説明

炭化炉リサイクルシステム

【課題】有機廃棄物を炭化して炭化物を得るとともに、炭化の際に排出される可燃性ガスを有効利用することにより、マテリアルリサイクルとエネルギーリサイクルとの両方が可能な炭化炉リサイクルシステムを提供する。
【解決手段】本発明の炭化炉リサイクルシステム1は、原料である有機廃棄物を炭化炉2へ供給する原料供給手段3と、前記有機廃棄物を炭化処理して炭化物を得る炭化炉2と、前記炭化炉2と一体に、または独立に構成され、前記炭化処理の際に発生する熱分解ガスを燃焼させる燃焼炉12と、前記燃焼炉12から発生した熱により駆動する外燃機関32と、前記外燃機関32により発電する発電機33と、を少なくとも備え、前記発電機33から発電された電力が、原料供給手段3またはその他の電力消費装置へ供給されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木綿、麻、ウール、化学繊維等からなる衣服廃材や廃棄された弁当等の食品残渣、木片や木皮等の木質系廃棄物、有機物の汚泥、プラスチック系廃棄物等の有機廃棄物を炭化して炭化物を得るとともに、炭化処理の際に排出される可燃性ガスを有効利用することにより、マテリアルリサイクルとエネルギーリサイクルとの両方が可能な炭化炉リサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や処分場から排出される衣服廃棄物や廃棄された弁当等の食品残渣等の有機廃棄物は、焼却炉で燃焼されてその廃熱により発電等を行うエネルギーリサイクルが行われていたが、焼却灰は最終処分場に廃棄されていた。一方、建築廃材や間伐材をはじめとする木質系の産業廃棄物は、炭化炉での炭化処理により炭としてマテリアルリサイクルが可能であると同時に、炭化処理中に発生する熱分解ガスを可燃ガスとして利用できるためエネルギーリサイクルも可能である。例えば、特開2003−253278号公報(特許文献1)には、炭化処理の際に発生する木炭ガスを利用して発電する木炭製造装置が提案されている。
【0003】
ところで、弁当等の食品残渣を廃棄する際に、エネルギーリサイクルだけでなく、炭へのマテリアルリサイクルを行うためには、炭化処理の際に外部からエネルギーを補充する必要がある。すなわち、被炭化物である食品残渣は多量の水分を含むため、炭化処理に際して、水分を除去あるいは低減する必要があるため、炭化処理に伴う追加のエネルギーを必要とする。
【0004】
上記の問題に対し、特開2003−145116号公報(特許文献2)には、高含水廃棄物を炭化処理する際に、炭化炉から排出されるガスをガスタービンの燃料として用い、ガスタービンから発生する高温の燃焼ガスを高含水廃棄物の乾燥に利用した処理装置が提案されている。
【0005】
また、本発明者らは特開2005−120300号公報(特許文献3)において、炭化処理の際の熱効率を高めるとともに、炭化処理によって発生するタール分や排ガスの効率的処理を行うことができる炭化炉を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−253278号公報
【特許文献2】特開2003−145116号公報
【特許文献3】特開2005−120300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、今般、木綿、麻、ウール、化学繊維等からなる衣服廃材や廃棄された弁当等の食品残渣、木片や木皮等の等の木質系廃棄物、有機物の汚泥、プラスチック系廃棄物等の有機廃棄物を炭化処理して活性炭等の炭材料としてリサイクルするとともに、その炭化処理工程において発生する排ガスからの熱を電気エネルギーとしてリサイクルすることにより、マテリアルリサイクルとエネルギーリサイクルとの両方が可能であるとともに、炭化処理に要する全体的なエネルギーコストも低減できる、との知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、有機廃棄物を炭化処理する際に炭化炉から発生する熱分解ガスを可燃性ガスとして利用して外燃機関による発電を行い、得られた電力を炭化炉の運転等に利用することにより、マテリアルリサイクルとエネルギーリサイクルとの両方が可能であるとともに、炭化処理に要する全体的なエネルギーコストも低減できる炭化炉リサイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明による炭化炉リサイクルシステムは、原料である有機廃棄物を炭化炉へ供給する原料供給手段と、前記有機廃棄物を炭化処理して炭化物を得る炭化炉と、前記炭化炉と一体に、または独立に構成され、前記炭化処理の際に発生する熱分解ガスを燃焼させる燃焼炉と、前記燃焼炉から発生した熱により駆動する外燃機関と、前記外燃機関により発電する発電機と、を少なくとも備え、前記発電機から発電された電力が、原料供給手段またはその他の電力消費装置へ供給されることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の態様においては、前記原料供給手段が、前記発電機から発電された電力により駆動することが好ましい。
【0011】
また、本発明の態様においては、前記炭化炉は、炭化炉で生成した炭化物を外部へ取り出す炭化物取出手段を備え、前記炭化物取出手段が前記発電機から発電された電力により駆動することが好ましい。
【0012】
また、本発明の態様においては、前記外燃機関がスターリングエンジンであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の態様においては、前記炭化炉は、原料の部分燃焼による自己熱を使用した自燃式炭化炉であることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の態様においては、前記有機廃棄物が、衣服廃材、木質系およびプラスチック系有機廃棄物、有機物の汚泥、ならびに食品残渣であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明による炭化炉リサイクルシステムは、今般、木綿、麻、ウール、化学繊維等からなる衣服廃材や廃棄された弁当等の食品残渣、木片や木皮等の等の木質系廃棄物、有機物の汚泥、プラスチック系廃棄物等の有機廃棄物等を炭化処理により炭として再生するとともに、炭化処理の際に炭化炉から発生する熱分解ガスを可燃性ガスとして利用して外燃機関による発電を行い、得られた電力を炭化炉等の運転に利用することにより、マテリアルリサイクルとエネルギーリサイクルとの両方が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による炭化炉リサイクルシステムの全体を示す概念図である
【図2】炭化炉リサイクルシステムに用いられる炭化炉を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら、より詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明による炭化炉リサイクルシステム1の全体を示す概念図である。炭化炉2には、押出シリンダー4を備えた原料投入手段3が連結しており、押出シリンダー4が炭化炉方向へ移動して原料を搬送できるようになっている。木綿、麻、ウール、化学繊維等からなる使用済みの衣服廃材、廃棄された弁当等の食品残渣、古紙、木片、木皮、竹、ヤシガラ等の木質系廃棄物、有機物の汚泥、プラスチック系廃棄物等の有機廃棄物は、炭の原料として、原料投入口5へ投入されて、押出シリンダー4の移動により、炭化炉2内へ投入される。原料である有機廃棄物を炭化炉に投入する際に、含水率が高い原料(例えば弁当等の食品残渣)と含水量が少なくかつ吸水量が大きい衣服等とを混合することにより、原料全体の含水量が均一化される。そのため、高含水量の原料であってもそのまま炭化炉に投入することができ、予備乾燥等の手間を省くことができる。
【0019】
炭化炉2に供給された有機廃棄物は、着火バーナー等の着火手段6により着火されて炭化処理が開示する。燃焼により発生する熱によっても炭化処理は進行するが、より炭化処理を促進するために、後述する熱分解ガス燃焼炉12の排ガスの一部を補助加熱配管25を介して炭化炉2に導入し、その熱を有機廃棄物の乾燥や加熱に用いることもできる。
【0020】
炭化処理により生じた炭化物(活性炭)は、炭化炉2の下部に設けた排出口7を通じて、排出口7の下部に連結した取出手段8により排出され、貯蔵庫9に搬送される。取出手段8としては、スクリューフィーダー等を好適に用いることができる。
【0021】
炭化炉2上部には、原料の炭化処理により生じた熱分解ガスを排出する排出口11が設けられており、排出口11と熱分解ガス燃焼炉12とが排気配管13を介して接続されている。この排気配管13の途中には、熱分解ガスを燃焼炉に送り込むためのブロワー(図示せず)を設けて、炭化炉2から排気された熱分解ガスをスムーズに燃焼炉12に送り込むようにしてもよい。
【0022】
本発明による炭化炉リサイクルシステムに用いられる炭化炉の具体的な実施形態について、図2を参照しながら説明する。図2は、炭化炉2の一例を示した断面図である。炭化炉2は、機台21上に設置された略円筒形の本体22からなり、その本体22の内壁23は下方に広がる円錐壁とされた縦型炭化炉である。炭化炉2の上方側部には原料である有機廃棄物の投入口3が設けられ、頂部には熱分解ガスを排気するための排気口11が設けられており、下部には炭化物取出口7を介して炭化物取出手段8が設けられている。また、炭化炉本体22の側面の周囲には、有機廃棄物に着火するための着火バーナー24や補助加熱配管25やその下部に空気供給口26が設けられている。
【0023】
炭化炉本体22の底内部には、回転可能に設置された円盤形状の皿27が設けられている。供給された有機廃棄物はこの皿の上で炭化されるが、炭化炉本体22の内壁が下方に広がる円錐壁23となっているため、炭化処理された原料はブリッジを生じることがない。円盤状の皿27には、その上面垂直方向に仕切板28が設けられている。この仕切板28により、円盤状の皿27が回転すると、皿27上に固着した炭化物が破砕されるため、炭化物を排出口7からスムーズに取り出すことができる。
【0024】
着火バーナー24は、投入された原料に着火できればどの位置でもかまわないが、原料投入口3よりやや下方に設けられていることが好ましい。また、円錐壁23の円周上の複数箇所に設けることで燃焼を均一化できる。着火バーナーと併用して、熱分解ガス燃焼炉12から排気される排ガスを用いてもよい。排ガスの熱を有機廃棄物の乾燥や着火に再利用した自燃式炭化炉を用いることにより、システム全体の投入エネルギーコストを低減することができる。
【0025】
空気供給口26は、本体22の側面に設けられた原料投入口3よりも下方に位置するように設けられることが好ましい。また、空気供給口26は、本体22側面の周囲に沿って、複数設けられることが好ましい。
【0026】
原料である有機廃棄物は還元状態で燃料し、炭化物を含む固形分と熱分解ガスとが生成する。この固形分は、炭化炉の下部へ移動するが、円盤状皿付近では空気が供給されないため不燃部となり、燃焼途中の炭化物は消火される。
【0027】
このようにして炭化炉2で生成した炭化物は、排出口7を介して取出手段8へ導かれ、貯蔵庫9に搬送され、炭(活性炭)として再利用される。また、炭化処理の際に発生した熱分解ガスは、熱分解ガス燃焼炉12へと送られる。
【0028】
熱分解ガス燃焼炉12には、熱分解ガスの燃焼を補助するための燃焼バーナー14が設けられている。この燃焼バーナーにより熱分解ガスは高温に加熱されて燃焼する。燃焼炉12内の温度は1000℃〜1200℃程度となる。このような高温燃焼により、熱分解ガス中に含まれるタール成分まで焼成するため、排気配管13内の詰まりや燃焼炉12内の汚染を抑制でき、また、クリーンな排ガスとすることができる。
【0029】
燃焼バーナー14には、重油と水とを混合噴射してエマルジョン燃焼できるような混合インジェクションバルブを用いることが好ましい。エマルジョン燃焼させることにより、炉内の温度を高温にすることができるとともに、燃料(重油)の消費量を少なくすることができる。混合インジェクションバルブは燃焼バーナーに取り付けて使用される。燃焼バーナー14へは、燃料である重油曹15から燃焼炉12へ延びる供給管17が接続されており、その供給管17の途中に水槽16からの供給管18が調整バルブ19を介して接続された構造を有する。
【0030】
熱分解ガス燃焼炉12の上部には、燃焼した排ガスを排出するための排ガスダクト30が設けられており、外燃機関32用の加熱炉31と連結している。燃焼炉12から排出さたれガスは排ガスダクト30を通って加熱炉31に導かれる。
【0031】
燃焼バーナー14による燃焼は、燃料の供給量を調節することにより適宜調整されるが、燃焼炉内では1000℃〜1200℃程度で熱分解ガスが燃焼する。排ガスダクトを通じて高温の排ガスが加熱炉31内へ導入される際の温度は概ね800℃程度である。この熱エネルギーが外燃機関32であるスターリングエンジンの加熱器32へと伝達されて、冷却器34により高温の排ガスは200〜150℃程度まで冷却される。
【0032】
排ガスの熱エネルギーにより外燃機関が駆動することにより、外燃機関と連結した発電機33により発電が行われる。熱交換された排ガスは、加熱炉31の上部に設けられた煙突34から排気される。
【0033】
発電機33により発生した電力を炭化炉リサイクルシステムに再利用することにより、炭化処理に要するエネルギーコストを低減することができる。例えば、発生した電力を、原料投入手段3の押出シリンダー4の駆動や炭化炉から炭を排出する際のスクリューフィーダー8等の駆動電源として再利用したり、また、熱分解ガスを燃焼炉に送り込むためのブロワーの駆動やシステムが載置された部屋の照明等(図示せず)に利用することもできる。また、スターリングエンジンの冷却器35には冷却水を循環させる必要があるが、循環ポンプの動力源にも、発生した電力を用いることができる。このようにして、炭化処理を行う際のシステム全体的なエネルギーコストが低減され、マテリアルリサイクルおよびエネルギーリサイクルの両方を実現できる。
【符号の説明】
【0034】
2 炭化炉
3 原料供給手段
12 熱分解ガス燃焼炉
31 加熱器
32 外燃機関
33 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料である有機廃棄物を炭化炉へ供給する原料供給手段と、
前記有機廃棄物を炭化処理して炭化物を得る炭化炉と、
前記炭化炉と一体に、または独立に構成され、前記炭化処理の際に発生する熱分解ガスを燃焼させる燃焼炉と、
前記燃焼炉から発生した熱により駆動する外燃機関と、
前記外燃機関により発電する発電機と、
を少なくとも備え、前記発電機から発電された電力が、原料供給手段またはその他の電力消費装置へ供給されることを特徴とする、炭化炉リサイクルシステム。
【請求項2】
前記原料供給手段が、前記発電機から発電された電力により駆動する、請求項1に記載の炭化炉リサイクルシステム。
【請求項3】
前記炭化炉は、炭化炉で生成した炭化物を外部へ取り出す炭化物取出手段を備え、前記炭化物取出手段が前記発電機から発電された電力により駆動する、請求項1または2に記載の炭化炉リサイクルシステム。
【請求項4】
前記外燃機関がスターリングエンジンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭化炉リサイクルシステム。
【請求項5】
前記炭化炉は、原料の部分燃焼による自己熱を使用した自燃式炭化炉である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭化炉リサイクルシステム。
【請求項6】
前記有機廃棄物が、衣服廃材、木質系およびプラスチック系有機廃棄物、有機物の汚泥ならびに食品残渣である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭化炉リサイクルシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−285467(P2010−285467A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138017(P2009−138017)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(593111060)株式会社金星 (15)
【Fターム(参考)】