説明

無線通信システム

【課題】対象エリア内で区分された複数の小エリアにおいて、隣り合う小エリアに異なるサービスを提供する場合であっても、チャネル同士間の周波数の干渉や周波数妨害を抑えた無線通信システムを提供する。
【解決手段】外部から電磁的に遮蔽された対象エリア300内で区分された複数の小エリアで使用される各無線端末装置40に対して、周波数ごとに区分された複数のチャネルを割り当てて通信サービスを行う無線通信システム1であって、各小エリアに対応した互いに異なる位置に電磁的な開口部を設けた漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cと、漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cに接続され、隣り合う小エリアには互いのチャネルが連続とはならないチャネルを割り当てる無線基地局装置2とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関し、特に、列車、バス、航空機などの移動機関の乗客キャビンエリア内の座席ごとに設けられた複数の無線端末装置と、映像、音声や情報サービスを配信するサーバとの間で、無線通信を行うための無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IEEE802.11a/b/gをはじめとする無線通信システムが普及しつつある。これらは無線ローカルエリアネットワーク(Local Area Network;以下、「LAN」と記す)システムと呼ばれ、有線LANシステムに使用されるイーサネット(登録商標)(Ethernet(登録商標))と同等の機能を有している。
【0003】
無線LANシステムは、当初、携帯型や可搬型のパーソナルコンピュータ、可搬型無線端末装置などを対象とする通信システムとして使用されていたが、配線ケーブルの煩雑さのない利点などが評価されて利用範囲が拡がり、使用位置が固定された端末装置に適用するための技術が提案されてきた。
【0004】
一例として、航空機に無線LANシステムを設置し、乗客の座席に備えられた無線端末装置に対して、映像や音声などのコンテンツを配信する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この例では、無線基地局装置としてワイヤレスアクセスポイント(以下、「アクセスポイント」と記す)を複数設置する。1つのアクセスポイントが複数の無線端末装置をカバーできるよう、各アクセスポイントの設置位置を決定している。各アクセスポイントは乗客にコンテンツを提供するためのデータを蓄積したサーバに接続されている。また、機内のサービスエリアを複数の小エリアに区切り、1つの小エリアに対して1つのアクセスポイントが対応するように割り当てる。小エリア同士間の電波の干渉や妨害を防止するための対策としては、各アクセスポイントに指向性の鋭いアンテナを配置するとともに、小エリア内の各無線端末装置に対して特定のチャネルを使用し、時分割の通信を行う。これにより、1つのチャネルで複数の無線端末装置に対してVOD(VIDEO On Demand:見たいときに見たいビデオが見られるサービス)などのコンテンツの配信することができる。ただし、この方法は、アクセスポイントから無線端末装置までの伝播経路が限られ、遮蔽された区画壁などの障害物がある場合には電波が届かない。したがって、必要な範囲に必要な品質の電波を届かせるために、多数のアクセスポイントを設置する必要があった。
【0006】
これに対し、漏洩同軸ケーブルを電波放射用のアンテナとして利用する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、複数の漏洩同軸ケーブルを用いる別の例としては、建物の中にある限定された狭エリアでサービスを行う技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2006−33676号公報
【特許文献2】特開平1−155730号公報
【特許文献3】特開2005−101861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、アクセスポイントと各無線端末装置とが1つのチャネルを時分割して使用する従来の方法は、1つの無線端末装置あたりの帯域が狭くなる。例えば、1つのチャネルあたり20Mbpsの通信速度であっても、1つのアクセスポイントで対応できる無線端末装置の数が20台の場合、無線端末装置は1台あたり1Mbpsとなり、映像や音声データの配信に使用するには品質上の課題があった。この対策として、多数のアクセスポイントを設置する方法があるが、隣り合ったチャネル同士間の周波数の干渉や妨害が課題であった。狭い範囲に電波が届くように指向性の鋭い漏洩同軸ケーブルをアンテナとして利用した場合であっても、隣接したエリアでは電波の届く範囲が重なるため、隣り合ったチャネル同士間の干渉や妨害が課題であった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、対象エリア内で区分された複数の小エリアにおいて、小エリアごとに異なるサービスを提供する場合であっても、隣り合う小エリア間でチャネル同士間の周波数の干渉や周波数妨害を抑制し、高品質の無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述したような目的を達成するために、本発明の無線通信システムは、外部から電磁的に遮蔽された対象エリア内で区分された複数の小エリア内で使用される複数の無線端末装置に対して、周波数ごとに区分された複数のチャネルを割り当てて通信サービスを行う無線通信システムであって、複数の小エリアに対応した互いに異なる位置に電磁的な開口部を設けた複数の漏洩同軸ケーブルと、複数の漏洩同軸ケーブルに接続され、隣り合う小エリアには互いのチャネルが連続とはならないチャネルを複数の漏洩同軸ケーブルに割り当てをする無線基地局装置とを備えたことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、隣り合う小エリアには、互いのチャネルが連続とはならないチャネルを割り当てることができる。したがって、小エリアごとに異なるサービスを提供する場合であっても、隣り合う小エリアでチャネル同士間の周波数の干渉や周波数妨害を抑制することができ、高品質で高機能の無線通信システムを提供することができる。
【0012】
また、本発明の無線通信システムは、漏洩同軸ケーブルには電磁的な開口部として遮蔽体を取り除いた部分に電波を漏洩する電波漏洩部を設けるようにしてもよい。
【0013】
このような構成によれば、さらに、漏洩同軸ケーブルの遮蔽体を取り除いた部分に設けた電波漏洩部から電波を漏洩させることができ、漏洩同軸ケーブルの長さが長い場合であっても信号の減衰を抑えることができる。また、電波漏洩部に設けたスロットの加工や配置により、漏洩させる電波の周波数や放射方向などを設定することができる。
【0014】
また、小エリアを部分的にオーバーラップさせてもよい。これによれば、さらに、複数の小エリアにより対象エリアのうち通信サービスを行う必要のあるサービスエリアの全領域をカバーすることが可能となり、サービスエリアにおいてサービスを提供できない隙間をなくし、高品質の無線通信システムを実現することができる。
【0015】
また、無線基地局装置は、隣り合う小エリアでは互いのチャネルが連続しないように複数のチャネルがグループ化され、このグループ化されたチャネル群を複数の漏洩同軸ケーブルそれぞれに対して割り当てるようにしてもよい。
【0016】
これによれば、さらに、複数の小エリアに対して複数の漏洩同軸ケーブルが使用された場合であっても、隣り合う小エリアには互いのチャネルが連続しないチャネル群を漏洩同軸ケーブルそれぞれに割り当てることができる。したがって、チャネル群の中から必要なチャネルを有効に活用することが可能となる。例えば、1つのチャネルが利用できなくなった場合であっても、隣り合う小エリアには互いのチャネルが連続しないようにチャネル群の中から別のチャネルを選択することが可能となる。
【0017】
また、1つのチャネルでサービスを提供することができる無線端末装置の台数を超えた場合には漏洩同軸ケーブルに割り当てられたチャネル群の中から別のチャネルを追加するようにしてもよい。
【0018】
これによれば、さらに、隣り合う小エリアでチャネル同士間の周波数の干渉や周波数妨害を抑えつつ、サービスを提供することができる無線端末装置の台数を増やすことができる。
【0019】
また、使用することができないチャネルが発生した場合には漏洩同軸ケーブルに割り当てられたチャネル群の中から別のチャネルを割り当てるようにしてもよい。
【0020】
これによれば、さらに、使用できなくなったチャネルが発生した場合であっても隣り合う小エリアでチャネル同士間の周波数の干渉や周波数妨害を抑えつつ別のチャネルを割り当てることができ、通信サービスを継続して提供することができる。
【0021】
また、細長の移動機関の内部に設置され、複数の漏洩同軸ケーブルを移動機関の長手方向と平行に配設してもよい。
【0022】
これによれば、さらに、移動機関の長手方向に平行に設けられた複数の漏洩同軸ケーブルを使用して通信サービスを提供することが可能となる。例えば、鉄道車両内や航空機内における通信サービスにおいて、漏洩同軸ケーブルの指向特性を有効に活用することができる。
【0023】
また、漏洩同軸ケーブルの開口部には複数のスロットを有し、複数のスロットを開口部の両側に対称的に配置してもよい。
【0024】
このような構成によれば、さらに、対象エリアを長手方向に区分された小エリアであっても、移動機関の長手方向と直交する方向に電波を効率よく放射することができ、隣接する小エリア間で電波の放射方向が重ならないため、電波の干渉を効果的に抑制することができる。また、漏洩同軸ケーブルの両側にある各無線端末装置それぞれに近い場所、例えば移動機関の幅方向に対して中央に配設することができ、安定した電波状態で通信サービスを提供することができる。
【0025】
また、複数のスロットは、移動機関に設置されている座席の位置に対応して設けてもよい。
【0026】
これによれば、さらに、無線端末装置が使用される座席に向けて電波を放射することができ、効率よく電波を供給することができる。
【0027】
また、移動機関は、鉄道車両または航空機であってもよい。これによれば、さらに、移動している鉄道車両内または航空機内で通信サービスを利用することができ、移動した場所における国や地域の法律によって使用できない周波数が発生した場合であっても通信サービスを継続して利用することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、対象エリア内で区分された複数の小エリアにおいて、小エリアごとに異なるサービスを提供する場合であっても、隣り合う小エリア間でチャネル同士間の周波数の干渉や周波数妨害を抑えた無線通信システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
(実施の形態1)
まず、図1を用いて、本発明の実施の形態1における無線通信システムの構成について説明する。図1は本実施の形態における無線通信システム1の構成を示すブロック図である。
【0031】
図1に示すように、無線通信システム1は、外部から電磁的に遮蔽されたエリア(以下、「対象エリア」と記す)300内で区分された小エリアA1、A2、A3、・・・、Anで使用される各無線端末装置40に対して、周波数ごとに区分された複数のチャネルを割り当てて通信サービスを行うものであって、小エリアA1、A2、A3、・・・、Anに対応した互いに異なる位置に電磁的な開口部としての電波漏洩部20A1、20A2、20A3、・・・、20Anを設けた漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cと、漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cに接続され、隣り合う小エリアには互いのチャネルが連続とはならないチャネルを漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cに割り当てをする無線基地局装置2とを備えている。
【0032】
これにより、隣り合う小エリアで互いのチャネルが連続しないことで、対象エリア300内で区分された小エリアA1、A2、A3、・・・、Anにおいて、各小エリアごとに異なるサービスを提供する場合であっても、隣り合う小エリアでチャネル同士間の干渉や周波数妨害を抑制することができ、高品質で高機能の無線通信システムを提供することができる。
【0033】
外部から電磁的に遮蔽された対象エリア300は、例えば、移動機関(鉄道車両、航空機、バスなど)の内部や、建物の中にある遮蔽された空間の内部(オフィスなど)があるが、以下、本実施の形態では移動機関の内部の領域として説明する。また、各小エリアA1、A2、・・・、Anは、無線端末装置40が使用される場所あるいは無線端末装置40が設置されている場所、例えば、移動機関に設置されている座席などを含む位置および範囲で区分けされている。
【0034】
次に、図2および図3を用いて、本実施の形態における無線通信システム1の詳細な構成について説明する。図2は本実施の形態の無線通信システム1における無線基地局装置2の構成を示すブロック図、図3は同無線通信システム1における漏洩同軸ケーブルの構造を示す構造図である。
【0035】
まず、図2に示すように、無線基地局装置2は、外部のサーバ10とイーサネット(登録商標)などで外部のサーバ10に接続され、サーバ10と必要なデータの送受信を行う。サーバ10は通信サービスの対象となるコンテンツにかかわるデータを蓄積している。例えば、コンテンツとして、映画、ニュース、買い物情報、観光案内情報、天気情報、音楽、地図情報、利用可能な機器の操作情報などがある。また、サーバ10は移動機関の外部にあるネットワークに接続してあり、各種のデータ情報(蓄積されているコンテンツ以外のコンテンツなど)を取得可能としている。
【0036】
また、無線基地局装置2は、スイッチング部31と、変復調部32a、32b、32cと、チャネル管理部36とを備えている。
【0037】
スイッチング部31は、サーバ10から取得されるコンテンツを各チャネル(通信路)へ振り分ける。スイッチング部31は要望があった小エリアA1、A2、・・・、Anに対してコンテンツを配信するため、変復調部32a、32b、32cに対してデータを出力する。また、スイッチング部31は変復調部32a、32b、32cから出力される復調されたデータ情報を取得した場合には、サーバ10にそのデータ情報を伝送する。
【0038】
変復調部32aは受けとったデータを割り当てられたチャネルごとの無線周波数に変調し、漏洩同軸ケーブル33aに出力する。同様に、変復調部32bはデータを変調して漏洩同軸ケーブル33bに出力し、変復調部32cはデータを変調して漏洩同軸ケーブル33cに出力する。
【0039】
また、変復調部32aは、漏洩同軸ケーブル33aで受信された電波をチャネルごとに復調し、この復調されたデータ情報をスイッチング部31に出力する。同様に、変復調部32bは漏洩同軸ケーブル33bで受信された電波をチャネルごとに復調し、変復調部32cは漏洩同軸ケーブル33cで受信された電波をチャネルごとに復調して、それぞれスイッチング部31に出力する。
【0040】
変復調部32a、32b、32cとして、例えば、公知のデジタル変調方式、例えば、直交周波数分割多重方式によりデータを分散/並列/多重化処理を行い送信する。また、逆に復調を行う場合には、この逆の処理を行う。
【0041】
また、各無線端末装置40とサーバ10とが無線基地局装置2を介して互いに双方向で通信するために、各種のアクセス方式を利用することができる。例えば、周波数分割多元接続、時間分割多元接続、符号分割多元接続があり、いずれかの方式を選択し、選択された接続方式に合わせてアクセス制御を行う。
【0042】
チャネル管理部36は、隣り合う小エリアに互いのチャネルが連続しない複数のチャネルをグループ化し、このグループ化したチャネル群を各漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cに割り当てる。
【0043】
チャネル管理部36は、1つのチャネルで対応できる無線端末装置40の台数を超えた場合には、1つの漏洩同軸ケーブルに割り当てられているチャネル群の中から別のチャネルを追加するようにする。これにより、例えば、1つのチャネルが20Mbpsの帯域を有し、1Mbpsの帯域で1つの通信サービスを提供することが可能であるならば、20台の無線端末装置40に異なる通信サービスを提供することができるが60台の無線端末装置40に異なる通信サービスを提供することはできない。この場合には、さらに、1つの漏洩同軸ケーブルに割り当てられているチャネル群の中から別の2つのチャネルを追加することで60台の無線端末装置40に異なる通信サービスを提供することができる。
【0044】
また、チャネル管理部36は、使用できないチャネルが発生した場合には、割り当てられたチャネル群の中から別のチャネルを選択して使用する。
【0045】
また、同じ5GHz帯であっても、電波を利用する場所(地域や国など)において使用することができない周波数(法律の規制により使用することができない周波数)が発生した場合にも、割り当てられたチャネル群の中から別のチャネルを選択して対応する。これにより、無線基地局装置2が移動機関に設置され、その移動機関が場所を移動した場合において特に効果を発揮することができる。
【0046】
また、緊急時の案内など同報的な通信サービスを行う場合には、1つのチャネルで小エリア内にある60台の無線端末装置40に対して通信サービスを行うことができる。
【0047】
次に、図3を用いて、漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cの構造について説明する。各漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cはそれぞれ同じ構成であるため、ここでは漏洩同軸ケーブル33aについて説明する。
【0048】
漏洩同軸ケーブル33aは、データを配信する中心導体(図示せず)を絶縁体(図示せず)で覆い、絶縁体を外部導体24が覆っている。外部導体24は遮蔽体25で遮蔽され、遮蔽体25はさらに保護用の外部被覆26に覆われている。これにより、中心導体を伝わる電波が漏れないようになっている。漏洩同軸ケーブル33b、33cも同様な構成である。
【0049】
被覆部23は、一部の箇所では電磁的な開口部として遮蔽体25を取り除いた部分、すなわち電波漏洩部20A1として切り開かれている。この電波漏洩部20A1には、例えば、複数のスロット21を設けている。このスロット21は、送受信アンテナとして機能を発揮し、スロット21の向きに電波を強く放射する。スロット21の形状、配置は利用する周波数、電波の放射方向に合わせて設計される。スロット21の配置の詳細については後述する。
【0050】
また、各漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cの終端部には反射波を抑えるための終端抵抗50a、50b、50cをそれぞれ設けている。
【0051】
この漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cを使用することで、対象エリア300内に障害物200(例えば、電波を遮蔽する区画壁など)があっても、障害物200を回避して漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cを設置することで小エリアA1、A2、・・・、Anのすべてに対して通信サービスを提供することができる。
【0052】
このように、本実施の形態における無線通信システム1では、隣り合う小エリアに互いのチャネルが連続とはならないチャネルを割り当てることで、対象エリア300の領域内に区分された小エリアA1、A2、・・・、Anで使用される各無線端末装置40に対して異なる通信サービスを提供した場合であっても、隣り合う小エリアでチャネル同士間の周波数の干渉や周波数妨害を抑制することができる。これにより、高品質で高機能の無線通信システム1を提供することができる。
【0053】
次に、図4を用いて、無線通信システム1が移動機関100の内部に設置された場合の具体例について説明する。図4は本実施の形態の無線通信システム1が移動機関の内部に設置された場合のサービスエリアとの関係を示す配置図である。
【0054】
無線通信システム1は、例えば、細長の移動機関100(鉄道車両、バス、航空機など)の内部に設置される。このような移動機関100ではその内外を隔てる車体で電磁的に遮蔽されており、さらに、その内部には車両間のドア、区画壁、客室乗務員がサービスの準備を行うための厨房などの作業領域(以下、この作業領域を「ギャレー」と記す)などの障害物200が1つ、または複数設けてある。移動機関100の内部、例えば客室を対象エリア300とし、この対象エリア300内に区分された小エリアA1、A2、・・・、Anで使用される各無線端末装置40に対して通信サービスを行う。本実施の形態では、移動機関100内の対象エリア300は障害物200により3つの領域に区画され、それぞれの領域内には無線端末装置(図示せず)が使用される場所(例えば、座席など)に対応してグループ化された3つの小エリアA1〜A3、A4〜A6、A7〜A9に区分されている。また、隣り合う小エリアは部分的にオーバーラップする領域(例えば、小エリアA1〜A3グループにおけるC1、C2など)を有している。
【0055】
また、無線通信システム1では、グループ化された3つの小エリアに対応させて漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cを配設している。漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cは移動機関100の長手方向Dと平行にそれぞれ配設されている。
【0056】
また、漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cは、一方の端部が無線基地局装置2の変復調部32a、32b、32cにそれぞれ接続され、他方の端部には終端抵抗50a、50b、50cをそれぞれ設けている。
【0057】
このうち、漏洩同軸ケーブル33aにおいては、グループ化された小エリアA1に対応する電波漏洩部20A1が、また、小エリアA4に対応する電波漏洩部20A4が、また、小エリアA7に対応する電波漏洩部20A7がそれぞれ設けられている。同様に、漏洩同軸ケーブル33bにおいては小エリアA2、A5、A8に対する電波漏洩部20A2、20A5、20A8が、また、漏洩同軸ケーブル33cにおいては小エリアA3、A6、A9に対する電波漏洩部20A3、20A6、20A9がそれぞれ設けられている。
【0058】
これにより、漏洩同軸ケーブル33aは、小エリアA1、A4、A7において電波漏洩部20A1、20A4、20A7から電波をそれぞれ放射することが可能となる。したがって、漏洩同軸ケーブル33aにより、小エリアA1、A4、A7において使用される各無線端末装置40(図示せず)に対して、無線基地局装置2から発信される多種類のコンテンツを含む通信サービスを提供することができる。同様にして、漏洩同軸ケーブル33b、33cにより小エリアA2、A5、A8、A3、A6、A9において使用される各無線端末装置40(図示せず)に対してそれぞれ通信サービスを提供することができる。
【0059】
この結果、対象エリア300内で区分された小エリアA1、A2、・・・、A9で使用されるすべての無線端末装置40に対して、無線基地局装置2から発信される通信サービス情報を提供することができる。
【0060】
次に、図5を用いて、上述した、隣り合う小エリアが部分的にオーバーラップする領域(例えば、図4に図示したC1、C2など)で周波数の干渉を抑える方法について説明する。図5は、本実施の形態の無線通信システム1で利用する5GHzの周波数帯域におけるチャネルの配置例を示す図である。
【0061】
無線通信システム1では、周波数ごとに区分された複数のチャネルを割り当てて通信サービスを行うときに、隣り合う小エリアでの周波数の干渉を抑えるために、隣り合う小エリアに互いのチャネルが連続とはならないチャネルを割り当てている。
【0062】
これにより、図5に示すように、複数のチャネルを割り当てて使用する場合、実線で示すチャネル同士間、および破線で示すチャネル同士間は発信周波数の重なる領域がほとんどないため、互いの周波数同士が干渉することがなく、通信サービスの品質を確保することができる。
【0063】
一方、実線で示す1つのチャネルに対して、破線で示す隣接する2つのチャネル同士間では、発信周波数の重なる領域が大きい。このように、チャネル同士間で発信周波数の重なる領域が大きい場合には周波数の干渉が発生しやすくなり、通信サービスの品質が低下する。破線で示す1つのチャネルに対して、実線で示す隣接する2つのチャネル同士間についても、同様である。無線LANに使用される高い周波数帯域では、連続するチャネルを周波数が交差する領域で使用すると、互いの周波数同士で干渉し、通信サービスの品質が劣化する。
【0064】
このように、隣り合う小エリアに対しては、互いのチャネルが連続とはならないチャネルを割り当てることで、周波数の干渉を抑えることができる。
【0065】
次に、無線通信システム1の動作について図4を用いて説明する。まず、無線通信システム1では周波数ごとに区分された複数のチャネルのうち、使用できるチャネルを漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cに割り当てをする。すなわち、無線通信システム1は、無線基地局装置2により、使用することができるチャネルを複数にグループ化する。このとき、無線基地局装置2はこのグループ同士間では互いのチャネルが連続しないように割り当てられたチャネル情報を記録したテーブル(以下、このテーブルを「チャネル管理テーブル30」と記す)に基づいてグループ化する。ここで、「使用することができるチャネル」とは、移動機関100外における他の装置で使用しているチャネルと重複していないチャネルや物理的に使用できるチャネルだけでなく、国や地域の法律で規制されていないチャネルであることも意味している。チャネルの割り当ての詳細は後述する。
【0066】
次に、無線通信システム1はグループ化されたチャネル群を漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cに割り当てる。これにより、無線通信システム1は隣り合う小エリアに対しては互いのチャネルが連続とはならないようにチャネルを割り当てることができる。
【0067】
次に、無線通信システム1は、チャネル管理部36により、このグループ化したチャネル群の情報と漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cに割り当てた情報とをチャネル管理テーブル30に記録する。チャネル管理テーブル30はメモリ(図示せず)に記憶されている。このチャネルの割り当ての詳細は後述する。
【0068】
次に、無線通信システム1は、このメモリに記憶されているチャネル管理テーブル30に従って漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cに割り当てられたチャネル群の中から通信サービスを提供するときのチャネルを選択して使用する。
【0069】
無線通信システム1は、利用できないチャネルが発生した場合には、割り当てられたチャネル群の中から別のチャネルを選択して使用し、電波を利用する場所(地域や国など)において使用することができない周波数が発生した場合にも、割り当てられたチャネル群の中から別のチャネルを選択して対応する。
【0070】
なお、チャネル管理部36は、移動機関100が移動した先の場所で使用することができない周波数が発生した場合にはチャネル管理テーブル30を更新するようにしてもよい。また、緊急案内に用いる予備のチャネルの情報を含めてチャネル管理テーブル30としてもよい。これによって、さらに、非常時でも周波数の干渉を抑えることができる。
【0071】
次に、図6〜図8を用いて、無線通信システム1におけるチャネルの割り当てについて詳細に説明する。図6は本実施の形態の無線通信システム1におけるチャネル管理部36が複数のチャネルを3のグループに割り当てた事例を説明するグループ構成図、図7は同無線通信システム1におけるチャネル管理部36が複数のチャネルを4のグループに割り当てた事例を説明するグループ構成図、図8は同無線通信システム1におけるチャネル管理部36が複数のチャネルを5のグループに割り当てた事例を説明するグループ構成図である。
【0072】
まず、図6を用いて、複数のチャネルを3つのグループに割り当てをする場合について説明する。ここでは、移動機関100が移動する範囲において使用することができるチャネル数が「19」、あるいは、「23」であった場合について説明する。
【0073】
まず、5GHzの同じ周波数帯域を使用する場合には、例えば、36CH〜52CHの中で使用することができるチャネル数が「4」、56CH〜64CHおよび100CH〜140CHの中で使用することができるチャネル数が「15」、149CH〜161CHの中で使用することができるチャネル数が「4」の場合には、使用することができる全チャネル数が「23」となる。よって、チャネル管理部36は、この使用可能なチャネル数「23」の中からチャネルを選択し、グループ化を行う。このグループ化されたチャネル群の情報はチャネル管理テーブル30としてチャネル管理部36内のメモリ(図示せず)に保存される。
【0074】
図6に示すように、チャネル管理部36がグループ1、グループ2およびグループ3を、例えば、小エリアA1〜A3(図4)に対してそれぞれ通信サービスを提供するチャネル群として割り当てをする場合、利用することができるチャネル数が「19」であるときには、互いに隣り合う小エリアA1および小エリアA2において使用されるグループ1およびグループ2に対し、グループ1に割り当てるチャネルを第36チャネル(以下、この第36チャネルを「36CH」と記し、以下、同様とする)、60CH、116CH、140CHとし、グループ2に割り当てるチャネルを44CH、100CH、124CHとしている。これにより、グループ1およびグループ2には、連続したチャネルは含まれていない。すなわち、チャネル管理部36は、グループ1のチャネル群を漏洩同軸ケーブル33aに割り当て、グループ2のチャネル群を漏洩同軸ケーブル33bに割り当てることにより、小エリアA2と小エリアA3とにおいて互いに連続とはならないチャネルを割り当てている。同様に、互いに隣り合う小エリアA2およびA3において使用されるグループ2およびグループ3(漏洩同軸ケーブル33cに割り当てるグループ)に割り当てるチャネルも、隣接した小エリアで互いにチャネルが連続とはならないチャネルを割り当てている。
【0075】
次に、チャネル管理部36は、同様に、割り当て可能なチャネル数が「23」の場合でも互いに隣り合う小エリアA1および小エリアA2において使用されるグループ1およびグループ2に割り当てをするチャネルも連続とはならないチャネルを設定し、同様に、互いに隣り合う小エリアA2および小エリアA3において使用されるグループ2およびグループ3にも連続とはならないチャネルを設定している。
【0076】
同様に、図7はチャネル管理部36が複数のチャネルを4つのグループに割り当てをした場合、図8はチャネル管理部36が複数のチャネルを5つのグループに割り当てをした場合についてそれぞれ事例を示している。このグループ化されたチャネル群を順番に互いに隣接した小エリアに割り当てをする。
【0077】
このようにグループ化する数を増やしていくことで、チャネル管理部36はチャネルを効率よく割り当てることができる。チャネルは同じ周波数帯、例えば、5GHzあるいは2.4GHzの帯域の中から使用できるチャネルを選択する。
【0078】
なお、同じ周波数帯域の中からチャネルを選択し、グループ化する場合について説明したが、通信サービスを提供する機器に対して異なる周波数帯域のチャネルを使用するようにしてもよい。この異なる周波数帯域のチャネルを使用する場合の説明は後述する。
【0079】
以上のように本発明の実施の形態1における無線通信システム1によれば、隣り合う小エリアには、互いのチャネルが連続とはならないチャネルを割り当てることができる。したがって、小エリアA1、A2、・・・、A9ごとに異なるサービスを提供する場合であっても、隣り合う小エリアでチャネル同士間の周波数の干渉や周波数妨害を抑制することができ、高品質で高機能の無線通信システムを提供することができる。
【0080】
また、無線基地局装置2は、隣り合う小エリアでは互いのチャネルが連続しないように複数のチャネルをグループ化し、このグループ化されたチャネル群を漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cそれぞれに対して割り当てることで、チャネル群の中から必要なチャネルを有効に活用することが可能となる。例えば、1つのチャネルで対応できる無線端末装置40の台数を超えた場合には漏洩同軸ケーブルに割り当てられたチャネル群の中から別のチャネルを追加することができる。これにより、隣り合う小エリアでチャネル同士間の周波数の干渉や周波数妨害を抑えつつ、サービスに対応する無線端末装置40の台数を増やすことができる。
【0081】
また、移動している移動機関内(例えば、鉄道車両内、航空機内など)で通信サービスを利用することができ、移動機関が移動した場所における国や地域の法律によって使用できない周波数が発生した場合であっても漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cそれぞれに割り当てられたチャネル群の中から別のチャネルを割り当てることができる。これにより、法律の規制などにより使用できなくなったチャネルが発生した場合であっても隣り合う小エリアでチャネル同士間の周波数の干渉や周波数妨害を抑えつつ別のチャネルを利用して通信サービスを継続して提供することができる。
【0082】
なお、漏洩同軸ケーブルは3本に限定されない。必要とする本数の漏洩同軸ケーブルを配設してもよい。例えば、区分される小エリアの数、無線によるサービスを提供する無線端末装置40の台数に応じて漏洩同軸ケーブルの本数を設定し、設置するようにしてもよい。
【0083】
(実施の形態2)
次に、図9および図10を用いて、本発明の実施の形態2の無線通信システム1における無線基地局装置3について説明する。図9は本実施の形態の無線通信システム1における無線基地局装置3の構成を示すブロック図、図10は本実施の形態の無線通信システム1の無線基地局装置3において使用される周波数帯域と無線装置34a、34b、34cに対するチャネル割り当て事例を示す図である。以下、図9において、実施の形態1における無線通信システム1と共通の構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0084】
実施の形態1における無線基地局装置2は、同じ周波数帯域のチャネルを用いていた。これに対して、本発明の実施の形態2における無線基地局装置3は、異なる周波数帯域のチャネルを用いる点が異なっている。無線基地局装置3は、移動機関100において、無線LANに使用される5GHzと2.4GHzの周波数帯域の両方を使って通信サービスを行う。
【0085】
図9に示すように、無線基地局装置3は、スイッチング部31と、データの変調および復調を行う変復調部35a、35b、35cと、チャネルを管理するチャネル管理部36とを備えている。また、無線基地局装置3はサーバ10に接続されている。
【0086】
スイッチング部31は、サーバ10と無線端末装置40とが変復調部35a、35b、35cを介してデータ情報の送受信を行う際に、データの振り分けと収集を行う。
【0087】
変復調部35a、35b、35cは、いずれも同様の構成であるため、ここでは変復調部35aについて説明する。
【0088】
変復調部35aは、無線装置34a、34b、34cと、多重化/分離部37とを備えている。
【0089】
多重化/分離部37は、双方向の送受信が可能であり、無線装置34a、34b、34cそれぞれからの出力を多重化して漏洩同軸ケーブル33aに出力する。また、多重化/分離部37は、漏洩同軸ケーブル33aで受信された電波をスプリッタなどで分離し、各無線装置34a、34b、34cそれぞれの周波数で出力する。
【0090】
無線装置34aは、チャネル管理部36で割り当てたチャネルに従ってデータの変調および復調を行う。同様に、無線装置34b、34cでも、チャネル管理部36で割り当てたチャネルに従ってデータの変調および復調を行う。ここで、各無線装置34a、34b、34cそれぞれへのチャネルの割り当てについては後述する。
【0091】
変復調部35aは漏洩同軸ケーブル33aに接続され、小エリアA1、A4、A7に対応して設けられた電波漏洩部20A1、20A4、20A7から電波を放射して小エリアA1、A4、A7で使用される無線端末装置40(図示せず)に無線通信サービス情報を提供する。
【0092】
同様に、変復調部35bは漏洩同軸ケーブル33bに接続され、小エリアA2、A5、A8に対応して設けられた電波漏洩部20A2、20A5、20A8から電波を放射し、変復調部35cは漏洩同軸ケーブル33cに接続され、小エリアA3、A6、A9に対応して設けられた電波漏洩部20A3、20A6、20A9から電波を放射して各小エリアで使用される無線端末装置40(図示せず)に無線通信サービス情報を提供する。
【0093】
次に、本実施の形態における無線基地局装置3の動作を説明する。図10に示すように、無線基地局装置3は、無線装置34a、34bには5GHzの周波数帯域のチャネルを使用し、例えば36CH、44CHをそれぞれ割り当てる。また、無線基地局装置3は、無線装置34cには2.4GHzの周波数帯域のチャネルを使用し、11CHを割り当てる。なお、周波数の割り当て、チャネルの割り当てはこの実施例に限定されない。また、周波数の割り当て、チャネルの割り当ては無線通信システム1が設置される前に予め行ってもよいし、後で行ってもよい。
【0094】
これにより、無線基地局装置3は、各小エリアに対して異なる周波数帯域の電波を使って通信サービスを安定して提供することができる。例えば、2.4GHzの帯域の無線端末装置はBluetooth、パーソナルコンピュータおよびゲーム機器などに標準搭載されているため、それらの機器が周波数の干渉元になり、無線基地局装置3に影響を与える可能性が高い。そのため、パーソナルコンピュータなどのデータサービスには2.4GHzの周波数帯域を使用し、音楽(Audio)や映画(Video)などのストリーミングの配信には5GHzの周波数帯域を使用することで、お互いの周波数の干渉を抑えて、通信サービスを安定して提供することができる。
【0095】
なお、電波漏洩部20A1、20A2、20A3に設けられたスロット21は、5GHzと2.4GHzとで、そのスロット形状や大きさが異なるため、例えば、電波漏洩部20A1、20A2、20A3に5GHzと2.4GHzそれぞれに専用の形状、大きさを有するスロットを設けるようにしてもよい。
【0096】
以上のように、本発明の実施の形態2の無線通信システム1における無線基地局装置3によれば、異なる周波数帯域の電波を使って各無線端末装置40に通信サービスを提供することで、無線通信システム1と一般のBluetooth、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器などの無線機器との周波数の干渉を抑えて、通信サービスを安定して提供することができる。
【0097】
(実施の形態3)
次に、図11〜図13を用いて、本発明の実施の形態3における無線通信システム1について説明する。ここでは、無線通信システム1を移動機関100に配置した場合の例について説明する。
【0098】
図11は本実施の形態の無線通信システム1における漏洩同軸ケーブルの配置例を示す側面図、図12は同無線通信システム1における漏洩同軸ケーブルの配置例を示す平面図、図13は同無線通信システム1における漏洩同軸ケーブルから放射される電波の放射特性と小エリアとの関係を示す図である。以下、実施の形態1における無線通信システム1と共通の構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0099】
図11に示すように、無線基地局装置2および漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cは移動機関100の天井部に配置され、各小エリア内の座席に設置された無線端末装置40に対応して各電波漏洩部20A1、20A2、20A3を近くに設けている。これにより、電波状態を安定させることができる。
【0100】
また、図12に示すように、本実施の形態における無線通信システム1では、移動機関100内の対象エリア300内で区分された小エリアA1には、利用者が利用する複数の椅子(座席)がグループ化されて、座席グループSG1、SG2、・・・、SG6として設定されている。ここで、例えば各無線端末装置40は各椅子の背後に設置されている。
【0101】
漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cは移動機関100の長手方向D(Y軸方向)にそれぞれ平行にして配設され、ケーブルと直交する方向(X軸方向)に電波の指向特性を強くさせることを容易にしている。
【0102】
また、電波漏洩部20A1は漏洩同軸ケーブル33aの小エリアA1に対応する位置に設けられ、さらに、図12に示すように電波漏洩部20A1には座席の配列の間隔に対応してスロット21A11、21A12、・・・、21A16が漏洩同軸ケーブル33aの両側に対称的に配置されている。このスロット21A11、21A12、・・・、21A16の方向を座席グループSG1、SG2、・・・、SG6に向けることで、その方向に電波が強く放射される。小エリアA2、A3についても、電波漏洩部20A2、20A3が同様の構成で配設されている。
【0103】
具体的には、図13に示すように、スロット21A11、21A12、・・・、21A16では、小エリアA1に対応する座席グループSG1、SG2、・・・、SG6の配列方向に電波を強くし、かつ放射方向が他の座席グループと重ならないような指向特性SD1、SD2、・・・、SD6をもたせている。これにより、本実施の形態における無線通信システム1は、各座席グループにおいて使用される無線端末装置40に対して、周波数の干渉を抑えた安定した電波を提供することが可能となり、高品質の無線通信サービスを効率よく提供することができる。ここでは、各座席に各無線端末装置40が固定して配置されている。
【0104】
また、スロット21A11、21A12、・・・、21A16を図12に示したように漏洩同軸ケーブル33aの両側に対称的に設けたことで、漏洩同軸ケーブル33aを移動機関100の幅方向に対して中央近傍に配置でき、漏洩同軸ケーブル33aの両側にある各無線端末装置40それぞれと漏洩同軸ケーブル33aとの距離を近くすることができる。これにより、漏洩同軸ケーブル33aの両側に効率よくかつ安定した電波を提供することができる。
【0105】
なお、漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cを天井に配置したが、これに限定されるものでない。例えば、漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cを床の上に配置しても同様の効果が得られる。
【0106】
以上のように、本発明の実施の形態3における無線通信システム1によれば、漏洩同軸ケーブル33a、33b、33cは移動機関100の長手方向Dにそれぞれ平行にして配設され、ケーブルと直交する座席グループSG1、SG2、・・・、SG6方向に電波の指向特性を強くしたことで、座席グループSG1、SG2、・・・、SG6の配列方向に電波が強くなり、かつ放射方向が他の座席グループと重ならない指向特性SD1、SD2、・・・、SD6が得られる。これにより、長手方向と平行に分割して区切る場合に問題となる不具合(スロットから放射される電波の指向方向が重なり、電波の干渉が大きくなるといった不具合など)は解決され、スロット21A11、21A12、・・・、21A16から放射される電波の干渉を抑えることができる。
【0107】
なお、無線端末装置40を座席に固定した場合について説明したが、これに限定されない。無線端末装置40を座席に着脱可能に設置してもよい。また、移動機関100外から持ち込まれた他の無線端末機器を座席で使用できるようにしてもよい。これによっても同様の効果を発揮することができる。
【0108】
また、実施の形態1〜3の無線通信システム1では、1つの漏洩同軸ケーブルに複数のチャネルを多重化してサービスを提供する場合について説明したが、別の漏洩同軸ケーブルをさらに追加するようにしてもよい。例えば、2本の漏洩同軸ケーブルを使って映画などの映像・音声のストリームデータを送信する際に、連続データであるパケットA、パケットB、パケットC、パケットDを伝送する場合には、一方の漏洩同軸ケーブルにパケットA、パケットCを、他方の漏洩同軸ケーブルにはパケットB、パケットDを伝送する。すなわち、パケットA、パケットBとパケットCパケットDを同時に伝送する。このように、同時に複数データ(ストリーム)を送信することで、例えば、高ビットレートの画像・音声データであっても伝送することができるようになり、高品質のサービスを提供することができる。なお、漏洩同軸ケーブルの本数は2本に限定されるものではなく、高ビットレートの画像・音声データを伝送するために必要な本数(複数)を設定してもよい。
【0109】
また、無線通信システム1を移動機関100に設置した場合について説明したが、建物内で遮蔽された空間(例えば、オフィスなど)の内部で区分された複数の小エリアに通信サービスを行う場合であっても同様の効果を発揮することができる。
【0110】
また、本発明の具体的な構成は、前述の実施の形態1〜3に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、修正が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明によれば、対象エリア内で区分された複数の小エリアにおいて、隣り合う小エリアに異なるサービスを提供する場合であっても、チャネル同士間の周波数の干渉や周波数妨害を抑えることが可能となり、無線通信システム、無線基地局装置、無線通信方法などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の実施の形態1における無線通信システムの構成を示すブロック図
【図2】同無線通信システムにおける無線基地局装置の構成を示すブロック図
【図3】同無線通信システムにおける漏洩同軸ケーブルの構造を示す構造図
【図4】同無線通信システムが移動機関の内部に設置された場合のサービスエリアとの関係を示す配置図
【図5】同無線通信システムで利用する5GHzの周波数帯域におけるチャネルの配置例を示す図
【図6】同無線通信システムにおけるチャネル管理部のチャネル割り当ての事例を示すグループ構成図
【図7】同無線通信システムにおけるチャネル管理部のチャネル割り当ての他の事例を示すグループ構成図
【図8】同無線通信システムにおけるチャネル管理部のチャネル割り当ての他の事例を示すグループ構成図
【図9】本発明の実施の形態2の無線通信システムにおける無線基地局装置の構成を示すブロック図
【図10】同無線通信システムの無線基地局装置において使用される周波数帯域と無線装置に対するチャネル割り当ての事例を示す図
【図11】本発明の実施の形態3の無線通信システムにおける漏洩同軸ケーブルの配置例を示す側面図
【図12】同無線通信システムにおける漏洩同軸ケーブルの配置例を示す平面図
【図13】同無線通信システムにおける漏洩同軸ケーブルから放射される電波の放射特性と小エリアとの関係を示す図
【符号の説明】
【0113】
1 無線通信システム
2,3 無線基地局装置
10 サーバ
20A1,20A2,・・・,20An 電波漏洩部
20A11,20A12,・・・,20A16,21 スロット
23 被覆部
24 外部導体
25 遮蔽体
26 外部被覆
30 チャネル管理テーブル
31 スイッチング部
32a,32b,32c,35a,35b,35c 変復調部
33a,33b,33c 漏洩同軸ケーブル
34a,34b,34c 無線装置
36 チャネル管理部
37 多重化/分離部
40 無線端末装置
50a,50b,50c 終端抵抗
100 移動機関
200 障害物
300 対象エリア
A1,A2,・・・,An 小エリア
SG1,SG2,・・・,SG6 座席グループ
SD1,SD2,・・・,SD6 指向特性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から電磁的に遮蔽された対象エリア内で区分された複数の小エリア内で使用される複数の無線端末装置に対して、周波数ごとに区分された複数のチャネルを割り当てて通信サービスを行う無線通信システムであって、
前記複数の小エリアに対応した互いに異なる位置に電磁的な開口部を設けた複数の漏洩同軸ケーブルと、
前記複数の漏洩同軸ケーブルに接続され、隣り合う前記小エリアには互いのチャネルが連続とはならないチャネルを前記複数の漏洩同軸ケーブルに割り当てをする無線基地局装置と、
を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記漏洩同軸ケーブルには、前記電磁的な開口部として遮蔽体を取り除いた部分に電波を漏洩する電波漏洩部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記小エリアを部分的にオーバーラップさせたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記無線基地局装置は、
隣り合う前記小エリアでは互いのチャネルが連続しないように前記複数のチャネルがグループ化され、このグループ化されたチャネル群を前記複数の漏洩同軸ケーブルそれぞれに対して割り当てることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
1つのチャネルでサービスを提供することができる前記無線端末装置の台数を超えた場合には前記漏洩同軸ケーブルに割り当てられた前記チャネル群の中から別のチャネルを追加するようにすることを特徴とする請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
使用することができないチャネルが発生した場合には前記漏洩同軸ケーブルに割り当てられた前記チャネル群の中から別のチャネルを選択するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項7】
細長の移動機関の内部に設置され、前記複数の漏洩同軸ケーブルを前記移動機関の長手方向と平行に配設したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記漏洩同軸ケーブルの開口部には複数のスロットを有し、その複数のスロットを前記開口部の両側に対称的に配置したことを特徴とする請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記複数のスロットは、前記移動機関に設置されている座席の位置に対応して設けられていることを特徴とする請求項8に記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記移動機関は、鉄道車両または航空機であることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−283508(P2008−283508A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126279(P2007−126279)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】