説明

無線装置

【課題】無線装置として必要な構成要素で、故障する前に他の送受信ユニットに切り換えることができ、且つ故障後に故障箇所の認識作業が不要となると共に、故障して動作停止状態を回避することができる無線装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】前記記憶部15の情報および点検の結果とを基に特性劣化または経年変化を推定し、点検の周期を決定する推定部17とを備え、前記比較部16の結果に基づいて送受信ユニットの切り換えおよび前記推定部17が決定する周期で点検を制御する無線装置であり、一方の送受信ユニットを用いて、他の送受信ユニットを点検し、この点検結果に基づいて経年変化特性を含む特性劣化傾向を算出し、予め記憶部に記憶された基準値とを比較して、故障する前に他の送受信ユニットに切り換えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点検の結果に基づいて、故障する前に他の送受信ユニットに切り換える無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報通信網の普及に伴い、回線の信頼度向上と共に、障害時の故障機器の切り分けと復旧作業の迅速な対応が要求されている。
【0003】
さらに、移動通信基地局間通信用無線装置や衛星通信用小型地球局無線装置などのアンテナと一体化された屋外設置型の経済的な無線装置が開発されている。
【0004】
このような屋外設置型の無線装置では、保守時に機器性能を評価、確認するため、折り返し試験による自己診断機能が必要となるが、構造上や設置条件上から折り返し試験器等を装置外に取り付けることができず、装置内部に送信出力を受信入力に取り込んで受信中間周波信号に変換する回路が必要となる。
【0005】
図3は従来の折り返し試験を可能とした無線装置の構成を示す機能ブロック図である。
【0006】
ホットスタンバイ方式の無線装置内に、送信側から受信側へ、受信側から送信側へと信号を折り返すことができる折り返し経路と、信号発生器とを設け、信号発生器からの試験信号を上記信号折り返し経路を介して伝送し、伝送された試験信号の品質から伝送状態を監視する場合、2系統の信号の一致、不一致を検出する機能を有する同期切り換え器を設け、該同期切り換え器に、該試験信号および折り返し経路を通った試験信号を入力して、折り返し信号の誤りを検出し、その伝送状態を監視するようにする。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2000−324086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の構成では、無線装置として必要な構成要素以外に新たなデータ信号発生器、信号検出器または同期切り換え器の信号比較機能が必要になると共に、故障後に故障箇所を確認し、その故障箇所を別の構成要素に切り換えるという事後処理の対応のため、復旧するまで動作停止状態となるという課題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するもので、無線装置として必要な構成要素で、自動点検により、性能劣化状態を把握し、点検結果に基づいて、故障する前に他の送受信ユニットに切り換えおよび点検の周期を決定し、制御することができるため、故障後に故障箇所の確認および復旧作業が不要となり、復旧するまでの動作停止状態を回避することができる無線装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
【0011】
本発明の請求項1に記載の発明は、送受信用のアンテナと、このアンテナから送信するための送信信号を生成する送信部と前記送信信号の周波数帯域とは異なる受信信号を前記アンテナから受信してベースバンド信号に変換する受信部とからなる少なくとも2つの送受信ユニットと、前記送信部からの送信信号を前記受信部に入力して点検を実施する点検経路部と、前記点検を制御する制御部とからなる無線装置であって、前記制御部は、予め情報を記憶すると共に、前記点検の結果を記憶する記憶部と、前記情報と前記点検の結果とを比較する比較部と、前記記憶部の情報および点検の結果とを基に特性劣化または経年変化を推定し、点検の周期を決定する推定部とを備え、前記比較部の結果に基づいて送受信ユニットの切り換えおよび前記推定部が決定する周期で点検を制御する無線装置であり、推定部は、記憶部の情報および一方の送受信ユニットを用いて、他の送受信ユニットを点検する結果に基づいて、故障する前の時間的余裕度を判断し、点検の周期を決定するため、故障する前に確実に点検を実施することができ、点検の結果に基づいて、他の送受信ユニットに切り換えることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記情報は、少なくとも出荷時の点検の結果または動作可能な状態における切り換え判定値を含む請求項1に記載の無線装置であり、制御部は、出荷時の点検の結果または正常な状態における切り換え判定値を基に、推定部が決定する周期において、正確な診断ができると共に、特性劣化した送受信ユニットを他の送受信ユニットに切り換えることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記制御部は、前記送信部から出力される送信信号を、前記受信部が受信する同一の周波数帯域に変化させると共に、前記送信信号の電力レベルを制御する請求項1または2のいずれかに記載の無線装置であり、所定の送信電力レベルで受信部が受信する同一の周波数帯域の信号を送信部から受信部に入力することができるため、点検動作による正確な結果を得ることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記点検経路部は、前記送受信ユニットに備えられた送信部または受信部のいずれかを選択する少なくとも2つのスイッチと、入力信号を減衰させるフィルタ型減衰器とを備え、このフィルタ型減衰器を、制御部により選択された送信部と受信部との間に配置し、前記送信部からの送信信号を減衰させ、前記受信部に入力する請求項1から3のいずれかに記載の無線装置であり、少なくとも2つのスイッチとフィルタ型減衰器とからなる点検用経路を構成することができるため、通常動作の機能を損なわずに送信部からの信号をフィルタ型減衰器で減衰させ、受信側に入力することができるため、点検動作の正確な結果を得ることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記記憶部に予め記憶された情報を、受信信号強度表示(RSSI)電圧とした請求項1から4のいずれかに記載の無線装置であり、受信信号強度表示レベルを基準値とすることにより、無線装置としての基本性能を正確に判定することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、前記推定部は、点検の周期の上限値および下限値を有し、推定した周期が上限値以上の場合、上限値とし、下限値以下の場合、前記制御部に送受信ユニットの切り換えを通知する請求項1から5のいずれかに記載の無線装置であり、通常動作の送受信ユニットが正常な場合、長い点検の周期の推定に対し、上限値を設定することにより、より確実に故障する前に点検を実施することができ、また特性劣化した場合、短い点検の周期の推定に対し、下限値を設定することにより、故障する前に確実に他の送受信ユニットに切り換えることができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、前記制御部は、通常動作において、1つの送受信ユニットへの電源電圧の供給を停止する請求項1から6のいずれかに記載の無線装置であり、動作時における発熱などによる特性劣化に与える影響を軽減し、正常な送受信ユニットを保持することができる。
【0018】
請求項8に記載の発明は、前記制御部は、電源電圧供給時に、前記少なくとも2つの送受信ユニットのいずれか1つの送受信ユニットを選択する請求項1から7のいずれかに記載の無線装置であり、電源電圧が供給された場合に最も良い状態の送受信ユニットを選択することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明は、送受信用のアンテナと、このアンテナから送信するための送信信号を生成する送信部と前記送信信号の周波数帯域とは異なる受信信号を前記アンテナから受信してベースバンド信号に変換する受信部とからなる少なくとも2つの送受信ユニットと、前記送信部からの送信信号を前記受信部に入力して点検を実施する点検経路部と、前記点検を制御する制御部とからなる無線装置であって、
前記制御部は、予め情報を記憶すると共に、前記点検の結果を記憶する記憶部と、前記情報と前記点検の結果とを比較する比較部と、前記記憶部の情報および点検の結果とを基に特性劣化または経年変化を推定し、点検の周期を決定する推定部とを備え、前記比較部の結果に基づいて送受信ユニットの切り換えおよび前記推定部が決定する周期で点検を制御する無線装置であり、一方の送受信ユニットを用いて、他の送受信ユニットを点検し、この点検結果に基づいて経年変化特性を含む特性劣化傾向を算出し、予め記憶部に記憶された基準値とを比較して、故障する前に他の送受信ユニットに切り換えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0021】
本実施の形態において、説明を簡潔にするため、2つの送受信ユニットからなる無線装置について説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態における無線装置の構成を示すブロック図である。
図1に示す無線装置は、信号を送受信するアンテナ3と、アンテナ3から送受信する信号の変復調を行う無線部1と、点検動作を制御する制御部2と、電源電圧を供給する電源部37と、送信部からの信号を受信部に入力する点検経路部38とから構成される。そして無線部1は、送信部6と受信部7からなる送受信ユニット4と、送信部8と受信部9からなる送受信ユニット5と、2つの送受信ユニット4、5のいずれかを選択する第3のスイッチ13と、送受信信号の不要波を除去するフィルタ14とを備え、点検経路部38は、送信部または受信部のいずれかを選択する第1スイッチ10および第2のスイッチ11と、入力信号を減衰させるフィルタ型減衰器12とを備えている。さらに制御部2は、予め情報を記憶すると共に、点検の結果を記憶する記憶部15と、初期値である出荷時の点検結果、正常な状態における切り換え判定値などの情報および点検の結果に基づいて性能劣化または経年変化などを推定し、点検の周期を決定する推定部17と、情報と点検の結果とを比較する比較部16とを備えている。
【0023】
図2は、無線部の送受信ユニットの構成を示すブロック図である。
【0024】
図2に示す送受信ユニットの送信部6、8は、制御部2からのベースバンド信号を変調する変調部21、30と、アンテナ3から送信するために電力増幅する駆動部22、29とから構成され、受信部7、9は、アンテナ3から受信したRF信号を増幅する低雑音増幅部24、32と、受信したRF信号の周波数帯域を変換する乗算器25、33と、不要波を抑制するフィルタ26、34と、信号を増幅する増幅部27、35と、ベースバンド信号に変換する検波部28、36、送信部および受信部に入力する局部発振部23、31とから構成される。
【0025】
本発明の無線装置の動作としては、電源電圧供給時の送受信ユニットの選択動作、選択後の通常動作、所定の周期で実施される点検動作がある。
【0026】
先ず、通常動作としての基本動作について説明する。なお基本動作については、2つの送受信ユニットは同様の動作であるため、一方の送受信ユニット4について説明する。
【0027】
制御部2は、送信するためのベースバンド信号を出力する前または略同時に制御信号を出力し、局部発振部23からの通常動作用の発振周波数fsの信号に切り換えまたは調整すると共に、駆動部22を所定の利得に設定する。そして第1のスイッチ10が送信部6、第3のスイッチ13が送受信ユニット4を選択するように切り換え、送信部6からのRF信号がアンテナ3から出力されるように制御する。
【0028】
一方、制御部2から出力されるベースバンド信号が送受信ユニット4の送信部6に入力されると、ベースバンド信号は、送信部6の変調部21により、局部発振部23からの発振周波数fsの信号に基づいて変調される。この変調されたRF信号は、駆動部23により、制御部2から制御された所定の利得で電力増幅され、所定の電力レベルの出力信号に変換される。
【0029】
そして、この所定の電力レベルに変換された出力信号は、第1のスイッチ10および第3のスイッチ13を介して、フィルタ14に入力され、出力信号に含まれる不要波が抑制された後、アンテナ3から出射され、送信動作が完了する。そしてこの送信動作が完了すると、制御部2は、アンテナ3から受信するRF信号が受信部7に入力されるように、第1のスイッチ10を制御し、受信部7を選択するように切り換える。
【0030】
アンテナ3から受信したRF信号は、フィルタ14により、不要波が抑制され、第3のスイッチ13、第1のスイッチ10を介して送受信ユニット4の受信部7に入力される。受信部7に入力されたRF信号は、低雑音増幅部24で増幅され、乗算器25により、局部発振部23からの発振周波数foの信号に基づいて、増幅されたRF信号の周波数と局部発振部からの周波数foとの和と差の周波数の信号が出力され、フィルタ26により差の周波数のIF信号が選択される。その結果、RF信号はIF信号に変換され、ダウンコンバートされる。そしてIF信号は、増幅部27により増幅された後、検波部28でベースバンド信号として復調される。また検波部28は、受信信号強度表示(以下RSSIと称す)電圧の信号を検知し、ベースバンド信号およびRSSI電圧の信号を制御部2に出力する。なお、通常動作においては、1つの送受信ユニットに電源を供給すればよく、電源が供給されない送受信ユニットは、発熱などの影響による特性劣化を軽減することができ、正常な送受信ユニットとして保持することができる。
【0031】
次に、無線装置への電源電圧供給時における送受信ユニットの選択動作について説明する。
【0032】
無線装置に電源電圧が供給されると、すべての送受信ユニットに電源電圧が供給され、送受信ユニットの選択動作が開始される。この送受信ユニットの選択動作において、制御部2は、第1のスイッチ10および第2のスイッチ11を制御し、送受信ユニット4の送信部6からのRF信号を送受信ユニット5の受信部9へ、送受信ユニット5の送信部8からのRF信号を送受信ユニット4の受信部7へ送信するように制御する。そして送信部6、8に入力される局部発振部23、31の信号の発振周波数を制御し、通常動作における送信部6、8からの周波数帯域とは異なるRF信号を受信部7、9に入力する。さらに制御部2は、この選択動作の結果に基づいて、1つの送受信ユニットを選択する。
【0033】
以下、詳細な動作について説明する。
【0034】
無線装置に電源電圧が供給されると、制御部2は、一方の送受信ユニット4に備えられた局部発振部23からの通常動作用の発振周波数fsの信号を発振周波数foの信号に切り換えまたは調整し、駆動部22の利得を制御する共に、第1のスイッチ10が送受信ユニット4の送信部6、第2のスイッチ11が送受信ユニット5の受信部9を選択するように切り換える。また制御部2は、駆動部22の利得において、例えば、3つの異なる電力レベルの信号を出力するように制御する。ここでは、3つの異なる電力レベルとしているが、この限りでない。また局部発振部の発振周波数foによる送信部からのRF信号の周波数帯域は、通常動作において、受信部が受信する信号の周波数帯域である。
【0035】
制御部2は、この3つの電力レベルにおいて、例えば、最大電力レベルA1、所定電力レベルA2、最小電力レベルA3とし、最大電力レベルA1>所定電力レベルA2>最小電力レベルA3の条件で一方の送受信ユニットに備えられた送信部から設定条件の電力レベルのRF信号を他方の送受信ユニットに備えられた受信部に入力するように制御する。ここで、最大電力レベルA1、所定電力レベルA2、最小電力レベルA3とすることにより、駆動部22の直線性を点検することができる。
【0036】
制御部2から出力されるベースバンド信号が送受信ユニット4の送信部6に入力されると、ベースバンド信号は、送信部6の変調部21により、局部発振部23から出力される発振周波数foの信号に基づいて変調される。この変調されたRF信号は、駆動部22により、例えば、制御部2から制御された最大利得A1で電力増幅され、最大電力レベルA1のRF信号に変換される。
【0037】
そして、最大電力レベルA1のRF信号は、第1のスイッチ10を通じてフィルタ型減衰器12に入力され、10dBから30dB減衰されたRF信号に変換される。この減衰したRF信号は、第2のスイッチ11を介して、他の送受信ユニット5の受信部9に入力される。
【0038】
受信部9に入力されたRF信号は、低雑音増幅部32で増幅され、乗算器33により局部発振部31からの発振周波数foの信号に基づいて、増幅されたRF信号の周波数と局部発振部31からの信号の発振周波数foとの和と差の周波数の信号が出力され、フィルタ34により差のIF信号が選択される。その結果、RF信号はIF信号に変換され、ダウンコンバートされる。そしてIF信号は、増幅部35により増幅された後、検波部36によりベーバンド信号に復調されると共に、RSSI電圧の信号に変換され、制御部2に入力される。ここで、RSSI電圧の信号は、制御部2のAD変換部(図示せず)により、デジタル信号に変換され、記憶部15に記憶、蓄積される。以下、所定電力レベルA2および最小電力レベルA3においても同様の動作を繰り返し、記憶部15に記憶、蓄積される。
【0039】
次に、他方の送信部からのRF信号を一方の受信部に入力する動作について説明する。
【0040】
制御部2は、送受信ユニット5に備えられた局部発振部31の通常動作用の発振周波数fsを発振周波数foに切り換えまたは調整し、駆動部29の利得を制御する共に、第2のスイッチ11が送受信ユニット5の送信部8、第1のスイッチ10が送受信ユニット4の受信部7を選択するように切り換える。そして制御部2は、送受信ユニット5に備えられた駆動部29の利得を制御し、3つの異なる電力レベルの信号を出力するように制御する。
【0041】
制御部2は、この3つの電力レベルにおいて、例えば、最大電力レベルB1、所定電力レベルB2、最小電力レベルB3とし、最大電力レベルB1>所定電力レベルB2>最小電力レベルB3の条件で一方の送受信ユニットの送信部から設定条件の電力レベルのRF信号を他方の送受信ユニットの受信部に入力するように制御する。ここで、異なる駆動部における利得は、A1=B1、A2=B2、A3=B3の同条件とする。同様に局部発振部の発振周波数foによる送信部からのRF信号の周波数帯域は、通常動作において、受信部が受信する周波数帯域である。
【0042】
制御部2から出力されるベースバンド信号が送受信ユニット5の送信部8に入力されると、ベースバンド信号は、送信部8の変調部30により、局部発振部31から出力される発振周波数foの信号に基づいて変調される。この変調されたRF信号は、駆動部29により、例えば、制御部2から制御される最大利得B1で電力増幅され、最大電力レベルB1のRF信号に変換される。
【0043】
そして、最大電力レベルB1のRF信号は、第2のスイッチ11を通じてフィルタ型減衰器12に入力され、10dBから30dB減衰されたRF信号に変換される。この減衰された信号は、第1のスイッチ10を介して、他の送受信ユニット4の受信部7に入力される。
【0044】
受信部7に入力されたRF信号は、低雑音増幅部24で増幅され、乗算器25により局部発振部23からの発振周波数foの信号に基づいて、増幅されたRF信号の周波数と局部発振部23からの信号の発振周波数foとの和と差の周波数の信号が出力され、フィルタ部26により差のIF信号が選択される。その結果、RF信号はIF信号に変換され、ダウンコンバートされる。そしてIF信号は、増幅部27により増幅された後、検波部28によりベーバンド信号に復調されると共に、RSSI電圧の信号に変換され、制御部2に入力される。そしてRSSI電圧の信号は、制御部2のAD変換部(図示せず)により、デジタル信号に変換され、記憶部15に記憶、蓄積される。以下、所定電力レベルB2および最小電力レベルB3においても同様の動作を繰り返し、記憶部15に記憶、蓄積される。
【0045】
以上の動作において、制御部2は、記憶部15に記憶された送受信ユニット4の最大電力レベルA1から最小電力レベルA3、送受信ユニット5の最大電力レベルB1から最小電力レベルB3に対応するRSSI電圧と、予め記憶部15に記憶された出荷時の点検の結果または正常な状態における切り換え判定値とを比較部16により比較し、より大きなRSSI電圧の送受信ユニットを選択し、通常動作用として動作させる。なお、制御部2は、選択動作の完了後、通常動作用を除く他の送受信ユニットへの電源電圧供給を停止するように制御する。また、送受信ユニット4の送信部6から送信され、記憶部15に記憶されたRSSI電圧と送受信ユニット5の送信部8から送信され、記憶部16に記憶されたRSSI電圧とを比較部16により相対比較され、この比較結果に基づいて、制御部2は、2つの送受信ユニット4、5のいずれか一方を選択し、通常動作用として動作させてもよい。
【0046】
以上の構成により、電源電圧が供給された場合に最も良い状態の送受信ユニットを選択することができる。またRSSI電圧を採用することにより、無線装置としての基本性能を正確に判定することができる。さらに受信部が受信する同一の周波数帯域の信号を所定の送信電力レベルに変換し、送信部から受信部に入力することができるため、点検動作において、正確な結果を得ることができる。
【0047】
次に、推定部が決定する周期で実施される点検動作について説明する。
【0048】
先ず、最初の点検は、上限値の周期で実施される。
【0049】
制御部2は、推定部17が決定する周期で点検動作を制御する。制御部2は、通常動作状態にある一方の送受信ユニットの受信部にアンテナ3からの受信信号が無いことを確認し、他の送受信ユニットに電源電圧を供給し、点検動作を実施する。
【0050】
なお、点検動作中において、制御部2は、アンテナ3から信号を受信した場合、選択されている受信部にアンテナ3からの信号が入力されるように第3のスイッチ13を制御することにより、アンテナ3から受信信号の有無が確認できる。
【0051】
点検動作中において、アンテナ3からの信号を受信した場合は、点検動作を停止し、通常動作を実施する。例えば、アンテナ3から受信する信号の有無は、受信部でベースバンド信号に変化された後、制御部2で信号の誤り検出やRSSI電圧の異常値により、検出するとこができる。
【0052】
以下、点検動作について説明する。
【0053】
例えば、通常動作において、送受信ユニット4が選択されている場合の点検動作について説明する。
【0054】
先ず、制御部2は、すべての送受信ユニットに電源電圧を供給し、送受信ユニットの点検動作が開始される。この通常動作状態の送受信ユニット4の点検動作において、制御部2は、第2のスイッチ11を、送受信ユニット4の送信部6からのRF信号を送受信ユニット5の受信部9に入力するように制御する。また点検動作中にアンテナ3からの受信信号の有無が確認できるように選択された送受信ユニット5の受信部9に入力できるように第3のスイッチ13を制御する。さらに送信部6に入力される局部発振部23の信号の発振周波数を制御し、通常動作における送信部6からの周波数帯域とは異なるRF信号を受信部9に入力する。
【0055】
以下、詳細な動作について説明する。
【0056】
制御部2は、送受信ユニット4に備えられた局部発振部23の通常動作用の発振周波数fsを発振周波数foに切り換えまたは調整し、駆動部22の利得を制御する共に、第1のスイッチ10が送受信ユニット4の送信部6、第2のスイッチ11が送受信ユニット5の受信部9、第3のスイッチ13が送受信ユニット5を選択するように切り換える。また制御部2は、駆動部22の利得において、例えば、3つの異なる電力レベルの信号を出力するように制御する。ここでは、3つの異なる電力レベルとしているが、この限りでない。また局部発振部の発振周波数foによる送信部からのRF信号の周波数帯域は、通常動作において、受信部が受信する周波数帯域である。
【0057】
制御部2は、この3つの電力レベルにおいて、例えば、最大電力レベルA1、所定電力レベルA2、最小電力レベルA3とし、最大電力レベルA1>所定電力レベルA2>最小電力レベルA3の条件で一方の送受信ユニットに備えられた送信部から設定条件の電力レベルのRF信号を他方の送受信ユニットに備えられた受信部に入力する。ここで、最大電力レベルA1、所定電力レベルA2、最小電力レベルA3とすることにより、駆動部22の直線性を点検することができる。
【0058】
制御部2から出力されるベースバンド信号が送受信ユニット4の送信部6に入力されると、ベースバンド信号は、送信部6の変調部21により、局部発振部23から出力される発振周波数foの信号に基づいて変調される。この変調されたRF信号は、駆動部22により、例えば、制御部2から制御された最大利得A1で電力増幅され、最大電力レベルA1のRF信号に変換される。
【0059】
そして、最大電力レベルA1のRF信号は、第1のスイッチ10を通じてフィルタ型減衰器12に入力され、10dBから30dB減衰されたRF信号が得られる。この減衰したRF信号は、第2のスイッチ11を介して、他の送受信ユニット5の受信部9に入力される。ここで、第1のスイッチ10、第2のスイッチ11およびフィルタ型減衰器12からなる点検経路部38により、通常動作の機能を損なわずに送信部からの信号をフィルタ型減衰器で減衰させ、受信側に入力することができるため、点検動作の正確な結果を得ることができる。
【0060】
受信部9に入力されたRF信号は、低雑音増幅部32で増幅され、乗算器33により局部発振部31からの発振周波数foの信号に基づいて、増幅されたRF信号の周波数と局部発振部31からの信号の発振周波数foとの和と差の周波数の信号が出力され、フィルタ34により差のIF信号が選択される。その結果、RF信号はIF信号に変換され、ダウンコンバートされる。そしてIF信号は、増幅部35により増幅された後、検波部36によりベーバンド信号に復調されると共に、RSSI電圧の信号に変換され、制御部2に入力される。
【0061】
そして、RSSI電圧の信号は、制御部2のAD変換部(図示せず)により、デジタル信号に変換され、記憶部15に記憶、蓄積される。以下、所定電力レベルA2および最小電力レベルA3においても同様の動作を繰り返し、記憶部15に記憶、蓄積される。
【0062】
次に、他方の送信部からRF信号を一方の受信部入力する。
【0063】
制御部2は、送受信ユニット5に備えられた局部発振部31の通常動作用の発振周波数fsを発振周波数foに切り換えまたは調整し、駆動部29の利得を制御する共に、第2のスイッチ11が送受信ユニット5の送信部8、第1のスイッチ10が送受信ユニット4の受信部7を選択するように切り換える。そして制御部2は、送受信ユニット5に備えられた駆動部29の利得を制御し、3つの異なる電力レベルの信号を出力するように制御する。ここで、制御部2は、この3つの電力レベルにおいて、例えば、最大電力レベルB1、所定電力レベルB2、最小電力レベルB3とし、最大電力レベルB1>所定電力レベルB2>最小電力レベルB3の条件で一方の送受信ユニットの送信部から設定条件の電力レベルのRF信号を他方の送受信ユニットの受信部に入力するように制御する。なお、異なる駆動部における利得はA1=B1、A2=B2、A3=B3の同条件とする。同様に局部発振部の発振周波数foによる送信部からのRF信号の周波数帯域は、通常動作において、受信部が受信する周波数帯域である。
【0064】
制御部2から出力されるベースバンド信号が送受信ユニット5の送信部8に入力されると、ベースバンド信号は、送信部8の変調部30により、局部発振部31から出力される発振周波数foの信号に基づいて変調される。この変調されたRF信号は、駆動部29により、例えば、制御部2から制御される最大利得B1で電力増幅され、最大電力レベルB1のRF信号に変換される。
【0065】
そして、最大電力レベルB1のRF信号は、第2のスイッチ11を通じてフィルタ型減衰器12に入力され、10dBから30dB減衰されたRF信号に変換される。この減衰された信号は、第1のスイッチ10を介して、他の送受信ユニット4の受信部7に入力される。
【0066】
受信部7に入力されたRF信号は、低雑音増幅部24で増幅され、乗算器25により局部発振部23からの発振周波数foの信号に基づいて、増幅されたRF信号の周波数と局部発振部23からの信号の発振周波数foとの和と差の周波数の信号が出力され、フィルタ部26により差のIF信号が選択される。その結果、RF信号はIF信号に変換され、ダウンコンバートされる。そしてIF信号は、増幅部27により増幅された後、検波部28によりベーバンド信号に復調されると共に、RSSI電圧の信号に変換され、制御部2に入力される。そしてRSSI電圧の信号は、制御部2のAD変換部(図示せず)により、デジタル信号に変換され、記憶部15に記憶、蓄積される。以下、所定電力レベルB2および最小電力レベルB3においても同様の動作を繰り返し、記憶部15に記憶、蓄積される。
【0067】
そして、比較部16は、記憶部15に記憶された通常動作としての送受信ユニット4の最大電力レベルA1から最小電力レベルA3に対応するRSSI電圧と、予め記憶部15に記憶された判定値とを比較する。この比較した結果、判定値以下の場合、他の送受信ユニットへの切り換えを制御部2に通知する。そして制御部2は、他の送受信ユニットに切り換えを行い、残りすべての送受信ユニットにおいて、電源電圧の供給を停止する。しかし比較した結果が、判定値以上の場合は、推定部17により、記憶部15に記憶された通常動作としての送受信ユニット4の最大電力レベルA1から最小電力レベルA3に対応するRSSI電圧と、予め記憶部15に記憶された情報としての出荷時の点検結果および切り換え判定値とを基に特性劣化または経年変化を推定し、次の点検の周期が推定される。この推定される点検の周期が推定部17で保有する上限値以上であれば、上限値を次の点検の周期と決定し、この決定された点検の周期で制御部2は、次の点検の動作を制御する。ここで、特性劣化または経年変化をアイリングモデル、アレニウスモデルを用いて推定し、点検の周期を決定してもよい。
【0068】
また、推定される点検の周期が推定部17で保有する下限値以下であれば、制御部2に他の送受信ユニットの切り換えを通知する。そして制御部2は他の送受信ユニット5に切り換えを行い、残りすべての送受信ユニットにおいて、電源電圧の供給を停止する。さらに推定される点検の周期が上限値と下限値の間の場合は、その点検の周期と決定し、この決定された点検の周期で制御部2は、点検の動作を制御する。そして選択された送受信ユニットが通常動作を行えるようにスイッチを制御し、残りすべての送受信ユニットにおいて、電源電圧の供給を停止する。ここで、点検の結果を記憶部に記憶、蓄積することにより、推定部での数多くの点検の結果を基に推定することにより、精度を向上させることができる。
【0069】
また、出荷時の点検の結果または動作可能な状態における切り換え判定値を基に、推定部17が決定する周期において、正確な診断ができると共に、制御部2は、特性劣化した送受信ユニットを他の送受信ユニットに切り換えることができる。
【0070】
さらに、通常動作用を除くすべての送受信ユニットにおいて、電源電圧の供給を停止することにより、動作状態における発熱などによる特性劣化への影響を軽減し、正常な送受信ユニットを保持することができる。
【0071】
そして、推定部17は、通常動作の送受信ユニットが正常な場合、長い点検の周期の推定に対し、上限値を設定することにより、より確実に故障する前に点検を実施することができ、また特性劣化した場合、短い点検の周期の推定に対し、下限値を設定することにより、故障する前に確実に他の送受信ユニットに切り換えることができる。なお、点検動作の結果または点検動作後の送受信ユニットの切り換え状態をLEDなどで表示し、外部に通知、通報できるようにしてもよい。ここでは、通常動作の送受信ユニットに限定した点検を説明したが、切り換える他の送受信ユニットが正常かどうかを同様の点検を実施し、正常な動作を確認して切り換えてもよい。
【0072】
以上の構成により、無線装置として必要な構成要素で、自動点検により、性能劣化状態を把握し、点検結果に基づいて、故障する前に他の送受信ユニットに切り換えまたは点検の周期を決定し、制御することができるため、故障後に故障箇所の確認および復旧作業が不要となり、復旧するまでの動作停止状態を回避することができる無線装置を提供することを目的とするものである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
動作可能な状態における切り換え判定値に基づいて、通常動作用の送受信ユニットを他の送受信ユニットに切り換えることができるため、故障修理などが困難な場所に設置されるECTなどの路側機などに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態における無線装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態における送受信ユニットの構成を示すブロック図
【図3】従来の折り返し試験を可能とした無線装置の構成を示す機能ブロック図
【符号の説明】
【0075】
1 無線部
2 デジタル制御部
3 アンテナ
4、5 送受信ユニット
6、8 送信部
7、9 受信部
10 第1のスイッチ
11 第2のスイッチ
12 フィルタ型減衰器
13 第3のスイッチ
14、26,34 フィルタ
15 記憶部
16 比較部
17 予測部
21、30 変調部
22、29 駆動部
23、31 局部発振部
24、32 低雑音増幅部
25、33 乗算器
27、35 増幅部
28、36 検波部
37 電源部
38 点検経路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受信用のアンテナと、
このアンテナから送信するための送信信号を生成する送信部と前記送信信号の周波数帯域とは異なる受信信号を前記アンテナから受信してベースバンド信号に変換する受信部とからなる少なくとも2つの送受信ユニットと、
前記送信部からの送信信号を前記受信部に入力して点検を実施する点検経路部と、
前記点検を制御する制御部とからなる無線装置であって、
前記制御部は、予め情報を記憶すると共に、前記点検の結果を記憶する記憶部と、前記情報と前記点検の結果とを比較する比較部と、前記記憶部の情報および点検の結果とを基に特性劣化または経年変化を推定し、点検の周期を決定する推定部とを備え、前記比較部の結果に基づいて送受信ユニットの切り換えおよび前記推定部が決定する周期で点検を制御する無線装置。
【請求項2】
前記情報は、少なくとも出荷時の点検の結果または動作可能な状態における切り換え判定値を含む請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記送信部から出力される送信信号を、前記受信部が受信する同一の周波数帯域に変化させると共に、前記送信信号の電力レベルを制御する請求項1または2のいずれかに記載の無線装置。
【請求項4】
前記点検経路部は、前記送受信ユニットに備えられた送信部または受信部のいずれかを選択する少なくとも2つのスイッチと、
入力信号を減衰させるフィルタ型減衰器とを備え、
このフィルタ型減衰器を、制御部により選択された送信部と受信部との間に配置し、前記送信部からの送信信号を減衰させ、前記受信部に入力する請求項1から3のいずれかに記載の無線装置。
【請求項5】
前記記憶部に予め記憶された情報を、
受信信号強度表示(RSSI)電圧とした請求項1から4のいずれかに記載の無線装置。
【請求項6】
前記推定部は、点検の周期の上限値および下限値を有し、推定した周期が上限値以上の場合、上限値とし、下限値以下の場合、前記制御部に他の送受信ユニットの切り換えを通知する請求項1から5のいずれかに記載の無線装置。
【請求項7】
前記制御部は、通常動作において、1つの送受信ユニットへの電源電圧の供給を停止する請求項1から6のいずれかに記載の無線装置。
【請求項8】
前記制御部は、電源電圧供給時に、前記少なくとも2つの送受信ユニットのいずれか1つの送受信ユニットを選択する請求項1から7のいずれかに記載の無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−38688(P2009−38688A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202441(P2007−202441)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】