説明

無線中継システム、中継装置および無線中継方法

【課題】周波数利用効率の低減を回避し、干渉を抑え、サブチャネルに電力を集中することができる無線中継システムを得ること。
【解決手段】MR−BS1と、MS4と、MR−BS1とMS4の通信を中継するRS3と、を備え、MR−BS1とRS3が同一周波数帯を用いる無線中継システムであって、MR−BS1が、中継装置用DLサブチャネル範囲のサブチャネルのうちから選択したサブチャネルを用いて送信データをRS3に送信し、RS3が、送信データに基づいて基地局中継装置間使用サブチャネルを観測し、所定のフレーム数の基地局中継装置間使用サブチャネルに基づいて基地局中継装置間使用サブチャネルの使用予測値を求め、使用予測値以外のサブチャネルを用いてMS4宛てのデータを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局と端末間の通信を中継する中継装置を備える無線中継システム、中継装置および無線中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムでは、基地局装置(BS:Base Station)と端末装置(MS:Mobile Station)の間で情報を乗せた電波を送受信することで情報伝達を実施する。しかし、情報を搬送する電波は、長い通信距離や遮蔽物の影響によって減衰するという特性を持つため、電波の届かない不感地帯が存在する。そこで、基地局装置と端末装置の間に中継装置(RS:Relay Station)を置き、電波を中継することによって不感地帯を解消することができる。
【0003】
このような中継装置を含む中継システムを構築する場合、受信したデータを宛先へ転送する際に発生する、電波の回りこみによる干渉が大きな課題となる。この干渉を回避または低減する技術として、周波数分割や時間分割による干渉回避,アンテナ技術による空間的分離,キャンセラーによる干渉低減,またはこれら技術の組合せがよく知られている。
【0004】
WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)を使用した中継システムであるIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers,Inc.)802.16jでは、干渉回避のために時間分割型のフレーム構成をとる(下記非特許文献1参照)。IEEE802.16jの時分割型のフレーム構成は、DL(Down Link) SubframeとUL(Up Link) Subframeに区別される。さらに、DL Subframeは、MR−BS(Mobile Relay Base Station)とMS(Mobile Station)との間でDL通信を行うDL Access ZoneとMR−BSとRS(Relay Station)との間でDL通信を行うDL Relay Zoneに分割される。また、UL Subframeは、MR−BSとMSとの間でUL通信を行うUL Access ZoneとMR−BSとRSとの間でUL通信を行うUL Relay Zoneに分割される。
【0005】
上記IEEE802.16jのフレーム構成を用いたMR−BSとMS間通信、MR−BSとRS間通信、およびRSとMS間通信について説明する。MR−BSと直接通信を行うMS#Aと、MR−BSとRSを介して通信を行うMS#Bを想定する。MR−BSとMS#A間通信は、MR−BS FrameとMS#A Frameを用いて実施され、DL Access ZoneとUL Access Zoneを使用する。また、MR−BSとRS間通信は、MR−BS FrameとRS Frameを用いて実施され、DL Relay ZoneとUL Relay Zoneを使用する。RSとMS#B間通信は、RS FrameとMS#B Frameを用いて実施され、DL Access ZoneとUL Access Zoneを使用する。
【0006】
一方、下記特許文献1には、中継装置が基地局の基準周波数に同期した上で、基地局からの第1無線周波数帯の電波を受信し、異なる第2無線周波数帯に変換して端末に送信することにより、自送信電波の回り込みの問題を回避する技術が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−111571号公報
【非特許文献1】IEEE P802.16j/D3 Draft Amendment to IEEE Standard for Local and metropolitan area networks,“Air Interface for Fixed and Mobile Broadband Wireless Access Systems,Multihop Relay Specification”,May 2008.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記非特許文献1に記載されるような時分割型の中継方式の場合、MR−BSが、DL Subframe、または、UL Subframeの全てでDLまたはULの送受信に用いることができるため、周波数利用効率の大幅な低減を回避することが可能である。さらに、RSでは、受信タイミングと送信タイミングが異なるため、同一フレーム内での再生中継(Decode & Forward)が可能である。しかし、この場合、DLサブフレーム、ULサブフレームのいずれかまたは両方の送信時間が短くなるため、特定のサブチャネルに電力を集中して通信品質を改善するようなデータ送信ができない、という問題がある。これは、特にアップリンクの場合に大きな問題となる。
【0009】
一方、上記特許文献1に記載されるような周波数分割型の方式で、電波を直接増幅する非再生中継(Amplify & Forward)を行う場合、中継用として新たな周波数帯を割り当てる。このため、周波数利用効率が大幅に低減する、という問題がある。
【0010】
また、上記特許文献1に記載されるような周波数分割型の方式で再生中継を行う場合、たとえば、伝送方式としてOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式を採用すると、中継装置は中継装置あてのサブチャネルのみ再生すれば良いため、基地局が送信する中継装置あて以外のサブチャネルを再利用して中継することにより、周波数利用効率の大幅な低減を回避することができる。しかし、周波数分割型の方式で再生中継を行う場合には、干渉を避けるために同一送信フレームで中継できる周波数が限られるため、無線リソースの周波数方向の割り当てを柔軟に行うことができない。このため、周波数利用効率の改善という点では十分とは言えない。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、周波数分割型の方式で再生中継を行う場合に、無線リソースの周波数方向の割り当てを柔軟に行うことにより周波数利用効率の低減を回避し、さらに送受信アンテナ間での電波の回り込みによる干渉を抑え、かつ、サブチャネルに電力を集中することができる無線中継システム、中継装置および無線中継方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、基地局と、端末と、前記基地局と前記端末との間の通信を中継する中継装置と、を備え、前記基地局および前記中継装置が、同一周波数帯内のサブチャネルを用いる無線中継システムであって、前記基地局が、所定のサブチャネル番号の範囲である中継装置用DLサブチャネル範囲のサブチャネルのうちから、前記中継装置に向けて送信する送信データのデータ量に基づいてサブチャネルを選択し、選択したサブチャネルを用いて前記送信データを前記中継装置に送信し、前記中継装置が、前記送信データに基づいて、前記基地局からの送信に用いられたサブチャネルである基地局中継装置間使用サブチャネルを観測し、所定のフレーム数の基地局中継装置間使用サブチャネルに基づいて基地局中継装置間使用サブチャネルの使用予測値を求め、前記使用予測値以外のサブチャネルを用いて前記送信データのうちの前記端末宛てのデータを前記端末に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、RSが、DL Region for RSとして用いられるサブチャネルを、過去に送信されたフレームに基づいて予測し、予測したサブチャネル以外のサブチャネルをDL Region for MS#B用のサブチャネルとして用いるようにしたので、無線リソースの周波数方向の割り当てを柔軟に行うことにより周波数利用効率の低減を回避し、さらに送受信アンテナ間での電波の回り込みによる干渉を抑え、かつ、サブチャネルに電力を集中することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる無線中継システム、中継装置および無線中継方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
実施の形態1.
図1−1は、本発明にかかる無線中継システムの実施の形態1の構成例を示す図である。図1−1に示すように、本実施の形態の無線中継システムは、MR−BS1と、MR−BS1と直接無線通信を行うMS2と、MS−BS1の通信を中継するRS3と、MR−BS1とRS3を介して通信を行うMS4と、で構成される。図1−1のセル5は、MR−BS1のセルの範囲を示し、セル6は、RS3のセルの範囲を示している。
【0016】
本実施の形態の無線中継システムでは、OFDMA方式等の、同一周波数帯域内で周波数方向の無線リソース(IEEE802.16eの例ではサブチャネル)の割り当てを行うこととし、また、再生中継型の無線中継を行うこととする。図1−1では、Mobile WiMAX(IEEE802.16e OFDMA方式)フレームフォーマットを用いた際の中継方式を採用する例を示している。ここでは、Mobile WiMAXのフレームフォーマットに従い実施の形態を記載するが、本発明はMobile WiMAXに限定するわけではなく、たとえば、OFDMA方式等のように、同一周波数帯域内で周波数方向の無線リソースを割り当てる方式であれば、Mobile WiMAX以外の方式を採用する場合も同様に本実施の形態の無線中継方法を適用することができる。
【0017】
図1−2は、本実施の形態のフレームフォーマット例を示す図である。図1−2に示した各フレームフォーマットでは、垂直方向は周波数軸(サブチャネル)を示し、水平方向は時間軸(シンボル)を示している。ただし、パーミュテーション方式に応じて、使用帯域内に拡散されたサブキャリアを束ねることでサブチャネルが構成される場合があるため、上記周波数軸は論理的な順番(番号)に基づくこととする。また、図1−2では、MR−BS(図1−1の例ではMR−BS1)と直接通信を行っているMS(図1−1の例ではMS2)をMS#Aとし、RS(図1−1の例ではRS3)と通信を行っているMS(図1−1の例ではMS4)をMS#Bと記している。
【0018】
以下の説明では、簡単のため、MR−BS1と直接通信を行うMS2と、RS3を介してMR−BS1と通信を行うMS4をそれぞれ1台としているが、これに限らず、複数のMSとMR−BS1が直接通信を行ってもよく、また、RS3を介して複数のMSとMR−BS1が通信を行ってもよい。複数のMSとMR−BS1が直接通信を行う場合には、MS2をMS2−1〜2−n(nはMR−BS1が直接通信を行うMSの台数)と読み替え、また、RS3を介して複数のMSとMR−BS1が通信を行う場合にはMS4をMS4−1〜4−m(mはMR−BS1が直接通信を行うMSの台数)と読み替えればよい。また、さらに、RS3が複数の場合もRSを複数RSと読みかえ、MR−BS1はRSごとに対応するデータをマッピングしたMR−BS Frameを送信するようにすればよい。
【0019】
つづいて、本実施の形態の動作について説明する。まず、ダウンリンク通信について説明する。MR−BS1とMS2間の通信では、MR−BS1は、図1−2に示すMR−BS FrameのDL Region for MS#A内に、MS2向けの通信データ(ユーザデータ、及び、一部の制御信号(制御信号は必要に応じて伝送する。))をマッピングして送信する。MS2では、MS#A Frameに示すように、DL Region for MS#A内のデータに対して受信処理を実行することによりMR−BS1から送信された通信データを取得し、DL Region for RS内のデータについては受信処理をしない(廃棄する)。なお、図1−2では、送信側が処理する部分に「(TX)」(Transmitter)を付し、受信側が処理する部分に「(RX)」(Receiver)を付し、処理対象としない部分に「(Discard)」を付すこととする。
【0020】
MR−BS1とRS3間の通信では、MR−BS1は、図1−2に示すMR−BS FrameのDL Region for RS内にRS3向けの通信データ(MS#B宛てでRS3が中継する中継データを含む)をマッピングして送信する。RS3は、MR−BS FrameのDL Region for MS#A内については受信処理をしない。RS3は、RS Frame#1に示すように、DL Region for RS内のデータに対して受信処理を実行することによりMR−BS1から送信された通信データを取得する。そして、RS3は、取得した通信データのうち自装置で終端すべき制御信号については必要に応じて終端処理を行い、また、通信データからMS4に転送するデータ(中継データ)を選択する。
【0021】
さらに、RS3が、選択した中継データに対して後述のサブチャネルの決定方法によりサブチャネルを決定し決定したサブチャネルに基づいてMS4に適した変調・符号化を行い、RS Frame#2に示すように、DL Region for MS#B内に変調・符号化後の中継データをマッピングして、MS4に送信する。MS4は、MS#B FrameのDL Region for MS#B内のデータに対して受信処理を実行することにより、RS3経由でMR−BS1から送信された通信データを取得する。
【0022】
なお、MR−BS1が送信するDL Subframeと、RS3が送信するDL Subframeのパーミュテーションパターンは同一とする。また、本実施の形態では、再生中継型の無線中継を対象としているため、MR−BS Frameとして送信された中継データをRS3がRS Frame#2として送信する送信タイミングは、そのMR−BS Frameの送信から少なくとも1Frame後の送信であることを想定している。
【0023】
つづいて、DL Region for MS#Bの送信に使用するサブチャネル(以下、中継用サブチャネルという)の決定方法の一例を以下に記載する。図2は、MS−BS FrameのDL Region for MS#Bの送信に使用するサブチャネルを説明するための図である。MR−BS1は、ネットワーク側から受信したMS#B宛てのデータ量に応じて、MR−BS FrameのDL Region for RSの領域の複数のサブチャネルへマッピングする。
【0024】
再生中継方式の場合、受信した中継対象のフレームのDL Region for RSに用いられているサブチャネルを知ることができれば、それ以外のサブチャネルを用いて中継データを送信することで回り込み波の干渉を回避することができる。干渉を避けるためには、これから(現在より後)MR−BS1からの送信に用いられるサブチャネルが、RS3が送信に用いるサブチャネルと重ならないようにする必要がある。しかし、MR−BS1がDLスケジューリング処理を行った結果を事前にRS3へ通知しない限り、RS3では、これから受信するフレームのDL Region for RSの情報(マッピング量)を知ることができない。本実施の形態では、このような事前通知が行われない場合でも、適切にDL Region for MS#Bの送信に使用するサブチャネルの決定ができるように、過去の受信データに基づいてDL SubCH for RS(DL Region for RSに用いられる可能性のあるサブチャネルの範囲)を予測することとする。
【0025】
なお、MR−BS1は、DL Region for RSを、可能な限り、あらかじめ定めたDL SubCH for RS(DL Region for RS用として割り当てたサブチャネル)内にマッピングするようにスケジューリングを行うこととする。
【0026】
以下、RS3が行う中継用サブチャネルの決定方法について、具体的な処理内容を説明する。図3は、RS3が行う中継用サブチャネルの決定処理の手順の一例を示すフローチャートである。RS3は、中継対象のフレームを受信すると中継用サブチャネルの決定処理を開始し、まず、フレームカウンタiを“0”に初期化し(ステップS101)、つぎに、フレームカウンタiを“1”だけインクリメントする(ステップS102)。
【0027】
つぎに、RS3は、受信したi個のフレームについて、DL Region for RSに使用されるサブチャネル番号を観測し、そのサブチャネル番号に基づいて保持しているMS−RS間使用サブチャネル情報を更新して保持する(ステップS103)。ここで、MS−RS間使用サブチャネル情報は、たとえば、ビットマップ形式のテーブルとし、所定の範囲のサブチャネル番号の数に相当する各ビットに対して、初期値を“0”とし、使用された場合に“1”とするようなテーブルとする。また、MS−RS間使用サブチャネル情報は、ビットマップ形式のテーブルを用いずに、使用されたサブチャネルの範囲を格納することとし、使用された最小のサブチャネル番号および最大のチャネル番号を格納するようにしてもよい。
【0028】
MS−RS間使用サブチャネル情報をビットマップ形式のテーブルとする場合(ビットマップ形式のテーブルを使用する場合)には、ステップS103では、観測したサブチャネル番号に対応するビットを“1”としたテーブルをTablenewとして更新し、Tablenewを保持する。また、MS−RS間使用サブチャネル情報を使用されたサブチャネルの範囲とする場合(最小・最大サブチャネル番号を使用する場合)には、観測したサブチャネル番号のうち最小のサブチャネル番号Snewと最大のサブチャネル番号Bnewを保持する。
【0029】
つぎに、RS3は、iがあらかじめ定められたNより小さいか否かを判断し(ステップS104)、iがNより小さくない(iがNになった)と判断した場合(ステップS104 No)は、ビットマップ形式のテーブルを使用する場合は、Nフレーム間(N個のフレーム間)のMS−RS間使用サブチャネル情報であるTableoldを、以下に式(1)に従って更新する(ステップS105)。
Tableold=Tablenew …(1)
【0030】
また、最小・最大サブチャネル番号を使用する場合には、ステップS105では、N個のフレーム間のサブチャネル情報の最小サブチャネル番号を示すSold、N個のフレーム間のサブチャネル情報の最小サブチャネル番号を示す最大サブチャネル番号Boldを、それぞれ以下の式(2)に従って更新する。
old=Snew
old=Bnew …(2)
【0031】
ステップS105の後、RS3は、iを“0”に初期化する(ステップS106)。そして、RS3は、以下の式(3)に基づいて、予測されるMS−RS間使用サブチャネルの範囲であるTablenowを求め、Tablenowの“0”と“1”を反転した結果が“1”になるサブチャネルを、RS−MS間使用可能サブチャネル(中継データに使用可能なサブチャネル)として決定し(ステップS107)、次フレームの処理を行うためにステップS102に戻る。
Tablenow=(Tablenew)OR(Tableold) …(3)
【0032】
また、最小・最大サブチャネル番号を使用する場合は、ステップS107では、以下の式(4)に従って、SnowおよびBnowを求め、Snow以上Bnow以下の範囲以外のサブチャネルをRS−MS間使用可能サブチャネルとして決定し(ステップS107)、ステップS102に戻る。
now=MIN(Sold,Snew
now=MAX(Bold,Bnew) …(4)
【0033】
ステップS104で、iがNより小さいと判断した場合(ステップS104 No)には、ステップS107に進む。
【0034】
このように、過去のNフレーム分のサブチャネルの使用状況をTableoldまたはSoldからBoldの範囲をNフレーム間のBS−RS間使用サブチャネル情報として保持し、処理対象のフレームで用いられているサブチャネルとを保持しているNフレーム間のBS−RS間使用サブチャネル情報とを除いたサブチャネルを中継データの送信に使用可能なサブチャネルとして決定している。そして、ステップS107で決定した使用可能なサブチャネルのうちから、データ量などに応じてDL Region for MS#Bの送信に使用するサブチャネルを選択する。
【0035】
また、アップリンク通信についても、以下のように同様に干渉をさけた中継を行うようにしてもよい。アップリンク通信については、干渉を避けるためには、RS3では、MS4から送信されるUL Region for MS#Bに用いられるサブチャネルと、RS3がMR−BS1に送信するUL Region for RSに用いられるサブチャネルと、が重ならないようにする必要がある。ここでは、UL Region for RSに用いるサブチャネルについては、MR−BS1がRS3に割り当て、MS4から送信されるUL Region for MS#Bに用いられるサブチャネルについては、RS3が割り当てることとする。
【0036】
具体的には、アップリンク通信については、ダウンリンク通信のDL Region for RSをUL Region for RSに、DL Region for MS#AをUL Region for MS#Aに、DL Region for MS#BをUL Region for MS#Bにそれぞれ置き替える。そして、RS3は、MR−BS1によってUL Region for RS用として割り当てられるサブチャネルを予測し、予測したサブチャネルを避けるようにUL Region for MS#B用のサブチャネルを決定し、決定したサブチャネルをMS4に対して割り当てる。MS4は、UL Region for MS#B用として割り当てられたサブチャネルを用いてRS3にMR−BS1宛てのデータを送信する。
【0037】
この際、UL Region for RS用として割り当てられるサブチャネルの予測は、ダウンリンク通信の場合と同様に過去のNフレームの情報を用いることとする。すなわち、過去のフレームでUL Region for RS用として割り当てられたサブチャネルを観測し、UL Region for RS用として割り当てられる可能性があるサブチャネルを求めることにより行う。UL Region for RS用として割り当てられたサブチャネルの観測は、たとえば、MR−BS1から割り当て結果が通知されることとする。そして、この割り当て結果として割り当てられたサブチャネルを、ダウンリンク通信の場合のDL Region for RS用として用いられたサブチャネルと同様に扱い、UL用に用意されたMS−RS間使用サブチャネル情報およびNフレーム間のMS−RS間使用サブチャネル情報を更新するようにし、これらのサブチャネル情報と重ならないようにUL Region for MS#B用として割り当てられたサブチャネルを決定する。
【0038】
このように、本実施の形態では、RS3が、DL Region for RSとして用いられるサブチャネルを過去に送信されたフレームに基づいて予測し、予測したサブチャネル以外のサブチャネルをDL Region for MS#B用のサブチャネルとして用いるようにした。このため、DL Region for RSとDL Region for MS#Bを固定する必要がないため、周波数利用効率の改善が期待でき、かつ、送受信アンテナ間での電波の回り込みによる干渉を低減することができる。
【0039】
また、さらに、RS3が、UL Region for RSに割り当てられたサブチャネルを過去に送信されたフレームに基づいて予測し、予測したサブチャネル以外のサブチャネルをUL Region for MS#B用として割り当てるようにした。このため、アップリンクについても、周波数利用効率の改善が期待でき、かつ、送受信アンテナ間での電波の回り込みによる干渉を低減することができる。また、特定のサブチャネルに電力を集中させた送信を行うことができる。さらに、干渉を低減することにより送信電力を低減させることができる。
【0040】
実施の形態2.
つづいて、本発明にかかる無線中継システムの実施の形態2の無線中継方法について説明する。本実施の形態の無線中継システムの構成は、実施の形態1と同様である。また、本実施の形態のフレームフォーマットも実施の形態1と同様とする。
【0041】
本実施の形態では、MR−BS1が、実施の形態1の図2に示したDL Region for RSをマッピングする際に、送信処理対象のフレームの1つ前のフレーム(以下、前フレームという)と送信処理対象のフレームと間でDL SubCH for RSで示されるサブチャネル数の増分がMサブチャネル以下(Mはパラメータで指定される値であり、例えば、“1”のような小さい値である。)となるようにスケジューリングを行うこととする。アップリンク通信についても、ダウンリンク通信と同様にUL SubCH for RSとして割り当てるサブチャネル数の増分(1つ前のフレームからの増分)がMサブチャネル以下となるようにスケジューリングを行うこととする。
【0042】
このように、サブチャネルの増分に制限を設けることにより、所定の期間内のサブチャネル数の使用範囲の上限を推定することができる。このため。RS3が、DL Region for MS#B用のサブチャネルを決定する処理で、過去のフレームの情報として用いるNフレームのNの値を小さくすることができる。以上説明した以外の本実施の形態の動作は、実施の形態1と同様である。
【0043】
なお、本実施の形態では、前フレームと送信処理対象のフレームとの間のDL SubCH for RSのサブチャネル数の増分に制限を設けるようにしたが、これに限らず、所定の期間内のDL SubCH for RSのサブチャネル数の増分に制限を設けるようにすればよい。
【0044】
このように、本実施の形態では、MR−BS1が、DL SubCH for RSとして用いるサブチャネル数について、1つ前のフレームと送信処理対象のフレームとの増分に制限を設けてマッピングすることとした。このため、実施の形態1に比べ、DL SubCH for RSとして用いるサブチャネル数の予測が大きく外れることがなくなるため、DL Region for MS#B用サブチャネルを、より効率的に割り当てることができる。
【0045】
実施の形態3.
つづいて、本発明にかかる無線中継システムの実施の形態3の無線中継方法について説明する。本実施の形態の無線中継システムの構成は、実施の形態1と同様である。また、本実施の形態のフレームフォーマットも実施の形態1と同様とする。
【0046】
本実施の形態では、DL Region for MS#Bのマッピング量が少ないフレームの場合、DL SubCH for RSとして使用される頻度が少ないと予想されるサブチャネルを選択してDL Region for MS#Bのマッピングを行う。
【0047】
図4は、本実施の形態のDL Region for MS#Bの一例を示す図である。図4に示すように、本実施の形態では、DL Region for RSとして用いられるサブチャネルは、図中の上から順に割り当てられるとする。したがって、実施の形態1または実施の形態2と同様に求めた中継データの送信に使用可能なサブチャネルのうち、MS−RS間使用サブチャネル情報として予測したDL Region for RSに用いられるサブチャネル番号からできるだけ離れた番号のサブチャネル番号のサブチャネルを用いてDL Region for MS#Bをマッピングする。予測したUL Region for RSに割り当てられるサブチャネル番号からできるだけ離れた番号のサブチャネル番号をUL Region for MS#Bとして割り当てる。以上説明した以外の本実施の形態の動作は、実施の形態1または実施の形態2と同様である。
【0048】
このように、本実施の形態では、DL Region for RSに用いられるサブチャネル番号からできるだけ離れた番号のサブチャネル番号のサブチャネルを用いてDL Region for MS#Bをマッピングするようにした。このため、DL Region for RSに用いられるサブチャネル数が予想値を上回って増加した場合でも、送受信アンテナ間での電波の回り込みによる干渉を低減することができる。したがって、実施の形態1に比べ、さらに干渉を低減することができる。
【0049】
実施の形態4.
つづいて、本発明にかかる無線中継システムの実施の形態4の無線中継方法について説明する。本実施の形態の無線中継システムの構成は、実施の形態1と同様である。また、本実施の形態のフレームフォーマットも実施の形態1と同様とする。
【0050】
RS3では、MS4向けの送信キューであるRS Tx QueueにMS4向けのData for MS#Bが蓄積されるとする。実施の形態1の無線中継システムでは、Data for MS#Bに用いることができるサブチャネル数が少ない場合、RS Tx Queueにある程度以上のデータが蓄積すると、送信できないデータが生じ、それらのデータの廃棄が生じる。
【0051】
図5は、RS3のRS Tx Queueに蓄積されるData for MS#Bの一例を示す図である。また、図6は、本実施の形態のData for MS#Bのマッピングの一例を示す図である。本実施の形態では、図5に示すように、RS Tx Queueの蓄積量に対して所定のしきい値であるThresholdを設定しておく。DL SubCH for MS#Bのサブチャネル数が少ない場合には、図5に示すように、RS Tx Queueに蓄積されるData for MS#BがThresholdを超える。この場合、Thresholdを超えるData for MS#Bに対しては、図6に示すように、実施の形態1または実施の形態2と同様に求めた中継データの送信に使用可能なサブチャネル、すなわち、DL SubCH for MS#Bの決定範囲を超えてDL Region for MS#Bをマッピングする。
【0052】
ただし、DL Region for MS#Bは、可能な限りDL SubCH for MS#Bの決定範囲内のサブチャネルにマッピングすることとする。また、アップリンク通信については、たとえば、MR−BS1向けのデータが送信キューにしきい値以上蓄積した場合に、UL SubCH for RSの範囲を超えたサブチャネルにマッピングしてデータを送信するようにする。以上説明した以外の動作は、実施の形態1、2または3と同様である。
【0053】
なお、RS3の配下に複数のMSが存在する場合、RS Tx Queueはユーザ毎,QoS(Quality of Service)毎などに分けても良い。また、Thresholdについても、ユーザ毎,QoS毎などで異なる値としても良い。
【0054】
本実施の形態では、RS3が、Thresholdを超えるData for MS#Bに対しては、DL SubCH for MS#Bの決定範囲を超えてDL Region for MS#Bをマッピングするようにした。このため、実施の形態1に比べMS4向けデータの廃棄確率が低下するため、エンド・ツー・エンドでのスループットを向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明にかかる無線中継システム、中継装置および無線中継方法は、基地局と端末間の通信を中継する中継装置を備える無線中継システムに有用であり、特に、周波数分割型のリソース割り当てを行い、再生中継を行う無線中継システムに適している。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1−1】本発明にかかる無線中継システムの実施の形態1の構成例を示す図である。
【図1−2】フレームフォーマット例を示す図である。
【図2】DL Region for MS#Bの送信に使用するサブチャネルを説明するための図である。
【図3】中継用サブチャネルの決定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態3のDL Region for MS#Bの一例を示す図である。
【図5】RS Tx Queueに蓄積されるData for MS#Bの一例を示す図である。
【図6】実施の形態4のData for MS#Bのマッピングの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 MR−BS
2,4 MS
3 RS
5,6 セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と、端末と、前記基地局と前記端末との間の通信を中継する中継装置と、を備え、前記基地局および前記中継装置が、同一周波数帯内のサブチャネルを用いる無線中継システムであって、
前記基地局が、所定のサブチャネル番号の範囲である中継装置用DLサブチャネル範囲のサブチャネルのうちから、前記中継装置に向けて送信する送信データのデータ量に基づいてサブチャネルを選択し、選択したサブチャネルを用いて前記送信データを前記中継装置に送信し、
前記中継装置が、前記送信データに基づいて、前記基地局からの送信に用いられたサブチャネルである基地局中継装置間使用サブチャネルを観測し、所定のフレーム数の基地局中継装置間使用サブチャネルに基づいて基地局中継装置間使用サブチャネルの使用予測値を求め、前記使用予測値以外のサブチャネルを用いて前記送信データのうちの前記端末宛てのデータを前記端末に送信することを特徴とする無線中継システム。
【請求項2】
前記基地局が、所定のサブチャネル番号の範囲である中継装置用ULサブチャネル範囲を割り当て、
前記中継装置が、前記基地局から送信されるデータに含まれる中継装置用ULサブチャネル範囲を観測し、所定のフレーム数の中継装置用ULサブチャネル範囲に基づいて中継装置用ULサブチャネル範囲の割り当て予測値を求め、前記割り当て予測値以外のサブチャネルを前記端末からのデータ送信に用いるサブチャネルとして前記端末に割り当てることを特徴とする請求項1に記載の無線中継システム。
【請求項3】
前記基地局は、所定の期間内の前記選択したサブチャネルの増分を所定の制限値以内とすることを特徴とする請求項1または2に記載の無線中継システム。
【請求項4】
前記中継装置は、前記使用予測値以外のサブチャネルのうちの一部のサブチャネルを用いて前記端末宛てのデータを送信する場合、前記使用予測値として求められたサブチャネル番号に近いサブチャネルから順に、前記端末宛てのデータの送信に用いないサブチャネルとすることを特徴とする請求項1、2または3に記載の無線中継システム。
【請求項5】
前記中継装置は、前記端末宛てのデータの蓄積量が所定のしきい値を超えた場合には、前記使用予測値の範囲内のサブチャネルを用いて前記端末宛てのデータを送信することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の無線中継システム。
【請求項6】
基地局と、端末と、前記基地局と前記端末との間の通信を中継する中継装置と、を備え、前記基地局および前記中継装置が、同一周波数帯内のサブチャネルを用いる無線中継システムであって、
前記基地局が、所定のサブチャネル番号の範囲である中継装置用ULサブチャネル範囲を割り当て、
前記中継装置が、前記基地局から送信されるデータに含まれる中継装置用ULサブチャネル範囲を観測し、所定のフレーム数の中継装置用ULサブチャネル範囲に基づいて中継装置用ULサブチャネル範囲の割り当て予測値を求め、前記割り当て予測値以外のサブチャネルを前記端末からのデータ送信に用いるサブチャネルとして前記端末に割り当てることを特徴とする無線中継システム。
【請求項7】
前記基地局は、所定の期間内の前記中継装置用ULサブチャネル範囲の増分を所定の制限値以内とすることを特徴とする請求項2または6に記載の無線中継システム。
【請求項8】
前記中継装置は、前記割り当て予測値以外のサブチャネルのうちの一部のサブチャネルを用いて前記端末宛てのデータを送信する場合、前記割り当て予測値として求められたサブチャネル番号に近いサブチャネルから順に、前記端末に割り当てないサブチャネルとすることを特徴とする請求項2、6または7に記載の無線中継システム。
【請求項9】
前記中継装置は、前記基地局宛てのデータの蓄積量が所定のしきい値を超えた場合には、前記割り当て予測値の範囲内のサブチャネルを前記端末からのデータ送信に用いるサブチャネルとして前記端末に割り当てることを特徴とする請求項2、6〜8のいずれか1つに記載の無線中継システム。
【請求項10】
基地局と、端末と、前記基地局と前記端末との間の通信を中継する中継装置と、を備え、前記基地局および前記中継装置が、同一周波数帯内のサブチャネルを用いる無線中継システムにおいて、前記基地局が、所定のサブチャネル番号の範囲である中継装置用DLサブチャネル範囲のサブチャネルのうちから、前記中継装置に向けて送信する送信データのデータ量に基づいてサブチャネルを選択し、選択したサブチャネルを用いて前記送信データを送信する場合に、当該送信データを受信する前記中継装置であって、
前記送信データに基づいて、前記基地局からの送信に用いられたサブチャネルである基地局中継装置間使用サブチャネルを観測し、所定のフレーム数の基地局中継装置間使用サブチャネルに基づいて基地局中継装置間使用サブチャネルの使用予測値を求め、前記使用予測値以外のサブチャネルを用いて前記送信データのうちの前記端末宛てのデータを前記端末に送信する送信処理手段、
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項11】
基地局と、端末と、前記基地局と前記端末との間の通信を中継する中継装置と、を備え、前記基地局および前記中継装置が、同一周波数帯内のサブチャネルを用いる無線中継システムにおける前記中継装置であって、
前記基地局から送信されるデータに含まれる、前記基地局が割り当てた所定のサブチャネル番号の範囲である中継装置用ULサブチャネル範囲を観測し、所定のフレーム数の中継装置用ULサブチャネル範囲に基づいて中継装置用ULサブチャネル範囲の割り当て予測値を求め、前記割り当て予測値以外のサブチャネルを前記端末からのデータ送信に用いるサブチャネルとして前記端末に割り当てる割り当て手段、
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項12】
基地局と、端末と、前記基地局と前記端末との間の通信を中継する中継装置と、を備え、前記基地局および前記中継装置が、同一周波数帯内のサブチャネルを用いる無線中継システムにおける無線中継方法であって、
前記基地局が、所定のサブチャネル番号の範囲である中継装置用DLサブチャネル範囲のサブチャネルのうちから、前記中継装置に向けて送信する送信データのデータ量に基づいてサブチャネルを選択し、選択したサブチャネルを用いて前記送信データを前記中継装置に送信するデータ送信ステップと、
前記中継装置が、前記送信データに基づいて、前記基地局からの送信に用いられたサブチャネルである基地局中継装置間使用サブチャネルを観測し、所定のフレーム数の基地局中継装置間使用サブチャネルに基づいて基地局中継装置間使用サブチャネルの使用予測値を求め、前記使用予測値以外のサブチャネルを用いて前記送信データのうちの前記端末宛てのデータを前記端末に送信する中継ステップと、
を含むことを特徴とする無線中継方法。
【請求項13】
基地局と、端末と、前記基地局と前記端末との間の通信を中継する中継装置と、を備え、前記基地局および前記中継装置が、同一周波数帯内のサブチャネルを用いる無線中継システムにおける無線中継方法であって、
前記基地局が、所定のサブチャネル番号の範囲である中継装置用ULサブチャネル範囲を割り当てる割り当てステップと、
前記中継装置が、前記基地局から送信されるデータに含まれる中継装置用ULサブチャネル範囲を観測し、所定のフレーム数の中継装置用ULサブチャネル範囲に基づいて中継装置用ULサブチャネル範囲の割り当て予測値を求め、前記割り当て予測値以外のサブチャネルを前記端末からのデータ送信に用いるサブチャネルとして前記端末に割り当てる中継ステップと、
を含むことを特徴とする無線中継方法。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−56909(P2010−56909A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219941(P2008−219941)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】