説明

無線タグ探索装置

【課題】 発光素子を備えていない無線タグの読取エリア内の位置を迅速に探し出せるようにする。
【解決手段】 操作パネル2と、表示器3と、送信アンテナ4と、無指向性受信アンテナ5と、左指向性受信アンテナ6Lと、右指向性受信アンテナ6Rとを備えた携帯型の装置である。無指向性受信アンテナ5が無線タグ4からの応答電波を検出したことに基づいて左指向性受信アンテナ6L及び右指向性受信アンテナ6Rの受信信号のレベルを検出し、それらのレベル差に基づいて、無線タグからの応答電波の到来方向を判定し、表示器3に矢印A1〜A3により「左」、「中央」、「右」を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線タグの位置探索を行う装置に関し、特に読取エリアに存在する無線タグの位置を探索できる無線タグ探索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線タグはバーコードに代わる物品識別手段として商品等に添付されている。無線タグはRFID(Radio Frequency IDentification)タグ或いはICタグとも呼ばれている。無線タグは、タグID(タグ識別情報)等のデータを保持したメモリと、送受信回路と、アンテナとを備えており、無線タグ読取装置の読取エリア(無線タグ読取装置と無線タグとの交信可能範囲)に入ると、無線タグ読取装置から送信される電波を受信・整流して動作用電力を得ると共にメモリに保持しているデータに応じて変調した電波を無線タグ読取装置に送り返すことで、データの読取を可能にする。なお、無線タグには、このような無線タグ読取装置からの電波を用いて動作用電力を得るパッシブ型と、電池を内蔵するアクティブ型とがあり、アクティブ型の方が交信可能距離が長い。
【0003】
無線タグ読取装置は、複数の無線タグが読取エリアに存在しても、それぞれ別々に認識して読み取ることができる(アンチコリジョン機能)。しかし、例えば無線タグが取り付けられた多数の図書が配置されている書棚から目的の図書を探すような場合は、無線タグ読取装置で可能なのは目的の図書が読取エリアに存在することの識別迄であり、探し出すのは目視で行う必要があるため時間がかかる。そこで、このような問題を解決するため、LED等の発光素子を備えた発光素子付無線タグが提案されている(特許文献1参照)。この発光素子付無線タグを用い、目的の物品に取り付けられた無線タグの発光素子を発光させることにより、目的の物品を迅速に探し出すことができる。
【特許文献1】特開2000−306062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の発光素子付無線タグは発光素子を備えている分、消費電力が多くなるため、パッシブ型で構成した場合は無線タグ読取装置を無線タグからの近距離に接近させる必要があるので、読取エリア(交信可能範囲)が狭くなってしまう。また、無線タグの発光素子が無線タグ読取装置のユーザから見える場所に取り付けることが必要であるため、取付位置が制限されてしまう。さらに、発光素子を備えている分、無線タグが高価になってしまう。アクティブ型で構成すれば広い読取エリアを確保できるが、内蔵電池の寿命に対する考慮が必要になり、また無線タグが高価になってしまう。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、発光素子を備えていない無線タグの読取エリア内の位置を迅速に探し出せるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、タグIDで変調された無線電波を受信したとき、そのタグIDが自分のタグIDと一致した場合に無線電波を応答するようにした無線タグの位置を探索する無線タグ探索装置であって、前記無線タグの存在するエリアに探索対象である無線タグのタグIDで変調した無線電波を送信する送信手段と、それぞれ前記無線タグからの応答電波を受信する無指向性受信手段及び互いに異なる方向の指向性を有する複数の指向性受信手段と、前記無指向性受信手段の受信信号の振幅を検出する第1の振幅検出手段と、該第1の振幅検出手段の出力に基づいて前記無線タグの有無を判別する判別手段と、該判別手段により前記無線タグが有ると判別されたときに前記複数の指向性受信手段を動作させるように制御する制御手段と、前記複数の指向性受信手段の受信信号の振幅に基づいて前記応答電波の到来方向を判定する方向判定手段とを備えたことを特徴とする無線タグ探索装置である。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の無線タグ探索装置において、前記方向判定手段で判定した到来方向を表示する表示手段を備えたことを特徴とする無線タグ探索装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1記載の無線タグ探索装置において、前記指向性受信手段の受信信号の振幅を検出する第2の振幅検出手段を備え、前記制御手段は、前記第2の振幅検出手段で検出された振幅が所定値以下のときに前記指向性受信手段の動作を停止させることを特徴とする無線タグ探索装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、探索対象である無線タグが読取エリアのどの方向に存在するかを表示するので、無線タグの位置を迅速に探し出せる。また、無線タグからの応答電波の振幅を同時に表示して、無線タグまでの距離の把握を可能にすることにより、より迅速に無線タグの位置を探し出せる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る無線タグ探索装置の正面図、図2はその電気的構成のブロック図、図3はその動作を示すフローチャートである。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係る無線タグ探索装置1は、操作パネル2と、表示器3と、送信アンテナ4と、無指向性受信アンテナ5と、左指向性受信アンテナ6Lと、右指向性受信アンテナ6Rと、スピーカ7と、ランプ8とを備えた携帯型の装置である。
【0010】
操作パネル2は、無線タグ探索装置1の筐体の正面側中央部に配置されており、この無線タグ探索装置1を操作するための各種キー(電源キー、数字キー等)を備えている。表示器3は、操作パネル2に対する筐体先端側に配置された液晶表示器等からなる表示器であり、この無線タグ探索装置1の動作状態や操作パネル2から入力された情報等を表示する。スピーカ7は、この無線タグ探索装置1のユーザに通知するための音声メッセージを出力する。ランプ8は、この無線タグ探索装置1の動作状態を表示する。
【0011】
送信アンテナ4は、筐体の先端部に配置されており、探索対象である無線タグ(図示せず)が存在するエリアに対して無線電波を送信する。無指向性受信アンテナ5は、筐体の先端部中央に配置されており、無線タグからの応答電波をその到来方向に関係なく受信する。左指向性受信アンテナ6L、右指向性受信アンテナ6Rは、それぞれ筐体の先端部左右に配置されており、それぞれ左又は右方向から到来する無線タグからの無線電波を受信する。ここで、送信アンテナ4の指向性及び送信電波強度により無線電波の到達するエリアが読取エリアとなり、そのエリアに存在する無線タグからの応答電波が左方向から到来した場合は無指向性受信アンテナ5及び左指向性受信アンテナ6Lで受信し、右方向から到来した場合は無指向性受信アンテナ5及び右指向性受信アンテナ6Rで受信する。中央方向から到来した場合は無指向性受信アンテナ5で受信する。また、受信信号レベルは低いが、左指向性受信アンテナ6L及び右指向性受信アンテナ6Rも受信する。
【0012】
図2に示すように、無線タグ探索装置1は、この装置全体の制御等を行う制御部11と、それぞれが制御部11に接続された変調器12、復調器及びレベル計15、左レベル計17L、右レベル計17R、並びに混合器及び復調器18を備えている。また、図1を参照しながら説明した操作パネル2及び表示器3も制御部11に接続されている。さらに、この無線タグ探索装置1の各部に動作用電力を供給するための電池19を備えている。
【0013】
変調器12の出力側は増幅器13に接続され、その出力側は送信アンテナ4に接続されている。無指向性受信アンテナ5の出力側は増幅器14に接続され、その出力側は復調器及びレベル計15に接続され、その出力側は制御部11に接続されている。また、左右の指向性受信アンテナ6L,6Rの出力側は増幅器16L,16Rに接続され、それらの出力側は左右のレベル計17L,17Rに接続され、それらの出力側は制御部11に接続されている。増幅器16L,16Rの出力側は混合器及び復調器18にも接続され、その出力側は制御部11に接続されている。
【0014】
以上の構成を備えた無線タグ探索装置1の制御部11の動作について図3のフローチャートを参照しながら説明する。このフローチャートの処理は、操作パネル2から探索対象となる無線タグのタグIDを入力した後、スタートキーを操作することで開始する。
【0015】
制御部11は、操作パネル2からの入力操作を検出すると、入力されたタグIDを内蔵するRAMに記憶すると共に、そのタグIDを含むデータを無線タグに送信するためのデータとして生成し、変調器12へ送る。そのデータは変調器12にて搬送波を変調し、変調器12の出力信号は増幅器13により増幅されて、送信アンテナ4から送信される。このとき、ユーザは無線タグ探索装置1の先端を探索対象である無線タグの存在する方向に向けているので、送信アンテナ4から送信された電波は無線タグに到達する。
【0016】
無線タグは、タグID等のデータを保持したメモリと、送受信回路と、アンテナとを備えており、無線タグ読取装置から送信される電波を受信・整流して動作用電力を得ると共に、受信したデータ中のタグIDと自身がメモリに保持しているタグIDとが一致した場合は、自身が保持しているデータ(タグIDを含む)に応じて変調した電波を応答する。
【0017】
無線タグ探索装置1の制御部11は、まず無指向性アンテナ5の受信信号の振幅を読み取り(ステップS1)、その有無を判定する(ステップS2)。即ち、無指向性アンテナ5で受信し、増幅器14で増幅し、復調器及びレベル計15で振幅測定した受信信号の振幅を読み取る。受信信号の振幅がゼロであった場合は、受信不可能であること及び無線タグに接近することを促すことのメッセージを作成し、表示器3に表示させ(ステップS3)、ステップS1に戻る。なお、表示器3で表示する代わりに又は同時にスピーカ7からの音声で通知するように構成してもよい。
【0018】
受信信号の振幅がゼロでなかった場合には、ランプ8を点灯すると共に左指向性受信アンテナ6L及び右指向性受信アンテナ6Rの受信信号の振幅を検出し(ステップS4)、それらのレベルの有無を判定する(ステップS5)。即ち、左右の指向性アンテナ6L,6Rで受信し、増幅器16L,16Rで増幅し、レベル計17L,17Rで測定した受信信号の振幅を読み取る。なお、読取エリア内に無線タグが確実に存在する場合には、探索を開始すると同時にステップS1及びS2を省略し、ステップS4を実行するように設定してもよい(図の破線)。また、制御部11は、受信信号の振幅を読み取ったときに、復調されたタグIDが登録したタグIDと一致するか否かを認証し、一致した場合(当然、振幅はゼロではない)のみ、受信レベルがゼロでないと判定してもよい。
【0019】
制御部11は、レベル計17L,17Rの計測値を比較し、その差が一定値以下の場合は表示器3に中央の矢印A2を表示させ、その差が一定値を超え、かつレベル計17Lの計測値の方が大きい場合は表示器3に左の矢印A1を表示させ、その差が一定値を超え、かつレベル計17Rの計測値の方が大きい場合は表示器3に右の矢印A3を表示させる。ここで、中央の矢印A2は無線タグからの電波が無線タグ探索装置1の前方の中央方向から到来すること、従って、無線タグが読取エリアの中央部に存在することを示している。同様に、左の矢印A1、右の矢印A3は、それぞれ無線タグが読取エリアの左部又は右部に存在することを示している。制御部11は、表示器3に矢印を表示させると共に、矢印方向へ進むことを促すメッセージを表示器3に表示させる(ステップS9)。このとき、矢印の長さにより左右のレベル計17L,17Rの計測値の差の大きさも表示する。
【0020】
ステップS5において左右の受信信号の振幅が共にゼロであった場合は、ランプ8を消灯すると共に、受信不可能であること及び無線タグに接近することを促すことのメッセージを表示器3に表示させた(ステップS6)後に、再度復調器及びレベル計15の計測値を読み取り、その有無を判定する(ステップS7)。そして、振幅がゼロであった場合は、読取エリア外であること及び無線タグに接近することを促すことのメッセージを作成し、表示器3に表示させ(ステップS8)、ステップS1に戻る。また、振幅がゼロでなかった場合は、ランプ8を点灯した後にステップS4へ戻る。ここで、ステップS6〜8の処理は、ユーザが無線タグに接近したつもりであっても実際は遠ざかってしまうことも考慮し、再度探索をやり直せるようにしたものである。
【0021】
ステップS9にて矢印方向へ進むことを促すメッセージを表示器3に表示させた後に、矢印方向からの電波の受信信号の強度が高くなっているか否かを判定する(ステップS10)。高くなっていた場合は、その無線タグが1つであるか否かを判定する(ステップS11)。ここで、表示器3で表示している矢印の方向に1つの無線タグのみしか存在しない場合は1つであると判定し、複数の無線タグが存在し、探している無線タグを特定できない場合は1つではないと判定する。つまり、この判定はユーザが行う。
【0022】
ステップS11において、無線タグが1つであると判定したとき、ユーザは操作パネル2から探索終了操作を行う(ステップS12)。制御部11は、この探索終了操作の検出に基づいて、先にRAMに記憶したタグIDを消去し、探索処理を終了させる。なお、探索終了操作が行われるまで、ステップS4から繰り返す。
【0023】
ステップS11において、無線タグが1つではない(2つ以上)と判定したとき、ユーザは操作パネル2から、送信電力を低下させる指示を入力する(ステップS13)。制御部11は、この指示に基づいて増幅器13のゲインを低下させ、ユーザが矢印方向へ進むことに伴ってその方向からの電波の受信信号の強度が高くなっているか否かを判定する(ステップS14)。そして、高くなっていない場合は、ステップS4へ移行し、高くなっていた場合はステップS11へ移行する。
【0024】
[第2の実施形態]
図4(a)は本発明の第2の実施形態に係る無線タグ探索装置の正面図であり、図4(b)はその右側面図である。
【0025】
本実施形態に係る無線タグ探索装置21は、操作パネル22と、表示器23と、送信アンテナ24と、無指向性受信アンテナ(図示せず)と、左指向性受信アンテナ25Lと、右指向性受信アンテナ25Rと、下指向性受信アンテナ25Uと、テレビカメラ26と、スピーカ27と、ランプ28とを備えた携帯型の装置である。ここで、表示器23、送信アンテナ24、無指向性受信アンテナ、左右の指向性受信アンテナ25L,25R、スピーカ27及びランプ28は、第1の実施形態に係る無線タグ探索装置1における同名の構成要素と同じものである。つまり、本実施形態は、第1の実施形態に係る無線タグ探索装置1に対して、下指向性受信アンテナ25U及びテレビカメラ26を付加したものである。
【0026】
本実施形態に係る無線タグ探索装置21の電気的構成のブロック図は、図2において下指向性受信アンテナ25U、その受信信号の増幅器、及びその振幅レベルを測定するレベル計、並びにテレビカメラ26を付加すると共に、前記増幅器の出力信号を混合器及び復調器18に入力するように接続したものである。テレビカメラ26の光軸29は、無線タグ探索装置21の筐体の先端部の斜め下方に向いている。無線タグ探索装置21の表示器23の画面には、テレビカメラ26で撮影した読取エリアにおける探索対象の無線タグの概略の位置がマーカーMとして表示される。図4(a)では、無線タグが読取エリアの中央の少し左側に存在することを示している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線タグ探索装置の正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る無線タグ探索装置の電気的構成のブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る無線タグ探索装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る無線タグ探索装置の正面図及び右側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1、21・・・無線タグ探索装置、2、22・・・操作パネル、3、23・・・表示器、4、24・・・送信アンテナ、5・・・無指向性アンテナ、6L、6R、25L、25R、25U・・・指向性アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タグIDで変調された無線電波を受信したとき、そのタグIDが自分のタグIDと一致した場合に無線電波を応答するようにした無線タグの位置を探索する無線タグ探索装置であって、前記無線タグの存在するエリアに探索対象である無線タグのタグIDで変調した無線電波を送信する送信手段と、それぞれ前記無線タグからの応答電波を受信する無指向性受信手段及び互いに異なる方向の指向性を有する複数の指向性受信手段と、前記無指向性受信手段の受信信号の振幅を検出する第1の振幅検出手段と、該第1の振幅検出手段の出力に基づいて前記無線タグの有無を判別する判別手段と、該判別手段により前記無線タグが有ると判別されたときに前記複数の指向性受信手段を動作させるように制御する制御手段と、前記複数の指向性受信手段の受信信号の振幅に基づいて前記応答電波の到来方向を判定する方向判定手段とを備えたことを特徴とする無線タグ探索装置。
【請求項2】
請求項1記載の無線タグ探索装置において、前記方向判定手段で判定した到来方向を表示する表示手段を備えたことを特徴とする無線タグ探索装置。
【請求項3】
請求項1記載の無線タグ探索装置において、前記指向性受信手段の受信信号の振幅を検出する第2の振幅検出手段を備え、前記制御手段は、前記第2の振幅検出手段で検出された振幅が所定値以下のときに前記指向性受信手段の動作を停止させることを特徴とする無線タグ探索装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−71380(P2006−71380A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253478(P2004−253478)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】