説明

無線によりタイヤ空気圧を監視する方法、無線タイヤ空気圧監視システムおよびシステム構成要素

本発明は、車両(FZ)のホイール(R1,R2,R3,R4)上のタイヤの空気圧に関する情報(DRK)を含むデータ(DT,DT)を監視し、無線信号で送る方法(100)に関する。該方法において、ホイール(R1,R2,R3,R4)に配置された電子モジュールが、車両(FZ)に配置された制御装置(STG)へデータ(D,D)を無線で送信する。車両(FZ)が停止した状態に関連する第1モード(SM)において、データは送信されないのに対し、車両(FZ)のまた別の状態に関する、少なくとも1種の別のモード(FM,BM)において、それぞれの電子モジュール(RE)は、データ(D,D)をデータグラム(DT,DT)の形態で制御装置(STG)へ送信する。それぞれの電子モジュール(RE)は、少なくとも間欠的に、データ(D,D)を含むデータグラム(DT,DT)を単位時間当たりn個(nは時間に依存する)制御装置(STG)へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のホイール上の空気入りタイヤの空気圧に関する情報を含むデータを監視し、無線信号で送る方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、上記の方法に適したシステムと、車両に配設された制御装置や、それぞれのホイールに1つずつ配設され、無線でデータを制御装置へと送信する電子モジュールなどのシステム構成要素とに関する。
【背景技術】
【0003】
「automobiltechnische Zeitschrift(ATZ)」2005年2月号に掲載の論文、「Tyre Safety Systems−TSS」(2005年2月号、VIEWEG出版(ドイツ))には、車両のホイール上の空気入りタイヤの状態に関する情報を含む種々のデータが監視され無線信号で送られる、タイヤ空気圧制御システムが記載されている。説明図3および説明図4に基づいてこの論文で説明されているように、このような公知のシステムは、車両のホイールに配設された複数の電子モジュールを備えており、この電子モジュールは、ホイール電子回路とも呼ばれている。ホイール電子回路は、空気圧や温度などの空気入りタイヤそれぞれの状態をセンサによって取り込み、これに対応するデータを中央装置すなわち車両に配設された中央制御装置(上記論文の説明図1参照)へ送信する。次いで、制御装置はデータを評価し、例えば、車両内に取り付けたタイヤ空気圧指示計(説明図5参照)を作動させる。ホイール電子装置は、小型電池、通常はリチウム電池により電力供給されているため、電池の耐用期間ができる限り長くなるよう、少量の電流またはエネルギーしか消費されないように注意を払わなければならない。このため、例えば、センサの測定サイクルが、車両の走行に左右される(上記論文の3頁、2.2項参照)。したがって、データは短い測定間隔で取り込まれ、車両が走行している間しか送信されない。データは、データグラムの形態で送信されることが好ましい(上記論文の表2参照)。
【0004】
ある種のシステムでは、質問機すなわちトリガー送信機によって、データグラムの発信を制御することもできる。この場合、制御装置がトリガー信号を送信し、必要に応じてホイール電子装置それぞれを起動させ、次いでホイール電子装置がデータを取り込んで制御装置へと送信する。この方法では、逆チャネルとトリガー送受信機とが必要である。このようにすれば、ホイールのホイール電子装置を個別に処理し、ホイールの位置を正確に検出することができるが、例えば、処理がある程度複雑となる。説明図1である右説明図に基づいて上記論文で説明されているように、新しいシステムでは、逆チャネルおよびトリガー送受信機をできる限り省くことが期待される。
【0005】
欧州特許第1467877(B1)号明細書の記載より、必要な時にのみホイール電子装置それぞれを、質問機すなわちトリガー送信機により起動させて、電池の耐用期間を延長させることが公知である。本文献では、特に信頼性の高いタイヤ空気圧監視システムを達成しており、質問信号が何らかの理由で機能しなかった場合でも、ホイール電子装置があらかじめ決められた最小送信レートで自動的にデータを送信するように設計されている。このようにすれば、本文献に記載の方法およびシステムにおいて、質問機を省くことができる。しかしながら、データが比較的低い送信レートでしか送信されないことが考えられる。
【0006】
欧州特許第0915764(B1)号明細書の記載より、タイヤ空気圧監視システムの信号を処理する方法は公知である。本文献に記載の方法では、ホイール電子装置がデータをデータグラムの形態で制御装置へ自動的に送信しており、トリガー送信すなわち質問信号の送信は特に必要とされない。しかしながら、トリガー信号を送信せずかつ/または逆チャネルを使用せずに、ホイールの位置を決定する方法として、制御装置に備えた複数の受信アンテナにより信号を受信し、受信した信号を制御装置で併せて処理し、信号の強度を分析することが提案されている。周期的に個々の受信アンテナを作動停止させることによって、最大の強度損失を示す無線信号がどの作動停止ポイントから生じたのかを決定することができ、その作動停止ポイントが特定のホイール電子装置の最も近くに位置するアンテナであると見なされる。
【0007】
したがって、この方法によりトリガーシステムを完全に省くことができるが、受信アンテナ部分が非常に複雑となる。さらに、デューティサイクルが50%のLFを停止時に、デューティサイクルが100%のLFを走行時に使用することによって、それ相当のエネルギー消費に抑える方法も知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、記載されたような欠点を克服し、かつそれほどの複雑さを伴わずに実施可能な、上記の方法とシステムまたは機器とを提案することである。本発明は、特に、データを監視し無線信号で送る方法およびこの方法に適したシステム、ならびにこれらに関連するシステム構成要素を提案する。これにより、ホイール電子装置に必要な電力の削減が達成できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、請求項1に記載された特徴を有する方法、ならびに請求項1に関連する独立請求項に記載された特徴を有する、システム、制御装置、および電子モジュールにより達成される。
【0010】
本発明は、車両が停止した状態に関連する第1モードにおいて、データを送信しないことと、車両の種々の状態に関連する少なくとも1種のさらなるモードにおいて、電子モジュールすなわちホイール電子装置それぞれが、データをデータグラムの形態で制御装置へ送信することと、前記さらなるモードにおいては、電子モジュールが、前記データを含む複数のデータグラムを蓄積して順序通りに制御装置へと少なくとも間欠的に送信することを提案する。
【0011】
このようにして送信すると、蓄積された複数のデータグラムを束ねたもの(本明細書においてはバーストモードとも呼ぶ)が生じ、必要なデータが制御装置へと間欠的にのみ送信され、次いでひとまとまりとなる。このようにして、ホイールの位置を知ることができる。このようにすれば、全体的な送信持続時間は短縮されても、データグラムを蓄積することにより、実際にデータを送信する時間は短縮されないか、またはわずかに短縮されるのみにとどまり、データの損失は起こらない。
【0012】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項により明らかになるであろう。
【0013】
車両が走行している状態に関連する第2モードにおいては、データを第1データグラムの形態で送信し、車両の発進時の状態に関連する第3モードにおいては、データを部分的にのみ第1データグラムよりも短い第2データグラムの形態で送信すると有利である。このようにして、車両が実際に走行している状態と発進時の状態とを識別する。特に発進時はデータの需要が大きいことから、発進時の状態において、短いデータグラムおよび/またはできる限り少量のデータを送信する。ホイール電子装置の電池に過度の負担をかけることなく、制御装置部分からの、このデータ需要の増加に応じるため、データグラムは必要最小限まで短縮される。次いで、データグラムを蓄積することにより、制御装置が複数のホイール電子装置からのデータ全てを安全に受信することを保証する。これらのデータは、例えば、中心線同士を識別するために利用される。本明細書において、この送信はバーストモードとも呼ばれるが、移動通信分野で知られているバースト無線送信とは異なるものであることを理解しておくべきである。
【0014】
本明細書において、電子モジュールすなわちホイール電子装置それぞれが、少なくとも車両の発進モードに関連する第3モードにおいて、または第3モードにおいてのみ、前記データを含む複数の第2データグラムを蓄積して順序通りに制御装置へ送信すると特に有利である。したがって、好ましくは発進時の状態において、短縮したデータグラムを複数個束ねたものを送信する場合、使用されるデータ密度が高いことにより、発進段階において比較的短時間のうちに必要なデータ全てを確実に送信することができる。さらに、データグラムが短いことにより必要な電力を削減することができるため、ホイール電子装置の電池への影響を少なくすることができ、これと同時に複数のホイール電子装置の位置を決定することができる。
【0015】
また、それぞれのホイールが車両の左側に位置するのか、それとも右側に位置するのかを決定するために、第2データグラム内のデータが、ホイールそれぞれの回転方向に関する情報を少なくともまたはこの情報のみを含み、この回転方向が評価されると有利である。このような手段をとることによって、おおよそのホイールの位置を検出することが非常に容易となり、車両のどちら側からデータが送信されたのかを少なくとも決定することができる。この決定には、逆チャネルおよび/またはトリガー送信機などのような装置は不要であり、回転方向を検出しさえすればよい。この決定をするために、電子モジュールに収容された、動作センサおよび/または加速度センサを使用することが好ましい。
【0016】
また、短縮されたデータグラムである、第2データグラム内のデータが、それぞれのホイールにおける状態に関する情報ならびに/またはそれぞれのホイールにおける温度および/もしくは空気圧に関する情報を、少なくとも含まないと特に有利である。このようにすることによっても、おおよそのまたはより正確なホイール位置を決定するために必要なデータのみが送信されるため、発進モードにおける第2データグラムを短縮することができる。
【0017】
これとは逆に、第1データグラム内のデータが、ホイールにおける空気圧および/または温度に関する情報を少なくとも含むと有利である。このようにすれば、走行モードにおいて、長いデータグラムができる限り広範囲に使用される。本明細書において、空気圧に関する情報が、ホイール電子装置に統合された圧力センサによって特定されるか、または温度に関する情報が、統合された温度センサによって特定されると有利である。
【0018】
制御装置が、それぞれのモジュール(ホイール電子装置)から受信したデータを評価でき、かつ/またはそのデータに追加データを補足することもできると好ましい。
【0019】
また、それぞれのホイールが前のホイール軸に位置するのか、それとも後のホイール軸に位置するのかを決定するために、制御装置および/または制御装置に接続されたアンテナなどのような無線受信手段が、車両のホイール軸それぞれからの距離が異なるように配設され、制御装置において、それぞれのモジュールから受信した無線信号が、それぞれの受信電界強度に基づいて互いに比較されると特に有利である。このようにすれば、それぞれのホイール電子装置が、前のホイール軸または後のホイール軸のいずれに取り付けられているのかを、受信電界強度に基づいて決定することは容易である。本明細書において、それぞれのホイールの位置を決定するために、受信データに含まれるホイールそれぞれの回転方向に関する情報が、受信増幅された受信信号に基づいて評価されるとさらに有利である。このようにすれば、回転方向に基づいて、それぞれのホイールが車両の左側または右側のいずれに位置するのかを最初に決定し、次いで、受信電界強度に基づいて、それぞれのホイールが前のホイール軸または後のホイール軸のいずれに位置するのかを即座に評価することができる。すなわち、このようにしてそれぞれのホイール位置を、具体的に、即座に、かつ容易に決定することができる。
【0020】
また、制御装置が、評価したデータおよび/または補足したデータを結果データとして、インターフェース、とりわけデータバスを経由させて、車両に設置した他の装置および/またはモジュールに提供することも好ましい。制御装置は、中央データ取込・評価装置として設計することができ、このような装置は、好ましくは標準化されたインターフェースを経由させて、ディスプレイ機器のような他の装置および/またはモジュールへ結果データを提供する。本明細書において、制御装置が、結果データを第3データグラムの形態にして、データインターフェースおよび/またはデータバスを経由させて提供すると有利である。この第3データグラムは上述の無線データグラムとは無関係に構成することができ、例えば、CANバスなどで使用される標準化されたデータバス・データグラムとして構成することができる。デューティサイクルが、走行サイクルのモードナンバーすなわち停止モードと走行モードとの間での切り替えに依存して切り替えられるとさらに有利であり、デューティサイクルが、例えば、50%、50%/100%から0%/100%へと切り替えられると有利である。これによって、エネルギーがさらに節約される。
【0021】
ホイール電子装置からの送信が終了した後に、デューティサイクルが0%のLFを有する停止モードを起動させるとさらに有利である。
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら種々の実施形態に基づき本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の方法およびシステムのために定義される種々の動作モードを示す状態遷移図である。
【図2】個々のステップを含む、本発明による方法を示す流れ図である。
【図3】種々のシステム構成要素の車両における配置を示す概略図である。
【図4】本発明の電子モジュールすなわちホイール電子装置の設計を示す概略図である。
【図5】本発明の方法およびシステムで使用される種々のデータグラムを示す図である。
【図6】走行時間に対する送信頻度の依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1、図2、および本発明による方法をさらに詳しく説明する前に、図3および図4に基づいて、本発明によるシステムの基本設計を最初に説明する。
【0025】
車両(FZ)における、システムの基本設計および/または設置状況を図3に示す。電子モジュールすなわちホイール電子装置(RE)が、車両のホイール(R1〜R4)それぞれに挿入されている。電子モジュールすなわちホイール電子装置(RE)は、中央制御装置として車両に配設された制御装置(STG)へとデータ(D1〜D4)を無線で送信する。
【0026】
制御装置(STG)には、アンテナ(A)である無線受信手段が接続されている。制御装置(STG)は、それぞれのホイール電子装置(RE)からの無線信号を受信して、無線信号に含まれているデータを評価する。制御装置(STG)には、データインターフェースすなわちデータバスを経由してさらなる装置および/またはモジュール(図示せず)が接続されている。制御装置(STG)は、受信データ(D1〜D4)を評価することにより得られた結果データ(D’)と任意のさらなる追加データとを、さらなる装置および/またはモジュールに供給する。
【0027】
制御装置(STG)またはアンテナは、車両(FZ)の中心点には位置せず、車両の横方向中心線に非対称に配設されていることが好ましい。すなわち、車両の前部か後部かのいずれかに配設されていることが好ましい。このようにすれば、制御装置(STG)のアンテナ(A)が、ホイール電子装置(RE)それぞれからの無線信号を、種々の受信電界強度とともに受信する。それによって、それぞれのホイール電子装置は、車両(FZ)の前部(V)または後部(H)のいずれに位置するのかを決定する。
【0028】
ホイールに統合されたホイール電子装置(RE)の設計のブロック図を図4に示す。ホイール電子装置は、インテグレーテッドタイマー(TM)を備えたマイクロコントローラ(CRT)を実質的に含む。マイクロコントローラ(CRT)には、種々のセンサ(S1〜S3)が接続されている。センサとしては、例えば、圧力センサ(S1)、温度センサ(S2)、少なくとも1個の加速度センサ(S3)などが挙げられる。マイクロコントローラ(CRT)は、センサによって供給されたデータを処理し、処理したデータを送信装置(TX)へ転送する。次いで、送信装置(TX)が、無線によりデータ(DまたはD)を制御装置(STG)へ送信する。
【0029】
図1、図2、および図5に基づき、上記のシステムの動作モードおよびシステム構成要素の動作モード、ならびに本発明による方法の原理を、以下においてさらに詳細に説明する。
【0030】
本発明による方法では、少なくとも車両の発進段階において、複数のデータグラム(DT)の形態のデータ(D)が、電子モジュールすなわちホイール電子装置(RE)それぞれから、制御装置(STG)へと少なくとも間欠的に送信される。前記データ(D)を含む複数のデータグラム(DT)は、蓄積されて順序通りに送信される。
【0031】
このモードは、図1においてBMモードとして表され、蓄積モードまたはバーストモードとも称される。このモードは、発進段階、すなわち、車両が停止モード(SM)から走行モード(FM)へと遷移する状態でしか動作しないことが好ましい。バーストモード(BM)は、とりわけ車両の発進段階を指す。この段階においては、それぞれのホイール電子装置(RE)が、好ましくは短縮されたデータグラム(DT)の形態で、データ(D)を蓄積して制御装置(STG)へ送信し、次いで制御装置(STG)が、特に、それぞれのホイールの位置をデータに基づき決定することができる。
【0032】
車両の発進段階が終了し、車両が実際に走行モード(FM)になると、データ(D)が長いデータグラム(DT)の形態で送信され、バーストモードと同様な蓄積は省くことができる。走行モード(FM)において、送信されるデータには、ホイール電子装置(RE)が制御装置(STG)に提供できうる情報が全て含まれていなければならない。これとは逆に、バーストモード(BM)においては、ホイールの回転方向(RL)および/または識別子(ID)やホイール自体の識別に関する情報などの、それぞれのホイールの位置を検出するのに必要なデータ(D)しか送信されない。
【0033】
車両の走行状態が終了すると、第2モード(FM)が終了し、停止モード(SM)へと遷移する。停止モード(SM)においては、ホイール電子装置(RE)がどのようなデータも発信しないことが好ましい。車両(FZ)が再び走行し始めるとすぐに、加速度センサ(図4のS3参照)によって車両が走行し始めたことを検出することができ、例えば、発進モードまたはバーストモード(BM)へと遷移する。図1に示すように、車両が停止した状態に関連する第1モード(SM)から、車両が走行している状態に関連する第2モード(FM)への切り替えは、さらなるモードに相当する中間モードを経由して行われる。この中間モードは、バーストモード(BM)である。この第3モード(BM)は、車両の発進時の状態に常に関連している。
【0034】
以下、図1および図5を参照しながら、図2に基づきステップ110〜130を含む方法100をさらに詳細に説明する。
【0035】
方法100は、ステップ110から始まる。ステップ110では、第1モード(SM)から発進モードである第3モード(BM)へと切り替わる。この切り替えは、例えば、加速度センサ(図4のセンサS3参照)に基づいて検出される。また、この切り替えを、タイマー(図4のタイマー(TM)参照)に基づいて制御し、BMモードが限られた時間内のみ持続されるようにすることもできる。ステップ115において、BMモードのためにデータが送信され、モジュールすなわちホイール電子装置(RE)それぞれが、データ(D)を蓄積された複数のデータグラムの形態にして制御装置(STG)へ送信する。
【0036】
図5に示すように、ある特定の条件においてホイール電子装置(RE)は、短縮されたデータグラム(DT)を送信する。短縮されたデータグラム(DT)は、通例複数個からなり、通常の走行モード(FM)においては長いデータグラム(DT)として送信されるデータ(D)の一部しか含まない。短いデータグラム(DT)は、例えば、9バイトのデータグラムであり、ホイール電子装置(RE)それぞれに固有の識別子(ID)が含まれているため、ホイールそれぞれの回転方向を示す情報(RL)もまた含んでいる。識別子(ID)に基づくだけでも、制御装置(STG)は、全てのホイール電子装置(RE)が動作可能か、または少なくとも4個の識別子(ID)が異なることを調査することができ、したがってホイールを検出することができる。さらに、情報(RL)に基いて、制御装置(STG)は、それぞれのホイールが車両の左側または右側のいずれに位置するのかを検出することができる。例えば、情報(RL)に基づいて、ホイールが時計回りに回転していることが示された場合、ホイールは車両の右側(R)に位置すると見なされる。この他の場合では、ホイールが車両の左側(L)に位置すると見なされる。このようにすれば、このような少ない情報に基づき、ホイールの初期位置を決定することができる。
【0037】
ステップ115において、さらに、制御装置(STG)は、受信した信号それぞれの受信電界強度を評価し、それらを互いに比較する。制御装置またはアンテナ(A)(図3参照)は、車両の前部寄りまたは後部寄りに位置するため、受信電界強度に基づくと、それぞれのホイール電子装置(RE)が車両(FZ)の前のホイール軸(V)または後のホイール軸(H)のいずれに位置するのかを決定することは容易である。このようにすれば、予め決められた側(車両の左側または右側)および/またはホイール電子装置の回転方向とともに、それぞれのホイールの正確な位置が決定することができる。したがって、情報(RL)に基づき、例えば、ホイールが時計回りに回転していることが示され、かつアンテナ(A)が前のホイール軸寄りに取り付けられた制御装置(STG)が、比較的高い受信電界強度を検出した場合、このホイールは車両の右側(R)でかつ前のホイール軸(V)に位置すると見なされる。図3の説明図でいえば、このようにしてホイール(R2)の位置が明確に検出される。残りのホイールは、同様の手順で検出される。ステップ115において、短いデータグラム(DT)に基づくだけで、それぞれのホイールの位置を明確かつ個別に決定することができ、また個々のデータグラム(DT)に基づき、車両(FZ)における空気圧の最新の状況も表示できる。
【0038】
さらに、短縮されたデータグラム(DT)を蓄積してすなわちバーストモードにおいて送信することによって、制御装置(STG)が必要なデータを完全にかつ正しく受信することが保証される。既に上述した情報(IDおよびRL)に加え、短縮されたデータグラム(DT)はさらなるデータを含むこともできる。さらなるデータとしては、同期データ、およびチェックサムデータなどのテストデータが挙げられる。
【0039】
しかしながら、本明細書全体において、データグラム(DT)は、従来のデータグラム(DT)より明らかに短い。例えば、データグラム(DT)はわずか9バイトしか含まないが、長いデータグラム(DT)は15バイトを含む。図5に示すように、より後のモードである走行モード(FM)において送信される長いデータグラム(DT)は、それぞれのタイヤの空気圧(DRK)および温度(T)に関する情報もまた含んでもよい。これらのデータは、適切なセンサによって取り込まれる。適切なセンサとしては、圧力センサ(S1)および温度センサ(S2)(図4参照)が挙げられる。さらに、データグラム(DT)は、電池に残された耐用期間に関する情報(RZ)を含んでもよい。
【0040】
本明細書において提案された方法では、車両が走行を開始するときに、短縮されたデータグラム(DT)が蓄積されてから送信される、上述のバーストモード(BM)を利用する。このようにして1分間というような短時間内に、同一または少なくとも類似のデータ内容を有するデータグラム(DT)が多数送信される。このような送信により、非常に迅速にホイールの位置を決定することができ、さらに、例えば15バイトから9バイトへと短縮されたデータグラムを用いることによりエネルギーを節約できる。例えば、25個のデータグラムを蓄積して順序通りに送信する場合、短縮されたデータグラム(DT)を用いると、通常のデータグラム(DT)を用いたときと比較して約40%の電力需要が削減される。さらに、この削減は、情報を少しも消失することなく達成される。
【0041】
発進段階すなわちBMモードが終了すると、ステップ120から次のモードへと切り替えられ、車両が走行している状態に関連するFMモードとなる。その後、ステップ125において、取り込んだデータ(D)全てを、それぞれのホイール電子装置(RE)から制御装置(STG)へできる限り送信するため、長いデータグラム(DT)が使用される。このFMモードでも同様に、必ずしも必要なわけではないが、データグラム(DT)を蓄積して送信してもよい。ステップ130において、この送信路の状態が終了後、停止状態へと遷移しSMモードとなる。既に上述した通り、この第1モード(SM)においては、いかなるデータ送信も行われない。
【0042】
種々のモードによって、情報内容およびエネルギー節約に関して最適化されたデータ送信が全体として可能となる。車両が実際に走行している状態と発進時の状態とを提案された方法によって識別することにより、とりわけ車両の発進段階において、短縮されたデータグラムによる最適化されたデータ送信が可能となる。
【0043】
それぞれのホイール電子装置(RE)と制御装置(STG)との間の実際のデータ送信に加え、本発明は、制御装置(STG)から、インストルメントパネルのディスプレイ機器のような車両に設置されたさらなる装置またはモジュールへ、結果データ(DT’)(図5参照)をさらに送信することも含む。
【0044】
結果データを送信するために、制御装置(STG)は受信データ(DまたはD)を評価し、任意にさらなるデータ(D+)で補足して、結果データ(D’)を作成する。このデータは、例えば標準化されたデータバス・データグラム(DT’)を経由して、さらなる装置またはモジュールへと送信される。追加データ(D+)としては、ステータスビッドすなわちバイト(ST)を挙げることができる。ステータスビット(ST)は、例えば、制御装置(STG)によって決定される受信電界強度に関連し、それぞれのホイール電子装置が前軸または後軸のいずれに位置するのかを示す。したがって、ステータスビット(ST)は、状態(V)または状態(H)(図3参照)を表すことができる。ホイール電子装置によって送信される、状態(LまたはR)を表すことができる情報(RL)と併せて、ステータスビット(ST)はホイールの位置を具体的に決定する。
【0045】
本明細書において述べられた方法、ならびにこの方法を実施する機器および装置は、特に有利な実施形態に関連するが、何らこれらに限定されると解釈されるべきではない。発明の保護範囲はさらなる変更をも含み、具体的には請求項の文言によって決定される。
【符号の説明】
【0046】
参照番号リスト
SM 第1モード(停止モード)
FM 第2モード(走行モード)
BM 第3モード(バーストモード)

100 (部分的な)ステップ110〜130を含む方法
DRK ホイール(R1〜R4)における空気圧に関する情報
FZ 車両
STG 制御装置
A アンテナ
BUS インターフェースすなわちデータバス
R1〜R4 ホイール
RE 電子モジュールすなわちホイール電子装置
S1, S2, S3 圧力センサ(S1)、温度センサ(S2)、加速度センサ(S3)
などの種々のセンサ
CRT マイクロコントローラ
TX (ホイール電子装置の)送信機
D ホイール電子装置のデータ(通常範囲)
ホイール電子装置のデータ(短縮範囲)
D+ 制御装置からの追加データ
D’ (データバスへの)制御装置からの結果データ
DT データグラム(通常)
DT データグラム(短縮)
DT’ データグラム(データバスにおける結果データ)
ID,RL,DRK,T,RZ,ST
それぞれのホイール/タイヤ、具体的には識別子(ID)、左右(RL)
、空気圧(DRK)に関するデータすなわち情報
SYNC,CRC1,CRC2
同期に関する、または妥当性チェックのためのデータ(チェックサム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(FZ)のホイール(R1,R2,R3,R4)上の空気入りタイヤの空気圧に関する情報(DRK)を含むデータ(D,D)を監視し、無線信号で送る方法(100)であって、
ホイール(R1,R2,R3,R4)に配設された電子モジュール(RE)が、車両(FZ)に配設された制御装置(STG)へとデータ(D,D)を無線で送信することと、
車両(FZ)が停止した状態に関連する第1モード(SM)において、データを送信しないことと、
車両(FZ)の種々の状態に関連する、少なくとも1種のさらなるモード(FM,BM)において、それぞれの電子モジュールが、データ(D,D)をデータグラム(DT,DT)の形態で送信すること
を含み、
それぞれの電子モジュール(RE)が、少なくとも間欠的に、データ(D,D)を含むデータグラム(DT,DT)を単位時間当たりn個(nは時間に依存する)制御装置(STG)へ送信すること
を特徴とする方法(100)。
【請求項2】
前記車両(FZ)が走行している状態に関連するさらなるモード(FM)において、前記データを低い送信頻度で送信することと、前記車両(FZ)の発進時の状態に関連するまた別のモード(BM)において、前記データを高い送信頻度で送信することを特徴とする、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記車両(FZ)が走行している状態に関連する第4モード(FM’)において、前記データをさらに低い送信頻度で送信することを特徴とする、請求項2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記第4モード(FM’)が、運転を開始してから、約15分後に始まることを特徴とする、請求項3に記載の方法(100)。
【請求項5】
車両(FZ)のホイール(R1,R2,R3,R4)上の空気入りタイヤの空気圧に関する情報(DRK)を含むデータを監視し、無線信号で送るシステムであって、
車両(FZ)に配設された制御装置(STG)と、
ホイール(R1,R2,R3,R4)に配設され、無線でデータ(D)を制御装置(STG)へ送信する電子モジュール(RE)と
を含み、
車両(FZ)が停止した状態に関連する第1モード(SM)において、データを送信しないことと、
車両(FZ)が走行している状態に関連する第2モード(FM)において、それぞれの電子モジュール(RE)が、データをデータグラム(DT,DT)の形態で送信することと、
それぞれの電子モジュール(RE)が、少なくとも間欠的に、種々の送信頻度でデータグラムを制御装置(STG)へ送信すること
を特徴とするシステム。
【請求項6】
データを監視し、無線信号で送るシステムのための制御装置(STG)であって、
制御装置が、それぞれの電子モジュール(RE)から、種々の送信頻度のデータグラムを少なくとも間欠的に受信することを特徴とする制御装置(STG)。
【請求項7】
データを監視し、無線信号で送るシステムのための電子モジュール(RE)、特にホイール電子装置であって、
電子モジュールが、種々の送信頻度のデータグラムを制御装置(STG)へ少なくとも間欠的に送信することを特徴とする電子モジュール(RE)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−518718(P2011−518718A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506569(P2011−506569)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【国際出願番号】PCT/DE2009/000580
【国際公開番号】WO2009/132623
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510058818)ボルグワーナー ベルー システムズ ゲゼルシャフト ミット べシュレンクテル ハフツング (6)
【氏名又は名称原語表記】BorgWarner BERU Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】M o rikestrasse 155 D−71636 Ludwigsburg Germany
【Fターム(参考)】