説明

無線測位システムおよび無線測位方法

【目的】本発明は、移動端末の位置を無線で測位する無線測位システムおよび無線測位方法に関し、移動端末がいずれの基準局、基地局の受信範囲に移動しても確実に自動測位することを目的とする。
【構成】電波の測位信号を送信する移動端末と、移動端末から送信された測位信号を受信したときに測位信号の受信時刻および基準局から受信した基準信号の受信時刻を、自局のタイマをもとにそれぞれ計測する位置が既知の複数の基地局と、移動端末から送信された測位信号を受信したときに自局の基準信号を送信する位置が既知の複数の基準局と、基地局からの測位信号の受信時刻と基準信号の受信時刻を受信し、移動端末の位置を算出するサーバとを備え、複数の基準局が設定された優先度で、移動端末からの測位信号を受信したときに自局の基準信号を複数の基地局に送信し、衝突を回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末の位置を無線で測位する無線測位システムおよび無線測位方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、移動端末から発信した電波が複数の基地局までに到達する時間差を利用して、TDOA(Time Difference of Arrival)の原理により移動端末の位置を求めている。このとき、到達時間差を求めるためには、測位に必要な時間精度と同等以上の精度で基地局間で時計(タイマ)を合わせておく必要がある。例えば、30cmで測位するためには、1nsの精度で時計合わせが必要である。各基地局をひとつのクロックで動作させるようにすれば良いが、遅延の保証された同軸ケーブルで各基地局を接続するのは設置が煩雑となり、好ましくない。
【0003】
そこで、特許文献1には、基地局以外に位置が既知の基準局を設置し、移動端末から発信した電波が基地局に到達する時刻と基準局から発信した電波が基地局に到達する時刻の差を用いることで、基地局間の時間同期を不要にする技術がある。
【0004】
また、特許文献2には、移動端末から電波を送信後、基準局は移動端末からの電波を受信して基準信号を送信することで、時間同期を不要にする技術がある。即ち、図13の(a)に示すように、移動端末から測位信号○1を送信し、基地局1〜3は測位信号○1を受信する。次に、基準局は測位信号○1を受信後、基準信号○2を送信する。基地局1〜3は基準信号○2を受信し、測位信号○1と基準信号○2との到達時間差から移動局の位置を求めることができる。
【特許文献1】特開平08−146110号公報
【特許文献2】2006 年電子情報通信学会基礎・境界ソサイエティ大会AS-4-5「1cc 超小型ノードを用いた22cm 高精度測位システムの開発(2):UWB 測位システムの実証実験」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの従来技術では、図13の(b)に示すように、広い範囲で測位を行おうとした場合には、移動端末1の位置では基準局1は測位信号を受信できるが、移動端末2の位置では基準局1は測位信号を受信できないため、基準信号を送信することができないという問題がある。
【0006】
そのため、更に、例えば、基準局2を追加することが考えられるが、移動端末3の位置では、基準局1と基準局2の両方に測位信号が届くため、両方から基準信号を送信すると信号が重なり正しく基準信号を受信できなくなってしまうなどの問題が発生した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、これらの問題を解決するため、移動端末の位置を無線で測位する無線測位システムにおいて、電波の測位信号を送信する移動端末と、移動端末から送信された測位信号を受信したときに当該測位信号の受信時刻、および基準局から受信した基準信号の受信時刻を、自局のタイマをもとにそれぞれ計測する、位置が既知の複数の基地局と、移動端末から送信された測位信号を受信したときに当該自局の基準信号を送信する、位置が既知の複数の基準局と、基地局からの測位信号の受信時刻と基準信号の受信時刻を受信し、移動端末の位置を算出するサーバとを備え、複数の基準局が設定された優先度で、移動端末からの測位信号を受信したときに自局の基準信号を複数の基地局に送信し、衝突を回避するようにしている。
【0008】
この際、隣接する基準局は相互に基準信号を受信できるようにしている。
また、基準局は優先度が高い程短い所定の待ち時間を有し、基準局は前記移動端末から送信された測位信号を受信後に所定の待ち時間の間他の基準局の基準信号を観察し、所定の待ち時間中に他の基準局の基準信号が送信されていないことを確認してから自局の基準信号を送信するようにしている。
【0009】
また、基準局は移動端末の位置に応じて優先度を動的に変えるようにしている。
また、基準局は、所定の待ち時間中に他の基準局の基準信号が送信されていないことを確認してから基準信号を送信した場合に、その基準局の優先度を最高にするようにしている。
【0010】
また、基準局は、最高に設定された基準局に隣接する基準局の優先度を上げるようにしている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、移動端末からの測位信号を受信した複数の基準局が動的可変の優先度に従い基準信号を複数の基地局などに送信し、基地局は移動端末からの測位信号の受信時刻および基準局からの基準信号の受信時刻をサーバに送信し、サーバはこれら送信された時刻を受信して移動端末の位置を算出することにより、移動端末がいずれの基準局、基地局の受信範囲に移動しても確実に自動測位することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、移動端末からの測位信号を受信した複数の基準局が動的可変の優先度に従い基準信号を複数の基地局などに送信し、基地局は移動端末からの測位信号の受信時刻および基準局からの基準信号の受信時刻をサーバに送信し、サーバはこれら送信された時刻を受信して移動端末の位置を算出し、移動端末がいずれの基準局、基地局の受信範囲に移動しても確実に自動測位することを実現した。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明のシステム構成図を示す。
図1において、移動端末1は、複数の基準局2および複数の基地局3から構成される所定領域内で、その位置を測位する対象の多数の移動端末であって、例えば携帯端末、PDA,更に、ICタグなどの所定信号を電波で送信する端末である。移動端末1は、測位信号生成部11、送信部12などから構成されるものである。
【0014】
測位信号生成部11は、移動端末1の位置を測位するための信号を生成するものである(図6を用いて後述する)。
【0015】
送信部12は、測位信号生成部11で生成された測位に必要な測位信号を、アンテナから無線で基準局2、基地局3に向けて送信、ここでは、ブロードキャストするものである。
【0016】
基準局2は、移動端末1からの測位信号を受信して基準信号を生成するものである。さらに、基準局は基地局の機能を兼ねることができる。その場合には、基準局2は、自局が保持するタイマに従い、移動端末1からの測位信号を受信した時刻を測定したり、他の基準局2からの基準信号を受信した時刻を測定したり、基準信号を送信する時刻を測定したり、これらの時刻をサーバに送信したりなどするものであって、ここでは、受信部21、端末受信時刻保持部22、基準受信時刻保持部23、待時間制御部24、基準信号生成部25、基準送信時刻保持部26、および送信部27などから構成されるものである。
【0017】
受信部21は、移動端末1、基地局3、他の基準局2からの信号を受信するものである。
【0018】
端末受信時刻保持部22は、移動端末1からの測位信号を受信した受信時刻を保持するものである。
【0019】
基準受信時刻保持部23は、他の基準局2からの基準信号を受信した受信時刻を保持するものである。
【0020】
待時間制御部24は、移動端末1からの測位信号を受信してから、優先度に従い、基準信号を基地局3などに送信する待ち時間を制御するものである(図2などを用いて後述する)。
【0021】
基準信号生成部25は、待時間制御部24が優先度に従い基準信号の生成指示があったときに、基準信号を生成するものである。
【0022】
基準送信時刻保持部26は、基準信号生成部25で生成された基準信号を、基地局3などに送信したときの送信時刻を保持するものである(図2などを用いて後述する)。
【0023】
送信部27は、基準信号生成部25で生成された基準信号を、無線(電波)で基地局3などに送信(ここでは、ブロードキャスト)するものである。
【0024】
基地局3は、自局が保持するタイマに従い、移動端末1からの測位信号を受信して当該測位信号の受信時刻を測定したり、基準局2からの基準信号を受信した時刻を測定したり、測位信号の受信時刻、基準信号の受信時刻をサーバに送信したりなどするものであって、ここでは、受信部31、端末受信時刻保持部32、基準受信時刻保持部33などから構成されるものである。
【0025】
受信部31は、移動端末1、基準局2などからの信号を受信するものである。
端末受信時刻保持部32は、移動端末1からの測位信号を受信した受信時刻を保持するものである。
【0026】
基準受信時刻保持部33は、基準局2からの基準信号を受信した受信時刻を保持するものである。
【0027】
測位サーバ4は、基準局2、基地局3からの時刻を有線あるいは無線手段で受信したり、優先度を基準局2に有線あるいは無線手段で送信して更新したりするものであって、ここでは、測位計算部41、待時間調整部42などから構成されるものである。
【0028】
測位計算部41は、移動端末1の位置を計測するものであって、ここでは、複数の基地局3からの移動端末1の測位信号の受信時刻、基準局2の基準信号の受信時刻、更に、基準局2からの測位信号の受信時刻、基準信号の送信時刻などをもとに移動端末1の位置を算出するものである(図5などを用いて後述する)。
【0029】
待時間調整部42は、基準局2が移動端末1からの測位信号を受信したときに、基準信号を基地局3に送信する待ち時間(優先度)を調整し、基準信号の送信時に衝突が発生しないように調整するものである(図2から図13参照)。
【0030】
次に、図2のフローチャートの順番に従い、図1の構成の動作を詳細に説明する。
図2は、本発明の動作説明フローチャートを示す。ここで、端末1は図1の移動端末1、基準局(1)は図1の基準局(1)2、基地局(1)は図1の基地局(1)3、サーバは図1の測位サーバ4にそれぞれ対応するものである。
【0031】
図2において、S1は、測位信号を送信する。これは、図1の移動端末(1)が測位信号(後述する図6の(b)の測位信号)を、無線(電波)で、基準局2、基地局3に向けて送信(ブロードキャスト)する。
【0032】
S2は、測位信号を受信する。これは、S1で移動端末(1)から送信された測位信号を、基準局(1)が受信し、当該測位信号の受信時刻T01を、自局のタイマで測定して保持する。
【0033】
S3は、端末受信時刻を有線あるいは無線手段でサーバに送信する。これは、S2で移動端末(1)から受信して自局のタイマで測定した、移動端末(1)からの測位信号の受信時刻、ここでは、受信時刻T01を測位サーバ4に送信する。
【0034】
S4は、優先度が最高か判別する。これは、基準局(1)が自局の優先度が最高(最大)か判別する(図4参照)。YESの場合には、基準局(1)の優先度が最高と判明したので、待つことなく、S7に進む。一方、NOの場合には、基準局(1)の優先度が最高でないと判明したので、S5に進む。
【0035】
S5は、T1時間待つ。これは、S4で自局の基準局(1)の優先度が最高でないと判明したので、基準信号の送信時に、他の基準局からの基準信号の送信との衝突を避けるために、でT1時間だけ待つ。
【0036】
S6は、S5でT1時間待っている間に他の基準信号がありか判別する。YESの場合には、S10に進む。NOの場合には、S7に進む。
【0037】
S7は、S6のNOで、他の基準局3からの基準信号が送信されていないと判明したので、自局の基準局(1)で生成した基準信号を送信(ブロードキャスト)する。
【0038】
S8は、基準送信時刻を有線あるいは無線手段でサーバに送信する。これは、S7で自局で生成した基準信号を基準局(1)が送信したときの、当該基準信号の送信時刻T02を測位サーバ4に送信する。
【0039】
S9は、端末(1)に対して優先度を最高に更新する。これは、端末(1)からの測位信号を受信した基準局(1)が、基準信号を基準局に送信したので、当該基準局(1)の優先度を最高に更新する(優先度が最高であったときはそのままの優先度が最高、優先度が最高でなかったときは優先度を最高に更新する)。
【0040】
以上によって、基準局(1)が移動端末(1)からの測位信号を受信してその受信時刻T01を測位サーバ4に送信、基準信号を基地局3に送信、および基準信号を送信したときの送信時刻T02を測位サーバ4に送信することが可能となると共に、優先度が最高でないときは動的に最高に更新することが可能となる。
【0041】
S10は、S6のYESで、他の基準局3からの基準信号が送信されていると判明したので、基準信号を受信する。
【0042】
S11は、基準送信時刻をサーバ送信する。これらS6のYES,S10、S11は、他の基準局から基準信号が送信されていると判明したので、その送信されている基準局の基準信号を受信し、基準信号の受信時刻T12を有線あるいは無線手段で測位サーバ4に送信する。
【0043】
S12は、端末(1)に対して優先度をクリアする。これは、基準局(1)が端末(1)からの測位信号を受信したときに、基準信号を送信する優先度を、ここでは、クリアし、最高ではなくする。
【0044】
以上のS1からS5、S6のYES,S10からS12によって、基準局(1)が移動端末(1)からの測位信号を受信した受信時刻T01を測位サーバ4に送信、他の基準局からの基準信号を受信した受信時刻T02を測位サーバ4に送信することにより、当該基準局(1)は基地局として動作させることが可能となると共に、当該基準局(1)の端末(1)から測位信号を受信したときに、基準信号を送信するときの優先度を最高ではなく低い所定値に更新することが可能となる。
【0045】
S21は、測位信号を受信する。これは、基地局(1)が移動端末(1)からの測位信号を受信する。
【0046】
S22は、端末受信時刻を有線あるいは無線手段でサーバに送信する。これは、S21で移動端末(1)から受信して自局のタイマで測定した、移動端末(1)からの測位信号の受信時刻、ここでは、受信時刻T11を測位サーバ4に送信する。
【0047】
S23は、基準信号を受信する。これは、基準局(1)から送信された基準信号を、基地局(1)が受信し、基準信号の受信時刻T12を計測する。
【0048】
S24は、基準受信時刻を有線あるいは無線手段でサーバに送信する。これは、S23で受信して計測した基準信号の受信時刻T12を測位サーバ4に送信する。
【0049】
以上のS21からS24によって、基地局(1)が移動端末(1)からの測位信号を受信してその受信時刻T11を測位サーバ4に送信、基準局からの基準信号を受信した受信時刻T12を測位サーバ4に送信することが可能となる。
【0050】
S31は、測位サーバが有線あるいは無線手段で端末受信時刻を受信する。これは、基準局(1)、基地局(1)、・・・などから、移動端末の測位信号の受信時刻T01,T02,T03などを受信する。
【0051】
S32は、測位サーバが有線あるいは無線手段で基準送信時刻を受信する。これは、ここでは、基準局(1)が基準信号を基地局(1)などに送信したときの当該基準局(1)の送信時刻T02を受信する。
【0052】
S33は、測位サーバが有線あるいは無線手段で基準受信時刻を受信する。これは、ここでは、基地局(1)が基準信号を受信した受信時刻T12などを受信する。
【0053】
S34は、測位計算する。これは、測位サーバ4が、例えば
・S31で受信した測位信号の受信時刻T01、T11
・S32で受信した基準信号の送信時刻T02
・S33で受信した基準信号の受信時刻T12、T22
をもとに、移動端末1の位置を算出する(具体的には、図5の説明参照)。
【0054】
以上によって、端末(1)から測位信号を送信し、基準局(1)や基地局(1)などが受信した測位信号の受信時刻、基準信号を送信したときの送信時刻,更に、送信された基準信号受信した受信時刻を、測位サーバ4が送信させて受信して収集し(S31からS33)、これらから移動端末の位置を自動算出することが可能となる(図5の説明参照)。
【0055】
図3は、本発明の基地局/基準局の例を示す。
図3において、基準局1,2は、移動端末から測位信号を受信したときに、基準信号を送信(ブロードキャスト)するものであって、ここでは、相互に基準信号を送受信できる位置に配置したものである。
【0056】
基地局1,2,3,4,5,6は、基準局1、2のいずれか一方あるいは両者から基準信号を受信したり、移動端末からの測位信号を受信したりし、受信時刻を計測し、図示外の図1の測位サーバ4に送信し、移動端末の位置を計測するためのものである。
【0057】
ここで、下記のように、受信できる。
・移動端末から送信された測位信号は、実線の矢印で示すように、基地局1,2,4,5,6の5局で受信、および基準局1,2の2局で受信できる。
【0058】
・基準局1から送信された基準信号は、点線の矢印で示すように、基地局1,2,3,6の4局で受信、および基準局2の1局で受信できる。
【0059】
・基準局2から送信された基準信号は、点線の矢印で示すように、基地局1,4,5,6の4局で受信、および基準局1の1局で受信できる。
【0060】
図4は、本発明のリスト/情報の例を示す。
図4の(b)は、各基準局の登録情報テーブルの例を示す。基準局1の行が基準局1の登録情報テーブルであり、基準局2の行が基準局2の登録情報テーブルであり、以下同様である。登録情報テーブルには、デフォルトの優先度と最優先にする端末(移動端末1)のIDを登録IDリストとして並べたものであって、ここでは、図示の下記の情報を対応づけて登録するものである。
【0061】
・優先度:
・登録IDリスト:
・サーバアドレス:
・その他:
ここで、優先度は基準局に予め設定された優先度(デフォルト値)であって、図示の例では、1が最高から2番目の優先度である。登録IDリストには、優先度を最高にする端末のIDが複数個並んだものである。この登録IDリストに並んだ端末は最高の優先度になる。サーバアドレスは、測位信号の受信時刻などを測位サーバ4に送信するためのアドレスである。
【0062】
図4の(a)の例を用いて、移動端末T1が移動した時の各基準局の登録IDリストの動的変化を図4(b)に示す。
【0063】
図4の(a)は、移動端末T1が基準局1,2,3,4の近くに図示の実線の矢印およびA,B,C,D,Eで示すように順次移動する様子を示す。
【0064】
図4の(b)において、左上の登録情報テーブル(初期状態)は、初期の登録状態テーブルを示す。基準局1の優先度は1(最高から2番目)、基準局2の優先度は2(最高から3番目)となっており、この優先度は変化しない。一方、登録IDリストは、初期状態では全て空であり、どの移動端末も登録されていない。
【0065】
登録情報テーブル(Aの位置)は、移動端末T1が図4の(a)でA点に移動し、測位信号を送信して基地局3が当該測位信号を受信した後、基準信号を送信したので、当該基地局3の登録IDリストには、移動端末T1のIDが入る。すなわち、移動端末T1にとっては、基準局3が最高の優先度(待時間を0)となる。
【0066】
登録情報テーブル(Bの位置)は、移動端末T1が図4の(a)でB点に移動し、測位信号を送信した場合である。測位信号は基準局3と基準局2に届くが、基準局3の優先度が高いため、基準局3が当該測位信号を受信した後、基準信号を送信する。基準局2は基準局3よりも優先度が低いため、時間待ちするが、その間に基準局3が基準信号を送信し、基準局2がその基準信号を受信するため、登録IDリストは変更しない。
【0067】
登録情報テーブル(Cの位置)は、移動端末T1が図4の(a)でC点に移動し、測位信号を送信した場合である。測位信号は基準局2には届くが基準局3には届かなくなる。基準局3の優先度が高かったため、基準局3は測位信号を受信できれば基準信号を送信するが、この場合には、測位信号を受信できないため、基準信号を送信することができない。基準局2は、測位信号を受信後、優先度が低いため時間待ちするが、その間により優先度の高い基準局(この場合には基準局3)からの基準信号が送信されないため、時間待ち後、基準信号を送信する。それによって、基準局2の登録IDリストに移動端末T1のIDが登録される。この時、基準局3の登録IDリストから移動端末T1のIDは削除される。
【0068】
同様に、登録情報テーブル(Dの位置)、(Eの位置)は、移動端末T1が図4の(a)でそれぞれD点、E点に移動して、リストが変化した後の状態を示す。
【0069】
以上のように、移動端末T1の移動に従い、各基準局の登録情報テーブルの登録IDリストに移動端末T1のIDが追加されたり削除されたりすることで、移動端末T1に対する基準局の優先度にすることにより、測位信号に対する応答性を良好に動的に更新することが可能となる。
【0070】
図4の(c)は、端末情報(サーバ用)の例を示す。端末情報(サーバ用)は、図1の測位サーバ4が保持するものであって、ここでは、図示の下記の情報を登録して管理するものである。横軸は基準局1・・・基準局r,基地局1・・・基地局bを表し、縦軸はその座標(x,y),測位信号を受信した端末IDなどの情報を表す。
【0071】
例えば基準局1は、
・座標 (x10,y10)
・端末ID:1 T01,T02
であり、このうちの座標(x10,y10)は基準局1が設置された固定の既知の座標であり、端末ID:1 T01、T02は、当該端末ID=1の移動端末からの測位信号の受信時刻T01、基準信号の送信時刻T02であって、例えば図2で既述した端末1からの測位信号を受信した当該基準局1のタイマで測定した受信時刻T01(図2のS2)、および当該基準局1が基準信号を送信したときの当該基準局1のタイマで測定した送信時刻T02(図2のS7)である。
【0072】
また、例えば基地局1は、
・座標 (x11,y11)
・端末ID:1 T11,T12
であり、このうちの座標(x11,y11)は基地局1が設置された固定の既知の座標である。端末ID:2 T11、T12は、当該端末ID=2の移動端末からの測位信号の受信時刻T11、基準信号の受信時刻T12であって、例えば図2で既述した端末1からの測位信号を受信した当該基地局1のタイマで測定した受信時刻T11(図2のS21)、および基準局から送信された基準信号を受信したときの当該基地局1のタイマで測定した受信時刻T12(図2のS23)である。
【0073】
以上の座標を端末情報テーブル(サーバ用)に予め登録、および既述した図2のフローチャートに従い収集した端末ID毎の時刻を端末情報テーブル(サーバ用)に図示のように登録することにより、移動端末の位置を算出することが可能となる(図5を用いて後述する)。
【0074】
図5は、本発明の移動端末の測位例を示す。ここでは、図示のように、
・座標は、
・移動端末の座標(X1、Y1)
・基準局の座標(x10,y10)
・基地局1の座標(x11,y11)
・基地局2の座標(x21,y21)
と予め登録されており、
・移動端末からの測位信号を受信した受信時刻が
・基準局でT01と測定
・基地局1でT11と測定
・基地局2でT21と測定
・基準局が基準信号を送信した送信時刻がT02と測定
・基地局1が基準局から送信された基準信号を受信した受信時刻がT12と測定
・基地局2が基準局から送信された基準信号を受信した受信時刻がT22と測定
されたとする。
【0075】
・更に、基準局に対する基地局1、基地局2の時刻のずれをTd1,Td2,光速をVcとすると、
(1)移動端末から送信された測位信号が基準局と基地局1に到達する時刻差に光速を乗じたものは、移動端末と基準局間の距離と、移動端末と基地局1間の距離との差となるため、
Vc(T01-T11-Td1)=((X1-x10)2 +(Y1-y10)2)1/2 - ((X1-x11)2 +(Y1-y11)2)1/2 (式1) (2)同様に、移動端末から送信された測位信号が基準局と基地局2に到達する時刻差に光速を乗じたものは、移動端末と基準局間の距離と、移動端末と基地局2間の距離との差となるため、
Vc(T01-T21-Td2)=((X1-x10)2 +(Y1-y10)2)1/2 - ((X1-x21)2 +(Y1-y21)2)1/2 (式2) (3)また、基準局から基準信号が基地局1に到達する時間差から、
Vc(T12+Td1-T02)=((x11-x10)2 +(y11-y10)2)1/2 (式3)
(4)また、基準局から基準信号が基地局2に到達する時間差から、
Vc(T22+Td2-T02)=((x21-x10)2 +(y21-y10)2)1/2 (式4)
(5)従って、上記(1)から(4)の4つの式で未知数は,Td1,Td2,X1,Y1であるため、連立方程式を解くことにより、ここでは、移動端末の座標(X1、Y1)を求めることが可能となる。
【0076】
図6は、本発明の移動端末の説明図を示す。
図6の(a)は、移動端末例を示す。
【0077】
図6の(a)において、MPU13は、マイクロプロセッサであって、ここでは、移動端末1が送信しようとするデータ(例えば図6の(b)の測位信号)を、送信データ14として作成する。
【0078】
送信データ14は、移動端末1が送信しようとするデータであって、MPU13が作成した測位信号などのデータである。
【0079】
PPMデータ変調部15は、端末用PN系列発生部16で発生された擬似ランダムデータをもとに、送信データ14を変調(ここでは、公知のパルス位置変調PPM)し、送信用信号(例えば図6の(b)参照)を生成するものである。
【0080】
端末用PN系列発生部16は、擬似ランダムデータ(擬似ランダムデータ列)を生成する公知のものである。
【0081】
インパルス生成部17は、PPMデータ変調部15で生成された変調後の信号をもとに、インパルスを発生するものである。
【0082】
BPF18は、バンドパスフィルタであって、所定帯域のパルス信号のみを通過させる公知のフィルタである。
【0083】
PA19は、パワーアンプであって、BPF18でフィルタリングされた後の信号(インパルス信号)を電力増幅するものである。
【0084】
アンテナ20は、PPM変調されたパルス信号を、電波として送信するアンテナである。
【0085】
以上によって、MPU13が作成した送信データ14(例えば測位信号)が擬似ランダムデータで変調(ここでは、パルス位置変調)し、アンテナ20から電波として送信することが可能となる。
【0086】
図6の(b)は、データフォーマット例を示す。図示のデータフォーマット例は、移動端末1が送信する測位データの例を示す。
【0087】
図6の(b)において、プリアンプル部は、測位データの先頭部分であって、ここでは、無変調であり、THデータ(タイムホッピングデータ)の位置、即ち擬似ランダムデータとして作成した数値(ここでは、図示の5,7,6,3,4,2,1)の位置に送信パルスを発生させたものである。プリアンプル部に続くデータ部(PPM変調)では、当該THデータの位置を基準に、送信しようとするデータを加算した位置に送信パルスを発生させ、結果としてパルス位置変調を行うようにしている。例えばデータ部の2番目のデータは”1”であるので、プリアンプル部の2番目のTHデータ”7”に当該”1”を加算した”8”の位置にパルス位置変調した送信パルスを発生させる。以下同様に、図示のようにデータでパルス位置変調した送信パルスをそれぞれ発生させる(パルス位置変調させる)。
【0088】
以上によって、移動端末1は、擬似ランダムデータをもとに送信データ(測位データなど)でパルス位置変調した信号を、アンテナ20から無線で送信(ブロードキャスト)することが可能となる。
【0089】
図7は、本発明の基地局例を示す。これは、既述した図1の基地局3の詳細システム構成図を示す。
【0090】
図7において、基地局3は、アンテナ311、BPF312、LNA313,パルス検出器314、時刻タイマ315、および基準信号受信ブロック35、複数の測位信号受信ブロック36、MPU37などから構成されるものである。
【0091】
アンテナ311は、他の基地局3、基準局2、移動端末1などから、無線で送信された信号を受信するアンテナである。
【0092】
BPF312は、アンテナ311で受信した信号中から所定の帯域の信号を通過させるフィルタである。
【0093】
LNA313は、ローノイズアンプである。
パルス検出部314は、LNA313で増幅した後の信号中からパルスを検出するものである。
【0094】
時刻タイマ315は、当該基地局3が保持する独自に計測するタイマである。
基準信号受信ブロック35は、パルス検出部314で検出されたパルス信号から、基準局2から送信されて受信された基準信号を抽出し、当該抽出した基準信号から受信データを復調および受信時刻を測定するものであって、相関器351、基準用PN系列発生部352、受信時刻保持部353、PPMデータ復調部354、受信データ355などから構成されるものである。
【0095】
相関器351は、パルス検出部314で検出されたパルス信号中から、基準信号を抽出するものであって、ここでは、基準用PN系列発生部352で発生された擬似データをもとに基準信号を抽出するものである。
【0096】
基準用PN系列発生部352は、基準信号を抽出するための擬似ランダム信号を発生するものである。
【0097】
受信時刻保持部353は、基準信号が検出されたとき(受信されたとき)の受信時刻(基準信号の受信時刻)を保持するものである。
【0098】
PPMデータ復調部354は、PPMデータ(パルス位置データ)を復調するものである(図6の(b)と逆の処理で、受信データを復調する)。
【0099】
受信データ355は、復調された受信データである。
以上の構成により、アンテナ311で受信した信号中から、基準局2から送信されて受信された基準信号を抽出し、当該基準信号を受信した受信時刻および受信データを取り出すことが可能となる。
【0100】
測位信号受信ブロック36は、複数設けたものであって、パルス検出部314で検出されたパルス信号から、移動端末4から送信されて受信された測位信号を抽出し、当該抽出した測位信号から受信データを復調および受信時刻を測定するものであって、相関器361、端末用PN系列発生部362、受信時刻保持部363、PPMデータ復調部364、受信データ365などから構成されるものである。
【0101】
相関器361は、パルス検出部314で検出されたパルス信号中から、測位信号を抽出するものであって、ここでは、端末用PN系列発生部362で発生された擬似データをもとに測位信号を抽出するものである。
【0102】
端末用PN系列発生部362は、測位信号を抽出するための擬似ランダム信号を発生するものである。
【0103】
受信時刻保持部363は、測位信号が検出されたとき(受信されたとき)の受信時刻(測位信号の受信時刻)を保持するものである。
【0104】
PPMデータ復調部364は、PPMデータ(パルス位置データ)を復調するものである(図6の(b)と逆の処理で、受信データを復調する)。
【0105】
受信データ365は、復調された受信データである。
以上の構成により、アンテナ311で受信した信号中から、移動端末4から送信されて受信された測位信号を抽出し、当該測位信号を受信した受信時刻および受信データを取り出すことが可能となる。
【0106】
MPU37は、全体を統括制御するものであって、ここでは、基準信号受信ブロック35で受信された基準信号の受信時刻、受信データ、および測位信号受信ブロック36で受信された測位信号の受信時刻、受信データを測位サーバ4に有線、あるいは無線で送信するものである。
【0107】
以上の構成により、各基地局3は、基準局2から送信された基準信号の受信時刻、受信データ、および移動端末4から送信された測位信号の受信時刻、受信データをそれぞれ測定および復調し、測位サーバ4に送信することが可能となる。
【0108】
図8は、本発明の基準局例を示す。これは、既述した図1の基準局2の詳細システム構成図を示す。
【0109】
図8において、基準局2は、基準信号送信ブロック61、基準用PN系列発生部62、待時間制御部63、基準信号受信ブロック64、測位信号受信ブロック65、MPU66およびアンテナ51、55、PA52,BPF53、56、時刻タイマ54、LNA57,パルス検出部58などから構成されるものである。アンテナ51,55、BPF53、56、時刻タイマ54、パルス検出部58は、図7と同じであるので説明を省略する。
【0110】
図8において、PA52は、電力増幅器である。
基準用PN系列発生器62は、基準信号を変調あるいは復調(抽出)するときに使用する当該基準信号用の擬似ランダムデータを発生するものである。
【0111】
待時間制御部63は、移動端末4から測位信号を受信してから、基準信号を送信するまでの待時間を制御するものである。
【0112】
基準信号送信ブロック61は、基準信号を送信および送信時刻を測定して保持するブロックであって、ここでは、送信データ611、PPMデータ変調部612、インパルス生成部613、および送信時刻保持部614などから構成されるものである。
【0113】
送信データ611は、送信しようとするデータであって、待時間制御部63からの待時間経過後に当該送信データ611をPPMデータ変調部612に通知して変調させるためのものである。
【0114】
PPMデータ変調部612は、送信データ611について、基準用PN系列発生部62からの基準信号変調用の擬似ランダムデータをもとにパルス位置変調データに変調(変換)するものである。
【0115】
インパルス生成部613は、PPMデータ変調部612で変調された後のデータについて、インパルスを発生させてパルス位置変調信号を生成するものである。
【0116】
送信時刻保持部614は、基準信号を送信したときの時刻(送信時刻)を、自局が保持する時刻タイマ54で計測して保持するものである。
【0117】
以上によって、送信データ(基準信号)について、所定の待時間(優先度の対応した待時間)を経過後に基準信号用の擬似ランダムデータをもとにパルス位置変調してBPF53,PA52,アンテナ51を介して無線で、基準信号を基地局3および他の基準局2などに送信(ブロードキャスト)することが可能となると共に、基準信号の送信時刻を自局の時刻タイマ54で計測することが可能となる。
【0118】
基準信号受信ブロック64は、アンテナ55、BPF56,LNA57,およびパルス検出部58を介して検出されたパルス信号から、他の基準局2から送信されて受信された基準信号を抽出し、当該抽出した基準信号から受信データを復調および受信時刻を測定するものであって、相関器641、基準用PN系列発生部62、受信時刻保持部643、PPMデータ復調部644、受信データ645などから構成されるものである。
【0119】
相関器641は、パルス検出部58で検出されたパルス信号中から、基準信号を抽出するものであって、ここでは、基準用PN系列発生部62で発生された擬似データをもとに基準信号を抽出するものである。
【0120】
受信時刻保持部643は、基準信号が検出されたとき(受信されたとき)の受信時刻(基準信号の受信時刻)を保持するものである。
【0121】
PPMデータ復調部644は、PPMデータ(パルス位置データ)を復調するものである(図6の(b)と逆の処理で、受信データを復調する)。
【0122】
受信データ645は、復調された受信データである。
以上の構成により、アンテナ55で受信した信号中から、他の基準局2から送信されて受信された基準信号を抽出し、当該基準信号を受信した受信時刻および受信データを取り出すことが可能となる。
【0123】
測位信号受信ブロック65は、複数設けたものであって、アンテナ55、BPF56,LNA57,およびパルス検出部58で検出されたパルス信号から、移動端末4から送信されて受信された測位信号を抽出し、当該抽出した測位信号から受信データを復調および受信時刻を測定するものであって、相関器651、端末用PN系列発生部652、受信時刻保持部653、PPMデータ復調部654、受信データ655などから構成されるものである。
【0124】
相関器651は、パルス検出部58で検出されたパルス信号中から、測位信号を抽出するものであって、ここでは、端末用PN系列発生部652で発生された移動端末用の擬似データをもとに測位信号を抽出するものである。
【0125】
端末用PN系列発生部652は、測位信号を抽出するための擬似ランダム信号を発生するものである。
【0126】
受信時刻保持部653は、測位信号が検出されたとき(受信されたとき)の受信時刻(測位信号の受信時刻)を保持するものである。
【0127】
PPMデータ復調部654は、PPMデータ(パルス位置データ)を復調するものである(図6の(b)と逆の処理で、受信データを復調する)。
【0128】
受信データ655は、復調された受信データである。 以上の構成により、アンテナ55で受信した信号中から、移動端末4から送信されて受信された測位信号を抽出し、当該測位信号を受信した受信時刻および受信データを取り出すことが可能となる。
【0129】
MPU66は、全体を統括制御するものであって、ここでは、基準信号送信ブロック61で送信した基準信号の送信時刻、基準信号受信ブロック35で受信された基準信号の受信時刻、受信データ、および測位信号受信ブロック65で受信された測位信号の受信時刻、受信データを測位サーバ4に有線、あるいは無線で送信するものである。
【0130】
以上の構成により、各基準局2は、測位信号を受信したときに基準信号を送信、送信時刻を計測、他の基準局2から送信された基準信号の受信時刻、受信データ、および移動端末4から送信された測位信号の受信時刻、受信データをそれぞれ変調、測定および復調することにより、基準信号を無線で基地局、他の基準局に送信したり、測位サーバ4に受信データ、受信時刻、送信時刻などを送信することが可能となる。
【0131】
図9は、本発明の待時間制御部例を示す。図示の待時間制御部63は、図8の待時間制御部63の詳細システム構成図の例を示す。
【0132】
図9において、待時間制御部63は、基準局2が保持する優先度に従い、送信データ(基準信号)を基地局3および他の基準局2に送信するための待時間を制御して基準信号の衝突を回避するためのものであって、ここでは、受信ID631、比較器632、登録IDリスト633、ウエイトタイマ634などから構成されるものである。
【0133】
受信ID631は、測位信号受信ブロック65で受信した、移動端末4の測位信号中から抽出した当該移動端末のIDである。受信ID631が登録IDリスト633に無いときは、追加登録する。
【0134】
比較器632は、受信した受信ID631が、登録IDリスト633に既に登録されているか比較し、登録されているときにその受信IDの移動端末の優先度が”最高”(1)かそれ以外か判別する。既述した図4の(b)の登録IDリスト(基準局(1)用)を参照し、例えば受信ID=”端末1”であったときには、当該”端末1”の優先度が”最高”(1)であるので、この場合には、優先度”最高”と判別する。優先度が”最高”の場合には、即座に待つことなく、基準送信ブロック61に指示し、送信データ(基準信号)をパルス位置変調などしてアンテナから無線で送信する。一方、優先度が”最高”以外の場合には、既述した図4の(b)の優先度(基準局(1)用)を参照し、優先度に応じてウエイトタイマ634で所定時間経過した後に、基準送信ブロック61に指示し、送信データ(基準信号)をパルス位置変調などしてアンテナから無線で送信する。尚、優先度が”最高”(1)以外の場合に、所定時間経過した後、基準信号が送信されていないことを確認し、基準信号を送信指示する。
【0135】
登録IDリスト633は、基準局2毎に設け、移動端末4に対応づけて基準信号の優先度を、既述した図4の(b)のように登録して管理するものである。
【0136】
MPU66は、ここでは、登録IDリスト633に、移動端末のIDを追加、削除したり、優先度を更新したりなどするものである(既述した図2のS9、S12など参照)。
【0137】
以上の構成のもとで、待時間制御部63は、測位信号を受信したときに、当該測位信号を送信した移動端末の優先度について、登録IDリスト633を参照して比較し、自局の優先度が最高のときに即座に待つこと無く、基準信号を送信(ブロードキャスト)し、一方、優先度が最高でないときは所定時間経過後に基準信号を送信(ブロードキャスト)することにより、複数の基準局2の間の基準信号の送信の衝突を回避することが可能となる。
【実施例2】
【0138】
次に本発明の第2の実施例について説明する。図1、図6、図7、図8は第1の実施例と同様であるため、説明は省略する。待ち時間の制御方法が第1の実施例と異なるため、図2のフローチャートの一部と図9の待時間制御部が異なるため、異なる部分のみ説明する。
【0139】
図10は、本発明の第2の実施例の動作説明フローチャート(待時間更新)を示す。図10では、第1の実施例のフローチャート図2と同じ部分は省略し、異なる部分のみ示す。基準局については、図2のS8の後に図10のS41に続く。サーバについては、図2のS34の後に図10のS42に続く。
【0140】
図10において、S41は、基準局1がサーバに通知する。これは、既述した図2のX1に続けて、即ち、S8の次にS9を行う代わりに、当該基準局1が移動端末から測位信号を受信し、基準信号を送信したときに、当該移動端末のIDを測位サーバ4に通知する。
【0141】
S42は、S41の通知を受けた測位サーバ4が、待時間表で基準局1と隣接する基準局の優先度を上げる。これは、例えば、後述する図12の(b)の待時間表中で、初期状態であったものを、図12の(a)でAの位置に移動端末Tnが移動して基準局3に測位信号が届くようになった時には、図12の(b)のAの待時間表に示すように更新、即ち、移動端末Tnと基準局R3との交差する位置の優先度を0(最高)にし、当該位置を中心に左右の優先度が高く、離れている基準局では優先度を小さく(数字が大きく)なる図示のようにそれぞれ更新する。
【0142】
S43は、待時間表を各基準局に送信する。
S44、S45は、基準局1,2・・・が待時間表をそれぞれ受信し、自局の待時間表をそれぞれ更新する。
【0143】
以上によって、基準局が移動端末から測位信号を受信し、基準信号を送信(ブロードキャスト)した場合に、測位信号を受信した移動端末ID(Tn)を測位サーバ4に通知し、測位サーバ4が例えば図12の(b)の待時間表(初期状態)を、基準信号を送信した基準局の優先度を最高にし、それに隣接する基準局の優先度を次に高くするように更新し、全基準局に当該移動端末ID(Tn)に対する優先度(待時間)を更新させることが可能となる。これにより、移動端末Tnに近い基準局の待時間(優先度)を最小(最高)、更に、隣接する基準局の待時間(優先度)を次になるように更新し、測位精度および測位応答性を良好に動的に更新することが可能となる。
【0144】
図11は、本発明の第2の実施例の待時間制御部例を示す。これは、第1の実施例の待時間制御部63が図9であったのに対して、第2の実施例の待時間制御部63が図11となり、既述した図10の待時間表を更新する場合のシステム構成図の例を示す。
【0145】
図11において、受信ID631は、既述した測位信号受信ブロック65から移動端末1からの測位信号中から移動端末IDを受信したものである。
【0146】
待時間表635は、後述する図12の(b)に記載する待時間表であって、移動端末IDに対応づけて待時間(優先度)を設定して管理する表である。
【0147】
ウェイトタイマ636は、待時間表635を参照し、基地局2が基準信号を送信するのを待つときに使用するタイマである。
【0148】
MPU637は、各種制御を行うものであって、測位信号を受信して基準信号を送信したときに受信した測位信号の移動端末のIDを測位サーバ4に送信したり、測位サーバの全基準局待時間表43が送信されたときに自己の待時間表635を更新したりなどするものである(図10で既述のS41、S44、S45などを行うものである)。
【0149】
以上の構成のもとで、既述した図10の処理を行うことにより、各基準局2の待時間表を動的に更新し、測位精度および測位応答性を良好に動的に更新することが可能となる。
【0150】
図12は、本発明の第2の実施例の待時間表例を示す。
図12の(a)は、移動端末Tnが基準局1,2,3,4(R1,R2,R3,R4)の近くに図示の実線の矢印およびA,B,C,D,Eで示すように順次移動する様子を示す。
【0151】
図12の(b)は、待時間表の例を示す。
図12の(b)において、左上の待時間表(初期状態)は、初期の移動端末T1,T2、・・・Tn・・・に対応づけて基準局R1,R2,R3,R4の待時間(優先度)を初期設定したものである。
【0152】
待時間表(A)は、移動端末Tnが図12の(a)でA点に移動し、測位信号を送信して基地局3(R3)が当該測位信号を受信した後、基準信号を送信したので、当該基地局3(R3)の待時間を0(優先度0で、最高)に更新し、隣接するR2,R4を次の待ち時間に設定したものである。移動端末Tnに近い基準局3(R3)の待時間を0に更新することで、応答性を良好に動的に更新することが可能となる。
【0153】
同様に、待時間表(B),(C),(D),(E)は、移動端末Tnが図12の(a)でそれぞれB点、C点、D点、E点に移動したときのものをそれぞれ示す。
【0154】
以上のように、移動端末Tnの移動に従い、移動端末Tnからの測位信号を受信している基準局の待時間を0(最優先度)に更新し、更にそれに隣接する基準局の待時間を次になるように更新することにより、応答性を良好に動的に更新することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明は、移動端末からの測位信号を受信した複数の基準局が動的可変の優先度に従い基準信号を複数の基地局などに送信し、基地局は移動端末からの測位信号の受信時刻および基準局からの基準信号の受信時刻をサーバに送信し、サーバはこれら送信された時刻を受信して移動端末の位置を算出し、移動端末がいずれの基準局、基地局の受信範囲に移動しても確実に自動測位する無線測位システムおよび無線測位方法に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明のシステム構成図である。
【図2】本発明の動作説明フローチャートである。
【図3】本発明の基地局/基準局の例である。
【図4】本発明の第1の実施例の登録情報テーブル例である。
【図5】本発明の移動端末の測位例である。
【図6】本発明の移動端末の説明図である。
【図7】本発明の基地局例である。
【図8】本発明の基準局例である。
【図9】本発明の第1の実施例の待時間制御部例である。
【図10】本発明の第2の実施例の動作説明フローチャート(待時間更新)である。
【図11】本発明の第2の実施例の待時間制御部例である。
【図12】本発明の第2の実施例の待時間表例である。
【図13】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0157】
1:移動端末
11:測位信号生成部
12:送信部
13:MPU
14:送信データ
15:PPMデータ変調部
16:端末用PN系列発生部
17:インパルス発生部
18:BPF
19:PA
20:アンテナ
2:基準局
21:受信部
22:端末受信時刻保持部
23:基準受信時刻保持部
24:待時間制御部
25:基準信号生成部
26:基準送信時刻保持部
27:送信部
3:基地局
31:受信部
311:アンテナ
312:BPF
313:LNA
314:パルス検出部
315:時刻タイマ
32:端末受信時刻保持部
33:基準受信時刻保持部
34:送信部
35:基準信号受信ブロック
351:相関器
352:基準用PN系列発生部
353:受信時刻保持部
354:PPMデータ復調部
355:受信データ
36:測位信号受信ブロック
361:相関器
362:端末用PN系列発生部
363:受信時刻保持部
364:PPMデータ復調部
365:受信データ
37:MPU
4:測位サーバ
41:測位計算部
42:待時間調整部
43:全基地局待時間表
51、55:アンテナ
52:PA
53、56:BPF
54:時刻タイマ
57:LNA
58:パルス検出部
61:基準信号送信ブロック
611:送信データ
612:PPMデータ変調部
613:インパルス生成部
614:送信時刻保持部
62:基準用PN系列発生部
63:待時間制御部
631:受信ID
632:比較器
633:登録IDリスト
634:ウェイトタイマ
635:待時間表
636:ウェイトタイマ
637:MPU
64:基準信号受信ブロック
641:相関器
643:受信時刻保持部
644:PPMデータ復調部
645:受信データ
65:測位信号受信ブロック
651:相関器
652:端末用PN系列発生部
653:受信時刻保持部
654:PPMデータ復調部
655:受信データ
66:MPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動端末の位置を無線で測位する無線測位システムにおいて、
電波の測位信号を送信する移動端末と、
前記移動端末から送信された測位信号を受信したときに当該測位信号の受信時刻、および基準局から受信した基準信号の受信時刻を、自局のタイマをもとにそれぞれ計測する、位置が既知の複数の基地局と、
前記移動端末から送信された測位信号を受信したときに当該自局の基準信号を送信する、位置が既知の複数の基準局と、
前記基地局からの測位信号の受信時刻と基準信号の受信時刻を受信し、前記移動端末の位置を算出するサーバとを備え、
前記複数の基準局が設定された優先度で、移動端末からの測位信号を受信したときに自局の基準信号を複数の基地局に送信し、衝突を回避することを特徴とする無線測位システム。
【請求項2】
前記隣接する基準局は相互に基準信号を受信できるように構成したことを特徴とする請求項1記載の無線測位システム。
【請求項3】
前記基準局は優先度が高い程短い所定の待ち時間を有し、前記基準局は前記移動端末から送信された前記測位信号を受信後に前記所定の待ち時間の間他の基準局の基準信号を観察し、所定の待ち時間中に他の基準局の基準信号が送信されていないことを確認してから自局の基準信号を送信することを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載の無線測位システム。
【請求項4】
前記基準局は前記移動端末の位置に応じて前記優先度を動的に変えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の無線測位システム。
【請求項5】
前記基準局は、前記所定の待ち時間中に他の基準局の基準信号が送信されていないことを確認してから基準信号を送信した場合に、その基準局の優先度を最高にすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の無線測位システム。
【請求項6】
前記基準局は、前記最高に設定された基準局に隣接する基準局の優先度を上げることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の無線測位システム。
【請求項7】
移動端末の位置を無線で測位する無線測位方法において、
移動端末が電波の測位信号を送信するステップと、
位置が既知の複数の基地局が、それぞれ前記移動端末から送信された測位信号を受信したときに当該測位信号の受信時刻、および基準局から受信した基準信号の受信時刻を、自局のタイマでそれぞれ計測し、送信するステップと、
位置が既知の複数の基準局が、前記移動端末から送信された測位信号を受信したときに当該自局の基準信号を送信するステップと、
サーバが、前記基地局からの測位信号の受信時刻と基準信号の受信時刻を受信し、前記移動端末の位置を算出するステップとを備え、
前記複数の基準局が設定された優先度で、移動端末からの測位信号を受信したときに自局の基準信号を複数の基地局に送信し、衝突を回避することを特徴とする無線測位方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−193367(P2008−193367A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24937(P2007−24937)
【出願日】平成19年2月4日(2007.2.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、総務省、「UWBインテリジェント測位センサーネットワークの研究開発と医療・ホーム・オフィスへの応用」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】