説明

無線チャネル中継方法及び無線中継装置

【課題】受信処理の簡素化を実現し、受信処理の実装及び動作検証の効率化を高める。
【解決手段】この無線中継装置3は、制御部36により、移動局から送信された、移動局との通信チャネルを確立するための要求信号を、アンテナ31及び無線回路33を介して移動局との制御チャネルが割り当てられている受信用スロットに受信し、移動局との通信チャネルを確立するための割当信号を無線回路33及びアンテナ31を介して移動局に送信し、割当信号を送信した後、移動局との制御チャネルが割り当てられていた受信用スロットに、移動局との通信チャネルを固定して割り当てを行い、移動局からの同期バースト信号を上記受信用スロットに受信することを繰り返し試み、予め決められた時間内に同期バースト信号を受信しなかった場合に、移動局との通信チャネルを確立するための再割当信号を無線回路33及びアンテナ31を介して移動局に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、PHS(Personal Handy phone System)などの無線通信システムに用いる無線チャネル中継方法及び無線中継装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、PHSなどの無線通信システムSには、図2に示すように、中継機能を有する無線中継装置3を用いたものがある。無線中継装置3は、ネットワーク(図示せず)に接続された基地局1からの無線信号(例えば、制御信号など)が移動局2に充分に届かない場合に設置される。例えば、建物5の屋外に設置されている基地局1から送信された無線信号が、建物5の窓際50aまで届くが、建物5の屋内の窓50から離れた場所51に所在する移動局2まで充分に届かない場合に、無線中継装置3は、上記建物5の窓際50aに設置され、基地局1から送信された無線信号を中継して移動局2に送信するとともに、移動局2から送信された無線信号を中継して基地局1に送信する。これにより基地局1と移動局2との間で通信を行うことができる。
【0003】
このとき、無線中継装置3は、基地局1との通信チャネルを確立した後、移動局2との通信チャネルを確立する。その際に、移動局2との制御チャネルが割り当てられていた受信用タイムスロット(以下、「受信用スロット」という)41a(図6参照)に、移動局2との通信チャネルを割り当てる場合がある。例えば、無線中継装置3が同時に2台の移動局2(図2では、1台のみ図示)に対して中継処理を提供する機能を有する場合に、一方の移動局2との通信チャネルが中継中の状態において、他方の移動局2との中継処理を起動するときに、制御チャネルが割り当てられていた受信用スロット41aに他方の移動局2との通信チャネルを割り当てなければならない場合等である。
【0004】
上記の動作を行うために、最近の無線中継装置3は、図6に示すように、移動局2との制御チャネルが割り当てられていた受信用スロット41aに、移動局2との制御チャネルと通信チャネルとを切り替えて割り当てる手段を備えている。なお、移動局2のスロット構成は図3に示している。
【0005】
例えば、無線中継装置3(図2参照)は、受信用スロット41aにおいて、合計20回の受信タイミングのうち、1回を移動局2(図2参照)との制御チャネルを待ち受けて受信するタイミングとし、残り19回を移動局2との通信チャネルを待ち受けて受信するタイミングとする規則で動作している場合、移動局2との制御チャネルを待ち受けて受信する処理と、移動局2との通信チャネルを待ち受けて受信する処理とを切り替えながら動作させている。
【0006】
無線中継装置3(図2参照)の制御部は、移動局2(図2参照)との通信チャネルを確立するための要求信号(要求メッセージ)を移動局2から受信した後、先ず、基地局1(図2参照)との通信チャネルを確立する(図4のt1〜t4参照)。その後、図7に示すように、移動局2との通信チャネルを確立するための割当信号を移動局2に送信する(図7のt1)。移動局2との制御チャネルを受信用スロット41a(図6参照)に割り当てた後に(t2)、移動局2との通信チャネルに切り替えて割り当てる(t3)。同期バースト信号などの通信チャネルの信号を待ち受けて受信する処理を行い(t4)、再度、受信用スロット41aに移動局2との制御チャネルを割り当てたときには(t6)、移動局2との通信チャネルを確立するための再要求信号(再要求メッセージ)などの制御チャネルの信号を待ち受けて受信する処理を行う(t7)。
【0007】
次に、上記無線中継装置3(図2参照)において、基地局1(図2参照)との通信チャネルを確立した後、移動局2(図2参照)との通信チャネルを確立するための動作について図8を用いて説明する。先ず、予め決められた時間内に、移動局2から同期バースト信号を受信した場合について説明する。最初に、移動局2から送信された、移動局2との通信チャネルを確立するための要求信号を、移動局2との制御チャネルが割り当てられている受信用スロット41a(図6参照)に受信した後、基地局1との通信チャネルを確立する。次に、移動局2との通信チャネルを確立するための割当信号を移動局2に送信する(図8のS1)。上記割当信号を送信した後、タイマ(図示せず)を起動し、割当信号を送信してからの時間、つまり、移動局2からの同期バースト信号の待ち時間を計測する(S2)。タイマにより設定された予め決められた時間内であり(S3)、移動局2との通信チャネルの信号を受信するタイミングになると(S4)、移動局2との制御チャネルが割り当てられていた受信用スロット41aに移動局2との通信チャネルを割り当てるように切り替え、通信チャネルの信号を受信する処理状態にする(S5)。ここで、移動局2からの同期バースト信号を受信用スロット41aに受信することを繰り返し試みる(S6)。上記同期バースト信号を受信した後、同期バースト信号を移動局2に送信し、さらに、TCHバースト信号を移動局2に送信し、移動局2からTCHバースト信号を受信する(S7)。これにより、無線中継装置3は、移動局2との通信チャネルを確立する。
【0008】
これに対して、予め決められた時間内に、移動局2(図2参照)から同期バースト信号を受信しなかった場合について説明する。最初に、(S1)〜(S6)の動作を行う。移動局2からの同期バースト信号を受信用スロット41a(図6参照)に受信しなければ、上記(S3)からの動作を再度行う。移動局2との制御チャネルの信号を受信するタイミングになると(S4)、制御チャネルの信号を受信する処理状態に切り替わり(S8)、移動局2との通信チャネルを確立するための再要求信号を移動局2から受信し(S9)、再割当の回数が規定値以下であるか否かを判断する(S10)。規定値以下であれば、移動局2との通信チャネルを確立するための再割当信号を移動局2に送信し(S11)、上記(S2)からの動作を再度行う。規定値を超えていれば、移動局2との通信チャネルを確立するための処理を停止する(S12)。さらに、タイマによる計測を開始してから予め決められた時間内に移動局2から同期バースト信号を受信しないときには(S3)、上記(S10)からの動作を行う。
【0009】
なお、特許文献1には、無線基地局と無線中継装置との間で割り当てられた1つ目の通信チャネルを選択し、この割り当てられた1つ目の通信チャネル及び無線基地局から送信される制御チャネルから無線端末に割り当てる通信チャネルを決定することにより、無線基地局から割り当てられた2つ目の通信チャネルが無線端末に割り当てられた1つ目の通信チャネルに等しくなることを防ぎ、呼損率を低減する無線通信システム、無線チャネル割当方法及び無線中継装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−53673号公報(第4頁−第7頁、及び、第1,2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の無線中継装置などは、移動局との制御チャネルの信号を待ち受けて受信する処理、及び移動局との通信チャネルの信号を待ち受けて受信する処理の両方を必要とするので、受信処理が複雑になるとともに、受信処理の実装と動作検証に手間がかかるという問題があった。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、受信処理の簡素化を実現することができ、受信処理の実装及び動作検証の効率化を高めることができる無線チャネル中継方法及び無線中継装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、所定の時間長を有する1フレームを時分割した複数のスロットを受信用スロットと送信用スロットとに分け、前記スロットに制御チャネル又は通信チャネルを割り当てて、ネットワークに接続された基地局と移動局との間で無線通信を行う無線通信システムに、前記基地局又は移動局の一方から送信された無線信号を他方に中継する無線中継装置を用いて、前記移動局との通信チャネルを確立するための要求信号を前記移動局向けの受信用スロットに受信し、前記移動局との通信チャネルを確立するための割当信号を前記移動局に送信する無線チャネル中継方法であって、前記割当信号を送信した後、前記移動局向けの受信用スロットに、前記移動局との通信チャネルを固定して割り当てを行い、前記移動局からの同期バースト信号を前記移動局向けの受信用スロットに受信することを繰り返し試み、予め決められた時間内に前記同期バースト信号を受信しなかった場合に、前記移動局との通信チャネルを確立するための再割当信号を前記移動局に送信することを特徴とする。
【0013】
この構成では、移動局向けの受信用スロットにおいて、制御チャネルを受信する処理と通信チャネルを受信する処理とを、移動局の動作に合わせて順次切り替える必要がないので、受信処理の簡素化を実現することができ、受信処理の実装及び動作検証の効率化を高めることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、所定の時間長を有する1フレームを時分割した複数のスロットを受信用スロットと送信用スロットとに分け、前記スロットに制御チャネル又は通信チャネルを割り当てて、ネットワークに接続された基地局と移動局との間で無線通信を行う無線通信システムに用いられ、前記移動局との通信チャネルを確立するための要求信号を前記移動局向けの受信用スロットに受信する受信手段と、前記移動局との通信チャネルを確立するための割当信号を前記移動局に送信する送信手段とを備え、前記基地局又は移動局の一方から送信された無線信号を他方に中継する無線中継装置であって、前記割当信号を送信した後、前記移動局向けの受信用スロットに、前記移動局との通信チャネルを固定して割り当てを行う割当手段を備え、前記受信手段は、前記移動局からの同期バースト信号を前記移動局向けの受信用スロットに受信することを繰り返し試み、前記送信手段は、予め決められた時間内に前記同期バースト信号を受信しなかった場合に、前記移動局との通信チャネルを確立するための再割当信号を前記移動局に送信することを特徴とする。
【0015】
この構成では、移動局向けの受信用スロットにおいて、制御チャネルを受信する処理と通信チャネルを受信する処理とを、移動局の動作に合わせて順次切り替える必要がないので、受信処理の簡素化を実現することができ、受信処理の実装及び動作検証の効率化を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、受信処理の簡素化を実現することができ、受信処理の実装及び動作検証の効率化を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を第二世代コードレス電話システム標準規格(RCR STD−28 4.0版、社団法人電波産業会発行)に準拠した無線通信システムに用いる無線中継装置(中継局)に適用した実施形態について説明する。ただし、基地局及び移動局の構成並びに動作と、無線中継装置の基本動作については上記標準規格に規定されているように従来周知であるから説明を省略する。
【0018】
本実施形態の無線通信システムSは、例えば1.9GHz帯の無線周波数を利用しているPHSなどであり、図2に示すように、基地局1、移動局2、無線中継装置3を備え、基地局1と移動局2との間で、無線中継装置3を介して無線通信を行う。
【0019】
上記無線通信の方式の一例として、例えば4チャネル多重のTDMA−TDD(Time Division Multiple Access−Time Division Duplex)方式がある。本実施形態では上記TDMA−TDD方式を用いている。TDMA−TDD方式では、図3に示すように、所定の時間長(例えば、5msecなど)を有するフレーム4を無線信号の1単位として設定し、さらにフレーム4を8等分に時分割したものをスロット(時間長0.625msec)40…,41…として規定している。そして、フレーム4内にある8つのスロット40…,41…のうち、4つのスロットを送信用スロット40…、残りの4つのスロットを受信用スロット41…に分けている。上記スロット40…,41…に制御チャネル又は通信チャネルを割り当てている。本実施形態では、送信用スロット40…のうち、40aを移動局2との制御チャネルが割り当てられている送信用スロットとし、受信用スロット41…のうち、41aを移動局2との制御チャネルが割り当てられている受信用スロットとする。
【0020】
各スロット40…,41…には160bitのデータが含まれ、基地局1(図2参照)と無線中継装置3(図2参照)との間、及び無線中継装置3と移動局2(図2参照)との間で5msec毎に160bitのデータが半二重で伝送されるので、単位時間当たりに32kbit/secの通信速度が得られる。なお、本実施形態では20個のフレームで1周期とし、1つのフレーム4の時間長が5msecの場合、1周期は100msecである。
【0021】
また、TDMA−TDD方式を採用したPHSにおいては、1884.650MHz〜1919.450MHzの範囲で300kHz毎に設定された多数の周波数チャネル(周波数キャリア)が4つのスロット毎に多重化されている。そのうち、接続に必要な制御情報を転送するといった目的を有する制御チャネルには、通信事業者毎に特定の周波数チャネルが割り当てられ、それ以外の周波数チャネルがユーザ情報を転送することを目的とした通信チャネルに割り当てられている。
【0022】
基地局1は、図2に示すように、建物5の屋外に設置され、例えば、他の基地局、公衆電話網、及び通信事業者独自のネットワーク(全て図示せず)に接続されている。また、移動局2は、例えばPHS端末であり、建物5の屋内の窓50から離れた場所51に所在し、無線中継装置3との通信チャネルを確立するための要求信号又は再要求信号を無線中継装置3に送信する(図4のt1,t8)。
【0023】
無線中継装置3は、図1に示すように、アンテナ30,31、無線回路32,33、ベースバンド回路34,35、制御部36を備え、図2に示すように、例えば建物5の窓際50aなどに設置され、基地局1から送信された無線信号を中継して移動局2に送信するとともに、移動局2から送信された無線信号を中継して基地局1に送信する。これにより、建物5の屋外に設置された基地局1と、建物5の屋内の窓50から離れた場所51に所在する移動局2との間で通信を行うことができる。
【0024】
アンテナ30は、図1に示すように、無線回路32と接続し、基地局1(図2参照)との間で無線信号(電波信号)の送受信を行う。無線回路32は、アンテナ30及びベースバンド回路34と接続し、アンテナ30で受信された無線信号に基づく高周波信号をベースバンド信号に変換し、そのベースバンド信号をベースバンド回路34に出力するとともに、ベースバンド回路34から入力されたベースバンド信号を高周波信号に変換し、その高周波信号を無線信号としてアンテナ30から基地局1に送信させる。ベースバンド回路34は、無線回路32及び制御部36と接続し、TDMA−TDD方式に従い、基地局1に対する無線回線における音声信号及び制御信号の送受信を制御する。
【0025】
これに対して、アンテナ31は、無線回路33と接続し、移動局2(図2参照)との間で無線信号の送受信を行う。無線回路33は、アンテナ31及びベースバンド回路35と接続し、アンテナ31で受信された無線信号に基づく高周波信号をベースバンド信号に変換し、そのベースバンド信号をベースバンド回路35に出力するとともに、ベースバンド回路35から入力されたベースバンド信号を高周波信号に変換し、その高周波信号を無線信号としてアンテナ31から移動局2に送信させる。ベースバンド回路35は、無線回路33及び制御部36と接続し、TDMA−TDD方式に従い、移動局2に対する無線回線における音声信号及び制御信号の送受信を制御する。
【0026】
制御部36は、CPU、メモリ及びタイマ(全て図示せず)などを備え、ベースバンド回路34,35と接続し、メモリに記憶されているプログラムをCPUで実行することにより、無線中継装置3全体の統括制御を行う。
【0027】
制御部36は、移動局2(図2参照)から送信された、移動局2との通信チャネルを確立するための要求信号を、受信用スロット41a(図3参照)に受信する(図4のt1)。上記要求信号を受信した後、基地局1(図2参照)との通信チャネルを確立する(図4のt2〜t4)。その後、無線回路33及びアンテナ31を介して、移動局2との通信チャネルを確立するための割当信号を移動局2に送信する(t5)。上記割当信号を送信した後に、タイマ(図示せず)は、割当信号を送信してからの時間を計測する。
【0028】
制御部36は、割当信号を送信後、移動局2(図2参照)との制御チャネルが割り当てられていた受信用スロット41a(図3参照)に移動局2との通信チャネルを固定して割り当てるように切り替えを行い、移動局2からの同期バースト信号を受信用スロット41aに受信することを繰り返し試みる(図4のt6)。この間、移動局2との通信チャネルの信号を受信するタイミングであっても、移動局2との制御チャネルの信号を受信するタイミングであっても、一貫して通信チャネルの信号を受信する処理を行う。これにより、受信タイミング毎に、通信チャネルの信号を受信する処理と、制御チャネルの信号を受信する処理とを動的に切り替える必要がなくなる。
【0029】
このようにすると、例えば、合計20回の受信タイミングのうち、1回を移動局2(図2参照)との制御チャネルを待ち受けて受信するタイミングとし、残り19回を移動局2との通信チャネルを待ち受けて受信するタイミングとする規則で動作している場合であっても、制御部36は、移動局2との制御チャネルを待ち受けて受信する処理と、移動局2との通信チャネルを待ち受けて受信する処理とを、移動局2の動作に合わせて順次チャネルを切り替えながら動作させる必要がなくなる。
【0030】
制御部36は、タイマ(図示せず)が計測を開始してから予め決められた時間(例えば200msec)内に移動局2(図2参照)から同期バースト信号を受信した場合には、TCHバースト信号を移動局2に送信し、移動局2との通信チャネルを確立する(図4のt11,t12)。これに対して、上記予め決められた時間内に同期バースト信号を受信しなかった場合には(t9)、移動局2との通信チャネルを確立するための再割当信号を移動局2に送信する(t10)。
【0031】
次に、本実施形態の無線中継装置3において、移動局2(図2参照)との通信チャネルを確立するための動作について図5を用いて説明する。先ず、予め決められた時間内に、移動局2から同期バースト信号を受信した場合について説明する。最初に、移動局2から送信された、移動局2との通信チャネルを確立するための要求信号を、移動局2との制御チャネルが割り当てられている受信用スロット41a(図3参照)に受信した後、基地局1(図2参照)との通信チャネルを確立する(図4参照)。次に、移動局2との通信チャネルを確立するための割当信号を移動局2に送信する(図5のS1)。上記割当信号を送信した後、移動局2との制御チャネルが割り当てられていた受信用スロット41aに、移動局2との通信チャネルを固定して割り当てるように切り替え、タイマ(図示せず)を起動し、割当信号を送信してからの時間、つまり、移動局2からの同期バースト信号の待ち時間を計測する(S2)。タイマにより設定された予め決められた時間内であり(S3)、移動局2との通信チャネルの信号を受信するタイミングになると(S4)、通信チャネルの信号を受信する処理状態になる(S5)。ここで、移動局2からの同期バースト信号を受信用スロット41aに受信することを繰り返し試みる(S6)。上記同期バースト信号を受信した後、同期バースト信号を移動局2に送信し、さらに、TCHバースト信号を移動局2に送信し、移動局2からTCHバースト信号を受信する(S7)。これにより、無線中継装置3は、基地局1との通信チャネルを確立した後、移動局2との通信チャネルを確立する。
【0032】
これに対して、予め決められた時間内に、移動局2(図2参照)から同期バースト信号を受信しなかった場合について説明する。最初に、(S1)〜(S6)の動作を行う。移動局2からの同期バースト信号を受信用スロット41a(図3参照)に受信しなければ、上記(S3)からの動作を再度行う。移動局2との制御チャネルの信号を受信するタイミングになっても(S4)、通信チャネルの信号を受信する処理状態を継続し(S8)、その結果、受信エラーとなる(S9)。さらに、タイマによる計測を開始してから予め決められた時間内に移動局2から同期バースト信号を受信しないときには(S3)、再割当の回数が規定値以下であるか否かを判断する(S10)。規定値以下であれば、移動局2との通信チャネルを確立するための再割当信号を移動局2に送信し(S11)、上記(S2)からの動作を再度行う。規定値を超えていれば、移動局2との通信チャネルを確立するための処理を停止する(S12)。
【0033】
上記より、移動局2との制御チャネルが割り当てられていた受信用スロット41a(図3参照)に、移動局2(図2参照)との通信チャネルを固定して割り当てた場合、移動局2からの同期バースト信号を受信しなければ、移動局2との通信チャネルを確立するための再割当信号を移動局2に送信するので、移動局2からの受信タイミングにおいて、同期バースト信号のみを対象として処理すればよい。
【0034】
以上、本実施形態によれば、移動局2との制御チャネルが割り当てられていた受信用スロット41aに、移動局2との通信チャネルを固定して割り当てるので、制御チャネルを受信する処理と通信チャネルを受信する処理とを、移動局2の動作に合わせて順次切り替える必要がなく、これにより、受信処理の簡素化を実現することができ、受信処理の実装及び動作検証の効率化を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による実施形態の無線中継装置のブロック図である。
【図2】同上の無線通信システムのブロック図である。
【図3】同上の無線中継装置の動作を説明するためのスロットの構成図である。
【図4】同上の無線中継装置の動作を説明するためのシーケンス図である。
【図5】同上の無線中継装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】従来の無線中継装置の動作を説明するためのスロットの構成図である。
【図7】同上の無線中継装置の動作を説明するためのシーケンス図である。
【図8】同上の無線中継装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1 基地局
2 移動局
3 無線中継装置
30,31 アンテナ
32,33 無線回路
34,35ベースバンド回路
36 制御部
41 受信用スロット
S 無線通信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の時間長を有する1フレームを時分割した複数のスロットを受信用スロットと送信用スロットとに分け、前記スロットに制御チャネル又は通信チャネルを割り当てて、ネットワークに接続された基地局と移動局との間で無線通信を行う無線通信システムに、前記基地局又は移動局の一方から送信された無線信号を他方に中継する無線中継装置を用いて、前記移動局との通信チャネルを確立するための要求信号を前記移動局向けの受信用スロットに受信し、前記移動局との通信チャネルを確立するための割当信号を前記移動局に送信する無線チャネル中継方法であって、
前記割当信号を送信した後、前記移動局向けの受信用スロットに、前記移動局との通信チャネルを固定して割り当てを行い、前記移動局からの同期バースト信号を前記移動局向けの受信用スロットに受信することを繰り返し試み、予め決められた時間内に前記同期バースト信号を受信しなかった場合に、前記移動局との通信チャネルを確立するための再割当信号を前記移動局に送信することを特徴とする無線チャネル中継方法。
【請求項2】
所定の時間長を有する1フレームを時分割した複数のスロットを受信用スロットと送信用スロットとに分け、前記スロットに制御チャネル又は通信チャネルを割り当てて、ネットワークに接続された基地局と移動局との間で無線通信を行う無線通信システムに用いられ、前記移動局との通信チャネルを確立するための要求信号を前記移動局向けの受信用スロットに受信する受信手段と、前記移動局との通信チャネルを確立するための割当信号を前記移動局に送信する送信手段とを備え、前記基地局又は移動局の一方から送信された無線信号を他方に中継する無線中継装置であって、
前記割当信号を送信した後、前記移動局向けの受信用スロットに、前記移動局との通信チャネルを固定して割り当てを行う割当手段を備え、
前記受信手段は、前記移動局からの同期バースト信号を前記移動局向けの受信用スロットに受信することを繰り返し試み、
前記送信手段は、予め決められた時間内に前記同期バースト信号を受信しなかった場合に、前記移動局との通信チャネルを確立するための再割当信号を前記移動局に送信する
ことを特徴とする無線中継装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−60602(P2006−60602A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241314(P2004−241314)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】