説明

無線通信システム

【課題】音声通信を優先するという制御処理を原則として維持しつつもデータ通信を効率的に行うことを可能とした無線通信システムを提供すること。
【解決手段】無線通信システムにおいて、基地局から移動局に対して音声通話要求が発生した場合に、当該移動局との間で現在データ通信が実行中か否かを判別し、データ通信が実行中と判別された場合に、当該データ通信が完了するまでの残り時間を算出し、前記残り時間が予め設定した所定時間以内である場合には、音声通話要求者に対して待機する旨を通知してデータ通信完了後に音声通話開始可能であることを通知し、前記残り時間が予め設定した所定時間より大きい場合には、データ通信を中断した上で音声通話要求者に対して音声通話開始可能であることを通知することを特徴とする無線通信システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防に関する無線通信システムにおいて、消防本部から移動局へ指令電文などのデータ通信中に音声通話要求があった場合の制御処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の消防に関する無線通信システムは、図5に示すように、消防本部基地局(以下、基地局)10と、少なくとも1以上の移動局11(図5においては、3つの移動局11a〜11c)との間で相互に無線通信が行われている。基地局10は、119番通報を受け付けて移動局等に通信指令を出す制御を行う指令台装置13と、火災や救急地震等による消防管轄内における事案を管理し、また、事案情報を移動局に対して送信する自動出動装置14と、AVM(Automatic Vehicle Monitoring)システムによる移動局の位置や状態をデジタル無線によるデータ送受信によって管理するAVM動態管理装置15と、デジタル無線による音声通話を制御する無線統制台装置16と、移動局11との間の無線通信を担う無線装置18とによって構成されている。移動局11は、基地局と無線通信を行うための無線機と、デジタル無線にて送受信する信号を処理する信号処理装置とを有している。図5において、実線はデータ通信ライン、破線は音声通信ラインをそれぞれ表している。
【0003】
以上のような構成において、基地局10と移動局11との間で音声通信又はデータ通信のいずれかの通信モードで通信が行われるが、従来の無線通信システムにおいては、消防業務における音声通信の重要性から常に音声通信が優先されるように制御を行っていたため、例えば、基地局10から移動局11に対してデータ送信中に音声通話の要求があった場合には、データ送信を中断して音声通信に切り替えていた。
【0004】
分野は異なるものの、音声通信モードとデータ通信モードとの優先順位を如何に制御するかに関する文献として、特許文献1及び2が挙げられる。
特許文献1に記載の移動端末は、従来の移動端末ではデータ通信中に音声着信がなされた場合、予め定めたいずれかのモードの設定がなされると、そのデータ通信の種類に係わらず、所定の通信モードでの処理しか行なわれないことにより、データ通信の種類によっては必ずしもその処理が適切ではないという問題が生じていたことを課題とし、データ通信中に音声着信がなされたときに、そのデータ通信の種類に応じて異なる処理が可能となる移動端末を提供することを目的としたものである。
【0005】
特許文献2に記載の移動通信端末は、データを受信中に音声着信が発生した場合データ通信の種別により音声通信移行機能や音声着信通知機能を切り替えるだけではユーザの要望に対して不十分な場合があることを課題として、ユーザが「1.音声通信優先」又は「2.データ通信優先」のいずれかを選択することができるとともに、優先データ通信相手情報を記憶しておき、データ通信開始時に通信相手が優先データ通信情報に登録された相手の場合は、優先モード設定情報を一時的に「データ通信優先モード」に変更する機能を持たせたものである。
【特許文献1】特開2002−64867号公報
【特許文献2】特開2005−86464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5に示す従来の無線通信システムにおいては、データ送信中に音声通話の要求があった場合にはデータ送信を中断して音声通信に切り替えていたため、送信途中だったデータについては再度続きを送信し直す必要があり、音声通話を優先し続けることによってデータ通信がなかなか完了しない場合が生じるという問題がある。
【0007】
この問題を解決するために、前記特許文献1又は2のように音声通信よりもデータ通信を優先する場合を規定して制御する方法も考えられるが、消防に関する無線通信システムにおいては、消防業務における音声通信の重要性から原則として音声通信が優先であるため、単純に特許文献1又は2のような通信制御方法を採用することができないという事情がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、音声通信を優先するという制御処理を原則として維持しつつもデータ通信を効率的に行うことを可能とした無線通信システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1は、基地局と、前記基地局との間で音声通信又はデータ通信のいずれかの通信モードで通信を行う少なくとも1以上の移動局とを具備した無線通信システムにおいて、前記基地局は、前記移動局に対して前記通信指令を行う通信指令手段と、前記基地局と前記移動局との間の通信を制御する回線制御手段とを備え、前記回線制御手段は、前記通信指令手段から前記移動局に対する音声通信要求が発生した場合、当該移動局との間でデータ通信が実行中か否かを判別し、データ通信が実行中と判別された場合、当該データ通信が完了するまでの残り時間を算出し、前記残り時間が予め設定した所定時間以内である場合は前記通信指令手段に対して前記音声通信を待機させる旨を通知するとともに前記データ通信が完了後に前記音声通信を開始可能であることを通知し、前記残り時間が予め設定した所定時間より大きい場合は前記データ通信を中断した上で前記通信指令手段に対して前記音声通信を開始可能であることを通知することを特徴とする無線通信システムである。
【0010】
本発明の請求項2は、基地局と、前記基地局との間で音声通信又はデータ通信のいずれかの通信モードで通信を行う少なくとも1以上の移動局とを具備した無線通信システムにおいて、前記基地局は、前記移動局に対して前記通信指令を行う通信指令手段と、前記基地局と前記移動局との間の通信を制御する回線制御手段とを備え、前記回線制御手段は、前記通信指令手段から前記移動局に対する音声通信要求が発生した場合、当該移動局との間でデータ通信が実行中か否かを判別し、データ通信が実行中と判別された場合、当該データ通信の内容が予め設定した2段階の重要度の何れに該当するかを判別し、前記データ通信の内容の重要度が高いものと判別した場合、実行中のデータ通信を優先し、前記通信指令手段に対して音声通信が出来ないことを通知し、前記重要度が低いものと判別した場合、当該データ通信が完了するまでの残り時間を算出し、前記残り時間が予め設定した所定時間以内である場合は前記通信指令手段に対して前記音声通信を待機させる旨を通知するとともに前記データ通信が完了後に前記音声通信を開始可能であることを通知し、前記残り時間が予め設定した所定時間より大きい場合は前記データ通信を中断した上で前記通信指令手段に対して前記音声通信を開始可能であることを通知することを特徴とする無線通信システムである。
【0011】
本発明の請求項3は、基地局と、前記基地局との間で音声通信又はデータ通信のいずれかの通信モードで通信を行う少なくとも1以上の移動局とを具備した無線通信システムにおいて、前記基地局は、前記移動局に対して前記通信指令を行う通信指令手段と、前記基地局と前記移動局との間の通信を制御する回線制御手段とを備え、前記回線制御手段は、前記通信指令手段から前記移動局に対する音声通信要求が発生した場合、当該移動局との間でデータ通信が実行中か否かを判別し、データ通信が実行中と判別された場合、当該データ通信の内容が予め設定した3段階の重要度の何れに該当するかを判別し、前記データ通信の内容の重要度が最も高いものと判別した場合、実行中のデータ通信を優先し、前記通信指令手段に対して音声通信が出来ないことを通知し、前記重要度が2番目に高いものと判別した場合、当該データ通信が完了するまでの残り時間を算出し、前記残り時間が予め設定した所定時間以内である場合は前記通信指令手段に対して前記音声通信を待機させる旨を通知するとともに前記データ通信が完了後に前記音声通信を開始可能であることを通知し、前記残り時間が予め設定した所定時間より大きい場合は前記データ通信を中断した上で前記通信指令手段に対して前記音声通信を開始可能であることを通知し、前記重要度が最も重要度が低いものと判別した場合、実行中のデータ通信を中断し、前記通信指令手段に対して音声通信開始可能であることを通知することを特徴とする無線通信システムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、予め設定した所定時間(例えば5秒)を閾値として、データ通信完了を優先するか即座に音声通信に切り替えるかの処理を選択するようにしたので、従来はあと僅かというところで中断せざるを得ずデータ通信を完了することができなかったが、僅かな待機時間でデータ通信を完了できる場合には音声通信に切り替える前にデータ通信を完了させることが出来るようになるため、音声通信優先の原則を維持しながらもデータ通信を中断したことによる再送信処理の回数を減らすことで、通信の運用効率が高くなる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、送信するデータの内容毎に予め2段階の重要度に設定し、重要度が高いデータを送信している場合、データ通信モードを最優先にすることで重要なデータ通信を中断させないことができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、送信するデータの内容毎に予め3段階の重要度に設定し、最も重要度が低いデータを送信している場合、音声通信を最優先にすることで、基地局からの音声による指令通信が速やかに行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の無線通信システムを模式的に表したブロック図である。
【図2】実施例1での回線制御装置17における処理の流れを表したフローチャートである。
【図3】実施例2での回線制御装置17における処理の流れを表したフローチャートである。
【図4】データの内容毎の重要度の一例を表した表図である。
【図5】従来の無線通信システムを模式的に表したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、基地局と、前記基地局との間で音声通信又はデータ通信のいずれかの通信モードで通信を行う少なくとも1以上の移動局とを具備した無線通信システムにおいて、前記基地局は、前記移動局に対して前記通信指令を行う通信指令手段と、前記基地局と前記移動局との間の通信を制御する回線制御手段とを備え、前記回線制御手段は、前記通信指令手段から前記移動局に対する音声通信要求が発生した場合、当該移動局との間でデータ通信が実行中か否かを判別し、データ通信が実行中と判別された場合、当該データ通信が完了するまでの残り時間を算出し、前記残り時間が予め設定した所定時間以内である場合は前記通信指令手段に対して前記音声通信を待機させる旨を通知するとともに前記データ通信が完了後に前記音声通信を開始可能であることを通知し、前記残り時間が予め設定した所定時間より大きい場合は前記データ通信を中断した上で前記通信指令手段に対して前記音声通信を開始可能であることを通知することを特徴とする無線通信システムである。
【実施例1】
【0017】
本発明による無線通信システムについて図面に基づいて説明を行う。図1に示すのは、本発明の無線通信システムを模式的に表したブロック図であり、本部基地局(以下、基地局)10と、少なくとも1以上の移動局11(図1においては、3つの移動局11a〜11c)との間で相互に無線通信が行われている。基地局10は、119番通報を受け付けて移動局等に通信指令を出す制御を行う通信指令手段としての指令台装置13と、火災や救急等による消防管轄内における事案を管理し、また、事案情報を移動局に対して送信する自動出動装置14と、AVM(Automatic Vehicle Monitoring)システムによる移動局の位置や状態をデジタル無線によるデータ送受信によって管理するAVM動態管理装置15と、デジタル無線による音声通話を制御する無線統制台装置16と、これら各装置から依頼される移動局との間で行われる音声通信又はデータ通信を制御する回線制御手段としての回線制御装置17と、移動局11との間の無線通信を担う無線装置18とによって構成されている。図1において実線はデータ通信ライン、破線は音声通信ライン、二重線はデータ音声共用ラインをそれぞれ表している。
移動局11は、基地局10と無線通信を行うための無線機と、デジタル無線にて送受信する信号を処理する信号処理装置とを有している。
【0018】
基地局10と移動局11との間では、デジタル無線による音声やデータの送受信が必要の都度行われている。基地局10は、移動局11より送信される動態情報や位置情報を定期的にデジタル無線によりデータにて取得し、AVM動態管理装置15にて複数の移動局11の管理を図っている。また、移動局11は、デジタル無線による基地局10からの指令指示を音声又はデータにて受信し、信号処理装置にて取得情報を処理して表示し、消火、救急活動を行う。119番通報の受話にて災害や救急発生時、基地局10は、AVM動態管理装置15にて管理している移動局情報に基づき災害状況に応じた移動局11の隊編成を組み、出動依頼を行う。隊編成で選ばれた移動局11にはデジタル無線にて災害情報を音声又はデータで送信する。災害活動中の移動局11は、災害活動中の移動局11は、常にデジタル無線にて動態情報や位置情報を基地局10へデータ送信し、必要に応じて音声にて情報交換を行うことにより、基地局10は災害活動状況を把握し、最適な行動がなされているかを判断する。
【0019】
更に詳しくは、本発明は、回線制御装置17により、基地局10と移動局11との間で行われる音声通信及びデータ通信について、原則として音声通信を優先としつつも音声通信に違和感のない範囲でデータ通信を良好に行えるように制御することを特徴とするものである。データ通信は、基地局10の指令台装置13、自動出動装置14、AVM動態管理装置15からそれぞれ移動局11に対して行われており、回線制御装置17においてこのデータ通信状況を把握しながら指令台装置13から音声通話要求があった場合に以下のような処理を行う。
【0020】
図2に示すのは、回線制御装置17における処理の流れを表したフローチャートである。先ず、基地局10の指令台装置13において音声通話を開始するためのボタン押下操作(以下、プレスオンという)によって信号が発信されると、これを回線制御装置17で受信する(S201)。プレスオンを受信した回線制御装置17では、指令台装置13が通話しようとしている移動局11と現在データ通信が実行中であるか否かを確認し(S202)、データ通信を行っていない場合には、音声通話が可能であることを指令台装置13に通知する(S207)。現在データ通信中である場合には、(S203)へ移行する。
【0021】
(S203)では、移動局11へ送信している現在のデータ通信が完了するまでに必要な時間を算出する。そして、予め設定された所定の時間内、例えば残り5秒以内でデータ通信を完了させることができるか否かを判別する(S204)。5秒以内でデータ通信を完了する場合には、データ通信が完了するまで待機する旨を指令台13に通知(S205)した上で、データ通信が完了後(S206)音声通話可能であることを指令台装置13に通知する(S208)。5秒以内でデータ通信を完了できない場合には、データ通信を中断し(S207)、即座に音声通話が可能であることを指令台装置13に通知する(S208)。なお、指令台装置13でプレスオンしてから音声通話可能までの間隔がデータ通信の状況によって異なってくるため、通話可能を知らせる時、LEDやLCDによる画面に視覚的に通知する方法や、ブザーによって聴覚的に通知する方法などを採用することで指令台装置13の隊員が認識し易いようにする。
【0022】
また、データ通信完了までの残り時間の算出は、まだ送信していない残りのデータ量から算出することができる。例えば、パケット通信において、総パケット数に対する現在の送信パケット数に基づいて残り時間を算出する。また、設定時間を5秒としたのはあくまで一例であって適宜設定可能なものである。
【0023】
以上のように、データ通信中に音声通話要求があった場合に、データ通信完了までの時間を算出し、所定時間、例えば5秒以内にデータ通信が完了するようであればデータ通信を続行して完了させてその後に音声通信に切り替えるようにした。このように、待機時間が短ければ、指令台装置13で応対している隊員に違和感を与えることなくデータ通信を完了させ、かつ音声通信に移行することができる。5秒よりも長く時間を要するような場合には、従来通り音声通信優先として、データ通信を中断して音声通信に移行し、音声通信終了後、中断したデータを再送信する。このような処理を行うことにより、従来はあと僅かというところで中断せざるを得ずデータ通信を完了することができなかったが、僅かな待機時間でデータ通信を完了できる場合には音声通信に切り替える前にデータ通信を完了させることが出来るようになるため、音声通信優先の原則を維持しながらもデータ通信を中断したことによる再送信処理の回数を減らすことで、通信の運用効率が高くなる。
【実施例2】
【0024】
前記実施例1においては、データ通信中に音声通話要求があった場合に、データ通信完了までの時間に基づいて処理を切り替えるように制御していたが、この実施例2においては、データの内容を参照してデータの重要度に応じて処理を切り替えるようにした制御方法について説明を行う。なお、全体の構成は実施例1における図1と同様であり、回線制御装置17における処理が異なるので、各部の説明は省略する。
【0025】
図3に示すのは、実施例2における回線制御装置17での処理の流れを表したフローチャートである。先ず、基地局10の指令台装置13において音声通話を開始するためのボタン押下操作(以下、プレスオンという)によって信号が発信されると、これを回線制御装置17で受信する(S301)。プレスオンを受信した回線制御装置17では、指令台装置13が通話しようとしている移動局11と現在データ通信中であるか否かを確認し(S302)、データ通信を行っていない場合には、音声通話が可能であることを指令台装置13に通知する(S309)。現在データ通信中である場合には、(S303)へ移行する。
【0026】
(S303)では、通信中のデータ内容を参照してデータの重要度を判別する。各データにはその種類ごとに予め重要度が設定してある。図4にデータの重要度の一例を示す。この図4に示すように、例えば、指令系電文は重要度が「大」即ち重要度が最も高いものとして設定しておき、他車両情報は重要度が「中」即ち重要度が中位のものとして設定しておき、ポーリングデータは重要度が「小」即ち重要度が最も低いものとして設定しておく。なお、この図4における送信時間は、各データの送信にかかる平均的な時間を表したものである。
【0027】
次に、(S304)において、データの重要度が「大」であるか否かを判別する。ここで、データの重要度が最も高い「大」であると判別された場合は、データ通信を優先して処理し(S305)、音声通話ができないことを指令台装置11に通知する(S306)。
【0028】
(S304)において、データの重要度が「大」ではないと判別された場合には、次の(S307)において、データの重要度が最も低い「小」であるか否かを判別する。ここで、データの重要度が「中」と判別された場合は、図2の(S203)へ移行する。即ち、データの残り送信時間を算出し(S203)、5秒以内でデータ送信完了する場合には、データ通信が完了するまで待機する旨を指令台13に通知(S205)した上で、データ通信が完了後(S206)音声通話可能であることを指令台装置13に通知する(S208)。5秒以内でデータ通信を完了できない場合には、データ通信を中断し(S207)、即座に音声通話が可能であることを指令台装置13に通知する(S208)。
【0029】
(S307)において、データの重要度が最も低い「小」と判別された場合には、データ通信を中断し(S308)、音声通話が可能であることを指令台装置13に通知する(S309)。データ通信を中断する際、図4に示すように送信時間が短いデータもあるので、データ通信中断までを若干の遅延時間(例えば1秒間)を設けてデータ通信の中断処理を行ってもよい。
音声通信完了後は、中断したデータを再送信処理が行われる。この場合、データを最初から送る場合と、中断後のデータから送る場合のいずれも方法でもよい。
【0030】
以上のように、実施例2における回線制御装置17での制御によれば、データ通信優先、残りの送信時間に応じて処理を切替、又は、音声通信優先というように、データの重要度に応じて処理を切り替えることができるため、従来の音声通信優先のみの運用時に比較して非効率なデータ中断が無くなり、その結果、データ通信中断による再送信処理の回数を減らすことで無線通信システムの運用効率が高くなる。
【0031】
前記実施例2においては、データの重要度を3段階に分けて、それぞれに応じた処理を行うように制御を行っていたが、3段階の場合に限定されるものではなく、例えば、重要度が大、小の2段階の場合、重要度「大」と判別された場合、前記実施例2においてデータの重要度「大」として処理し、重要度「小」と判別された場合、前記実施例2においてデータの重要度「中」として処理する。
【0032】
または、重要度の段階をもっと細かく設定してもよい。例えば、前記実施例2においてデータの重要度「中」とされた場合の処理の部分を細分化して、データ通信を継続するか中断するかの閾値となる設定時間を段階的に設定(例えば、重要度が高い順に閾値を7秒、5秒、3秒とする等)するようにしてもよい。
また、緊急時などに対応するため、データの重要度に関係なく指令台装置13側から強制的に音声通信に切り替えるモードを設けるようにしてもよい。
【0033】
前記実施例1及び2において、データ通信中に音声通話要求があった場合に、データ通信完了までの時間を算出し、所定時間、例えば5秒を閾値としてデータ通信を中断するか継続するかを制御していたが、時間による閾値に限られるものではなく、データ量に閾値を設けて制御するようにしてもよい。即ち、所定バイト数に閾値を設定し、データ通信完了までの残りデータ量が閾値以下である場合にはデータ通信完了まで待機した上で音声通信に切り替え、データ通信完了までの残りデータ量が閾値よりも大きい場合にはデータ通信を中断した上で音声通信に切り替えるように制御を行っても、前記実施例1及び2と同様の効果を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0034】
10…本部基地局(基地局)、11、11a〜11c…移動局、13…指令台装置、14…自動出動装置、15…AVM動態管理装置、16…無線統制台装置、17…回線制御装置、18…無線装置、(S201)〜(S208)…図2の各ステップ、(S301)〜(S309)…図3の各ステップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と、前記基地局との間で音声通信又はデータ通信のいずれかの通信モードで通信を行う少なくとも1以上の移動局とを具備した無線通信システムにおいて、
前記基地局は、前記移動局に対して前記通信指令を行う通信指令手段と、前記基地局と前記移動局との間の通信を制御する回線制御手段とを備え、
前記回線制御手段は、前記通信指令手段から前記移動局に対する音声通信要求が発生した場合、当該移動局との間でデータ通信が実行中か否かを判別し、データ通信が実行中と判別された場合、当該データ通信が完了するまでの残り時間を算出し、前記残り時間が予め設定した所定時間以内である場合は前記通信指令手段に対して前記音声通信を待機させる旨を通知するとともに前記データ通信が完了後に前記音声通信を開始可能であることを通知し、前記残り時間が予め設定した所定時間より大きい場合は前記データ通信を中断した上で前記通信指令手段に対して前記音声通信を開始可能であることを通知することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
基地局と、前記基地局との間で音声通信又はデータ通信のいずれかの通信モードで通信を行う少なくとも1以上の移動局とを具備した無線通信システムにおいて、
前記基地局は、前記移動局に対して前記通信指令を行う通信指令手段と、前記基地局と前記移動局との間の通信を制御する回線制御手段とを備え、
前記回線制御手段は、前記通信指令手段から前記移動局に対する音声通信要求が発生した場合、当該移動局との間でデータ通信が実行中か否かを判別し、データ通信が実行中と判別された場合、当該データ通信の内容が予め設定した2段階の重要度の何れに該当するかを判別し、前記データ通信の内容の重要度が高いものと判別した場合、実行中のデータ通信を優先し、前記通信指令手段に対して音声通信が出来ないことを通知し、
前記重要度が低いものと判別した場合、当該データ通信が完了するまでの残り時間を算出し、前記残り時間が予め設定した所定時間以内である場合は前記通信指令手段に対して前記音声通信を待機させる旨を通知するとともに前記データ通信が完了後に前記音声通信を開始可能であることを通知し、前記残り時間が予め設定した所定時間より大きい場合は前記データ通信を中断した上で前記通信指令手段に対して前記音声通信を開始可能であることを通知することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
基地局と、前記基地局との間で音声通信又はデータ通信のいずれかの通信モードで通信を行う少なくとも1以上の移動局とを具備した無線通信システムにおいて、
前記基地局は、前記移動局に対して前記通信指令を行う通信指令手段と、前記基地局と前記移動局との間の通信を制御する回線制御手段とを備え、
前記回線制御手段は、前記通信指令手段から前記移動局に対する音声通信要求が発生した場合、当該移動局との間でデータ通信が実行中か否かを判別し、データ通信が実行中と判別された場合、当該データ通信の内容が予め設定した3段階の重要度の何れに該当するかを判別し、前記データ通信の内容の重要度が最も高いものと判別した場合、実行中のデータ通信を優先し、前記通信指令手段に対して音声通信が出来ないことを通知し、
前記重要度が2番目に高いものと判別した場合、当該データ通信が完了するまでの残り時間を算出し、前記残り時間が予め設定した所定時間以内である場合は前記通信指令手段に対して前記音声通信を待機させる旨を通知するとともに前記データ通信が完了後に前記音声通信を開始可能であることを通知し、前記残り時間が予め設定した所定時間より大きい場合は前記データ通信を中断した上で前記通信指令手段に対して前記音声通信を開始可能であることを通知し、
前記重要度が最も重要度が低いものと判別した場合、実行中のデータ通信を中断し、前記通信指令手段に対して音声通信開始可能であることを通知することを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−10115(P2012−10115A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144382(P2010−144382)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】