説明

無人搬送システム

【課題】マーカーを設けることなく無人搬送車の走行速度を制御することができる無人搬送システムを提供する。
【解決手段】路面に敷設された誘導ライン2と、該誘導ライン2に沿って所定の走行速度で走行する無人搬送車3とを備えた無人搬送システム1であって、誘導ライン2は、区間によって異なるライン幅を有し、無人搬送車3は、誘導ライン2を含む領域の画像データを生成する撮像手段4a、4bと、生成された画像データにおけるライン幅に基づいて目標速度を設定する目標速度設定部5と、目標速度に一致するように走行速度をフィードバック制御する走行制御部6と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導ラインと該誘導ラインに沿って走行する無人搬送車とを備えた無人搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、従来から、路面に敷設された誘導ライン22と、誘導ライン22に沿って所定の走行速度で走行する無人搬送車23と、誘導ライン22の近傍に設けられたバーコード状のマーカー24とを備えた無人搬送システム21が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかるマーカー24を備えた無人搬送システム21においては、無人搬送車23が、誘導ライン22およびマーカー24を撮像してこれらの画像データを生成するための光学的撮像手段25a、25bと、生成した画像データからマーカー24に表示されている走行速度制御用のコマンドコードを読み取り、読み取ったコマンドコードに基づいて車体の走行速度を制御する走行制御部26と、車体の四隅に設けられ、走行制御部26の制御下で駆動される車輪27とを有している。
【0004】
この無人搬送システム21によれば、無人搬送車23はマーカー24に表示されているコマンドコードにしたがって所定の速度で走行するので、走行速度を変化させたい地点にあらかじめマーカー24を設けておくことで、無人搬送車23の走行速度を自由に制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−188610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の無人搬送システム21では、走行速度を変化させる地点すべてにマーカー24を設けておく必要があるので、マーカー24の数が多くなり、マーカー24を敷設する手間がかかってしまうという問題があった。
【0007】
さらに、従来の無人搬送システム21では、マーカー24の一部が汚れたり欠けたりした場合、無人搬送車23はマーカー24に表示されている走行速度制御用のコマンドコードを正確に読み取ることができず、走行速度を制御することができなくなり、その結果、脱線等の事故を招いてしまうおそれがあった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、マーカーを設けることなく無人搬送車の走行速度を制御することができる無人搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る無人搬送システムは、路面に敷設された誘導ラインと、該誘導ラインに沿って所定の走行速度で走行する無人搬送車とを備えた無人搬送システムであって、誘導ラインは、区間によって異なるライン幅を有し、無人搬送車は、誘導ラインを含む領域の画像データを生成する撮像手段と、生成された画像データにおけるライン幅に基づいて目標速度を設定する目標速度設定部と、目標速度に一致するように走行速度をフィードバック制御する走行制御部と、を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、誘導ラインのライン幅に基づいて無人搬送車の目標速度が設定され、この目標速度に一致するように走行速度がフィードバック制御されるので、マーカーを設けることなく無人搬送車の走行速度を制御することができる。
【0011】
また、本発明に係る無人搬送システムにおいて、上記目標速度設定部は、ライン幅が小さくなるほど目標速度を低く設定することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、誘導ラインの一部が汚れたり欠けたりしても、撮像手段により生成された画像データにおけるライン幅は小さくなり、目標速度は通常よりも低く設定されるので、無人搬送車は減速される。したがって、この構成によれば、走行速度が意図していた速度よりも増加して脱線等の事故が起こるのを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明に係る無人搬送システムにおいて、上記誘導ラインは、路面と異なる色に着色された粘着テープからなり、ライン幅の方向に並列配置する粘着テープの本数を変えることにより、ライン幅を段階的に変化させたものであってもよい。
【0014】
この構成によれば、粘着テープの本数を変えるという単純な方法により、ライン幅を調節して無人搬送車の走行速度を制御することができるので、マーカーを設けた場合と比べて、コストや手間を大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、マーカーを設けることなく無人搬送車の走行速度を制御することができる無人搬送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る無人搬送システムの概略構成図である。
【図2】誘導ラインのライン幅と目標速度との関係を示すグラフである。
【図3】本発明における走行制御部のブロック図である。
【図4】本発明の変形例に係る無人搬送システムの概略構成図である。
【図5】従来の無人搬送システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0018】
図1に、本実施形態に係る無人搬送システム1の概略構成図を示す。同図に示すように、無人搬送システム1は、走行経路の路面に敷設された誘導ライン2と、誘導ライン2に沿って所定の走行速度で走行する無人搬送車3とを備えている。
【0019】
誘導ライン2は、路面および路面に付着する汚れ等と明確に区別可能な色の塗料を塗布することにより形成されたものである。路面および路面に付着する汚れの色は白色、灰色、黒色等の無彩色であることが多いので、塗料の色としては赤色、青色、緑色等の有彩色を選択することが好ましい。
【0020】
また、誘導ライン2は、区間によって異なるライン幅を有している。例えば、図1に示す誘導ライン2は、区間A、Eにおいて比較的大きい一定のライン幅を有し、区間Cにおいて比較的小さい一定のライン幅を有し、区間B、Dにおいて徐々に小さく(大きく)なるライン幅を有している。なお、区間Cにおけるライン幅は、図5に示す従来の無人搬送システム21における誘導ライン22のライン幅とほぼ同じ大きさである。
【0021】
無人搬送車3は、誘導ライン2を含む一定の領域を光学的に撮像して該領域の画像データを生成するCCDカメラ等の撮像手段4a、4bと、撮像手段4a、4bによって生成された画像データにおけるライン幅に基づいて目標速度を設定する目標速度設定部5と、目標速度設定部5によって設定された目標速度に一致するように車体の走行速度をフィードバック制御する走行制御部6と、車体の四隅に設けられ、走行制御部6の制御下で駆動される車輪7とを備えている。撮像手段4a、4bは、誘導ライン2に沿って2つ設けられているが、通常、進行方向側の撮像手段(図1では、4a)のみが使用される。
【0022】
目標速度設定部5は、マイコンや記憶装置(メモリ)等から構成されている。記憶装置には、誘導ライン2のライン幅と目標速度との関係を示すデータがあらかじめ格納されている。このデータでは、誘導ライン2の一部が汚れたり欠けたりしてライン幅が小さくなった場合に車体の走行速度を抑えるべく、ライン幅が小さくなるほど目標速度が低くなるように、ライン幅と目標速度とが関係付けられている(図2参照)。目標速度設定部5は、このデータと、撮像手段4a、4bによって生成された画像データから特定したライン幅とに基づいて目標速度を設定する。
【0023】
走行制御部6は、図3に示すように、トルク指令値算出手段8と、車輪7に駆動力を伝達するモータ10を駆動するためのインバータ9と、モータ10の回転数ωを検出する不図示の回転数検出手段とを有している。
【0024】
トルク指令値算出手段8は、回転数検出手段によって検出されたモータ10の回転数ωから車体の走行速度を算出し、算出した走行速度と目標速度設定部5によって設定された目標速度との偏差がゼロになるようにPI演算を行いトルク指令値を算出する。インバータ9は、トルク指令値算出手段8によって算出されたトルク指令値にしたがってモータ10を駆動する。
【0025】
次に、無人搬送車3がカーブ(図1の区間C)を曲がる場合における無人搬送車3の走行速度の制御について具体的に説明する。以下の説明では、区間A、C、Eにおけるライン幅をそれぞれWa、Wc、We(Wa=We>Wc)とし、無人搬送車3の目標速度設定部5には、図2に示すライン幅と目標速度との関係を示すデータがあらかじめ格納されているものとする。
【0026】
まず、カーブに差し掛かる前の区間Aでは、目標速度設定部5は、撮像手段4aによって生成された画像データから特定したライン幅Waとデータとに基づいて、目標速度をV1に設定し、走行制御部6は、目標速度V1に一致するように車体の走行速度をフィードバック制御する。このため、区間Aにおいて無人搬送車3は、誘導ライン2に沿って一定の走行速度V1で走行する。
【0027】
区間Bでは、誘導ライン2のライン幅がWaから徐々に小さくなってWcになるので、目標速度設定部5により設定される目標速度は、ライン幅の減少に応じてV2、V3、V4の順に徐々に低くなる。このため、区間Bにおいて無人搬送車3は、走行制御部6の制御下で走行速度V1から走行速度V4まで徐々に減速される。
【0028】
区間Cでは、誘導ライン2のライン幅がWcのまま一定であるため、目標速度設定部5により設定される目標速度もV4のまま一定となる。このため、区間Cにおいて無人搬送車3は、走行制御部6の制御下で走行速度V4まま低速で走行する。
【0029】
区間Dでは、区間Bとは逆に誘導ライン2のライン幅がWcから徐々に大きくなってWe(=Wa)になるので、目標速度設定部5により設定される目標速度は、ライン幅の増加に応じてV4、V3、V2の順に徐々に高くなる。このため、区間Dにおいて無人搬送車3は、走行制御部6の制御下で走行速度V4から走行速度V1まで徐々に加速される。
【0030】
そして、区間Eでは、区間Aと同様に、誘導ライン2のライン幅がWeのまま一定であるため、目標速度V1も変化することなく、無人搬送車3は、走行制御部6の制御下で通常の走行速度V1で走行する。
【0031】
上記のように、本実施形態に係る無人搬送システム1によれば、誘導ライン2のライン幅に基づいて無人搬送車3の目標速度が設定され、この目標速度に一致するように走行速度がフィードバック制御されるので、従来の無人搬送システム21のようにマーカー24を設けることなく無人搬送車3の走行速度を自由に制御することができる。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、種々の変形例が考えられる。
【0033】
図5は、本発明の変形例に係る無人搬送システム11の概略構成図である。同図に示すように、本変形例に係る無人搬送システム11は、有彩色に着色された粘着テープからなる誘導ライン12を備えていること以外の点において、上記実施形態に係る無人搬送システム1と共通している。本変形例に係る無人搬送システム11によれば、目標速度を比較的低く設定したい区間(例えば、区間C’)では、粘着テープの数を1本にし、目標速度を比較的高く設定したい区間(例えば、区間A’、E’)では、誘導ライン12のライン幅の方向に並列配置する粘着テープの本数を増やすことにより、誘導ライン12のライン幅を段階的に変化させることができる。すなわち、本変形例に係る無人搬送システム11によれば、粘着テープの本数を変えるという単純な方法により、ライン幅を調節して無人搬送車3の走行速度を制御することができるので、従来の無人搬送システム21のようにマーカー24を設けた場合と比べて、コストや手間を大幅に低減することができる。
【符号の説明】
【0034】
1、11 無人搬送システム
2、12 誘導ライン
3 無人搬送車
4a、4b 撮像手段
5 目標速度設定部
6 走行制御部
7 車輪
8 トルク指令値算出手段
9 インバータ
10 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に敷設された誘導ラインと、該誘導ラインに沿って所定の走行速度で走行する無人搬送車とを備えた無人搬送システムであって、
前記誘導ラインは、区間によって異なるライン幅を有し、
前記無人搬送車は、
前記誘導ラインを含む領域の画像データを生成する撮像手段と、
生成された前記画像データにおける前記ライン幅に基づいて目標速度を設定する目標速度設定部と、
前記目標速度に一致するように前記走行速度をフィードバック制御する走行制御部と、
を有することを特徴とする無人搬送システム。
【請求項2】
前記目標速度設定部は、前記ライン幅が小さくなるほど前記目標速度を低く設定することを特徴とする請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項3】
前記誘導ラインは、路面と異なる色に着色された粘着テープからなり、前記ライン幅の方向に並列配置する前記粘着テープの本数を変えることにより、前記ライン幅を段階的に変化させたことを特徴とする請求項1または2に記載の無人搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−221229(P2012−221229A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86516(P2011−86516)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】