説明

無線機およびコンピュータプログラム

【課題】アマチュア無線用の無線機において、ビープ音の音色により、交信の音声を聞きながら、自局宛のパケットを受信したことを容易に認識できるようにする。
【解決手段】無線機1は、パケットのヘッダ部からコールサインに関する情報を取り出して、その内容を解析するコントローラ21と、音色の異なる複数のビープ音に対応した複数の音声信号を生成するビープ信号発生器26とを備えている。コントローラ21は、パケットの終話フレームを検出した後、パケットのヘッダ部から取り出した識別子に対応したビープ音を、あらかじめメモリに格納された識別子と複数のビープ音との関係を示すデータから選択し、その選択されたビープ音に対応した音声信号の生成をビープ信号発生器26に指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル音声通信を採用した無線機、およびその無線機の機能を実現するコンピュータプログラムに関する
【背景技術】
【0002】
近年、例えばアマチュア無線の世界において、より高速の通信を実現し、またクリアな音声での交信を楽しむために、音声通信のデジタル化とネットワーク化が普及しつつある。アマチュア無線のデジタル音声通信においては、音声信号は符号化されてデジタル信号に変換され、パケット化された後に送信される。
【0003】
そして音声信号がパケット化され、かつパケットのヘッダ部に送信先、送信元のコールサイン等を示すデータが付加されたことに伴い、アナログ音声通信ではできなかった多くの機能を実現できるようになった。
【0004】
アマチュア無線のデジタル音声通信化に伴って実現された機能の1つに「コールサインスケルチ」がある(例えば、非特許文献1参照)。この機能は、自局宛のパケットを受信した場合のみ音声を再生するものであり、送信先を特定しないパケットや他局宛のパケットを受信した場合には、ミューティングにより音声を再生しない。
【0005】
上述の「コールサインスケルチ」では、自局宛のパケットを受信した場合、交信の音声と共に、ビープ音とディスプレイへの表示により、自局が呼び出しを受けたことを知ることができる。
【0006】
他の機能として「スタンバイビープ」がある(例えば、特許文献1参照)。「スタンバイビープ」は、パケットの最後部に付加された終話フレームを受信側で確認したときに、ビープ音を鳴らして送信元がスタンバイ状態に入ったことを知らせるものである。通常、終話フレームは、送信元のユーザがPTTスイッチをオフにしたときにパケットに付加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−186816号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】アイコム株式会社製トランシーバーID−92取扱説明書(96ページ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の「コールサインスケルチ」を使用した場合、自局宛以外の音声が聞こえなくなるため、自局と関係のない局同士の交信の音声を聞きたくないユーザにとっては便利な機能である。しかしその反面、局間で交わされる交信の音声を聞きながら、機会があればその交信に参加したいと考えているユーザにとっては、交信の内容を確認できないため、交信に参加する機会が失われることになる。
【0010】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたもので、ビープ音を活用することにより、交信の音声を聞きながら、自局宛のパケットを受信した場合にそのことを容易に認識できる無線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明にかかる無線機は、受信した無線信号を復調してパケットを再生し、このパケットに含まれる音声信号を復号化およびD/A変換してアナログ音声信号を再生する無線機であって、
前記パケットのヘッダ部から送信先を識別する識別子に関する情報を取り出して、その内容を解析するコントローラと、
音色の異なる複数のビープ音に対応した複数の音声信号を生成するビープ信号発生器と、を備え、
前記コントローラは、前記パケットのデータ部に含まれる終話フレームを検出した後、
前記パケットのヘッダ部から取り出した識別子に対応したビープ音を、あらかじめメモリに格納された前記識別子と前記複数のビープ音との関係を示すデータから選択し、
その選択されたビープ音に対応した音声信号の生成を前記ビープ信号発生器に指示することを特徴とする。
【0012】
ここで、前記識別子が自局を示すかそうでないかによって前記ビープ音の音色が異なることが好ましい。
【0013】
なお、前記コントローラは少なくともCPU、ROMおよびRAMを含むと共に、前記ビープ信号発生器の機能を実現するプログラムが前記ROMに格納され、
前記ROMから読み出されたプログラムを前記CPUで実行するようにしてもよい。
【0014】
また本発明にかかるコンピュータプログラムは、コンピュータを、
A/D変換され符号化された音声信号を含むパケットのヘッダ部から送信先を識別する識別子に関する情報を取り出して、その内容を解析するコントローラ、および
音色の異なる複数のビープ音に対応した複数の音声信号を生成するビープ信号発生器として機能させるコンピュータプログラムであって、
前記コントローラは、前記パケットのデータ部に含まれる終話フレームを検出した後、
前記パケットのヘッダ部から取り出した識別子に対応したビープ音を、あらかじめメモリに格納された前記識別子と前記複数のビープ音との関係を示すデータから選択し、
その選択されたビープ音に対応した音声信号の生成を前記ビープ信号発生器に指示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の無線機では、局間で交わされている交信の音声を聞きながら、ビープ音の音色によって自局宛のパケットを受信したことを容易に認識できる。結果として、自局宛のパケットを受信したことを知りたいユーザの要望と、局間で交わされる交信の音声を聞きながら、機会があればその交信に参加したいと考えているユーザの要望とを、共に叶えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態にかかる無線機の構成を示すブロック図である。
【図2】デジタル音声通信を採用したアマチュア無線システムの基本的な構成を示す図である。
【図3】無線機によって送信されるパケットの構成を示す図である。
【図4】パケットのヘッダ部に含まれるフラグおよびコールサインと、表示部の表示内容およびビープ音との関係を表したテーブルの一例を示す図である。
【図5】パケットのヘッダ部の内容に応じてビープ音の音色を変える際の手順を示すフローチャートである。
【図6】パケットのヘッダ部に含まれるフラグおよびコールサインと、表示部の表示内容およびビープ音との関係を表したテーブルの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態にかかる無線機について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
<無線機の構成>
図1に、デジタル音声通信を採用した本実施の形態にかかる無線機の構成を示す。無線機1は、マイク11、スピーカ12、AF増幅器13、音声コーデック14、送信部15、送受切替部16、アンテナ17、受信部18、インターフェース部19、コントローラ21、ビープ信号発生器26、操作部27および表示部29で構成されている。図中、太い矢印は音声信号やデータの流れを示し、細い矢印は制御系統の信号の流れを示している
【0019】
マイク11は、送信用の音声を入力としてアナログ音声信号を生成し、その音声信号をAF増幅器13に出力する。一方、スピーカ12は、AF増幅器13から出力されたアナログ音声信号を音声に変換する。
【0020】
AF(Audio Frequency)増幅器13は、マイク11から入力されたアナログ音声信号を増幅して音声コーデック14に供給する。また、音声コーデック14から供給された受信音声のアナログ音声信号およびビープ信号発生器26から出力されたビープ信号を増幅してスピーカ12に出力する。
【0021】
音声コーデック14は、AF増幅器13から供給されたアナログ音声信号をA/D(アナログデジタル)変換および符号化して送信部15に出力する。また音声コーデック14は、受信部18から供給されたデジタル音声信号を復号化し、更にD/A(デジタルアナログ)変換した後、AF増幅器13に出力する。
【0022】
送信部15は、音声コーデック14から供給されたデジタル音声信号に無線通信用のヘッダを付すと共に、後述するPTTスイッチ28の出力に基づいて分割し、図3に示す送信用のパケットを生成する。送信部15は更に、パケットを構成するデジタルデータで搬送波を変調し、必要に応じて周波数変換を行い、送受切替部16を介してアンテナ17から送信する。パケットの構成については、後に図3を用いて詳述する。
【0023】
送受切替部16は、PTTスイッチ28が押されてオンになると送信部15からの送信信号をアンテナ17に導き、PTTスイッチ28が放されてオフになるとアンテナ17の受信信号を受信部18に導く。
【0024】
受信部18は、コントローラ21からの指示に従って受信周波数を切り替え、受信周波数に同調して増幅し、更に受信信号を復調してパケットを再生する。そして再生したパケットからヘッダ部を取り除き、音声データについては音声コーデック14に供給し、その他のデータ(例えば、イーサネット[登録商標]に準拠したパケット)についてはインターフェース部19に供給する。
【0025】
インターフェース部19は外部接続端子20に接続され、外部機器(GPSレシーバ等)から供給されるパケットを送信部15に供給する。またインターフェース部19は、受信部18から供給されたイーサネット[登録商標]準拠のパケット等を外部接続端子20を介して外部装置(パソコン等)に供給する。
【0026】
コントローラ21は無線機1の動作を制御する。コントローラ21は、CPU(Central Processing Unit)22、CPU22の動作を規定するプログラムを記憶したROM(Read Only Memory)23、CPU22のワークメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)24、および自局のコールサイン等を格納した不揮発性メモリ25を備えている。
【0027】
ビープ信号発生器26は、CPU22の指示に従って異なる音色の音声信号を生成し、AF増幅器13に出力する。
【0028】
なお、コントローラ21のROM23に、あらかじめ音声信号を発生させるプログラムを格納しておき、ROM23から読み出されたプログラムをCPU22で実行することにより、ビープ信号発生器26と同様の機能を実現するようにしてもよい。このような構成とすれば、ビープ信号発生器26を別途設ける必要がないため、無線機のコストダウンが図れる。
【0029】
操作部27は、種々の入力や指示をコントローラ21に入力する。操作部27にはPTT(Pres To Talk)スイッチ28が含まれている。PTTスイッチ28は、押す(オンにする)と送受切替部16が送信側に切り替わってアンテナ17から送信が行われ、放す(オフにする)と、送受切替部16が受信側に切り替わって受信した音声信号の再生が行われる。
【0030】
表示部29は液晶ディスプレイ等で構成され、種々のデータを表示するのに用いられる。表示部29には、無線機1がアマチュア無線信号を受信したこと(呼び出しがあったこと)や、送信元(自局)や送信先(相手局)のコールサイン、ニックネーム等を表示する。
【0031】
<アマチュア無線システムの構成>
次に、図2を参照して、デジタル音声通信を採用したアマチュア無線システムについて説明する。
【0032】
図2に示すシステムでは、複数の無線機1をカバーするエリア2(2a,2b)毎にレピータ3(3a,3b)が設置されている。図2では、レピータ3aがカバーするエリア2aに無線機1a、1b、1cがあり、レピータ3bがカバーするエリア2b内に無線機1d、1eがある。
【0033】
隣接するレピータ3a、3b間は、マイクロ波を使用して音声およびデータが多重化された状態で送信される。レピータ3a、3bで結ばれたサービスエリアをゾーン5という。複数のゾーン5(5a、5b、5c)の間は、ゲートウェイ4を介してインターネット6で結ばれている。
【0034】
図3に示すアマチュア無線システム7を用いれば、以下に示すような様々な形態の交信を実現できる。
(1)各エリア2内での無線機1同士の直接の交信
(2)各エリア2内での無線機1同士のレピータ3を介した交信
(3)同一ゾーン5内の異なるエリア2の無線機1同士のレピータ3を介した交信
(4)異なるゾーン5の無線機1同士のゲートウェイ4とインターネット6を介した交信
【0035】
<パケットの構成>
次に、図3を参照して、送信部15で生成されるパケットの構成を説明する。パケットの構成は、デジタル音声通信の一連のデータをどのような順番でどのようにまとめて送信するかを示したものである。
【0036】
パケットPaは、ヘッダ部Phとデータ部Pdとで構成されている。ヘッダ部Phには、同期信号h1、フラグh2、送り先レピータのコールサインh3、送り元レピータのコールサインh4、送信先コールサインh5、送信元コールサインh6が含まれる。ヘッダ部Phのうち同期信号h1は入力信号の同期をとり、またこれより信号であることを表す信号である。フラグh2は、レピータ経由通信、直接通信、レピータ制御信号等を表すデータであり、複数ビットのデータで構成されている。
【0037】
送り先レピータのコールサインh3は、例えば送信先の無線機が属するエリア内のレピータのコールサイン、送り元レピータのコールサインh4は送信元の無線機が属しているレピータのコールサインである。また送信先コールサインh5は、送信する相手局の無線機のコールサイン、送信元コールサインh6は、自局の無線機のコールサインである。これらのコールサイン(h3〜h6)は、送信先および送信元の無線機、更には無線信号を中継するレピータを識別するための識別子としての役割を果たす。なお送信先コールサインh5については、不特定局を呼び出すCQとしてもよい。
【0038】
データ部Pdは、デジタル化された音声フレームd1と、小さな静止画やメモ等のデータを含むデータフレームd2が交互に配置され、最後にパケットの終わりを示す終話フレームd3が付加されている。
【0039】
<アマチュア無線の交信動作>
次に、図1、図2および図3を参照して、アマチュア無線の交信動作を説明する。以下、代表的なケースとして、図2のエリア2a内の無線機1aの局が、エリア2b内の無線機1dの局を呼び出す場合について説明する。
【0040】
ユーザは交信に先立ち、無線機1の操作部27を操作して、交信に必要な情報、例えば送信元(自局)コールサインや送り元レピータのコールサインを、不揮発性メモリ25に格納しておく。
【0041】
最初に、ユーザは無線機1aの操作部27を操作し、送信先の無線機1dに予め割り当てられたコールサインおよび送り先レピータ3bのコールサインを指定して、呼び出しを指示する。
【0042】
操作部27から入力された情報は、コントローラ21によって送信部15に通知され、コントローラ21の指示に従って、送信部15でパケットが生成される。図3に示すようにパケットPaのヘッダ部Phには、送り先レピータ3bのコールサインh3、送り元レピータ3aのコールサインh4、送信先(相手局)である無線機1dのコールサインh5、および送信元(自局)である無線機1aのコールサインh6の各情報が含まれる。
【0043】
送信部15で生成され無線信号に変換されたパケットは、送受切替部16およびアンテナ17を介して送信される。無線機1aから送信されたパケットは、指定された経路であるレピータ3aおよび3bによって中継され、無線機1dに到達する。
【0044】
無線機1dで受信した無線信号は、アンテナ17および送受切替部16を介して受信部18に供給され、受信部18で復調されてパケットが再生される。更に、受信部18で再生されたパケットからヘッダ部が取り除かれ、データ部の内容に応じて音声コーデック14またはインターフェース部19に供給される。
【0045】
音声コーデック14に供給された音声データは復号化され、さらにアナログの音声信号に変換されてAF増幅器13に供給される。AF増幅器13で増幅された音声信号はスピーカ12から出力され、送信元のユーザの声が再生される。
【0046】
また受信部18で再生されたパケットは、コントローラ21に供給される。コントローラ21のCPU22は、ECC(Error Check Code)チェックなどにより、受信したパケットが有効なパケットであるか否かを判別する。
【0047】
CPU22は、有効と判別されたパケットのヘッダ部のデータをRAM24に格納すると共に、ヘッダ部の情報を解析する。CPU22は、解析結果に基づいて、受信したパケットの送信先コールサインや送信元コールサインを表示部29に表示する。
【0048】
<ビープ音の発生手順>
次に、図4および図5を参照して、異なる音色のビープ音を発生させる際の手順について説明する。
【0049】
本発明の特徴点は、受信したパケットPaのヘッダ部Phの情報を解析して、自局宛のパケットかそうでないかを判別し、自局宛のパケットを受信した場合に、「スタンバイビープ」のビープ音の音色を変えることにある。図4に示すテーブルT1は、判別の際の条件を整理したものである。
【0050】
具体的には、図4のテーブルT1は、受信したパケットPaのヘッダ部Phに含まれるフラグh2および送信先コールサインh5と、表示部29の表示内容Dcおよびビープ音の音色Sbとの関係を表している。ROM23には、テーブルT1に対応するデータが、あらかじめ格納されている。以下、テーブルT1の内容について説明する。
【0051】
テーブルT1の1行目は、ヘッダ部Phのフラグh2の下3桁の値が”010”の場合には、表示部29に「応答なし」もしくはそれに対応したメッセージを表示し、ビープ音Sbの音色を1に設定することを示している。
【0052】
ここで、フラグh2の下3桁の値が”010”のパケットについて説明する。ユーザがPTTスイッチ28を短時間押すと、それに対応してエリア内のレピータ3から無線機1に送信可能であることを示すパケットが送られてくる。このパケットは確認用のパケットであり、音声信号が含まれていないため、フラグの値を”010”に設定することにより、確認用のパケットであって音声信号が含まれていないことを無線機1に知らせる。
【0053】
テーブルT1の2行目は、ヘッダ部Phのフラグh2の下3桁の値が”001”の場合には、表示部29に「中継不可」もしくはそれに対応したメッセージを表示し、ビープ音Sbの音色を1に設定することを示している。
【0054】
ここで、フラグh2の下3桁の値が”001”の場合について説明する。1つのエリア2内でレピータ3から無線機1に、または無線機1からレピータ3にパケットが送信されている場合、混信を避けるために、レピータ3は、他のエリア2から送信されたパケットの送信を拒否する機能を備えている。この場合、レピータ3は、送信元の無線機1に対してフラグの値を”001”に設定したパケットを送信し、中継ができないことを知らせる。
【0055】
テーブルT1の3行目は、ヘッダ部Phの送信先コールサインh5が他局すなわち自己の受信機とは異なる局のコールサインである場合には、ビープ音Sbの音色を2に設定することを示している。なお、表示部29には送信元コールサインが表示されるため、ユーザはどの局から送信された信号であるかを確認できる。
【0056】
テーブルT1の4行目は、ヘッダ部Phの送信先コールサインh5が不特定の局を示す「CQCQCQ」である場合には、ビープ音Sbの音色を2に設定することを示している。表示Dcについては3行目と同様である。
【0057】
テーブルT1の5行目は、ヘッダ部Phの送信先コールサインh5に自局すなわち自己の受信機のコールサインが含まれている場合には、ビープ音Sbの音色を3に設定することを示している。表示Dcについては3行目と同様である。
【0058】
なお、テーブルT1において、レピータから発信されたパケットのビープ音の音色を他の場合と変えるのは、交信用のパケットでないことをユーザに知らせるためであり、前述の非特許文献1に記載のトランシーバーで既に採用されている。
【0059】
次に、図5のフローチャートを参照して、無線機1で受信したパケットPaのヘッダ部Phの内容に応じてビープ音の音色を変える際の手順を説明する。
【0060】
ステップS10に示すパケット受信処理は、受信部18における受信信号の復調とパケットの再生を含む一連の処理であり、先に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0061】
コントローラ21は、受信部18で再生されたパケットPaのデータをRAM24に格納すると共に(ステップS11)、ヘッダ部Phの情報を解析する(ステップS12)。
【0062】
コントローラ21は、ヘッダ部Phに含まれる情報のうち、フラグh2(図3参照)の下3桁の値をROM23に格納された図4のテーブルT1に対応するデータと照合し、その値が“010”または“001”の場合には(ステップS13においてYes)、AF増幅器13の音声出力をミュートすると共に(ステップS14)、ビープ音1を選択する(ステップS15)。
【0063】
コントローラ21が、ビープ音1が選択されたことをビープ信号発生器26に指示すると、ビープ信号発生器26でビープ音1の音色の音声信号が生成され、スピーカ12から音声として出力される(ステップS22)。
【0064】
なお、図には示さないが、フラグh2の値が“010”または“001”の場合には、図4のテーブルに従い、表示部29に「応答なし」もしくは「中継不可」のメッセージが表示される。
【0065】
ステップS13においてフラグが特定の値を示さない場合(No)はステップS16の処理に進み、前述の処理により音声およびデータの再生が行われる。
【0066】
コントローラ21は、パケットPaの最後部に付加された終話フレームd3(図3参照)を検出すると(ステップS17においてYes)、ヘッダ部Phに含まれる送信先コールサインを不揮発性メモリ25に格納された自局のコールサインと照合する(ステップS18)。
【0067】
コールサイン情報のうち送信先コールサインh5が自局のコールサインでない場合には、コントローラ21は、ROM23に格納されたテーブルT1に対応するデータに基づいてビープ音2を選択し(ステップS20)、その情報をビープ信号発生器26に出力する。ビープ信号発生器26でビープ音2に対応した音声信号が生成され、スピーカ12からビープ音2の音色の音声が出力される(ステップS22)
【0068】
一方、ステップS19において、送信先コールサインh5が自局のコールサインである場合には、コントローラ21は、ROM23に格納されたテーブルT1に対応するデータに基づいてビープ音3を選択し(ステップS21)、その情報をビープ信号発生器26に出力する。ビープ信号発生器26でビープ音3に対応した音声信号が生成され、スピーカ12からビープ音3の音色の音声が出力される(ステップS22)
【0069】
上述したように、無線機で受信したパケットについて、ヘッダ部の解析結果に基づき、送信先のコールサインによって「スタンバイビープ」のビープ音の音色を変えることにより、交信の音声を聞きながら、自局宛のパケットの受信を容易に認識できる。
【0070】
図6にパケットを識別する際の条件を整理したテーブルの他の例を示す。図6のテーブルT2では、判別の条件として、図4に示したフラグh2と送信先コールサインh5に加えて、送信元コールサインh6が含まれている。
【0071】
新たに追加されたテーブルT2の6行目は、ヘッダ部Phの送信元コールサインh6が特定の局を示すコールサインAである場合には、ビープ音Sbの音色を4に設定することを示している。
【0072】
図4のテーブルT1を用いた場合は、ビープ音Sbの音色によりパケットの送信先が自局であるか否かを容易に認識できたが、図6のテーブルT2を用いれば、更に送信元の違い、すなわちどの局から送信されたパケットであるかを容易に認識できる。従って、テーブルT2を利用すれば、例えば親しい交信仲間からの呼び出しと、それ以外の局からの呼び出しとを、ビープ音により識別することができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、無線機の電源がオフの場合にデータが消滅しないように、コールサイン情報を不揮発性メモリに格納したが、バッテリでバックアップされたRAMに格納するようにしてもよい。
【0074】
更に、本実施の形態のコントローラおよびビープ信号発生器の機能をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録媒体(例えばCD−ROM)に記録して配布したり、ネットワークで配信したりしてもよい。このコンピュータプログラムは、コンピュータの記録媒体に記録されインストールされる。
【符号の説明】
【0075】
1 無線機
2、2a、2b エリア
3、3a,3b レピータ
4 ゲートウェイ
5、5a,5b,5c ゾーン
6 インターネット
7 アマチュア無線システム
11 マイク
12 スピーカ
13 AF増幅器
14 音声コーデック
15 送信部
16 送受切替部
17 アンテナ
18 受信部
19 インターフェース部
21 コントローラ
22 CPU
23 ROM
24 RAM
25 不揮発性メモリ
26 ビープ信号発生器
27 操作部
28 PTTスイッチ
29 表示部
Pa パケット
Ph ヘッド部
Pd データ部
T1,T2 テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した無線信号を復調してパケットを再生し、このパケットに含まれる音声信号を復号化およびD/A変換してアナログ音声信号を再生する無線機であって、
前記パケットのヘッダ部から送信先を識別する識別子に関する情報を取り出して、その内容を解析するコントローラと、
音色の異なる複数のビープ音に対応した複数の音声信号を生成するビープ信号発生器と、を備え、
前記コントローラは、前記パケットのデータ部に含まれる終話フレームを検出した後、
前記パケットのヘッダ部から取り出した識別子に対応したビープ音を、あらかじめメモリに格納された前記識別子と前記複数のビープ音との関係を示すデータから選択し、
その選択されたビープ音に対応した音声信号の生成を前記ビープ信号発生器に指示することを特徴とする無線機。
【請求項2】
前記識別子が自局を示すかそうでないかによって前記ビープ音の音色が異なることを特徴とする、請求項1に記載の無線機。
【請求項3】
前記コントローラは少なくともCPU、ROMおよびRAMを含むと共に、前記ビープ信号発生器の機能を実現するプログラムが前記ROMに格納され、
前記ROMから読み出されたプログラムを前記CPUで実行することを特徴とする、請求項1または2に記載の無線機。
【請求項4】
コンピュータを、
A/D変換され符号化された音声信号を含むパケットのヘッダ部から送信先を識別する識別子に関する情報を取り出して、その内容を解析するコントローラ、および
音色の異なる複数のビープ音に対応した複数の音声信号を生成するビープ信号発生器として機能させるコンピュータプログラムであって、
前記コントローラは、前記パケットのデータ部に含まれる終話フレームを検出した後、
前記パケットのヘッダ部から取り出した識別子に対応したビープ音を、あらかじめメモリに格納された前記識別子と前記複数のビープ音との関係を示すデータから選択し、
その選択されたビープ音に対応した音声信号の生成を前記ビープ信号発生器に指示することを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−15707(P2012−15707A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148936(P2010−148936)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】