説明

無線通信機能を有するカメラ

【課題】 金属製の外観カバー内にアンテナを収容する構成であっても通信性能が悪化しないようにする。
【解決手段】 無線通信用のアンテナ31,32は、それぞれファインダ10に光を導くための対物側開口1a、およびファインダ像を外部から視認可能とするための接眼側開口1b(いずれも金属製の外観カバー1に形成される)の近傍において、閉塞部材21,23で覆われるよう配置される。閉塞部材21,23は非金属製(例えば、プラスチック製)であり、その非金属部分を通して電波が伝播するので、良好な通信性能が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信が可能なカメラに関し、アンテナの配置を工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信が可能なカメラとしては、例えば特許文献1に記載されたものがある。このカメラでは、無線通信用のアンテナがカメラの外観カバーの表面に露出して設けられている。
【0003】
【特許文献1】特開2003-264737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようにアンテナが外部に露出する構成はデザイン的に好ましくないため、アンテナを外観カバーの内部に収容することが考えられる。しかし、外観カバーが金属製の場合は電波が遮られ、通信状態が悪化するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、所定のカメラ機能を果たすのに必要な開口部または凹部が設けられた金属製の外観カバーと、開口部または凹部を閉塞する非金属製の閉塞部材と、アンテナを含む無線通信ユニットとを有するカメラに適用される。アンテナは、開口部の近傍または凹部内において閉塞部材で覆われるように配置されている。
請求項2の発明は、上記開口として、ファインダに光を導くための対物側開口、またはファインダ像を外部から視認可能とするための接眼側開口を用いたものである。
請求項3の発明では、アンテナは、接眼側開口の近傍に閉塞部材としての接眼レンズで覆われるように配置されている。
請求項4の発明は、上記開口として、被写体側に光を照射するための窓部を用いたものである。
請求項5の発明では、無線通信ユニットはカメラに挿脱可能とされ、カメラに挿入したときにアンテナが開口部の近傍に達する。
請求項6の発明に係るカメラは、金属製の外観カバーと、外観カバーに取り付けられるグリップ部と、アンテナを含む無線通信ユニットとを有し、アンテナはグリップ部内に設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、無線通信用のアンテナを、金属製の外観カバーの開口部や凹部の近傍において非金属製の閉塞部材で覆われるように配置したので、金属製の外観カバーを採用しつつも良好な通信状態が得られる。またアンテナが外部に露出することもないので、デザインを損なうこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−第1の実施形態−
図1〜図4により本発明の第1の実施形態を説明する。
図1,図2は本実施形態におけるデジタルカメラを正面/背面から見た斜視図、図3は側面断面図である。カメラの前カバー1Aおよび背面カバー1B(以下、総称して外観カバー1と呼ぶ)は、高級感を出すためと薄型化を図るために金属製(例えば、ステンレス製)とされる。外観カバー1の前面および背面には、開口1a,1b,1cが形成され、開口1a,1bがファインダ対物/接眼用の開口を、開口1cが閃光装置の発光窓をそれぞれ構成する。発光窓1cには光透過性のカバー7が嵌め込まれる。
【0008】
外観カバー1の上面にはレリーズボタン2が、前面にはレンズ鏡筒3とグリップ部4が、背面には操作部材5と液晶モニタ6とがそれぞれ設けられている。
【0009】
図3に示す光学ファインダブロック10は、対物/接眼レンズ11a,11bやプリズム12などの光学部材を保持部材13に保持して成り、上述した開口1a,1bの間に配置される。開口1aにはプラスチック製の不透明の枠21が嵌め込まれ、この枠21に形成された窓(ファインダ対物窓)21aに透明の保護カバー22が嵌め込まれている。開口1bには、後方に膨出するプラスチック製の不透明の枠23が嵌め込まれ、枠23に形成された窓(ファインダ接眼窓)23aが接眼レンズ11bにて閉塞される。対物窓21aから入射した被写体光束は、レンズ11aを透過し、プリズム12で2度方向変換され、接眼レンズ11bおよび接眼窓23aを通って視認される。
【0010】
図4はカメラの制御系を示し、CPU41には、撮像・記録部42、モニタ制御部43、操作部44および無線通信ユニット30などが接続されている。撮像・記録部42は、デジタルカメラとしての機能を達成するための撮像素子や撮像回路、画像処理回路、画像記録回路などから成る。モニタ制御部43は、液晶モニタ6の表示制御を行う。操作部44は、レリーズボタン22や操作部材5の操作に連動してオン・オフする複数のスイッチ類から成る。無線通信ユニット30は、無線通信回路33およびアンテナ31,32を含み、撮像された画像データやその他の情報を無線によって外部機器に送信したり、外部からの送信情報を受信することができる。
【0011】
本実施形態では、図3に示すように2つのアンテナ31,32をカメラの前面/背面側にそれぞれ配置することで、送受信性能の向上を図っている。アンテナ31,32は、ファインダブロック10の上部においてそれぞれ実装基板51,52に実装された状態で配置され、いずれかの基板には無線通信回路33も実装されている。そして、一方のアンテナ31は、開口1aの近傍において枠21によって覆われるよう配置され、他方のアンテナ32は、開口1bの近傍において、枠23によって覆われるよう配置される。
【0012】
アンテナ31,32を覆う枠21,23はいずれもプラスチック製であり、そのプラスチック部分を通して電波が伝播するので、アンテナ31,32を金属カバー1で覆う場合と比べて良好な通信性能が得られる。したがって、金属カバーを採用しつつも金属カバーで電波が遮られることがなく、無線通信性能を損なわずに済む。またアンテナ31,32が外部に露出することもないので見栄えを悪くすることもない。
なお、アンテナ31,32を覆う部分は非金属であればよく、プラスチック製の枠21,23に代えてゴム製の枠とした場合も同様の効果を期待できる。また、アンテナはいずれか1個でもよい。
【0013】
ここで、枠21,23は、アンテナ31,32の有無に拘わらずプラスチックあるいはゴム製とされるのが普通である。特に接眼側の枠23は、金属製にすると眼鏡を傷つけるおそれがあるため、殆どの場合はプラスチックまたはゴムで構成される。本実施形態では、このようにもともと非金属で構成されている箇所に着目し、その非金属部分で覆われる箇所にアンテナ31,32を配置したので、アンテナ配置用の非金属部分を敢えて設ける必要はなく、コスト面、デザイン面で有利である。
【0014】
−第2の実施形態−
図5および図6により本発明の第2の実施形態を説明する。なお、先の実施形態と同様の機能を果たす部材には同一の符号を付す。
カメラの金属製外観カバー61には、前面から上面に至る角部分に開口61aが形成され、この開口61aを覆うようにプラスチック製の不透明のカバー(以下、樹脂カバー)62が嵌め込まれている。樹脂カバー62にはファインダ対物窓62aと閃光装置の発光窓62bとが設けられている。
【0015】
ファインダブロック10の上部には、無線通信回路33が実装される実装基板71が配置され、その上下面にそれぞれアンテナ31,32が実装されている。一方のアンテナ31は、開口61aの近傍において、樹脂カバー62の前面と上面との角部に覆われるように配置される。他方のアンテナ32は、外観カバー61の開口61bの近傍において、ファインダブロック10の保持部材13に形成された孔13aからファインダ内に露出するように配置される。
【0016】
この構成においては、アンテナ31を覆う部分が樹脂カバー62であるため、上述と同様に金属カバー61で覆った場合と比べて良好な通信性能が得られる。一方、アンテナ32はファインダ内に露出しており、実質的に接眼レンズ11bによって覆われる形となる。ガラスまたはプラスチック製の接眼レンズ11bは、金属と比べて電波をよく通すので、良好な通信性能が得られる。
【0017】
−第3の実施形態−
図7,図8により本発明の第3の実施形態を説明する。なお、先の実施形態と同様の機能を果たす部材には同一の符号を付す。
本実施形態では、無線通信ユニットがカメラに挿脱可能とされる。カメラ本体には、一端部に無線通信ユニットの装填室81がファインダユニット10に隣接して設けられ、装填室81は蓋82により開閉可能とされる。カード状の無線通信ユニット(以下、無線通信カード)90は、無線通信回路とアンテナと91とを含み、アンテナ91はカード90の突出部90Aに設けられている。カード90を装填室81に装填して蓋82を閉じると、カメラの制御部と無線通信回路とが電気的に接続され、上述したような無線通信が行える。
【0018】
外観カバー101に形成されたファインダ接眼用の開口101aには、後方に膨出するプラスチック製の不透明の枠83が嵌め込まれ、枠83にはファインダ接眼窓83aが設けられている。また枠83の内部空間は、上記無線通信カード90の装填室81と連通しており、装填室81にカード90が装填されると、突出部90A、すなわちアンテナ91が枠83内に挿通される。したがってアンテナ91は、開口101aの近傍においてプラスチック製の枠83で覆われる形となり、先の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0019】
なお、アンテナを設ける位置はファインダ用の開口に限定されず、閃光装置の発光窓や、AF補助光窓、セルフタイマ報知用の光射出窓(いずれも外観カバーに形成される)などの内側に設けてもよい。これらの窓にはプラスチック製の保護カバーが設けられているので、上述と同様の作用効果が得られる。
【0020】
また、外観カバーの表面に凹部を設け、その凹部の底面に電源端子やデジタル/アナログ端子などを配置し、凹部をゴム製の蓋で開閉可能としたカメラがある。かかるカメラにおいては、上記凹部内にアンテナを配置することで、通常はアンテナがゴム製の蓋で覆われることになり、上述と同様の作用効果が得られる。
【0021】
また図9に示すように、金属製の外観カバー1に設けられるグリップ部4をプラスチック製あるいはゴム製とし、このグリップ部4内にアンテナ31を配置してもよい。特にグリップ部4の上面あるいは下面近傍にアンテナ31を配置することで、グリップ部4を指で覆うことによる通信性能の悪化を最小限に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるカメラを正面側から見た斜視図。
【図2】上記カメラを背面側から見た斜視図。
【図3】上記カメラの側面断面図。
【図4】カメラの制御ブロック図。
【図5】第2の実施形態におけるカメラを正面側から見た斜視図。
【図6】図5のカメラの側面断面図。
【図7】第3の実施形態におけるカメラを正面から見た斜視図。
【図8】図7のカメラの平面断面図。
【図9】他の実施形態におけるカメラのグリップ部分を示す斜視図。
【符号の説明】
【0023】
1,61,101 外観カバー
1a,1b,1c 開口
4 グリップ部
10 ファインダユニット
11b 接眼レンズ
21,23,83 枠
30 無線通信ユニット
31,32 アンテナ
62 樹脂カバー
90 無線通信カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のカメラ機能を果たすのに必要な開口部または凹部が設けられた金属製の外観カバーと、前記開口部または前記凹部を閉塞する非金属製の閉塞部材と、アンテナを含む無線通信ユニットとを有するカメラにおいて、
前記アンテナは、前記開口部の近傍または前記凹部内において前記閉塞部材で覆われるように配置されていることを特徴とする無線通信機能を有するカメラ。
【請求項2】
前記開口は、ファインダに光を導くための対物側開口、またはファインダ像を外部から視認可能とするための接眼側開口であることを特徴とする請求項1に記載の無線通信機能を有するカメラ。
【請求項3】
前記アンテナは、前記接眼側開口の近傍に前記閉塞部材としての接眼レンズで覆われるように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の無線通信機能を有するカメラ。
【請求項4】
前記開口は、被写体側に光を照射するための窓部であることを特徴とする請求項1に記載の無線通信機能を有するカメラ。
【請求項5】
前記無線通信ユニットは、カメラに挿脱可能とされ、カメラに挿入したときに前記アンテナが前記開口部の近傍に達するよう構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無線通信機能を有するカメラ。
【請求項6】
金属製の外観カバーと、該外観カバーに取り付けられるグリップ部と、アンテナを含む無線通信ユニットとを有し、
前記アンテナは前記グリップ部内に設けられていることを特徴とする無線通信機能を有するカメラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−13784(P2007−13784A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193897(P2005−193897)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】