説明

炭酸ジメチル製造システム、炭酸ジメチルの製造方法、化合物

【課題】 炭酸ジメチルを工業的に大量生産することができ、しかも低コスト、省エネルギー化を図ることのできる炭酸ジメチル製造システム、炭酸ジメチルの製造方法等を提供することを目的とする。
【解決手段】 炭酸ジメチル製造システム10では、アセタール類と二酸化炭素を原料として、炭酸ジメチルを製造する。炭酸ジメチルを生成する際の副生物をメタノールと反応させて、炭酸ジメチルの原料となるアセタール類を再生することができる。反応器20で生成された炭酸ジメチルと副生物および未反応のアセタール類の混合物に、未反応の状態で残存する二酸化炭素を、CO2分離装置30によって高圧下で除去するようにした。その後、DMC精製塔40で、炭酸ジメチルと副生物を分離するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ジメチル製造システム、炭酸ジメチルの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガソリンの燃焼性を向上させるガソリン添加剤、いわゆるオクタンブースターとしては、MTBE(Methyl Tertiary Butylether)が用いされていたが、その有害性等を理由に、米国では使用を規制する方向にある。
MTBEの代替物質として、DMC(Dimethyl Carbonete:以下、炭酸ジメチル)が注目されている。
【0003】
炭酸ジメチルを製造する方法としては、四アルコキシチタンや、ジアザビシクロアルケン類およびメチル化剤や、錫、ジルコニウム、チタンのアルコキシ化合物等を用い、メタノールと二酸化炭素を反応させるものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、アセタール類、二酸化炭素等を用い、炭酸ジメチルを製造する方法も提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−80096号公報
【非特許文献1】坂倉俊康、「分子触媒による超臨界二酸化炭素および液化プロパンの変換」、化学装置、工業調査会、1999年2月号、p.54、図4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、四アルコキシチタンや、チタンのアルコキシ化合物等、環境性の悪い材料を用いている。炭酸ジメチルを大量生産しようとすると、環境性の悪い物質を大量に排出することになる。このため、この方法は大量生産に適してはいない。
【0007】
これに対し、非特許文献1に記載された技術は、環境性に優れ、しかも用いる原料も安価であるので、炭酸ジメチルの大量生産に適しており、炭酸ジメチルの普及に寄与する可能性がある。
ところが、この技術は、現状、実験レベルに留まっており、非特許文献1でも、炭酸ジメチルを大量生産するための工業化手法については、何ら言及はない。
例えば、この技術では、炭酸ジメチルの生成時に、副生物としてケトン(アセトン)またはアルデヒドが生成される。これらの化合物をアルコールで処理することによって、容易に原料のアセタール類に戻すことができるので、非常に経済的な技術となり得るが、この処理を具体的にどのような構成で行うのか等、工業的に成立するための構成について一切言及がない。また、最終的に炭酸ジメチルだけを取り出すまでには、未反応で残留する物質や副生物等と、炭酸ジメチルとを確実に分離する必要があるが、これらの具体的手段についても何ら開示されていない。
【0008】
また、炭酸ジメチルを工業的に大量生産する場合、コストやエネルギー消費等を抑制することが非常に重要である。これが解決できない限り、工業的に成り立たない。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、炭酸ジメチルを工業的に大量生産することができ、しかも低コスト、省エネルギー化を図ることのできる炭酸ジメチル製造システム、炭酸ジメチルの製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を鑑み、本発明者らは鋭意検討を行った。
その結果、非特許文献1に示された、アセタール類を用いた炭酸ジメチル製造システムにおいて、蒸留塔等の分離装置を用い、炭酸ジメチルとその他の副生物、および未反応物質を分離し、炭酸ジメチルを連続的に合成する手法を考案した。
【0010】
蒸留塔は、混合物から目的の物質を分離する際に用いられるものである。蒸留塔内に導入された混合物の液相成分をボイラ等で加熱する。すると、混合物のうち、沸点の低い物質から蒸発する。これによって、蒸留塔の上部側では、混合物のうち沸点の低い物質の濃度が高くなり、下部側では沸点の高い物質の濃度が高くなるという濃度分布が生じる。蒸留塔の上部から、蒸気を蒸留塔外に排出し、排出された蒸気を凝縮させることで、沸点の低い物質を回収することができる。一方、蒸留塔の下部から、液体の状態で物質を回収することで、混合物のうち、沸点の高い物質を回収することができる。
【0011】
例えば[化1]に示すように、反応器にてアセタール類であるアセトンジメチルアセタールと二酸化炭素を反応させると、炭酸ジメチルと副生物であるアセトン(ジメチルケトン)の混合物が生成される。この混合物を、上記のような蒸留塔に導入すると、アセトンの蒸気と二酸化炭素が蒸留塔上部から排出され、炭酸ジメチルが蒸留塔下部から液体の状態で回収できるのである。このとき、蒸留塔上部から排出されたアセトン蒸気と二酸化炭素は、冷却器でその一部が凝縮され、蒸留塔に戻される。
【0012】
【化1】

【0013】
しかし、上記操作を工業的に成り立つようにするには、蒸留塔から排出されたアセトンを回収し、これにメタノールを加え、[化2]に示すように、炭酸ジメチルの原料となるアセトンジメチルアセタールを再生することが必須の条件となる。これには、蒸留塔からアセトンとともに排出される二酸化炭素を、アセトンと分離する必要がある。
【0014】
【化2】

【0015】
一般に、蒸留塔では、冷却器での冷却源には、経済性の面で、水が用いられるのが通常である。このため、冷却器での冷却温度は45℃近辺となるが、二酸化炭素を大量に含む、アセトンの蒸気を凝縮させることはできない。これは45℃でのアセトンの蒸気圧が高いうえ、非凝縮性の二酸化炭素が大量に混在するからである。
ここで、45℃の冷却温度で二酸化炭素とアセトンを分離するためには、これに適した高い圧力下で上記の分離操作を行う必要がある。反面、あまり高い圧力で蒸留塔を使用するのは、蒸留塔という機器が、一般的に大型の機器であることから、現実的では無い。
【0016】
このような問題を知見した本発明者らは、鋭意検討を重ねることで、本発明を得た。
すなわち、本発明の炭酸ジメチル製造システムは、アセタール類と二酸化炭素とを反応させて炭酸ジメチルを生成する反応器と、反応器で生成された炭酸ジメチル、反応器における副生物、および反応器で未反応のアセタール類および二酸化炭素の混合物から、二酸化炭素を分離して取り出す第一の分離装置と、第一の分離装置にて二酸化炭素が取り出された混合物から炭酸ジメチルを分離して取り出す第二の分離装置と、を備えることを特徴とする。
このように、反応器から排出される混合物から、二酸化炭素をまず分離し、この後に炭酸ジメチルと副生物を分離することで、二酸化炭素を分離することが可能となる。
【0017】
第一の分離装置で取り出された二酸化炭素は、二酸化炭素供給経路によって反応器に供給することができる。これにより、二酸化炭素をリサイクルできる。このとき、二酸化炭素は、圧縮機等で圧縮して、反応に適した圧力まで昇圧する必要がある。
第一の分離装置では、常圧より高い圧力下で、混合物から二酸化炭素を分離して取り出すのが好ましい。これは、上記のように二酸化炭素を圧縮する際、高圧状態から圧縮する方が必要エネルギーが少ないからである。なお、ここで言う高圧状態は、反応器で反応させる際の高圧状態と同じ圧力である必要はなく、二酸化炭素の分離に適した圧力とすればよい。
なお、第二の分離装置では、第一の分離装置より低い圧力で混合物から炭酸ジメチルを分離して取り出すことができる。
【0018】
また、第二の分離装置で炭酸ジメチルを分離することで残る副生物に、メタノールを反応させてアセタール類を生成するアセタール生成器と、このアセタール類を反応器に供給するアセタール供給経路と、をさらに備えて、アセタール類を再生使用することもできる。
【0019】
本発明は、常圧より高い第一の圧力下で、アセタール類と二酸化炭素とを反応させて炭酸ジメチルを得る反応器と、常圧より高く第一の圧力より低い第二の圧力下で、反応器で生成された炭酸ジメチル、反応器において生成される副生物、および反応器で未反応のアセタール類および二酸化炭素の混合物から、二酸化炭素を分離して取り出すCO2ストリッパまたはフラッシュタンクからなる二酸化炭素分離装置と、二酸化炭素分離装置より低い圧力、つまり第二の圧力より低い圧力で、二酸化炭素分離装置を経た混合物を、炭酸ジメチルと副生物に分離する蒸留塔と、蒸留塔から排出される副生物をメタノールと反応させることでアセタール類を再生するアセタール再生装置と、二酸化炭素分離装置から取り出された二酸化炭素、およびアセタール再生装置で再生されたアセタール類を反応器に原料として供給する供給経路と、を備えることを特徴とする炭酸ジメチルの製造システムとして捉えることもできる。
【0020】
本発明の炭酸ジメチルの製造方法は、アセタール類と二酸化炭素とを反応させて炭酸ジメチルを得る反応工程と、反応工程で得られる炭酸ジメチル、反応工程にて生成される副生物、および反応工程で未反応のアセタール類および二酸化炭素の混合物から、二酸化炭素を分離して取り出す二酸化炭素分離工程と、二酸化炭素分離工程を経た混合物から炭酸ジメチルを分離して取り出す炭酸ジメチル分離工程と、を備えることを特徴とすることもできる。
この場合、反応工程では、常圧より高い圧力下で反応させることで炭酸ジメチルを得るとともに、二酸化炭素分離工程でも、常圧より高く、反応工程より低い圧力下で、混合物から二酸化炭素を分離して取り出し、炭酸ジメチル分離工程では、二酸化炭素分離工程よりも低い圧力で混合物から炭酸ジメチルを分離して取り出すのが良い。
また、炭酸ジメチル分離工程で、炭酸ジメチルを分離することで残る副生物に、メタノールを反応させてアセタール類を再生するアセタール再生工程と、アセタール再生工程で再生されたアセタール類、および二酸化炭素分離工程で取り出された二酸化炭素を、反応工程に循環させる循環工程と、をさらに備えるのも好ましい。
【0021】
本発明は、上記のようなシステム、手法で生成される化合物として捉えることもできる。
すなわち、本発明の化合物は、アセタール類と二酸化炭素とを反応させることで得られる反応物から、この反応物に含まれる未反応の二酸化炭素を除去し、さらに反応物から副生物を除去することによって生成されたことを特徴とするのである。
アセタール類と二酸化炭素とを反応させることで得られる反応物から、二酸化炭素を除去し、さらに副生物を除去することで、炭酸ジメチルを得ることができるが、本発明の化合物は、この炭酸ジメチルそのものだけでなく、プロセスの過程で適宜添加した添加剤等をも含むことを許容する。
このような化合物は、ガソリン添加剤として用いることができる。これ以外にも、エンジニアリングプラスチックであるポリカーボネートの原料、あるいはカルボニル化剤、燃料電池用の原料等、他の用途としても本発明の化合物を用いることが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、炭酸ジメチルを、低コストでしかも消費エネルギーを抑制して工業的に大量生産することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
なお以下の説明では、アセタール類としてアセトンジメチルアセタールを用い、反応工程における副生物としてアセトンを使用するが、それぞれこの物質に限定されるものでは無い。
図1は、本実施の形態における炭酸ジメチル製造システム10の構成を説明するための図である。
この図1に示すように、炭酸ジメチル製造システム10は、反応器20、CO2分離装置(第一の分離装置、二酸化炭素分離装置)30、DMC精製塔(第二の分離装置、蒸留塔)40、アセタール再生装置(アセタール生成器)50、脱水装置60を備えている。
【0024】
反応器20には、例えば30MPaという、常圧より高い圧力に加圧された高圧状態の液体二酸化炭素と、同様に高圧状態のアセトンジメチルアセタールが事前に合流して混合され、蒸気化されて導入される。
反応器20では、常圧より高い所定の圧力(第一の圧力)、例えば30MPaの圧力下において、アセトンジメチルアセタールに、所定の触媒下で、CO2を反応させる。このような触媒による反応で、反応器20では、炭酸ジメチル(化合物)が生成(合成)され、また副生物として、アセトンが生成される(反応工程)。
【0025】
このような触媒としては、例えば、ジブチル錫触媒を用いることができる。しかし、ジブチル錫触媒は毒性が強く、比較的高価であり、反応条件も厳しいため、工業的に有利とは言えない。そこで、触媒としては、固体酸点を有する化合物からなる担体に、強酸を担持させてなるものを用いるのが好ましい。
【0026】
このとき、固体酸点を有する化合物とは、種々の固体、特には金属の酸化物(Al23、V25等)、硫化物(ZnS等)、硫酸塩(NiSO4、CuSO4等)、リン酸塩(AlPO4、Tiリン酸塩等)、塩化物(AlCl3、CuCl2等)、粘土鉱質、ゼオライト等をいい、固体酸が酸塩基触媒作用を行うものをいう。本実施形態においては、特に、ZrO2、Al23、TiO2を用いることが好ましい。
また、担持させる強酸としては、SO42-またはPO43-を用いることが好ましい。しかし、これ以外にも強酸であれば、前記担体に担持させることができる。SO42-またはPO43-としては、H2SO4、H3PO4、(NH42SO4、(NH43PO4由来のものを用いることができる。
【0027】
反応器20から排出された炭酸ジメチルとアセトンの混合物は、高圧状態のまま、CO2分離装置30に送り込まれるが、このとき、反応器20で未反応のアセトンジメチルアセタールおよび二酸化炭素が混在している。
CO2分離装置30では、常圧より高く、かつ反応器20で反応を行う圧力より低い所定の圧力(第二の圧力)、例えば4MPaの圧力下で、二酸化炭素を、炭酸ジメチルおよびアセトンから分離する(二酸化炭素分離工程)。
このようなCO2分離装置30としては、液体を加熱する熱源31を備えたCO2ストリッパや、フラッシュタンクを好適に用いることができる。
CO2ストリッパは、いわゆる棚段方式または充填物方式の蒸留塔と同様の構成を有するもので、高圧下で炭酸ジメチル、アセトン、二酸化炭素の混合物を焚き上げることで、液成分である炭酸ジメチルおよびアセトンはそのままで、二酸化炭素だけが上昇する。そして、所定の圧力、例えば4MPaの圧力で、二酸化炭素だけを分離してそのCO2ストリッパの上部から排出し、炭酸ジメチルおよびアセトンを液の状態のまま底部から排出してDMC精製塔40に送る。
フラッシュタンクは、高圧の液体を蒸発させ、低圧の蒸気と低圧の凝縮液に分離する装置であり、CO2ストリッパと同様、二酸化炭素を分離し、炭酸ジメチルおよびアセトンを液の状態のままDMC精製塔40に送る。
【0028】
DMC精製塔40には、いわゆる棚段方式または充填物方式の蒸留塔を採用することができる。DMC精製塔40では、炭酸ジメチルおよびアセトンの混合液を導入すると、塔底の混合液をリボイラ41で加熱し、DMC精製塔40に戻す。これにより、DMC精製塔40内の混合液のうち沸点の低い物質から蒸発し、塔内を上昇する。DMC精製塔40に新たに導入されて塔内を落下する混合液と、上昇する蒸気とが気液接触する。
これによって、DMC精製塔40の上部側では、混合液のうち沸点の低い物質であるアセトンの濃度が高くなり、下部側では沸点の高い物質であるDMCの濃度が高くなるという濃度分布が生じる。そして、DMC精製塔40の上部から、アセトンの蒸気を排出し、排出された蒸気を、冷却器42で凝縮させることで、アセトンを液体の状態で回収することができる。一方、DMC精製塔40の下部から、炭酸ジメチルを液体の状態で回収することができる(炭酸ジメチル分離工程)。
【0029】
さて、DMC精製塔40から排出されたアセトンは、外部から供給されたメタノールと混合され、アセタール再生装置50に導入される。アセタール再生装置50で、アセトンとメタノールを反応させるとことによって、アセトンジメチルアセタールと水が生成される。
アセタール再生装置50から排出されたアセトンジメチルアセタールと水の混合液は、脱水装置60に送り込まれる。
脱水装置60にて、水は下部から排出され、上部からは凝縮器61で凝縮されたアセトンジメチルアセタールが排出される。凝縮されたアセトンジメチルアセタールの一部は、脱水装置60に循環される。アセトンジメチルアセタールの残部は、圧縮機62で加圧され、例えば30MPa程度の高圧状態とされ、反応器20に繋がる循環経路(アセタール供給経路、二酸化炭素供給経路、供給経路)70に循環される。
また、CO2分離装置30から排出された高圧の二酸化炭素も、循環経路70に循環される。
ここで二酸化炭素は、所定の圧力まで圧縮されるが、これには、必要に応じ、複数段の圧縮機71、72等を用いればよい。
【0030】
上述したような炭酸ジメチル製造システム10は、アセトンジメチルアセタールと二酸化炭素を原料として、炭酸ジメチルを製造することができる。このとき、原料として、有毒な物質を用いていない。炭酸ジメチルを生成する際の副生物であるアセトンをメタノールと反応させて、炭酸ジメチルの原料となるアセトンジメチルアセタールを得ることができ、その際には水が生成される。このように、排出物は水であり、有害物質が排出されることもない。このようにして、炭酸ジメチルを製造することで、大量生産にも環境面での障害は生じない。
しかも、全体の反応系を見れば、二酸化炭素およびメタノールを供給するのみであるので、低コストで炭酸ジメチルを製造することもできる。
そして、反応器20、CO2分離装置30、DMC精製塔40、アセタール再生装置50、脱水装置60を備えた炭酸ジメチル製造システム10によって、上記炭酸ジメチルの製造方法を工業レベルで実現することができ、炭酸ジメチルの工業化を図ることができる。
【0031】
そして、反応器20で生成された炭酸ジメチルとアセトンの混合物に、未反応の状態で残存する二酸化炭素を、CO2分離装置30によって除去するようにした。しかも、高圧下で二酸化炭素を分離することで、冷却水の温度に関わらず、その分離を行うことができる。さらに、その下流側のDMC精製塔40では、炭酸ジメチルとアセトンを分離する際、冷却温度を、水を冷媒として用いた場合の45℃等とすることが可能となる。
ところで、CO2分離装置30から排出された二酸化炭素は、高圧を維持しているため、反応器20に循環させるに際し、昇圧の度合いが少なくて済む。つまり、昇圧に用いる圧縮機71、72で必要とするエネルギーが、常圧から昇圧させる場合に比較して大幅に少なくて済む。なお、アセトンやアセトンジメチルアセタールは、液の状態であるので、昇圧するにしても、気体に比較すれば、圧縮に必要なエネルギーが少なくて済む。
このようにして、炭酸ジメチルを製造するに際し、必要なエネルギーを抑えることができ、これも、省コスト化、環境悪化の抑制といった効果が得られる。
【0032】
なお、上記実施の形態において、反応器20でアセトンジメチルアセタールと二酸化炭素を反応させるための触媒等については、いかなるものを用いてもよく、たとえば既存の技術を採用してもよいし、新たに開発された技術を採用してもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施の形態における炭酸ジメチル製造システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10…炭酸ジメチル製造システム、20…反応器、30…CO2分離装置(第一の分離装置、二酸化炭素分離装置)、40…DMC精製塔(第二の分離装置、蒸留塔)、50…アセタール再生装置(アセタール生成器)、60…脱水装置、70…循環経路(アセタール供給経路、二酸化炭素供給経路、供給経路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセタール類と二酸化炭素とを反応させて炭酸ジメチルを生成する反応器と、
前記反応器で生成された炭酸ジメチル、前記反応器における副生物、および前記反応器で未反応のアセタール類と二酸化炭素の混合物から、二酸化炭素を分離して取り出す第一の分離装置と、
前記第一の分離装置にて二酸化炭素が取り出された前記混合物から炭酸ジメチルを分離して取り出す第二の分離装置と、
を備えることを特徴とする炭酸ジメチル製造システム。
【請求項2】
前記反応器では、常圧より高い圧力下で反応させることで炭酸ジメチルを得るとともに、
前記第一の分離装置では、常圧より高い圧力下で、前記混合物から二酸化炭素を分離して取り出すことを特徴とする請求項1に記載の炭酸ジメチル製造システム。
【請求項3】
前記第二の分離装置では、前記第一の分離装置より低い圧力で前記混合物から炭酸ジメチルを分離して取り出すことを特徴とする請求項1または2に記載の炭酸ジメチル製造システム。
【請求項4】
前記第二の分離装置で炭酸ジメチルを分離することで残る副生物に、メタノールを反応させてアセタール類を生成するアセタール生成器と、
前記アセタール生成器で生成したアセタール類を前記反応器に供給するアセタール供給経路と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の炭酸ジメチル製造システム。
【請求項5】
前記第一の分離装置で取り出された二酸化炭素を、前記反応器に供給する二酸化炭素供給経路をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の炭酸ジメチル製造システム。
【請求項6】
常圧より高い第一の圧力下で、アセタール類と二酸化炭素とを反応させて炭酸ジメチルを生成する反応器と、
常圧より高く前記第一の圧力より低い第二の圧力下で、前記反応器で生成された炭酸ジメチル、前記反応器の副生物、および前記反応器で未反応のアセタール類と二酸化炭素の混合物から、二酸化炭素を分離して取り出すCO2ストリッパまたはフラッシュタンクからなる二酸化炭素分離装置と、
前記第二の圧力より低い圧力で、前記二酸化炭素分離装置を経た前記混合物を、炭酸ジメチルと副生物に分離する蒸留塔と、
前記蒸留塔から排出される副生物をメタノールと反応させることでアセタール類を再生するアセタール再生装置と、
前記二酸化炭素分離装置から取り出された二酸化炭素、および前記アセタール再生装置で再生されたアセタール類を前記反応器に原料として供給する供給経路と、
を備えることを特徴とする炭酸ジメチルの製造システム。
【請求項7】
アセタール類と二酸化炭素とを反応させて炭酸ジメチルを得る反応工程と、
前記反応工程で得られる炭酸ジメチル、前記反応工程の副生物、および前記反応工程で未反応のアセタール類と二酸化炭素の混合物から、二酸化炭素を分離して取り出す二酸化炭素分離工程と、
前記二酸化炭素分離工程を経た前記混合物から炭酸ジメチルを分離して取り出す炭酸ジメチル分離工程と、
を備えることを特徴とする炭酸ジメチルの製造方法。
【請求項8】
前記反応工程では、常圧より高い圧力下で反応させることで炭酸ジメチルを得るとともに、
前記二酸化炭素分離工程では、常圧より高い圧力下で、前記混合物から二酸化炭素を分離して取り出し、
前記炭酸ジメチル分離工程では、前記二酸化炭素分離工程よりも低い圧力で前記混合物から炭酸ジメチルを分離して取り出すことを特徴とする請求項7に記載の炭酸ジメチルの製造方法。
【請求項9】
前記炭酸ジメチル分離工程で、炭酸ジメチルを分離することで残る副生物に、メタノールを反応させてアセタール類を再生するアセタール再生工程と、
前記アセタール再生工程で再生されたアセタール類、および前記二酸化炭素分離工程で取り出された二酸化炭素を、前記反応工程に循環させる循環工程と、
をさらに備えることを特徴とする請求項7または8に記載の炭酸ジメチルの製造方法。
【請求項10】
アセタール類と二酸化炭素とを反応させることで得られる反応物から、前記反応物に含まれる未反応の二酸化炭素を除去し、さらに前記反応物から副生物を除去することによって生成されたことを特徴とする化合物。
【請求項11】
ガソリン添加剤として用いられるものであることを特徴とする請求項10に記載の化合物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−22067(P2006−22067A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203266(P2004−203266)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】