説明

無励磁作動型摩擦ブレーキ

【課題】 無励磁作動型摩擦ブレーキにおけるハブとブレーキディスクのスプライン係合より生ずる回転方向のバックラッシによる叩き音、特に正、 逆回転方式の場合におけるバックラッシを減少させること。
【解決手段】回転軸1に固着されたハブ12と、コイル11とコイルばね、フィールドコア8、プレート6、ハブ12の外周に固着された異方性部材と、ブレーキディスク63、アーマチュア5とを備え、前記異方性部材は、複数の層で形成されたリング状弾性体61と、これらの隣接する層の間に介在する補強材としての複数枚の薄板62と、リング状弾性体61の最内と最外の周面に設けられた保護板64、65とを備え、回転方向に対してばね常数が小であり、軸線方向には、ばね常数が大となり、これにより回転方向のバックラッシを零となるように構成したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無励磁作動型摩擦ブレーキの改良に関し、特に無励磁作動型摩擦ブレーキのハブとディスクのスプライン係合により生ずる回転方向のバックラッシによる叩き音、特に正、逆回転方式の場合におけるバックラッシを減少させるための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の無励磁作動型摩擦ブレーキの縦断面図を示すものであって、この図を参照して構造を説明する。
例えば、モータの回転軸1にハブ2がキー2aなどで固定され、ハブ2とスプラインSで係合するディスク3の両摩擦面4、4′が、それぞれ、アーマチュア5とプレート6とに接触する。
アーマチュア5は、ロックナットを兼ねるガイドスペーサ7に案内されて軸線方向の両側に動くようになっている。
一方、プレート6では皿穴6aは通常円周方向等分角の3個に係合され、図示しない皿頭ボルトによりフィールドコア8へ引き寄せられるが、 通常円周方向等分角に3個のボルト9の頭部9aに衝き当たって、アーマチュア5の移動量を定め、その位置に固定される。
さらにプレート6はボルト等により、例えばモータの本体等の固定体に取り付けられ、フィールドコア8には通常円周方向に等分角にされた3個のコイルばね10およびコイル11が設けられ、8a、8bは、それぞれフィールドコア8の外径側磁極と内径側磁極とである。
【0003】
作動について説明すると、コイル11に通電されない場合は、アーマチュア5がコイルばね10に押されて、 ディスク3をプレート6に対して押し付けて挟み込み、ディスク3の図で左方の摩擦面4と、その反対側の摩擦面4′の摩擦力によりディスク3、従って回転軸1の回転は制動されて停止する。
コイル11に通電されると、コイルばね10の力に抗して磁極8a、8bにアーマチュア5が引き付けられ、ディスク3は自由になるので回転軸1は自由に回転する。
【0004】
【特許文献1】特開平06−257629
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の無励磁作動型摩擦ブレーキは、部品点数もかなり少なくコンパクトで優れたブレーキ特性を有するが、ハブとブレーキディスクのスプライン係合より生ずる回転方向のバックラッシによる叩き音、特に正、 逆回転方式の場合におけるバックラッシを減少させることが本発明に課された課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、ハブとブレーキディスクをリング状弾性体を備えた異方性部材で一体化する構成とすることにより前記課題を解決した。
具体的には、請求項1に記載のように本発明に係る無励磁作動型摩擦ブレーキは、回転軸に固着されたハブと、コイルとコイルばねとを有し、前記ハブと軸方向の反対側の端部に配置されたフィールドコアと、ガイドスペーサを貫通して、前記フィールドコアの前記コイルおよび前記コイルばねより半径方向外方にねじ込まれたボルトの先端に固定されて、前記フィールドコアと一体化されたプレートと、前記ハブの外周に固着された異方性部材と、前記異方性部材の外周に固着され、前記フィールドコアと前記プレートとの軸方向の中間に配置されたブレーキディスクと、該ブレーキディスクと前記フィールドコアとの軸方向の中間に配置され、前記コイルが励磁された場合は、前記コイルばねに抗して前記フィールドコアに吸引されるアーマチュアとを備え、前記異方性部材は、複数の層で形成されたリング状弾性体と、これらの隣接する層の間に介在する補強材としての複数枚の薄板と、前記リング状弾性体の最内と最外の周面に設けられた保護板とを備え、回転方向に対してばね常数が小であり、軸線方向には、ばね常数が大となり、これにより回転方向のバックラッシを零にしたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載のように、前記異方性部材を構成するリング状弾性体は、単層で形成され、薄板に代え、補強材としてワイヤが使用され、回転方向のバックラッシを零とする構成にしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明による無励磁作動型摩擦ブレーキでは、上記のように、ハブとディスクをばね機能を有する異方性部材を構成するリング状弾性体で一体化することによりバックラッシが零になり、叩き音を全く無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の実施の形態:
本発明による無励磁作動型摩擦ブレーキの第1の実施の形態として本願の請求項1に記載された半体縦断面図を図1に示し、図1の異方性部材63aの断面拡大図を図2に示す。なお、従来例の図4に対応する部品には、図4と同じ符号を付して示している。
【0010】
図1に示すように、回転軸1に固定されたハブ12の外周に異方性部材63aが固着され、この異方性部材63aの外周にブレーキディスク63が固着されている。
また、フィールドコア8はハブ12と軸方向の反対側の端部に配置される。
フィールドコア8には、コイル11とコイルばね(図示せず)とが設けられている。
なお、コイルばねは、図1が上半分の半体縦断面図のため図示されていないが、図4の従来例の場合のコイルばね10の相当部分に配置されている。
プレート6は、ガイドスペーサ7を貫通するボルト9の頭部(先端)9aによりフィールドコア8と一体化されるように構成される。
なお、ボルト9は、図示のように、フィールドコア8のコイル11および前記コイルばねより半径方向外方に配置される。
【0011】
アーマチュア5は、 ロックナットを兼ねるガイドスペーサ7に案内されて軸線方向の両側に動くようになっている。アーマチュア5は、コイル11が無励磁のときは、フィールドコア8から図示のように離隔されているが、コイル11が励磁された場合は、前記コイルばねに抗してフィールドコア8に吸引される。
異方性部材63aは、上記のようにハブ12とブレーキディスク63の中間に固着され、ブレーキディスク63はフィールドコア8とプレート6との軸方向の中間に配置される。
なお、異方性部材63aは、図2に示されるようにゴム、プラスチック等により複数の層で形成されたリング状弾性体61と、これらの隣接する層の間に介在する補強材としての複数枚の薄板62と、リング状弾性体61の内、外周面に設けられた保護板64、65とを備え、回転方向に対してばね常数が小であり、軸線方向には、ばね常数が大となるよう構成されている。
このように構成すると、リング状弾性体61は、補強材としての複数枚の薄板62により補強され、さらに、リング状弾性体61の内、外周面には、それぞれ保護板64、65が装着されているので、回転方向に対してばね常数が小であり、軸線方向には、ばね常数が大で保護板64、65が、それぞれ、ハブ12とブレーキディスク63の中間に固着され、ハブ12とブレーキディスク63がリング状弾性体で一体化されて機能するので、回転方向のバックラッシは零になる。
第2の実施の形態:
【0012】
図3に、本発明の第2の実施の形態としての異方性部材63bの断面拡大図を示す。
第2の実施の形態では、図2に示した補強材としての薄板62の代わりに、ワイヤ62aが補強材として使用される点が相違し、それ以外は第1の実施の形態と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による無励磁作動型摩擦ブレーキの第1の実施の形態の半体縦断面図である。
【図2】図1に示す本発明の第1の実施の形態の異方性部材の断面拡大図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す異方性部材の断面拡大図である。
【図4】従来の無励磁作動型摩擦ブレーキの縦断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1:回転軸
5:アーマチュア
6:プレート
7:ガイドスペーサ
8:フィールドコア
9:ボルト
9a:ボルトの頭部(先端)
11:コイル
12:ハブ
61:リング状弾性体
62:薄板
62a:ワイヤ
63:ブレーキディスク
63a、63b:異方性部材
64、65:保護板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に固着されたハブと、
コイルとコイルばねとを有し、前記ハブと軸方向の反対側の端部に配置されたフィールドコアと、
ガイドスペーサを貫通して、前記フィールドコアの前記コイルおよび前記コイルばねより半径方向外方にねじ込まれたボルトの先端に固定されて、前記フィールドコアと一体化されたプレートと、
前記ハブの外周に固着された異方性部材と、
前記異方性部材の外周に固着され、前記フィールドコアと前記プレートとの軸方向の中間に配置されたブレーキディスクと、
該ブレーキディスクと前記フィールドコアとの軸方向の中間に配置され、前記コイルが励磁された場合は、前記コイルばねに抗して前記フィールドコアに吸引されるアーマチュアとを備え、
前記異方性部材は、複数の層で形成されたリング状弾性体と、これらの隣接する層の間に介在する補強材としての複数枚の薄板と、前記リング状弾性体の最内と最外の周面に設けられた保護板とを備え、回転方向に対してばね常数が小であり、軸線方向には、ばね常数が大となり、これにより回転方向のバックラッシを零にしたことを特徴とする無励磁作動型摩擦ブレーキ。
【請求項2】
前記異方性部材を構成するリング状弾性体は、単層で形成され、前記薄板に代え、補強材としてワイヤが使用され、回転方向のバックラッシを零にしたことを特徴とする請求項1に記載の無励磁作動型摩擦ブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−256217(P2008−256217A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176900(P2008−176900)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【分割の表示】特願平10−172066の分割
【原出願日】平成10年6月5日(1998.6.5)
【出願人】(000002059)神鋼電機株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】