説明

無段変速機用の動的制御装置

被駆動素子を有する無段変速機(30)を提供する。無段変速機はまた、第1の操作者入力装置の変位に対応する第1の変位信号を送信するように構成された第1の操作者入力装置(22)を有する。無段変速機はさらに、第2の操作者入力装置の変位に対応する第2の変位信号を送信するように構成された第2の操作者入力装置(24)を有する。さらに、無段変速機は変速機動作モード要求を送信するよう構成された第3の操作者入力装置(26)を有する。さらに、無段変速機は、変速機の動作条件を示す少なくとも1つのパラメータを感知するように構成された少なくとも1つのセンサー(46)を有する。さらに、無段変速機は、動作要求モード、第1の変位信号、第2の変位信号、および少なくとも1つの感知されたパラメータに基づいて被駆動素子出力要求を決定するように構成された制御装置(32)を有する。制御装置はまた、動作モード要求、被駆動素子出力要求、および少なくとも1つの感知されたパラメータに応答して被駆動素子の出力を規制するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は無段変速機用の制御装置に関し、より詳細には無段変速機の動的制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ホイールローダ、ブルドーザ、バックホー、ダンプカーおよび他の重機などの機械は多くのタスクを実行するために使用される。これらのタスクを効果的に実行するために、機械は変速装置を介し1つまたは複数の地面係合装置(ground engaging device)に大きなトルクを与えるエンジンを必要とする。しばしば、これらの機械はエンジン効率の増大のために無段変速機(CVT:continuously variable transmission)を利用する。
【0003】
CVTは、その変速比範囲内で無数の出力電圧比を与える自動式の変速機である。例えば、油圧式CVTはポンプとポンプから加圧流体を受け取る油圧モータとを含む。ポンプの排出流量と圧力に応じて、地面係合装置におけるモータ速度と出力トルクを変化させることができる。電気的CVTは発電機と発電機から電流を受け取る電動機とを含む。モータに供給される電流に応じて、モータ速度と出力トルクを変化させることができる。
【0004】
従来のCVTを制御するために用いられる装置の例は、1988年12月27日に森沢らに付与された(特許文献1)に記載されている。(特許文献1)に開示されている制御装置は、目標出力を維持するためにCVTの入力軸の速度を調節する速度ベースの装置である。CVTは、各動作モードが各動作モードに割り当てられた特有のマップを有する複数のモード(前進や後退など)で動作する。さらに、各マップは関連モードに対するCVTの入力軸の目標速度とエンジン出力との関係を示す。CVTを作動すると、制御装置はCVTがどのモードで動作しているかを判断し、そのモードに対して設計されたマップを選択する。次に、制御装置は所望のエンジン出力を達成するためにマップに従って入力軸の速度を調節する。
【0005】
(特許文献1)に開示された制御装置は複数の動作モードに対し所望のエンジン出力を生成することができるが、装置のアプリケーションは制限される。特に、各入力は1つのマップのみを呼び出すだけなので、利用可能なマップの種類の多様性はあまりない。このような低い多様性により、タスクの多様性と、変速機そして最終的にはその関連機械が動作することができる環境の多様性とが制限されることがある。
【0006】
本開示の装置は上に述べられた課題の1つまたは複数を克服することに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,793,217号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本開示は被駆動素子を含む無段変速機に関する。無段変速機はまた第1の操作者入力装置を含み、第1の操作者入力装置は第1の操作者入力装置の変位に対応する第1の変位信号を送信するように構成される。無段変速機はさらに第2の操作者入力装置を含み、第2の操作者入力装置は第2の操作者入力装置の変位に対応する第2の変位信号を送信するように構成される。無段変速機はさらに、変速機動作モード要求を送信するように構成された第3の操作者入力装置を含む。さらに、無段変速機は変速機の動作条件を示す少なくとも1つのパラメータを感知するように構成された少なくとも1つのセンサーを含む。さらに、無段変速機は、動作要求モード、第1の変位信号、第2の変位信号、および少なくとも1つの感知されたパラメータに基づき被駆動素子出力要求を決定するように構成された制御装置を含む。制御装置はまた、動作モード要求、被駆動素子出力要求、および少なくとも1つの感知されたパラメータに応答して被駆動素子の出力を規制するように構成される。
【0009】
本開示の別の態様によると、変速機を動作させるための方法が提供される。本方法は、動作モード要求を受信する工程と、第1および第2の操作者入力装置変位信号を受信する工程と、変速機の動作条件を示す少なくとも1つのパラメータを感知する工程とを含む。本方法はまた、動作モード要求、第1の操作者入力装置変位信号、第2の操作者入力装置変位信号および少なくとも1つのパラメータに応答して変速機出力要求を決定する工程を含む。本方法はさらに、動作モード要求、決定された変速機出力要求および少なくとも1つのパラメータに応答して変速機の出力を制御する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】例示的な開示された機械の概略図である。
【図2】図1の機械と共に使用する例示的な開示された操作室の絵図である。
【図3】図2の操作室と共に使用する例示的な開示された制御装置の概略図である。
【図4】図3の制御装置と共に使用する例示的な開示された制御マップである。
【図5】図3の制御装置と共に使用する例示的な開示された制御マップである。
【図6】図3の制御装置と共に使用する例示的な開示された制御マップである。
【図7】図3の制御装置と共に使用する例示的な開示された制御マップである。
【図8】図3の制御装置を操作する例示的な方法を示すフローチャートである。
【図9】図3の制御装置と共に使用する例示的な開示された制御マップである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1には、タスクを達成するように協働する多数の装置と部品を有する例示的な機械10を示す。機械10により実行されるタスクは、採鉱、建設、農業、輸送、発電等の特定の業界、あるいは当該技術分野で公知の他の任意の業界に関係してよい。例えば、機械10は、図1に示されたホイールローダなどの可動機械、バス、ハイウェー運搬トラック、あるいは当該技術分野で公知の他の任意の種類の可動機械を具現化することができる。機械10は、操作室12、1つまたは複数の牽引装置14、および少なくとも1つの牽引装置14を駆動するように作動可能に接続されたパワートレーン16を含み得る。
【0012】
図2に示すように、操作室12は所望の機械走行操作を示す機械操作者からの入力を受信する装置を含み得る。具体的には、操作室12は、操作席20の近くに位置する1つまたは複数の操作者インタフェース装置18を含み得る。操作者インタフェース装置18は、所望の機械操作を示す変位信号を生成することにより機械10の移動を開始することができる。一実施形態では、操作者インタフェース装置18は左フットペダル22、右フットペダル24、および前進/ニュートラル/後退(FNR:forward−neutral−reverse)セレクタ26を含み得る。操作者が左フットペダル22および/または右フットペダル24を操作する(すなわち、左および/または右フットペダル22、24をニュートラル位置から変位させる)と、操作者は対応する機械走行運動を予想しかつ影響を与えることができる。さらに、操作者がFNRセレクタ26を前進、後退、またはニュートラル位置に動かすと、操作者は対応する変速機動作モード(前進、後退、アイドルなど)に影響を与えることができる。必要に応じて例えばジョイスティック、レバー、スイッチ、ノブ、ハンドル、および当該技術分野で公知の他の装置などのフットペダル以外の操作者インタフェース装置が追加的または代替的に、機械10の走行制御のために操作室12内に設けられてもよいと考えられる。さらに、FNRセレクタ26は省略されてもよく、他の操作者入力装置が変速機動作モードに影響を与えてもよい。
【0013】
牽引装置14(図1を参照)は機械10の側部に位置する車輪を具現化することができる(片側だけを示す)。あるいは、牽引装置14としては、トラック、ベルトまたは他の公知の牽引装置が挙げられる。機械10上の任意の組み合わせの車輪を駆動および/または操縦することができると考えられる。
【0014】
図3に示すように、パワートレーン16は電力を生成して牽引装置14へ送るように構成された一体式のパッケージであってよい。特に、パワートレーン16は、電力出力を生成するように動作可能な電源28と、電力出力を受け取りこの電力出力を牽引装置14(図1を参照)へ有用なやり方で送るように接続された変速ユニット30と、1つまたは複数の入力に応答して変速ユニット30の動作を規制するように構成された制御モジュール32とを含み得る。
【0015】
電源28は、機械的出力または電力出力を生成するように協働する複数のサブシステムを有する内燃エンジンを含み得る。本開示の目的のために、電源28は4サイクルディーゼルエンジンとして描写され説明される。しかしながら電源28は例えばガソリンまたは気体燃料駆動エンジンなどの他の任意の種類の内燃エンジンであってもよいことを当業者は認識するであろう。電源28内に含まれるサブシステムは例えば燃料装置、空気導入装置、排気装置、潤滑装置、冷却装置、または他の任意の適切な装置を含み得る。
【0016】
センサー34はその出力速度を感知するために電源28に関連付けられてもよい。1つの例では、センサー34は、クランク軸またはフライホイールなどのパワートレーン16の回転部品内に埋込まれた磁石に関連付けられた磁気ピックアップタイプのセンサーを具現化することができる。電源28の動作中、センサー34は磁石により生成される回転磁界を感知して電源28の回転速度に対応する信号を生成することができる。
【0017】
変速ユニット30は例えば無段変速機(CVT)を具現化することができる。変速ユニット30は例えば油圧式CVT、油圧機械式CVT、電気式CVT、あるいは当業者にとって明らかな他の構成等の任意の種類の無段変速機であってもよい。さらに、変速ユニット30は駆動素子36と被駆動素子38を含み得る。
【0018】
図3の例示的な電気式CVTでは、駆動素子36は三相永久磁石交番磁界発電機などの発電機であってよく、被駆動素子38は駆動素子36から電力を受け取るように構成された永久磁石交番磁界タイプモータなどの電動機であってよい。駆動素子36の発電機は、被駆動素子38に向けられたトルク命令に応答して、電力用エレクトロニクス装置40を介した電流により被駆動素子38のモータを駆動するように接続され得る。場合によっては、被駆動素子34のモータはあるいは電力用エレクトロニクス装置40を介し駆動素子36の発電機を逆方向に駆動することができる。油圧式無段変速機ユニットを利用するいくつかの実施形態では、駆動素子36は可変容量型ポンプなどのポンプであってよく、被駆動素子38は可変容量形モータなどのモータであってよいと考えられる。被駆動素子38は、駆動素子36と被駆動素子38に流体を供給したり戻したりする導管により駆動素子36に流体連結されてよく、駆動素子36が流体圧力により効果的に被駆動素子38を駆動できるようにする。
【0019】
電力用エレクトロニクス装置40は発電機関連部品とモータ関連部品を含み得る。例えば、電力用エレクトロニクス装置40は三相交流電力を直相電力(direct phase power)に反転する(および逆もまた同様)ように構成された1つまたは複数の駆動インバータ(図示せず)を含み得る。駆動インバータは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)と、マイクロプロセッサと、キャパシタと、メモリ装置と、駆動素子36と被駆動素子38を動作させるために使用される他の任意の同様の素子とを含む様々な電気的素子を有してよい。駆動インバータに関連付けられる他の部品としては、数ある中でも、電源回路、信号処理回路、ソレノイド駆動回路が挙げられる。さらに、電力用エレクトロニクス装置40は、駆動素子36および被駆動素子38と連通する発電機ヒートシンク(図示せず)とモータヒートシンク(図示せず)をそれぞれ含み得る。各ヒートシンクは電力用エレクトロニクス装置40のそれぞれの部品から熱を吸収しこの熱を冷却装置(図示せず)に伝えることができる。
【0020】
変速ユニット30は左右フットペダル22、24により少なくとも部分的に制御され得る。すなわち、左右フットペダル22、24は操作者により操作されると、これらのフットペダルは例えば所望のトルク出力および/または所望の速度限界などの所望の被駆動素子出力を意味する電気信号を供給することができる。例えば、左右フットペダル22、24は最小位置を有し、ある範囲の位置を通って最大位置まで移動可能であってよい。センサー42、44は、変位位置を感知するとともに移動された位置に応答して対応する信号を生成するように左右フットペダル22、24のそれぞれに関連してそれぞれ設けられ得る。センサー42、44は、例えばスイッチまたは電位差計など、フットペダル42、44の変位を感知することができる任意のセンサーであってよい。センサー42、44のそれぞれからの変位信号は、被駆動素子38のトルク出力を制御するために、制御モジュール32を介し変速ユニット30に向けられてよい。
【0021】
センサー46は機械10の走行速度を感知するために変速ユニット30および/または牽引装置14(図1を参照)に関連付けられてもよい。1つの例では、センサー46は、変速機出力軸等のパワートレーン16の回転部品内に埋込まれた磁石に関連付けられた磁気ピックアップタイプのセンサーを具現化することができる。機械10の動作中、センサー46は、磁石により生成される回転磁界を感知し、変速ユニット30の回転速度および/または機械10の対応する走行速度に対応する信号を生成することができる。
【0022】
制御モジュール32は、受信信号に応答してパワートレーン16の動作を制御するための単一のマイクロプロセッサまたは複数のマイクロプロセッサを具現化することができる。多数の市販マイクロプロセッサが制御モジュール32の機能を行うように構成され得る。制御モジュール32は多数の機械の機能を制御可能な汎用機械マイクロプロセッサを容易に具現化できるということを理解すべきである。制御モジュール32は、メモリ、2次記憶装置、プロセッサ、およびアプリケーションを実行するための他の任意の部品を含み得る。電源回路、信号処理回路、ソレノイド駆動回路、および他のタイプの回路などの様々な他の回路が制御モジュール32に関連付けられてもよい。
【0023】
複数の基本制御マップが制御モジュール32のメモリ内に蓄積され、変速機動作モードに基づいてグループ化され得る。例えば、基本制御マップは前進、ニュートラル、および後退グループに分割され得る。このようなグループはFNRセレクタ26の位置を示す信号に応答して選択され得る。さらに、各基本マップは複数のサブマップを含み得る。これらの基本マップおよびサブマップのそれぞれは表、グラフ、および/または数式の形式であってよく、そして実験室および/またはパワートレーン16の現場操作から集められたデータを纏めたものを含んでもよい。
【0024】
図4には、複数のサブマップを有する例示的な前進ベース制御マップ48(FNRセレクタ26が前進位置に設定された場合に制御モジュール32により利用される)を示す。前進ベース制御マップ48は、機械10の前進推進力を制御する推進サブマップ50と、前進推進力を抑制する抑制サブマップ52と、機械10の後退速度を制御する方向転換サブマップ54とを含み得る。さらに、各サブマップは、機械速度または速度伝達比のいずれかを表すX軸(独立軸)と、変速機出力またはトルク要求のいずれかを表すY軸(従属軸)を有することができる。各サブマップはトルクの限界、機械速度、および/または推進力を含んでよいと考えられる。例えば、推進サブマップ50は最大トルク限界56と最大速度限界58を含み得る。さらに、抑制サブマップ52は最大減速力限界60、最大速度限界62、および最大惰行減速力64を含み得る。さらに、方向転換サブマップ54は最大トルク限界66を含み得る。トルク、機械速度および推進力に対する限界が連続的な曲線または線として図示されるが限界は不連続であってもよいということを理解すべきである。さらに、各サブマップは、必要に応じて、図4に示されない追加の限界を含んでよいと考えられる。
【0025】
図5には、複数のサブマップを有する例示的な後退ベース基本制御マップ68(FNRセレクタ26が反対位置に設定された場合に制御モジュール32により利用される)を示す。後退ベース制御マップ68は、機械10の後退推進力を制御する推進サブマップ70と、後退推進力を抑制する抑制サブマップ72と、機械10の後退速度を制御する方向転換サブマップ74とを含み得る。前進サブマップと同様に、各後退サブマップは、機械速度または速度伝達比のいずれかを表すX軸(独立軸)と、変速機出力またはトルク要求のいずれかを表すY軸(従属軸)を有することができる。さらに、各サブマップはトルクの限界、機械速度、および/または推進力を含んでよいと考えられる。例えば、推進サブマップ70は最大トルク限界76と最大速度限界78を含んでよい。さらに、抑制サブマップ72は最大減速力限界80、最大速度限界82、および最大惰行減速力84を含み得る。さらに、方向転換サブマップ74は最大トルク限界86を含み得る。トルク、機械速度および推進力に対する限界は連続的な曲線または線として図示されるが限界は不連続であってもよいということを理解すべきである。さらに、各サブマップは、必要に応じて、図5に示されない追加の限界を含んでよいと考えられる。
【0026】
例えば、最大トルク限界56、最大惰行減速力64、最大トルク限界66、最大トルク限界76、最大惰行減速力84、および最大トルク限界86などのY軸上に表される従属変数がシフトおよび/またはスケーリングされるように、制御モジュール32のメモリに蓄積された基本制御マップが修正され得る。このような修正は、様々なアルゴリズム、マップ、チャート、および/またはグラフに適用される総変位値に基づいてよい。総変位値は、制御モジュール32のメモリに蓄積された複数の総変位マップのうちの1つから決定され得る。これらの総変位マップのそれぞれは、表、グラフおよび/または数式の形式であってよく、そして実験室および/またはパワートレーン16の現場操作から集められたデータを纏めたものを含んでもよい。
【0027】
図6と図7には、例示的な総変位マップ88、90をそれぞれ示す。これらのマップのそれぞれでは、左ペダル変位は、様々な右ペダル変位曲線と共に、総変位値を決定するために使用され得る1つの座標軸を形成することができる。制御モジュール32のメモリに蓄積される総変位マップは様々な方法で変更され得る。例えば、右ペダル変位曲線の形状は線形または非線形のいずれかであってよい。さらに、種々の総変位マップはY軸上の異なる場所で右ペダル曲線を終端することができる。さらに、総変位マップは、任意の左ペダル変位値に位置し得る調整可能点92を含み得る。このような変形は操作者入力に対し種々の応答を生成することができる。例えば、左ペダル22の変位により生成された減速信号が右ペダル24の変位により生成された推進信号に等しい場合、総変位マップは、零の大きさ(零の総変位値)を有するトルク出力を要求するトルク要求信号を生成することができる。総変位マップ88を参照すると、零の総変位値を生成するために必要とされる左ペダル22の変位は右ペダル24の変位とは無関係であってよい。あるいは、総変位マップ90を参照すると、零の総変位値を生成するために必要とされる左ペダル22の変位は右ペダル24の変位が増加するにつれて増加し得る。
【0028】
各総変位マップは1つまたは複数のサブマップに関連付けられてもよい。例えば、総変位マップ88はサブマップ50、52に関連付けられてよく、最大トルク限界56と最大惰行減速力64をシフトおよび/またはスケーリングするために使用されてもよい。さらに、総変位マップ88から決定される総変位値は、様々なアルゴリズム、マップ、チャート、および/またはグラフに適用されてもよく、そして制御モジュール32がサブマップ50または52内の制御経路に従っている場合に変速ユニット30のトルクまたは速度出力を規制するために使用されてもよい。あるいは、総変位マップ90はサブマップ54に関連付けられてよく、そして最大トルク限界66をシフトおよび/またはスケーリングするために使用されてもよい。さらに、総変位マップ90から決定される総変位値は、様々なアルゴリズム、マップ、チャート、および/またはグラフに適用されてよく、そして制御モジュール32がサブマップ54内の制御経路に従っている場合に変速ユニット30のトルクまたは速度出力を規制するために使用されてもよい。
【0029】
図8、9には、変速ユニット30の出力を制御する例示的な方法を示す。特に、図8は、異なる操作者動作に応答して変速ユニット32を制御するための適切なサブマップを選択し修正する例示的な方法を表すフローチャートである。さらに、図9は、適切なサブマップが選択され修正された時点で操作者要求が取ることができる例示的な経路を示すグラフ表示である。図8と図9については、開示された装置とその動作をよりうまく説明するために以下の章でさらに検討する。
【産業上の利用可能性】
【0030】
開示された制御装置はトルク制御CVTを有する任意の車両に適用可能である。特に、複数の入力に応答して、複数の基本制御マップから特定の基本制御マップをそして複数のサブマップから特定のサブマップを選択することにより、制御装置は、変速機が様々な環境および車両状態下で従うことができる所望トルク出力を効率的かつ正確に決定することができる。出力要求に対する基本制御マップ、関連マップ、およびそれに続く制御経路の選択については後述する。
【0031】
図8に示すように、制御モジュール32が操作者から受信した入力信号に従って適切な基本マップを選択すると、本方法を開始することができる(工程200)。操作者がFNRセレクタ26を所望位置に設定するとこのような信号を生成することができる。例えば、操作者がFNRセレクタ26を前進位置に設定すると、前進位置を示す信号はFNRセレクタ26から制御モジュール32に無線でまたは通信回線を介し送信され得る。信号を受信すると、制御モジュール32は前進ベース制御マップ48を選択することができる。基本制御マップの選択は必要に応じて操作者入力と無関係に行われてよいと考えられる。このような実施形態では、制御モジュール32は、例えばエンジン副軸回転の方向、牽引装置14の回転方向、あるいは車の運動の方向またはアイドル状態を示す他の任意のパラメータなどの他の入力要素に基づき基本制御マップを選択することができる。
【0032】
基本制御マップが選択された後、制御モジュール32は複数のソースから入力を受信することができる(工程202)。このような入力としては、センサー42を介し受信された左フットペダル22の変位、センサー44を介し受信された右フットペダル24の変位、センサー34を介し受信された電源28の出力速度、およびセンサー46を介し受信された変速ユニット30の出力速度/機械10の移動速度が挙げられる。
【0033】
入力を受信後、制御モジュール32は、選択された基本マップと受信入力に基づいて適切なサブマップを選択することができる(工程204)。例えば、基本マップ48が選択されると、サブマップ50、52、54は基本マップ48に唯一関連するサブマップであるので適切なサブマップはサブマップ50、52、54の1つであってよい。制御モジュール32は、上記のサブマップのどれが機械10の現在の状態に適切であるかを判断するために受信入力を参照することができる。例えば、機械10が正の速度で現在走行し変速ユニット30が負のトルクを生成している場合、制御モジュール32はサブマップ52を選択することができる。あるいは、機械10が停止しており、かつ変速ユニット30が零トルクを生成している場合、制御モジュールは左ペダル22または右ペダル24の変位を参照することができる。右ペダル24が変位されると、制御モジュール32はサブマップ50を選択することができる。左ペダル22が変位されると、制御モジュール32はサブマップ52を選択することができる。必要に応じて、適切なサブマップを決定する際に他の入力源に依存してもよいと考えられる。
【0034】
適切なサブマップの選択後、制御モジュール32は適切な総変位マップを選択することができる(工程206)。特に、各サブマップは特定の総変位マップに関連付けられるので、選択されたサブマップに基づき適切な総変位マップを選択することができる。例えば、サブマップ50または52のいずれかが選択されると、両方のサブマップは総変位マップ88に関連付けられるので総変位マップ88を選択することができる。
【0035】
適切な総変位マップが選択されると、左右フットペダルの変位を示すセンサー42、44からの信号はそれぞれ総変位値を決定するために使用され得る(工程208)。すなわち、センサー42、44から変位信号を受信すると、制御モジュール32は(サブマップ50または52のいずれかが選択されている場合)総変位マップ88を参照し、対応する総変位値を選択することができる。例えば、機械10の操作者が、右ペダル24を右ペダル24のニュートラル位置から最大位置に向かう距離の約70%だけ押し下げ、そして左ペダル22を左ペダル22のニュートラル位置から最大位置に向かう距離の約30%だけ押し下げると、左右ペダル値はそれぞれ約0.7、0.3となるであろう。図6の制御マップの水平軸に沿って0.7に対応する右ペダル曲線を0.3の交点までたどると、垂直軸から総変位値を0.4と取ることができる。
【0036】
総変位値の決定後、選択されたサブマップは修正され得る(工程210)。例えば、サブマップに関連する最大トルク限界を増加または減少させることができる決定された総変位値は、アルゴリズム、チャート、および/またはグラフに適用されてもよい。サブマップが修正された後、制御モジュール32は変速ユニット30がたどり得る所望の制御経路を決定することができる(工程212)。
【0037】
図9には、上に開示された方法を実行した後に選択され得る例示的な制御マップを示す。本例では、機械10は停止してよく、制御モジュール32は上に開示された方法に従ってサブマップ50と総変位マップ88を選択することができる。さらに、総変位マップ88は、機械10を前進方向に推進するという願望を示す正の総変位値を生成することができる。
【0038】
制御モジュール32は、トルク出力要求を決定するために、総変位値をアルゴリズム、マップ、チャート、および/またはグラフに適用することができる。トルク出力要求の受信後、制御モジュール32は変速ユニット30のトルク出力を増加させてもよい。トルクを増加させながら、制御モジュール32はトルク出力と最大トルク限界56と(総変位値に応答してあらかじめシフトおよび/またはスケーリングされてもよい)を連続的に比較することができる。変速機30の出力トルクが最大トルク限界56未満の場合、制御モジュール32は、総変位値により生成されたトルク出力要求に基づいてトルク出力を増加させ続けることができる。出力トルクが最大トルク限界56に等しい場合、制御モジュール32は出力トルクの現在の大きさを維持することができる。
【0039】
出力トルクを一定レベルに維持しながら、制御モジュール32は機械10の速度と最大速度限界58とを連続的に比較することができる。機械10の速度が最大速度限界58未満の場合、制御モジュール32は出力トルクの大きさを維持することができる。しかしながら、機械10の速度が最大速度限界58に等しい場合、制御モジュール32は機械10の速度を最大速度限界58で維持するために出力トルクを減らすことができる。最大トルク限界56と同様、最大速度限界58は操作者インタフェース装置18からの入力に応答してシフトまたはしスケーリングされてもよいし、あるいは制御戦略アルゴリズムに組み込まれてもよい。
【0040】
開示された制御装置は基本制御マップとサブマップの所望の組み合わせを決定するために複数の入力を解釈することができるので、制御装置の柔軟性を増すことができる。さらに、所望の制御経路を生成するために制御マップの組み合わせを使用することにより、利用可能マップの数を越えて制御経路の数を増加させることができ、装置の柔軟性を増すことができる。このような柔軟性は、変速機そして最終的には関連する機械を使用することができる環境とアプリケーションの多様性を増すことができる。
【0041】
開示された制御装置に対し様々な修正と変形をなし得ることは当業者に明らかであろう。他の実施形態は、開示された装置の本明細書および実施の考察から当業者にとって明らかであろう。本明細書と例は単なる例示的なものであって、真の範囲は以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物により示されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動素子(38)と、
第1の操作者入力装置の変位に対応する第1の変位信号を送信するように構成された第1の操作者入力装置(22)と、
第2の操作者入力装置の変位に対応する第2の変位信号を送信するように構成された第2の操作者入力装置(24)と、
変速機動作モード要求を送信するように構成された第3の操作者入力装置(26)と、
変速機の動作条件を示す少なくとも1つのパラメータを感知するように構成された少なくとも1つのセンサー(46)と、
動作要求モード、第1の変位信号、第2の変位信号および少なくとも1つの感知されたパラメータに基づいて被駆動素子出力要求を決定するとともに、動作モード要求、被駆動素子出力要求および少なくとも1つの感知されたパラメータに応答して被駆動素子の出力を規制するように構成された制御装置(32)と
を含む無段変速機(30)。
【請求項2】
制御装置はそのメモリに蓄積された複数の基本マップ(48、68)を含み、それぞれの基本マップは変速機の動作モードに関係するとともに複数のサブマップ(50、52、54、70、72、74)を含む、請求項1に記載の無段変速機。
【請求項3】
制御装置は、変速機モード要求に応答して基本マップを選択するとともに、被駆動素子出力要求と変速機の動作条件を示す少なくとも1つの感知されたパラメータとに応答してサブマップを選択するように構成される、請求項2に記載の無段変速機。
【請求項4】
制御装置は、複数のサブマップの1つと、第1の操作者入力装置の変位と第2の操作者入力装置の変位間の複数の関係(88、90)の1つとに基づいて総変位値を生成するように構成される、請求項3に記載の無段変速機。
【請求項5】
第1の操作者入力装置の変位と第2の操作者入力装置の変位間の関係のそれぞれは1つまたは複数のサブマップに関連付けられる、請求項4に記載の無段変速機。
【請求項6】
各サブマップは、被駆動素子出力を制限する少なくとも1つの制限曲線を含み、制御装置は総変位値に基づいて各制限曲線を修正するように構成される、請求項5に記載の無段変速機。
【請求項7】
動作モード要求を受信する工程と、
第1の操作者入力装置変位信号を受信する工程と、
第2の操作者入力装置変位信号を受信する工程と、
変速機の動作条件を示す少なくとも1つのパラメータを感知する工程と、
動作モード要求、第1の操作者入力装置変位信号、第2の操作者入力装置変位信号、および少なくとも1つのパラメータに応答して変速機出力要求を決定する工程と、
動作モード要求、決定された変速機出力要求、および少なくとも1つのパラメータに応答して変速機の出力を制御する工程と
を含む変速機(30)の操作方法。
【請求項8】
動作モード要求と、第1の操作者入力装置変位信号と第2の操作者入力装置変位信号間の1つまたは複数の関係(88、90)とに基づいて総変位値を生成する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
総変位値に基づいて変速機出力要求を決定する工程と、総変位値に基づいて変速機出力を制限する工程とをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
電力出力を生成するように構成される電源(28)と、
機械を推進するように構成される少なくとも1つの牽引装置(14)と、
所望の機械運動を示す操作者からの入力を受信するように構成された操作室(12)と、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の無段変速機と
を含む機械(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−505527(P2011−505527A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535993(P2010−535993)
【出願日】平成20年11月24日(2008.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/013081
【国際公開番号】WO2009/070269
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】