説明

無端ベルト及びその製造方法、並びに、画像形成装置

【課題】簡易にしかも強固な接着力を持ち、剥がれを抑制した補強部材を有する無端ベルト及びその製造方法、並びに、それを有する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】ベルト本体110と、ベルト本体110の側縁に沿ってベルト本体110内周面の片端部に配設されたリブ部材120と、ベルト本体110の側縁に沿ってベルト本体110外周面の片端部(ベルト軸方向の片端部)に配設された補強テープ130(補強部材)と、を含んで構成している。ベルト本体110は第1の樹脂皮膜から構成される一方で、補強テープ130は第2の樹脂皮膜で構成されている。そして、ベルト本体110と補強テープとは、即ち第1の樹脂皮膜と第2の樹脂皮膜とは、第1及び第2の樹脂皮膜以外の成分が介在することなく直接接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端ベルト及びその製造方法、並びに、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、感光体、帯電手段、転写手段及び定着手段には、金属やプラスチック、又はゴム製の回転体が使用されているが、機器の小型化あるいは高性能化のために、これら回転体は変形可能なものが望ましい場合があり、それには肉厚が薄い樹脂フィルムからなるベルトが用いられる。この場合、ベルトに継ぎ目(シーム)があると、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じるので、継ぎ目がない無端ベルトが望ましく用いられる。上記無端ベルトの材料としては、強度や寸法安定性、耐熱性等の面でポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の皮膜形成樹脂が望ましく用いられる(以下、ポリイミドは「PI」、ポリアミドイミドは「PAI」と略す)。
【0003】
ところで、無端ベルトを中間転写ベルトや用紙搬送ベルト等として使用する場合、無端ベルトが直進走行せず、片寄りや蛇行が発生することがある。また、無端ベルトが端部から割れたり裂けたりすることもある。これらの発生を防止するため、無端ベルトの端部の内面側に蛇行防止部材(いわゆるリブ)、外面側に補強テープを設けることが知られている(特許文献1、2参照)。補強テープとしては、無端ベルトの端部外面に貼り付けるのが簡単なため、一般的に粘着テープが多用されている。この場合、無端ベルトと粘着テープの間には、粘着材が介在している。
【0004】
また、無端ベルトの使用中における補強テープの剥がれを防止する目的で、補強テープの接着力を向上させる接着方法として、接着剤を使用して貼り付ける方法のほか、補強テープが熱可塑性樹脂からなる場合には、これを熱圧着する方法(特許文献3参照)、補強テープの先端同士を融着によって接合する方法(特許文献4参照)、等が提案されている。また、特許文献5記載のように、ベルト端部を樹脂で被覆して補強する方法も提案されている。
【特許文献1】特開平4−333456号公報
【特許文献2】特開2000−337464号公報
【特許文献3】特開平5−345369号公報
【特許文献4】特許第3649270号明細書
【特許文献5】特開平7−334011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、簡易にしかも強固な接着力を持ち、剥がれを抑制した補強部材を有する無端ベルト及びその製造方法、並びに、それを有する画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
第1の樹脂皮膜からなるベルト本体と、
前記ベルト本体の外周面の少なくとも片側の側縁に沿って帯状に設けられ、第2の樹脂皮膜からなる補強部材と、
を有し、
前記ベルト本体と前記補強部材とが、前記第1及び第2の樹脂皮膜以外の成分が介在することなく直接接合されていることを特徴とする無端ベルトである。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記第2の樹脂皮膜が、前記第1の樹脂皮膜と同種の樹脂皮膜であることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトである。
【0008】
請求項3に係る発明は、
芯体の外周面に、第1の皮膜形成樹脂溶液を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記第1の皮膜形成樹脂溶液の塗膜を、乾燥させて第1の乾燥塗膜を形成する工程と、
前記第1の乾燥塗膜の外周面の少なくとも片側の側縁に沿って、第2の樹脂皮膜又は加熱により第2の樹脂皮膜となる第2の乾燥塗膜を帯状に貼り付ける工程と、
前記第2の樹脂皮膜又は前記第2の乾燥塗膜が貼り付けられた前記第1の乾燥塗膜を加熱して、前記第2の樹脂皮膜が設けられた第1の樹脂皮膜を形成する工程と、
前記第2の樹脂皮膜が設けられた前記第1の樹脂皮膜を前記芯体から取り外す工程と、
を有することを特徴とする無端ベルトの製造方法である。
【0009】
請求項4に係る発明は、
前記第1の乾燥塗膜及び前記第2の乾燥塗膜が、強度を保持できる程度の状態にまで乾燥されてなることを特徴とする請求項3に記載の無端ベルトの製造方法である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、
前記第2の樹脂皮膜が、前記第1の樹脂皮膜と同種の樹脂皮膜であることを特徴とする請求項3に記載の無端ベルトの製造方法である。
【0011】
請求項6に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像をトナー像として現像する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する定着手段と、
を備え、
前記像保持体、前記帯電手段、前記転写手段、及び前記定着手段の少なくとも1つが、請求項1又は2に記載の無端ベルトを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易にしかも強固な接着力を持ち、剥がれを抑制した補強部材を有する無端ベルト及びその製造方法、並びに、それを有する画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同一の機能・作用を有する部材には全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0014】
(無端ベルト)
図1は、実施形態に係る無端ベルトを示す斜視図である。
【0015】
実施形態に係る無端ベルト100は、図1に示すように、ベルト本体110と、ベルト本体110の側縁に沿ってベルト本体110内周面の片端部(ベルト軸方向の片端部)に配設されたリブ部材120(蛇行防止部材)と、ベルト本体110の側縁に沿ってベルト本体110外周面の片端部(ベルト軸方向の片端部)に配設された補強テープ130(補強部材)と、を含んで構成している。
【0016】
ベルト本体110は第1の樹脂皮膜から構成される一方で、補強テープ130は第2の樹脂皮膜で構成されている。そして、ベルト本体110と補強テープとは、即ち第1の樹脂皮膜と第2の樹脂皮膜とは、第1及び第2の樹脂皮膜以外の成分が介在することなく直接接合されている。つまり、ベルト本体110と補強テープとは、即ち第1の樹脂皮膜と第2の樹脂皮膜とは、接着層等を介さず、一体的に形成されてなる。
【0017】
第1の樹脂皮膜と第2の樹脂皮膜とは、同じ耐熱性を有する材料で構成されていれば、同種の樹脂皮膜であってもよいし、異なる樹脂皮膜であってもよいが、接合強度が向上する点から、同種の樹脂皮膜であることがよい。ここで、樹脂皮膜が同種とは、樹脂の種類が同じであることを意味する。但し、本実施形態では、同じ樹脂の種類のうち、単量体種やその量比が異なるものも同種の範疇とするが、第1の樹脂皮膜と第2の樹脂皮膜とは、単量体種も同一の樹脂種であることがよい。
【0018】
ベルト本体110は環状であれば、つなぎ目があってもなくてもよい。無端ベルトの厚さは、通常、0.02mm以上0.2mm以下程度が望ましく、より望ましくは0.06mm以上0.1mm以下程度である。
【0019】
リブ部材120は、図1に示すように、ベルト本体110の軸方向における少なくとも片側縁部の内周面(ベルトの幅方向における少なくとも片側縁部の内周面)に、当該ベルト本体110の周方向に沿って全周に渡り帯状に連続して、且つベルト本体110の内周面から突出するように配設されている。
【0020】
リブ部材120は、例えば、その端面がベルト本体110の一端面(ベルト本体110軸方向外側の一端面)と所定の間隙を持って配設されている。リブ部材120の配設位置(接着位置即ち、ベルト本体側縁からの距離)は、無端ベルトの用途、機能、無端ベルトを用いる装置等に応じて設定される。なお、本実施形態では、リブ部材120は、その端面がベルト本体110の幅方向端面と面一で設けてもよい。
【0021】
補強テープ130は、図1に示すように、ベルト本体110の少なくとも片端部(ベルト軸方向の片端部)の外周面に、ベルト本体110の周方向に沿って巻き付けられて配設されている。補強テープ130は、例えば、その端面がベルト本体110の一端面(ベルト本体110軸方向外側の一端面)と面一となるように配設されている。本実施形態では、補強テープ130は、その端面がベルト本体110の幅方向端面と面一で設けているが、補強テープ130の配設位置(接着位置即ち、ベルト本体側縁からの距離)は、無端ベルトの用途、機能、無端ベルトを用いる装置等に応じて設定される。
【0022】
補強テープ130の幅は、耐久性等の点から、4mm以上15mm以下程度が望ましく、特に5mm以上10mm以下が望ましい。厚みは、特に制限されないが、耐久性等の点から、25μm以上200μm以下程度が望ましく、特に50μm以上100μm以下が望ましい。
【0023】
なお、リブ部材120と補強テープ130とは、ベルト本体110の片方の側縁に設けるのみでもよいが、さらなる蛇行防止効果、耐久性及び補強効果等の観点から、ベルト本体の両側に設けてもよい。
【0024】
次に、本実施形態に係る無端ベルト100の製造方法について説明する。以下、符号を省略して説明する。
【0025】
まず、芯体を準備する。芯体として円筒芯体が挙げられ、円筒芯体としてはアルミニウムやステンレス、ニッケル、銅等の金属円筒が望ましく、その長さは、端部に生じる無効領域に対する余裕幅を確保するため、目的とする無端ベルトの長さより、10%以上40%以下程度長いことが望ましい。円筒芯体の外径は、無端ベルトの直径に合わせ、肉厚は芯体としての強度が保てる厚さにするが、外径は60mm以上500mm以下の範囲、厚さは4mm以上20mm以下の範囲、長さは0.3mm以上1.5mm以下の範囲であることが望ましい。
【0026】
円筒芯体の表面は、無端ベルト作製時の変形や膨れの防止のため、特開2002−160239号公報に開示の如く、算術平均粗さRaで0.2μ以上2μm以下程度に粗面化することが望ましい。粗面化の方法には、ブラスト、切削、サンドペーパーがけ等の方法がある。
なお、上記算術表面粗さRaの測定は、表面粗さ計(サーフコム1400A、東京精密社製)等を用いて、JIS B0601−1994に準拠し、評価長さLnを4mm、基準長さLを0.8mm、カットオフ値を0.8mmとした測定条件で実施されたものであり、以下の表面粗さの測定においても同様である。
【0027】
円筒芯体表面には、できたベルトが接着するのを防ぐため、表面をフッ素樹脂やシリコーン樹脂で被覆したり、表面に離型剤を塗布したりするのが望ましい。
【0028】
図2に示すように、円筒芯体10としては、例えば、円筒部材10Aと、円筒部材10Aの軸方向両端部に当該円筒部材10Aの内壁に接して配設される保持板10B(フランジ)とで構成される。保持板は、例えば、芯体の搬送や回転を容易にするために取り付けられる。
【0029】
円筒部材に対する保持板の取り付けには、溶接やねじ止め等の方法があるが、溶接の方がガタがなく固定でき、力が均一に加わるようになるので望ましい。溶接方法には、ガス溶接、アーク溶接、プラズマ溶接、電気抵抗溶接、TIG溶接、MIG溶接、MAG溶接等、種々あるが、金属の種類により、最適な方法が選択される。
【0030】
保持板10Bは、図3(A)に示すように、切り欠き部10Cを有するものを用い、切り欠き部10C以外の部分で円筒部材10Aの内壁と接触し、その接触部分の長さが円筒部材10Aの内壁周長の10%以上25%以下になるように取り付けることがよい。これにより保持板10Bとして熱容量の大きな材質を使用しても、円筒部材10Aと保持板10Bの接触部分を減らすことにより、保持板10Bに部分に熱が伝わり、芯体に温度ムラが生じてしまうといった保持板10B部分の熱容量の影響が極力少なくなる。ここで、接触部分の長さが周長の10%未満であると、芯体の強度不足が懸念されることがある。また、接触部分の周長の25%を超えると、保持板10Bに部分に熱が伝わり、芯体に温度ムラが生じてしまうことがある。
【0031】
特に、熱伝導率の悪い材質(例えばステンレス:SUS304)を用いて円筒芯体を作製した際に、保持板10B部分の熱容量の影響を極力減らすと、円筒部材10Aとして熱伝導率の高い材質(例えばアルミニウム)を用いた時と同等の昇温特性が得られる。円筒部材10A部分は熱容量に応じて厚さを変化することができるが、保持板10B部分はその材質の密度(質量)によって、ある程度の強度を持たせなければならなく、容易に厚さを変えることができない。そこで、上記の如く、切り欠き部10Cを有する保持板10Bを採用することで、材質に制限されることなく、表面抵抗ムラのないベルトが得られる。
【0032】
なお、保持板10Bの形状(切り欠き部10Cの形成)は、図3(A)の如く、星形に限られず、材質によっては密度(質量)と熱伝導度を考慮して、十字型、放射型など、図3(B)乃至図3(E)の如く形成であってもよい。
【0033】
一方、保持板10B部分の熱容量の影響が極力少なくする他の手法としては、熱伝導率0.1W/(m・℃)以上0.4W/(m・℃)以下の断熱材を円筒部材10Aと保持板10Bの接触面に挟み込み、ねじで固定する方法がある。この手法では、保持板10Bには切り欠き部10Cを設ける必要はない。断熱材は、フッ素樹脂(熱伝導率0.25)、ポリイミド(熱伝導率0.10W/(m・℃)以上0.18W/(m・℃)以下)、シリコンゴム(熱伝導率0.22W/(m・℃))等が挙げられる。ここで、熱伝導率が0.1W/(m・℃)未満の断熱材であると、実用的な材料を探すのが非常に困難であることがある。また、熱伝導率が0.4W/(m・℃)を超える断熱材であると、保持板10B部分に熱が伝わりやすくなり、その結果、芯体部分に温度ムラが生じることがある。
【0034】
次に、芯体の外周面に、第1の皮膜形成樹脂溶液を塗布して塗膜を形成する。第1の皮膜形成樹脂溶液に含まれる皮膜形成樹脂(樹脂皮膜の前駆体含む)としては、特に制限されないが、樹脂皮膜の強度、形状安定性等の観点から、前述のPI樹脂(その前駆体)、PAI樹脂が望ましく用いられる。
【0035】
PI樹脂(PI前駆体)又はPAI樹脂としては、種々の公知のものを用いることができる。それらの溶剤は、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、アセトアミド、等の非プロトン系極性溶剤である。塗液の濃度、粘度等は、適宜選択されるが、望ましい溶液の固形分濃度は10質量%以上40質量%以下、粘度は1Pa・s以上100Pa・s以下である。
【0036】
転写ベルト等、無端ベルトに半導電性が必要である場合には、第1の皮膜形成樹脂溶液の中に導電性物質からなる顔料を分散させる。導電性物質としては、例えば、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO2−In23複合酸化物等の導電性金属酸化物、等が挙げられる。
【0037】
これらを1Pa・s以上100Pa・s以下といった比較的に高い粘度の皮膜形成樹脂溶液に分散させるのは困難であるが、低粘度の溶剤、皮膜形成樹脂溶液に顔料を分散させて顔料分散液を調製し、これと高粘度の皮膜形成樹脂溶液を用いて、前記望ましい皮膜形成樹脂溶液を得る方法もある。混合後の樹脂100質量部に対する顔料の含有量は、15質量部以上35質量部以下の範囲程度が望ましい。
【0038】
第1の皮膜形成樹脂溶液を円筒芯体に塗布するには、各種公知の方法をとることができるが、例えば、回転させた円筒芯体の表面に、ノズルから吐出された塗液をブレードによって平滑にする方法が挙げられる。ここで、図4は、上記塗布方法に利用する螺旋塗布装置を示す概略構成図である。また図5は、この螺旋塗布装置の主要部分の芯体軸方向から見た側面図である。
【0039】
この螺旋塗布装置20は、図4及び図5に示すように、被塗布物である円筒芯体10に対し、流下装置21から塗液12(皮膜形成樹脂溶液)を流下して塗布し、その塗膜13を形成する螺旋塗布装置である。
【0040】
流下装置21は、例えば、塗液12を流下(吐出)して塗液12を円筒芯体10に付着させるノズル22と、ノズル22へ塗液12を供給する一軸偏心ねじポンプ23と、を備えている。図示しないが、円筒芯体10は、円筒芯体10が水平に回転可能(矢印A)に支持するアームを有する台座に保持部材11を介して配設され、円筒芯体10を軸回転させるための駆動手段(回転手段)に連結されている。
【0041】
また、螺旋塗布装置20には、塗液12を貯留するタンク24と、タンク24から供給管26を介して一軸偏心ねじポンプ23へ塗液12を供給する二軸スクリューポンプ25と、を備えている。二軸スクリューポンプ25の供給能力は、一軸偏心ねじポンプ23の供給能力の合計よりも高くすることが望ましい。
【0042】
ここで、一軸偏心ねじポンプ23は、一般にモーノポンプと称される回転容積型のポンプであり、塗液の一定体積移動を可能にしている。このため、塗液の吐出量は脈動のない連続流であり、溶液自体を攪拌することもないため、溶液に泡を発生させることがない。
【0043】
一軸偏心ねじポンプ23は、例えば、図6に示すように、ポンプ本体31と、ポンプケーシング32と、軸受ユニット33と、電動モータ34と、を備えている。
【0044】
ポンプ本体31は、断面真円形の雄ねじ形ロータ35とこのロータ35の2倍のピッチをもつ開口断面長円形の雌ねじ孔36Aを備えたステータ36とから構成されている。ロータ35は雌ねじ孔36A内でその中心軸線を中心に所定距離だけ偏心して回転する。ロータ35は雌ねじ孔36A内で、一方向に自転しながら中心軸線を中心とする自転と逆の方向へ公転し、雌ねじ孔36Aの任意位置における断面ではロータ35は自転しながら長円形口の直線部分でガイドされて長軸方向に往復移動する。
【0045】
ポンプケーシング32には、ポンプケーシング32の長手方向中間位置に吸込口あるいは吐出口となるフランジ付き開口部32Aが上向きに配設されている。そして、ポンプケーシング32内には、カップリングロッド37とこれの両端に接続されるユニバーサルジョイント38A、38Bとを有している。
【0046】
軸受ユニット33内には回転軸40が軸受を介して回転自在に支持され、軸受ユニット33のポンプケーシング32側において回転軸40の周囲にメカニカルシールなどの軸封部41が装着されている。
【0047】
電動モータ34は、その駆動軸34Aが回転軸40に接続されている。回転軸40の一端はユニバーサルジョイント38Bが接続されており、これとカップリングロッド37を介して接続されるユニバーサルジョイント38Aの一端はロータ35と接続されている。
【0048】
このロータ35を挿入するステータ36の一端には、エンドスタット42が装着され、吐出口あるいは吸込口になる。本実施形態では、このエンドスタット42にノズル22が接続されている。
【0049】
そして、本実施形態では、ロータ35が回転する際、ステータ36の開口断面長円形の雌ねじ孔36Aと非接触となるように、ロータ35の回転軌跡とステータ36の開口断面長円形の雌ねじ孔36A内壁との間に間隙を設けている。
【0050】
このステータ36の雌ねじ孔36Aとロータ35が完全に密着(接触)する場合、回転体であるロータ35と固定部であるステータ36との間で強い摺動が起こり、摺りや発熱による塗液の変質や寿命低減に繋がり、著しい場合はステータが破損することになる。そこで、ロータ35の回転軌跡とステータ36の開口断面長円形の雌ねじ孔36A内壁との間に間隙を設けることで、回転体であるロータ35と固定部であるステータ36との間で生じる摺動が生じなくなる。
【0051】
ロータ35の回転軌跡とステータ36の開口断面長円形の雌ねじ孔36A内壁との間に間隙は、塗液の保持圧力が0.2MPa異常0.5MPa以下の範囲となるように設けることがよい。この塗液の保持圧力とは、このステータ36とロータ35とにおいて塗液が漏れ出さない限界の送液圧力を示す。この隙間が小さい場合、送液圧力を高くしても塗液は漏れ出し難くなり、塗液の保持圧力は高くなる。逆に隙間が大きい場合、低い送液圧力でも塗液は漏れ出し易く、塗液の保持圧力は低くなる。すなわち、高い塗液の保持圧力のステータ36とロータ35の組み合わせると、吐出の定量性には優れるが塗液への負荷が大きくなり、低い塗液12保持圧力のステータ36とロータ35の組合せでは、吐出の定量性は劣るが塗液への負荷は低減できることになる。
【0052】
なお、一軸偏心ねじポンプ23では、塗布開始時に瞬時に所望の吐出量に達することができるため、塗液の捨て出し動作が不要である。また、塗布終了時には瞬時に吐出を切ることができるため、芯体をよごしたり、無駄な塗布部分を発生させない。さらに、一軸偏心ねじポンプ23は高粘度の溶液にも対応でき、雄ネジ軸回転数を制御することにより流量を自由に制御可能である。
【0053】
一方、二軸スクリューポンプ25は、図7に示すように、外部ベアリング方式による一方向流れの自給式ポンプであり、ポンプケーシング51と、ポンプケーシング51内に配置される2つの回転スクリュー52と、ポンプケーシング51及び回転スクリュー52を支持するポンプ本体53とを具備している。なお、図中、ポンプケーシング51は2点鎖線で示している。
【0054】
回転スクリュー52は、回転軸52Aに対し螺旋状に送液羽根52Bが配設されている。そして、2つの回転スクリュー52は、一方の送液羽根52Bの間隙に他方の送液羽根52Bを入り込ませて、互いに非接触で噛み合わせるように配設されている。2つの回転スクリュー52は、図示しないがポンプ本体53に内蔵された駆動部材(モータ)により回転され、この回転に伴い当該送液羽根52Bの間隙に入り込んだ溶液が回転軸方向に移動される。これにより溶液が圧送されることとなる。
【0055】
ポンプケーシング51には、塗液12の入出方向が水平方向の塗液出入口54Aが側壁(回転スクリューの軸方向にあたる側壁)に設けられ、塗液12の入出方向が鉛直方向(垂直方向)の塗液出入口54Bが上壁(回転スクリューとポンプ本体の連結部付近の上壁)に設けられている。
【0056】
ポンプケーシング51において、塗液出入口54Aが送液側の管と連結され、塗液12の入出方向が鉛直方向の塗液出入口54Bが供給管と連結されている。これにより、塗液12が水平方向に塗液出入口54Aに入り、ポンプケーシング51内に閉じ込められた塗液12が回転スクリュー52によりポンプのスラスト方向に圧送され、鉛直方向に塗液出入口54Bから排出される。このようにして、塗液12が送液される。
【0057】
送液用として、二軸スクリューポンプ25を用いることが望ましい理由は、ポンプ内の圧力変化が小さく、一定の圧力で送液される点にある。また、圧力変化が小さいことから、経路中の塗液12にかかる最大圧力を小さくできる。配管中の塗液12に過大な圧力(シェア)がかかると、塗膜に塗液12が変質した筋が発生する場合がある。
【0058】
したがって、一軸偏心ねじポンプ23に塗液12を供給する送液ポンプとして二軸スクリューポンプ25を用いると、常に安定して塗液12が供給でき、ノズル22から吐出量の変動なく塗液12を吐出させることができる。また、塗液12が送液中に変質することがないため、塗膜欠陥の発生が防止される。
【0059】
流下装置21において、ノズル22と円筒芯体10の距離は、流下液が途切れることがないよう、10mm以上100mm以下程度が望ましい。液の途切れが生じると、泡を巻き込むことがある。
【0060】
円筒芯体10の周辺には、円筒芯体10に付着した塗液12を平滑化する平滑化手段として、ブレード27が配置されている。ブレード27は、その先端が湾曲されて(しなるように)、円筒芯体10へ圧接される。
【0061】
ここで、ブレード27の円筒芯体10への圧接力としては、例えば真円度が0mm以上1mm以下の円筒芯体10の回転時の最大振れ幅(例えば0mm以上2mm以下)に合わせて、ブレード27が当該振れ幅に追随できるように0.2Nから4Nの範囲とし、塗膜にらせん状模様が発生しない条件とする。
【0062】
流下装置21及びブレード27は、塗液12の円筒芯体10への付着及び平滑化に伴い、芯体の回転毎に付着部及び平滑化部が相対的に円筒芯体10の一端から他の一端へ水平方向(矢印B)に移動させる。この移動は、流下装置21及びブレード27を移動させてもよいし、円筒芯体10が移動する構成としてもよい。
【0063】
流下装置21及びブレード27を連動させ、円筒芯体10の一端から他の一端へ水平方向に移動させることにより、円筒芯体10の表面に塗布することができる。その移動速度が塗布速度である。
塗布時の条件は、円筒芯体10の回転速度が20rpm以上200rpm以下、塗布速度は、0.1m/分以上2.0m/分以下程度であり、溶液の粘度が高いほど遅くするのが望ましい。
【0064】
次に、螺旋塗布装置20の塗布動作について説明する。塗布は、まず、円筒芯体10を矢印A方向に回転させながら、流下装置21のノズル22から、塗液12を流下させて円筒芯体10に塗液12を付着させる。この直後に円筒芯体10の一端側の突き当て位置においてブレード27を水平方向に移動させて円筒芯体10へ突き当てることで、円筒芯体10に付着した塗液12を平滑化する。そして、円筒芯体10の回転毎に付着点及び平滑化点(流下装置21及びブレード27)を、円筒芯体10の一端から他の一端へ水平方向(矢印B)に移動させる。
【0065】
その後、円筒芯体10へ塗液12が終了直前に、円筒芯体10の他端側の退避位置において、ブレード27を水平方向に移動させて芯体10から退避させ、塗布が終了する。
【0066】
ここで、上記螺旋塗布装置20を利用して、塗布工程をライン化し、効率化を図るためには、例えば、図8に示すように、円筒芯体10を置く台座71を複数連続して搬送する搬送ベルト72の設置し、当該搬送ベルト72の上方に複数の流下装置21(本実施形態では2つ)を配する塗布機構70が挙げられる。この塗布機構70において、流下装置21は、それぞれの一軸偏心ねじポンプ23へ一つの二軸スクリューポンプ25により塗液を供給する。
【0067】
塗布機構70では、搬送ベルト72により、円筒芯体10が置かれた台座71が複数搬送され(矢印C)、複数の流下装置21の下方へ到達すると、図示しない昇降装置により円筒芯体10がそれぞれの流下装置21の塗布位置へ上昇させ、塗布を行う。塗布が終了すると、円筒芯体10は下降され、元の台座71に置かれる。そして、搬送ベルト72により、退避し、これと共に、他の円筒芯体10−1が置かれた台座71が搬送され、複数の流下装置21の下方へ到達する。このように、塗布機構70では、連続して塗布が行われる。
【0068】
ここで、上述の如く、塗布機構70では、流下装置21の数分に応じて、同じ時間に塗布できる芯体の数も増える。但し、一つの二軸スクリューポンプ25で複数の一軸偏心ねじポンプ23に塗液12を供給する場合、各ポンプ内の圧力が高いので、複数の一軸偏心ねじポンプ23の動作がばらばらであると、圧力や流量の変化がばらばらになり、供給量が安定しないばかりか、気泡が発生しやすくなる。
【0069】
そこで、流下装置21ごとの一軸偏芯ねじポンプ23を同時に動作させることがよい。一軸偏芯ねじポンプ23を同時に動作させることにより、動作時の圧力の変化はそれぞれの一軸偏芯ねじポンプ23で同じになり、複数の流下装置21(即ち複数の一軸偏芯ねじポンプ23)を用いても、流下装置21(一軸偏芯ねじポンプ23)ごとに圧力や流量が異なることがなくなる。
【0070】
また、本実施形態では、上記螺旋塗布装置20に限られず、環状塗布装置により塗布を行ってもよい。環状塗布装置を用いて、芯体上に皮膜形成樹脂溶液を塗布して塗膜を形成する場合、「芯体上に塗布」とは、芯体側面の表面、及び該表面に層を有する場合は、その層の表面に塗布することをいう。また、「芯体を上昇」とは、塗布時の液面との相対関係であり、「芯体を停止し、塗布溶液面を下降」させる場合を含む。
【0071】
ここで、図9は、塗布方法に利用する環状塗布装置の停止時を示す概略構成図である。図10は、塗布方法に利用する環状塗布装置の塗布時を示す概略構成図である。但し、図は主要部のみを示し、芯体の保持機構や昇降装置等、他の装置は省略する。
【0072】
環状塗布装置60Aは、図9に示すように、環状塗布槽61が設けられている。環状塗布槽61の底部には、円筒芯体10の外径より若干小さい穴を有する環状シール材62を設けられており、円筒芯体10を環状シール材62の中心に挿通させ、環状塗布槽61に塗液12を収容する。これにより、塗液12は漏れることがない。環状塗布槽61に満たされた塗液12上には、中央に円孔63Aを有する環状体63を設置する。環状体63には、停止時の環状体を支えるために、腕64が取り付けられている。
【0073】
環状体63の材質は、溶液の溶剤によって侵されない金属やプラスチック等から選ばれる。環状体63の沈没防止のために、環状体63の外側又は環状塗布槽61には、腕64のほか、環状体63を支える足を設けても良い。
【0074】
ここで、塗布時、円筒芯体10の外径と円孔63Aの内径との間隙により、塗膜13の膜厚が決まるので、円孔63Aの内径は、所望の膜厚により調整する。また、円孔63A内径の真円度が低いと膜厚均一性が低下するので、真円度は20μm以下であることが望ましく、10μm以下であることはさらに望ましい。もちろん、真円度が0μmであることが最適なのであるが、加工上は困難である。
【0075】
環状体63の内壁面は、塗液12に浸る下部が広く、上部が狭い形状であれば、直線的傾斜面のほか、階段状や曲線的でもよい。真円度を高く加工するために、円孔内壁面の上部には、芯体と平行になる部分があってもよい。
【0076】
環状塗布槽61には、その外枠面に周方向に等間隔で塗液12を供給する供給管65が4つ設けられている。一方、供給管65(供給口)の数は、環状塗布槽61の大きさにもよるが、2個以上20個以下程度、等間隔の位置に設けることがよい。
【0077】
供給管26からは塗液12が送り込まれが、槽内に塗液12を送り込む方法としては、加圧空気を利用して圧送する方法や、適宜のポンプにより圧送する方法がある。
【0078】
環状塗布槽61内には、中央部に開口66Aを有する塗液導入板66が配されている。塗液導入板66は、円形の開口66Aの仮想面に対し板面とが傾斜するように、開口66Aが突出する形状となっている。そして、突出した開口66A側を環状塗布槽61の底面と対向させ、開口66Aの中心と環状シール材62の中心とを同軸にして、塗液導入板66は配されている。また、塗液導入板66は、その外周端部が供給管65(供給口)よりも上方側(塗液12液面側)に位置するように配されている。
【0079】
つまり、環状塗布槽61の底面と塗液導入板66の対向面の間隔は、環状塗布槽61の底面外側よりも中央部側の方が狭くなる構成となっている。このため、供給管65(供給口)から環状塗布槽61へ供給された塗液12が中央部に導入される際、塗液導入板66により塗液12を環状塗布槽61の底面側へ導入されるようになる。この結果、環状塗布槽61の底面中央部に導入される塗液12は深さ方向の流れが抑制され、深さ方向に分散する力が働き、導入された塗液12が円筒芯体10と接触するまでに、既に溜まっていた塗液12と混じり易くなり、塗布ムラが抑制される。
【0080】
環状塗布装置60Aでは、図10に示すように、塗布時には円筒芯体10の下に他の円筒芯体10(これはベルトを作製しない中間体であってもよい)をつなぎ、環状塗布槽61の下部から上部に押し上げて、円筒芯体10の表面に塗膜13を形成する。その際、環状体63は塗液12の摩擦抵抗によって持ち上げられ、塗膜13の膜厚は、環状体63の円孔63Aと円筒芯体10との隙間によって一定値に規制される。これにより、均一な塗膜13が得られる。
【0081】
塗布する際の円筒芯体10の引き上げ速度は、0.1m/min以上1.5m/min以下程度が望ましい。円筒芯体10を引き上げると、環状体63は浮遊状態で設置されているので、塗液12の粘性による摩擦抵抗により持ち上げられる。環状体63は自由移動可能なので、円筒芯体10と環状体63との摩擦抵抗が周方向で一定になるように、すなわち間隙が均一になるように環状体63は動き、芯体10上には均一な膜厚の塗膜13が形成される。このように、環状体63により膜厚を規制するので、膜厚を均一にして高粘度の溶液を塗布することができる。
【0082】
ここで、塗液12としてのPI前駆体やPI樹脂等の皮膜形成樹脂溶液のように高粘度の液体は組成が全く同じであっても混合しにくいため、環状塗布槽61に供給管65(供給口)から供給された塗液12が静置された状態で円筒芯体10に塗布されると、供給管65(供給口)の間に相当する位置に塗液の境目が生じ、結果として、塗膜軸方向に筋(以下、軸方向筋)が発生する。この軸方向筋を防止するためには、環状塗布槽61内に供給された塗液12を攪拌することが望ましいが、泡の発生する。
【0083】
そこで、本実施形態では、周囲の供給管65から環状塗布槽61へ供給された塗液12は、泡を生じさせることなく、塗液導入板66により既に溜まっていた塗液12と混じり易くなるように導入されることから、供給された塗液12と既に溜まっていた塗液12との境目の発生が抑制され、塗布ムラが抑制される。
【0084】
次に、他の環状塗布装置について説明する。ここで、図11は、塗布方法に利用する他の環状塗布装置の停止時を示す概略構成図である。図12は、塗布方法に利用する他の環状塗布装置の塗布開始時を示す概略構成図である。図13は、塗布方法に利用する他の環状塗布装置の塗布時を示す概略構成図である。但し、図は主要部のみを示し、芯体の保持機構や昇降装置等、他の装置は省略する。
【0085】
環状塗布装置60Bは、図11に示すように、環状塗布槽61内に環状の開閉部材67を設けている。そして、環状塗布槽61の底面が、塗液12の自重により底面中央部側(環状シール材62側)に移動し、円筒芯体10の外周面へ到達するように傾斜構造(テーパ構造)となっている。これ以外は、図9乃至図10に示す環状塗布装置60Aと同様の構成である。
【0086】
開閉部材67は、環状で構成され、図11に示すように、装置の停止時には閉鎖、即ち開閉部材67の下縁部と環状塗布槽61との間に間隙をなくし、供給管65から供給された塗液12を堰き止める。
【0087】
次に、開閉部材67は、図12に示すように、装置の塗布開始時には開放、即ち開閉部材67の下縁部と環状塗布槽61との間に間隙を生じさせ、供給管65から供給された塗液12を塗液12の自重により環状塗布槽61底面中央部側(環状シール材62側)に移動(供給)させる。
【0088】
この際、移動(供給)する塗液12の量が円筒芯体10の外周面の塗布に使用される量と同等、もしくは若干多い量となるように、開閉部材67の内側(環状塗布槽61底面中央部側)の塗液量を調節して閉鎖する。これにより、塗布終了後は、開閉部材67の内側には溶液がほとんど残らないか、若干残るだけである。
【0089】
そして、図13に示すように、自重により環状塗布槽61底面中央部側(環状シール材62側)に移動(供給)された塗液12により、塗布を行う。
【0090】
ここで、本実施形態では、加圧圧送により供給された塗液12を環状塗布槽61内に設けられた開閉部材67により外側に一端堰き止め大気開放させて一次的に溜めておいた(以後、一次供給)後、その開閉部材67を開放し、重力を利用して塗液12を供給する(以後、二次供給)。二次供給されて、塗液12が円筒芯体10まで達してから塗布を開始する。この方法により、一次供給の塗液12は、環状塗布槽61の底面に対して鉛直方向の境目が存在しているが、二次供給時に開閉部材67の開放により、環状塗布槽61の底面に対して水平方向に塗液12が押し出されるため、塗液12の流路形態が変わり、塗液12の攪拌効果が得られ、塗液12の境目が解消されることになる。
【0091】
なお、一次供給する塗液量は、塗布に使用される量と同等、もしくは若干多い量に調整することがよい。若干多い量とは、塗布に使用される量の1体積%以上5体積%以下であり、塗液を若干残しておく方が、次に塗液を供給する際に、泡を巻き込んだりすることが低減されることがあるので望ましい。繰り返して塗布を行う場合は、塗布完了後に、再度、開閉部材67を閉じ、一次供給を行う。
【0092】
また、塗液12を速やかに供給すると同時に供給時の泡の巻き込みを防止するため、環状塗布槽内の底面を傾斜構造とすうことがよい。また、この傾斜角度(テーパ角)は、環状塗布槽61における開閉部材67により仕切られる内側と外側で異なる角度にしても構わない。傾斜角度(テーパ角)は5°以上15°以下が望ましいが、二次供給速度や塗液粘度に応じて適宜変更しても構わず、特に規定されるものではない。
【0093】
また、開閉部材67による開放幅(開閉部材67の下縁部と環状塗布槽61との間に間隙幅)は、例えば10mm以上40mm以下が望ましいが、塗液粘度に応じて適宜変更しても構わず、特に規定されるものではない。
【0094】
このように、環状塗布装置60Bでは、開閉部材67の閉鎖・開放の動作により塗液12の攪拌効果が得られ、塗液12の境目が解消され、結果、塗布ムラが抑制される。
【0095】
なお、以上塗布装置について説明したが、これらに限られず、例えば塗液を収容する塗布槽、該塗布槽に塗液を供給する塗液供給手段、及び円筒芯体をその軸方向を垂直にして移動可能に保持する保持手段を有する塗布装置を用い、前記円筒芯体を塗布槽に貯留された塗液中から液面に対して相対的に上昇させると共に、浮遊ダイスによって同心性を保ちながら過剰分を掻き取ることにより、円筒芯体の表面に塗膜を形成してもよい(例えば特開昭52−78081号公報や特開2002−91027号公報参照)。
【0096】
次に、第1の皮膜形成樹脂溶液の塗膜を、乾燥させて第1の乾燥塗膜を形成する。具体的には、例えば、第1の皮膜形成樹脂溶液を塗布後に、円筒芯体を乾燥装置に移動させ、塗膜を加熱し、乾燥させて溶剤を除去し、第1の乾燥塗膜を得る。この第1の乾燥塗膜は、強度を保持できる程度の状態になるまで加熱し、溶剤を乾燥させることがよい。その際、塗膜が下方に垂れないよう、円筒芯体を水平にして回転させながら行うのが望ましい。回転速度は1rpm以上60rpm以下程度、加熱条件は90℃以上170℃以下の温度で20分間以上60分間以下が望ましい。
【0097】
ここで、「乾燥塗膜が強度を保持できる程度の状態」とは、乾燥後の乾燥塗膜が下方に垂れることがなく、その表面に触れても容易には変形しない程度を言う。樹脂皮膜がPAI又はPIの場合、乾燥塗膜が強度を保持できる程度の状態は、残留溶剤量が20質量%以上60質量%以下程度が望ましく、より望ましくは30質量%以上50質量%以下程度の時である。残留溶剤量が多すぎる場合は第1の乾燥塗膜が軟らかくて補強テープ(後述する第2の乾燥塗膜)の貼り付け作業には適さず、逆に残留溶剤量が少なすぎる場合には補強テープ(後述する第2の乾燥塗膜)を貼り付けても密着力が十分に発揮されないものとなる。
【0098】
次に、第1の乾燥塗膜の外周面の少なくとも片側の側縁に沿って第2の樹脂皮膜を帯状に貼り付ける。この第2の樹脂皮膜は、補強テープとなるものである。また、第2の樹脂皮膜の代わりに、第2の乾燥塗膜を帯状に貼り付けてもよい。この第2の乾燥塗膜は、加熱することで、第2の樹脂皮膜となるものである。この第2の乾燥塗膜も、強度を保持できる程度になるまで加熱し、溶剤を乾燥されていることがよい。第2の乾燥塗膜を貼り付けると、第1の乾燥塗膜と第2の乾燥塗膜との両者の界面では残留溶剤が相互に染み出て再溶解して一体化し、溶剤乾燥後は強固に密着する。
【0099】
なお、第2の樹脂皮膜、即ち補強テープに導電性物質は不要であるが、導電性物質を分散させたものであってもよい。
【0100】
第2の樹脂皮膜又は第2の乾燥塗膜を貼り付ける際、第1の乾燥塗膜との間に空気が残ると、気泡として、形成される補強テープ(第2の樹脂皮膜)に膨れを生じるので望ましくない。そこで、空気が残らないように第2の樹脂皮膜又は第2の乾燥塗膜を貼り付けるために、第1の乾燥塗膜との間に液体を付着させる、即ち第1の乾燥塗膜と第2の樹脂皮膜又は第2の乾燥塗膜との間に介在させることも好ましい。
【0101】
ここで、介在させる液体としては、用いる皮膜形成樹脂溶液(第1の樹脂皮膜又は第2の樹脂皮膜を形成するための皮膜形成樹脂溶液)の溶剤でもよいし、水やアルコール等であってもよい。液体を介在させて第2の樹脂皮膜又は第2の乾燥塗膜を押さえながら貼れば、空気が押し出されるので、両者の間に空気が残ることなく第2の樹脂皮膜又は第2の乾燥塗膜を貼り付けることができる。その際、大部分の液体は押し出されるが、隙間に残った液体も残留溶剤の乾燥とともに、同時に乾燥する。さらに、液体として、希釈した皮膜形成樹脂溶液(第1又は第2の塗布溶液と同種の皮膜形成樹脂溶液)を用いてもよい。この場合、両者の隙間に残った皮膜形成樹脂も同時に一体化することとなる。
【0102】
第2の樹脂皮膜又は第2の乾燥塗膜は、無端ベルトの作製過程において第1の皮膜形成樹脂溶液から得られる第1の乾燥塗膜やこれを加熱して得られる第1の樹脂皮膜の端部を切断した端材を利用することがコスト面からよい。無論、第2の樹脂皮膜又は第2の乾燥塗膜は、別途、作製してもよい。
【0103】
第2の樹脂皮膜又は第2の乾燥塗膜の継ぎ目は、図14(A)に示すように、第2の樹脂皮膜又は第2の乾燥塗膜の周方向両端辺同士の間隔(継ぎ目の間隔)が狭くなる、或いは当該端部同士が密着するように貼り付けることがよい。また、図14(B)に示すように、第2の樹脂皮膜又は第2の乾燥塗膜の周方向端部をその周方向に対して傾斜するように切断し、傾斜した継ぎ目となるようにしてもよい。ここで、図14中、130Aは、補強テープとなる、第2の樹脂皮膜又は第2の乾燥塗膜を示す。前記介在させる液体として皮膜形成樹脂溶液を用いた場合、継ぎ目の隙間の中に皮膜形成樹脂溶液が押し出されて存在するので、加熱後はこれが補強テープと一体化し、継ぎ目部分の強度低下は小さいものとなる。
【0104】
次に、第2の樹脂皮膜又は第2の乾燥塗膜が貼り付けられた第1の乾燥塗膜を加熱して、第2の樹脂皮膜が設けられた第1の樹脂皮膜を形成する。この加熱は、例えば、形成する樹脂皮膜がPAI樹脂のみで構成される場合は、200℃以上250℃以下程度の範囲で、PI樹脂の場合は縮合反応させるために200℃以上350℃以下の範囲、望ましくは250℃以上300℃以下の範囲で、20分間以上60分間以下行う。その際、温度を段階的に上昇させてもよい。この加熱処理により、第2の樹脂皮膜と第1の樹脂皮膜とは一体化し、強固に密着する。そして、最終状態の、第2の樹脂皮膜が設けられた第1の樹脂皮膜が形成される。
【0105】
次に、冷却後、第2の樹脂皮膜が設けられた第1の樹脂皮膜を円筒芯体から取り外す。そして、必要に応じて、第1の樹脂皮膜の幅方向端部を第2の樹脂皮膜端辺から外側に所定量離れた箇所又は当該端辺と接するように、第2の樹脂皮膜幅方向端辺に沿って切断する。また、この切断は第2の樹脂皮膜の一部ごと切断してもよい。これにより、第1の樹脂皮膜からなるベルト本体の外周面の少なくとも片側の側縁に沿って帯状に設けられた第2の樹脂皮膜からなる補強テープを有する無端ベルトが得られる。なお、望ましい無端ベルトの膜厚は30μm以上150μm以下程度である。また、得られた無端ベルトには、さらに必要に応じて、穴あけ加工や端部処理等が施してもよい。
【0106】
そして、得られた無端ベルトの内周面には、必要に応じて、ベルト本体の内周面の少なくとも片側の側縁に沿って蛇行防止用のリブ部材(蛇行防止部材)が接着される。リブ部材の材料としては、ポリウレタン樹脂、ネオプレンゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリエステルエラストマー、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等の適度な硬度を有する弾性体等が使用できる。
【0107】
これらの中でも、電気絶縁性、耐湿、耐溶剤、耐オゾン及び耐熱性、耐磨耗性を考慮すると、特にポリウレタンゴムやシリコーンゴムが好適である。また、ベルトを構成するPI樹脂やPAI樹脂との接着性を高くするため、接着剤に対するぬれ性があるゴム等を用いることが望ましく、表面を研磨処理やUV処理をすると、よりぬれ性が高くなり付着しやすくなる。
【0108】
リブ部材の形状は、無端ベルトの使用条件等により適宜定めることができるが、蛇行防止効果を十分に得る為にはその断面を略矩形とすることが望ましい。リブ部材の幅は、蛇行防止効果、耐久性等の点から、通常1mm以上10mm以下程度が望ましく、特に4mm以上7mm以下が望ましい。厚みは、特に制限されないが、蛇行防止効果や耐久性等の観点から、通常0.5mm以上5mm以下程度が望ましく、特に1mm以上2mm以下が望ましい。また、リブ部材は、無端ベルトの補強効果の点から全周に設けることが望ましいが、リブ部材の継ぎ目に0.1mm以上4mm以下程度の隙間を有していてもよい。
【0109】
以上説明した本実施形態に係る無端ベルトでは、第1の樹脂皮膜からなるベルト本体と第2の樹脂皮膜からなる補強テープ(補強部材)とを有し、このベルト本体を構成する第1の樹脂皮膜と補強テープを構成する第2の樹脂皮膜とが第1及び第2の樹脂皮膜以外の成分が介在することなく直接接合されていることから、当該補強テープは簡易にしかも強固な接着力を持ち、剥がれが抑制される。
【0110】
そして、本実施形態では、ベルト本体を構成する第1の樹脂皮膜を形成するための、第1の皮膜形成樹脂溶液の塗膜を乾燥して得られる第1の乾燥塗膜に、補強テープとなる第2の樹脂皮膜又は加熱することにより第2の樹脂皮膜となる第2の乾燥塗膜を貼り付け、これを加熱することで、ベルト本体を構成する第1の樹脂皮膜と補強テープを構成する第2の樹脂皮膜とが第1及び第2の樹脂皮膜以外の成分が介在することなく直接接合される。
【0111】
なお、実施形態に係る無端ベルトは、電子写真式複写機、レーザープリンター等における感光体ベルト、中間転写ベルト、転写ベルト、搬送ベルト、帯電ベルト、定着ベルト等に好適に使用され。また、実施形態に係る無端ベルトは、その用途、機能等に応じて、材質、形状、大きさ等が設定される。
【0112】
(画像形成装置)
図15は、実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【0113】
実施形態に係る画像形成装置は、中間転写ベルトとして実施形態に係る無端ベルトを備えるものである。
【0114】
実施形態に係る画像形成装置は、感光体ドラムを各色毎に4台持つ出力機である。実施形態に係る画像形成装置は、図15に示すように、画像形成ユニット210Y,210M,210C,210Kが備えられている。
【0115】
画像形成ユニット210Y,210M,210C,210Kには、それぞれ、像保持体としての感光体ドラム212Y,212M,212C,212K(Yはイエロー用、Mはマゼンタ用、Cはシアン用、Kはブラック用を示す)を備え、感光体ドラム212Y,212M,212C,212Kの周囲には、それぞれ、感光体ドラム212Y,212M,212C,212Kの表面を帯電する帯電装置214Y,214M,214C,214Kと、帯電された感光体ドラム212Y,212M,212C,212Kの表面に静電潜像を形成する露光装置216Y,216M,216C,216Kと、感光体ドラム212Y,212M,212C,212Kの表面に形成された静電潜像を現像剤に含まれるトナーによりトナー像とする現像装置218Y,218M,218C,218Kと、トナー像を中間転写ベルト224に転写するための一次転写装置220Y,220M,220C,220K(例えば転写ロール)と、転写後の感光体ドラム212Y,212M,212C,212Kの表面に付着した残留トナーを除去するための感光体ドラムクリーナー222Y,222M,222C,222Kとが備えられている。
【0116】
また、画像形成ユニット210Y,210M,210C,210Kに対向して、中間転写体としての中間転写ベルト224が配設されている。中間転写ベルト224は、感光体ドラム212Y,212M,212C,212Kと一次転写装置(例えば一次転写ロール)220Y,220M,220C,220Kとの間に配設されている。
【0117】
そして、中間転写ベルト224は、駆動ロール226a、中間転写ベルト224がゆがんだり蛇行したりすることを防ぐテンション・ステアリングロール226c、支持ロール226b,226d,226eと共に、バックアップロール228により内周面側から張力を掛けつつ回転可能に支持されて、ベルト保持装置225を構成している。
【0118】
中間転写ベルト224の周囲には、当該中間転写ベルト224を介してバックアップロール228と対向して二次転写装置230(例えば二次転写ロール)が配設されると共に、二次転写装置230よりも中間転写ベルト224の回転方向下流側にベルトクリーナー232が配設されている。
【0119】
そして、二次転写装置230よる転写後の記録用紙P(記録媒体)を搬送するための搬送装置234が配設されると共に、搬送装置234による搬送方向下流側に定着装置236が配設されている。
【0120】
本実施形態に係る画像形成装置では、まず、画像形成ユニット210Yにおいて、感光体ドラム212Yは図中時計方向に回転し、帯電装置214Yでその表面が帯電される。帯電された感光体ドラム212Yにレーザー書き込み装置などの露光装置216Yにより第1色(Y)の静電潜像が形成される。
【0121】
この静電潜像は現像装置218Yにより供給されるトナー(トナーを含む現像剤)よってトナー現像されて可視化されたトナー像が形成される。トナー像は感光体ドラム212Yの回転により一次転写部に到り、一次転写装置220Yからトナー像に逆極性の電界を作用させることにより、トナー像が、反時計方向に回転する中間転写ベルト224に一次転写される。
【0122】
そして、同様にして第2色のトナー像(M)、第3色のトナー像(C)、第4色のトナー像(K)が画像形成ユニット210M,210C,210Kにより順次形成され中間転写ベルト224において重ね合わせられ、多重トナー像が形成される。
【0123】
次に、中間転写ベルト224に転写された多重トナー像は中間転写ベルト224の回転で二次転写装置230が設置された二次転写部に到る。
【0124】
この二次転写部では、二次転写装置230と中間転写ベルト224を介して対向配置したバックアップロール228との間にトナー像の極性と同極性のバイアス(転写電圧)を印加することで、当該トナー像を記録用紙Pに静電反発で転写する。
【0125】
記録用紙Pは、記録用紙容器(図示せず)に収容された記録用紙束からピックアップローラ(図示せず)で一枚ずつ取り出され、フィードロール(図示せず)で二次転写部の中間転写ベルト224と二次転写装置230との間に所定のタイミングで給送される。
【0126】
給送された記録用紙Pには、二次転写装置230とバックアップロール228による圧接及び転写電圧搬送と、中間転写ベルト224の回転と、の作用により、中間転写ベルト224に保持されたトナー像が転写される。
【0127】
トナー像が転写された記録用紙Pは、搬送装置234により定着装置236に搬送され、加圧/加熱処理でトナー像を固定して永久画像とされる。
【0128】
なお、多重トナー像の記録用紙Pへの転写の終了した中間転写ベルト224は二次転写部の下流に設けたベルトクリーナー232で残留トナーの除去が行われて次の転写に備える。また、二次転写装置230はブラシクリーニング(図示せず)により、転写で付着したトナー粒子や紙紛等の異物が除去される。
【0129】
また、単色画像の転写の場合は、一次転写されたトナー像を単色で二次転写して定着装置に搬送するが、複数色の重ね合わせによる多色画像の転写の場合は各色のトナー像が一次転写部で一致するように中間転写ベルト224と感光体ドラム212Y,212M,212C,212Kとの回転を同期させて各色のトナー像がずれないようにする。
【0130】
このようにして、本実施形態に係る画像形成装置では、記録用紙P(記録媒体)に画像が形成される。
【0131】
なお、本実施形態では、第1実施形態に係る無端ベルトを中間転写ベルトに適用した形態を説明したが、用紙(記録媒体)を搬送する用紙搬送ベルト(記録媒体搬送ベルト)として適用することもできる。
【0132】
また、本実施形態では、感光体ベルト、転写ベルト、搬送ベルト、帯電ベルト、定着ベルト等を備えた画像形成装置であってもよく、これらのベルトとして上記第1実施形態に係る無端ベルト100を適用することもできる。
【0133】
また、本実施形態では、ベルト保持装置225が中間転写ベルト224を備え、画像形成装置に装着した形態を説明しているが、無端ベルトを備えるベルト保持装置225は、その用途に応じて搬送機器等の装置に備えられる。
【実施例】
【0134】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
<実施例1>
芯体として、外径159mm、厚さ4mm、長さ500mmのアルミニウム製の円筒体を用意した。
上記円筒芯体表面をブラスト処理し、算術平均粗さRaを0.4μmとした。また、円筒芯体の表面には、シリコーン系離型剤(商品名:セパコート、信越化学製)を塗布した。
【0135】
皮膜形成樹脂溶液として、PAI樹脂(HR11NN、東洋紡績(株)製、溶剤:NMP、固形分:15質量%)に、カーボンブラック(Special Black 4、デグサジャパン(株)製、pH:3.5)を固形分質量比で35質量%添加し、衝突型分散機(株式会社ジーナス製、GeanusPY)を用いて分散させ、25℃での粘度が約25Pa・sのカーボンブラック混合塗液を用意した。
【0136】
次に、図4及び図5に示す塗布装置を用い、上記皮膜形成樹脂溶液(塗液12)を用いて前記芯体10の端部から40mmの位置から軸方向長さ420mmにわたって塗布した。すなわち、400mlの塗液12が入ったタンク24と一軸偏心ねじポンプ23とを二軸スクリューポンプ25を介して連結し、ノズル22から毎分40mlの吐出を行った。平滑化手段としてのブレード27は、厚さ0.3mmのステンレス板を幅20mm、長さ50mmに加工したものである。
【0137】
芯体10の回転数を60rpmに上げ、ブレード27を塗膜13に押し当てながら、円筒芯体10の軸方向に210mm/分の速度で移動させ、塗膜13の終端ではブレード27を50mm後退させて、芯体の表面に直に接触しないようにした。2分後、塗膜表面の筋は消失し、膜厚が平均440μmの塗膜13が形成された。
【0138】
その後、芯体を10rpmで回転させながら120℃の乾燥装置に入れ、45分間 乾燥させた。これにより、残留溶剤量が40質量%であり、芯体の回転をやめて縦にしても皮膜が垂れることがない、すなわち強度を保持できる状態の乾燥塗膜(第1の乾燥塗膜)を得ることができた。
【0139】
別途、この条件であらかじめ作製しておいた同じPAI樹脂の乾燥塗膜(第2の乾燥塗膜)を、幅12mm、長さ499mmに切断してテープとしたものを、芯体端部から68mm軸方向内側の位置に貼り付けた。その際、テープの接着面には上記皮膜形成樹脂溶液を5倍に希釈して刷毛で延ばして塗り、テープを押さえながら貼り付けた。継ぎ目はテープ周方向に対して直行するようにし(図14(A)参照)、継ぎ目の隙間は1mm以下とした。その隙間の中には押し出された塗液(上記皮膜形成樹脂溶液)が存在していた。このテープ貼り付けは、ベルトの両端に行った。
【0140】
次いで、円筒芯体を垂直にして、190℃で10分間、230℃で30分間加熱して、PAI樹脂皮膜を形成した。芯体が室温に冷えた後、芯体と樹脂皮膜(第1の乾燥塗膜から形成された樹脂皮膜)の隙間に加圧空気を吹き込んで芯体から樹脂皮膜を抜き取った。貼り付けたテープ(補強テープ:第2の乾燥塗膜から形成される樹脂皮膜)は樹脂皮膜(ベルト本体:第1の乾燥塗膜から形成された樹脂皮膜)と一体化しており、両者の間にPAI樹脂以外の樹脂成分が介在せず、強固に接着していた。このベルト本体の中央部分の膜厚は平均80μmであり、補強テープを貼り付けた部分の厚さは約180μmであった。
【0141】
次いで、テープ(補強テープ:第2の乾燥塗膜から形成される樹脂皮膜)の端部から2mmの外側の位置で切断して、補強テープの幅が10mm、ベルト全幅が340mmの、補強テープ付き無端ベルトを作製した。
【0142】
<比較例1>
実施例1の方法で無端ベルトを作製する際、補強テープを取り付けないで、他は同様にして無端ベルトを作製した。
【0143】
<比較例2>
比較例1の補強テープを取り付けない無端ベルトに対し、厚さ50μm、幅10mm、長さ509mmのポリエステル樹脂粘着テープ(No.31B、日東電工製)をベルトの端部に貼り付けて補強テープとした。テープの前後端は10mm重ね合わせた。
【0144】
<試験>
上記実施例1及び比較例1、2で得られた無端ベルトを試験するため、図16に示すように、2本のゴムロール70に架け渡し、39.2Nの張力を印加した。耐久試験を加速するために、ゴムロール70は直径が15mmと小さく、一端には無端ベルト100がつき当たるフランジ71を設けた。
【0145】
そして、片方のゴムロール70を200rpmで回転させて無端ベルト100を回転走行させたところ、比較例1の無端ベルトは、約1万回転でフランジにつき当たっている側にしわが生じた。比較例2の補強テープ付き無端ベルトは、約5万回転でフランジにつき当たっている側にやはりしわが生じた。これは、補強テープとしてのポリエステル樹脂粘着テープは、強度が不足するためと見られる。これに対し、実施例1の補強テープ付き無端ベルトは、10万回転させても問題は起こらず、耐久性は十分であった。
【0146】
<実施例2>
皮膜形成樹脂溶液として、PI樹脂の前駆体溶液(宇部興産製UワニスA、溶剤:NMP、固形分:18質量%)に、実施例1と同じカーボンブラックを固形分質量比で29質量%添加し、実施例1と同じ衝突型分散機で分散し、25℃での粘度が約20Pa・sのカーボンブラック混合塗液を用意した。これを用い、実施例1と同様に芯体上に塗布した。
【0147】
次いで、芯体を10rpmで回転させながら165℃の乾燥装置に入れ、20分間乾燥させた。これにより、残留溶剤量が40質量%であり、芯体の回転をやめて縦にしても皮膜が垂れることがない、すなわち強度を保持できる状態の乾燥塗膜(第1の乾燥塗膜)を得た。
【0148】
別途、この条件であらかじめ作製しておいた同じPI樹脂の前駆体溶液の乾燥塗膜(第2の乾燥塗膜、残留溶剤量が40質量%)を、幅12mm、長さ499mmに切断してテープとしたものを、芯体端部から68mm軸方向内側の位置に貼り付けた。その際、テープの接着面には何も付けず、押さえて貼り付けた。継ぎ目はテープ周方向に対して45度傾斜するようにし(図14(B)参照)、継ぎ目の隙間は1mm以下とした。このテープの貼り付けは両端に行った。
【0149】
次いで、円筒芯体を垂直にして、300℃の加熱装置に入れて90分間加熱し、PI樹脂皮膜を形成した。芯体が室温に冷えた後、芯体と樹脂皮膜(第1の乾燥塗膜から形成された樹脂皮膜)の隙間に加圧空気を吹き込んで芯体から樹脂皮膜を抜き取った。貼り付けたテープ補強テープ:第2の乾燥塗膜から形成される樹脂皮膜)は樹脂皮膜(ベルト本体:第1の乾燥塗膜から形成された樹脂皮膜)と一体化しており、強固に接着していた。このベルトの中央部分の膜厚は平均80μmであり、補強テープを貼り付けた部分の厚さは約160μmであった。
【0150】
次いで、テープ(補強テープ:第2の乾燥塗膜から形成される樹脂皮膜)の端部から2mmの外側の位置で切断して、補強テープの幅が10mm、ベルト全幅が340mmの、補強テープ付き無端ベルトを作製した。
【0151】
この無端ベルトは、PAI樹脂よりも強度が高いPI樹脂を用いているため、上記同様の耐久試験を行ったところ、15万回転させても問題は起こらず、耐久性はさらに高いものであった。
【0152】
以上のように、本実施例で作製した無端ベルトでは、ベルト本体の外周面に設けた補強テープがベルト本体と一体化して強固なものとなり、耐久性を十分に果たすことができるものであった。
なお、端部に貼り付ける第2の乾燥塗膜として、残留溶剤量が15質量%のものをあらかじめ用意して実施例1と同様に貼り付けた場合には、加熱処理後に部分的に密着していない箇所があり、剥離しやすいものであった。
一方、端部に貼り付ける第2の乾燥塗膜として、残留溶剤量が65質量%のものをあらかじめ用意して貼り付けようとした場合、第2の乾燥塗膜が柔軟すぎて強度を保持できる状態ではなかったため、貼り付けることはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】実施形態に係る無端ベルトを示す斜視図である。
【図2】円筒芯体を示す断面図である。
【図3】円筒芯体の軸方向から見た平面図である。
【図4】塗布方法に利用する螺旋塗布装置を示す概略構成図である。
【図5】螺旋塗布装置の主要部分の芯体軸方向から見た側面図である。
【図6】一軸偏心ねじポンプを示す概略構成図である。
【図7】二軸スクリューポンプを示す概略構成図である。
【図8】塗布方法に利用する塗布機構を示す概略構成図である。
【図9】塗布方法に利用する環状塗布装置の停止時を示す概略構成図である。
【図10】塗布方法に利用する環状塗布装置の塗布時を示す概略構成図である。
【図11】塗布方法に利用する他の環状塗布装置の停止時を示す概略構成図である。
【図12】塗布方法に利用する他の環状塗布装置の塗布開始時を示す概略構成図である。
【図13】塗布方法に利用する他の環状塗布装置の塗布時を示す概略構成図である。
【図14】補強テープ(第2の樹脂皮膜又は第2の乾燥塗膜)の継ぎ目を示す模式図である。
【図15】実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図16】耐久試験を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0154】
10 円筒芯体
10B 保持板
10A 円筒部材
10C 切り欠き部
11 保持部材
12 塗液
13 塗膜
20 螺旋塗布装置
21 流下装置
22 ノズル
23 ポンプ
24 タンク
25 二軸スクリューポンプ
26 供給管
27 ブレード
31 ポンプ本体
32 ポンプケーシング
32A 開口部
33 軸受ユニット
34 電動モータ
34A 駆動軸
35 ロータ
36 ステータ
36A 雌ねじ孔
37 カップリングロッド
38A ユニバーサルジョイント
38B ユニバーサルジョイント
40 回転軸
41 軸封部
42 エンドスタット
51 ポンプケーシング
52 回転スクリュー
52A 回転軸
52B 送液羽根
53 ポンプ本体
54A 塗液出入口
54B 塗液出入口
60A 環状塗布装置
60B 環状塗布装置
61 環状塗布槽
62 環状シール材
63 環状体
63A 円孔
64 腕
65 供給管
66 塗液導入板
66A 開口
67 開閉部材
70 ゴムロール
100 無端ベルト
110 ベルト本体
120 リブ部材
130 補強テープ
210Y,210M,210C,210K 画像形成ユニット
212Y,212M,212C,212K 感光体ドラム
214Y,214M,214C,214K 帯電装置
216Y,216M,216C,216K 露光装置
218Y,218M,218C,218K 現像装置
220Y,220M,220C,220K 一次転写装置
222Y,222M,222C,222K 感光体ドラムクリーナー
224 中間転写ベルト
225 ベルト保持装置
226c テンション・ステアリングロール
226a 駆動ロール
226b,226d,226e 支持ロール
228 バックアップロール
230 二次転写装置
232 ベルトクリーナー
234 搬送装置
236 定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂皮膜からなるベルト本体と、
前記ベルト本体の外周面の少なくとも片側の側縁に沿って帯状に設けられ、第2の樹脂皮膜からなる補強部材と、
を有し、
前記ベルト本体と前記補強部材とが、前記第1及び第2の樹脂皮膜以外の成分が介在することなく直接接合されていることを特徴とする無端ベルト。
【請求項2】
前記第2の樹脂皮膜が、前記第1の樹脂皮膜と同種の樹脂皮膜であることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト。
【請求項3】
芯体の外周面に、第1の皮膜形成樹脂溶液を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記第1の皮膜形成樹脂溶液の塗膜を、乾燥させて第1の乾燥塗膜を形成する工程と、
前記第1の乾燥塗膜の外周面の少なくとも片側の側縁に沿って、第2の樹脂皮膜又は加熱により第2の樹脂皮膜となる第2の乾燥塗膜を帯状に貼り付ける工程と、
前記第2の樹脂皮膜又は前記第2の乾燥塗膜が貼り付けられた前記第1の乾燥塗膜を加熱して、前記第2の樹脂皮膜が設けられた第1の樹脂皮膜を形成する工程と、
前記第2の樹脂皮膜が設けられた前記第1の樹脂皮膜を前記芯体から取り外す工程と、
を有することを特徴とする無端ベルトの製造方法。
【請求項4】
前記第1の乾燥塗膜及び前記第2の乾燥塗膜が、強度を保持できる程度の状態にまで乾燥されてなることを特徴とする請求項3に記載の無端ベルトの製造方法。
【請求項5】
前記第2の樹脂皮膜が、前記第1の樹脂皮膜と同種の樹脂皮膜であることを特徴とする請求項3に記載の無端ベルトの製造方法。
【請求項6】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像をトナー像として現像する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する定着手段と、
を備え、
前記像保持体、前記帯電手段、前記転写手段、及び前記定着手段の少なくとも1つが、請求項1又は2に記載の無端ベルトを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−52617(P2009−52617A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218434(P2007−218434)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】