説明

無線タグの評価装置および方法

【課題】多種多様な無線タグの性能を簡単な構成で正確に測定し、評価できる無線タグの評価装置および方法を提供する。
【解決手段】無線タグ2に対する問い合せ信号を含む周波数信号を提供する送信手段10と、電波暗箱1の中央近傍に配置支持される無線タグ2の一方側に配置されて送信手段10からの問い合せ信号を送出する送信用アンテナ3と、無線タグ2の他方側に配置される受信用アンテナ4と、受信用アンテナ4と接続されて前記応答信号を解析処理する受信手段12とを具備する。送信用アンテナ3と受信用アンテナ4とを、両者が直交するように配置し、無線タグ2の主面を送信用アンテナ3に対して略45度の角度を成すように配置すると、受信用アンテナ4は、無線タグ2の周囲を通過する送信波21を直接受信できなくなるので、無線タグ2から放射される応答信号30を相対的に強く受信できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグの評価装置および方法に係り、特に、多種多様な無線タグの性能を簡単かつ正確に評価できる無線タグの評価装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体等に付与された個別情報を非接触で読み取るシステムとして、無線タグ(ICタグ、RFID)を利用した管理システムが研究されている。
【0003】
特許文献1には、電波の送信アンテナと、電波の送信対象からの反射波を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナで受信した電波の状態を表示する表示部とを備えた検査装置が開示されている。該検査装置によれば、電波の送信対象の電波反射特性などについて検証できるとともに、地中に埋設されている電波の送信対象の設置状態が検証できるようになる。
【0004】
また、特許文献2には、管理対象の物品毎に異なる固有情報を記憶したICチップを含むタグを、その物品毎にそれぞれ固着させる物品管理方法が開示されている。該管理方法によれば、タグを紛失することなく、タグが固着された物品をその製造工程から廃棄に至るまで一貫して管理することができるようになる。
【特許文献1】特開2004−347443号公報
【特許文献2】特開2002−169858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造現場で各構成部品に無線タグを装着して工程管理や品質管理等を行う場合や、小売店で各商品に無線タグを装着して商品管理等を行う場合等では、全ての製品あるいは商品に同一の種類の無線タグが付与されるわけではなく、様々な種類の無線タグが混在することが考えられる。一方、無線タグがそのICチップに記憶されたデータを送信する性能は製造元や仕様によって異なるので、製造現場や小売店では、既設の無線タグリーダで確実に情報を読み取れる、換言すれば、所定の基準を満足する無線タグのみを扱えるようにすることが望ましい。
【0006】
しかしながら、特許文献1および2の技術は、無線タグを利用すること自体を主な目的としており、多数の無線タグの性能を簡単かつ正確に測定する技術に関しては、何らの示唆および配慮もされていなかった。
【0007】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、無線タグの性能を簡単な構成で正確に測定し、評価できる無線タグの評価装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するために、本発明は、問い合せ信号に応答して出力される応答信号に基づいて無線タグを評価する無線タグ評価装置において、前記無線タグに対する問い合せ信号を含む周波数信号を送信波として提供する送信手段と、電波暗箱の中央近傍に配置される前記無線タグの一方側に所定間隔隔てて配置され、前記送信手段から供給される問い合せ信号を送出する送信用アンテナと、前記無線タグの一方側の反対側に所定間隔隔てて配置され、前記問い合せ信号に応答して前記無線タグから送出される応答信号を受信する受信用アンテナと、前記受信用アンテナと接続され、前記応答信号を解析処理する受信手段とを具備するようにした点に第1の特徴がある。
【0009】
また、前記送信用アンテナと受信用アンテナとが互いに直交するように配置され、前記無線タグの主面は、前記送信用および受信用アンテナに対して略45度の角度を成すように配置されるようにした点に第2の特徴がある。
【0010】
また、前記送信用アンテナおよび受信用アンテナは、前記送信波の1/2波長のダイポールアンテナであるようにした点に第3の特徴がある。
【0011】
また、前記送信手段から送信される送信波を、送信用アンテナ側と他方側とに分配する分配手段と、該他方側に分配された送信波の位相および振幅を変える変換手段と、前記受信用アンテナの受信波に、前記変換手段で変換された送信波を加える加算手段とを設けるようにした点に第4の特徴がある。
【0012】
また、前記変換手段は、前記他方側に分配された送信波に、前記受信用アンテナから加算手段に入力される受信信号から前記応答信号を除いた信号に対して逆位相を与えるようにした点に第5の特徴がある。
【0013】
また、前記変換手段は、前記他方側に分配された送信波の振幅を、前記受信用アンテナから加算手段に入力される受信信号から前記応答信号を除いた信号と同一又はほぼ同一に調整するようにした点に第6の特徴がある。
【0014】
前記受信手段は、時系列スペクトラムアナライザであるようにした点に第7の特徴がある。
【0015】
また、問い合せ信号に応答して出力される応答信号に基づいて無線タグを評価する無線タグ評価方法において、電波暗箱の中央近傍に無線タグを配置し、無線タグの一方側に所定間隔隔てて送信用アンテナを配置し、前記無線タグの一方側の反対側に所定間隔隔てて受信用アンテナを配置し、前記送信用アンテナに接続された送信手段から無線タグに問い合せ信号を送信し、前記受信用アンテナに接続された受信手段によって前記応答信号を解析処理するようにした点に第8の特徴がある。
【0016】
また、前記受信手段は、時系列スペクトラムアナライザであるようにした点に第9の特徴がある。
【0017】
また、問い合せ信号に応答して出力される応答信号に基づいて無線タグを評価する無線タグ評価装置において、前記無線タグに対する問い合せ信号を含む周波数信号を送信波として提供する送信手段と、四角形断面を有すると共に屈曲部で略90度曲げられ、かつ内壁面が電波吸収体で覆われた電波通路と、前記電波通路の屈曲部に対して一方側に配置され、前記送信手段から供給される問い合せ信号を送出する送信用アンテナと、前記電波通路の屈曲部に対して他方側に配置され、前記問い合せ信号に応答して前記無線タグから送出される応答信号を受信する受信用アンテナと、前記電波通路の屈曲部で、前記送信用アンテナの中心線と前記受信用アンテナの中心線とが直交する位置に配置された無線タグと、前記受信用アンテナと接続され、前記応答信号を解析処理する受信手段とを具備する点に第10の特徴がある。
【0018】
また、前記屈曲部と送信用アンテナとの間と、前記屈曲部と受信用アンテナとの間に、それぞれ、電波吸収体で形成され、前記電波通路の断面積を中央寄りに縮小する第1の壁および第2の壁が設けられている点に第11の特徴がある。
【0019】
また、前記電波通路は、電波暗箱の内壁部である点に第12の特徴がある。
【0020】
また、前記送信用アンテナおよび受信用アンテナは、前記送信波の1/2波長のダイポールアンテナである点に第13の特徴がある。
【0021】
さらに、前記受信手段は、時系列スペクトラムアナライザである点に第14の特徴がある。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、特別な部品等を使用することなく、無線タグの性能評価を容易に行うことができるようになる。
【0023】
請求項2の発明によれば、無線タグが受信する問い合せ信号が約3dB減衰し、さらに、受信用アンテナが受信する応答信号を約3dB減衰させる一方で、電波暗箱を使用することにより受信用アンテナが受信する送信波を約30dB減衰させることができるようになる。このため、D/U比が向上し、無線タグからの応答信号を相対的に強く受信することができるので、受信手段での解析処理、すなわち無線タグの性能評価をより容易に行うことができるようになる。
【0024】
請求項3の発明によれば、アンテナを直交させることにより指向特性のアイソレーションが簡単に得られるため、無線タグの評価装置を容易に構成することができるようになる。
【0025】
請求項4の発明によれば、無線タグおよび送受信用アンテナの配置および角度等を変更することなく、電気的手段によって、受信手段での応答信号の解析処理に不要な送信波に変化を与えることができるようになる。
【0026】
請求項5および6の発明によれば、電気的手段によって、受信手段での応答信号の解析処理に不要な送信波を小さくすることができるようになる。これにより、さらに高精度な無線タグの性能評価を行うことができるようになる。
【0027】
請求項7の発明によれば、応答信号の周波数の解析を時系列で行うことができるので、より詳細な解析が可能となり、無線タグの性能の良し悪しの判断を容易に行うことができるようになる。
【0028】
請求項8および9の発明によれば、比較的簡単に無線タグの時系列の性能評価を行う評価方法が得られるようになる。
【0029】
請求項10の発明によれば、特別な部品等を使用することなく、無線タグの性能評価を容易に行うことができるようになる。また、屈曲部で略90度曲げられた電波通路を備え、この屈曲部に無線タグが配置されるので、受信用アンテナが受信する送信用アンテナからの送信波を大幅に減衰することが可能になる。このため、無線タグからの応答信号を相対的に強く受信することができるようになり、受信手段での解析処理、すなわち無線タグの性能評価をより容易に行うことが可能となる。
【0030】
請求項11の発明によれば、屈曲部と送信用アンテナとの間に電波通路の断面積を小さくする第1の壁が設けられるので、送信用アンテナからの送信波のうち、反射波を大幅に減衰させつつ、直接波によって無線タグを励起させることが可能となる。さらに、屈曲部と受信用アンテナとの間に電波通路の断面積を小さくする第2の壁が設けられるので、無線タグを励起させた送信波の反射波がさらに減衰されて受信用アンテナに届きにくくなると共に、無線タグからの応答信号の直接波が受信されるようになり、さらに高精度な無線タグの性能評価を行うことができるようになる。
【0031】
請求項12の発明によれば、電波通路が、電波暗箱の内壁部であるようにしたので、特別な部品等を使用することなく、簡単な構成によって無線タグの性能評価が可能となる。
【0032】
請求項13の発明によれば、送信用アンテナおよび受信用アンテナを送信波の1/2波長のダイポールアンテナとしたので、送信用アンテナと受信用アンテナとを直交させることによって指向特性のアイソレーションが簡単に得られるため、無線タグの評価装置を容易に構成することができるようになる。
【0033】
請求項14の発明によれば、応答信号の周波数の解析を時系列で行うことができるので、より詳細な解析が可能となり、無線タグの性能の良し悪しの判断を容易に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る無線タグ評価装置の構成を示した概略説明図である。電波暗箱1は、その内壁にピラミッド型の電波吸収体1aが多数配設された略直方体の電波吸収装置である。この概略説明図は、電波暗箱1の内部を地面に対して水平方向から見た状態を示している。主にICチップおよびアンテナ(ダイポールアンテナ、ホーンアンテナ、パッチアンテナ等の指向性が鋭いものがよい)で構成される無線タグ2は、電波暗箱1のほぼ中央にかつ主面(アンテナ面)が垂直方向に又はほぼ垂直方向になるように支持されている。この無線タグ2を挟んで、右方には、所定の間隔をおいて送信用アンテナ3が配置され、左方には、同様に受信用アンテナ4が配置されている。この送信用アンテナ3および受信用アンテナ4にはダイポールアンテナが好適であり、各ポール部3aおよび4aの長さは送信波の1/2波長となるよう設定されている。また、前記送信用アンテナ3には、無線タグ2のリーダとしての送信手段10から供給される問い合せ(Inquiry)信号を含む周波数信号を増幅するための電力増幅手段11が接続されている。さらに、受信用アンテナ4には、電波周波数に対して種々の解析を行う受信手段12が接続されている。
【0035】
以下に、本実施形態に係る無線タグ評価装置の作動手順を説明する。無線タグ2のリーダとしての送信手段10から問い合せ信号を含む周波数信号が出力されると、これは電力増幅手段11によって増幅されて送信用アンテナ3へ供給される。該送信用アンテナ3からは、受信用アンテナ4の方向に前記周波数信号が送信波20,21として放射される。無線タグ2は、内蔵されるアンテナ部で送信波20を受信すると、電磁誘導の原理で発生する起電力でICチップを作動させると共に、前記問い合せ信号に対する応答(Response)信号30を放射する。この応答信号30は、受信用アンテナ4によって受信されて受信手段12に入力される。本実施形態において、この受信手段12には時系列スペクトラムアナライザが使用される。時系列スペクトラムアナライザは、周知の機器であるので詳細な説明を省略するが、受信される電波の周波数に関して、周波数軸解析と同時に時間軸解析を可能とするものであり、これによって、応答信号30の周波数が詳しく解析され、無線タグ2の性能の良し悪しの判断を行うことができるようになる。上記したような構成によれば、特別な部品を使用せずに容易に無線タグの評価を行うことができるようになる。
【0036】
しかしながら、前記受信用アンテナ4には、無線タグ2からの応答信号30だけではなく、無線タグ2の周囲を通過して、送信用アンテナ3から直接受信用アンテナ4に入る送信波21も入力される。この送信波21は、応答信号30に比して強いため、D/U比(desire:希望波/undesire:非希望波比)が低下して、前記受信手段12によって無線タグ2の性能評価を行うのに十分な応答信号30の分解能を得にくいことがある。これに配慮した実施形態を、以下に説明する。
【0037】
図2は、本発明の第2実施形態に係る無線タグ評価装置の構成を示した概略説明図である。前記と同様の符号は、同一または同等部分を示している。本実施形態では、送信用アンテナ3のポール部3aが地面に対して垂直方向を向き、受信用アンテナ4のポール部3bは地面に対して水平方向を向くように配置されている。すなわち、送信用アンテナ3のポール部3aの偏波面と、受信用アンテナ4のポール部4aの偏波面とが、互いに直交するように配置されている。これに対して無線タグ2は、垂直方向に対して偏波面が45度又は略45度傾くように配置されている。このように無線タグ2を傾けて配置すると、無線タグ2が受信する送信波20は、送信用アンテナ3から放射された状態から約3dB減衰される。すなわち、無線タグ2に誘起される電力は送信電力に対して約3dB減衰することになる。また、これと同様に、受信用アンテナ4のポール部4aは水平方向に配置されているので、受信用アンテナ4が受信する応答信号30は、無線タグ2からの放射電力に対して約3dB減衰される。
【0038】
一方、無線タグ2の周囲を通過した送信波21は、受信用アンテナ4では直接受信できないものの、電波暗箱1の内壁に反射した反射波として受信用アンテナ4に受信される。この時、受信用アンテナ4は、送信時より約30dB減衰された送信波を受信する。
【0039】
本実施形態によれば、受信用アンテナ4が受信する無線タグ2からの応答信号30は、前記第1実施形態の状態と比較して約6dB減衰するものの、応答信号30の解析処理に不要な送信波21が約30dBと大幅に減衰するため、相対的に応答信号30を強く受信することができるようになる。すなわち、D/U比が大きくなる。したがって、前記第1実施形態に比して、受信手段12による応答信号30の解析処理、すなわち無線タグ2の性能評価を、高精度かつ容易に行うことができるようになる。
【0040】
図3に、本発明の第2実施形態の変形例に係る無線タグ評価装置の無線タグおよび送受信アンテナの配置関係を示す。図3は、図1の矢印A方向から見た図である。本実施形態においては、地面に対して垂直に配置した送信用アンテナ3のポール部3aに対し、無線タグ2を右方向に45度回転させ、受信用アンテナ4のポール部4aを右方向に90度回転させている。このように配置すると、前記した第2実施形態の配置状態と同様の作用が働く。したがって、受信用アンテナ4が受信する電波のうち、無線タグ2からの応答信号30(不図示)は約6dB減衰するものの、応答信号30の解析処理に不要な送信波21(不図示)が約30dB減衰するため、相対的に応答信号30を強く受信することができるようになる。
【0041】
なお、前記送信用アンテナ3および受信用アンテナ4と無線タグ2のアンテナとの配置および角度は、上記した実施形態に示したものに限られずに種々の変形を可能とする。また、本発明に係る無線タグ評価装置および方法が、無線タグの伝送形式(電磁結合方式、電磁誘導方式、電波方式等)を限定することなく使用できることは勿論である。
【0042】
図4に、本発明の第3実施形態に係る無線タグ評価装置の構成を示す。前記と同一の符号は、同一または同等部分を示しており、送信用アンテナ3、無線タグ2、受信用アンテナ4等の配置は、前記第1実施形態と同様である。本実施形態では、応答信号30の解析に不要な送信波21を、電気的処理によって小さくしてしまう点に特徴がある。この処理を行うため、本実施形態では、前記第1実施形態の構成に加えて、分配手段13、変換手段としての位相/振幅変換手段14、加算手段15が設けられている。前記位相/振幅変換手段14は、位相変換手段14aと振幅調整手段14bを含んでいる。まず、送信手段10から問い合せ信号を含む周波数信号が出力されると、この周波数信号は、電力増幅手段11によって増幅された後に、分配手段13に入力される。該分配手段13は、入力された周波数信号を、送信用アンテナ3および位相/振幅変換手段14の両者に分配して供給する。
【0043】
前記分配手段13によって送信用アンテナ3に供給された周波数信号は、前記第1実施形態と同様に無線タグ2で受信され、これによって、該無線タグ2は応答信号30を放射する。受信用アンテナ4では、この応答信号30と、無線タグ2の周囲を通過した送信波21とが受信され、該受信信号が加算手段15に入力されることになる。
【0044】
一方、前記分配手段13によって位相/振幅変換手段14に供給された周波数信号は、位相変換手段14aと振幅調整手段14bとによって処理された後に、加算手段15へ入力される。まず、位相変換手段14aでは、前記受信用アンテナ4から加算手段15に入力される送信波21に対して逆位相を成すように位相を変換する処理が行われる。そして、振幅調整手段14bでは、前記受信用アンテナ4から加算手段に入力される送信波21と同じ振幅となるように振幅を調整する処理が行われる。すなわち、位相/振幅変換手段14に供給された周波数信号は、受信用アンテナ4から加算手段15に入力される送信波21と同じ振幅でかつ逆位相を成す信号に変換されて、加算手段15に入力されることになる。
【0045】
そして、加算手段15では、前記受信信号と、位相/振幅変換手段14で変換された周波数信号とが加算処理される。この時、前記直接受信信号の送信波21は、前記位相/振幅変換手段14によって変換された周波数信号によって打ち消されて、略零に減衰されることになる。一方、応答信号30は、前記送信波21と同一振幅かつ逆位相という関係にないので打ち消し合うことはない。このため、受信手段12には応答信号30のみが出力されるようになり、より容易かつ高い精度で無線タグ2の性能評価を行うことができるようになる。
【0046】
なお、上記した第3実施形態による構成に、例えば、前記第2実施形態で示したような送受信アンテナおよび無線タグの配置等を組み合わせてもよいことは勿論である。
【0047】
図5は、本発明の第4実施形態に係る無線タグ評価装置の構成を示した概略説明図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。この概略説明図は、電波暗箱50の内部を鉛直方向上側から見た状態を示している。本実施形態に係る電波暗箱50には、電波吸収体51で覆われた四角形断面の電波通路52が形成されている。この電波通路52は、送信側通路53と受信側通路54とが直交するように結合されることで、屈曲部55を有する略L字型の通路として構成されている。なお、電波通路52の内壁面には、前記第1実施形態で示したようなピラミッド型の電波吸収体が多数配列されてもよい。また、送信側通路53および受信側通路54に配設される送信用アンテナ3および受信用アンテナ4は共にダイポールアンテナであり、各ポール部3a,4aの長さは、送信波の1/2波長に設定されている。したがって、電波通路52の断面を構成する四角形の最小寸法は、送信波の波長によって制限されることになる。なお、送信用アンテナ3に接続される電力増幅手段11および送信手段10、受信用アンテナ4に接続される受信手段12の構成は、前記実施形態と同様である。また、電波通路52の断面形状は、四角形に限られず、菱形や円形とすることも可能である。
【0048】
送信用アンテナ3のポール部3aは、送信側通路53の通路方向に対して直交するように配設されており、また、受信用アンテナ4のポール部4aは、受信側通路54の通路方向に対して直交するように配設されている。そして、無線タグ2は、電波通路52の屈曲部55において、送信用アンテナ3の中心線と受信用アンテナ4の中心線とが直交する位置に、その主面(アンテナ面)が送信アンテナ3のポール部3aと平行をなす角度で設置されている。
【0049】
以下、本実施形態に係る無線タグ評価装置の作動手順を説明する。送信手段10から出力された問い合せ信号を含む周波数信号は、電力増幅手段11によって増幅されて送信用アンテナ3へ供給される。送信用アンテナ3からは、前記周波数信号が送信波20,21として無線タグ2の方向に放射される。このとき、送信用アンテナ3の中心線に対して大きな角度で放射された送信波21は、破線矢印21aに示すように、送信側通路53の電波吸収体51に反射される度に減衰するので、無線タグ2の近傍に届くまでには、約30dB減と大幅に減衰されることとなる。したがって、無線タグ2は、主に送信用アンテナ3の中心線近傍に放射されて直接波として届く送信波20を受信することができる。
【0050】
無線タグ2は、内蔵されるアンテナ部で送信波20を受信すると、電磁誘導の原理で発生する起電力でICチップを作動させると共に、前記問い合せ信号に対する応答信号30を放射する。そして、この応答信号30は、受信用アンテナ4で受信されて受信手段12に入力される。このとき、受信用アンテナ4に受信される直接波としての応答信号30の強さは、無線タグ2の主面と垂直方向に放射される応答信号に比して弱いことがある。しかしながら、送信用アンテナ3から放射された送信波21は、送信側通路53によって減衰(約−30dB)されており、受信用アンテナ4に到達するまでには、受信側通路54によってさらに減衰されるので、受信用アンテナ4が受信する送信波21は、多重反射によって放射時より大幅に減衰されたものとなる。したがって、この送信波21の減衰に伴い、応答信号30が相対的に強く受信されることとなり、受信手段12による応答信号30の解析処理、すなわち無線タグ2の性能評価を高精度かつ容易に行うことができるようになる。
【0051】
図6および図7に、本発明の第5実施形態に係る無線タグ評価装置の構成を示す。図6は電波暗箱60の内部を鉛直方向上側から見た状態の概略説明図であり、図7は電波通路52の斜視図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。本実施形態に係る電波通路52には、送信用アンテナ3と屈曲部55との間に電波吸収体で形成された第1の壁61が設けられていると共に、受信用アンテナ4と屈曲部55との間に電波吸収体で形成された第2の壁62が設けられている点に特徴がある。この第1の壁61および第2の壁62は、その表面にピラミッド型の電波吸収体が多数配列される構成としてもよい。
【0052】
第1の壁61および第2の壁62には、その中央部に略四角形の貫通口61aおよび貫通口62aが形成されている。また、送信側通路53に設けられる第1の壁61と、受信側通路54に設けられる第2の壁62は、それぞれ、屈曲部55に近接した位置に配設されている。この2つの壁が配設された状態において、送信用アンテナ4から放射された送信波21は、第1の壁61によって反射および吸収されてしまい、貫通口61aを通過するのは、ほぼ直接波としての送信波20のみとなる。一方、送信側通路54に設けられる第2の壁62は、第1の壁61の貫通口61aを通過した送信波21があったとしても、該送信波21をさらに反射および減衰させることができる。したがって、第2の壁62の貫通口62aには、無線タグ2からの応答信号30の直接波のみが通過することとなり、この応答信号30が受信用アンテナ4に受信されることになる。
【0053】
上記したような構成によれば、送信用アンテナが放射する送信波のうち、応答信号の解析処理に不要な送信波を大幅に減衰させることができるので、無線タグの性能評価を高精度に行うことが可能となる。なお、電波通路に設けられる第1の壁および第2の壁は、その厚さや貫通口の寸法を任意に設定することが可能である。また、電波通路には、受信側通路の第2の壁を設けず、送信側通路の第1の壁のみを設ける構成としてもよい。また、上記第4および第5本実施形態においても、受信手段に時系列スペクトラムアナライザの適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態に係る無線タグ評価装置の構成を示した概略説明図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る無線タグ評価装置の構成を示した概略説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態の変形例に係る無線タグおよび送受信アンテナの配置関係を示した図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る無線タグ評価装置の構成を示した概略説明図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る無線タグ評価装置の構成を示した概略説明図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る無線タグ評価装置の構成を示した概略説明図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係る無線タグ評価装置の電波通路を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1…電波暗箱、2…無線タグ、3…送信用アンテナ、3a…送信用アンテナポール部、4…受信用アンテナ、4a…受信用アンテナポール部、10…送信手段、11…電力増幅手段、12…受信手段(時系列スペクトラムアナライザ)、13…分配手段、14…位相変換手段、15…加算手段、52…電波通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
問い合せ信号に応答して出力される応答信号に基づいて無線タグを評価する無線タグ評価装置において、
前記無線タグに対する問い合せ信号を含む周波数信号を送信波として提供する送信手段と、
電波暗箱の中央近傍に配置される前記無線タグの一方側に所定間隔隔てて配置され、前記送信手段から供給される問い合せ信号を送出する送信用アンテナと、
前記無線タグの一方側の反対側に所定間隔隔てて配置され、前記問い合せ信号に応答して前記無線タグから送出される応答信号を受信する受信用アンテナと、
前記受信用アンテナと接続され、前記応答信号を解析処理する受信手段とを具備することを特徴とする無線タグ評価装置。
【請求項2】
前記送信用アンテナと受信用アンテナとが互いに直交するように配置され、
前記無線タグの主面は、前記送信用および受信用アンテナに対して略45度の角度を成すように配置されることを特徴とする請求項1に記載の無線タグ評価装置。
【請求項3】
前記送信用アンテナおよび受信用アンテナは、前記送信波の1/2波長のダイポールアンテナであることを特徴とする請求項1または2に記載の無線タグ評価装置。
【請求項4】
前記送信手段から送信される送信波を、送信用アンテナ側と他方側とに分配する分配手段と、
該他方側に分配された送信波の位相および振幅を変える変換手段と、
前記受信用アンテナの受信波に、前記変換手段で変換された送信波を加える加算手段とを設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の無線タグ評価装置。
【請求項5】
前記変換手段は、前記他方側に分配された送信波に、前記受信用アンテナから加算手段に入力される受信信号から前記応答信号を除いた信号に対して逆位相を与えることを特徴とする請求項4に記載の無線タグ評価装置。
【請求項6】
前記変換手段は、前記他方側に分配された送信波の振幅を、前記受信用アンテナから加算手段に入力される受信信号から前記応答信号を除いた信号と同一又はほぼ同一に調整することを特徴とする請求項5に記載の無線タグ評価装置。
【請求項7】
前記受信手段は、時系列スペクトラムアナライザであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の無線タグ評価装置。
【請求項8】
問い合せ信号に応答して出力される応答信号に基づいて無線タグを評価する無線タグ評価方法において、
電波暗箱の中央近傍に無線タグを配置し、
無線タグの一方側に所定間隔隔てて送信用アンテナを配置し、
前記無線タグの一方側の反対側に所定間隔隔てて受信用アンテナを配置し、
前記送信用アンテナに接続された送信手段から無線タグに問い合せ信号を送信し、
前記受信用アンテナに接続された受信手段によって前記応答信号を解析処理することを特徴とする無線タグ評価方法。
【請求項9】
前記受信手段は、時系列スペクトラムアナライザであることを特徴とする請求項8に記載の無線タグ評価方法。
【請求項10】
問い合せ信号に応答して出力される応答信号に基づいて無線タグを評価する無線タグ評価装置において、
前記無線タグに対する問い合せ信号を含む周波数信号を送信波として提供する送信手段と、
四角形断面を有すると共に屈曲部で略90度曲げられ、かつ内壁面が電波吸収体で覆われた電波通路と、
前記電波通路の屈曲部に対して一方側に配置され、前記送信手段から供給される問い合せ信号を送出する送信用アンテナと、
前記電波通路の屈曲部に対して他方側に配置され、前記問い合せ信号に応答して前記無線タグから送出される応答信号を受信する受信用アンテナと、
前記電波通路の屈曲部で、前記送信用アンテナの中心線と前記受信用アンテナの中心線とが直交する位置に配置された無線タグと、
前記受信用アンテナと接続され、前記応答信号を解析処理する受信手段とを具備することを特徴とする無線タグ評価装置。
【請求項11】
前記屈曲部と送信用アンテナとの間と、前記屈曲部と受信用アンテナとの間に、それぞれ、電波吸収体で形成され、前記電波通路の断面積を中央寄りに縮小する第1の壁および第2の壁が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の無線タグ評価装置。
【請求項12】
前記電波通路は、電波暗箱の内壁部であることを特徴とする請求項10または11に記載の無線タグ評価装置。
【請求項13】
前記送信用アンテナおよび受信用アンテナは、前記送信波の1/2波長のダイポールアンテナであることを特徴とする請求項10ないし12のいずれかに記載の無線タグ評価装置。
【請求項14】
前記受信手段は、時系列スペクトラムアナライザであることを特徴とする請求項10ないし13のいずれかに記載の無線タグ評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−87378(P2007−87378A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226943(P2006−226943)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】