説明

無線通信端末、無線測位システム、照明システム、空調システム、及び駐車場管理システム

【課題】マルチパスによる影響を低減し、測距精度を向上させることができる無線通信端末、無線測位システム、照明システム、空調システム、及び駐車場管理システムを得る。
【解決手段】無線信号を送受信する機能を有する複数の無線通信端末によって構成され、無線信号の送信から当該無線信号の応答を受信するまでの時間に基づいて、無線通信端末間の距離を求める無線測距システムにおける無線通信端末であって、所定方向に指向性を有し、無線信号を送受信するアンテナを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号を用いて無線通信端末間の距離を求める無線通信端末、無線測位システム、照明システム、空調システム、及び駐車場管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電波を利用して無線通信端末間の距離を計測する方法として、電波の到達時間を利用したものや受信電波強度を利用したものが知られている。
例えば『送信元と受信先の間でのパケット送信及びその応答手続を利用して測距・測位する。』ことを目的とした技術として、『無線機1が通信相手である無線機2にパケットを送信したとき、無線機2側はパケット検出時から単位時間の整数倍の時間経過後に必ずパケットを送信する。無線機1は自身がパケットを送信してから無線機2のパケットを検出するまでの時間をカウンタで計測し、無線機2のパケット検出から送信までの時間と無線機1自身の処理時間を計測時間から差し引いた時間を、通信相手である無線機2との伝搬距離に換算して測距を実現する。』というものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、例えば『マルチパス環境において、効率的および高精度に移動体の位置を検出する。』ことを目的とした技術として、『複数の互いに異なったアンテナ位置において送受可能な無線通信手段を含む移動局と、該移動局の備える無線通信手段との間で無線通信する基地局と、上記無線通信手段と基地局との間で往復する複数の無線信号をそれぞれ受信する複数の無線受信装置と、上記複数の無線受信装置により測定された上記受信に関する時刻と、上記それぞれの無線受信装置の位置と、上記基地局の位置とから、上記移動局の位置を検出するサーバとからなる無線位置検出システム。』というものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−258009号公報(要約)
【特許文献2】特開2005−117440号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、電波を利用して無線通信端末間の距離を計測する測距・測位システムを、屋内等、電波を反射する壁面のある環境で利用する場合、無線通信端末間で直接送受信される直接波の他に、反射により電波が回り込んで到達するマルチパスと呼ばれる電波を受信することにより、計測される距離精度が悪くなる、という問題点があった。
【0006】
例えば、電波の到達時間を利用して距離を計測する方法では、直接波が受信できずマルチパスの電波のみを受信してしまうと到達時間が遅延するため、実際の距離より長く計測されてしまう。また、受信電波強度を利用して距離を計測する方法では、直接波およびマルチパスの電波の干渉により、強度を強めたり弱めたりするため、位置によって距離精度が変動してしまう。
【0007】
このようなマルチパスによる影響を低減するための方法として、例えば上記特許文献2の方法では、複数のアンテナを用いることにより、マルチパス特性の異なる信号を受信することで、マルチパスによる影響を平滑化している。
しかしながら、マルチパスの発生しやすい状況では、どのアンテナに対してもマルチパスの影響があり、依然として誤差が大きい、という問題点があった。また、アンテナと送受信手段を複数備えるため、コストが高くなる、という問題点があった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、マルチパスによる影響を低減し、測距精度を向上させることができる無線通信端末、無線測位システム、照明システム、空調システム、及び駐車場管理システムを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における無線通信端末は、無線信号を送受信する機能を有する複数の無線通信端末によって構成され、前記無線信号の送信から当該無線信号の応答を受信するまでの時間に基づいて、前記無線通信端末間の距離を求める無線測距システムにおける無線通信端末であって、所定方向に指向性を有し、前記無線信号を送受信するアンテナを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、所定方向に指向性を有し、無線信号を送受信するアンテナを備えたので、測距誤差の要因となるマルチパスによる電波の受信が起こりにくくなり、測距精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における無線通信端末の構成を示す構成図である。図1において、無線通信端末101は、無線信号を送受信する誘電体アンテナ112と、無線通信手段113とから構成される。誘電体アンテナ112の裏側には、電波を遮蔽する遮蔽部材である金属シート114を備える。
【0012】
誘電体アンテナ112は、その表側、裏側、及び側面側において電波を放射する指向性を有するものである。そして金属シート114によって、誘電体アンテナ112の金属シート114側(裏側)には電波が放射されず、金属シート114のない表側へ電波が放射され、無線通信端末101の誘電体アンテナ112の表側方向の指向性が強まることとなる。尚、金属シート114は、電波を遮蔽するものであれば良く、金属部材に限らず任意の材料を用いることができる。
【0013】
無線通信端末101は無線信号を送受信する機能を有する。そして、複数の無線通信端末101により無線測距システムを構成する。本実施の形態1における無線測距システムは、無線信号の送信から当該無線信号の応答を受信するまでの時間に基づいて無線通信端末101間の距離を求めるものである。
【0014】
図2は実施の形態1における被測距端末の構成を示す構成図である。図2において、測距の対象となる無線通信端末101である被測距端末102においては、無線通信手段113は、無線通信を行う通信手段211と、測距要求信号を送信する測距要求送信手段214と、測距要求信号を送信してから測距応答信号(後述)を受信するまでの時間(以下「応答時間」という。)を計測する応答時間計測手段213と、応答時間に基づいて測距応答信号を送信した測距端末103(後述)と当該被測距端末102との距離を算出する距離算出手段212とを備えるものである。
【0015】
図3は実施の形態1における測距端末の構成を示す構成図である。図3において、測距のための無線信号を送受信する無線通信端末101である測距端末103においては、無線通信手段113は、無線通信を行う通信手段311と、被測距端末102からの測距要求信号に対して測距応答信号を生成して送信する測距応答送信手段312とを備える。
【0016】
図4は実施の形態1における測距動作を示す図解図である。
次に、図4により被測距端末102と測距端末103とによる測距の動作について説明する。
被測距端末102は、測距を開始すると、測距要求送信手段214により測距端末103に対して測距要求信号を送信する(S401)。測距端末103は測距要求信号を受信すると、測距応答送信手段312により送信元の被測距端末102に対して測距応答信号を送信する(S402)。被測距端末102は測距応答信号を受信すると、応答時間計測手段213により測距要求信号の送信から測距応答信号の受信までの時間(応答時間)を取得する(S403)。この応答時間の計測の方法は、例えば測距要求信号の送信時にカウンタによる計時を開始し、測距応答信号の受信時にカウンタによる計時の値を読み取ることなどにより行う。
【0017】
被測距端末102は応答時間を取得すると、距離算出手段212により、測距端末103と当該被測距端末102との間の距離を算出する(S404)。
この距離の算出は、例えば、前記応答時間から、測距端末103および被測距端末102における処理時間を減算し、この減算した値に光の速度を乗算することなどにより得ることができる。
【0018】
尚、測距端末103および被測距端末102における処理時間は、予め校正により求めて被測距端末102で記憶しても良いし、被測距端末102では処理時間を含まないように計時し、測距端末103では測距要求信号の受信から測距応答信号の送信までの処理時間を計時し、計時した処理時間を別途被測距端末102に送信するようにしても良い。
【0019】
以上のように本実施の形態においては、無線信号(電波)の到達時間に基づいて、無線通信端末101間の距離を算出する無線測距システムにおいて、無線通信端末101の誘電体アンテナ112の裏側に金属シート114を備えることにより、誘電体アンテナ112の金属シート114側に放射される電波が低減し、金属シート114のない表側へ電波が放射され、誘電体アンテナ112の指向性が強まるので、送信側の無線通信端末101から放射される電波の反射波の発生が抑えられ、また受信側の無線通信端末101でも反射波の受信が抑えられる。この結果、測距要求信号および測距応答信号の送受信において、マルチパスにより遅延した電波の受信を低減することができ、無線信号の到達時間に基づく測距の精度を向上させることができる。
【0020】
実施の形態2.
本実施の形態2における無線通信端末101は無線測距システムを構成し、無線信号の受信電波強度に基づいて、無線通信端末101間の距離を求めるものである。以下、本実施の形態2について、上記実施の形態1との相違点を中心に説明する。尚、上記実施の形態1と同一部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0021】
図5は実施の形態2における被測距端末の構成を示す構成図である。図5において、本実施の形態2の被測距端末102においては、無線通信手段113は、無線通信を行う通信手段511と、測距端末103から受信した測距信号の受信電波強度を取得する受信電波強度計測手段513と、取得した受信電波強度に基づいて測距信号を送信した測距端末103と当該被測距端末102との距離を算出する距離算出手段512とを備えるものである。
【0022】
図6は実施の形態2における測距端末の構成を示す構成図である。図6において、本実施の形態2の測距端末103においては、無線通信手段113は、無線通信を行う通信手段611と、測距信号を送信する測距信号送信手段612とを備える。
【0023】
本実施の形態2の被測距端末102及び測距端末103においても、上述した実施の形態1と同様に、誘電体アンテナ112の裏側に電波を遮蔽する遮蔽部材である金属シート114を備えている。
【0024】
図7は実施の形態2における測距動作を示す図解図である。
次に、図7により被測距端末102と測距端末103による測距の動作について説明する。
測距端末103は、被測距端末102に対して測距信号を送信する(S701)。被測距端末102は測距信号を受信すると、受信電波強度計測手段513により当該測距信号の受信電波強度を取得する(S702)。
【0025】
受信電波強度を取得すると、距離算出手段512により、取得した受信電波強度に基づいて測距端末103と当該被測距端末102との間の距離を算出する(S703)。
この距離の算出は、無線通信端末間の距離が長くなるにしたがって受信電波強度が低くなるため、予め受信電波強度と距離との対応を求めておき、受信電波強度を距離に変換することなどにより得ることができる。尚、距離の算出方法はこれに限らず、受信電波強度を用いた任意の演算方法により求めることができる。
【0026】
以上のように本実施の形態においては、無線信号の受信電波強度に基づいて、無線通信端末101間の距離を算出する測距システムにおいて、無線通信端末101の誘電体アンテナ112の裏側に金属シート114を備えることにより、誘電体アンテナ112の表側の指向性が強まるので、上記実施の形態1と同様に、測距端末103と被測距端末102との間の送受信において反射波の送受信を抑えることができる。この結果、マルチパスによる干渉の発生を低減することができ、受信電波強度に基づく測距の精度を向上させることができる。
【0027】
実施の形態3.
本実施の形態3における無線通信端末101は無線測距システムを構成し、無線信号の送信から当該無線信号の応答を受信するまでの時間及び無線信号の受信電波強度の少なくとも一方に基づいて、無線通信端末101間の距離を求めるものである。以下、本実施の形態1について、上記実施の形態1及び2との相違点を中心に説明する。尚、上記実施の形態1又は2と同一部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0028】
図8は実施の形態3における被測距端末の構成を示す構成図である。図8において、本実施の形態3の被測距端末102においては、無線通信手段113は、上述した実施の形態1の無線通信手段113の構成に加え、測距端末103から受信した測距応答信号の受信電波強度を取得する受信電波強度計測手段815を備えるものである。
そして本実施の形態3の距離算出手段212は、応答時間及び受信電波強度の少なくとも一方に基づいて、測距応答信号を送信した測距端末103と当該被測距端末102との距離を算出するものである。
【0029】
本実施の形態3における測距端末103の構成は、上記実施の形態1における測距端末103と同様である。
【0030】
図9は実施の形態3における測距動作を示す図解図である。
次に、図9により被測距端末102と測距端末103による測距の動作について説明する。
被測距端末102は、測距を開始すると、測距要求送信手段214により測距端末103に対して測距要求信号を送信する(S901)。測距端末103は測距要求信号を受信すると、測距応答送信手段312により送信元の被測距端末102に対して測距応答信号を送信する(S902)。被測距端末102は測距応答信号を受信すると、応答時間計測手段213により測距要求信号の送信から測距応答信号の受信までの時間(応答時間)を取得する(S903)。この応答時間の計測の方法は、例えば測距要求信号の送信時にカウンタによる計時を開始し、測距応答信号の受信時にカウンタによる計時の値を読み取ることなどにより行う。
そして受信電波強度計測手段815により、測距応答信号の受信電波強度を計測する(S904)。
【0031】
被測距端末102は前記応答時間および前記受信電波強度を取得すると、距離算出手段212により、測距端末103と当該被測距端末102との間の距離を算出する(S905)。
この距離の算出は、例えば実施の形態1で説明した応答時間に基づく算出と、実施の形態2で説明した受信電波強度に基づく算出を組み合わせて算術平均して算出する。また、算術平均ではなく、より短い距離となった方を採用しても良いし、応答時間に基づく算出結果を採用し、両者の結果がある閾値以上異なる場合に、受信電波強度に基づく結果を採用するとしても良い。
【0032】
以上のように本実施の形態においては、電波の到達時間及び受信電波強度の少なくとも一方に基づいて、無線通信端末101間の距離を算出する測距システムにおいて、無線通信端末101の誘電体アンテナ112の裏側に金属シート114を備えることにより、誘電体アンテナ112の表側の指向性が強まるので、上記実施の形態1及び2と同様に、測距端末103と被測距端末102との間の送受信において反射波の送受信を抑えることができる。この結果、マルチパスにより遅延した電波の受信、及びマルチパスによる干渉の発生を低減することができ、電波の到達時間及び受信電波強度の少なくとも一方に基づく測距の精度を向上させることができる。
【0033】
尚、上記実施の形態1〜3においては、誘電体アンテナ112の裏側に金属シート114を備える場合を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、当該無線通信端末101を構成する金属部材上、又は当該無線通信端末101を搭載する機器を構成する金属部材上に、誘電体アンテナ112を配置するようにしても良い。これにより当該金属部材側に放射する電波が遮蔽され、金属部材のない表側へ電波が放射され、誘電体アンテナ112の指向性が強まるので、上記実施の形態1〜3と同様の効果を奏することができる。
【0034】
尚、上記実施の形態1〜3においては、測距端末103及び被測距端末102共に金属シート114を備えたが、これに限らず、例えば近くに反射壁の存在しない開放空間に設置する場合においては、何れか一方の端末については金属シート114を備えない構成としても良い。このような構成としても、開放空間に設置されている端末については反射波の送受信が少ないので、他方の無線通信端末101のアンテナに指向性を備えていれば、両方の無線通信端末101に金属シート114を備えた場合と同様の効果を奏することができる。
【0035】
実施の形態4.
本実施の形態4では、上述した実施の形態1〜3の無線通信端末101を複数備え、測距端末103と被測距端末102との間の距離に基づいて被測距端末102の位置を求める無線測位システムについて説明する。
【0036】
図10は実施の形態4における無線測位システムの構成を示す構成図である。図10において、無線測位システムは、2個以上の測距端末103a〜103cと、1個以上の被測距端末102と、1個以上の位置計算端末104により構成される。測距端末103a〜103c及び被測距端末102は、実施の形態1〜実施の形態3に示す測距端末103および被測距端末102の何れかとする。尚、位置計算端末104は、本発明における位置計算装置に相当する。
【0037】
図11は実施の形態4における位置計算端末の構成を示す構成図である。図11において、被測距端末102の位置を求める無線通信端末101である位置計算端末104は、上述した実施の形態1〜3と同様に、誘電体アンテナ112の裏側に電波を遮蔽する遮蔽部材である金属シート114を備えている。
無線通信手段113は、無線通信を行う通信手段1011と、被測距端末102及び測距端末103間の距離に基づいて、被測距端末102の位置を算出する位置算出手段1012とを備えるものである。この位置算出手段1012には、予め測距端末103a〜103cの位置を特定する情報が設定されている。
【0038】
次に、本実施の形態における無線測位システムの測位動作について説明する。
被測距端末102は、上記実施の形態1〜3の何れかの動作により、各々の測距端末103と当該被測距端末102との間の距離を算出する。そして被測距端末102は、算出した各距離データを位置計算端末104に送信する。
位置計算端末104の位置算出手段1012は、該距離データと、予め設定された測距端末103の位置とを元に、例えば三辺測量などの方法により、被測距端末102の位置を算出する。
【0039】
以上のように本実施の形態においては、上記実施の形態1〜3と同様に、測距端末103a〜103cと被測距端末102との間の送受信において、マルチパスにより遅延した電波の受信、又はマルチパスによる干渉の発生を低減することができ、測距端末103a〜103cと被測距端末102との間の測距精度を向上させることができる。これにより、被測距端末102と測距端末103との間の距離に基づく測位精度を向上させることができる。
【0040】
尚、本実施の形態4では、位置計算端末104を独立した端末として無線測位システムを構成した場合を説明したが、本発明はこれに限らず、位置計算端末104の構成を被測距端末102に内蔵する構成とし、被測距端末102が位置算出手段1012を備え、各々の測距端末103との距離データと、予め設定された測距端末103の位置とを元に、当該被測距端末102の位置を算出しても良い。また、何れかの測距端末103が位置算出手段1012を備え、被測距端末102から各距離データを受信し、被測距端末102の位置を算出しても良い。
【0041】
実施の形態5.
本実施の形態5では、上述した実施の形態1〜3の無線通信端末101を複数備え、測距端末103と被測距端末102との間の距離に基づいて測距端末103の位置を求める無線測位システムについて説明する。以下、本実施の形態5について、上記実施の形態4との相違点を中心に説明する。尚、上記実施の形態と同一部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0042】
図12は実施の形態5における無線測位システムの構成を示す構成図である。図12において、無線測位システムは、2個以上の被測距端末102a〜102cと、1個以上の測距端末103と、1個以上の位置計算端末104により構成される。測距端末103及び被測距端末102a〜102cは、実施の形態1〜実施の形態3に示す測距端末103および被測距端末102の何れかとする。
また、位置計算端末104の構成は上記実施の形態4と同様であるが、本実施の形態5における位置算出手段1012には、予め被測距端末102a〜102cの位置を特定する情報が設定されている。
【0043】
次に、本実施の形態における無線測位システムの動作について説明する。
各々の被測距端末102a〜102cは、上記実施の形態1〜3の何れかの動作により、測距端末103と当該被測距端末102との間の距離を算出する。そして被測距端末102a〜102cは、算出した距離データをそれぞれ位置計算端末104に送信する。
位置計算端末104の位置算出手段1012は、該距離データと、予め設定された被測距端末102の位置とを元に、例えば三辺測量などの方法により、測距端末103の位置を算出する。
【0044】
以上のように本実施の形態においては、上記実施の形態1〜3と同様に、測距端末103と被測距端末102a〜102cとの間の送受信において、マルチパスにより遅延した電波の受信、又はマルチパスによる干渉の発生を低減することができ、測距端末103と被測距端末102a〜102cとの間の測距精度を向上させることができる。これにより、被測距端末102と測距端末103との間の距離に基づく測位精度を向上させることができる。
【0045】
尚、本実施の形態5では、位置計算端末104を独立した端末として無線測位システムを構成した場合を説明したが、本発明はこれに限らず、位置計算端末104の構成を測距端末103に内蔵する構成とし、測距端末103が位置算出手段1012を備え、被測距端末102から距離データを受信し、測距端末103の位置を算出しても良い。また、何れかの被測距端末102が位置算出手段1012を備え、各々の被測距端末102から距離データを受信し、測距端末103の位置を算出しても良い。
【0046】
尚、上記実施の形態4及び5では、位置計算端末104は誘電体アンテナ112の裏側に金属シート114を設ける構成について説明したが、これに限らず、位置計算端末104と被測距端末102との通信ではマルチパスが発生しても測距に影響を及ぼさないため、位置計算端末104には金属シート114を設けない構成としても良い。このような構成としても、上記実施の形態4又は5と同様の効果を奏することができる。
【0047】
尚、上記実施の形態1〜5において、測距端末103及び被測距端末102は、それぞれ、金属シート114により指向性を有する誘電体アンテナ112(以下、単に「アンテナ」という。)の指向性が向かい合うように設置しても良い。つまり、当該無線通信端末101以外の他の無線通信端末101に対する方向が、当該アンテナの指向範囲に含まれるようにしても良い。
例えば、測距するエリアまたは測位の対象とするエリアが予め分かっている場合に、測距端末103のアンテナの指向性をそのエリアに向くように設置し、被測距端末102のアンテナの指向性を、測距端末103に向かうように設置しても良い。また例えば、遮蔽部材である金属シート114を、無線信号を送受信する無線通信端末101に対する方向と逆方向へ放射する電波を遮蔽するように設置しても良い。
このように、アンテナの指向性が向かい合うように設置することにより、指向性を高めたことに伴い通信不能となりやすくなるのを抑えることができるので、計測失敗を減らすことができる。
【0048】
実施の形態6.
本実施の形態6では、無線信号を送受信する機能を有する照明器具と、上述した実施の形態1〜3の無線通信端末101とを備え、照明器具と無線通信端末101との間、及び無線通信端末101間の距離に基づいて、照明器具及び無線通信端末101の位置を求める照明システムについて説明する。
【0049】
尚、本実施の形態では、照明器具が1つの場合を説明するが、これに限らず、複数の照明器具を備え、各照明器具間の距離を算出するようにしても良い。また、照明器具及び無線通信端末101の位置を共に求める場合を説明するが、これに限らず、照明器具又は無線通信端末101の何れか一方のみ位置を求めても良い。
【0050】
図13は実施の形態6における照明システムの構成を示す構成図である。図13において、照明システムは、誘電体アンテナ112と無線通信手段113とを有する照明器具1301と、測距端末103a〜103cと、被測距端末102と、位置計算端末104とから構成される。
【0051】
測距端末103a〜103c、被測距端末102、及び位置計算端末104は、上記実施の形態4で説明したものと同様である。
【0052】
照明器具1301に具備された無線通信手段113は、上記実施の形態1〜3で説明した被測距端末102の無線通信手段113と同様のものである。
また、誘電体アンテナ112は、図13に示すように、照明器具1301の部屋空間側に面した金属部材上(例えば反射板)に設置する。これにより、照明器具1301の金属部材側には誘電体アンテナ112の電波が放射されず、金属部材のない部屋空間側へ電波が放射され、無線通信端末101の誘電体アンテナ112の部屋空間側方向の指向性が強まることとなる。つまり本実施の形態では、上述した金属シート114を設けることなく誘電体アンテナ112の指向性を強めることができる。
尚、照明器具1301に具備された無線通信手段113の設置位置については特に制限しない。
【0053】
次に、本実施の形態における照明システムの測位動作について説明する。
被測距端末102は、上記実施の形態1〜3の何れかの動作により、各々の測距端末103と当該被測距端末102との間の距離を算出し、算出した各距離データを位置計算端末104に送信する。
また、照明器具1301に具備された無線通信手段113は、上記実施の形態1〜3の何れかの動作により、各々の測距端末103と当該照明器具1301との間の距離を算出し、算出した各距離データを位置計算端末104に送信する。
位置計算端末104の位置算出手段1012は、上記実施の形態4と同様に、該距離データと、予め設定された測距端末103の位置とを元に、例えば三辺測量などの方法により、被測距端末102の位置、及び照明器具1301の位置を算出する。
【0054】
以上のように本実施の形態においては、測距端末103と被測距端末102との間、及び照明器具1301と被測距端末102との間の送受信において、上記実施の形態1〜5と同様に、マルチパスにより遅延した電波の受信、又はマルチパスによる干渉の発生を低減することができ、測距端末103と被測距端末102との間、及び照明器具1301と被測距端末102との間の測距精度を向上させることができる。これにより、被測距端末102、及び照明器具1301の測位精度を向上させることができる。
【0055】
また、照明器具1301の金属部材上に誘電体アンテナ112を設置したので、実施の形態1〜5と比較して、金属シート114を裏面に貼り付けることなく、アンテナの指向性を高めることが可能になる。これによりコストの低減を図ることができる。
【0056】
また、本実施の形態のような測位機能を備えた照明システムを用いることにより、複数の照明器具1301を設置した際に、各照明器具1301の位置を検出し、自動的に該位置に応じた識別子や通信アドレスを各照明器具1301に設定したり、GUIなどを用いた表示手段に該照明器具1301の設置位置を表示したりすることができ、設置作業を簡便にすることが可能になる。
【0057】
また、本実施の形態のような測位機能を備えた照明システムを用いることにより、被測距端末102が、照明器具1301からある一定の範囲のエリアに入ったと判断したときに、照明器具1301の照明を点灯させるといった制御を行うことが可能になる。
【0058】
また、本実施の形態のような測位機能を備えた照明システムを用いることにより、例えば照度センサなどのセンサに被測距端末102の機能を備えることにより、照明器具1301は、該センサの位置を検出し、該センサの出力と該センサの検出位置とに基づいて、照明器具1301を制御することが可能になる。また例えば、人が被測距端末102を所持した場合には、人の位置に応じて照明を制御することが可能になる。
このように、センサや人の位置を検出し、その位置に応じて最適に制御することにより、エネルギー消費の低減を図ることができる。
【0059】
尚、本実施の形態6では、照明器具1301を被測距端末102とし、測距端末103および位置計算端末104を独立に設置したが、照明器具1301を測距端末103として他の被測距端末102の位置を算出するようにしても良い。また、照明器具1301が位置計算端末104の機能を兼ね備える構成としても良い。また、実施の形態5に示すように被測距端末102と測距端末103の機能を入れ替えた構成としても同様の効果を得ることができる。
【0060】
また、本実施の形態6では、位置計算端末104により照明器具1301及び被測距端末102の位置を算出する場合を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、位置計算端末104を含まない構成とし、上述した実施の形態1〜3の測距機能により、照明器具1301と被測距端末102との間、又は照明器具1301と測距端末103との間の距離を算出し、この算出距離に応じて、照明器具1301を制御するようにしても良い。例えば当該算出距離が予め設定した距離より短くなったら、照明器具1301を点灯するようにしても良い。
【0061】
実施の形態7.
本実施の形態7では、無線信号を送受信する機能を有する空調機と、上述した実施の形態1〜3の無線通信端末101とを備え、空調機と無線通信端末101との間、及び無線通信端末101間の距離に基づいて、空調機及び無線通信端末101の位置を求める空調システムについて説明する。
【0062】
尚、本実施の形態では、空調機が1つの場合を説明するが、これに限らず、複数の空調機を備え、各空調機間の距離を算出するようにしても良い。また、空調機及び無線通信端末101の位置を共に求める場合を説明するが、これに限らず、空調機又は無線通信端末101の何れか一方のみ位置を求めても良い。
【0063】
図14は実施の形態7における空調システムの構成を示す構成図である。図14において、空調システムは、誘電体アンテナ112と無線通信手段113とを有する空調機1401と、測距端末103a〜103cと、被測距端末102と、位置計算端末104とから構成される。
【0064】
測距端末103a〜103c、被測距端末102、及び位置計算端末104は、上記実施の形態4で説明したものと同様である。
【0065】
空調機1401に具備された無線通信手段113は、上記実施の形態1〜3で説明した被測距端末102の無線通信手段113と同様のものである。
また、誘電体アンテナ112は、図14に示すように、空調機1401の部屋空間側に面した金属部材上に設置する。これにより、空調機1401の金属部材側には誘電体アンテナ112の電波が放射されず、金属部材のない部屋空間側へ電波が放射され、無線通信端末101の誘電体アンテナ112の部屋空間側方向の指向性が強まることとなる。つまり本実施の形態では、上述した金属シート114を設けることなく誘電体アンテナ112の指向性を強めることができる。
尚、空調機1401に具備された無線通信手段113の設置位置については特に制限しない。
【0066】
次に、本実施の形態における空調システムの測位動作について説明する。
被測距端末102は、上記実施の形態1〜3の何れかの動作により、各々の測距端末103と当該被測距端末102との間の距離を算出し、算出した各距離データを位置計算端末104に送信する。
また、空調機1401に具備された無線通信手段113は、上記実施の形態1〜3の何れかの動作により、各々の測距端末103と当該空調機1401との間の距離を算出し、算出した各距離データを位置計算端末104に送信する。
位置計算端末104の位置算出手段1012は、上記実施の形態4と同様に、該距離データと、予め設定された測距端末103の位置とを元に、例えば三辺測量などの方法により、被測距端末102の位置、及び空調機1401の位置を算出する。
【0067】
以上のように本実施の形態においては、測距端末103と被測距端末102との間、及び空調機1401と被測距端末102との間の送受信において、上記実施の形態1〜5と同様に、マルチパスにより遅延した電波の受信、又はマルチパスによる干渉の発生を低減することができ、測距端末103と被測距端末102との間、及び空調機1401と被測距端末102との間の測距精度を向上させることができる。これにより、被測距端末102、及び空調機1401の測位精度を向上させることができる。
【0068】
また、空調機1401の金属部材上に誘電体アンテナ112を設置したので、実施の形態1〜5と比較して、金属シート114を裏面に貼り付けることなく、アンテナの指向性を高めることが可能になる。これによりコストの低減を図ることができる。
【0069】
また、本実施の形態のような測位機能を備えた空調システムを用いることにより、複数の空調機1401を設置した際に、各空調機1401の位置を検出し、自動的に該位置に応じた識別子や通信アドレスを各空調機1401に設定したり、GUIなどを用いた表示手段に該空調機1401の設置位置を表示したりすることができ、設置作業を簡便にすることが可能になる。
【0070】
また、本実施の形態のような測位機能を備えた空調システムを用いることにより、被測距端末102が、空調機1401からある一定の範囲のエリアに入ったと判断したときに、空調を動作させるといった制御を行うことが可能になる。
【0071】
また、本実施の形態のような測位機能を備えた空調システムを用いることにより、例えば温度センサや湿度センサなどのセンサに被測距端末102の機能を備えることにより、空調機1401は、該センサの位置を検出し、該センサの出力と該センサの検出位置とに基づいて、空調機1401の設定温度や風向などを制御することが可能になる。また例えば、人が被測距端末102を所持した場合には、人の位置に応じて空調機1401を制御することが可能になる。
このように、センサや人の位置を検出し、その位置に応じて最適に制御することにより、設備全体のエネルギー消費の低減を図ることができる。
【0072】
尚、本実施の形態7では、空調機1401を被測距端末102とし、測距端末103および位置計算端末104を独立に設置したが、空調機1401を測距端末103として他の被測距端末102の位置を算出するようにしても良い。また、空調機1401が位置計算端末104の機能を兼ね備える構成としても良い。また、実施の形態5に示すように被測距端末102と測距端末103の機能を入れ替えた構成としても同様の効果を得ることができる。
【0073】
また、本実施の形態7では、位置計算端末104により空調機1401及び被測距端末102の位置を算出する場合を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、位置計算端末104を含まない構成とし、上述した実施の形態1〜3の測距機能により、空調機1401と被測距端末102との間、又は空調機1401と測距端末103との間の距離を算出し、この算出距離に応じて、空調機1401を制御するようにしても良い。例えば当該算出距離が予め設定した距離より短くなったら、空調機1401を動作するようにしても良い。
【0074】
実施の形態8.
本実施の形態8では、上述した実施の形態1〜3の無線通信端末101を複数備え、この無線通信端末101のうち、少なくとも1つが車両に搭載され、無線通信端末101間の距離に基づいて、無線通信端末101を搭載した車両の位置を求める駐車場管理システムについて説明する。
【0075】
図15は実施の形態8における駐車場管理システムの構成を示す構成図である。図15において、駐車場管理システムは、被測距端末102が搭載され、位置検知対象となる車両1501と、測距端末103a〜103cと、位置計算端末104とから構成される。尚、図15においては、車両1501を1台のみ図示するが、これに限らず、複数の車両1501を備え、各車両1501の位置を算出するようにしても良い。
【0076】
測距端末103a〜103c、及び位置計算端末104は、上記実施の形態4で説明したものと同様である。
【0077】
車両1501に搭載された被測距端末102は、誘電体アンテナ112と無線通信手段113とを有する。
無線通信手段113は、上記実施の形態1〜3で説明した被測距端末102の無線通信手段113と同様のものである。
また、誘電体アンテナ112は、図15に示すように、車両1501を構成する金属部材上の車外空間側(例えばボンネット、屋根等、上面を向いた金属部など)に設置する。これにより、車両1501の金属部材側には誘電体アンテナ112の電波が放射されず、金属部材のない車外空間側へ電波が放射され、無線通信端末101の誘電体アンテナ112の車外空間側方向の指向性が強まることとなる。つまり本実施の形態では、上述した金属シート114を設けることなく誘電体アンテナ112の指向性を強めることができる。
尚、車両1501に具備された無線通信手段113の設置位置については特に制限しない。
【0078】
さらに測距端末103は、当該駐車場管理システムが位置を求める車両1501と直接波により通信できる位置に設置する。例えば、車両1501が駐車される駐車場内を見渡せる高さに、アンテナ指向性が駐車場内を向くように設置する。
【0079】
次に、本実施の形態における駐車場管理システムの測位動作について説明する。
また、車両1501に具備された無線通信手段113は、上記実施の形態1〜3の何れかの動作により、各々の測距端末103と当該車両1501との間の距離を算出し、算出した各距離データを位置計算端末104に送信する。
位置計算端末104の位置算出手段1012は、上記実施の形態4と同様に、該距離データと、予め設定された測距端末103の位置とを元に、例えば三辺測量などの方法により、車両1501の位置を算出する。
【0080】
以上のように本実施の形態においては、車両1501のボンネット、屋根等、上面を向いた金属部など、車両1501を構成する金属部材上の車外空間側に誘電体アンテナ112を設置したので、車両1501に搭載された被測距端末102と測距端末103との間の送受信において、上記実施の形態1〜5と同様に、マルチパスにより遅延した電波の受信、又はマルチパスによる干渉の発生を低減することができ、被測距端末102と測距端末103との間の測距精度を向上させることができる。これにより、車両1501の測位精度を向上させることができる。
【0081】
また、車両1501の金属部材上に誘電体アンテナ112を設置したので、実施の形態1〜5と比較して、金属シート114を裏面に貼り付けることなく、アンテナの指向性を高めることが可能になる。これによりコストの低減を図ることができる。
【0082】
また、本実施の形態のような測位機能を備えた駐車場管理システムを用いることにより、各車両1501の位置を自動的に検出し、この検出位置に基づいて空き駐車スペースの案内や駐車位置の案内を行うことが可能になる。
【0083】
尚、上記実施の形態6〜8では、無線通信端末101を備えた無線測位システムの応用例を示したが、本発明は上記システムに限るものではなく、同様に、無線通信端末101の設置対象の機器または無線通信手段113を有する機器について、誘電体アンテナ112の裏面が該機器の金属部になるように設置することにより、他の無線測位システムにおいても同様の効果を得ることができる。
【0084】
尚、上記実施の形態1〜8においては、無線通信端末101は、金属シート114又は金属部材により指向性を有する誘電体アンテナ112を備える場合を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、所定方向に指向性を有する任意の種類のアンテナを用いても良い。
【0085】
実施の形態9.
本実施の形態9における無線通信端末101は、上記実施の形態1〜8の構成に加え、指向性アンテナと無指向性アンテナ(後述)とを切り換えて無線信号を送受信するものである。
【0086】
図16は実施の形態9における無線通信端末の構成を示す構成図である。図16において、本実施の形態9の無線通信端末101は、指向性アンテナ1602、無指向性アンテナ1603、指向性アンテナ1602と無指向性アンテナとを切り換えるアンテナ切替スイッチ1604、及び無線通信手段113から構成されている。無線通信手段113は、上述した実施の形態1〜8の何れかに記載の構成(図示省略)に加え、無線通信を行う通信手段1611と、アンテナ切替スイッチ1604を操作するアンテナ切替手段1612とを備える。
【0087】
指向性アンテナ1602は、例えば上記実施の形態1〜8で説明した、金属シート114又は金属部材により指向性を有する誘電体アンテナ112で構成される。尚、指向性アンテナ1602はこれに限らず、所定方向に指向性を有する任意の種類のアンテナを用いることができる。
無指向性アンテナ1603は、少なくとも指向性アンテナ1602より指向範囲が広いアンテナであり、任意の種類のアンテナを用いることができる。
尚、指向性アンテナ1602は、本発明におけるアンテナに相当する。また、アンテナ切替スイッチ1604及びアンテナ切替手段1612は、本発明におけるアンテナ切替手段に相当する。
【0088】
次に本実施の形態における動作について、本実施の形態9における無線通信端末101の構成を、上記実施の形態1の測距システムに適用した場合について説明する。
【0089】
被測距端末102及び測距端末103は、測距を開始する前の状態においては、アンテナ切替手段1612により、アンテナ切替スイッチ1604を無指向性アンテナ1603へ設定する。即ち測距要求信号や測距応答信号などの測距に関する無線信号以外の無線信号を送受信するときは無指向性アンテナ1603により無線信号を送受信する。
【0090】
そして被測距端末102は、測距を開始する際に、すべての無線通信端末101に対し、無指向性アンテナ1603を用いて同報通信を行い、測距状態への移行信号を送信する。測距状態への移行信号を受信した無線通信端末101は、アンテナ切替手段1612により、アンテナ切替スイッチ1604を指向性アンテナ1602へ設定する。また、被測距端末102も、自端末のアンテナ切替手段1612により、アンテナ切替スイッチ1604を指向性アンテナ1602へ設定する。
【0091】
被測距端末102は、測距状態へ移行した後、測距を開始し、測距端末103に対して測距要求信号を指向性アンテナ1602により送信する。測距端末103は指向性アンテナ1602により測距要求信号を受信すると、測距応答信号を指向性アンテナ1602により送信する。被測距端末102は測距応答信号を指向性アンテナ1602により受信すると、測距要求信号の送信から測距応答信号の受信までの時間(応答時間)を取得する。以下、上記実施の形態1と同様に、応答時間に基づいて測距端末103と当該被測距端末102との間の距離を算出する。
このように、前記アンテナ切替手段は、測距要求信号及び測距応答信号などの測距に関する無線信号を送受信するときには指向性アンテナ1602により無線信号を送受信する。
【0092】
そして、被測距端末102及び測距端末103は、測距状態への移行信号を送信又は受信してから十分な時間(測距が完了する十分な時間)が経過した後に、アンテナ切替手段1612により、アンテナ切替スイッチ1604を無指向性アンテナ1603に設定する。
【0093】
以上のように本実施の形態においては、測距に関する無線信号を送受信するときには指向性アンテナ1602により無線信号を送受信し、測距に関する無線信号以外の無線信号を送受信するときは無指向性アンテナ1603により無線信号を送受信することにより、測距以外の通常通信時は無指向性アンテナ1603を利用して、より通信信頼性の高い通信を行い、測距時には指向性アンテナ1602を利用して、マルチパスの影響を抑えた測距精度の高い通信を行うように切り替えることが可能になる。
【0094】
尚、本実施の形態9の測距動作の説明においては、上記実施の形態1の構成及び到達時間に基づく測距動作について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、上記実施の形態1〜8の何れのシステム及び測距若しくは測位動作についても本構成を適用できる。
【0095】
尚、上記説明では、測距状態への移行信号を送信又は受信してから十分な時間が経過した後、無指向性アンテナ1603へ切り替えたが、これに限らず、被測距端末102又は位置計算端末104などから、通常通信への遷移信号または測距完了信号等を送信し、該信号の受信時に無指向性アンテナ1603へ設定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施の形態1における無線通信端末の構成を示す構成図である。
【図2】実施の形態1における被測距端末の構成を示す構成図である。
【図3】実施の形態1における測距端末の構成を示す構成図である。
【図4】実施の形態1における測距動作を示す図解図である。
【図5】実施の形態2における被測距端末の構成を示す構成図である。
【図6】実施の形態2における測距端末の構成を示す構成図である。
【図7】実施の形態2における測距動作を示す図解図である。
【図8】実施の形態3における被測距端末の構成を示す構成図である。
【図9】実施の形態3における測距動作を示す図解図である。
【図10】実施の形態4における無線測位システムの構成を示す構成図である。
【図11】実施の形態4における位置計算端末の構成を示す構成図である。
【図12】実施の形態5における無線測位システムの構成を示す構成図である。
【図13】実施の形態6における照明システムの構成を示す構成図である。
【図14】実施の形態7における空調システムの構成を示す構成図である。
【図15】実施の形態8における駐車場管理システムの構成を示す構成図である。
【図16】実施の形態9における無線通信端末の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0097】
101 無線通信端末、1011 通信手段、1012 位置算出手段、102 被測距端末、102a 被測距端末、102b 被測距端末、102c 被測距端末、103 測距端末、103a 測距端末、103b 測距端末、103c 測距端末、104 位置計算端末、112 誘電体アンテナ、113 無線通信手段、114 金属シート、211 通信手段、212 距離算出手段、213 応答時間計測手段、214 測距要求送信手段、311 通信手段、312 測距応答送信手段、511 通信手段、512 距離算出手段、513 受信電波強度計測手段、611 通信手段、612 測距信号送信手段、815 受信電波強度計測手段、1301 照明器具、1401 空調機、1501 車両、1602 指向性アンテナ、1603 無指向性アンテナ、1604 アンテナ切替スイッチ、1611 通信手段、1612 アンテナ切替手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を送受信する機能を有する複数の無線通信端末によって構成され、前記無線信号の送信から当該無線信号の応答を受信するまでの時間に基づいて、前記無線通信端末間の距離を求める無線測距システムにおける無線通信端末であって、
所定方向に指向性を有し、前記無線信号を送受信するアンテナを備えたことを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
測距要求信号を送信する測距要求送信手段と、
前記測距要求信号の送信から測距応答信号を受信するまでの応答時間を計測する応答時間計測手段と、
前記応答時間に基づいて、前記測距応答信号を送信した無線通信端末と当該無線通信端末との距離を求める距離算出手段と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の無線通信端末。
【請求項3】
測距要求信号を受信したとき、該信号に対する測距応答信号を送信する測距応答送信手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の無線通信端末。
【請求項4】
無線信号を送受信する機能を有する複数の無線通信端末によって構成され、前記無線信号の受信電波強度に基づいて、前記無線通信端末間の距離を求める無線測距システムにおける無線通信端末であって、
所定方向に指向性を有し、前記無線信号を送受信するアンテナを備えたことを特徴とする無線通信端末。
【請求項5】
受信した無線信号の受信電波強度を取得する受信電波強度計測手段と、
前記受信電波強度に基づいて、前記無線信号を送信した無線通信端末と当該無線通信端末との距離を求める距離算出手段と
を備えたことを特徴とする請求項4記載の無線通信端末。
【請求項6】
無線信号を送受信する機能を有する複数の無線通信端末によって構成され、前記無線信号の送信から当該無線信号の応答を受信するまでの時間、及び前記無線信号の受信電波強度の少なくとも一方に基づいて、前記無線通信端末間の距離を求める無線測距システムにおける無線通信端末であって、
所定方向に指向性を有し、前記無線信号を送受信するアンテナを備えたことを特徴とする無線通信端末。
【請求項7】
測距要求信号を送信する測距要求送信手段と、
前記測距要求信号の送信から測距応答信号を受信するまでの応答時間を計測する応答時間計測手段と、
前記測距応答信号の受信電波強度を取得する受信電波強度計測手段と、
前記応答時間及び前記受信電波強度の少なくとも一方に基づいて、前記測距応答信号を送信した無線通信端末と当該無線通信端末との距離を求める距離算出手段と
を備えたことを特徴とする請求項6記載の無線通信端末。
【請求項8】
測距要求信号を受信したとき、該信号に対する測距応答信号を送信する測距応答送信手段を備えたことを特徴とする請求項6記載の無線通信端末。
【請求項9】
前記アンテナは、
前記複数の無線通信端末のうち、当該無線通信端末以外の少なくとも1つの前記無線通信端末に対する方向が、当該アンテナの指向範囲に含まれることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の無線通信端末。
【請求項10】
前記アンテナは、
少なくとも一方向の電波の放射を遮蔽する遮蔽部材を備えたことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の無線通信端末。
【請求項11】
前記遮蔽部材は、
前記無線信号を送受信する無線通信端末に対する方向と逆方向へ放射する電波を遮蔽することを特徴とする請求項10記載の無線通信端末。
【請求項12】
前記アンテナは、
当該無線通信端末を構成する金属部材上、又は当該無線通信端末を搭載する機器を構成する金属部材上に配置され、該金属部材側に放射する電波が遮蔽されることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の無線通信端末。
【請求項13】
無指向性アンテナと、
前記アンテナと前記無指向性アンテナとを切り換えるアンテナ切替手段と
を更に備え、
前記アンテナ切替手段は、
前記無線通信端末間の距離の算出に関する前記無線信号を送受信するとき、前記アンテナに切り換え、
前記無線通信端末間の距離の算出に関する前記無線信号以外の無線信号を送受信するとき、前記無指向性アンテナに切り換えることを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載の無線通信端末。
【請求項14】
請求項1〜13の何れかに記載の無線通信端末を複数備えたことを特徴とする無線測位システム。
【請求項15】
前記無線通信端末間の距離に基づいて、前記複数の無線通信端末のうち、少なくとも1つの無線通信端末の位置を求める位置計算装置を備えたことを特徴とする請求項14記載の無線測位システム。
【請求項16】
前記位置計算装置は、前記無線通信端末に内蔵されることを特徴とする請求項15記載の無線測位システム。
【請求項17】
無線信号を送受信する機能を有する1又は複数の照明器具と、無線信号を送受信する機能を有する1又は複数の無線通信端末とから構成され、前記無線信号の送信から当該無線信号の応答を受信するまでの時間、及び前記無線信号の受信電波強度の少なくとも一方に基づいて、前記照明器具と前記無線通信端末との間、前記照明器具間及び前記無線通信端末間の少なくとも1つの距離を求め、該距離に基づいて前記照明器具及び前記無線通信端末の少なくとも一方の位置を求める照明システムであって、
前記照明器具は、前記無線信号を送受信するアンテナを備え、
該アンテナは、前記照明器具を構成する金属部材上に配置され、該金属部材側に放射する電波が遮蔽されることを特徴とする照明システム。
【請求項18】
無線信号を送受信する機能を有する1又は複数の空調機と、無線信号を送受信する機能を有する1又は複数の無線通信端末とから構成され、前記無線信号の送信から当該無線信号の応答を受信するまでの時間、及び前記無線信号の受信電波強度の少なくとも一方に基づいて、前記空調機と前記無線通信端末との間、前記空調機間及び前記無線通信端末間の少なくとも1つの距離を求め、該距離に基づいて前記空調機及び前記無線通信端末の少なくとも一方の位置を求める空調システムであって、
前記空調機は、前記無線信号を送受信するアンテナを備え、
該アンテナは、前記空調機を構成する金属部材上に配置され、該金属部材側に放射する電波が遮蔽されることを特徴とする空調システム。
【請求項19】
無線信号を送受信する機能を有する無線通信端末を複数備え、該複数の無線通信端末のうち、少なくとも1つが車両に搭載され、前記無線信号の送信から当該無線信号の応答を受信するまでの時間、及び前記無線信号の受信電波強度の少なくとも一方に基づいて、前記無線通信端末間の距離を求め、該距離に基づいて前記無線通信端末を搭載した車両の位置を求める駐車場管理システムであって、
前記車両に搭載された無線通信端末は、前記無線信号を送受信するアンテナを備え、
該アンテナは、当該車両を構成する金属部材上に配置され、該金属部材側に放射する電波が遮蔽されることを特徴とする駐車場管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−253494(P2009−253494A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96835(P2008−96835)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】