説明

無線通信装置、通信レート設定方法及び通信レート設定プログラム

【課題】接続した機器にオーディオデータを送信する際、無線通信装置の高負荷に起因した音飛びを軽減する。
【解決手段】暗号化ストリーミングデータを受信する受信手段と、暗号化ストリーミングデータの復号化することにより所定の符号化方式により符号化されたデータを出力する第1の復号手段と、所定の符号化方式により符号化されたデータを復号化したデータを出力する第2の復号手段と、第2の復号手段から出力されるデータに対して、所定の通信方式の符号化を行って送信する符号化データ送信手段と、無線通信装置自身の処理負荷が、上限閾値を超えた場合、第2の復号手段と符号化データ送信手段の出力レートをデータにおいて指定されている値から低い値に設定し、下限閾値を下回った場合、出力レートをデータにおいて指定されている値に設定する出力レート制御手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続したBluetooth(登録商標)機器等にオーディオデータを送信する際、無線通信装置の高負荷に起因した音飛びを軽減することができる無線通信装置、通信レート設定方法及び通信レート設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、接続したBluetooth(登録商標)機器にオーディオデータを送信する際、無線通信装置の高負荷に起因した音飛びが発生することが知られている。ネットワークを介したストリーミングサービスを実現する場合、無線通信装置の処理性能に見合った通信帯域制御を実施することで、受信データのロストや音飛びを回避するのが一般的である。
【0003】
なお、先行技術として、簡単な処理で通信状態の最適化を図るために、パーソナルコンピュータが、接続数検出部によって検出された通信デバイスの接続数に応じて、AV通信デバイスに出力するAVデータの通信レートが、高音質・標準音質・低音質の3段階のいずれかに自動的に設定される無線通信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。これは、ユーザ側に音質設定の操作負担を与えることなく、AV通信デバイスでの音飛びを抑止することができ、通信レートの設定にあたっては、通信デバイスの接続数を検出しているので、従来のように通信状態を直接監視し、AVデータの送信がなされる度に通信レートの設定を変更する場合に比べて、処理手順の簡単化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−148252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、携帯型の無線通信装置の場合、通話機能の割り込みを想定する必要があるため、通信帯域制御のディレイや処理データ量の予測不能な増加に起因する処理能力限界点への到達を回避する仕組みが必要であるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、接続したBluetooth(登録商標)機器等にオーディオデータを送信する際、無線通信装置の高負荷に起因した音飛びを低減することができる無線通信装置、通信レート設定方法及び通信レート設定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定の通信方式を用いて接続した機器にデータを送信する無線通信装置であって、不可逆圧縮された暗号化ストリーミングデータを受信する受信手段と、前記受信した暗号化ストリーミングデータの復号化することにより所定の符号化方式により符号化されたデータを出力する第1の復号手段と、前記第1の復号手段から出力される所定の符号化方式により符号化されたデータを復号化したデータを出力する第2の復号手段と、前記第2の復号手段から出力される前記データに対して、所定の通信方式の符号化を行って送信する符号化データ送信手段と、前記無線通信装置自身の処理負荷が、予め決められた上限閾値と下限閾値の範囲を超えていないかを監視し、上限閾値を超えた場合、前記第2の復号手段と前記符号化データ送信手段の出力レートを前記データにおいて指定されている値から低い値に設定し、下限閾値を下回った場合、前記第2の復号手段と前記符号化データ送信手段の出力レートを前記データにおいて指定されている値に設定する出力レート制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明は、所定の通信方式を用いて接続した機器にデータを送信するために、不可逆圧縮された暗号化ストリーミングデータを受信する受信手段と、前記受信した暗号化ストリーミングデータの復号化することにより所定の符号化方式により符号化されたデータを出力する第1の復号手段と、前記第1の復号手段から出力される所定の符号化方式により符号化されたデータを復号化したデータを出力する第2の復号手段と、前記第2の復号手段から出力される前記データに対して、所定の通信方式の符号化を行って送信する符号化データ送信手段とを備える無線通信装置における通信レート設定方法であって、前記無線通信装置自身の処理負荷が、予め決められた上限閾値と下限閾値の範囲を超えていないかを監視し、上限閾値を超えた場合、前記第2の復号手段と前記符号化データ送信手段の出力レートを前記データにおいて指定されている値から低い値に設定し、下限閾値を下回った場合、前記第2の復号手段と前記符号化データ送信手段の出力レートを前記データにおいて指定されている値に設定する出力レート制御ステップを有することを特徴とする。
【0009】
本発明は、所定の通信方式を用いて接続した機器にデータを送信するために、不可逆圧縮された暗号化ストリーミングデータを受信する受信手段と、前記受信した暗号化ストリーミングデータの復号化することにより所定の符号化方式により符号化されたデータを出力する第1の復号手段と、前記第1の復号手段から出力される所定の符号化方式により符号化されたデータを復号化したデータを出力する第2の復号手段と、前記第2の復号手段から出力される前記データに対して、所定の通信方式の符号化を行って送信する符号化データ送信手段とを備える無線通信装置上のコンピュータに通信レート設定を行わせる通信レート設定プログラムであって、前記無線通信装置自身の処理負荷が、予め決められた上限閾値と下限閾値の範囲を超えていないかを監視し、上限閾値を超えた場合、前記第2の復号手段と前記符号化データ送信手段の出力レートを前記データにおいて指定されている値から低い値に設定し、下限閾値を下回った場合、前記第2の復号手段と前記符号化データ送信手段の出力レートを前記データにおいて指定されている値に設定する出力レート制御ステップを前記コンピュータに行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オーディオデータ出力において音飛びの頻度を低減することができるともに、着信処理等の割り込み動作をスムーズに処理することができるという効果が得られる。また、これにより、データ送信元であるサーバやデータ受信部に特別な機能を設ける必要がないという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による無線通信装置を説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。図1は、本発明の無線通信装置に搭載されるCPUにおいて実現するソフトウェア機能を示すブロック図である。無線通信装置のCPUにおいては、通信処理を行う通信処理部100とデータ処理を行うデータ処理部200とを備えている。一般的に、ストリーミング機能を有する無線通信装置は、全ての機能を1つのCPU、または通信処理部100、データ処理部200にそれぞれCPUまたはDSPを配した構成が多い。ここでは、全ての機能を1つのCPUで処理するものとして説明する。
【0013】
通信処理部100は、バッファリング部101、通信帯域制御部102、ハンドオーバ制御部103、3G通信部104、Wi−Fi通信部105、Bluetooth(登録商標)通信部106、干渉回避用アービトレーション部107とからなる。これらは、公知の無線通信装置が普通に有する公知の機能・構成であるので、本発明の説明に直接関わりがない限り、その詳細な説明を省略する。
【0014】
データ処理部200は、Transcode部201、Decode部202、Encryption部203及び出力レート制御部204とからなる。Transcode部201は、Bluetooth(登録商標)規格で定められた符号方式(SBC方式)に符号化する。Decode部202は、AAC、MPEG2−AUDIO、MPEG4−AUDIO等の標準化された符号化方式に従って符号化されたデータを復号する。復号されるデータには、復号する際のデータ長、サンプリング周波数が予め指定されている。Encryption部203は、暗号化されたデータを復号する。出力レート制御部204は、無線通信装置内のKERNELが保有するCPU使用量をデコード処理周期(携帯型の無線通信装置では10mSが一般的)ごとに監視し、自身が保有する閾値を超えていないか確認し、Decode部202またはTranscode部201の出力データレートを変更する。
【0015】
ストリーミングデータは暗号化された不可逆圧縮データとして受信するため、データ受信から暗号解除までの間の処理を省くことはできない。オーディオデータのDecode部202によるデコードおよびTranscode部201によるトランスコード後のデータは、非圧縮データであり、圧縮データの処理工程に比べ、非圧縮データ処理工程のCPU使用率が高い傾向となる。
【0016】
出力レート制御部204が、非圧縮データの出力データレートを調整することにより、無線通信装置内の処理負荷を調整して、音飛びが発生する頻度を低減する。出力レート制御部204は、CPU負荷率を監視し、設定された閾値を超えないよう、Decode部202またはTranscode部201の出力レートを逐次変更することで、無線通信装置全体の処理能力限界点を超えないよう調整する。この調整機能により音飛びや着信等の割り込み処理ができない頻度を低減する。
【0017】
次に、データ処理部200の動作を説明する。無線通信装置には、CPU駆動率を参照する機能が内蔵されている。このCPU駆動率を求める方法は、公知の方法を用いるためここでは、詳細な処理動作の説明を省略する。通信処理部100、データ処理部200共にCPUを100%占有している場合、通信処理部100とデータ処理部200とのデータの受け渡し処理が滞ることが要因で、所定の再生時間に十分間に合う時間内に、Encryption部203及びDecode部202の処理が実行できず、Transcode部201において出力データを破棄する必要が生じる。Decode部202の出力形式はデータ内で指定されたデータ長、サンプリング周波数が指定される。データ長は一般的に、8ビット、16ビット、24ビットのいずれかで、サンプリング周波数は、22.05kHz、32kHz、44.1kHz、48kHzのいずれかが指定される。
【0018】
一方、Transcode部201は、8ビット、10ビット、14ビット、16ビット、24ビットのいずれかで、サンプリング周波数を22.05kHz、32kHz、44.1kHz、48kHzのいずれかが指定可能である。Decode部202、Transcode部201共に、入力データ量(データ長にサンプリング周波数を乗算した値に比例する)または出力データ量が多いほど、それぞれの処理に必要なCPU処理量が多くなる。出力制御部204は予め設定されているCPU駆動率の上限閾値と下限閾値を越えていないかを監視し、上限閾値を超えた場合、各処理部出力形式のデータ長またはサンプリング周波数を、データ内で指定された値から下方に、逆に下限値を下回った場合、指定値に近づけるようにデータ長、サンプリング周波数を設定する。
【0019】
例えば、データ長:16ビット、サンプリング周波数44.1kHzの符号化処理を実行中にCPU駆動率上限閾値を上回った場合、データ長8ビット、サンプリング周波数22.05kHzに変更することで、処理するデータ量を減らすように制御する。
【0020】
このように、1秒間に512Kbyteの音楽データを1秒間に256Kbyteしか処理できない装置で再生させようとすると、再生処理が間に合わず、データを破棄する動作が周期的に発生し、このデータ破棄の動作の結果、音飛びが発生する。例えばDecode部202の出力形式を半分のデータレートに設定することで、Decode部202からTranscode部201へのデータ転送量が半分になり、データ転送に要する処理時間も半分になり、CPU負荷を軽減することができるため、データ破棄しなければならない状況が発生することを低減することができる。出力データレートはデータ内に期待するデータレートが設定されるため、一般的には指定された値に固定して扱うが、データレートを下げると、音質が劣化するため、できる限り期待値に設定する必要がある。出力データレートを変化させ、データ破棄の機会を減らすことで、途切れ途切れで音声が聞こえる状況を音質は多少悪くなるが途切れずに聞こえる状態に変えることができる。
【0021】
なお、図1における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより音飛び回避処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0022】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
多機能を1つのCPUで処理する場合に、オーディオデータの音飛びを回避することが不可欠な用途に適用できる。
【符号の説明】
【0024】
100・・・通信処理部、200・・・データ処理部、201・・・Transcode部、202・・・Decode部、203・・・Encryption部、204・・・出力レート制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の通信方式を用いて接続した機器にデータを送信する無線通信装置であって、
不可逆圧縮された暗号化ストリーミングデータを受信する受信手段と、
前記受信した暗号化ストリーミングデータの復号化することにより所定の符号化方式により符号化されたデータを出力する第1の復号手段と、
前記第1の復号手段から出力される所定の符号化方式により符号化されたデータを復号化したデータを出力する第2の復号手段と、
前記第2の復号手段から出力される前記データに対して、所定の通信方式の符号化を行って送信する符号化データ送信手段と、
前記無線通信装置自身の処理負荷が、予め決められた上限閾値と下限閾値の範囲を超えていないかを監視し、上限閾値を超えた場合、前記第2の復号手段と前記符号化データ送信手段の出力レートを前記データにおいて指定されている値から低い値に設定し、下限閾値を下回った場合、前記第2の復号手段と前記符号化データ送信手段の出力レートを前記データにおいて指定されている値に設定する出力レート制御手段と
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
所定の通信方式を用いて接続した機器にデータを送信するために、不可逆圧縮された暗号化ストリーミングデータを受信する受信手段と、前記受信した暗号化ストリーミングデータの復号化することにより所定の符号化方式により符号化されたデータを出力する第1の復号手段と、前記第1の復号手段から出力される所定の符号化方式により符号化されたデータを復号化したデータを出力する第2の復号手段と、前記第2の復号手段から出力される前記データに対して、所定の通信方式の符号化を行って送信する符号化データ送信手段とを備える無線通信装置における通信レート設定方法であって、
前記無線通信装置自身の処理負荷が、予め決められた上限閾値と下限閾値の範囲を超えていないかを監視し、上限閾値を超えた場合、前記第2の復号手段と前記符号化データ送信手段の出力レートを前記データにおいて指定されている値から低い値に設定し、下限閾値を下回った場合、前記第2の復号手段と前記符号化データ送信手段の出力レートを前記データにおいて指定されている値に設定する出力レート制御ステップを有することを特徴とする通信レート設定方法。
【請求項3】
所定の通信方式を用いて接続した機器にデータを送信するために、不可逆圧縮された暗号化ストリーミングデータを受信する受信手段と、前記受信した暗号化ストリーミングデータの復号化することにより所定の符号化方式により符号化されたデータを出力する第1の復号手段と、前記第1の復号手段から出力される所定の符号化方式により符号化されたデータを復号化したデータを出力する第2の復号手段と、前記第2の復号手段から出力される前記データに対して、所定の通信方式の符号化を行って送信する符号化データ送信手段とを備える無線通信装置上のコンピュータに通信レート設定を行わせる通信レート設定プログラムであって、
前記無線通信装置自身の処理負荷が、予め決められた上限閾値と下限閾値の範囲を超えていないかを監視し、上限閾値を超えた場合、前記第2の復号手段と前記符号化データ送信手段の出力レートを前記データにおいて指定されている値から低い値に設定し、下限閾値を下回った場合、前記第2の復号手段と前記符号化データ送信手段の出力レートを前記データにおいて指定されている値に設定する出力レート制御ステップを前記コンピュータに行わせることを特徴とする通信レート設定プログラム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−151678(P2011−151678A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12388(P2010−12388)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】