説明

無線伝送システム、無線伝送装置及びそれらに用いる回線状況表現方法

【課題】 回線状況の安定度を示すことが可能な無線伝送装置を提供する。
【解決手段】 遅延調整回路12は誤り訂正内復号回路11及び誤り訂正符号化回路13の処置時間分、入力データを遅延させる。比較器14には誤り訂正内復号回路11で誤り訂正内復号した後に、誤り訂正符号化回路13で誤り訂正内符号化を処理したデータAと、入力データを遅延調整回路12で遅延したデータBとを比較し、誤り訂正内復号回路11で誤り訂正された個数をカウントする。BER計算回路15はエラーデータ数をサンプル数で割ることで入力データのBER値を計算する。BER MARGIN計算回路17はBER計算回路15の結果及びその時のパラメータと閾値保持回路16からのBER値とを比較し、限界点に対するBER MARGIN値を数値化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線伝送システム、無線伝送装置及びそれらに用いる回線状況表現方法に関し、特にOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式やシングルキャリア方式のディジタル変調方式を用いた無線伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のディジタル変調方式を用いた無線伝送システムにおいては、安定な無線伝送を行うために送信側で誤り訂正を付加して伝送を行う方法が用いられている。
【0003】
従来の無線伝送システムにおける回線状況を表現する方法では、誤り訂正内復号された個数からBER(Bit Error Rate:ビットエラーレート)値を計算し、そのBER値で回線状況の状態を表現している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−50677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の回線状況の表現方法では、変調方式及び符号化率によっては、安定な状態(伝送上の誤りなし)から限界点(伝送上に発生した誤りによってデータを復元できない)までマージンがC/N(Carrier/Noise)値換算で2dBしかない場合があり、回線状況の安定度を示すのに有効ではないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、回線状況の安定度を示すことができる無線伝送システム、無線伝送装置及びそれらに用いる回線状況表現方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による無線伝送システムは、少なくともOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式及びシングルキャリア方式のディジタル変調方式を用いる無線伝送装置を含む無線伝送システムであって、前記無線伝送装置は、内符号前後のビットエラーレート値から回線状況の状態を数値化して表現する手段を備えている。
【0008】
本発明による他の無線伝送システムは、少なくともOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式及びシングルキャリア方式のディジタル変調方式を用い、受信側の処理に誤り訂正内復号処理を含む無線伝送装置からなる無線伝送システムであって、
前記無線伝送装置は、前記誤り訂正内復号処理における入出力信号に対するビットエラーレート値を計算して数値化する数値化手段を備え、
前記数値化手段による数値化にて前記無線伝送装置における回線状況の状態を数値化して表現している。
【0009】
本発明による無線伝送装置は、少なくともOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式及びシングルキャリア方式のディジタル変調方式を用いる無線伝送装置であって、内符号前後のビットエラーレート値から回線状況の状態を数値化して表現する手段を備えている。
【0010】
本発明による他の無線伝送装置は、少なくともOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式及びシングルキャリア方式のディジタル変調方式を用い、受信側の処理に誤り訂正内復号処理を含む無線伝送装置であって、前記誤り訂正内復号処理における入出力信号に対するビットエラーレート値を計算して数値化する数値化手段を備え、前記数値化手段による数値化にて前記無線伝送装置における回線状況の状態を数値化して表現している。
【0011】
本発明による回線状況表現方法は、少なくともOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式及びシングルキャリア方式のディジタル変調方式を用いる無線伝送装置を含む無線伝送システムに用いる回線状況表現方法であって、前記無線伝送装置が、内符号前後のビットエラーレート値から回線状況の状態を数値化して表現している。
【0012】
本発明による他の回線状況表現方法は、少なくともOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式及びシングルキャリア方式のディジタル変調方式を用い、受信側の処理に誤り訂正内復号処理を含む無線伝送装置からなる無線伝送システムに用いる回線状況表現方法であって、前記無線伝送装置が、前記誤り訂正内復号処理における入出力信号に対するビットエラーレート値を計算して数値化し、その数値化にて前記無線伝送装置における回線状況の状態を数値化して表現している。
【0013】
すなわち、本発明の無線伝送システムは、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式やシングルキャリア方式のディジタル変調方式を用いたシステムにおいて、内符号前後のBER(Bit Error Rate:ビットエラーレート)の値から回線状況の状態を数値化して表現することを特徴としている。
【0014】
本発明の無線伝送システムでは、送信側が、データフレーム同期,誤り訂正外符号,外インタリーブ,誤り訂正内符号,内インタリーブ,変調部からなり、受信側が、復調部,内デインタリーブ,誤り訂正内復号,外デインタリーブ,誤り訂正外復号,データフレーム同期からなる無線伝送の構成において、誤り訂正内復号の入出力信号に対するBER値を計算して数値化することで、回線状況の状態を数値化して表現している。
【0015】
従来の方式では、誤り訂正内復号された個数からBER値を計算し、回線状況の状態を表現している。しかしながら、この方式では変調方式及び符号化率によって、安定な状態(伝送上の誤りなし)から限界点(伝送上に発生した誤りによってデータを復元できない)までマージンがC/N(Carrier/Noise)値換算で2dBしかない場合があり、回線状況の状態を表現するのに有効ではない。これに対し、本発明の無線伝送システムでは、安定な状態がどの程度誤り訂正した結果かを示しているため、回線状況の安定度を示すことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下に述べるような構成及び動作とすることで、安定な状態がどの程度誤り訂正した結果かを示しているため、回線状況の安定度を示すことができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態による無線伝送の構成を示す図である。図1において、本発明の一実施例による無線伝送の構成において、送信側は、データフレーム同期A1,誤り訂正外符号A2,外インタリーブA3,誤り訂正内符号A4,内インタリーブA5,変調部A6からなる。また、受信側は、復調部B1,内デインタリーブB2,誤り訂正内復号B3,外デインタリーブB4,誤り訂正外復号B5,データフレーム同期B6からなっている。
【0018】
本発明の実施の形態では、上記の無線伝送の構成において、誤り訂正内復号A4の入出力信号に対するBER(Bit Error Rate:ビットエラーレート)値を計算して数値化することで、回線状況の状態を数値化して表現している。これによって、本発明の実施の形態では、安定な状態がどの程度誤り訂正した結果かを示しているため、回線状況の安定度を示すことができる。
【実施例1】
【0019】
次に、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。図2は本発明の一実施例による無線伝送装置の構成を示すブロック図である。図2において、無線伝送装置1は誤り訂正内復号回路11と、遅延調整回路12と、誤り訂正符号化回路13と、比較器14と、BER計算回路15と、閾値保持回路16と、BER MARGIN計算回路17とから構成されている。
【0020】
図3は本発明の一実施例における内符号なしのC/N(Carrier/Noise)対BER特性及び内符号ありのC/N対BER特性を示す図である。これら図2及び図3を参照して本発明の一実施例による回線状況表現方法について説明する。
無線伝送システムでは、安定な無線伝送を行うために送信側で誤り訂正を付加して伝送を行う方法が用いられている。そのような伝送において、受信側の誤り訂正内復号A4では、入力されたデータの誤り訂正内復号処理を行う。
【0021】
誤り訂正符号化回路13では訂正されたデータを送信側で行っているのと同じ内符号化処理を行う。遅延調整回路12では誤り訂正内復号回路11及び誤り訂正符号化回路13の処置時間分、入力データを遅延させる。
【0022】
比較器14には誤り訂正内復号回路11で誤り訂正内復号した後に、誤り訂正符号化回路13で誤り訂正内符号化を処理したデータAと、入力データを遅延調整回路12で遅延したデータBとが入力される。比較器14は入力されたデータAとデータBとを1データ単位(ビット)で比較し、誤り訂正内復号回路11で誤り訂正された個数をカウントする。
【0023】
BER計算回路15では、エラーデータ数をサンプル数で割ることによって、入力データのBER値を計算する。サンプル数は求めるBERの精度による。例えば、BERを1×10-7以上求めたい場合には、サンプル数が1/1×10-7=107 以下となる。
【0024】
内符号なしのC/N対BER特性は、変調モード[OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex),シングルキャリア]及び変調方式[64QAM(Quadrature Amplitude Modulation),32QAM,16QAM,QPSK(Quadrature Phase Shift Keying),BPSK(Binary Phase Shift Keying),DQPSK(Differential QPSK),DBPSK(Differential BPSK)]によって理論値を求めることができる。
【0025】
また、無線伝送システムにおいて用いた誤り訂正能力及び内符号の符号化率によって、内符号ありのC/N対BER特性及び限界点を求めることができる。誤り訂正外符号A2にリードソロモン符号(204,188)を用いたい場合、リードソロモン符号の訂正能力は10-4入力で10-19 以下となる。
【0026】
図3に内符号なしのC/N対BER特性及び内符号ありのC/N対BER特性を示す。内符号ありの限界点の時のBER値を1×10-4とした場合、その時のC/N値をZ[dB]とする。
【0027】
各変調モード及び変調方式の内符号なしC/N対BER特性を閾値保持回路16に保存しておくことによって、BER MARGIN計算回路17では、BER計算回路15の結果(図3におけるY×10-Y)及びその時のパラメータ(変調モード,変調方式,符号化率)と閾値保持回路16からのBER値とを比較し、限界点に対するBER MARGIN値(図3におけるα[dB])を数値化する。
【0028】
従来の回線状況の表現方法では、誤り訂正内復号された個数からBER値を計算し、回線状況の状態を表現している。しかしながら、変調方式及び符号化率によっては、安定な状態(伝送上の誤りなし)から限界点(伝送上に発生した誤りによってデータを復元できない)までマージンがC/N値換算で2dBしかない場合があり、回線状況を表現するのに有効ではない。これに対して、本実施例では、安定な状態がどの程度誤り訂正した結果かを示しているため、回線状況の安定度を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態による無線伝送の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施例による無線伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施例における内符号なしのC/N対BER特性及び内符号ありのC/N対BER特性を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 無線伝送装置
11 誤り訂正内復号回路
12 遅延調整回路
13 誤り訂正符号化回路
14 比較器
15 BER計算回路
16 閾値保持回路
17 BER MARGIN計算回路
A1 データフレーム同期
A2 誤り訂正外符号
A3 外インタリーブ
A4 誤り訂正内符号
A5 内インタリーブ
A6 変調部
B1 復調部
B2 内デインタリーブ
B3 誤り訂正内復号
B4 外デインタリーブ
B5 誤り訂正外復号
B6 データフレーム同期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式及びシングルキャリア方式のディジタル変調方式を用いる無線伝送装置を含む無線伝送システムであって、前記無線伝送装置は、内符号前後のビットエラーレート値から回線状況の状態を数値化して表現する手段を有することを特徴とする無線伝送システム。
【請求項2】
少なくともOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式及びシングルキャリア方式のディジタル変調方式を用い、受信側の処理に誤り訂正内復号処理を含む無線伝送装置からなる無線伝送システムであって、
前記無線伝送装置は、前記誤り訂正内復号処理における入出力信号に対するビットエラーレート値を計算して数値化する数値化手段を有し、
前記数値化手段による数値化にて前記無線伝送装置における回線状況の状態を数値化して表現することを特徴とする無線伝送システム。
【請求項3】
前記数値化手段は、前記入力データに対して前記誤り訂正内復号処理を施したデータの誤り訂正内符号化処理を行う誤り訂正内符号化手段と、前記入力データを遅延する遅延手段と、前記誤り訂正内符号化手段で誤り訂正内符号化処理したデータと前記遅延手段で遅延したデータとを比較して前記誤り訂正内復号処理で誤り訂正された個数をカウントする比較手段と、前記比較手段でカウントしたエラーデータ数を予め設定したサンプル数で割ることで前記入力データのビットエラーレート値を計算する計算手段と、前記計算手段の計算結果と予め設定された閾値とを比較して無線伝送上に発生した誤りによってデータを復元できない限界点に対するマージン値を数値化するマージン計算手段とを含むことを特徴とする請求項2記載の無線伝送システム。
【請求項4】
少なくともOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式及びシングルキャリア方式のディジタル変調方式を用いる無線伝送装置であって、内符号前後のビットエラーレート値から回線状況の状態を数値化して表現する手段を有することを特徴とする無線伝送装置。
【請求項5】
少なくともOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式及びシングルキャリア方式のディジタル変調方式を用い、受信側の処理に誤り訂正内復号処理を含む無線伝送装置であって、前記誤り訂正内復号処理における入出力信号に対するビットエラーレート値を計算して数値化する数値化手段を有し、前記数値化手段による数値化にて前記無線伝送装置における回線状況の状態を数値化して表現することを特徴とする無線伝送装置。
【請求項6】
前記数値化手段は、前記入力データに対して前記誤り訂正内復号処理を施したデータの誤り訂正内符号化処理を行う誤り訂正内符号化手段と、前記入力データを遅延する遅延手段と、前記誤り訂正内符号化手段で誤り訂正内符号化処理したデータと前記遅延手段で遅延したデータとを比較して前記誤り訂正内復号処理で誤り訂正された個数をカウントする比較手段と、前記比較手段でカウントしたエラーデータ数を予め設定したサンプル数で割ることで前記入力データのビットエラーレート値を計算する計算手段と、前記計算手段の計算結果と予め設定された閾値とを比較して無線伝送上に発生した誤りによってデータを復元できない限界点に対するマージン値を数値化するマージン計算手段とを含むことを特徴とする請求項5記載の無線伝送装置。
【請求項7】
少なくともOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式及びシングルキャリア方式のディジタル変調方式を用いる無線伝送装置を含む無線伝送システムに用いる回線状況表現方法であって、前記無線伝送装置が、内符号前後のビットエラーレート値から回線状況の状態を数値化して表現することを特徴とする回線状況表現方法。
【請求項8】
少なくともOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式及びシングルキャリア方式のディジタル変調方式を用い、受信側の処理に誤り訂正内復号処理を含む無線伝送装置からなる無線伝送システムに用いる回線状況表現方法であって、
前記無線伝送装置が、前記誤り訂正内復号処理における入出力信号に対するビットエラーレート値を計算して数値化し、その数値化にて前記無線伝送装置における回線状況の状態を数値化して表現することを特徴とする回線状況表現方法。
【請求項9】
前記ビットエラーレート値を計算して数値化する際に、前記入力データに対して前記誤り訂正内復号処理を施したデータの誤り訂正内符号化処理を行ったデータと、前記入力データを遅延したデータとを比較して前記誤り訂正内復号処理で誤り訂正された個数をカウントし、そのカウントしたエラーデータ数を予め設定したサンプル数で割ることで前記入力データのビットエラーレート値を計算し、この計算結果と予め設定された閾値とを比較して無線伝送上に発生した誤りによってデータを復元できない限界点に対するマージン値を数値化することを特徴とする請求項8記載の回線状況表現方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−128841(P2006−128841A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311664(P2004−311664)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】