説明

炭化水素の不均一触媒部分脱水素化の過程で非活性化された触媒床を再生するための方法

炭化水素の不均一触媒部分脱水素化に関連して非活性化される触媒床を再生するための方法であって、高温で、非活性化された触媒床を通して分子酸素を含むガスを導入し、再生の過程で、再生ガスの分子酸素含量を数倍増加させ、非活性化触媒床を通して流れる際の再生ガス中の二酸化炭素含量の増加が≦5体積%の値に限定される方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、脱水素化される炭化水素を不均一触媒部分脱水素化して脱水素化炭化水素にする過程で非活性化された触媒床を再生するための方法であって、期間tにわたって、分子酸素および不活性ガスを含むが、炭化水素を含まない再生ガスに高温で非活性化触媒床を通過させることを含む。ただし、触媒床を通過させる再生ガス中の炭素酸化物(CO、CO2)の合計含有量GAは触媒床から出る際に、触媒床を通過させる同じ再生ガスが触媒床に流入する際の対応する含有量GE(それぞれの場合、再生ガス体積の体積%で表される)よりもt時間にわたる再生の過程で少なくとも一時的に高く、その差ΔG=GA−GEは再生方法の最後までに最大値ΔGmaxを通過する。
【0002】
本出願において用いられる「脱水素化炭化水素」という用語は、その分子が、脱水素化される炭化水素の分子よりも少ない、少なくとも2個(実用性の観点から「2」が好ましい)の水素原子を含む炭化水素を含む。加えて、「炭化水素」という用語は、その分子が元素炭素および水素のみからなる物質を含むものとする。
【0003】
脱水素化炭化水素はしたがって特に1以上のC−C二重結合を分子中に有する非環状および環状脂肪族炭化水素を含む。
【0004】
このような脂肪族脱水素化炭化水素の例は、プロペン、イソブテン、エチレン、1−ブテン、2−ブテンおよびブタジエン、ならびにすべてのペンテンである。言い換えると、脱水素化炭化水素としては特に一不飽和直鎖炭化水素(n−アルケン)または分岐脂肪族炭化水素(例えば、イソアルケン)、ならびにシクロアルケンが挙げられる。
【0005】
加えて、脱水素化炭化水素は、分子中に1より多い炭素−炭素二重結合を含むアルカポリエン(例えば、ジエンおよびトリエン)も含む。しかし、脱水素化炭化水素は、アルキル芳香族化合物、例えばエチルベンゼンまたはイソプロピルベンゼンから、アルキル置換基の脱水素化により得ることができる炭化水素化合物も含む。これらは、例えばスチレンまたはα−メチルスチレンなどの化合物である。
【0006】
脱水素化炭化水素が、例えば官能化されたフリーラジカル重合性化合物(例えば、プロペンからのアクリル酸またはイソブテンからのメタクリル酸およびこれらの重合生成物)の合成に有益な出発化合物であるのが全く一般的である。例えば、脱水素化炭化水素の部分酸化により、このような官能化化合物を得ることが可能である。しかし、脱水素化炭化水素はメチル−tert−ブチルエーテル(例えばオクタン価を調節するための燃料添加剤として好適な、イソブテンの変換産物)などの化合物の製造にも適している。しかし、脱水素化炭化水素はそれ自体そのまま重合に用いることもできる。
【0007】
本明細書において、有用な脱水素化される炭化水素は、特に非環状および環状アルカンを包含するが、オレフィン(そのC−C二重結合数は増大する)(一例として、n−ブテンのブタジエンへの不均一触媒部分脱水素化が挙げられる)も包含する。
【0008】
言い換えると、本出願における「脱水素化される炭化水素」という用語は、例えば、化学量論式Cn2n+2(ここで、1<n≦20)の炭化水素、および化学量論式Cn2n(ここで、1<n≦20)の炭化水素、および化学量論式Cn2n-2(ここで、2<n≦20、およびn=整数)の炭化水素、特にC2〜C16アルカン、例えば、エタン(エチレンへ)、プロパン(プロピレンへ)、n−ブタン、イソブタン(イソブテンへ)、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカンおよびn−ヘキサデカンを含む。
【0009】
しかし、特に本明細書におけるすべての記載では、C2〜C6アルカンを脱水素化される炭化水素とし、特にC2〜C4アルカンを脱水素化される炭化水素とする。言い換えると、本明細書において脱水素化される炭化水素は特にエタン、プロパン、n−ブタンおよびイソブタンであるが、1−ブテンおよび2−ブテンならびにすべてのペンタンもそうである。
【0010】
特に、本明細書におけるすべての記載では、プロパンを脱水素化される炭化水素とし、プロピレンを結果として得られる脱水素化炭化水素とし、またこの不均一触媒脱水素化に使用される触媒でもあるとする。
【0011】
脱水素化炭化水素を製造する方法は周知である(例えば、国際特許出願公開第03/076370号、独国特許出願公開第10 2004 032 129号、欧州特許出願公開第731 077号、国際特許出願公開第01/96271号、同第01/96270号、独国特許出願公開第103 16 039号、国際特許出願公開第03/011804号、同第00/10961号、欧州特許出願公開第799 169号、独国特許出願公開第102 45 585号ならびに独国特許出願10 2005 061 626、10 2006 017 623および10 2006 035 718ならびに独国特許第102006024901.1号を参照)。
【0012】
原則として、少なくとも1つの脱水素化される炭化水素の不均一触媒部分脱水素化により脱水素化炭化水素を製造する方法は2群、すなわち酸化的不均一触媒部分脱水素化および非酸化的不均一触媒部分脱水素化に分けることができる。酸化的不均一触媒部分脱水素化とは異なり、非酸化的不均一触媒部分脱水素化(本明細書においては「従来型」不均一触媒部分脱水素化とも称する)は酸素なしで進行する。言い換えると、脱水素化される炭化水素から引き抜かれる水素は分子水素として直接引き抜かれ、その後のステップにおいても少なくとも部分的に酸素で酸化されて水になることはない。非酸化的脱水素化の熱的特性はしたがって常に吸熱反応である。酸化的不均一触媒部分脱水素化において、脱水素化される炭化水素から引き抜かれる分子水素は、対照的に、酸素が関与して引き抜かれる。この引き抜きは水(H2O)として直接行うことができる(この場合は、短縮形で不均一触媒オキシ脱水素化と称する;その熱的特性は常に発熱である)。しかし、引き抜きはまず分子水素として(すなわち、非酸化的で通常どおりに)行うことができ、これを次にその後のステップにおいて酸素で部分的または完全に酸化して水(H2O)にする(その後の水素燃焼の程度に応じて、全体的な熱的特性は吸熱、発熱または中性であり得る)。
【0013】
脱水素化される炭化水素のすべての前記不均一触媒部分脱水素化について共通であるのは、比較的高い反応温度で実施しなければならないことである。典型的な反応温度は≧250℃であり、頻繁には≧300℃、しばしば≧350℃、または≧400℃、または≧450℃、または≧500℃である。
【0014】
脱水素化される炭化水素のすべての前記不均一触媒部分脱水素化についてさらに別の共通点は、その長期操作の過程で、反応チャンバーを通る反応ガス混合物の単一パスにおいて脱水素化変換を維持するために(他は変わらない脱水素化条件下で)、作用時間が増すとともに次第に高い反応温度が必要になることである。いくつかある理由のうち特に、典型的には使用される触媒の外部および内部表面上に炭素および/または高沸点炭化水素の堆積物があり、これが触媒の活性部位への接近を妨害し、それぞれの場合に温度を上昇させることにより接近可能なままである触媒の活性部位の有効性を増加させることによって変換率の観点から通常相殺されるからである。
【0015】
国際特許出願公開第01/96008号は、分子酸素および不活性ガスを含むが炭化水素を含まず、堆積物を酸化して炭素酸化物にする再生ガスを高温で触媒床に通すことにより前記堆積物を除去するために、時々不均一触媒脱水素化を中断することを開示している。国際特許出願公開第01/96008号の教唆の欠点は、国際特許出願公開第01/96008号の教唆の再生ガスは全反応時間にわたって5%の分子酸素を含むことである。この方法で所定の再生時間内で達成できる再生結果は満足できるものではない。
【0016】
このことは、文献独国特許出願公開第10351269号、同第0350812号および同第10350822号に記載されている部分酸化触媒についてのものに基づく、非活性化オキシ脱水素化触媒について独国特許出願公開第10 2006 029 790号で推奨される脱水素化法について等しく当てはまる。
【0017】
独国特許出願公開第10028582号、同第10 2006 035 718号、および同第10 2005 013 039号は、第1再生段階において窒素で希釈された空気がまず触媒床上に300〜600℃の温度で通されるような方法で再生を行うことを開示している。再生ガスでの触媒ローディングは例えば50から10000h−1であり、再生ガスの酸素含有量は0.1または0.5〜20体積%である。その後のさらなる再生段階において、使用される再生ガスは、その他は同じである再生条件下では空気であってよい。
【0018】
両文献の欠点は、推奨される再生法の特定の実施形態を含まないことである。
【0019】
したがって、冒頭に記載した再生方法を提供することが本発明の1つの目的であり、これによりまず効率が増大し、第2に有効性が増大する。
【0020】
さらに、再生された触媒床の非活性化挙動は、新たに充填された触媒床の非活性化挙動と本質的には異ならない。これは一般に従来技術の方法とは異なる。
【0021】
したがって、脱水素化される炭化水素を不均一触媒部分脱水素化して脱水素化炭化水素にする過程で非活性化される触媒床を再生するための方法が見いだされ、この方法は期間tにわたって、分子酸素および不活性ガスを含むが、炭化水素を含まない再生ガスを高温で非活性化触媒床に通すことを含む。ただし、触媒床に通される再生ガス中の炭素酸化物の全含有量GAは、触媒床から流出する際に、触媒床に流入する際の触媒床を通過する同じ再生ガスの対応する含有量GE(それぞれの場合、再生ガス体積の体積%で表す)よりも、期間tにわたる再生過程において少なくとも一時的に高く、差ΔG=GA−GEは再生方法の最後までに最大値ΔGmaxを通過する。この場合、
a)0.2体積%≦ΔGmax≦5体積%であり、
b)触媒床に通される再生ガス中の分子酸素の含有量(再生ガス体積の体積%で表す)は、最高で再生方法の最後までの期間t中に少なくとも3回増加し、それぞれの増加は少なくとも2体積%である。
【0022】
0.2体積%≦ΔGmax≦4体積%、好ましくは0.2体積%≦ΔGmax≦3体積%、さらに好ましくは0.2体積%≦ΔGmax≦2体積%、最も好ましくは0.3体積%≦ΔGmax≦2体積%、または0.4体積%≦ΔGmax≦2体積%の再生方法が本発明では優先される。別の好ましい本発明の方法は、0.5体積%≦ΔGmax≦2体積%、または0.4体積%≦ΔGmax≦1.5体積%または0.5体積%≦ΔGmax≦1.5体積%のものである。
【0023】
ΔGmaxは、本発明の方法の過程で触媒床を通る再生ガスの再生流れの過程で(すなわち期間t内で)再生ガスが経験する、再生ガス中の炭素酸化物の含有量における最大の増加である。
【0024】
本発明の方法の期間tは、数分から数時間(例えば、≧1時間、もしくは≧2時間、もしくは≧3時間)に及ぶか、あるいは数日(例えば、≧24時間、または≧48時間、または≧72時間)に及ぶこともある。一般に、本発明の方法は14日を超えることはない。本発明の方法は一時的に中断し、その後再開することもできる。
【0025】
一般に、本発明の方法は、少なくとも非活性化脱水素化触媒床中に堆積した炭素含有成分の含有量が方法の開始時に存在する堆積した炭素含有成分の≦75質量%(好ましくは≦50質量%、さらに好ましくは≦25質量%、望ましくは≦10質量%、さらに望ましくは≦5質量%、または≦1質量%、最も好ましくは≦0.1質量%、または0質量%)になるまでおこなわれる(それぞれの場合、これらの構成成分中に存在する炭素の質量として計算する)。
【0026】
本発明によると期間t内で少なくとも3回の、必要とされる分子酸素の再生ガス含有量における増加は、例えば各場合において1回の急激な増加としておこなうことができる。しかし、連続したより小さな急激な増加および/または連続した増加として想定することもできる。分子酸素の再生ガス含有量における連続的増加の過程で2体積%の増加が達成される場合、分子酸素の再生ガス含有量における1回の本発明の増加についての要件はこのようにして満たされる。
【0027】
本発明の再生方法の最後までに(すなわち、最高時間tまでに)再生ガスの酸素含有量は、本発明にしたがって全体として少なくとも6体積%増加するはずである。好ましくは、本発明によると、前記の(全体的)増加は少なくとも8体積%、さらに好ましくは少なくとも10体積%、なお一層好ましくは少なくとも12体積%、さらに望ましくは少なくとも14体積%または少なくとも16体積%である。再生ガスの酸素含有量における前記の(全体的)増加が少なくとも18体積%、または少なくとも19体積%、または少なくとも20体積%であるのも本発明によると有利である。しかし、一般に全体的な増加は21体積%以下である。
【0028】
言い換えると、期間t内の本発明の方法における再生ガスの酸素含有量は好ましくは、少なくとも3回または4回、望ましくは少なくとも5回または少なくとも7回、さらに望ましくは少なくとも8回または少なくとも9回、少なくとも2体積%増加する。
【0029】
一般に、他は一定の再生条件下で、ΔGが0に近づく(例えば0.01体積%より低くなる)場合に増加が起こる。
【0030】
加えて、本発明の方法の開始時(最初)で触媒床を通って導かれる再生ガス中の分子酸素含有量が≦15体積%、好ましくは≦10体積%、さらに好ましくは≦5体積%、なお一層好ましくは≦3体積%、さらに望ましくは≦2体積%または≦1体積%である場合が本発明の方法に関して有利である。しかし、通常、本発明の方法開始時で触媒床を通って導かれる再生ガス中の分子酸素含有量は≧0.25体積%、通常≧0.5体積%、多くの場合≧0.75体積%である。
【0031】
しばしば、本発明の方法の過程で触媒床を通って導かれる再生ガス中の分子酸素含有量はしたがって0.25体積%から21体積%の範囲で変化する。
【0032】
本発明の方法が実施される場合に、分子酸素を含む再生ガスが非活性化触媒床中に流入する際の温度は、実用性の観点から適切には200〜700℃、好ましくは300〜600℃、さらに好ましくは400〜600℃、なお一層好ましくは420〜550℃または440〜470℃である。
【0033】
有利には、本発明によると、本発明の方法は、触媒床から流出する際の再生ガスの温度が、触媒床の非活性化を引き起こした不均一触媒部分脱水素化の過程での触媒床における最高の温度よりも低いままである(またはこの温度よりも少なくとも1.5倍低い)ような方法でおこなうべきである。本発明の再生方法の過程での触媒床の最高温度は、≦700℃、好ましくは≦650℃、さらに好ましくは≦600℃、最も好ましくは≦575℃または≦550℃の値であるのが有利である。
【0034】
本発明の再生方法の過程(期間t以内)において触媒床で起こる最高温度Tが、触媒床の非活性化を引き起こす不均一触媒部分脱水素化の過程で触媒床において起こる最高温度Tmax基準で次の条件を満たす場合が、本発明では適切であることが判明している:0.5・Tmax≦T≦1.5・Tmaxまたは0.5・Tmax≦T≦1・Tmax
【0035】
有利には、本発明の再生方法における手順は、本発明の脱水素化方法の過程(すなわち、期間t以内)で少なくとも1回再生される触媒床中へ流入する際の分子酸素を含む再生ガスの温度を上昇させるためのものである。
【0036】
触媒床への再生ガスまたは反応ガスのローディングは、本明細書においては標準リットル(=Nl;標準条件下、すなわち0℃1気圧での適当な量の再生ガスまたは反応ガスのリットルで表した体積)で表した、1時間あたり触媒床1リットルを通って導入される再生ガスまたは反応ガスの量を意味すると理解されるべきである。どちらの場合でも、純粋な不活性物質床は触媒床に属するとみなされない。触媒床が純粋な不活性物質で希釈された触媒からなる場合、この不活性物質は触媒床に再生ガスを添加する計算に関して触媒床に属するとみなされるが、触媒床に反応ガスを添加する計算に関しては属するとみなされない。本発明の方法の他の要件については、純粋な不活性物質床および不活性希釈液のどちらも触媒床に属するとみなされる。
【0037】
ローディイングはまた、再生ガスの1つの成分のみ、または反応ガスの1つの成分のみに基づく。この場合、1時間あたり1リットルの触媒床を通って導入される成分のNl/(l・h)(または略して:Nl/l・h、またはさらに省略して:h−1)で表した量である。
【0038】
≧500Nl/l・hである、触媒床への再生ガスのローディングを本発明の再生方法において用いるのが本発明では有利である。触媒床の高い再生ガスローディングにより、一般に、再生ガス中の不活性ガスの割合が増加する。このような不活性ガスの含有量の増加は、本発明によると、再生ガス中の高い炭素酸化物濃度(特に高い一酸化炭素濃度)に対抗する点で有利である。再生ガス中の高い一酸化炭素含有量は、顕著な化学的還元作用を有し、この作用は触媒床の再活性化に悪影響を及ぼす点で、本発明では不利であることが判明している。これは二酸化炭素についてはほとんど当てはまらないが、依然として存在する炭素堆積物と反応させてCOを得ることが可能であり、特にこのようにして局所的に高い一酸化炭素濃度をもたらすことができる。加えて、不活性ガスフラクションの熱容量は再生方法の過程で形成される反応熱の放出を促進する。
【0039】
しかし、一般に触媒床への再生ガスのローディングは≦50000Nl/l・hである。その理由は、触媒床への再生ガスのローディングは圧力降下の増加を伴うからである。
【0040】
本発明の方法において好ましい触媒床への再生ガスのローディングBはしたがって1000 Nl/l・h≦B≦40000Nl/l・h、さらに好ましくは2000Nl/l・h≦B≦30000Nl/l・h、さらに好ましくは3000Nl/l・h≦B≦20000Nl/l・h、なお一層好ましくは4000Nl/l・h≦B≦15000Nl/l・h、または5000Nl/l・h≦B≦10000Nl/l・hである。非活性化触媒床における比較的低い炭素含有堆積物の含有量で、ローディングBは、さらに低いレベル(例えば、300Nl/l・h〜700Nl/l・h)で本発明により有利に選択される。
【0041】
触媒床への再生ガスのローディングBは本発明の再生方法の過程(期間t内)で最大値を通過するのが本発明では有利である。
【0042】
言い換えると、例えば、本発明の方法はまず中程度のローディングで始め、再生方法の過程で徐々に最大値まで増加させる。これから進んで、触媒床への再生ガスのローディングをその後再度低くする。
【0043】
典型的な出発ローディングは、例えば4000〜8000Nl/l・hである。典型的な最大ローディングは、例えば7000〜11000Nl/l・hである。典型的な最終ローディングは、例えば500〜4000Nl/l・hである。非活性化触媒床における比較的低い炭素含有堆積物の含有量で、前記値が例えば、400〜600Nl/l・h(出発)、1000〜3000Nl/l・h(最大)および500〜2000Nl/l・h(最終)であることが可能である。
【0044】
本発明の方法における再生ガス中に存在する分子酸素の酸素源として空気を用いる場合、再生される触媒床の前記ローディング特性は、例えば以下のような簡単な方法で実現できる。再生は、空気流れと、主に(50体積%を超える程度の)不活性ガスからなるガス流れとを組み合わせることにより得られるガス混合物流れを用いて開始する。その後、後者を本質的に維持し、再生時間をとおして空気流れを徐々に増加させる(単位時間あたり供給される空気の量)。再生時間が増加すると、これにより再生ガス中の酸素含有量が同時に増加する。空気流れが最大値に達すると、その後に主に不活性ガスからなるガス流れの減少が始まる。一方では、これにより再生ガス中の酸素含有量がさらに増加し、他方では、触媒床への再生ガスのローディングが減少する。本発明の再生方法の終わり頃に再生ガスは空気流れのみからなるのが本発明では有利である。再生される触媒床中に流入する際に、再生方法の過程で用いられる再生ガスの最高温度があるのが実用性の観点から有利である。
【0045】
有利には、最高酸化ポテンシャルを有するこの再生ガス流れをその後ある時間保持して、この最大酸化作用を活用するのが有利である。これは本発明の方法において非常に一般的に有利である。言い換えると、一般に本発明の方法において、本発明の方法は、最高酸化ポテンシャル(すなわち、典型的には分子酸素の最高含有量および触媒床中への流入時の最高温度)を有する再生ガス流れで終結するであろう(反対に、本発明の方法は、本発明の方法の過程で最低酸化ポテンシャルを有する再生ガス流れで開始するのが好ましい)。
【0046】
本明細書において、(本発明の再生または不均一触媒部分脱水素化の)不活性ガスとは、固定触媒床を通る流れの再生または脱水素化の過程で再生ガスまたは反応ガスの構成成分として、(不活性ガスの各構成成分単独で)少なくとも95モル%の程度まで、好ましくは少なくとも97モル%の程度まで、さらに好ましくは少なくとも99モル%の程度まで(特定の再生または脱水素化条件下で)化学的に変化しないままである、分子酸素以外で炭化水素以外のガスを意味すると理解される。本発明に好適な不活性ガス(不活性希釈ガス)の例は、(再生の場合および不均一触媒部分脱水素化の場合の両方について)N2、He、Ne、ArおよびH2Oならびに、(すでに記載した制限があるが)CO2、ならびにこれらのガスの2以上の混合物である。本発明において非常に好適な不活性ガスは、特に本発明の再生の場合については、分子窒素である。
【0047】
前述の不活性ガスの定義はしたがって、他の、例えば不均一触媒気相反応の反応ガスにも当てはまる。
【0048】
本発明の再生方法の長時間にわたって、再生ガスは、78体積%以上(または≧78体積%)、しばしば80体積%以上(または≧80体積%)、または90体積%以上(または≧90体積%)の不活性ガス(多くの場合N2)を含む。
【0049】
同時に、本発明の方法における再生ガスは、高温で再生される固定触媒床に供給されるべきである。この目的についての不活性ガスの要件およびこの目的についてのエネルギーの要件の両方を最小限に抑えるために、本発明の方法における再生ガスは、少なくとも部分的に循環させて、触媒床に新たに導かれる再生ガスの構成成分として再使用するのが本発明では有利である。
【0050】
言い換えると、再生される触媒床から流出する再生ガスは(少なくとも部分的に)しばいしば大部分(原則として、リサイクルされた再生ガスフラクションは、触媒床から流出する再生ガス体積流量率に基づいて、例えば10〜97体積%(もしくは10〜95体積%もしくは10〜90体積%)または30〜60体積%である)が反応器入口にリサイクルされ、酸素源として用いられる十分なガス(例えば、空気または純粋な分子酸素または2つの混合物)が添加されるので、結果として得られる混合物は再生ガスに望ましい分子酸素含有量を有する。本質的にこの追加量に対応する、触媒床から流出する再生ガスの体積を再生ガスのリサイクルの前に除去することができ、廃棄することができる(例えば、エネルギー発生のために火炎中またはバーナー中で燃焼させる)。再生される触媒床のローディングを減少させることが望ましい場合、リサイクル前に除去される再生ガスの割合は、次第に増加するレベルで対応して選択される。
【0051】
再生ガスを触媒床入口にリサイクルする目的で、触媒床を通過する過程で起こる圧力を再度相殺するためには、通常、ファン(好ましくはラジアルファン)で十分である。特に高い圧力降下を引き起こす触媒床の場合、ラジアルコンプレッサーを用いて再加圧をおこなうこともできる。新しい再生ガスを得るためにさらに必要とされる酸素源は必要とされる圧力で他の供給源から一般的に入手可能である。しかし、適切な場合、実際にはリサイクルされる再生ガスとの混合物中に圧縮される。
【0052】
再生される触媒床から流出し、通常、高温の再生ガスは、再生される触媒床へ供給される再生ガスとの間接的熱交換において適切な熱交換器を通って導かれることが実用性の観点から適切である。これが起こる際、所望の温度に、前者は冷却し、後者は加熱する。典型的には、間接的熱交換を再加圧前におこなう。冷却の過程で水を凝縮させる場合、液滴分離器を利用して分離し、再生回路外で行うことが実用性の観点から有利である。
【0053】
過度に高い温度を回避するために、例えば空気冷却器中または圧縮の過程において表面水で冷却される熱交換器中で再加圧される再生ガスをさらに冷却する場合にも、このような水分凝縮が起こり得る。このようにして凝縮する水も、再加圧前に除去するのが本発明では適切である。
【0054】
もちろん、触媒床を通して導かれる再生ガス中の分子酸素含有量は、本発明の再生方法の過程において空気中の分子酸素の含有量より高く選択することもできる。例えば、本発明の再生方法の終わり頃に再生ガスとして純粋な分子酸素を使用することも可能である。経済的実行可能性の理由から、触媒床を通して導かれる再生ガス中の分子酸素の含有量は通常空気の含有量を超えない。
【0055】
触媒床を通して導かれる再生ガスのCO含有量は、前記サイクルガス法においてさえも、触媒床中へ再生ガスが流入する際、≦3体積%、より望ましくは≦2体積%、さらに好ましくは≦1体積%、なお一層好ましくは≦0.1体積%または≦0.05体積%であるのが本発明では有利である。これは特に、再生ガス中の高いCO濃度が例外的な方法で本発明の目的に対して作用するようであるからである。
【0056】
非常に一般的に、触媒床中に流入する際の再生ガス中の不活性ガス、炭素酸化物および分子酸素以外の構成成分含有量は、≦2体積%、望ましくは≦1体積%、好ましくは≦0.5体積%、なお一層好ましくは≦0.1体積%、最も望ましくは0体積%であるのが本発明では有利である。
【0057】
原則として、本発明の方法において再生される触媒床をとおして再生ガスを吸収できる。この場合、本発明の再生方法における作動圧力は大気圧より低い。大気圧より1〜10bar、好ましくは1〜6bar、さらに好ましくは1.5〜4bar高い、本発明の再生方法の過程における作動圧力が本発明では選択される。この理由は、特に、大気圧を超える作動圧力での操作が有利なことに高いO2分圧を可能にするからである。
【0058】
本発明の方法は、断熱に適応させた(断熱反応チャンバー中)、すなわち断熱構造の(外部環境から熱的に絶縁された反応チャンバーを有する)反応器である非活性化触媒床の場合、および定温に適応させた、すなわち定温構造の反応器(反応チャンバーの外側でおこなわれる熱媒体との熱交換により反応チャンバー中の温度の制御を可能にする)中でおこなわれる場合のどちらも好適である(それぞれの場合、触媒床は反応チャンバー中に存在する)。
【0059】
この点で、本発明の再生方法において、触媒床中の温度は本質的に再生される触媒床を通る再生ガスとして触媒床中へ流入する再生ガスの入口温度より低くならないのが好ましいことを重視すべきである。断熱反応器中に配置される、再生される触媒床の場合、この必要要件は、通常、反応器の断熱性により大部分が満たされる。定温反応器中に配置された触媒床の場合、外部熱媒体の温度を対応して調節しなければならない。
【0060】
反対に、触媒床中に流入する際の再生ガスの温度TEと、触媒床から流出する際の同じ再生ガスの温度TAとの差、すなわち、TA−TEは、本発明の方法において、特に断熱反応器中に配置された、再活性化させる触媒床の場合において、≦250℃、望ましくは≦150℃、好ましくは≦100℃である。本発明で都合のよい差TA−TEは約50℃である。
【0061】
原則として、本発明の方法における触媒床は、固定触媒床、流動触媒床のいずれかであり得る。本発明にしたがって再生される触媒床は固定触媒床であるのが本発明では好ましい(本特許出願における全ての記載は、したがって特に固定触媒床の場合に適用される)。本発明の方法は、固定触媒床の床体積が≧50lかつ≦10000m3、一般に、≦5000m3、通常≦1000m3または≦500m3または≦50m3である場合に特に妥当である。このことは、特に、固定触媒床が断熱反応器またはその反応チャンバー中に配置されている場合に当てはまる。これは、固定触媒床の床堆積が増加するとともに、反応器材料の熱容量がますます重要性を失い、影響を与えるという事実により引き起こされる。
【0062】
固体状態において選択的作用を有する脱水素化触媒全体にわたって脱水素化される炭化水素の部分脱水素化をおこなう必要性は、脱水素化(C−Hの切断)が熱分裂またはクラッキング(C−Cの切断)と速度論的に競合するという事実により生じる。
【0063】
選択的触媒により、脱水素化される炭化水素(例えば、プロパン)の不均一触媒脱水素化の場合、選択性が増加した脱水素化炭化水素(例えば、プロピレン)が形成される。この場合、副生成物、例えばメタン、エチレンおよびエタンが比較的少量で形成される。
【0064】
本発明の再生方法を当該分野において既知のすべての脱水素化触媒に用いることができる。
【0065】
不均一触媒オキシ脱水素化以外の不均一触媒脱水素化の場合、これらの既知脱水素化触媒はおおよそ2群、特に酸化性のもの(例えば、酸化クロムおよび/または酸化アルミニウム)と、一般に酸化性(例えば、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ランタンおよび/または酸化セリウム)支持体上に(元素形態で)堆積した少なくとも1つの金属からなるものとに分類できる。一般に、堆積した金属のうち少なくとも1つは、比較的貴金属(例えば、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hgを含む族由来の元素および第3遷移族元素(例えば、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、または白金族、例えば、白金および/またはパラジウム由来の元素)である。前記触媒としてはしたがって、例えば、(一般的に酸化性)触媒支持体上に、VIIIおよび/またはVI遷移族元素からなる群から選択される1以上の元素、および適切な場合、第IおよびII主族、第III遷移族、例えばランタノイド、第III主族、レニウム、亜鉛およびスズからなる群から選択される1以上のさらなる元素を含むものが挙げられる。
【0066】
好適な脱水素化活性元素は特に第VIII遷移族の金属、好ましくは貴金属白金およびパラジウム、さらに好ましくは白金である。貴金属が脱水素化活性元素として用いられる場合、例えばReおよび/またはSnなどの貴金属の焼結を遅らせる追加の金属が存在し得る。可能なさらなる元素としては、触媒表面の酸性に影響を及ぼすことが知られているか、または貴金属を焼結に対して安定化させることができるものが挙げられる。このようなさらなる元素は、第IおよびII主族の元素、特にLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、SrおよびBaならびに第III遷移族の元素、特にYおよびLa、例えばランタノイドである。Znも有効であることが判明している。貴金属の代わりに(または貴金属に加えて)、第VI遷移族、特にクロムまたはモリブデンの脱水素化活性金属が触媒支持体上に存在することも可能である。本明細書の必要性のために、前記群は「酸化的脱水素化触媒」および「金属脱水素化触媒」として互いに区別されているものとする。本発明の再生方法はしたがって、独国特許出願公開第10 2006 035 718号、国際特許出願公開第01/96270号、独国特許出願公開第10219879号、欧州特許出願公開第731 077号、独国特許出願公開第10131297号、国際特許出願公開第99/46039号、米国特許第4,788,371号、欧州特許出願公開第705 136号、国際特許出願公開第99/29420号、米国特許第4,220,091号、同第5,430,220号、同第5,877,369号、欧州特許出願公開第117 146号、独国特許出願公開第19937196号、同第19937105号、米国特許第3,670,044号、同第6,566,573号、国際特許出願公開第01/83405号および同第94/29021号、ならびにこれらの文書において記載されている先行技術で開示されている全ての脱水素化触媒に適用可能である。このことは、これらの脱水素化触媒が、脱水素化される炭化水素のこれらの文献において記載される不均一触媒脱水素化の過程で非活性化された場合に特に当てはまる。
【0067】
前記事項と対照的に、不均一触媒オキシ脱水素化に有用な触媒は、本質的に酸化的性質を有するもの(例えば、MoVNb酸化物ベースのもの、またはピロリン酸バナジウムベースのもの(さらにプロモーターを含んでもよい))のみである。
【0068】
本発明の再生方法はさらに、米国特許第4,788,371号、中国特許出願公開第1073893号、Catalysis Letters 23(1994),103−106,W.Zhang,Gaodeng Xuexiao Huaxue Xuebao,14(1993)566,Z.Huang,Shiyon Huagong,21(1992)592、国際特許出願公開第97/36849号、独国特許出願公開第19753817号、米国特許第3,862,256号、同第3,887,631号、独国特許出願公開第19530454号、米国特許第4,341,664号、J.of Catalysis 167,560−569(1997)、J.of Catalysis 167、550−559(1997)、Topics in Catalysis 3(1996)265−275、米国特許第5,086,032号、Catalysis Letters 10(1991),181−192,Ind.Eng.Chem.Res.1996,35,14−18、米国特許第4,255,284号、Applied Catalysis A:General,100(1993),111−130、J.of Catalysis 148,56−67(1994),V.Cortes Corberan and S.Vic Bellon(Ed.),New Developments in Selective Oxidation II,1994、Elsevier Science B.V.,S.305−313、3rd World Congress on Oxidation Catalysis、R.K.Grasselli,ST.Oyama,A.M.Gaffney and J.E.Lyons(Ed.),1997,Elsevier Science B.V.,S.375ffまたは独国特許出願公開第19837520号、同第19837517号、同第19837519号、同第19837518号、欧州特許出願公開第938 463号、同第167 109号、独国特許出願公開第19838312号および同第19753817号に開示されている全てのオキシ脱水素化触媒に適している。このことは、脱水素化される炭化水素のこれらの文献に記載されている不均一触媒オキシ脱水素化の過程で、これらのオキシ脱水素化触媒が非活性化された場合に特に当てはまる。
【0069】
酸化性オキシ脱水素化触媒を含めて、様々な既知脱水素化触媒はしたがって全体として「酸化的脱水素化触媒」および「金属脱水素化触媒」に分類できる。
【0070】
酸化的脱水素化触媒の場合、本発明の再生は一般に、最高の酸化ポテンシャルを有する(すなわち、触媒床中への再生ガスの想定される入口温度が最高であり、再生ガス中の想定される分子酸素含有量が最高である)再生ガスを再生される触媒床に通す過程で、ΔGが本質的にゼロに近づく場合に終わる。この点に関する信頼性を増大させるために、最高の酸化ポテンシャルを有する再生ガスが触媒床を通過する際に、作動圧力を時折低下させる(例えば、大気圧より3.5bar高い圧力から大気圧より0bar高い圧力まで)ことが実用性の観点から適切であり、このようにして依然として炭素酸化物で満たされている触媒細孔の脱ガスを容易にする。これは、反応器からの出口で圧力保持弁を用いた簡単な方法でおこなうことができ、この弁を、簡単な方法でこの目的のためにさらに開けるか、または作動圧力を再確立するために再度次第に閉じるのが適切である。
【0071】
原則的に減少するΔGが得られる場合(チェックするために、再生ガスの酸化ポテンシャルを若干増加させ、ΔGが変化しないままであるかどうかをチェックできる)、脱水素化触媒は、ここでも原則として炭素を含む堆積物がない。元素成分はここでも再酸化された状態で存在し、脱水素化触媒は、酸化的脱水素化触媒の場合、ここでも不均一触媒脱水素化のために使用できる状態である。言い換えると、最高の選択された酸化ポテンシャルを有する再生ガスの入口温度を最終的に、再生後に再度開始される不均一触媒脱水素化の反応ガスの入口温度に対応する値に調節し、その後、再生ガス流れを停止させ、対応する反応ガス流れにより置換する。
【0072】
もちろん、本発明の再生は、ΔGが本質的にゼロの値に達する前に実際に終えることもできる。この場合、再生は最大可能な程度に達しないが、それでも本発明の利点が活用される。特に全体的な経済的実行可能性の観点から、ΔGが本質的にゼロの値に達する前に、本発明の再生を実際に終わらせ、不均一触媒脱水素化を早期に再開することが本発明では適切であり得る。消費された時間と、脱水素化性能との相互作用において、経済最適はおそらく部分再生である(経済最適の位置を数回の個別の実験により特定の触媒系について決定しなければならない)。
【0073】
使用される脱水素化触媒が、対照的に、金属脱水素化触媒である場合、いわゆる再分散が始まって、原則として減少するΔGが最高の酸化ポテンシャルを有する再生ガスにより得られる場合に完了する。
【0074】
すでに記載したように、金属触媒は、一般に酸化物支持体上に堆積した少なくとも1つの金属からなる少なくとも1つの金属からなる触媒である。このような触媒の高い活性について、金属相が支持体表面上に非常に微細な分散で分配されている場合が有利である。このために、このような触媒の製造において、通常、特定の金属の酸化形態をまず支持体上に堆積させる(例えば、適切な金属の塩溶液の形態で、この塩溶液を支持体に適切に含浸させることによる)。金属塩と、例えば、酸化物支持体との引力相互作用により、金属は、含浸が完了すると、外側および内側支持体表面上に特に均一に分配される。その後、イオン形態で適用された金属は典型的には、還元前に達成される支持体上の金属の広がりの程度が著しく損なわれることなく、化学的還元により元素形態に変換される。通常、2つの現象が不均一触媒部分脱水素化の長期作用の過程において金属脱水素化触媒の非活性化に寄与する。この現象とは、まず、すでに記載した炭素および/または高沸点炭化水素の堆積であり、第2は長期作用に伴う支持体上に分散された金属分布の広がりの程度の損失である。後者はおそらくは金属−金属相互作用が元素形態における金属−支持体相互作用を上回り、このために、不均一触媒脱水素化の長期作用の過程で広がりの本来の程度が縮退する。
【0075】
本発明の再生方法において、したがって、記載した炭素を含む堆積物が除去されるだけではない。そのかわりに、触媒脱水素化作用を生じる金属の少なくとも一部も酸化形態に変換される。しかし、酸化形態において、増大した支持体との相互作用がここでも生じ、その結果、所望の再分散が起こる。したがって、本発明の方法において、本質的にゼロであるΔGの値に到達した場合でも、最高の酸化ポテンシャルを有する再生ガスは依然として本発明の方法で非活性化金属触媒に作用することが可能であり、このことは前記再分散を促進する。したがって、非活性化金属脱水素化触媒に適用される場合、本発明の再生方法内の再分散段階も参照される。再分散時間が増加するにつれ、所望の再分散は一般に増加する。実用性の観点から典型的な方法で、再分散段階は通常、数時間(例えば、≧2h、または≧6h)から数日(例えば、≦5日)までの時間がかかる。各場合において達成される再分散の質をそれぞれの場合においてサンプリングを用い、脱水素化触媒として触媒サンプルをここでも使用することにより、実験的にチェックしなければならない。この時点で、再分散段階中の再生ガスは、蒸気を含まないのが本発明では有利であることを重視すべきである。対照的に、非活性化された酸化的脱水素化触媒の再活性化において、再生ガス中に蒸気が存在することは、全体的な本発明の再生領域にわたって有利な影響を及ぼす。非活性化金属触媒の場合、これは一般に、再分散段階の前の再生段階にも当てはまる。
【0076】
しかし、再生ガスのこのような蒸気含有量は、一般に20体積%を超えない。しかし、通常このような蒸気含有量は≧1体積%である。
【0077】
同時に、酸化生成物としての非活性化脱水素化触媒上に堆積した高沸点炭化水素の酸化も水を形成することを考慮すべきである。
【0078】
しかし、本発明にしたがって再酸化され、一般的にさらに再分散された金属脱水素化触媒は、本発明にしたがって再酸化された酸化的脱水素化触媒と対照的に、脱水素化される炭化水素の不均一触媒部分脱水素化の触媒作用にそれ自体はすぐには適さない。
【0079】
そのかわりに、このことは、本発明の再生後に、再分散された金属脱水素化触媒の金属構成成分をさらに還元してそれらの元素状態にすることも必要とする。実用性の観点から、分子水素をこのために使用するのが有利である。このために、これを触媒床に高温で、そのまままたは不活性ガスで希釈された形態のいずれかで通過させる。このような還元ガスの水素含有量は≧1体積%、好ましくは≧3体積%、さらに好ましくは≧5体積%である。
【0080】
使用されるこのような還元ガスは、少なくとも40体積%(好ましくは40〜60体積%)の分子水素および残余として本質的に不活性なガスを含むガス混合物であるのが本発明では有利である。還元ガスの好適な不活性ガス構成成分は、特にAr、He、Ne、N2およびH2Oである。還元ガスにおいて使用される不活性ガスは分子窒素および/または蒸気であることが実用性の観点から適切である。分子窒素単独の使用が好適である。しかし、しばしば還元ガスが使用され、還元ガスは、窒素とともに、最高5体積%まで、または3体積%まで、または1体積%までの蒸気を不活性希釈ガスとして含む。これは特に、還元ガスが本発明の再生ガスについてすでに記載したように循環される場合である。還元ガスは分子水素を還元剤として、再分散された脱水素化触媒の酸化物含有量と比較して反応化学量論(金属酸化物+H2 →H2O+金属)に関してかなり過剰に有しているので、このようなサイクル法は特に適切である(酸化物支持体は通常、硬質焼成(高温で焼結)され、通常還元雰囲気により攻撃されない)。触媒床を希釈するための成形された不活性物質は、典型的には対応する硬質焼成酸化物質から製造される。これらの細孔体積は、一般に≦0.5cm3/g(好ましくは≦0.25cm3/g)であり、これらの比表面積は≦100cm2/g、好ましくは≦70cm2/gである。
【0081】
加えて、この場合のサイクルガス法も還元ガスの熱容量の保持を保証する。循環された還元ガスに新鮮な分子水素を補充する必要すらないことが多い。
【0082】
元素金属への還元が同様に高温を必要とするために、熱容量保持の原理は関連性がある。還元自体に伴う発熱は比較的わずかである(若干発熱性)。
【0083】
一般に、触媒床中に流入する際の還元ガス(還元作用を有するガス)の温度は350〜600℃、好ましくは 400〜550℃、または400〜500℃である。さらに好ましくは、前記入口温度は430〜480℃である。前記事項は、断熱反応器中に配置された非活性化触媒床の場合に特に当てはまる。
【0084】
触媒床における過度に高い温度は、前記還元の過程では回避すべきである。その理由は、このような温度は本発明の再生の過程でもたらされる再分散を妨げるからである。
【0085】
再生ガスと同様に、還元ガスは原則として触媒床を通して吸収される。この場合、還元作用における作動圧力は一般に標準圧力よりも低い。しかし、還元ガスに触媒床を通過させる場合、この作動圧力は好ましくは還元作用において大気圧よりも高い。本発明の還元作用における典型的な作動圧力は、大気圧よりも1〜10bar高く、好ましくは1〜6bar高く、さらに好ましくは1〜3bar高い。
【0086】
それ以外は、本発明のサイクルガス様式の再生ガスについての言及は、サイクルガス様式の還元ガスに当てはまる。還元作用は、触媒床から出る際に還元ガス中の蒸気含有量(体積%で表す)が、再分散された触媒床中に還元ガスが流入する際の同じ含有量と比較して、本質的にもはや増加しない場合に原則として終わる。
【0087】
還元を完了するために、還元ガスが触媒床中へ流入する際の温度を、非活性化金属脱水素化触媒の再生が終わった後に脱水素化方法を再開する場合の反応ガスの温度に対応する値に調節する。これにより触媒床はこの温度まで予熱される。続いて、供給を還元ガスから反応ガスへ切り替える。
【0088】
この時点で、ここでも本明細書における全ての記載は、特に触媒床が固定触媒床である場合および特に触媒床(固定触媒床)が断熱反応器中に存在する場合に当てはまることを重視すべきである。前記事項は、不均一触媒オキシ脱水素化以外の(例えば、プロパンからプロピレンへの)不均一触媒脱水素化の過程で非活性化が行われる場合に特に当てはまる。
【0089】
本明細書において、不活性ガスとは、≧98.5体積%の程度の不活性ガスからなるガスを意味すると理解される。言い換えると、分子窒素も不活性ガスとして使用される場合、このために、原則として、≧98.5体積%の純度の工業用窒素(すなわち、言い換えると、最高1.5体積%までの分子酸素を依然として含み得る窒素)を使用することが可能である。しかし、窒素(不活性成分)以外および分子酸素以外の構成成分は全体として≦0.5体積%に限定されるべきである。
【0090】
もちろん、≧99体積%、好ましくは≧99.5体積%、さらに好ましくは≧99.9体積%の純度の不活性ガスが本発明では選択される。
【0091】
一般に、本発明にしたがって再生される非活性化された脱水素化触媒床は、その質量(純粋な不活性物質床を含まない)基準で、0.5または1〜10質量%の、その内部に堆積した炭素を含む構成成分を有する(その内部に存在する元素炭素の質量の割合で表す)。特に、金属脱水素化触媒が使用され、不均一触媒部分脱水素化のために使用される反応ガス混合物が添加された外部分子水素および一般的には蒸気を含む場合、金属の広がりの程度の損失は、過度のコーキングさえなく触媒の著しい非活性化さええ引き起こし得る(広がりの程度が低い影響は、コーキングの効果を優越する)。
【0092】
そうでなければ、本発明の再生方法が開始する前で、触媒床の非活性化につながる不均一触媒脱水素化の中断後に、まず触媒床を不活性ガス(例えば、N2、H2Oおよび/または希ガス)でフラッシュすることが適切であることが判明している。これはまず本発明の再生開始前に、触媒床中に依然として存在し、本発明の再生方法を妨害し得る反応物質および生成物を触媒床が含まないという効果を上げる。第二に、非活性化触媒床中へのフラッシュガスの入口温度を適切に選択して、脱水素化サイクルの最後では当然上昇するその温度を、有利な本発明の再生とより適合する値(例えば、550℃を超える温度から450℃未満まで)に低下させることができる。この目的に使用されるフラッシュガスの温度は、(固定)触媒床中に流入する際は、一般に≧25℃から≦100℃の範囲である。フラッシュガスはこれらの温度よりも高い温度に加熱された触媒床に供給することもできる。この方法は一般的に、(固定)触媒床が脱水素化反応器において熱ストレスが生じることを回避するために過度に急速に冷却されないようにする場合に選択される。特に有利なフラッシュガスは、最高5体積%までの蒸気を含む、分子窒素および蒸気の混合物であることが判明している。
【0093】
触媒床をフラッシュガスでフラッシュする場合でさえも、一般的にはフラッシュガスの少なくとも部分量を循環させることが適切である。このことは、本発明の再生方法を妨害し得る全ての反応物質および生成物が触媒床からフラッシュで除去されているが、触媒床の温度が、有利な本発明の再生と適合する温度まで低下していない場合に特に当てはまる。新鮮なフラッシュガスについての要求を制限するために、触媒床から流出する加熱されたフラッシュガスをこの場合、まずその温度を所望の温度に低下させるために間接的熱交換器(例えば空気冷却器)を通し、その後、触媒床中にリサイクルするのが実用性の観点から適切である。
【0094】
すでに記載したように、触媒床への再生ガスのローディングが本発明の再生方法の過程で最大値を通過する場合が本発明では有利である。記載したサイクルガス様式の再生ガスを使用する場合、これはますます増加する多量の再生ガスを本発明の再生方法の開始時に循環させなければならないことを意味し、一方、本発明の再生方法の終わり頃に循環させなければならない再生ガスの量は比較的少量である。言い換えると、本発明の方法を効率よく実施するためには、したがって多量または少量のいずれかのサイクルガスを送達できるラジアルファンが必要である。このために、実用性の観点から有利なラジアルファンは、異なる出力を有する2つの異なる駆動モーター(一方は大きな高性能のものであり、他方は小さな低性能のものである)を有するものであることが判明している。それぞれの場合、2つのうちの他方はアイドリングしている。別法として、周波数変換器を有する駆動モーターを使用することも可能である。
【0095】
触媒床は固定触媒床であるのが本発明では好ましいので、本明細書において脱水素化触媒とは、その最長寸法L(成形体の表面上の2点をつなぐ最長の直線)が0.1または1〜100mm、しばしば0.5〜80mmまたは0.5〜50mm、好ましくは1〜30mmまたは2〜20mm、さらに好ましくは2〜10mmまたは2〜5mmである成形体を意味すると理解される(前記事項は成型不活性物質の最長寸法にも当てはまり、この寸法を有する成型触媒体を固定触媒床中で希釈できる)。炭化水素を不均一触媒オキシ脱水素化して脱水素化炭化水素する以外の不均一触媒脱水素化に使用される脱水素化触媒の場合、本発明の方法は、以下に記載する実験において、反応管を通る反応ガス混合物の単回パス基準で、少なくとも5モル%の反応ガス中に存在するプロパンをプロピレンに脱水素化するものに特に適用可能である。
【0096】
EN材料番号1.4835のスチールで作られ、壁厚2mm、内径35mmおよび長さ80cmの反応管に以下のものを充填する:
50mlの適切な脱水素化触媒床を反応管の中心に置く。成形触媒体床の上および下で、反応管にそれぞれの場合、1.5〜2.5mmの直径を有するステアタイト球(不活性球)を充填する。格子で床全体を支える。外側から、反応管をその長さ全体にわたって550℃の温度に保持する。反応管にプロパンおよび蒸気の混合物で体積比が2(プロパン)対1(蒸気)であるものを、成形触媒体床のプロパンローディングが1000Nl/l・hで添加する。反応管中に導入される反応ガス混合物流れを550℃の温度に予熱する。特に、本発明の方法は、前記境界条件下で、エタン、エチレンおよびメタン副生成物の形成の累積選択性が、変換されたプロパン基準で≦5モル%である脱水素化触媒に適している。
【0097】
これらの脱水素化触媒としては、例えば独国特許出願番号102005044916のものが挙げられるが、特に独国特許出願公開第19937170号の金属脱水素化触媒、特にこの文献の実施例1、実施例2、実施例3および実施例4のものが挙げられる。
【0098】
これらは、10〜99.9質量%の二酸化ジルコニウムおよび0〜60質量%の酸化アルミニウム、二酸化ケイ素および/または二酸化チタンを支持体材料として、元素形態で、0.1〜10質量%の合計量で含む金属脱水素化触媒であり、この量由来の少なくとも1つの元素は、第1および第2主族およびランタン以外の第3遷移族元素、第8遷移族の少なくとも1つの元素(元素の周期律表のそれぞれの場合)およびランタンおよび/またはスズを含む。ただし、質量百分率の合計は100質量%であるとする。
【0099】
これらの金属脱水素化触媒は好適な実施形態として、10〜99.9質量%の二酸化ジルコニウムおよび0〜60質量%の酸化アルミニウム、二酸化ケイ素および/または二酸化チタンを支持体材料として、元素形態で、そして0.1〜10質量%の合計量で含み、第VIII遷移族の少なくとも1つの元素、第IおよびII主族の少なくとも1つの元素、第IIIおよび/またはIV主族の少なくとも1つの元素ならびにランタノイドおよびアクチノイドをはじめとする第III遷移族の少なくとも1つの元素を含むものも包含する。ただし、質量百分率の合計は100質量%であるとする。
【0100】
第VIII遷移族の元素として、前記金属脱水素化触媒の活性組成物は、好ましくは白金および/またはパラジウム、さらに好ましくは白金を含む。第IおよびII主族の元素として、前記脱水素化触媒の活性組成物はカリウムおよび/またはセシウムを含む。ランタノイドおよびアクチノイドをはじめとする第III遷移族の元素として、前記脱水素化触媒の活性組成物は好ましくはランタンおよび/またはセリウムを含む。第IIIおよび/またはIV主族の元素として、前記脱水素化触媒の活性組成物は好ましくはホウ素、ガリウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズおよび鉛、さらに好ましくはスズからなる群からの1以上の元素を含む。
【0101】
原則として、本発明の手順の非活性化固定触媒床への適用可能性に関して、触媒形状に関して(特に担持触媒の場合)、あるいは固定触媒床を希釈するためにさらに使用される不活性成形体の形状に関して、どんな種類の制限もない。特に頻繁に使用される形状は、例えば、中実円筒形、中空円筒形(環)、球、錐体、ピラミッドおよび立方体であり、さらには押出物、車輪形、星形およびモノリス形でもある。
【0102】
特に不均一触媒部分オキシ脱水素化以外の不均一触媒部分脱水素化の場合(本明細書においては、これらは非酸化的および酸化的従来型不均一触媒部分脱水素化である)、固定触媒床の有用な形状は:触媒押出物(直径:典型的には0.1または1〜10mm、好ましくは1.5〜5mm;長さ:典型的には1〜20mm、好ましくは3〜10mm);錠剤(好ましくは押出物と同じ寸法)および/または触媒環(外径および長さはそれぞれの場合、典型的には2〜30mmまたは10mmまで、壁厚はおよそ1〜10mm、または5mmまで、または3mmまで)である。これらの形状は原則として、固定触媒床を希釈するためにさらに使用される任意の成形内部物質の形状としても有用である。
【0103】
一般に、脱水素化触媒(特に金属脱水素化触媒、これらのうち特に独国特許出願公開第19937107号において推奨されるもの(特に独国特許出願公開の触媒例))で、酸化的および非酸化的従来型不均一触媒部分脱水素化に好適であるものは、したがって脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)の脱水素化と、脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)の燃焼および分子水素の燃焼との両方を触媒できる。触媒全体におよぶ競合的状況の場合、水素の燃焼は、脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)の脱水素化およびその燃焼のどちらと比較してもずっと急速に進行する。
【0104】
本発明にしたがって再生される触媒床の非活性化を引き起こし、本発明の再生に先行する、脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)の従来型(酸化的または非酸化的)不均一触媒部分脱水素化を実施するために、有用な反応器の型および異なる方法は原則として当該分野において既知のあらゆるものである。
【0105】
このような異なる方法は、かかる脱水素化に適した脱水素化触媒に関して本明細書において記載する例えば全ての先行技術の文献、ならびに本明細書の冒頭で記載した先行技術および文献独国特許出願公開第10 2006 029 790号、同第10 2006 035 718号、同第10 2006 0017 623号、同第10 2006 015 235号および同第10 2005 061 626号に記載されている。同じことは、文献欧州特許出願公開第1109763号、米国特許第3,308,181号、同第3、670,044号、同第4,886,928号、同第6,566,573号、同第4,788,371号および国際特許出願公開第94/29021号、ならびにこれらの文献において記載される従来技術にも当てはまる。
【0106】
このような従来型不均一触媒部分脱水素化(非酸化的または酸化的)の比較的総合的な記載は、例えば、Catalytica(登録商標) Studies Division,Oxidative Dehydrogenation and Alternative Dehydrogenation Processes,Study Number 4192 OD、1993,430 Ferguson Drive,Mountain View,California,94043−5272,U.S.A.にみられる。
【0107】
脱水素化される炭化水素(例えば、プロパン)の従来型部分不均一触媒脱水素化に特徴的なものは、(すでに記載したように)、脱水素化段階が吸熱的に進行することである。このことは、必要な反応温度を確立するために必要な熱(エネルギー)を反応ガスに事前に、および/または不均一触媒脱水素化の過程でのいずれかで供給しなければならないことを意味する。
【0108】
言い換えると、脱水素化される炭化水素を含む反応ガス混合物の触媒床を通る単回パスに基づいて、触媒床を含む反応チャンバーを、例えばシェルにより封入された反応チャンバーの外側に導かれる流動性(すなわち、液状またはガス状)熱媒体との制御された熱交換(外部より制御された熱特性)により等温の構造にすることができる。しかし、対応する熱交換器は反応チャンバー自体の中に収容することもできる。
【0109】
脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)の従来型部分不均一触媒脱水素化は、同じ参考基準で、断熱的、すなわち、原則として(外部に)伝導された熱媒体(外的に未制御の熱特性)とのこのような制御された熱交換なしでもおこなうことができる。後者の場合、以下に記載する(例えばその後の段階での水素燃焼により)内部制御された温度特性の結果として、反応チャンバー中に存在する触媒床を通る単回パスに基づく総発熱は、吸熱的(負)または自己熱的(本質的にゼロ)または発熱的(正)にすることができる。
【0110】
典型的には、少なくとも1つの脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)の従来型不均一触媒部分脱水素化は、すでに記載したように、比較的高い反応温度を必要とする。達成可能な変換は通常、熱力学的平衡により制限される。典型的な反応温度は300〜800℃、または400〜700℃である。例えば脱水素化されてプロピレンになるプロパン1分子あたり1分子の水素が得られる。高温および反応生成物H2の除去は、不活性希釈により分圧を下げるのと同様に、平衡の位置を目的生成物の方向へシフトさせる。付随する作動圧力は一般に0.2〜10bar、または0.5〜6barまたは0.5〜3barである(それぞれの場合、絶対値)。
【0111】
必要な高い反応温度のために、炭素以下の高分子量有機化合物がある量で形成され、触媒表面上に堆積し、したがってこれを非活性化することも、すでに記載したように、脱水素化される少なくとも1つの炭化水素(例えばプロパン)の従来型不均一触媒部分脱水素化に典型的である。この不都合な付随する現象を最小限に抑えるために、脱水素化される炭化水素(例えば、プロパン)を含み、従来型不均一触媒脱水素化のために高温で触媒表面上に通される反応ガスを蒸気で希釈できる。堆積する炭素を、石炭ガス化の原理により得られる条件下で再度連続して部分的に除去する。
【0112】
炭素堆積物の形成をある程度抑制すること(そして触媒寿命(触媒床の2回の再生の間の不均一触媒部分脱水素化の作用時間)を延ばすこと)は、通常どおり不均一触媒作用下で脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)に、これが高温で脱水素化触媒上に導かれる前に分子水素を添加することによっても可能である。
【0113】
特に前記目的のために混合物中の蒸気および分子水素を、通常どおり不均一触媒作用下で脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)に添加することも可能であると理解される。分子水素をプロパンの従来型不均一触媒脱水素化に添加することによっても、副生成物としてのアレン(プロパジエン)、プロピンおよびアセチレンの望ましくない形成を軽減する。
【0114】
(すでに記載されているように)従来型不均一触媒炭化水素(例えば、プロパン)脱水素化を(疑似)断熱的に(例えば、比較的低いプロパン(または一般的に炭化水素)変換率で)おこなうことが適切である。このことは、脱水素化へ供給される反応ガス混合物(本明細書においては、出発ガスまたは出発ガス混合物とも称する)を一般に400または500〜700℃(または550〜650℃)の温度に初期加熱することを意味する(例えば、これを取り巻く壁を直接熱で乾燥させることによる)。通常、断熱反応チャンバー中に配置された少なくとも1つの触媒床を通る単回断熱パスは所望の変換を達成するために十分であり、その過程で、反応ガスは約30℃〜200℃(変換率および希釈率に依存する)冷却される。熱媒体として蒸気が存在することも断熱法の観点から有利である。比較的低い反応温度により、使用される触媒床の寿命を長くできる。
【0115】
原則として、従来型不均一触媒炭化水素(例えば、プロパン)脱水素化(断熱的または等温的のいずれで行われるかに関係なく)は固定触媒床または移動床または流動床のいずれかでおこなうことができる。固定触媒床における実施が通常好適である。本明細書におけるすべての記載は、特に固定触媒床における実施に関連する。
【0116】
特定の反応チャンバー中に配置された触媒床を通る単回パスにおいて記載するように、比較的低い変換率の、脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)の従来型不均一触媒脱水素化に好適な触媒装填物は、このような脱水素化に関して本明細書において適切に開示されるあらゆる触媒、特に例として開示されるもの、および従来型不均一触媒脱水素化に関して不活性である幾何学的形状の物体との混合物である。
【0117】
従来型不均一触媒炭化水素(例えば、プロパン)脱水素化は、100〜10000h−1、しばしば300〜5000h−1、すなわち多くの場合500〜3000h−1で、脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)の変換率が低いか(例えば、≦30モル%、または≦20モル%、または≦15モル%)または高い(≧30モル%)かのいずれかで、出発ガスおよびその中に存在する脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)の両方での触媒ローディング(使用する触媒の合計量に基づく)で操作できる。
【0118】
少なくとも1つの脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)の従来型不均一触媒脱水素化は特に優れた方法で(脱水素化変換率≦30モル%、または≦20モル%、または≦15モル%かつ>30モル%(例えば、40モル%、または、50モル%))、多段反応チャンバー中で実施できる。
【0119】
このような多段反応チャンバーは、脱水素化を空間的に連続して触媒する1より多い触媒床を含む。触媒床の数は、例えば1〜20であり、適切には2〜8であるが、3〜6であってもよい。触媒床は好ましくは放射状または軸上に連続して配置される。固定触媒床型がこのような多段反応チャンバーにおいて用いられるのが実用性の観点から適切である。
【0120】
最も簡単な場合、固定触媒床は軸方向に、または反応チャンバー中の同心円筒格子の環状間隙中に配置される。しかし、反応チャンバー中の環状ギャップを部分的に、互いの上面上に配置し、ガスを、1つのセクション中に放射状に通過させた後、次のセグメント中に上方または下方に通すことも可能である。
【0121】
適切には、反応ガス(出発ガス)を、1つの触媒床から次の触媒床への途中で、熱ガスで加熱された熱交換器リブ上を通過させることにより、または熱燃焼ガスで加熱された管もしくは熱ガスで加熱された熱交換器プレート中を通過させることにより、多段反応チャンバー中で中間加熱に付す。
【0122】
多段反応チャンバー中の本発明の方法が他の方法で断熱的に操作される場合、≦50モル%、または≦40モル%、または≦30モル%の脱水素化変換率(例えばプロパン変換率)について、特に独国特許出願公開第199 37 107号に記載されている触媒を使用する場合、具体例として、出発ガスを400または450〜550℃(好ましくは400〜500℃)の温度に予熱された反応チャンバー中に出発ガスを導入し、多段反応チャンバー内で少なくともこの温度範囲内に保持することで十分である。このことは、全体的な従来型脱水素化をこのようにして、少なくとも新鮮な触媒を用い、比較的中程度の温度で実現することができることを意味し、これは2つの再生間の固定触媒床の寿命について特に有利であることが判明している。
【0123】
従来型不均一触媒脱水素化を記載した多段反応器中で(すでに記載されているのと同様に)本質的に自己熱的に行うこと、すなわち、先に概略を記載した中間加熱を直接経路(自己熱法)により行うことがなお一層有利である。
【0124】
このために、反応ガスがその固定触媒床段を通る途中で、例えば第1触媒床を通過した後かつ次の触媒床間で、反応ガスに限られた範囲で分子酸素を有利に添加できる。使用される脱水素化触媒に応じて、反応ガス中に存在する炭化水素、触媒表面上にすでに堆積した任意の炭素または炭素様化合物および/または従来型不均一触媒脱水素化(例えばプロパン脱水素化)の過程で形成され、および/または反応ガスに添加された水素の限定された燃焼が起こる(実用性の観点から、多段反応チャンバー、水素(および/または炭化水素)の燃焼を特異的(選択的)に触媒する触媒を添加した触媒床中に挿入することも適切であり得る)(有用なかかる触媒としては、例えば、文献米国特許第4,788,371号、同第4,886,928号、同第5,430,209号、同第5,530,171号、同第5,527,979号および同第5,563,314号のものが挙げられ;例えばかかる触媒床は多段反応チャンバー中の脱水素化触媒を含む床に対して交互にすることができる)。放出される反応熱はしたがって(疑似断熱反応器構造)疑似自己熱的方法で、実質的に等温(内部温度制御)操作様式の不均一触媒(例えばプロパン)脱水素化を可能にする。触媒床中の反応ガスについて選択された滞留時間が増加するにつれ、(例えばプロパン)脱水素化はしたがって、低下するかまたは本質的に一定の温度で可能であり、このことにより2つの再生間で特に長い寿命が可能になる(多段反応器の代わりに、同じ方法で、前記段数に対応する多数の反応器が一列に連結したものを使用すること、およびそれぞれの場合で連続した反応器間で酸素供給を行うことも可能である。このように連結された反応器の数は,例えば「3」、または「2」または「4」である。一般に、これらの反応器の個々の反応器は、1つの固定触媒床または多くても2個の固定触媒床を有する。
【0125】
前述のように行われる、脱水素化の過程で形成される分子水素のその後の燃焼は、本出願に関連して、非酸化的な従来型不均一触媒脱水素化を酸化的な従来型不均一触媒脱水素化に変える。
【0126】
一般に、前述の酸素供給は、反応ガスの酸素含有量が、脱水素化される炭化水素およびその中に存在する脱水素化された炭化水素(例えばプロパンおよびプロピレン)の量に基づいて、0.01または0.5〜30体積%であるように行うべきである。酸素源は、純粋な分子酸素または、不活性ガス、例えばCO、CO2、N2、希ガス、特に空気で希釈された酸素のいずれかであってよい。別の酸素源は窒素酸化物である。結果として得られる燃焼ガスは、一般的にさらなる希釈作用を有し、したがって従来型不均一触媒(例えばプロパン)脱水素化を促進する。
【0127】
従来型不均一触媒(例えばプロパン)脱水素化の等温性は、有利には、触媒床間の空間中に触媒床段を含む反応チャンバー中に充填される前に排出させるのが有利であるが、かならずしもその必要はない閉鎖された内容物(例えば、管状)を導入することによりさらに改善できる。このような内容物は、特定の触媒床中に配置することもできる。これらの内容物は、ある温度以上で蒸発または融解し、その際に熱を消費し(この場合、温度はこの温度よりも低くなる)、再度凝縮し、その際に熱を放出する好適な固体または液体を含む。
【0128】
脱水素化を触媒する触媒床を含む反応チャンバー中の従来型不均一触媒(例えばプロパン)脱水素化の出発ガスまたは出発ガス流れを必要な反応温度に加熱する別の手段は、脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)の一部および/またはその中に存在するH2を反応チャンバー中に流入する際の出発ガス中に存在する分子酸素により(例えば、好適な特異的燃焼触媒上に、例えばこれを単に通過させる、および/またはその上を通過させることにより)、そしてこのように放出された燃焼熱により燃焼させ、(脱水素化に)望ましい反応温度まで加熱することにある。結果として得られる燃焼生成物、例えばCO2、H2OおよびN2(燃焼に必要な分子酸素を伴う)は有利な不活性希釈ガスである。
【0129】
前記水素燃焼は、国際特許出願公開第03/076370号または独国特許出願公開第102 11 275号に記載されているような特定の優れた方法で実施できる。言い換えると、反応チャンバー中に配置された少なくとも1つの触媒床上の脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)の連続的従来型酸化的不均一触媒部分脱水素化の方法において:
− 少なくとも1つの脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)、分子酸素、分子水素および適切な場合、蒸気を含む少なくとも1つの出発ガス流れを反応チャンバー中に連続して供給し、
− 少なくとも1つの脱水素化される炭化水素を、反応チャンバー中に配置された少なくとも1つの触媒床を通して導入し、この反応チャンバー上に分子水素および少なくとも部分的に少なくとも1つの脱水素化された炭化水素(例えばプロピレン)が従来型不均一触媒脱水素化により形成され、
− 分子酸素を含むさらなるガスを適切な場合、反応チャンバーを通るその途中、本発明の反応チャンバーに流入した後に反応ガスに添加し、
− 反応チャンバー中の反応ガス中に存在する分子水素中の分子酸素を酸化して少なくとも部分的に蒸気にし、
− 分子水素、蒸気、脱水素化された炭化水素(例えば、プロピレン)および脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)を含む少なくとも1つの生成物ガス流れを反応チャンバーから連続して抜き取る。
【0130】
ここで、反応チャンバーから抜き取られる少なくとも1つの生成物ガス流れを同じ組成物の2つの部分に分け、2つの部分のうちの1つを脱水素化サイクルガスとして、本発明の反応チャンバーに供給される少なくとも1つの出発ガス流れ中にリサイクルし、他の部分を別の方法で(例えば、反応チャンバー中で形成される脱水素化された炭化水素の不均一触媒部分酸化の目的で)さらに使用する。
【0131】
この時点で、脱水素化される炭化水素の酸化的または非酸化的な従来型不均一触媒部分脱水素化の出発ガス流れ(脱水素化を触媒する触媒床に供給される反応ガス混合物流れ)は一般的に≧5体積%の脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)を含む。この体積比は、=10体積%、しばしば=15体積%、通常=20体積%、または=25体積%、または=30体積%の対応する基準に基づく値であることが多い。しかし、この体積比は、≦90体積%、通常≦80体積%、しばしば≦70体積%の同じ基準に基づく値であることが多い。前記データは脱水素化される炭化水素としてプロパン、脱水素化された炭化水素としてプロピレンである場合に特に適用される。もちろん、イソブタンが脱水素化される炭化水素であり、イソブテンが脱水素化された炭化水素である場合にも適用される。加えて、これ(出発ガス流れ)は、例えば次のものを含む:
a)N2およびH2O;
b)N2、O2およびH2O;
c)N2、O2、H2OおよびH2
d)N2、O2、H2O、H2およびCO2
e)N2、O2、H2O、H2、CO2およびCO。
【0132】
脱水素化される炭化水素の酸化的従来型不均一触媒部分脱水素化の場合、使用される酸素源は純粋な分子酸素、空気または分子酸素と不活性ガスとの他の混合物であってもよい。
【0133】
脱水素化される炭化水素の従来型部分的不均一触媒脱水素化の作用時間の増加を伴う触媒床の非活性化の増大は、特に独国特許出願公開第10 2006 035 718号に記載されているようにして対抗することができる(例えば、内部および/または外部温度制御による反応温度の上昇)。
【0134】
しかし、これに関してとられる対策も、一般的には望ましくない副生成物の形成の増加を伴うので、ある作用時間後に本発明の方法の再生使用が有利なのである。
【0135】
不均一触媒部分脱水素化が、反応ガスの流れ方向で、複数の空間的に連続した触媒床(触媒床段)列を含む多段反応器中でおこなわれた場合、全体的な(固定)触媒床の本発明の再生は原則として異なる方法で実施できる。
【0136】
まず、全体的な触媒床(すなわち多段反応器中に存在する全ての個々の触媒床の全体)の再生はそのままで実施できる。言い換えると、再生ガスを適切な温度の多段反応器に供給し、空間的に連続した個々の触媒床にしたがって多段反応器内の個々の触媒床を通して連続的に導入する。全体的な触媒床を次いで個々の非活性化触媒床の再生と同様にして全体的に再生する(個々の床の合計は再生される触媒床を有効に形成する)。
【0137】
原則として、多段反応器において、個々の触媒床、個々の触媒床段を、本発明の方法で単独で再生する可能性も存在する。適切には、実用性の観点から、この場合の手順は流れ方向で最後の触媒床(流れ方向で最後の触媒床段)の再生から始める。言い換えると、再生ガスを流れ方向で最後の触媒床と最後から2番目の触媒床の間に供給し、最後の触媒床中だけを通過させる。流れ方向で最後の触媒床の再生が完了したら、流れ方向で最後から2番目の触媒床の再生などで再生を続ける。言い換えると、再生ガスを次いで流れ方向で最後から3番目の触媒床と、流れ方向で最後から2番目の触媒床との間に供給し、流れ方向で最後から2番目の触媒床中をまず通って導入し、これから流出させ、流れ方向で最後の触媒床中に流す。全体的に対応した方法で、脱水素化を触媒し、一連の異なる脱水素化反応器の間で分布する触媒床を本発明にしたがって再生することも可能である。しかし、異なる脱水素化反応器中に存在する触媒床を(その連結に関係なく)本発明にしたがって互いに独立して同時に再生することもできる。
【0138】
従来型(酸化的または非酸化的)不均一触媒脱水素化を、特に断熱的操作様式に関して実施するために、単一高炉(高炉反応器)は、その中を軸方向および/または放射的に出発ガス流れが流れる少なくとも1つの触媒床(例えば少なくとも1つの固定触媒床)を含む反応チャンバーとして十分である。かかる反応器の特に好適な実施形態は、独国特許出願公開第10 2006 029 790号、同第10 2006 035 718号、同第10 2006 017 623.5号および同第10 2006 015 235.2号に記載されている。
【0139】
最も簡単な場合において、容器は、例えばその内径が0.1〜10m、おそらくは0.5〜5mであり、少なくとも1つの固定触媒床が支持装置(例えば格子)上に取り付けられている、基本的に円筒形の容器である。断熱操作における本発明のシェルが適切な断熱材料(例えばガラスウール)を適用することによりその環境に対してさらに熱的に絶縁されている、触媒が添加された反応チャンバーは、脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)を含む熱出発ガス流れがその中を軸方向に流れる。触媒形状は球状もしくは管状、またはストランド状のいずれかである。記載した場合の反応チャンバーは非常に安価な装置で実現できるので、特に圧力降下が低い全ての触媒形状が好ましい。これらは特に、高い空洞容積をもたらす触媒形状であるか、または例えばモノリスもしくはハニカム構造である。脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)を含む反応ガスの放射状流れを実現するために、本発明の反応チャンバーは例えば2つの同心円筒格子を含み、触媒床はこれらの管状間隙中に配置できる。断熱的場合において、これを取り巻くシェル(ジャケットシェル)は、適切な場合、同様に熱的に絶縁される。その中を軸方向に流れる、基本的に円筒形の高炉の場合、断熱操作様式の場合の本発明の方法について、円筒軸に対して直角で反応チャンバーの寸法が、軸方向の少なくとも1つの触媒床の床高さSの少なくとも5倍、好ましくは少なくも10倍、さらに好ましくは少なくとも15倍である場合が有利である。しかし、一般に前記比A:Sは≦200、典型的には≦150、通常≦100である。
【0140】
本発明にしたがって再生される触媒床の非活性化を引き起こし、本発明の再生に先行する不均一触媒オキシ脱水素化は原則として、例えば文献米国特許第4,788,371号、中国特許出願公開第1073893号、Catalysis Letters 23(1994),103−106、W.Zhang,Gaodeng Xuexiao Huaxue Xuebao,14(1993)566、Z.Huang,Shiyou Huagong,21(1992)592、国際特許出願公開第97/36849号、独国特許出願公開第197 53 817号、米国特許第3,862,256号、同第3,887,631号、独国特許出願公開第195 30 454号、米国特許第4,341、664号、J.of Catalysis 167,560−569(1997)、J.of Catalysis 167、550−559(1997)、Topics in Catalysis 3(1996)265−275、米国特許第S5,086,032号、Catalysis Letters 10(1991),181−192、Ind.Eng.Chem.Res.1996,35,14−18、米国特許第4,255,284号、Applied Catalysis A:General,100(1993)、111−130、J.of Catalysis 148,56−67(1994),V.Cortes Corberan and S.Vic Bellon(Ed.),New Developments in Selective Oxidation II、1994,Elsevier Science B.V.,S.305−313,3rd World Congress on Oxidation Catalysis,R.K.Grasselli,ST.Oyama,A.M.Gaffney and J.E.Lyons(Ed.),1997,Elsevier Science B.V.,S.375ffまたは独国特許出願公開第198 37 520号、同第198 37 517号、同第198 37 519号および同第198 37 518号に記載されているようにして、プロパンの不均一触媒部分オキシ脱水素化の実施例を用いて実施できる。この場合、使用される酸素源は、例えば空気であってよい。しかし、ここで使用される酸素源ならびに不活性ガスは、しばしば少なくとも90モル%の程度まで分子酸素を有し、多くの場合、少なくとも95モル%の程度までの分子酸素を有する。原則として、使用される酸素源は純粋な分子酸素であってもよい。
【0141】
不均一触媒オキシ脱水素化に適した触媒は、すでに記載したように、特に制限を受けない。好適なオキシ脱水素化触媒は、例えばプロパンをプロピレンに酸化できる、当業者に既知のすべてのものである。特に、前記文献において言及されるすべてのオキシ脱水素化触媒を使用できる。好適な触媒は、例えば、少なくともVおよびMg、または少なくともVおよびSb、または少なくともV、SbおよびMgを含むオキシ脱水素化触媒であるが、さらにはMoVNb酸化物またはピロリン酸バナジルを含む触媒もあり、それぞれの場合、適切ならば促進剤を含む。有利なオキシ脱水素化触媒の一例は、混合金属酸化物IとMo、V、Te、OおよびXを必須成分として含む触媒であり、ここで、Xはニオブ、タンタル、タングステン、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、クロム、マンガン、ガリウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、アンチモン、ビスマス、ホウ素、インジウム、ケイ素、ランタン、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、銀、金およびセリウムから選択される少なくとも1つの元素である(欧州特許出願公開第938463号および同第167109号も参照のこと)。さらなる特に好適なオキシ脱水素化触媒は、独国特許出願公開第−197 53 817号の多金属酸化物組成物または触媒A(本明細書においては、多金属酸化物組成物IIと称する)および独国特許出願公開第19838312号の触媒であり、第1の文献において好適と記載されている多金属酸化物組成物または触媒Aが特に有利である。したがって、脱水素化される炭化水素の不均一触媒オキシ脱水素化に有用な活性組成物としては、一般式III
1aMo1-b2bx (III)
(式中
1=Co、Ni、Mg、Zn、Mnおよび/またはCu、
2=W、V、Te、Nb、P、Cr、Fe、Sb、Ce、Snおよび/またはLa、
a=0.5−1.5、
b=0−0.5、そして
x=酸素以外の(III)中の元素の価数および振動数により決定される数)
の多金属酸化物組成物が挙げられる。
【0142】
これらは独国特許出願公開第102 45 585号に記載されているようにして製造でき、成形できる。
【0143】
例えばプロパンの不均一触媒オキシ脱水素化に関して、新しい触媒を使用する場合の反応温度は、好ましくは200〜600℃の範囲、特に250〜500℃の範囲、さらに好ましくは350〜440℃の範囲である。作動圧力は好ましくは0.5〜10barの範囲、特に1〜10barの範囲、さらに好ましくは1〜5barの範囲である。1barを超える作動圧力、例えば1.5〜10barの作動圧力が特に有利であることが判明している。一般的に、例えばプロパン(プロパンは本明細書では脱水素化されるすべての炭化水素の代表例として常に言及される)の不均一触媒オキシ脱水素化も固定触媒床上で行われる。後者を、例えば塩浴で冷却された管束反応器(一般的にガス透過性格子上に配置されている)の管(2つの管オリフィスと一緒になって、管壁は反応チャンバーと接触したシェルを形成し;管内部は反応チャンバーである)中に、例えば欧州特許出願公開第700 893号および同第700 714号ならびにこれらの文献中で言及される文献中に記載されているようにして、適切に注ぐ。出発ガス流れを管入口に供給する。反応ガスの触媒床中での平均滞留時間はおよそ0.5〜20秒である。例えば酸素に対するプロパンの比は、触媒の所望の変換率よび選択性により様々である。0.5:1〜40:1の範囲、特に1:1〜15:1の範囲、さらに好ましくは2:1〜6:1または〜5:1の範囲であるのが適切である。一般に、プロピレン選択性はプロパンの変換率が上昇するにつれ減少する。したがって、プロパンからプロピレンへの反応を、プロパンに関する比較的低い変換率がプロピレンについての高い選択性で達成されるように実施することが選択される。さらに好ましくは、プロパンの変換率は、5〜40モル%の範囲、しばしば10〜30モル%の範囲である。これに関連して、「プロパン変換率」という用語は、反応ガスの管を通る単回パスで変換される、供給されるプロパンの割合を意味する。一般的に、プロピレン形成の選択性は50〜98または50〜99モル%、さらに好ましくは80〜98または80〜99モル%であり、「選択性」という用語は、変換されるプロパン1モルにつき得られるプロピレンのモル数(モルパーセンテージで表す)をいう。反応管中で、反応温度は一般的に最大値を通過する。
【0144】
一般に、不均一触媒プロパンオキシ脱水素化において用いられる出発ガス流れは、5〜95モル%のプロパン(100モル%の出発ガス基準)を含む。プロパン(または別のオキシ脱水素化される炭化水素)および酸素に加えて、不均一触媒オキシ脱水素化の出発ガスはさらに、特に不活性の構成成分、例えば二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、希ガス、他の炭化水素、例えば、粗プロパン(例えば独国特許出願公開第102 45 585号または同第10 2005 022 798号で推奨されるように、本発明の方法で使用されるプロパン源は通常、粗プロパンである)中に存在する第2の構成成分、および/またはプロピレンも含み得る。不均一触媒オキシ脱水素化は希釈剤、例えば蒸気の存在下で実施することもできる。
【0145】
当業者に既知の所望の反応器シーケンスを用いて、例えばプロパンの不均一触媒オキシ脱水素化を行うことができる。例えば、不均一触媒オキシ脱水素化は単一反応器中、または所望によりその間に酸素が供給される2以上の反応器のバッテリー中で実施できる。
【0146】
可能な構成成分として、記載されているようにして実施される不均一触媒プロパンオキシ脱水素化の生成物ガスは、例えば次の構成成分を含み得る:プロピレン(目的生成物として、言い換えると、脱水素化炭化水素として)、プロパン(未変換の脱水素化される炭化水素として)、二酸化炭素、一酸化炭素、水、窒素、酸素、エタン、エテン、メタン、アクロレイン、アクリル酸、メタクロレイン、メタクリル酸、フルフラール、エチレンオキシド、ブタン(例えば、n−ブタンまたはイソブタン)、酢酸、ホルムアルデヒド、ギ酸、プロピレンオキシドおよびブテン(例えば、ブテン−1)。これに関連して、特にエタン、エテンおよびメタンがプロパンの可能な熱分解生成物である。典型的には、本発明の不均一触媒プロパンオキシ脱水素化で得られる生成物ガスは:5〜10モル%のプロピレン、0.1〜2モル%の一酸化炭素、1〜3モル%の二酸化炭素、4〜10モル%の水、0〜10または0〜1モル%の窒素、0.01(または0)〜0.5モル%のアクロレイン、0.01(または0)〜1モル%のアクリル酸、0.05(または0)〜2モル%の酢酸、0.01(または0)〜0.05モル%のホルムアルデヒド、1〜5モル%の酸素、0.1〜10モル%のさらなる前記構成成分、および残余として、基本的にプロパンを、それぞれの場合に100%生成物ガス基準で含む。
【0147】
プロパン以外の脱水素化される炭化水素の不均一触媒オキシ脱水素化は、本発明にしたがってプロパンのオキシ脱水素化について前述のものに対応する方法で実施できる。オキシ脱水素化される可能なかかる炭化水素としては、特に、ブタン(ブテンに(特にイソブタンをイソブテンに)および/またはブタジエンに)ならびにブテン(ブタジエンに)が挙げられる。
【0148】
しばしば、脱水素化される炭化水素の酸化的または非酸化的不均一触媒脱水素化に続いて、ここで生じた脱水素化された炭化水素の不均一触媒部分酸化の方法(例えば、プロピレンをアクロレインおよび/またはアクリル酸へ)を行い、好ましくはかかる部分酸化に関して不活性ガスとして脱水素化において変換されなかった脱水素化される炭化水素(例えば、プロパン)が生じる。
【0149】
この場合、脱水素化から(連続的に)抜き取られる生成物ガス流れAを、そのまま、または脱水素化された炭化水素(例えばプロピレン)以外および(未変換の)脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)以外の構成成分(例えば、H2、H2O、N2など)の少なくとも一部を除去した後に使用して、少なくとも1つの酸化反応器に充填し、チャージガス混合物中に存在する脱水素化された炭化水素(例えばプロピレン)を、分子酸素を用いた選択的不均一触媒部分気相酸化に付して、(部分酸化生成物)目的生成物(例えば、アクロレイン、またはアクリル酸またはこれらの混合物)、およびさらには一般に未変換の脱水素化される炭化水素(例えば、プロパン)および過剰の分子酸素を含み、未変換の脱水素化された炭化水素(例えばプロピレン)を含むかまたは含まない生成物ガス混合物Bを得る。
【0150】
下流の分離領域Bで、生成物ガス混合物B中に存在する目的生成物(例えば、アクロレイン、またはアクリル酸、またはこれらの混合物)を除去し、未変換の脱水素化される炭化水素(例えばプロパン)および分子酸素を含み、未変換の脱水素化炭化水素(例えばプロピレン)を含むか、または含まない残存ガスからの、未変換の脱水素化された炭化水素(例えばプロパン)、および適切な場合、未変換の分子酸素および、適切な場合、未変換の脱水素化された炭化水素(例えばプロピレン)を含む少なくとも一部を、部分酸化サイクルガスとして(例えば、出発ガス流れの構成成分として)脱水素化へリサイクルする。
【0151】
脱水素化が、例えばプロパンのプロピレンへの酸化的従来型不均一触媒部分脱水素化であり、その後の部分酸化がプロピレンのアクロレインへ、またはアクリル酸へ、またはこれらの混合物への酸化である場合、酸化的脱水素化へ供給される出発ガスは、例えば、基本的含有量として以下のものを含み得る:
プロピレン ≧0〜20または0〜10、しばしば0〜6体積%、
アクロレイン ≧0〜1、多くの場合0〜0.5、しばしば0〜0.25体積%、
アクリル酸 ≧0〜0.25(または0〜0.4)、多くの場合0〜0.05、しばしば0〜0.03体積%、
COx ≧0〜20または0〜5、多くの場合0〜3、しばしば0〜2体積%、
プロパン 5〜50、好ましくは20〜40体積%、
窒素 20または30〜80、好ましくは50〜70体積%、
酸素≧0〜5、好ましくは1.0〜2.0体積%、
2O ≧0〜20、好ましくは5.0〜10.0体積%、および
2 ≧0、しばしば≧0.01、しばしば≧0.05〜10、好ましくは1〜5体積%。
【0152】
酢酸も少量(例えば、可能なアクリル酸含有量に匹敵する量)で存在し得る。
【0153】
脱水素化された炭化水素の部分酸化から生じる、脱水素化に供給される出発ガス流れ中の構成成分は、同様に脱水素化で使用される触媒(触媒床)の非活性化に寄与できる。しかし、本発明の再生方法はこれらの場合でも有効であることが判明している。
【0154】
例えば、このような多段方法の説明は、文献独国特許出願公開第10 2006 029 790号、同第10 2006 035 718号、同第10 2005 022 798号、同第10 2006 024 901.1号、同第102 46 119号、同第A102 45 585号、同第10 2005 049 699、同第10 2004 032 129号、同第10 2005 013 039号、同第10 2005 010 111号、同第10 2005 009 891号、同第102 11 275号、欧州特許出願公開第117 146号、米国特許第3,161,670号、独国特許出願公開第33 13 573号、国際特許出願公開第01/96270号、独国特許出願公開第103 16 039号、同第102 19 686号、同第10 2005 009 885号、同第10 2005 052 923号、同第10 2005 057 197号、国際特許出願公開第03/076370号、独国特許出願公開第102 45 585号、同第22 13 573号、米国特許第US3,161,670号およびこれらの文献で言及される従来技術において見いだすことができる。
【0155】
本発明の再生方法の利点は、非活性化の寄与原因であり、非活性化の過程で(固定)触媒床の上またはその中に堆積する、異なる炭素リッチな種を効率よく徐々に(逐次、連続して)燃焼させることができるという事実に基づくと考えられる。本発明の方法は、本発明にしたがって再生される触媒床の非活性化挙動が、新たに添加された触媒床の非活性化挙動と本質的に異ならないという点で、特に注目に値する。2つの再生間で30〜100hの作用時間が典型的である。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】図1は、T1ならびにMI(=図1におけるM1)およびMII(図1におけるM2)の両方を作用時間の増加に伴い徐々に上昇させたことを示すグラフである。
【図2】図2は、作用時間での上昇した変換率A、B、C(縦座標としてHCのモル%)の時間に対する結果として得られた特性(横座標はt(h)を示す)を示すグラフである。
【図3】図3は、流れ方向における第1部分固定触媒床の入口(部分床中の最高温度、参照番号1)、中間(参照番号2)および出口(参照番号3)のすぐ上の反応ガス混合物流れの温度の時間に対する結果として得られた特性を示すグラフである。
【図4】図4は、管状反応器から流出する再生ガス中のCO2(1)およびCO(2)の含有量(体積%)特性を縦座標として、再生時間(分)の関数を横座標として示すグラフである。
【0157】
操作実施例および比較例
I.操作実施例
a)脱水素化反応器の説明
使用される脱水素化反応器は、長さ2070mm、壁圧1mmおよび内径36.4mmのスチール管(DIN材料番号1.4841のステンレス鋼)であった。管状反応器に反応ガス混合物流れを上部から下方へ流した。同じステンレス鋼で作られた高さ115mmの触媒ベースが管状反応器の下端中に突き出し、固定触媒床全体(ほぼ同じ嵩密度の3部分の固定触媒床からなる)を次のような上方から下方への構造で支持していた:
790mmの床長さの、CeramTecから得られるC−220ステアタイトの(不活性)ステアタイト球(直径4〜5mm)(内部加熱床);
195mmの床長さの、元素化学量論(支持体を含む質量比)Pt0.3Sn0.6La3.0Cs0.50.2(ZrO288.3(SiO27.1(独国特許出願公開第102 19 879号の実施例4におけるような触媒前駆体製造および活性触媒への活性化)の脱水素化触媒(酸化形態の元素Cs、KおよびLaで促進され、ZrO2・SiO2混合酸化物支持押出物の外部および内部表面に適用されたPt/Sn合金(平均長さ(3mm〜12mmの範囲のガウス分布で、約6mmで最大値):6mm、直径:2mm));
145mmの床長さの、CeramTecから得られるC−220ステアタイトのステアタイト球(直径4〜5mm);
190mmの床長さの前記脱水素化触媒;
145mmの床長さの、CeramTecから得られるC−220ステアタイトのステアタイト球(直径4〜5mm);
195mmの床長さの前記脱水素化触媒;
20mmの床長さの、CeramTecから得られるC−220ステアタイトのステアタイト球(直径1.5〜2.5mm);および
210mmの床長さの、CeramTecから得られるC−220ステアタイトのステアタイト球(直径4〜5mm)。
【0158】
内部加熱床の上で、スチール管は空であった。
【0159】
管状反応器を予熱領域のために、加熱床の最上部の400mの長さにわたって上から下方へ(触媒ベースに向かって)、銅で作られた2つのハーフシェル(シェルの厚さ=25mm)中に外部から挿入した。このハーフシェルは供給された熱量の等しい分布を保証し、これらを完全に取り巻く熱バンドにより電気的に加熱される。熱電気絶縁材料の巻き線が加熱バンドの周りに存在していた。
【0160】
(触媒ベース表面のすぐ下から始まって)底部から上方へ、管状反応器を、独国のMicrothermから得られるMPS−Super Gで作られた2対の熱的絶縁ハーフシェル(1つのハーフシェルの厚さ=25mm)中に1530mmの長さにわたって挿入し、このシェルは互いに対して90°ずらして取り付けた。絶縁ハーフシェルは、同様にステンレス鋼の円筒形シェル(外径=168mm、内径=154mm)により取り囲まれ、その周りには放射オーブン(長さ=1600mm)がトレース加熱の目的で配置されていた。このようにして、環境から反応管中へ、および反応管から環境中への熱束が断熱領域に沿って最小限に抑えられた。
【0161】
加えて、長さ2500mmのサーモウェル(外径=6mm;内径=4mm)を反応管の真中(中心)に導入し、その中に複数の熱電素子(合計14の測定点、反応器下端から上方へ8cmごと、厚さ3.2mm)を挿入した。
【0162】
加えて、2つのランス対を管状反応器中に導入した。1つの対を管状反応器中に底部から導入し、他の対は上部から導入した。1つの対のランスはそれぞれサーモウェルと内部反応器壁の間で、サーモウェルと内部反応器壁の中間で管横断面全体にわたって位置するような方法でそれぞれ隣接していた。管状横断面中に突出して、2つの対は互いに管直径上で反対向きであった。DIN材料番号1.4841のステンレス鋼で製造されたランスの外径は3.17mmであり、その内径は2.17mmであった。1対のランスの長さは異なっていた。それぞれの場合でランス対の2つのランスの一方に空気を計量して通し、ランス対のそれぞれの場合に他のランスを通して分析のために反応ガス混合物を抜き取った。流れ方向での第1分析ランス(LI)の開口部を流れ方向において第1部分固定触媒床を20mm越えて配置した。付随する計量ランス(ZI)の開口部を流れ方向において第2の部分固定触媒床の上流100mmに配置した。流れ方向における第2分析ランス(LII)の開口部を流れ方向において第2の部分固定触媒床を20mm越えて配置した。付随する計量ランス(ZII)の開口部を流れ方向において第3の部分固定触媒床の上流100mmに配置した。
【0163】
管状反応器の上流で、ステアタイト球(CeramTecから得られるC−220ステアタイト、直径4〜5mm)で充填された長さ1300mmのスチール管をヒーターとして挿入した。反応ガス混合物流れをその中で、管状反応器中への入口温度に予熱し、同時に理想的に混合した。このために、ヒーター管(DIN材料番号1.4841のステンレス鋼、壁厚3.6mm、内径53.1mm)を電気的に1200mmの中点の長さで、独国ハイデルベルグのHorstから得られる、その周りに適用された加熱カラーにより加熱した。ヒーターと管状反応器との間の接続は、慣用の断熱材料により熱的に絶縁された、加熱されたステンレス鋼(DIN材料番号1.4841の)ステンレス鋼、外径14mm、内径10mm、長さ300mm)を用いて達成された。
【0164】
b)プロパンの不均一触媒部分脱水素化の長期操作の開始時(作用時間t0
触媒床全体に新しい脱水素化触媒を充填した。固定触媒床全体に供給された反応ガス混合物流れは、粗プロパン、蒸気およびアクリル酸への脱水素化において得られるプロピレンの不均一触媒2段部分酸化の部分酸化サイクルガスの混合物であった。プロパンおよびプロピレン以外の構成成分を独国特許出願番号10 2005 013 039の比較例1に記載されているように脱水素化の生成物ガス混合物から吸収/脱着手段(空気を用いたストリッピング)により除去した。プロピレンのアクリル酸への部分酸化は同様に独国特許出願番号10 2005 013 039に記載されているようにして実施した。同じことが部分酸化サイクルガスの形成にも適用される。
【0165】
独国特許出願番号10 2005 013 039に記載されているように、反応ガス混合物流れを約200℃の出口温度を有するエバポレーター中で得、ここから始まってヒーターへと供給した(エバポレーターのヒーターに対するアタッチメントはヒーターの管状反応器に対するアタッチメントと同様の構造であった)。
【0166】
ヒーターの加熱を、エバポレーターからヒーター中へ通過する反応ガス混合物流れが約400℃の温度で流出するように制御した。反応ガス混合物流れを次いで管状反応器中に導入し、その予熱領域中でさらに加熱し、最終的に管状反応器を通して導いた。各場合で、約30Nl/hの特定のランス中に流入する際に25℃の温度である空気を計量ランスZIおよびZIIにより計量した。t0=1hの作用時間後、方法操作は基本的に初めてその(疑似)定常操作状態に到達した。
【0167】
2807Nl/hの管状反応器に供給される反応ガス混合物流れの含有量(本明細書における全てのガス組成データは常にガスクロマトグラフィー分析に基づく)ならびに流れ方向で第1、第2および第3の部分固定触媒床を流出する際の反応ガス混合物流れの含有量を第1表に記載した。
【0168】
【表1】

【0169】
【表2】

【0170】
触媒床全体を通過する反応ガス混合物流れとして、合計G=(A+B+C)モル%の出発モル量HCの、その中に存在する脱水素化される炭化水素を脱水素化して、脱水素化された炭化水素にした。Aは流れ方向における第1部分固定触媒床の寄与であり、Bは流れ方向における第2部分固定触媒床の寄与であり、Cは流れ方向における第3部分固定触媒床の寄与である。
【0171】
作用時間t0で、G、A、BおよびCの数値は次のとおりであった:
A=12モル%、
B=5.4モル%、
C=1.8モル%、および
G=19.2モル%
(それぞれの場合HCに基づく)。
【0172】
作用時間t0での管状反応器中の内部加熱床のすぐ上の流れ方向における反応ガス混合物流れの温度T1は408℃であった。作用時間t0でZIおよびZIIを介して計り入れられた空気流れMIおよびMIIはそれぞれの場合で約33Nl/hであった。
【0173】
c)プロパンの不均一触媒部分脱水素化の長時間操作の実施
作用時間の増加を伴う全固定触媒床の非活性化に対抗するために、T1ならびにMI(=図1におけるM1)およびMII(図1におけるM2)の両方を図1示すように(データポイントの上昇による)作用時間の増加に伴い徐々に上昇させた(左側の縦座標=T1(℃);右側の縦座標=空気流速(Nl/h);ゼロ点はt0に置いた;横座標はt(h)を示す)。このようにして、作用時間間隔0h=t0≦t≦50hにわたってG=19.2±0.2モル%の範囲内でGの値を安定に保つことが可能であった。作用時間での上昇した変換率A、B、C(縦座標としてHCのモル%)の時間に対する結果として得られた特性(横座標はt(h)を示す)を図2に示す。
【0174】
流れ方向における第1部分固定触媒床の入口(部分床中の最高温度、参照番号1)、中間(参照番号2)および出口(参照番号3)のすぐ上の反応ガス混合物流れの温度の時間に対する結果として得られた特性を図3に(上昇した測定値により)示す(横座標はここでもt(h)を示し、ゼロ点をt0に置き、縦座標はT(℃)を示す)。流れ方向における第2の部分固定触媒床の入口(部分床における最高温度、参照番号4)、中間(参照番号5)および出口(参照番号6)のすぐ上の反応ガス混合物流れの時間に対する温度特性ならびに流れ方向における第3の部分固定触媒床の温度特性(参照番号7=その内部への入口の直ぐ上の第3部分固定触媒床における最高温度、参照番号8=第3部分固定触媒床の出口の直ぐ上)も同様に示す。
【0175】
d)本発明の再生の実施
作用時間t=t0+50h後に、空気流れMIおよびMIIを中断し、管状反応器に供給される反応ガス混合物流れを窒素流れと置換して、触媒床をフラッシュした。窒素流れの純度は≧99.9体積%であった。
【0176】
窒素流速は3930Nl/hであった。ヒーターおよび予熱領域を用いた加熱を、管状反応器中の内部加熱床のすぐ上の流れ方向における窒素流れの温度が450℃になるように制御した。管状反応器の出口での窒素流れの出口圧力は、大気圧よりも2bar高かった。圧力保持制御弁を用いて出口圧力を制御した。
【0177】
前記条件を10hの期間にわたって保持した。その後、窒素流れを3930Nl/hの窒素流れおよび172Nl/hの空気の混合物4102Nl/hにより置換した。再生ガス流れの温度を同様に、内部加熱床のすぐ上の流れ方向において450℃に調節した。管状反応器の出口での再生ガス流れの出口圧力は大気圧よりも3.5bar高かった。
【0178】
前記条件を24分の期間にわたって保持した。次いで他の再生条件を保持しながら、再生ガス流れの組成物および規模を期間t中それぞれの場合において以下に記載する順序で変更した:
【表3】

【0179】
次に、内部加熱床のすぐ上の流れ方向での再生ガス流れの温度を550℃に調節し、この温度を維持しながら、再生ガス流れの組成物および規模ならびに出口圧力P(大気圧を上回る圧力bar)を期間t中それぞれの場合に下記に記載した順序で変更した:
【表4】

【0180】
【表5】

【0181】
最後の5分間で、内部加熱床のすぐ上の流れ方向における再生ガス流れの温度を450℃に調節した。
【0182】
次に、還元ガスとして、10.8g/hのH2O、430Nl/hの窒素および430Nl/hの水素(純度≧99.9体積%)の混合物をエバポレーター中で得た。還元ガス流れの温度を内部加熱床のすぐ上の流れ方向で450℃に調節した。還元ガスを、管状反応器を通して、大気圧よりも2bar高い出口圧力で45分の期間にわたって通した。
【0183】
最後の5分間で、内部加熱床のすぐ上の流れ方向における還元ガス流れの温度を410℃に調節した。
【0184】
脱水素化をその後同じ方法で再開した。約1時間の作用時間の後、(疑似)定常操作状態が再確立された。もとの操作条件下で、Gの元の値が再度得られた。再生された触媒床の非活性化挙動は、新たに添加された触媒床の挙動に匹敵していた。全再生方法の間、管状反応器中の温度は全体を通して≦590℃であった。管状反応器から流出する再生ガス中のCO2(1)およびCO(2)の含有量(体積%)特性を縦座標として、再生時間(分)の関数を横座標として図4に示す(t=10分=再生ガスの供給開始)。管状反応器から流出する再生ガス中の炭素酸化物の合計含有量は再生時間全体にわたって2体積%未満であった。
【0185】
II.比較例
使用される再生ガス流れが常に5体積%の分子酸素および95体積%の分子窒素の一定混合物である以外は、実施例においてと同じ手順であった。残りの境界条件(例えば、再生ガス流れの規模、出口圧力、内部加熱床の直ぐ上の再生流れの温度)は等しく保持された。再生の最初の期間で、管状反応器から出る再生ガス中の炭素酸化物の合計含有量は5体積%より高かった。脱水素化が再開された後、Gの元の値は定常作用状態におけるもとの作用条件下でGの元の値には到達しなかった。その代わりに、16.3モル%のG’(作用時間t0)のみが得られた。再生された触媒床は新たに添加された触媒床の場合よりも急速に非活性化した。
【0186】
III.比較例
5体積%の分子酸素および95体積%の分子窒素のガス混合物を再生方法の最初の60分以内で使用する以外は、実施例においてと同じ手順であった(その後の再生期間では、再生ガス組成物はそれぞれの場合で実施例から得られるものに対応していた)。残りの境界条件(例えば、再生ガス流れの規模、出口圧力、内部加熱床のすぐ上の再生ガス流れの温度)は等しく保持された。再生の最初の期間で、管状反応器から出る再生ガス中の炭素酸化物の合計含有量は5体積%より高かった。
【0187】
脱水素化が再開された後、依然として一定の作用状態におけるもとの作用条件下でGのもとの値には到達しなかった。その代わりに、16.7モル%のG(作用時間t0)が得られた。再生された触媒床は、新たに添加された触媒床の場合よりも急速に非活性化した。
【0188】
2007年2月6日に出願された米国仮特許出願番号60/888366は参考として本出願で援用される。前記教唆に関して、本発明から多くの変更および逸脱が可能である。したがって、本発明は、添付の請求項の範囲内で、本明細書に具体的に記載されたものと異なって実行することが可能であると推測できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水素化される炭化水素を不均一触媒部分脱水素化して脱水素化された炭化水素にする過程において非活性化された触媒床を再生する方法であって、期間tにわたって、分子酸素および不活性ガスを含むが、炭化水素を含まない再生ガスを高温で非活性化触媒床に通すことを含むが、ただし、触媒床を通過する再生ガス中の炭素酸化物の合計含有量GAが、触媒床から流出する際に期間tにわたる再生の過程で、触媒床に流入する際の触媒床を通過する同じ再生ガスの対応する含有量GE(それぞれの場合、再生ガス体積の体積%で表す)よりも少なくとも一時的に高く、かつ差ΔG=GA−GEが、再生方法の最後までに最大値ΔGmaxを通過する、再生方法において、
a)0.2体積%≦ΔGmax≦5体積%であり、かつ
b)触媒床を通過する再生ガス中の分子酸素含有量(再生ガス体積の体積%で表す)が、期間t以内に再生方法の最後までに少なくとも3回増加し、各増加が少なくとも2体積%であることを特徴とする再生方法。
【請求項2】
0.2体積%≦ΔGmax≦4体積%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
0.2体積%≦ΔGmax≦3体積%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
触媒床を通過する再生ガスの酸素含有量が期間t以内に合計で少なくとも10体積%増加することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
触媒床を通過する再生ガスの酸素含有量が期間t以内に合計で少なくとも14体積%増加することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
触媒床を通過する再生ガス中の分子酸素の含有量が開始時に≦5体積%であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
触媒床を通過する再生ガス中の分子酸素の含有量が開始時に≦3体積%であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
触媒床において期間t内で起こる最高温度Tが、触媒床の非活性化を引き起こす不均一触媒部分脱水素化の過程で触媒床において起こる最高温度Tmaxに基づいて、次の条件:
0.5・Tmax≦T≦1.5・Tmax
を満たすことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
触媒床の再生ガスでのローディングBが
1000Nl/l・h≦B≦40000Nl/l・h
であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
触媒床の再生ガスでのローディングBが
3000Nl/l・h≦B≦20000Nl/l・h
であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒床の再生ガスでのローディングBが期間t内に最大値を通過することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記再生ガスが不活性ガスとしてN2および/またはH2Oを含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
触媒床から流出する再生ガスの少なくとも部分量を循環させ、触媒床に新たに導かれる再生ガスの構成成分として再使用することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
触媒床に新たに導かれる再生ガス中のCOの含有量が≦3体積%であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
大気圧より1〜10bar高い作動圧力で行うことを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
触媒床中に流入する際の再生ガスの温度とTE、触媒床から流出する際の同じ再生ガスの温度TAとの差TA−TEが≦250℃であることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒床が固定触媒床であることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
固定触媒床の床体積が≧50lかつ≦10000m3であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒床が酸化物支持体上に堆積した少なくとも1つの金属からなる触媒を含むことを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの金属が、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtからなる群から選択される金属であることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
触媒床が断熱反応器中に配置されることを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
プロピレンの不均一触媒部分気相酸化によりアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する方法であって、第1反応段階として、触媒床上でプロパンをプロピレンへ不均一触媒部分脱水素化することを含む、製造方法において、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法により時折触媒床を再生することを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−517752(P2010−517752A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548670(P2009−548670)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051303
【国際公開番号】WO2008/095877
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】