説明

無人搬送車および走行制御方法

【課題】作業番地への停止において、精度の高いコンベアへの横付けが可能な無人搬送車および走行制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】コンベア12に設置されている反射板11へ光を照射し、反射板11から反射した信号光を受光することによって物体の存在を検出する光電センサを、無人搬送車1の側面前後にそれぞれ1つづつ備えるとともに、無人搬送車1とコンベア12とを検知する手段を備え、無人搬送車1の側面前後に備えられている光電センサの双方が反射板から反射した信号光を受光すると、操舵輪をコンベア12方向へ操舵し、無人搬送車1とコンベア12との距離が所定の距離となるまで無人搬送車1をコンベア12方向へ走行させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車および走行制御方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の生産ラインや倉庫等において、省人化や搬送の正確性を向上させるため、自動制御で、目標走行経路上を自動的に走行させ、荷物の積み降ろしを行う無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)が導入されている。このような無人搬送車の停止制御方式として各種のものが開発・適用されている。
【0003】
特許文献1には、無人搬送車に設けた磁気センサが、無人搬送車の停止位置近傍に設けられている磁石を検知し、その検知した情報に基づいて無人搬送車の停止制御を行う無人搬送車の停止制御装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、無人搬送車に設けられている停止用検出器が、無人搬送車停止位置に設けられている被検出具を検知すると、無人搬送車を停止させる無人搬送車の停止位置決め装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−258823号公報
【特許文献2】特開平5−274033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載されている技術は、いずれも経路上に設置された被検出物を基に停止制御を行うものである。
そのため、荷の積みおろしにコンベアを使用する設備では、コンベアの移設や、新規にコンベアを設置したときなど、前記特許文献の技術では、経路上に被検出物を移設したり、新設したりする必要がある。
【0007】
このような背景に鑑みて本発明がなされたのであり、本発明は作業番地への停止(対象物へのアプローチ)において、精度の高いコンベア(対象物へのアプローチ)への横付けが可能な無人搬送車および走行制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、対象物から離れている際には、予め設定されている経路データに基づいて走行する経路データ走行を行い、前記対象物に近接した際には、自身が備えるセンサに基づいて走行するセンサ走行を開始して、前記対象物へアプローチする無人搬送車であって、前記経路データ走行により取得される位置が、前記センサ走行を開始する位置である開始点か否かを判定し、前記開始点であると判定したときは、前記センサ走行に切り替えて前記対象物へアプローチする制御部と、を有することを特徴とする。
その他の解決手段については、実施形態中で適宜記載する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業番地への停止(対象物へのアプローチ)において、精度の高いコンベアへの横付け(対象物へのアプローチ)が可能な無人搬送車および走行制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る無人搬送システムの概略を示す図である。
【図2】本実施形態に係る無人搬送システムの構成例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る無人搬送車におけるコントローラの構成例を示すブロック図である。
【図4】地図データ作成処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】計測データの収集方法を示す図である。
【図6】地図データの例を示す図である。
【図7】経路データ作成処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】経路の例を示す図である。
【図9】経路データの例を示す図である。
【図10】本実施形態に係る経路と座標の対応情報の例を示す図である。
【図11】本実施形態に係る無人搬送車の走行時における処理の手順を示すシーケンス図である。
【図12】本実施形態に係る走行制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】経路が直線である場合における操舵角および実際の移動距離の決定方法を説明する図である。
【図14】経路が曲線である場合における操舵角および実際の移動距離の決定方法を説明する図である。
【図15】本実施形態に係る停止制御処理の概要を説明するための図である(その1)。
【図16】クリープ目的番地及びクリープ経路データの作成方法を説明するための図である。
【図17】本実施形態に係る停止制御処理の概要を説明するための図である(その2)。
【図18】本実施形態に係る停止制御処理の概要を説明するための図である(その3)。
【図19】本実施形態に係る停止制御処理の概要を説明するための図である(その4)。
【図20】本実施形態に係るクリープ走行制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図21】本実施形態に係るセンサ走行制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図22】コンベアに対し無人搬送車が斜めに接近した場合におけるセンサ走行制御の例を示す図である(その1)。
【図23】コンベアに対し無人搬送車が斜めに接近した場合におけるセンサ走行制御の例を示す図である(その2)。
【図24】本実施形態の別の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同様の構成要素には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0012】
(システム概略)
図1は、本実施形態に係る無人搬送システムの概略を示す図である。
無人搬送システム9において、無人搬送車1は、工場内などの作業エリアを後記する経路データに沿って自律走行を行い、自律的にコンベア(対象物)12に横付けし、コンベア12上の積載物を積んだり、無人搬送車1に積んでいる荷をコンベア12上に卸したりする移載を行う。コンベア12の下部には反射板11が設置されている。無人搬送車1は、自身に設置されている光電センサ80(光検出センサ:図2で後記)から発射された光信号が反射板11によって反射されるのを検知することなどによって、移載のための位置決めを行う。
【0013】
(システム構成)
図2は、本実施形態に係る無人搬送システムの構成例を示す図である。
無人搬送システム9は、無人搬送車1、ホストコンピュータ(外部装置)2および運行管理コンピュータ(外部装置)3を有している。さらに、ホストコンピュータ2の上に上位ホストを設置することもある(図示省略)。
無人搬送車1は、経路データ133(図3)に従って走行エリア内を移動、荷を積んで移動したり、卸したりするものである。
ホストコンピュータ2は、LAN(Local Area Network)などのネットワーク5を介して運行管理コンピュータ3と接続しており、運行管理コンピュータ3と同じく無人搬送車1から送られた計測データ131(図3)などから地図データ132(図3)を作成したり、ユーザによる経路データ133の作成を行ったりする機能を有する。
運行管理コンピュータ3は、ホストコンピュータ2と同じく無人搬送車1から送られた計測データ131(図3)などから地図データ132を作成したり、無線親局4を介した無線LANなどによって、無人搬送車1に対し指示を送ったり、無人搬送車1から状態報告を受けたりする機能を有している。
【0014】
無人搬送車1は、コントローラ10、レーザ距離センサ20、プログラマブルコントローラ30、操舵輪40、走行輪50、タッチパネルディスプレイ60および無線子局70を有している。
コントローラ10は、無人搬送車1の動作を制御する装置である。なお、コントローラ10の詳細は図3を参照して後記する。
レーザ距離センサ20は、物体までの距離を計測可能なセンサであり、レーザや、ミリ波などを発射し、その反射光(反射波)を検知して障害物までの距離を測定するセンサである。レーザ距離センサ20は、レーザ波や、ミリ波を左右に大きくスキャンすることから、レーザ距離センサ20は、無人搬送車1の180度以上計測可能な位置に取り付けられる。つまり、レーザ距離センサ20は、180度以上のレンジで回転することができ、所定の角度ごとにレーザを発射することができるようになっている。
プログラマブルコントローラ30は、操舵角をパラメータとして制御される操舵輪40および速度をパラメータとして制御される走行輪50の制御を行う装置である。
タッチパネルディスプレイ60は、無人搬送車1の各種設定や、保守などを行う際の情報入出力装置である。
無線子局70は、無線親局4から送信される通信伝文を受信し、コントローラ10へわたす装置である。
【0015】
無人搬送車1の側面には、センサである光電センサ80および測距センサ90が備えられている。光電センサ80および測距センサ90は、後記するようにコンベア12(図1)に無人搬送車1を横付けする際に、位置決めを行うために備えられている。光電センサ80は、前後に1つずつ(前光電センサ80f、後光電センサ80r)備えられ、測距センサ90も、前後に1つずつ(前測距センサ90f、後測距センサ90r)備えられている。前光電センサ80fおよび後光電センサ80rの取付位置は、コンベア12に備えられている反射板11(図1)の幅以内である。また、前測距センサ90fおよび後測距センサ90rの取付位置はコンベア12の幅以内である。
なお、測距センサ90は、赤外線距離センサ、超音波距離センサ、レーザ距離センサなど、対象物との距離測定が可能なセンサであればよい。
本実施形態では、光電センサ80および測距センサ90を、無人搬送車1の片側に備えている構成としたが、無人搬送車1が両側移載を対象としている場合は、両面に備えるようにしてもよい。なお、光電センサ80と、測距センサ90を設けずに、センサとしてのレーザ距離センサ20による自己位置推定機能を用いて、無人搬送車1とコンベア12との距離を判断するようにしてコンベア12(対象物)にアプローチしてもよい。
【0016】
(コントローラ構成)
次に、図2を参照しつつ、図3に沿ってコントローラの構成を説明する。
図3は、本実施形態に係る無人搬送車におけるコントローラの構成例を示すブロック図である。
コントローラ10は、ROM(Read Only Memory)などのプログラムメモリ110と、RAM(Random Access Memory)などのデータメモリ130と、図示しないCPU(Central Processing Unit)とを有している。
データメモリ130には、計測データ131、地図データ132および経路データ133が格納されている。
計測データ131は、レーザ距離センサ20により測定した障害物までの距離に関するデータである。
地図データ132は、計測データ131に基づき、認識処理された結果を用いて、ホストコンピュータ2、運行管理コンピュータ3あるいは図示しない地図データ作成用パソコンにて作成され、伝送された地図情報であり、無人搬送車1が走行する走行エリアの地図情報である。地図データ132については、後記して説明する。
経路データ133は、地図データ132上に作成された無人搬送車1の走行を予定している経路情報である。なお、経路データ133は、地図データ132の作成同様、ユーザがホストコンピュータ2などで実行されている地図データ132を参照して編集ソフトウェアにより作成されるものである。経路データ133は、ホストコンピュータ2、運行管理コンピュータ3あるいは図示しない地図データ作成用パソコンから無人搬送車1へ送られることによってデータメモリ130に格納される。なお、経路データ133には、各場所における無人搬送車1の速度情報などが含まれている。経路データ133については、後記して説明する。
【0017】
プログラムメモリ110には、無人搬送車1を制御するための各プログラムが格納されており、これらのプログラムがCPUで実行されることにより、情報を処理する処理部(制御部)111を具現化している。処理部111は、座標変換部112、データ取得部113、計測データ取得部114、マッチング部115、位置推定部116、走行経路決定部117、走行制御部118、クリープ走行制御部119およびセンサ走行制御部(制御部)120を含んでいる。
【0018】
座標変換部112は、ホストコンピュータ2から取得した作業指示に含まれている目的番地を地図データ132で定義されている(すなわち、走行エリアに設定されている)座標に変換する機能を有する。ここで、番地とは、無人搬送車1が走行する走行エリアにおける所定の場所である。
データ取得部113は、データメモリ130から経路データ133や、地図データ132などの各種データを取得する機能を有する。
計測データ取得部114は、リモコンによる手動運転時や、無人搬送車1の走行制御時に、レーザ距離センサ20で収集された計測データ131を取得する機能を有する。
マッチング部115は、無人搬送車1の走行制御時にレーザ距離センサ20から送られた計測データ131と、地図データ132とをマッチングさせる機能を有する。
位置推定部116は、マッチング部115によるマッチング結果を基に、無人搬送車1の現在位置を推定する機能を有する。
【0019】
走行経路決定部117は、経路データ133に含まれている無人搬送車1の速度情報と、位置推定部116で推定された現在位置に基づいて、経路上における次の移動先位置を決定する機能を有する。また、無人搬送車1の経路からのずれから、操舵角を算出する機能も有している。
走行制御部118は、経路データ133に含まれている速度情報や、走行経路決定部117が算出した操舵角をプログラマブルコントローラ30へ指示する機能を有する。
【0020】
クリープ走行制御部119は、目的番地に無人搬送車1が接近すると、速度をクリープ速度(微速)まで減速し、コンベア12付近の所定の位置まで無人搬送車1を移動する機能を有する。
センサ走行制御部120は、クリープ走行制御部119によって、コンベア12付近まで移動した無人搬送車1を、光電センサ80(図2)および測距センサ90(図2)から取得した情報を基に、コンベア12に横付けする機能を有する。
【0021】
無人搬送車1を走行させるためには、無人搬送車1をオンライン投入(自動運転)する前に地図データ132と経路データ133を作成して、無人搬送車1に記憶させる必要がある。また、目的番地と、経路データ133の座標とを対応付ける必要がある。以下、図2および図3を参照しつつ、図4〜図10に沿って地図データ132と経路データ133の作成手順について説明する。
【0022】
<地図データ作成処理>
図4は、地図データ作成処理の手順を示すフローチャートであり、図5は計測データの収集方法を示す図である。
まず、手動コントローラまたはリモコン(リモートコントローラ)などでユーザが周囲を目視しつつ、無人搬送車1を手動により低速運転する。この際、レーザ距離センサ20が計測データ131を収集する(S101)。
このとき、図5に示されるように、レーザ距離センサ20は、図示しないレーザ発射部を、例えば0.5度ずつ、180度(または180度以上)回転させて、30ms周期でレーザ光411を発射する。これは、無人搬送車1が1cmから10cm程度進む毎に180度分の計測を行っていることになる。レーザ距離センサ20は、発射したレーザ光411の反射光を受光し、レーザ光411が発射されてから受光するまでの時間を基に障害物421までの距離を算出(計測)する。計測データ取得部114は、算出した障害物までの距離に関するデータを計測データ131としてデータメモリ130に格納する。なお、計測データ131は、一定時間毎に収集される。符号401〜403は後記して説明する。
【0023】
エリア内におけるすべての計測データ131を収集後、計測データ131は図示しない外部インタフェースなどを介して、ホストコンピュータ2、運行管理コンピュータ3あるいは図示しない地図データ作成用パソコンに出力される。
そして、ユーザが、ホストコンピュータ2、運行管理コンピュータ3あるいは図示しない地図データ作成用パソコン上で稼動している地図作成ソフトウェアを操作することで、出力された計測データ131に基づく地図データ132を作成する(図4のS102)。具体的には、収集した各計測データ131を重ね合わせることで地図データ132を作成する。
作成された地図データ132は、図示しない外部インタフェースなどを介して無人搬送車1に送られ、データメモリ130に格納される。
なお、一度作成された地図データ132は、再度ステップS101〜S102の処理が行われない限り、更新されることはない。
【0024】
(地図データ例)
図6は、地図データの例を示す図である。
図6に示すように、地図データ132には走行エリアにおける壁501および障害物502がデータとして記録されている。
【0025】
<経路データ作成処理>
次に、図7〜図10を参照して、無人搬送車1が進むべき経路を示す経路データを予め作成する経路データ作成処理を説明する。
図7は、経路データ作成処理の手順を示すフローチャートである。
まず、ユーザは、ホストコンピュータ2、運行管理コンピュータ3あるいは図示しない地図データ作成用パソコンで実行されている経路作成ソフトウェアを利用して、地図データ132上に経路を指定することによって経路位置情報を設定する(S201)。経路作成ソフトウェアは、ユーザが経路作成ソフトウェアで表示している地図データを参照し、地図画面上をマウスなどのポインティングデバイスでなぞることにより、簡単に地図上に経路を作成できる機能を有している。このように作成された経路位置情報は地図データ132において定義される座標の羅列によって表現されているデータである。また、経路位置情報の設定の際に、ユーザは番地の設定を行うことによって、経路データ133に番地と座標との対応情報を設定する。
【0026】
次に、ユーザは、経路作成ソフトウェアにより作成した経路上に無人搬送車1が無人で走行するときの速度を指定する速度情報の設定を行う(S202)。例えば、図5を参照して説明すると、最初の区間403では、2速(1.2[km/h])、次のカーブの区間402では、1速(0.6[km/h])、カーブを抜けた区間401では、3速(2.4[km/h])で走行するというように経路上に設定する。
速度設定は、クリープ速度(微速前進速度)、1速、2速などの順で何段階かに設定できる。例えば、最高速度を9km/hr(150m/min)として、10分割するなどして決定してもよい。ただし、クリープ速度は、1速よりも遅い速度に決めておく(例えば、0.3km/hrなど)。
【0027】
(経路データ例)
次に、図8および図9を参照して経路データ133の例を説明する。
図8は、経路の例を示す図である。
図8では無人搬送車1の走行エリアである工場内における経路の例を示しており、「A」〜「H」は「A番地」〜「H番地」を示している。
また、図8の「A番地」、「C番地」、「E番地」および「G番地」は「卸作業」が行われる箇所を示している。また、図8の「B番地」、「D番地」、「F番地」および「H番地」は「積作業」が行われる箇所を示している。
なお、番地の指定は、白線のライン上を無人搬送車が走行する従来のシステムから引き継いだレガシな部分である。
【0028】
図9は、経路データの例を示す図である。
図9において、「B」、「C」、「E」、「G」は図8の「B」、「C」、「E」、「G」に対応するものである。
図9(a)では、「B番地」で荷を積んで、「C番地」で卸す経路を示している(B→C)。
同様に、図9(b)では、「B番地」で荷を積んで、「E番地」で卸す経路を示しており(B→E)、図9(c)では、「B番地」で荷を積んで、「G番地」で卸す経路を示している(B→G)。
このように、経路データ133は積箇所→卸箇所あるいは卸箇所→積箇所で指定することができる。
【0029】
図8の例で、設定可能な経路データ133は、例えば以下の通りとなる。
(1)卸→積
A→B、A→D、A→F、A→H
C→B、C→D、C→F、C→H
E→B、E→D、E→F、E→H
G→B、G→D、G→F、G→H
【0030】
(2)積→卸
B→A、B→C、B→E、B→G
D→A、D→C、D→E、D→G
F→A、F→C、F→E、F→G
H→A、H→C、H→E、H→G
【0031】
地図データ132と、経路データ133の作成は、1台の無人搬送車1で収集した計測データ131を基にホストコンピュータ2、運行管理コンピュータ3あるいは図示しない地図データ作成用パソコンで行われ、使用するすべての無人搬送車1に適用する。
なお、地図データ132と経路データ133の作成は、オンライン投入するすべての無人搬送車1のそれぞれについて行うこともできる。なぜならば、レーザ距離センサ20や走行系(操舵輪40、走行輪50)の固体差が大きい場合は、1台の無人搬送車1で収集した地図データ132をすべての無人搬送車1に適用するよりは、個別に適用した方が有効と考えられるからである。
【0032】
図10は、本実施形態に係る経路と座標の対応情報の例を示す図である。
図10に示すように、経路データ133では、経路が座標で管理されている。具体的には、経路データ133は、座標の羅列で表現されている。そして、経路データ133には、番地1101〜1103が座標に対応付けられたデータも格納されている。なお、番地1101〜1103は、図8および図9の番地「A」〜「H」などに相当するものである。
【0033】
<走行時における制御処理>
次に、図2および図3を参照しつつ、図11および図12に沿って無人搬送車1を無人で走行させる際の処理を説明する。
図11は、本実施形態に係る無人搬送車の走行時における処理の手順を示すシーケンス図である。
オンライン投入する際、まず、ユーザが無人搬送車1をある番地まで持っていき、例えばタッチパネルディスプレイ60を介して現在番地を入力する。
これにより、無人搬送車1はホストコンピュータ2へオンライン投入した旨の情報を送る(S301)。ここで、オンライン投入は、次作業の問い合わせを兼ねている。
運行管理コンピュータ3を介して、無人搬送車1からの兼・次作業問い合わせを受信したホストコンピュータ2は無人搬送車1へ作業指示を送信する(S302)。この作業指示には、目的番地と、その目的番地で行われる作業内容に関する情報が格納されている(ステップS302の例では積作業が行われる)。
運行管理コンピュータ3を介して作業指示を受信した無人搬送車1は、図12で後記する走行制御を行い(S303)、現在の状態(番地通過情報、作業完了情報など)を運行管理コンピュータ3へ報告する(S304)。
無人搬送車1は、目的番地へ到着するまでステップS303およびステップS304の処理を繰り返す。
【0034】
そして、走行制御(S305)後、目的番地へ到着し、作業(ここでは、積作業)が完了すると、無人搬送車1は積作業が完了した旨の状態報告を運行管理コンピュータ3へ送信する(S306)。
積作業が完了した旨の状態報告を受信した運行管理コンピュータ3は、同様の状態報告をホストコンピュータ2へ送信する。
次に、ホストコンピュータ2は、次作業として卸作業の作業指示を運行管理コンピュータ3を介して無人搬送車1へ送信する(S307)。この作業指示には、目的番地と作業内容(ステップS307の例では卸作業)に関する情報が格納されている。
運行管理コンピュータ3を介して作業指示を受信した無人搬送車1は、図12で後記する走行制御を行い(S308)、現在の状態(番地通過情報、作業完了情報など)を運行管理コンピュータ3へ報告する(S309)。
無人搬送車1は、目的番地へ到着するまでステップS308およびステップS309の処理を繰り返す。
【0035】
そして、走行制御(S310)後、目的番地へ到着し、作業(ここでは、卸作業)が完了すると、無人搬送車1は卸作業が完了した旨の状態報告(卸作業完了報告)を運行管理コンピュータ3へ送信する(S311)。これは、次作業の問い合わせを兼ねている。
卸作業が完了した旨の状態報告を受信した運行管理コンピュータ3は、同様の状態報告をホストコンピュータ2へ送信する。
【0036】
運行管理コンピュータ3を介して、卸作業完了報告を受信したホストコンピュータ2は無人搬送車1へ、次の作業指示を送信する(S312)。
ここでは、作業内容として移動(積作業および卸作業を行わない)を指示することとする。
運行管理コンピュータ3を介して作業指示を受信した無人搬送車1は、図12で後記する走行制御を行い(S313)、現在の状態(番地通過情報、作業完了情報など)を運行管理コンピュータ3へ報告する(S314)。
無人搬送車1は、目的番地へ到着するまでステップS313およびステップS314の処理を繰り返す。
【0037】
そして、走行制御(S315)後、目的番地へ到着すると、無人搬送車1は目的番地へ到着した旨の状態報告(移動作業完了報告)を運行管理コンピュータ3へ送信する(S316)。これは、次作業の問い合わせを兼ねている。
移動作業が完了した旨の状態報告を受信した運行管理コンピュータ3は、同様の状態報告をホストコンピュータ2へ送信する。
運行管理コンピュータ3を介して移動作業完了報告を受信したホストコンピュータ2は、次作業の確認を行う(S317)。
【0038】
なお、図11では、ステップS306で積作業の完了報告を受けたホストコンピュータ2が、すぐに次作業である卸作業の指示を無人搬送車1に送信しているが、無人搬送車1からの次作業問い合わせを受信してから次作業の指示を無人搬送車1へ送信するようにしてもよい。なお、卸作業や、移動作業の場合も同様である。
また、図11で目的番地に到達していない場合は、無人搬送車1は状態報告を行わないようにしてもよい。
【0039】
さらに、無人搬送車1に異常が発生した場合、オンライン投入時と同じように例えばタッチパネルディスプレイ60を介して無人搬送車1に現在番地を入力することによって、無人搬送車1が自律的に現在位置を取得するようにしてもよい。
【0040】
<走行制御処理>
図12は、本実施形態に係る走行制御処理の手順を示すフローチャートである。なお、図12の処理は、図11のステップS303,S305,S308,S310,S313,S315の処理の詳細に該当する処理である。
まず、無人搬送車1は運行管理コンピュータ3を介して作業指示を受信する(S401)。
次に、無人搬送車1の座標変換部112は、経路データ133に格納されている番地と座標との対応情報に従って、作業指示に含まれている目的番地を座標に変換する(S402)。
そして、無人搬送車1のデータ取得部113は、データメモリ130に格納されている経路データ133より、現在番地から目的番地へ向かう経路データ133を選択すると、該当する経路データ133を取得する(S403)。
【0041】
続いて、レーザ距離センサ20が、図5で説明したレーザ測距を行い、計測データ取得部114がレーザ測距の結果を取得する位置決定用レーザ距離センサ計測を行う(S404)。
そして、マッチング部115が、データメモリ130に格納されている地図データ132と、ステップS404で取得した計測データ131とのマッチングを行い(S405)、位置推定部116が、ステップS405のマッチング結果を基に現在の無人搬送車1の現在位置(X,Y)を推定する(S406)。ステップS405およびステップS406の処理は特許第4375320号明細書などに記載の技術であるため詳細な説明を省略するが、概略すると計測データ131の形状に合致する箇所を地図データ132上で検索し、その検索結果から無人搬送車1の現在位置を推定する。推定された現在位置は、座標の形で得られる。
【0042】
次に、走行経路決定部117が、経路データ133に設定されている速度情報vに基づき、移動距離d、実際の移動距離daを決定する(S407)。実際の移動距離daの算出は図13および図14を参照して後記する。
なお、ステップS407において、無人搬送車1が、経路から外れている場合、走行経路決定部117は、無人搬送車1から一番近い経路の部分に設定されている速度情報を用いる。本実施形態では、無人搬送車1の基準点から経路に垂線を伸ばして、その垂線と経路が交わる点に設定されている速度情報を用いる。なお、本実施形態では、無人搬送車1の基準点を、無人搬送車1の前面中央とする。
移動距離の決定は、経路データ133に設定されている速度が大きいほど、移動距離が大きくなるようにする。例えば、速度と移動距離を正比例の関係を持たせるようにしてもよいし、速度と移動距離の関係を二次関数や、さらに、高次の関数の関係を有するようにしてもよい。
【0043】
ここで、速度と移動距離dとの関係を例示する。以下のように、次の距離センサ計測時までに移動距離dの終点である移動先まで到達するよう、十分な長さをとるようにしている。
1速:5.0mm/30ms(0.6km/h)、移動距離d:100mm
2速:10.0mm/30ms(1.2km/h)、移動距離d:200mm
3速:20.0mm/30ms(2.4km/h)、移動距離d:300mm
4速:26.7mm/30ms(3.2km/h)、移動距離d:400mm
ここで、30ms毎の距離となっているのは、レーザ距離センサ20の計測間隔が30msとした場合の例示であり、計測間隔により数値は変わってくる。
【0044】
ステップS407の後、走行経路決定部117は、ステップS407で求めた移動距離dと、現在位置座標(X,Y)に基づいて、経路上に目標となる移動先座標を決定することによって当面の移動先位置を決定する(S408)。
【0045】
次に、走行経路決定部117は、現在座標(X,Y)とステップS408で決定した移動先座標を基に、操舵角θを決定する(S409)。ステップS409の処理は、図13および図14を参照して後記する。
また、走行経路決定部117は、現在座標(X,Y)に基づき、経路上に設定されている速度vを経路データ133から再度取得することによって速度を決定する(S410)。
【0046】
この段階で、無人搬送車1を動かすための操舵角θ、速度vが決定されたので、走行制御部118は、これらのパラメータをプログラマブルコントローラ30に送ることにより、移動距離dの終点である移動先を目指して、無人搬送車1を移動させる(S411)。実際には、移動距離d分の移動時間より早いタイミングで、次のレーザ距離センサ20の計測が行われる。
なお、ステップS404〜S411までが経路データ走行となる。
【0047】
次のレーザ距離センサ計測時(30msec後)、走行制御部118は、無人搬送車1がクリープ走行制御開始点に到達したか否かを判定する(S412)。クリープ走行制御開始点に到達したか否かの判定方法は、以下の2通りがある。1つは、経路データ133にクリープ走行制御開始点の座標を予め入力しておく方法である。もう1つは、現在位置が目的番地から所定の距離内に入ったか否かを、クリープ走行制御部119が検知することによって判定する方法である。
ステップS412の結果、無人搬送車1がクリープ走行制御開始点に到達していない場合(S412→No)、コントローラ10はステップS404へ処理を戻す。
ステップS412の結果、無人搬送車1がクリープ走行制御開始点に到達している場合(S412→Yes)、クリープ走行制御部119およびセンサ走行制御部120は図20および図21を参照して後記するクリープ走行制御処理を行い(S413)、走行制御処理を終了する。
【0048】
<操舵角・実際の移動距離の決定>
次に、図2および図3を参照しつつ、図13および図14に沿って通常走行時操舵角および実際の移動距離の決定方法を説明する。これは、図12のステップS407,S409で行われる処理である。ここで、「通常走行制御」とは、後記するクリープ走行制御時およびセンサ走行性御時ではない、走行制御を意味する。
図13は、経路が太い実線で示すような直線である場合における操舵角および実際の移動距離の決定方法を説明する図である。
本実施形態では、無人搬送車1の基準点1201を無人搬送車1の前面中央としている。速度に基づいて移動距離dが求まると、走行経路決定部117は、無人搬送車1の基準点1201から経路上(経路データ132で示される座標の羅列)に下ろした垂線の足1203から経路に沿って移動距離dにあたる点を求め、移動先座標1202とする。そして、走行経路決定部117は、無人搬送車1を移動先座標1202の方向に動かせる(向かわせる)ように、操舵輪40の角度を操舵角θとする。
このとき、実際の移動距離daと、移動距離dとの関係は、da=d/cosθとなる。
【0049】
図14は、経路が太い実線で示すような曲線である場合における操舵角および実際の移動距離の決定方法を説明する図である。
経路が曲線である場合においても、走行経路決定部117は、無人搬送車1の基準点1201から、経路上に垂線の足1301(無人搬送車1の基準点1201から経路上において最短距離となる点)を求め、点1301から曲線の長さを移動距離dとして計算することによって、経路上の移動先座標1302を決定する。このような方法では、計算量が大きくなるが、経路の曲率が大きいときに、正確な経路上の移動先座標1302を求めることができる。
なお、実際の移動距離daと、移動距離dとの関係は、da=d/cosθとなる。
【0050】
図13および図14に記載の方法によれば、現在座標が経路上にのっていなくても次の移動先座標で経路上にのるように操舵角と速度を決めることができる。
前記したように、本実施形態では、無人搬送車1の走行速度に応じて、速度が大きくなるにつれて、移動距離を大きくとり、経路上の目標となる移動先座標を遠くにとるので、無人搬送車1のブレの少ない安定した走行を行うように制御することができる。
【0051】
<停止制御処理>
次に、図1〜図3を参照しつつ、図15〜図24に沿って、本実施形態に係る停止制御処理を説明する。
(概要)
図15〜図19は、本実施形態に係る停止制御処理の概要を説明するための図である。なお、図15〜図19において、図2および図1で説明済みの符号の構成については、その説明を省略する。
まず、図15(a)に示すように、無人搬送車1は経路1501上の目的番地1502を目指して走行する。無人搬送車1(の中心)がクリープ走行制御開始点に到達すると、図5(b)に示すようにクリープ走行制御部119が、新たにクリープ経路1503のデータ(クリープ経路データ)と、クリープ目的番地1504を作成する(走行しながら作成)。クリープ目的番地1504は、「センサ走行を開始する位置である開始点」に相当する。
なお、クリープ走行制御開始点に到達したか否かの判定方法は、経路データ133にクリープ走行制御開始点の座標を予め入力しておく方法と、現在位置が目的番地から所定の距離内に入ったか否かを、クリープ走行制御部119が検知することによって判定する方法の2通りがある。なお、図15(b)に示すように経路1501と、クリープ経路1503とは、不連続でもよく、連続となっていてもよい。
【0052】
クリープ経路データと、クリープ目的番地1504の作成について、図16を参照して説明する。
経路データ133の経路1501と、経路上の目的番地1502がおおまかな位置を示しているのに対し、クリープ目的番地1504と、クリープ経路データのクリープ経路1503は光電センサ80や、測距センサ90を用いた微調整(センサ走行制御)を行いやすいようにするための詳しい位置を示すものである。
クリープ目的番地1504と、クリープ経路1503とは、前座標および後座標で管理されている。図16では、前座標が無人搬送車1の走行輪のうち、2つの前輪の中央の座標、後座標を2つの後輪の中央の座標としているが、例えば、前座標を無人搬送車1の前部中央、後座標を無人搬送車1の後部中央の座標としてもよいし、前座標を無人搬送車1の最前部コンベア側の座標、後座標を無人搬送車1の最後部コンベア側の座標などとしてもよい。
【0053】
図16に示すように、クリープ走行制御部119は、目的番地1502に自身が到達したと仮定したときの無人搬送車1の前座標から補正値(xf,yf)だけ戻した座標をクリープ目的番地1504の前座標とし、目的番地1502に自身が到達したと仮定したときの無人搬送車1の後座標から補正値(xr,yr)だけ戻した座標をクリープ目的番地1504の後座標とする。補正値(xf,yf),(xr,yr)は予め設定されている値である。
そして、クリープ走行制御部119は、クリープ目的番地1504へ向かう経路(クリープ経路1503)のデータ(クリープ経路データ)を作成する。クリープ経路データは、予め設定されている条件(経路1501と平行にするなど)を基に作成される。
このように、クリープ目的番地1504およびクリープ経路1503を前座標および後座標で管理することにより、コンベア12が設計とはずれた状態で設置されていたとしても、コンベア12に沿った方向に無人搬送車1を近づけることができる。
【0054】
なお、前記したように、クリープ目的番地1504およびクリープ経路1503は、前座標および後座標で管理されているが、煩雑になるのを避けるため、本実施形態では、図19に示すように無人搬送車の中心位置でクリープ目的番地1504およびクリープ経路1503を表現することとする。
【0055】
図15の説明へ戻り、クリープ目的番地1504およびクリープ経路1503のデータ(クリープ経路データ)を作成した(図15(b))後、経路1501よりクリープ経路1503を優先して走行するよう予め設定してあるので、クリープ走行制御部119は、クリープ経路1503上をクリープ目的番地1504の座標を目指して無人搬送車1をクリープ走行させる(図17(a))。
やがて、無人搬送車1(の前座標および後座標)がクリープ目的番地1504の前座標および後座標のそれぞれに達すると(図17(b))、つまり、「センサ走行を開始する位置である開始点」に達すると、センサ走行制御部120がセンサ走行制御を開始する。
なお、クリープ走行制御は、通常走行と同様にレーザ距離センサ20による位置推定を行いながら走行するものであるが、センサ走行制御は、光電センサ80および測距センサ90からの情報を基に走行(センサ走行)するものである。
【0056】
センサ走行制御では、まず、センサ走行制御部120が無人搬送車1を前方にクリープ走行させつつ、前光電センサ80fおよび後光電センサ80rが、自身が発した信号光の反射板11からの反射光を検知したか否かを判定する。
前光電センサ80fが反射光を検知し(図18(a))、さらに後光電センサ80rも反射板11からの反射光を検知すると、センサ走行制御部120は操舵輪40をコンベア12方向へきるよう制御する(図18(b))。
そして、センサ走行制御部120は、前測距センサ90fおよび後測距センサ90rが検出する距離情報を基にコンベア12方向へ無人搬送車1を横行させ(図19(a))、前測距センサ90fおよび後測距センサ90rが検出する距離が所定値以内となったとき、センサ走行制御部120は無人搬送車1を停止させる(図19(b))。
なお、図19(a)の段階で、操舵輪40が直角に操舵されることによって、無人搬送車1が横行しているが、操舵輪40を所定の角度に操舵し、無人搬送車1を斜行させることによって無人搬送車1をコンベア12に接近させるようにしてもよい。
【0057】
本実施形態では、光電センサ80および測距センサ90を用いて、センサ走行制御を行っているが、これに限らず、前記したようにレーザ距離センサ20による自己位置推定機能を用いてセンサ走行制御を行ってもよい。この場合、センサ走行制御部120は、レーザ距離センサ20で検出した無人搬送車1自身の位置と、コンベア12の距離が所定値以内になるように制御する。
【0058】
(クリープ走行制御処理)
次に、図3を参照しつつ、図20および図21に沿って、クリープ走行制御処理およびセンサ走行制御処理の詳細を説明する。
図20は、本実施形態に係るクリープ走行制御処理の手順を示すフローチャートである。
まず、クリープ走行制御部119がクリープ走行用の経路データ(クリープ経路データ)を作成する(S501:図15(b))。クリープ経路データには、クリープ目的番地の座標が含まれているものとする。なお、クリープ目的番地およびクリープ経路データの作成方法は、図16を参照して前記したため、ここでは省略する。
【0059】
そして、クリープ走行制御部119は、クリープ目的番地まで無人搬送車1をクリープ走行させる(S502:図17(a))。つまり、クリープ走行制御部119は、経路データ133よりクリープ経路データを優先させて走行制御を行う。なお、ステップS502の処理は、クリープ経路上をクリープ走行する以外は、図12のステップS404〜S412の処理と同様であるため説明を省略する。
【0060】
次に、クリープ走行制御部119は、無人搬送車1がクリープ目的番地に対応した座標に到達したか否かを判定する(S503)。つまり、クリープ走行制御部119は、無人搬送車1の前座標および後座標が、クリープ目的番地の前座標および後座標と一致したか否かを判定する。正確には、前記したクリープ走行の移動距離だけ、無人搬送車1が移動したか否かをクリープ走行制御部119が判定する。
【0061】
ステップS503の結果、無人搬送車1がクリープ目的番地に対応した座標に到達していない場合(S503→No)、クリープ走行制御部119はステップS502へ処理を戻す。
ステップS503の結果、無人搬送車1がクリープ目的番地に対応した座標に到達している場合(S503→Yes:図17(b))、センサ走行制御部120が図21のセンサ走行制御処理を開始する(S504)。
【0062】
(センサ走行制御)
図21は、本実施形態に係るセンサ走行制御処理の手順を示すフローチャートである。
まず、センサ走行制御部120は、無人搬送車1を前方へクリープ走行させる(S601:図18(a))。この走行は、レーザ距離センサ20による計測データ131を用いることなく行われる走行である(ただし、レーザ距離センサ20による測距は行われていてもよい)。
そして、センサ走行制御部120は、前光電センサ80fおよび後光電センサ80rの両光電センサ80が反射板11からの自身が発した信号光の反射光を検知したか否かを判定する(S602)。
ステップS602の結果、両光電センサ80が反射板11からの反射光を検知していない場合(S602→No)、センサ走行制御部120はステップS601へ処理を戻す。
ステップS602の結果、両光電センサ80が反射板11からの反射光を検知している場合(S602→Yes)、センサ走行制御部120は操舵輪40をコンベア12方向へ操舵する(S603:図18(b))。また、ステップS603の処理は、無人搬送車1を停止させることなく行われる。
【0063】
そして、センサ走行制御部120は、無人搬送車1をコンベア12方向に横行させて、クリープ走行させる(S604:図19(a))。
次に、センサ走行制御部120は、前測距センサ90fおよび後測距センサ90fから取得された距離が所定の距離となったか否かを判定する(S605)。
ステップS605の結果、少なくとも1つの測距センサ90から取得された距離が所定の距離となっていない場合(S605→No)、センサ走行制御部120はステップS604へ処理を戻す。このとき、一方の測距センサ90が所定の距離内を検出し、他方の測距センサ90が所定の距離外を検出している場合、センサ走行制御部120は、所定の距離内を検出している測距センサ90側の走行輪50を停止させるとともに、操舵輪40を所定の距離外を検出している測距センサ90をコンベア12に近づけるよう操舵制御する。
ステップS605の結果、両測距センサ90から取得された距離が所定の距離となった場合(S605→Yes)、センサ走行制御部120は走行を停止する(S605:図19(b))。
【0064】
なお、ステップS603について、本実施形態では後光電センサ80rが反射光を検知した直後に操舵輪40を操舵することを想定しているが、後光電センサ80rが反射光を検知してから、所定距離走行した後に操舵輪を操舵してもよい。
【0065】
(自車が斜めになっている場合におけるセンサ走行制御)
図22および図23は、コンベアに対し無人搬送車が斜めに接近した場合におけるセンサ走行制御の例を示す図である。なお、図22および図23の処理も、図20に示すアルゴリズムで可能である。
まず、センサ走行制御部120は、前方へクリープ走行しつつ、前光電センサ80fによる反射光の検知を取得し(図22(a))、さらに前方へクリープ走行することで、後光電センサ80rによる反射光の検知も取得する(図22(b))。なお、反射板11は、ガードレール用光反射体と同様の構造をしており、斜め方向から入射した光を、入射方向へ反射させることが可能である。
【0066】
両光電センサ80が反射光を検知すると、センサ走行制御部120は、測距センサ90による距離情報を基に無人搬送車1を横行させる。
例えば、図23(a)に示すように、後測距センサ90rによる距離が所定の距離内となっても、前測距センサ90fによる距離が未だ所定の距離内に入っていない場合、センサ走行制御部120は、後の走行輪50を停止し、操舵輪40を操舵しつつ、前の走行輪50のみを駆動することで、前測距センサ90fをコンベア12に接近させる。
やがて、前測距センサ90fが検出する距離も所定値内となったとき、センサ走行制御部120は、無人搬送車1を停止する(図23(b))。
このようにすることで、クリープ目的番地1504(図16)に位置している無人搬送車1がコンベア12に対し、斜めになっていても、無人搬送車1を正確にコンベア12に横付けすることができる。
【0067】
図22および図23では、無人搬送車1がコンベア12に対し斜めに接近した場合について記載しているが、逆にコンベア12が斜めに設置されている場合についても、図22および図23と同様の処理で無人搬送車1をコンベア12に横付けすることができる。
このようにすることで、例えば、図16に示すような補正値を設定後に、コンベア12の位置にズレが生じても、無人搬送車1をコンベア12に対し、正確に横付けすることができる。
【0068】
図24は、本実施形態の別の例を説明するための図である。
図24(a)に示すように、後光電センサ80rを前光電センサ80f寄りに設置し、前光電センサ80fと、後光電センサ80rの距離を短くし、両光電センサ80f、80rが反射板11からの反射光を検知したら、無人搬送車1を斜行させて、図24(b)に示すように、無人搬送車1をコンベア12に横付けするようにしてもよい。
【0069】
なお、本実施形態では、無人搬送車1がクリープ走行制御開始点に到達すると、無人搬送車1は、クリープ目的番地1504およびクリープ経路1503を生成し、クリープ目的番地1504に無人搬送車1が到達すると、クリープ目的番地1504へ向かうクリープ走行制御を行い、クリープ目的番地1504へ到達後(センサ走行を開始する位置である開始点」へ到達後)、センサ走行制御を行っているが、これに限らず、経路データ133による経路上の目的番地より手前の位置に、クリープ目的番地1504(センサ走行を開始する位置である開始点」)を予め設定しておくようにしてもよい。
【0070】
また、本実施形態では、番地を座標に変換しているが、これに限らず、座標情報のみで無人搬送車1の走行制御を行ってもよい。
【0071】
(まとめ)
本実施形態によれば、目的番地を座標で管理しているため、電線や反射テープなどのハードウェア的な走行制御で行われていた番地の指定を可能としつつ、電線や反射テープなど使用せずに無人搬送車1を自走させることができるとともに、コンベア12に対して精度の高い横付けが可能となる。
さらに、前座標および後座標で管理されるクリープ目的番地まで無人搬送車1を走行させ、粗補正を行った後、センサ走行制御で微調整を行うことにより、無人搬送車1を迅速にコンベア12に横付けすることができる。
さらに、クリープ目的番地を前座標および後座標で管理することにより、コンベア12がずれたり、曲がったりしている状態で設置されていても、無人搬送車1をコンベア12に沿った状態にしてから、センサ走行制御を行うことができるので、無人搬送車1を迅速にコンベア12に横付けすることができる。
また、操舵角θを算出し、操舵輪40を操舵角θで制御することにより、無人搬送車1が経路から外れていても、経路上に戻ることが可能となる。
【符号の説明】
【0072】
1 無人搬送車
2 ホストコンピュータ
3 運行管理コンピュータ
4 無線親局
5 ネットワーク
9 無人搬送システム
10 コントローラ
11 反射板
12 コンベア(対象物)
20 レーザ距離センサ
30 プログラマブルコントローラ
40 操舵輪
50 走行輪
70 無線子局
80 光電センサ(光検出センサ、センサ)
80f 前光電センサ(センサ)
80r 後光電センサ(センサ)
90 測距センサ(センサ)
90f 前測距センサ(センサ)
90r 後測距センサ(センサ)
110 プログラムメモリ
111 処理部(制御部)
112 座標変換部
113 データ取得部
114 計測データ取得部
115 マッチング部
116 位置推定部
117 走行経路決定部
118 走行制御部
119 クリープ走行制御部
120 センサ走行制御部(制御部)
130 データメモリ(記憶部)
131 計測データ
132 地図データ
133 経路データ(番地と座標の対応情報を含む)
1504 クリープ目的番地(開始点)
d 移動距離
da 実際の移動距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物から離れている際には、予め設定されている経路データに基づいて走行する経路データ走行を行い、前記対象物に近接した際には、自身が備えるセンサに基づいて走行するセンサ走行を開始して、前記対象物へアプローチする無人搬送車であって、
前記センサ走行を開始する位置である開始点か否かを判定し、前記開始点であると判定したときは、前記センサ走行に切り替えて前記対象物へアプローチする制御部
を有することを特徴とする無人搬送車。
【請求項2】
レーザ光を走査して周囲との距離を測距するレーザ距離センサを備え、前記制御部は、前記レーザ距離センサにより前記経路データ走行を行い、
前記センサとして、前記対象物との距離を測定可能な測距センサと、前記対象物に設置されている反射板へ信号光を照射し、前記反射板から反射した光を受光することによって前記対象物の存在を検知する光検出センサとを備え、前記制御部は、前記光検出センサと前記測距センサとにより前記センサ走行を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項3】
前記測距センサは、前記無人搬送車の側面前後に備えられており、
前記測距センサのうち、一方が測定した前記対象物との距離が、所定の距離以内であり、
他方が測定した前記対象物との距離が、所定の距離外である場合、
前記センサ走行制御部は、前記対象物との距離が所定の距離外である測距センサが、前記対象物に接近するよう前記無人搬送車を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の無人搬送車。
【請求項4】
レーザ光を走査して周囲との距離を測距するレーザ距離センサを備え、
前記制御部は、前記レーザ距離センサにより前記経路データ走行を行うとともに、前記レーザ距離センサを前記センサとして前記センサ走行を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項5】
前記処理部は、前記開始点を、前記経路データで設定されている経路よりも、前記対象物に近接した位置に生成する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の無人搬送車。
【請求項6】
前記開始点は、前記無人搬送車における所定の2点の座標で管理されている
ことを特徴とする請求項5に記載の無人搬送車。
【請求項7】
対象物から離れている際には、予め設定されている経路データに基づいて走行する経路データ走行を行い、前記対象物に近接した際には、自身が備えるセンサに基づいて走行するセンサ走行を開始して、前記対象物へアプローチする無人搬送車における走行制御方法であって、
前記無人搬送車は、
前記センサ走行を開始する位置である開始点か否かを判定し、
前記開始点であるときは、前記センサ走行に切り替えて前記対象物へアプローチする
ことを特徴とする走行制御方法。
【請求項8】
前記無人搬送車は、
レーザ光を走査して周囲との距離を測距するレーザ距離センサを備えるとともに、前記センサとして、前記対象物との距離を測定可能な測距センサと、前記対象物に設置されている反射板へ信号光を照射し、前記反射板から反射した光を受光することによって前記対象物の存在を検知する光検出センサとを備え、
前記無人搬送車は、
前記開始点までは、前記レーザ距離センサにより前記経路データ走行を行い、
前記開始点からは、前記測距センサと前記光検出センサとにより前記センサ走行を行う
ことを特徴とする請求項7に記載の走行制御方法。
【請求項9】
前記無人搬送車は、レーザ光を走査して周囲との距離を測距するレーザ距離センサを備え、
前記無人搬送車が、
前記開始点までは、前記レーザ距離センサによる経路データ走行を行い、
前記開始点以降は、前記レーザ距離センサを前記センサとして前記センサ走行を行う
ことを特徴とする請求項7に記載の走行制御方法。
【請求項10】
前記無人搬送車が、
前記開始点を、前記経路データで設定されている経路よりも、前記対象物に近接した位置に生成する
ことを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の走行制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2012−53837(P2012−53837A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197865(P2010−197865)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】