、このような構成に加え、乾燥部や炭化部の加熱方法を改善することで燃料消費をさらに抑えることができるような構成が望まれている。
【0004】
以上のような問題に鑑みて、本発明では、炭化処理に要する燃料消費が少なくて済む廃棄物等の炭化処理装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明に係る炭化処理装置は、処理対象物を加熱して乾燥処理を行う乾燥部(例えば、実施形態における乾燥炉3)と、脱水手段(例えば、実施形態における上部脱水処理部101および下部脱水処理部110)により脱水処理を施された処理対象物を乾燥部内に供給するためのホッパと、乾燥部に連通し乾燥部において乾燥処理を施した処理対象物を電熱ヒータからなる加熱手段により加熱して炭化処理する炭化部(例えば、実施形態における炭化炉4)と、廃棄物を焼却処理する焼却炉に一体に設けられ廃棄物の燃焼熱により炭化部において発生する乾留ガスを加熱し乾燥部において乾燥処理を行うための熱ガスを発生させる乾留ガス加熱部(例えば、実施形態における乾留ガス加熱室51)と、乾留ガス加熱部と乾燥部とを繋ぎ乾留ガス加熱部からの熱ガスを乾燥部に導く熱ガス供給路と、炭化部と乾留ガス加熱部とを繋ぎ炭化部において発生する乾留ガスを乾留ガス加熱部に導く乾留ガス路とを有して構成される。
【0006】
また、上記構成の炭化処理装置において、乾燥部と乾留ガス加熱部とが還流ガス路により繋がれ、乾燥部において処理対象物を加熱して乾留ガス加熱部に戻る還流ガスが乾留ガスとともに乾留ガス加熱部において加熱されるのが好ましい。
【0007】
さらに、上記構成の炭化処理装置において、乾燥部が、横長型の略円筒状の乾燥炉本体(例えば、実施形態における乾燥炉筒31)と、乾燥炉本体内に乾燥炉本体の長手軸回りに回転可能に設けられホッパから供給された処理対象物を撹拌する第1の撹拌部材(例えば、実施形態におけるスクリューコンベア35)とを有して構成されるのが好ましい。
【0008】
また、上記構成の炭化処理装置において、炭化部が、横長型の略円筒状の炭化炉本体(例えば、実施形態における炭化筒41)と、炭化炉本体内に炭化炉本体の長手軸回りに回転可能に設けられ乾燥部から移送された処理対象物を撹拌する第2の撹拌部材(例えば、実施形態におけるスクリューコンベア47)と、炭化炉本体の長手軸心と同心状に炭化炉本体の外周側に設けられ炭化炉本体内の処理対象物を昇温する略円筒状の電熱ヒータとを有して構成するのが好ましい。
【0009】
さらに、上記構成の炭化処理装置において、脱水手段が、一端側が他端側よりも高くなるように傾斜支持され底部に篩網(例えば、実施形態におけるスクリーンネット113)を有して水分を透過する振動篩と、振動篩に取り付けられ振動篩を振動させる振動発生手段(例えば、実施形態における振動モータ140)と、振動篩に向けて空気を送風する送風手段(例えば、実施形態における乾燥ファン150)とを有して構成され、振動篩の一端側に落下した篩網上の処理対象物を振動発生手段により振動篩を振動させながら振動篩の他端側に搬送するとともに、送風手段から送風される空気を当てて処理対象物の水分を除去し、振動篩の振動により処理対象物の水分が篩網を通して篩い落とされるのが好ましい。
【0010】
一方、前記課題を解決するために本発明に係る炭化処理方法は、廃棄物の燃焼熱を利用して処理対象物の乾燥処理を行い、乾燥処理された処理対象物を電熱ヒータからなる加熱手段により加熱して炭化処理を行う方法において、炭化処理により発生する乾留ガスを廃棄物の燃焼熱により加熱し、加熱した乾留ガスを処理対象物の乾燥処理のための熱ガスとして利用する。
【0011】
また、上記構成の炭化処理方法において、熱ガスにより処理対象物を乾燥処理した後の還流ガスを乾留ガスとともに加熱するのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に関する炭化処理装置および方法によれば、加熱バーナーを使用するのは乾留ガス加熱部のみであり、乾燥部においては加熱バーナーを使用せずに乾留ガス加熱部で加熱された乾留ガスを利用して乾燥処理し、炭化部においては加熱バーナーを使用する代わりに電熱ヒータを用いて炭化処理を行う。このため、本発明では、乾燥部および炭化部のいずれもが灯油等を燃料とする加熱バーナーにより処理対象物を加熱する従来の場合と比較して、灯油等の燃料消費を抑えることが可能である。そして、燃料消費を低く抑えることで、有害物質を含む燃焼ガスの放出を低下させ、大気の汚染を抑える、といった効果を有する。また、乾留ガス加熱部において乾燥部からの還流ガスや炭化部からの乾留ガスを加熱するために、乾留ガス加熱部に一体化している生ゴミ等の廃棄物を焼却処理する焼却炉の燃焼熱を利用するため、生ゴミ等も同時に焼却処分が可能であり、また、廃棄物の燃焼熱を有効利用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る炭化処理装置および方法の好ましい実施形態について図1乃至図6を参照して説明する。この炭化処理装置1は、ホッパ2と、乾燥炉3と、炭化炉4と、焼却発熱炉5とからなり、これら各部は配管によって接続される。この炭化処理装置1で処理する処理原料として、例えば、牛糞、豚糞、鶏糞などの家畜糞が用いられる。
【0014】
ホッパ2はその上部の投入口22に近い方が広口状に形成され、この投入口22からホッパ2の下部に向けて畜糞などの原料を投入することができる。ホッパ2には、投入口22に近い乾燥用撹拌機23と、ホッパ2下部のスクリューコンベア21に近い落下用撹拌機24からなる複数の撹拌機が設けられている。また、ホッパ2内部であって投入口22の近傍には、原料である畜糞の投入時の衝撃を受けて乾燥用撹拌機23を保護するための複数の保護柵25が図4に示すように前後に延びて取り付けられている。
【0015】
乾燥用撹拌機23は、投入口22から投入された畜糞に対して外部から熱風を当てながら畜糞の撹拌を行うもので、モータ73によって回転する左右に延びる回転軸23aと回転軸23aに回転軸23aの径方向に延びて取り付けられた複数の撹拌羽根23bからなる。また、図3に示すように、投入口22から斜め上方に延びる取付アングル26には、熱風装置(いわゆるドライヤ)27が取り付けられており、回転軸23aの回転とともに回転する撹拌羽根23bにより畜糞の撹拌を行いながら、熱風装置27からの熱風を畜糞に吹き付けて乾燥を行う。
【0016】
落下用撹拌機24は、乾燥用撹拌機23を通して落下した畜糞を撹拌して下方のスクリューコンベア21に確実に入るようにするためのもので、乾燥用撹拌機23と同様に、モータ73によって回転する左右に延びる回転軸24aに回転軸24aの径方向に延びて取り付けられた複数の撹拌羽根24bからなる。そして、この撹拌羽根24bによって撹拌されつつ畜糞がスクリューコンベア21に送られる。
【0017】
スクリューコンベア21は、ホッパ2の最下部に位置して取り付けられており、モータ73の回転によりベルト74等を介して回転する回転軸21aと回転軸21aの回りを螺旋状に巻き付くようにして取り付けられた羽根部と21bからなるリボンスクリューで構成される。ホッパ2の最下部に落下した畜糞は、回転軸21aの回転ともに回転する羽根部21bにより適度な大きさに粉砕され、乾燥炉3の原料誘導口37と連通するホッパ2下面の原料誘導口28から乾燥炉3内へと移送される。
【0018】
スクリューコンベア21を収容するホッパ2の最下部の外郭は、多数の略円形の孔が形成されたパンチングプレートで構成され、ホッパ2内における乾燥によって発生する畜糞に含有されていた水分が、ホッパ2の最下部から外部へと滴下するようになっている。そして、図3に示すように、ホッパ2の下方にはホッパ2から滴下する水分を受容可能な受皿75が設けられている。この受皿75の底面は傾斜面となっており、受皿75に受容された水分は、この傾斜面を伝わって受皿75の斜め下方に備えられた貯水槽76内に貯留できるようになっている。
【0019】
乾燥炉3は、処理原料である畜糞を撹拌しながら加熱することで、ホッパ2から投入された処理原料の含水率を低下させる。この乾燥炉3は、横方向を長手軸方向とする略円筒状の乾燥炉筒31で構成され、乾燥炉筒31の内部には左右横方向に延びて形成され処理原料の通路である内部空間32が形成され、乾燥炉筒31の外側を覆うようにして左右に延びて形成された熱ガス供給路63と、熱ガス供給路63の外周側全周を覆うステンレス鋼からなる外筒34と、外筒34の外周側全周を覆うセラミックウール等からなる断熱材33とから構成される多層構造になっている。内部空間32内には乾燥炉筒31の長手軸方向に渡され撹拌用羽根35aを有するスクリューコンベア35が設けられており、このスクリューコンベア35の回転軸36は乾燥炉3の左端側から乾燥炉3の外部に出されてベルト71等を介して炭化処理装置1を支持する架台7上に設置されたモータ72によって回転される。なお、乾燥炉筒31の外径は410mm程度で、長手軸方向の長さは3000mm程度であるが、必ずしもこのような寸法に限られるわけではない。
【0020】
乾燥炉3の右端側上部には内部空間32から乾燥炉3の外部へと通じる原料誘導口37が形成され、この原料誘導口37を通ってホッパ2から乾燥炉3の内部空間32へ誘導された畜糞は、回転するスクリューコンベア35により乾燥炉3の右端側から左端側へと移送される。図5に示すように、乾燥炉筒31の上部には平面視矩形に開けられて4箇所(必ずしもこの数に限られない)の点検口38が形成されている。この点検口38は、乾燥炉筒31内の内部空間32を移動する畜糞が内部空間32において固まっているか否か、あるいは詰まっているか否かを外部から点検するために設けられている。そして、通常は、図5に示すような点検口38の大きさに合わせた点検口用蓋38aを点検口38に被せるようにした上で、乾燥炉筒31の外周面であって点検口38付近に設けられた複数の固定用ボルト38bにパッキングを介して締結することで、点検口38は閉塞されている。畜糞の詰まり等の事態が生じた場合には、この点検口用蓋38aを取り外すことで、乾燥炉筒31内の畜糞を取り出すといった対応をすることが可能である。
【0021】
焼却発熱炉5は、生ゴミなどの廃棄物を焼却処理するためのもので、正面に設けられた開閉扉54を開けて焼却発熱炉5内に廃棄物を投入可能になっている。焼却発熱炉5上部には、焼却発熱炉5と一体に縦長の円筒形をなす乾留ガス加熱室51が設けられている。この乾留ガス加熱室51は、乾燥炉3を流れて戻される還流ガスや炭化炉4内で発生する乾留ガスを廃棄物の燃焼熱により加熱して乾燥炉3へ再供給する。乾留ガス加熱室51の下端部には乾留ガス路61の先端が接続され、上部には乾燥炉3の左端側に延びる熱ガス供給路62が接続されている。乾留ガス加熱室51の下端部近傍には乾留ガス加熱バーナー52が設けられ、乾留ガス加熱室51に供給された乾留ガスは、この乾留ガス加熱バーナー52で加熱される。
【0022】
乾留ガス加熱室51の外部には送風機81が設けられ、この送風機81から送られる空気流は、送風機81から乾留ガス加熱室51の内部に延びる空気流噴射管53の周壁に配列形成された多数の空気噴射孔から噴射する。この噴射空気流によって、乾留ガス加熱室51内の燃焼炎は上昇する。上記のように熱ガス供給路62は乾留ガス加熱室51の上部から延びており、乾留ガス加熱バーナー52によって加熱された熱ガスは、熱ガス供給路62を流れ、送風機82に通されてから熱ガス供給路62に連通し乾燥炉筒31の周囲を覆う熱ガス供給路63に供給される。
【0023】
原料誘導口37から乾燥炉3の乾燥炉筒31の内部空間32へと投入された畜糞は、スクリューシャフト35の回転作用によって十分撹拌されながら乾燥炉3の右端側から左端側へと移動する。この移動の過程で畜糞は、熱ガス供給路62から乾燥炉筒31の周囲を覆う熱ガス供給路63へと導入された熱ガスによって100℃乃至150℃程度に加熱され、それに含まれていた水分が蒸発する。
【0024】
炭化炉4は、乾燥炉3において乾燥を終えた畜糞を炭化させる。この炭化炉4は、横方向を長手軸方向とする略円筒状の炭化筒41で構成され、炭化筒41の内部には左右横方向に延びて形成され畜糞の通路である内部空間42が形成され、炭化筒41の外周を覆うように取り付けられた複数の電熱ヒータ48と、炭化筒41や電熱ヒータ48の外側を覆うセラミックウール等からなる断熱材43と、この断熱材43の外周側全周を覆うステンレス鋼からなる外被44とから構成される多層構造になっている。内部空間42内を左右に渡され撹拌用羽根45を有するスクリューコンベア47が設けられており、このスクリューコンベア47の回転軸46は炭化炉4の左端側から炭化炉4の外部に出されて炭化処理装置1を支持する架台7上に設置されたモータ72によって回転される。なお、炭化筒41の外径は410mm程度で、長手軸方向の長さは3000mm程度であるが必ずしもこのような寸法に限られるわけではない。
【0025】
炭化炉4はその左端側上部に乾燥炉3に繋がる誘導口49が形成され、この誘導口49に挿入され乾燥炉3とを上下に連結する断面略円形状の連結部77内を通って畜糞が乾燥炉3から炭化炉4内へと供給される。すなわち、炭化炉4には、乾燥炉3での加熱によって含水量が減少した状態の畜糞が供給される。スクリューコンベア47は、回転軸46と回転軸46の回りを螺旋状に巻き付くようにして取り付けられた撹拌用羽根45とからなり、内部空間42内の畜糞は回転軸46の回転ともに回転する撹拌用羽根45により炭化炉4の左端側から右端側へと移送される。
【0026】
炭化炉4に設けられた電熱ヒータ48は、炭化珪素等を材質とする抵抗発熱体で構成され、図6に示すようにフランジ部48aおよびフランジ部48bを互いに重ねてこれらをボルト締結することで炭化筒41に対して固定される。全体として略円筒形の電熱ヒータ48は、左右に間隔を置いて炭化筒41に複数取り付けられており、隣接する炭化筒41の間隙のうち1つ置きに、熱電対等からなる温度センサ78,78,…が設けられている。炭化炉4は、温度センサ78による測温に基づいて電熱ヒータ48に供給される電力が温調器によって制御され、炉内の温度が400℃乃至450℃に保持される。
【0027】
ここで、1つの温度センサ78に対し左右の電熱ヒータ48,48に供給される電力が制御される。このように、複数の温度センサ78,78,…に基づく測温により炭化筒41の一部分の温度が制御されることで、1つの温度センサ78に基づいて炭化筒41の全体の温度が制御される場合と比較して炭化筒41全体の温度分布を均一にすることが可能であり、消費電力の無駄を軽減させることができる。
【0028】
このように構成される炭化炉4における畜糞の炭化処理の過程では、無酸素状態で間接的に上記の温度に加熱され、窒素、リン酸、カリウムといった肥料の有効成分が保持される。また、畜糞と酸素との反応を最小限に抑えた無酸素雰囲気における炭化反応が行われるため、有害物質の発生を抑えることができる。
【0029】
炭化炉4の右端側端面の下部には、斜め下方に突出する断面略円形状の排出口79が設けられ、炭化炉4の内部空間41内を左端側から右端側まで移送され炭化処理されて有機肥料となった畜糞は、この排出口79から炭化炉4の外部へと排出される。
【0030】
還流ガス路64は乾燥炉3の右端側から乾燥炉3の外部に延びており、この還流ガス路64には乾燥炉3内の畜糞を乾燥処理した熱ガスが還流ガスとして流れる。また、乾留ガス路65は炭化炉4の右端側から炭化炉4の外部に延びており、この乾留ガス路65には炭化炉4における炭化処理で発生した乾留ガスが流れる。そして、還流ガス路64と乾留ガス路65とは合流して乾留ガス路61となり送風機83を通してから前述のように乾留ガス加熱室51の下端部に接続される。すなわち、乾留ガス加熱室51には、乾燥炉3からの還流ガスおよび炭化炉4からの乾留ガスが導入される。
【0031】
焼却発熱炉5上部の上端部には圧力調整弁を備えたダンパー84が設けられており、所定以上の燃焼ガスの圧力がこのダンパー84に掛かったときに燃焼ガスの一部を後述する浄化部85の側に送り込むことにより、焼却発熱炉5内の燃焼ガスの圧力は、略一定に保持される。
【0032】
ダンパー84の上側には、ろ過式の集塵機で構成される浄化部85が設けられている。ダンパー84を通過して浄化部85内に送り込まれた燃焼ガスは、この浄化部85を通過することにより有害物質が捕集されて浄化処理され、脱臭、減温がなされて、浄化部85からは無毒のガスが外部へと放出される。
【0033】
なお、ホッパ2に投入される畜糞に含有する水分を予め低くするために、図7乃至図10を用いて以下に説明するような脱水処理部100が炭化処理装置1に装備されている。
【0034】
この脱水処理部100は、図7に示すように、上部脱水処理部101および上部脱水処理部101の下方に設置された下部脱水処理部110に大別される。上部脱水処理部101は、バースクリーン102で構成される。このバースクリーン102は、畜糞に含まれる水分を除去するもので、目幅が400〜600mm程度の縦形のバースクリーンが、略水平方向に対して50度程度の角度をなして傾斜配置されている。
【0035】
バースクリーン102は、上部脱水処理部101の上部に設置されたモータ(図示せず)によりエンドレスに周回する。畜糞はバースクリーン102によって掻き揚げられ、掻き揚げられる際に、畜糞に含まれていた水分はバースクリーン102を透過して下方に流れ、バースクリーン102によって畜糞から除去された水分は下方に流れ、バースクリーン102の下方に設けられた排水溝103に排水される。水分を除去された畜糞は、周回するバースクリーン102とともに上部脱水処理部101の上部に運搬される。
【0036】
下部脱水処理部110は、図8および図9に示すように、一端側が他端側よりも低くなるように傾斜する振動篩111と、振動篩111を支持する4本の支柱120,120,…と、支柱120の下部に各々取り付けられた防振ゴム125,125,…と、防振ゴム125を介して支柱120を支持する130,130,…と、振動篩111の下面に取り付けられた振動モータ140と、振動篩111に向くように立設された乾燥ファン150等を有して構成される。
【0037】
振動篩111は、上下に開口する断面コ字状の篩本体112と、篩本体112の上面に敷かれ左右(図8の紙面に対して)を長手方向とするシート状のスクリーンネット113と、スクリーンネット113の上面の周囲を抑えるスクリーン枠114とで構成される。篩本体112とスクリーン枠114本体とが振動篩111の長手方向に並ぶ複数のボルト115,115,…によりボルト締結されることで、篩本体112とスクリーン枠114本体とがスクリーンネット113を挟持する。このスクリーンネット113は水分を透過させることが可能な程度の目の粗さを有している。
【0038】
4本の支柱130は、いずれも略同一の長さを有しており、それらの上部は防振ゴム125を介してロックピン123により支柱120の下部に各々固定されている。4本の支柱120の上部は、いずれも受け具121を介して振動篩111に取り付けられている。ここで、4本の支柱120のうち、振動篩111の図8の紙面右端側(上部脱水処理部101側)を支持している2本の支柱120は、振動篩111の図8の紙面左端側(上部脱水処理部101とは反対の側)を支持している2本の支柱120よりも長く設定されている。このため、振動篩111は、上部脱水処理部101側が高くなるように傾斜しており、振動篩111のスクリーンネット113上の畜糞が、左方に移動し易くなっている。
【0039】
電気駆動する振動モータ140は、取付板122を介して振動篩111の底面側に取り付けられている。この振動モータ140を駆動させることにより、振動篩111全体を振動させることが可能であり、振動篩111のスクリーンネット113上の畜糞に振動を与えることで、畜糞に含まれている水分をスクリーンネット113の目を通して滴下させ、畜糞の水分の含有率を低下させる。ここで、支柱120と支柱130との間に防振ゴム125を介することで、振動モータ140の駆動による振動篩111の振動とともに振動篩111から支柱120側に伝達される振動を支柱130の側に伝達させないようにして、振動モータ140の駆動中において下部脱水処理部110全体を安定させるようにしている。
【0040】
振動篩111の下方には、振動篩111の長手方向と同じ方向を長手方向とする平面視略矩形状の液槽160が設置されている。この液槽160には、振動篩111のスクリーンネット113の目を通過して滴下する水分を貯留することができる。また、液槽160の内壁面は、排水ダクト165を介して排水溝170に連通しており、液槽160内にある程度貯留した水分は、排水溝170に向けて排水することが可能である。
【0041】
振動篩111の左端側(上部脱水処理部101とは反対の側)であって振動篩111の下方には、いわゆるヒレ付きのクライマーベルト式ベルトコンベア180の一端側が向けられて設置されている。図11に示すように、ベルトコンベア180は、その他端側がホッパ2の投入口22の近傍に向き、他端側から一端側に向けて下方に傾斜するように傾斜配置されている。振動篩111の左端からベルトコンベア180上に落下した畜糞は、このベルトコンベア180によりホッパ2の投入口22に向けて運搬される。
【0042】
ここで、脱水処理部100を用いた畜糞の脱水処理(ホッパ2に投入するまでの工程)について簡単に説明する。まず、上部脱水処理部101に投入された畜糞は、前述のように、バースクリーン102によって掻き揚げられることによってそれに含まれていた水分が除去され、バースクリーン102を透過して下方に流れた水分は排水溝103に排水される。バースクリーン102上に残った畜糞は、周回するバースクリーン102とともに上部脱水処理部101の上部に運搬された後、下方に設置された下部脱水処理部110の振動篩111に向けて落下する。
【0043】
上部脱水処理部101から振動篩111の右端側に向けて落下する畜糞は、落下の衝撃によりその中に含まれている水分が撥ね飛ばされ、比較的水分の含有量の少ない部分が振動篩111上に残る。そして、振動モータ140により振動を受けながらスクリーンネット113上をその傾斜方向に移送される畜糞に含まれている水分は、畜糞が振動を受けることでスクリーンネット113の目を透過して滴下し、液槽160に貯留される。液槽160に貯留された水分は、排水ダクト165を介して排水溝170に流入する。なお、スクリーンネット113上における畜糞の振動篩111の傾斜方向への移動に際して、スクリーンネット113の目を通過せずにスクリーンネット113上に付着している水滴は、スクリーンネット113に向いている乾燥ファン150からの風により吹き飛ばされる。
【0044】
振動モータ140からの振動を受けつつ振動篩111の左端側まで移動した畜糞は、振動篩111の他端側直下に一端が設けられたベルトコンベア180上に落下し、電機駆動するベルトコンベア180によってホッパ2の側に向けて搬送され、搬送される間に乾燥が進行し、ホッパ2の投入口22に投入される。
【0045】
次に、この炭化処理装置1による炭化処理について簡単に説明する。脱水処理部100における脱水処理を終えてホッパ2に投入された処理原料としての畜糞は、このホッパ2を通過する間に粉砕され水分が除去される。焼却発熱炉5の開閉扉54から投入された廃棄物は焼却発熱炉5内で燃焼され、この燃焼ガスが乾留ガス加熱室51の側に流入する。乾留ガス加熱室51に流入した燃焼ガスは、乾留ガス加熱バーナー52により加熱された後、熱ガス供給路62に送られる。ホッパ2から乾燥炉3に送られた畜糞は、熱ガス供給路62を介して熱ガス供給路63に流入する熱ガスによって100℃乃至150℃加熱された乾燥炉3内を通過する間に乾燥される。
【0046】
乾燥炉3で乾燥された畜糞は、炭化炉4に投入され、ここで加熱燃焼して炭化される。炭化炉4における加熱は、複数の電熱ヒータ48,48,…により400℃乃至450℃の炉温になるように制御されて行われ、炭化処理されて有機肥料となった畜糞は、排出口79から排出される。炭化処理の過程で発生した乾留ガスは、乾留ガス路65に排出された後、還流ガス路64を流れる還流ガスと合流して焼却発熱炉5の乾留ガス加熱室51内に入る。乾留ガス加熱室51内に入った乾留ガスは、焼却発熱炉5からの廃棄物の燃焼ガスと合流して乾留ガス加熱バーナー52の燃焼炎によって燃焼され、乾留ガス中の二酸化炭素や塩化水素、窒素酸化物等の有害物質が無害物質に変換される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る炭化処理装置の全体を示す正面図である。
【図2】上記炭化処理装置の右側面図である。
【図3】上記炭化処理装置を構成するホッパ周辺を示す部分図である。
【図4】上記ホッパの投入口周辺を示す平面図である。
【図5】上記炭化処理装置を構成する乾燥炉の乾燥炉筒を示す部分斜視図である。
【図6】上記炭化処理装置を構成する炭化炉に設けられた電熱ヒータを示す部分斜視図である。
【図7】上記炭化処理装置に設けられた脱水処理部を示す概略図である。
【図8】上記炭化処理装置に設けられた下部脱水処理部を示す側面図である。
【図9】上記下部脱水処理部を示す正面図である。
【図10】上記下部脱水処理部に設けられた振動篩を示す図で、(a)はその平面図を、(b)はその正面図を示す。
【図11】上記下部脱水処理部と上記ホッパとの間に設けられたコンベアを表す概略図である。
【符号の説明】
【0048】
1 炭化処理装置
2 ホッパ
3 乾燥炉(乾燥部)
4 炭化炉(炭化部)
5 焼却発熱炉(焼却炉)
21 スクリューコンベア
22 投入口
23 乾燥用撹拌機
24 落下用撹拌機
31 乾燥炉筒(乾燥炉本体)
35 スクリューコンベア(第1の撹拌部材)
41 炭化筒(炭化炉本体)
47 スクリューコンベア(第2の撹拌部材)
48 電熱ヒータ
51 乾留ガス加熱室(乾留ガス加熱部)
52 乾留ガス加熱バーナー
61 乾留ガス路
62 熱ガス供給路
63 熱ガス供給路
64 還流ガス路
65 乾留ガス路
78 温度センサ
79 排出口
100 脱水処理部
101 上部脱水処理部(脱水手段)
102 バースクリーン
110 下部脱水処理部(脱水手段)
111 振動篩
113 スクリーンネット(篩網)
140 振動モータ(振動発生手段)
150 乾燥ファン(送風手段)
160 液槽
180 ベルトコンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を加熱して乾燥処理を行う乾燥部と、脱水手段により脱水処理を施された処理対象物を前記乾燥部内に供給するためのホッパと、前記乾燥部に連通し前記乾燥部において乾燥処理を施した処理対象物を電熱ヒータからなる加熱手段により加熱して炭化処理する炭化部と、廃棄物を焼却処理する焼却炉に一体に設けられ前記廃棄物の燃焼熱により前記炭化部において発生する乾留ガスを加熱し前記乾燥部において乾燥処理を行うための熱ガスを発生させる乾留ガス加熱部と、前記乾留ガス加熱部と前記乾燥部とを繋ぎ前記乾留ガス加熱部からの熱ガスを前記乾燥部に導く熱ガス供給路と、前記炭化部と前記乾留ガス加熱部とを繋ぎ炭化部において発生する乾留ガスを前記乾留ガス加熱部に導く乾留ガス路とを有して構成されることを特徴とする炭化処理装置。
【請求項2】
前記乾燥部と前記乾留ガス加熱部とが還流ガス路により繋がれ、前記乾燥部において処理対象物を加熱して前記乾留ガス加熱部に戻る還流ガスが乾留ガスとともに前記乾留ガス加熱部において加熱されることを特徴とする請求項1に記載の炭化処理装置。
【請求項3】
前記乾燥部が、横長型の略円筒状の乾燥炉本体と、前記乾燥炉本体内に前記乾燥炉本体の長手軸回りに回転可能に設けられ前記ホッパから供給された処理対象物を撹拌する第1の撹拌部材とを有して構成されることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の炭化処理装置。
【請求項4】
前記炭化部が、横長型の略円筒状の炭化炉本体と、前記炭化炉本体内に前記炭化炉本体の長手軸回りに回転可能に設けられ前記乾燥部から移送された処理対象物を撹拌する第2の撹拌部材と、前記炭化炉本体の長手軸心と同心状に前記炭化炉本体の外周側に設けられ前記炭化炉本体内の処理対象物を昇温する略円筒状の前記電熱ヒータとを有して構成されることを特徴とする請求項1〜3に記載の炭化処理装置。
【請求項5】
前記脱水手段が、一端側が他端側よりも高くなるように傾斜支持され底部に篩網を有して水分を透過する振動篩と、前記振動篩に取り付けられ前記振動篩を振動させる振動発生手段と、前記振動篩に向けて空気を送風する送風手段とを有して構成され、
前記振動篩の一端側に落下した前記篩網上の処理対象物を前記振動発生手段により前記振動篩を振動させながら前記振動篩の他端側に搬送するとともに、前記送風手段から送風される空気を当てて処理対象物の水分を除去し、前記振動篩の振動により処理対象物の水分が前記篩網を通して篩い落とされることを特徴とする請求項1〜4に記載の炭化処理装置。
【請求項6】
廃棄物の燃焼熱を利用して処理対象物の乾燥処理を行い、乾燥処理された前記処理対象物を電熱ヒータからなる加熱手段により加熱して炭化処理を行う方法において、
炭化処理により発生する乾留ガスを前記廃棄物の燃焼熱により加熱し、加熱した乾留ガスを処理対象物の乾燥処理のための熱ガスとして利用することを特徴とする炭化処理方法。
【請求項7】
前記熱ガスにより処理対象物を乾燥処理した後の還流ガスを乾留ガスとともに加熱することを特徴とする請求項6に記載の炭化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−105605(P2007−105605A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298021(P2005−298021)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(592219536)和光機械工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】