無線通信装置及び無線通信システム
【課題】複数の通信端末が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて、各通信端末がノイズ源の位置やノイズレベルを特定して、ノイズ源の影響を受けることのないよう通信条件を制御できるようにする。
【解決手段】通信端末6a、6cは、自端末周囲のノイズレベルを測定して、ノイズレベルデータと自端末の位置情報を無線送信すると共に、自端末で測定したノイズレベルデータと位置情報及び他の通信端末から取得したノイズレベルデータと位置情報を用いて、自端末を含む地図領域を複数に分割した分割領域毎にノイズレベルを記述したノイズマップを更新する。そして、そのノイズマップを分析することにより、ノイズ源6b、6dの位置、ノイズレベル、移動方向、速度を特定し、ノイズ源からの影響を受けることのないよう、通信パラメータを制御すると共に、使用者にノイズ源から離れるように指示する。
【解決手段】通信端末6a、6cは、自端末周囲のノイズレベルを測定して、ノイズレベルデータと自端末の位置情報を無線送信すると共に、自端末で測定したノイズレベルデータと位置情報及び他の通信端末から取得したノイズレベルデータと位置情報を用いて、自端末を含む地図領域を複数に分割した分割領域毎にノイズレベルを記述したノイズマップを更新する。そして、そのノイズマップを分析することにより、ノイズ源6b、6dの位置、ノイズレベル、移動方向、速度を特定し、ノイズ源からの影響を受けることのないよう、通信パラメータを制御すると共に、使用者にノイズ源から離れるように指示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通信端末が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて用いられる無線通信装置、及びこの無線通信装置にて構成される無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の通信端末が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う多対多型無線通信システムにおいて、各通信端末が、他システムや隣接チャンネルからの干渉波の影響を受けることなく、良好な無線通信を実行できるようにした無線通信装置が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
この提案の無線通信装置においては、測定手段が、他の複数の通信端末との間で無線通信するのに用いる無線通信チャンネルでのノイズレベルを測定し、送信手段が、その測定されたノイズレベルを、送信データの一部として他の複数の通信端末に送信する。
【0004】
また、受信手段は、他の通信端末からの送信電波を受信すると、その受信信号から受信データを復元し、更に、その復元した受信データに含まれるノイズレベル(つまり、受信データを送信してきた通信端末周囲のノイズレベル)を抽出する。
【0005】
そして、制御手段が、測定手段にて測定された当該無線通信装置周囲のノイズレベルと、受信手段にて抽出された他の複数の通信端末周囲のノイズレベルとに基づき、他の複数の通信端末との間で無線通信を行うための通信パラメータを制御する。
【0006】
従って、上記提案の無線通信装置によれば、当該無線通信装置周囲のノイズレベルと、通信相手となる複数の通信端末周囲のノイズレベルとに基づき、これら複数の通信端末との間でノイズ(つまり干渉波)の影響を受けることなく無線通信を行うのに必要な通信パラメータを設定できることになり、ブロードキャスト型の無線通信システム等、多対多の通信を行う無線通信システムにおいて、各通信端末間での通信品質を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−016561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記提案の無線通信装置によれば、他の通信端末周囲のノイズレベルに基づき通信パラメータを設定するが、通信パラメータを制御することによる通信品質を向上するには限界があり、通信パラメータの制御で得られる通信品質の改善効果よりもノイズレベルが大きい場合には、所望の通信品質を確保することができず。通信端末間で正常な無線通信を実行できないことがある。
【0009】
また、上記特許文献1では、各通信端末が、ノイズレベルに加えて、通信端末の位置を送信することで、他の通信端末との間の距離を検出できるようにし、その距離に応じて通信パラメータを制御することも提案されている。
【0010】
しかし、この提案の技術では、ノイズ源の位置やノイズ源のノイズレベルは検出できないことから、例えば、無線通信装置と他の通信端末との間にノイズ源がある場合、そのノイズ源の影響を受けることのないように通信パラメータを制御することは難しいという問題もある。
【0011】
また、無線通信装置が、自動車等の移動体に搭載される場合や、携帯可能な携帯型の場合、ノイズ源の位置を特定できれば、無線通信装置をノイズ源から離すことで通信品質を向上できるが、上記提案の無線通信装置ではノイズ源の位置を特定することができないので、このような対策をとることもできない。
【0012】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、複数の通信端末が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて、各通信端末がノイズ源の位置やノイズレベルを特定して、ノイズ源の影響を受けることのないよう通信条件を制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の無線通信装置においては、レベル測定手段が、当該無線通信装置が他の通信端末との間で無線通信するのに利用する無線通信チャンネルでの周囲のノイズレベルを測定し、位置検出手段が、無線通信装置の位置を検出する。
【0014】
また、本発明の無線通信装置には、当該無線通信装置を含む所定の地図領域を複数に分割した分割領域毎にノイズレベルを記述したノイズマップを記憶するノイズマップ記憶手段とが備えられている。
【0015】
そして、ノイズマップ更新手段が、レベル測定手段及び位置検出手段を介して得られる当該無線通信装置周囲のノイズ情報に基づき、ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを更新し、制御手段が、ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップに基づき、当該無線通信装置周囲のノイズ源の位置及びノイズレベルを特定して、通信品質がそのノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう通信条件を制御する。
【0016】
従って、請求項1に記載の無線通信装置によれば、当該無線通信装置や周囲のノイズ源の移動に応じてノイズマップを更新しつつ、そのノイズマップから得られる当該無線通信装置と周囲のノイズ源との位置関係及びノイズ源のノイズレベルに基づき、通信条件を制御することができる。
【0017】
よって、本発明の無線通信装置によれば、上述した従来装置に比べ、周囲のノイズにより通信不良が発生する確率を低減することができる。
ここで、制御手段がノイズ源からのノイズの影響を受けることのないように制御する通信条件としては、上述した特許文献1に記載のように、例えば、送信時の送信電力や変調方式、送信データの符号化率、受信時の受信感度やキャリアセンスレベル、等の通信パラメータを用いることができる。
【0018】
しかし、本願発明によれば、ノイズマップ上でノイズ源の位置及びノイズレベルを特定できることから、無線通信装置が、自動車等の移動体に搭載される場合や、携帯可能な携帯型の場合には、無線通信装置の位置や速度、移動方向を、通信条件として制御するようにしてもよい。つまり、無線通信装置がノイズ源から離れるように、無線通信装置の位置や速度、移動方向を制御するのである。
【0019】
また、このように、制御手段により、無線通信装置がノイズ源から離れるように制御する場合、無線通信装置が自動車等の移動体に搭載されていれば、その移動体の走行制御系に制御指令を出力することで、移動体の位置や速度、移動方向を直接制御させることもできるが、例えば、移動体の運転者や携帯型無線通信装置の使用者に対し、ノイズ源から離れるように警報を発する制御を行うだけであってもよい。
【0020】
次に、請求項2に記載の無線通信装置には、更に、レベル測定手段にて測定されたノイズレベル及び位置検出手段にて検出された位置を、当該無線通信装置周囲のノイズ情報として、他の通信端末に無線送信するノイズ情報送信手段と、他の通信端末からの送信電波を受信することにより得られる受信データの中からノイズ情報を抽出するノイズ情報抽出手段と、が備えられている。
【0021】
そして、ノイズマップ更新手段が、ノイズ情報抽出手段にて抽出された他の通信端末周囲のノイズ情報と、レベル測定手段及び位置検出手段を介して得られる当該無線通信装置周囲のノイズ情報とに基づき、ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを更新する。
【0022】
従って、請求項2に記載の無線通信装置においては、当該無線通信装置周囲のノイズ情報(位置及びノイズレベル)だけでなく、他の通信端末周囲のノイズ情報(位置及びノイズレベル)をも利用して、ノイズマップを更新することができ、そのノイズマップから、当該無線通信装置周囲のノイズ源の位置及びノイズレベルをより正確に特定することができるようになる。
【0023】
よって、請求項2に記載の無線通信装置によれば、通信品質がそのノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう、通信条件をより最適に制御することができるようになり、請求項1に記載の無線通信装置に比べ、周囲のノイズにより通信不良が発生する確率をより低減することができる。
【0024】
次に、請求項3に記載の無線通信装置は、上述した請求項1又は請求項2に記載の無線通信装置に、更に、ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを他の通信端末に無線送信するノイズマップ送信手段と、他の通信端末からの送信電波を受信することにより得られる受信データの中から、他の通信端末から送信されてきたノイズマップを抽出するノイズマップ抽出手段とを設け、制御手段が、このノイズマップ抽出手段にて抽出されたノイズマップと、ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップとに基づき、ノイズ源の位置及びノイズレベルを特定するようにしている。
【0025】
従って、この請求項3に記載の無線通信装置によれば、無線通信装置自身が作成したノイズマップだけでなく、他の通信端末が作成したノイズマップをも利用して、ノイズ源の位置及びノイズレベルを特定できることから、無線通信装置周囲に存在するノイズ源をより広範囲に、しかもより正確に検出することができるようになる。
【0026】
よって、無線通信装置が移動体用或いは携帯型である場合、運転者や使用者に対し、ノイズ源が多い地域を避けるように案内することができ、ノイズによる通信不良が発生する確率をより良好に低減することができる。
【0027】
次に、請求項4に記載の無線通信装置は、複数の通信端末と基地局とが共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行い、しかも、各通信端末が、無線通信チャンネルでの周囲のノイズレベル及び通信端末の位置を、通信端末周囲のノイズ情報として無線送信するよう構成された無線通信システムにおいて、基地局として利用される無線通信装置に関する発明である。
【0028】
本発明の無線通信装置には、上記請求項1〜3に記載の無線通信装置と同様、当該無線通信装置を含む所定の地図領域を複数に分割した分割領域毎にノイズレベルを記述したノイズマップを記憶するノイズマップ記憶手段が備えられている。
【0029】
そして、この無線通信装置においては、ノイズ情報抽出手段が、各通信端末からの送信電波を受信することにより得られる受信データの中からノイズ情報を抽出し、ノイズマップ更新手段が、ノイズ情報抽出手段にて抽出されたノイズ情報に基づき、ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを更新し、ノイズマップ送信手段が、ノイズマップ更新手段にて更新されたノイズマップを各通信端末に無線送信する。
【0030】
従って、請求項4に記載の無線通信装置によれば、周囲の通信端末から得られるノイズ情報に基づきノイズマップを生成して、周囲の通信端末に提供することができる。
よって、請求項4に記載の無線通信装置を上記無線通信システムの基地局として利用し、その周囲の通信端末に、上述の制御手段を設けて、基地局から無線送信されてくるノイズマップに基づきノイズ源を特定して通信条件を制御するようにすれば、各通信端末が相互に無線通信を行う際に通信不良が発生する確率を低減することができる。
【0031】
ここで、請求項1〜4に記載の無線通信装置に設けられるノイズマップ更新手段は、レベル測定手段及び位置検出手段を介して得られるノイズ情報、若しくは、他の通信端末から得られるノイズ情報、に基づき、ノイズレベルが測定されたノイズマップ上の分割領域を特定して、その特定した分割領域のノイズレベルを、ノイズ情報から得られるノイズレベルに書き換えるようにしてもよい。
【0032】
しかし、受信信号レベルが、ノイズと無線通信の所望信号とを確実に判別できないほど低レベルである場合、所望信号をノイズだと判断されて、通信条件が誤制御されることも考えられる。
【0033】
このため、ノイズマップ更新手段は、請求項5に記載のように、ノイズ情報を構成するノイズレベルが予め設定されたしきい値以上であるときに、そのノイズ情報に基づきノイズマップを更新するようにするとよい。
【0034】
つまり、このようにすれば、受信信号レベルが、ノイズと無線通信の所望信号とを確実に判別できないほど低レベルである場合に、所望信号をノイズだと判断されることによってノイズマップが不必要に更新されて、制御手段による通信条件の制御が誤って実施されるのを防止できる。
【0035】
また、ノイズマップ更新手段は、請求項6に記載のように、ノイズマップにおいてノイズレベルが更新されない分割領域については、ノイズレベルを時間と共に減少させるようにするとよい。
【0036】
つまり、ノイズマップを更新すべきノイズ情報が得られない場合であっても、ノイズ源からのノイズが零になったとは限らないし、ノイズ源が移動することによってノイズレベルが低下し、ノイズマップを更新すべきノイズ情報が得られないことも考えられる。
【0037】
そこで、請求項6に無線通信装置では、ノイズマップにおいてノイズ情報に基づきノイズレベルが更新されない分割領域については、ノイズレベルを時間と共に減少させることで、各分割領域でのノイズレベルの変化を、より現実的な変化に近似させ、制御手段が、その変化に対応して、より適正にノイズ源の位置及びノイズレベルを特定できるようにしているのである。
【0038】
よって、請求項6に記載の無線通信装置によれば、ノイズマップを、ノイズ源の挙動に対応してより最適に更新することができ、制御手段は、このノイズマップを利用して通信条件をより最適に制御することが可能となる。
【0039】
次に、請求項7に記載の無線通信装置においては、ノイズマップは、当該無線通信装置を含む所定の地図領域内の道路を単位長さ毎に分割して、その分割した道路領域毎にノイズレベルを記憶することにより構成されており、ノイズマップ更新手段は、ノイズ情報に含まれる位置情報に基づき、当該ノイズ情報に対応した道路領域を特定し、その道路領域のノイズレベルを当該ノイズ情報に基づき更新する。
【0040】
従って、この無線通信装置によれば、ノイズ源が道路上に存在するものとして、ノイズマップが生成されることになる。よって、請求項7に記載の無線通信装置は、ノイズマップを利用する通信端末が自動車等の移動体に搭載される無線通信システムに適用すれば、移動体が道路上を走行する際に、移動体に搭載された通信端末が、道路上若しくは他の移動体に設けられたノイズ源からのノイズの影響を受けて、通信不良が発生するのを防止できる。
【0041】
一方、請求項8に記載の発明は、複数の通信端末及び基地局が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行い、基地局が、周囲の通信端末から、無線通信チャンネルでのノイズレベル及び通信端末の位置を表すノイズ情報を取得して、当該基地局周囲の地図領域を複数に分割した分割領域毎にノイズレベルを記述したノイズマップを更新し、そのノイズマップを無線送信するよう構成された無線通信システムにおいて、複数の通信端末として用いられる無線通信装置に関する発明である。
【0042】
そして、本発明の無線通信装置においては、レベル測定手段が、無線通信チャンネルでの周囲のノイズレベルを測定し、位置検出手段が、当該無線通信装置の位置を検出し、ノイズ情報送信手段が、レベル測定手段にて測定されたノイズレベル及び位置検出手段にて検出された位置を、当該無線通信装置周囲のノイズ情報として、基地局に無線送信する。
【0043】
また、基地局からは、ノイズマップが送信されてくるので、制御手段が、そのノイズマップに基づき、当該無線通信装置周囲のノイズ源の位置及びノイズレベルを特定して、そのノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう通信条件を制御する。
【0044】
従って、請求項8に記載の無線通信装置は、上述した請求項4に記載の無線通信装置を基地局とする無線通信システムにおける通信端末として利用するようにすれば、通信端末側でノイズマップを生成することなく、他の通信端末との間で無線通信を行う際に通信不良が発生する確率を低減することができるようになる。
【0045】
なお、請求項1〜3若しくは請求項8に記載の無線通信装置において、制御手段は、請求項9に記載のように、ノイズマップを定期的に監視して、地図領域内でノイズレベルの大きい領域が推移する方向と速度とを検出することで、ノイズ源の位置及びノイズレベルに加えて、ノイズ源の移動状態を特定し、その特定したノイズ源の位置、ノイズレベル及び移動状態に基づき、ノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう通信条件を制御するようにしてもよい。
【0046】
つまり、このようにすれば、例えば、ノイズ源が自動車等の移動体である場合に、そのノイズ源の移動方向を検出して、その後の移動方向を推定しながら、通信条件を制御することができるようになり、ノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう、通信条件を、より適正に制御することが可能となる。
【0047】
次に、請求項10に記載の発明は、複数の通信端末が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う無線通信システムに関する発明であり、複数の通信端末が、請求項1〜3に記載の無線通信装置にて構成されていることを特徴とする。従って、請求項10に記載の無線通信システムによれば、上述した請求項1〜3に記載の無線通信装置と同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、請求項11に記載の無線通信システムは、複数の通信端末と基地局とが共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う無線通信システムに関する発明であり、基地局が、請求項4に記載の無線通信装置にて構成されており、複数の通信端末が、請求項8に記載の無線通信装置にて構成されていることを特徴とする。
【0049】
従って、請求項11に記載の無線通信システムによれば、基地局側でノイズマップを生成して、各通信端末に提供することができるようになり、各通信端末は、ノイズマップを生成することなく、基地局側から提供されるノイズマップを利用して通信条件を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施形態の無線通信システム全体の構成を表す概略構成図である。
【図2】実施形態の無線通信装置(通信端末)の構成を表すブロック図である。
【図3】ノイズレベル測定部の動作を表すフローチャートである。
【図4】制御部にて実行される第1ノイズマップ更新処理を表すフローチャートである。
【図5】変調部の動作を表すフローチャートである。
【図6】復調部の動作を表すフローチャートである。
【図7】制御部にて実行される第2ノイズマップ分析処理を表すフローチャートである。
【図8】制御部にて実行されるノイズマップ分析処理を表すフローチャートである。
【図9】ノイズマップ更新処理にて更新されるノイズマップを表す説明図である。
【図10】ノイズマップ分析処理でノイズマップからノイズ源を分析する手順を説明する説明図である。
【図11】ノイズマップの他の構成例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1に示すように、本実施形態の無線通信システムは、自動車の走行路付近に配置された路側局2(2a,2b,…)と、各路側局2に有線にて接続されて無線通信システム全体を管理するためのセンターサーバ4と、自動車に搭載されて周囲の車両や路側局2との間で無線通信を行う通信端末6(6a,6b,6c,6d,…)とにより構成される。
【0052】
この通信端末6は、本発明(特に請求項1〜3)に記載の無線通信装置に相当し、予め設定された周波数帯の無線通信チャンネルを使って他の通信端末6や路側局2との間で無線通信を行うものであり、図2に示すように、送受信切替部9を介してアンテナ8に接続された送信部10と受信部30とを備える。
【0053】
また、通信端末6には、送信部10の送信電力や受信部30の受信利得等、当該通信端末6が無線通信を行う際の通信パラメータを制御する制御部20、後述のノイズマップが記憶された記憶部22、制御部20から出力されるメッセージを表示するための表示部24、及び、通信端末6(換言すれば通信端末6を搭載した自動車)の位置をGPS受信機等から取得するための位置情報取得部26、が備えられている。なお、制御部20は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを中心に構成されている。
【0054】
ここで、送信部10には、送信データを所定の送信信号に変調する変調部12、変調部12からの送信信号を無線通信チャンネルの周波数帯に周波数変換する周波数変換器14、及び、周波数変換器14にて周波数変換された送信信号を増幅する高周波増幅器16が設けられている。そして、送信部10は、高周波増幅器16にて増幅された送信信号を、送受信切替部9を介してアンテナ8に出力することで、送信信号をアンテナ8から無線送信させる。
【0055】
また、受信部30には、アンテナ8にて受信され、送受信切替部9を介して入力される受信信号を増幅する高周波増幅器32、高周波増幅器32で増幅された受信信号をベースバンドの受信信号に周波数変換する周波数変換器34、周波数変換器34にて周波数変換された受信信号から、他の通信端末6若しくは路側局2が送信してきたデータ(受信データ)を復元する復調部36、及び、周波数変換器34から無線通信チャンネルに対応した受信信号を取り込み、そのノイズレベルを測定するノイズレベル測定部40が設けられている。
【0056】
ノイズレベル測定部40は、通信端末6が無線通信に利用する無線通信チャンネルにおいて、他のシステムや隣接チャネルから受けている干渉電力や熱雑音等の総ノイズレベルを測定するためのものである。
【0057】
このノイズレベルの測定方法としては、従来から各種方法が知られているが、本実施形態では、復調部36が復調処理を行っていないときに、受信信号の信号レベルを常時測定し、その測定値から高周波増幅器32と周波数変換器34の利得を減算することで、ノイズレベルを算出する。
【0058】
このため、ノイズレベル測定部40には、復調部36から、復調処理を行っているか否か(例えば、他の通信端末からの送信信号に含まれるプリアンブルを検出したか否か)を表す信号(後述の復調待機信号)が入力され、制御部20から、高周波増幅器32と周波数変換器34の受信利得を表す信号が入力される。
【0059】
また、ノイズレベル測定部40は、ノイズレベルの時間変動を平滑化する移動平均機能と、外部から読み出されるまで移動平均の結果の最大値をノイズレベルの測定結果として保持しておく最大値保持機能を有する。
【0060】
つまり、ノイズレベル測定部40は、図3のフローチャートに示す手順で、ノイズレベルを算出する。
すなわち、ノイズレベル測定部40は、まず、復調部36から復調処理を実行していないことを表す復調待機信号が入力されたか否かを判断することにより、復調待機信号が入力されるのを待つ(S110)。
【0061】
次に、復調部36から復調待機信号が入力されると(S110−YES)、周波数変換器34から復調部36に出力される受信信号の信号レベル(例えば検波電圧)を取り込み、その信号レベルから高周波増幅器32と周波数変換器34の利得を減算することで、ノイズレベルを算出し(S120)、その算出したノイズレベルを移動平均する(S130)。
【0062】
そして、その移動平均したノイズレベルと、それまでに算出されたノイズレベル(移動平均値)の最大値とを比較し(S140)、今回算出したノイズレベル(移動平均値)が最大値よりも大きい場合(S140−YES)には、今回算出したノイズレベル(移動平均値)を最大値として更新し(S150)、S110に移行する。
【0063】
また、逆に、今回算出したノイズレベル(移動平均値)が最大値以下である場合(S140−NO)には、そのままS210に移行する。
このようにノイズレベル測定部40で算出されるノイズレベル(移動平均値)の最大値は、制御部20にて読み出されるまで保持され、制御部20にて読み出されると、初期値(最小値)に設定され、その後、ノイズレベル測定部40は、新たにノイズレベルの測定を開始する。また、ノイズレベル測定部40にて算出されたノイズレベル(最大値)は、変調部12にも出力される。
【0064】
次に、記憶部22に記憶されるノイズマップは、図9に例示するように、通信端末6自身(以下、自端末ともいう)を含む所定の地図領域を、単位面積(例えば、10m四方程度)毎に、網目状の境界線(図9に点線で示す)にて複数に分割し、その分割領域毎に、その分割領域で発生しているノイズレベルを記述したデータテーブルであり、各分割領域のノイズレベルは、制御部20にて実行される第1ノイズマップ更新処理及び第2ノイズマップ更新処理により更新される。
【0065】
図4は、制御部20にて実行される第1ノイズマップ更新処理を表すフローチャートである。
図4に示すように、第1ノイズマップ更新処理では、まず、S210にて、ノイズレベル測定部40及び位置情報取得部26から、無線チャンネルのノイズレベル(詳しくは上述した最大値)を表すノイズレベルデータと、自端末の位置を表す位置情報とを読み込む。
【0066】
次に、S220では、その読み込んだノイズレベルデータに基づき、無線チャンネルのノイズレベルは予め設定されたしきい値以上であるか否かを判定する。
そして、S220にて、ノイズレベルがしきい値以上であると判定されると、S230に移行し、S210にて読み込んだ位置情報に基づき、ノイズマップ上で自端末が位置する分割領域を特定して、その分割領域のノイズレベルとして、S210にて読み込んだノイズレベルデータを書き込むことにより、ノイズマップを更新する。
【0067】
この結果、例えば、図9において、自端末が通信端末6aであり、その付近にノイズ源となる他車両(通信端末6b)が存在し、自端末のノイズレベル測定部40にて測定されたノイズレベルがしきい値以上である場合には、自端末が位置する分割領域(図9に示す通信端末6a周囲の斜線部分)のノイズレベルとして、ノイズレベル測定部40にて測定されたノイズレベルが記憶されることになる。
【0068】
また、制御部20は、S230にてノイズマップを更新するか、或いは、S220にて自端末周囲のノイズレベルはしきい値以上ではないと判断すると、S240にて、所定時間(T秒:例えば、0.1〜1秒程度)が経過するのを待ち、所定時間(T秒)が経過すると、再度S210に移行する。
【0069】
なお、第1ノイズマップ更新処理では、S230にてノイズマップを更新するに当たって、S220にてノイズレベルがしきい値以上か否かを判断するが、これは、受信電力が小さな所望信号をノイズとして誤認識しないようにするためである。
【0070】
つまり、本実施形態では、しきい値として、復調部36にて所望信号のプリアンブルを確実に検出でき、且つ、無線通信システムに影響を与える電力(例えば、−90dBm)を設定することで、受信電力が小さな所望信号をノイズとして誤認識することのないようにしているのである。
【0071】
従って、ノイズレベル測定部40にて測定されたノイズレベルがしきい値よりも小さな場合には、そのノイズレベルによりノイズマップが更新されることはない。
但し、制御部20は、上述の第1ノイズマップ更新処理や、後述の第2ノイズマップ更新処理にて、ノイズレベルが更新されないノイズマップ上の分割領域については、その分割領域に対し記憶されているノイズレベルを、時間と共に小さくなるように更新する(例えばノイズレベルがしきい値に達するまで1秒あたり3dB減算する)。
【0072】
この結果、通信端末6が存在する密度が低い場合でもノイズ源の位置を短時間(数秒〜十数秒)記憶しておくことができると共に、ノイズ源となる車両が移動している場合など、図10(a)に示すようにノイズ源の位置がA→B→C→D…というように時々刻々と変化する場合にも、図10(b)に示すように、ノイズレベルが高い分割領域(地点)が時間と共にA→B→C→D…と徐々に変化することで追随することができる。
【0073】
次に、制御部20は、上記第1ノイズマップ更新処理とは別に、第2ノイズマップ更新処理を実行することによっても、ノイズマップを更新するが、この第2ノイズマップ更新処理を実行するに当たって、本実施形態の通信端末6では、変調部12が図5のフローチャートに示す手順で動作し、復調部36が図6のフローチャートに示す手順で動作する。
【0074】
すなわち、変調部12においては、図5に示すように、外部から送信データの送信要求が入力されたか否かを判断し(S310)、送信要求が入力されたと判断すると(S310−YES)、ノイズレベル測定部40にて測定されたノイズレベル(上述の最大値)を表すノイズレベルデータと、位置情報取得部26を介して得られる自端末の位置を表す位置情報とを読み出す(S320)。
【0075】
そして、その読み出したノイズレベルデータと位置情報とを、送信データに挿入することで、MACヘッダ、ネットワークヘッダ、ノイズレベルデータ、位置情報、送信データ、FCS(Frame Check Sequence)等からなる送信パケットを生成し、この送信パケットにて搬送波を変調して、周波数変換器14に出力することで、これら各データを無線送信させる(S330)。
【0076】
このため、本実施形態の無線通信システムにおいて、自動車に搭載された各通信端末6(6a,6b,6c,6d,…)からは、ノイズレベルデータと位置情報を含む送信パケットが無線送信されることになる。
【0077】
一方、復調部36においては、周波数変換器34から入力される受信信号に、他の通信端末6(若しくは路側局2)からの送信パケットが含まれているか否かを判断し(S410)、送信パケットが含まれていれば、そのパケットの中からデータを復元する復調処理を実行する(S420)。
【0078】
そして、その復調処理にて復元された復調データの中から、他の通信端末6で得られたノイズレベルデータと位置情報とを抽出し、これら各データを制御部に出力する(S430)。
【0079】
なお、復調部36は、S410にて、受信信号に、他の通信端末6(若しくは路側局2)からの送信パケットが含まれていないと判断された場合には、ノイズレベル測定部40へ復調待機信号を出力する(S440)ことで、ノイズレベル測定部40に、ノイズレベルを測定させる。
【0080】
このように、本実施形態の通信端末6においては、自端末で測定したノイズレベルデータと位置情報とを送信部10を介して他の通信端末6に送信し、受信部30にて他の通信端末6から送信されてきたノイズレベルデータと位置情報とが復元されると、これら各データが制御部20に入力される。
【0081】
そして、制御部20は、図7に示す第2ノイズマップ更新処理を実行することにより、受信部30(詳しくは復調部36)から入力された他の通信端末6のノイズレベルデータ及び位置情報を用いて、ノイズマップを更新する。
【0082】
つまり、図7に示すように、制御部20にて実行される第2ノイズマップ更新処理では、まず、S510にて、受信部30の復調部36にて、他の通信端末6(若しくは路側局2)からの送信パケットが受信されるのを待つ(S510)。
【0083】
そして、受信部30の復調部36にて、他の通信端末6からの送信パケットが受信されると、復調部36から、その送信パケットを復元することにより得られるノイズレベルデータと位置情報が入力されるので、制御部20では、S510にて、受信部30の復調部36にて送信パケットが受信されたと判断すると、他の通信端末6からのノイズレベルデータ及び位置情報が入力されたか否かを判断する(S520)。
【0084】
この判断処理にて、受信部30の復調部36から、他の通信端末6からのノイズレベルデータ及び位置情報が入力されたと判断されると(S520−YES)、その入力されたノイズレベルデータに基づき、このノイズレベルデータを送信してきた他の通信端末6の周囲のノイズレベルは、予め設定されたしきい値以上であるか否かを判定する(S530)。なお、このしきい値は、第1ノイズマップ更新処理におけるS220の判定処理で使用されるしきい値と同じである。
【0085】
そして、他の通信端末6の周囲のノイズレベルは、しきい値以上であると判定すると(S530−YES)、復調部36からノイズレベルデータと共に入力された他の通信端末6の位置情報に基づき、ノイズマップ上で、これら各データを送信してきた他の通信端末6が位置する分割領域を特定し、その分割領域のノイズレベルとして、復調部36から入力されたノイズレベルデータを書き込むことにより、ノイズマップを更新する(S540)。
【0086】
この結果、例えば、図9において、ノイズレベルデータ及び位置情報を自端末6aに送信してきた他の通信端末が通信端末6cであり、その付近にノイズ源となる他車両(通信端末6d)が存在し、他の通信端末6cから送信されてきたノイズレベルがしきい値以上である場合には、他の通信端末6cが位置する分割領域(図9に示す通信端末6c周囲の斜線部分)のノイズレベルとして、ノイズレベル測定部40にて測定されたノイズレベルが記憶されることになる。
【0087】
なお、S540にてノイズマップを更新した場合や、S520にて他の通信端末6からのノイズレベルデータ及び位置情報は入力されていないと判断した場合、或いは、S530にて、他の通信端末6のノイズレベルはしきい値以上ではないと判断された場合には、S510に戻って、受信部30にて他の通信端末6からの送信パケットが受信されるのを待機する。
【0088】
以上説明したように、本実施形態の通信端末6で生成されるノイズマップにおいては、自端末の現在位置や自端末の走行経路に対応する分割領域だけでなく、他の通信端末6の現在位置や他の通信端末6の走行経路に対応する分割領域にも、最新のノイズレベル若しくは時間と共に減少されるノイズレベルが記憶されることになる。
【0089】
従って、このように更新されるノイズマップを利用すれば、制御部20は、自端末周囲のノイズ源の位置を把握することができる。また、このノイズマップは、第1ノイズマップ更新処理により定期的に更新され、また、第2ノイズマップ更新処理の動作によって他の通信端末6からのデータ受信時にも更新されることから、制御部20は、このノイズマップの経時変化を監視することにより、ノイズ源の移動方向や移動速度を把握することもできる。
【0090】
そこで、本実施形態の通信端末6は、制御部20において、単に記憶部22内のノイズマップを更新するだけではなく、その更新された最新のノイズマップを分析することにより、ノイズ源の位置やそのノイズレベル、ノイズ源の移動方向や移動速度、等を検出し、自端末がノイズ源からのノイズの影響を受けることなく無線通信できるように、送信電力や受信利得等の通信パラメータを制御し、しかも、車両運転者に対し自端末(つまり自動車)がノイズ源から離れるように案内する、ノイズマップ分析処理を実行するようにされている。
【0091】
図8は、このノイズマップ分析処理を表すフローチャートである。
図8に示すように、ノイズマップ分析処理では、まずS610にて、記憶部22に記憶されたノイズマップから各分割領域のノイズレベルを読み出し、ノイズレベルが極大点となる分割領域を、ノイズ源として検出する。
【0092】
そして、続くS620では、ノイズマップの更新毎に記憶部22に記憶されるノイズレベルの時系列データから、ノイズマップ上でノイズレベルの大きい範囲が推移する方向とその速度を分析することにより、S610にて検出したノイズ源がどのように移動しているかを検出し、その検出結果(ノイズ源の位置、ノイズレベル、移動方向、速度)を、ノイズ源の識別情報(ID)と共に記憶部22に記憶する。
【0093】
ここで、図10(c)に示すように、ノイズマップ上で連続する分割領域A〜Jに対し、ノイズレベルが記憶されている場合、S610では、分割領域毎に、隣接する分割領域とノイズレベルを比較することで、隣接する分割領域のノイズレベルよりもノイズレベルが高い分割領域(図10(c)では、分割領域CとG)を、ノイズ源として検出する。
【0094】
また、図10(a)に示すようにノイズ源の位置がA→B→C→D…と変化する場合、ノイズ源周囲に通信端末6を搭載した自動車が存在すれば、ノイズ源から離れた通信端末6であっても、S610の処理によって、その自動車の通信端末6からの送信データ(ノイズレベルデータ及び位置情報)に基づいてノイズ源の位置を正確に検出できる。
【0095】
つまり、この場合、ノイズマップ上の分割領域である地点A〜Dのノイズレベルは、図10(b)に示すように変化することから、ノイズ源の移動に応じて、ノイズ源の位置をA→B→C→D…と検出することができる。
【0096】
しかし、ノイズ源が地点Cの分割領域を通過する際、地点Cの分割領域内にノイズレベルを送信可能な通信端末6が存在しなければ、図10(b)に示す地点Cのノイズレベルが得られない。従って、この場合、S610の処理では、ノイズ源が地点Cの分割領域を通過するときに、ノイズ源は、地点B若しくは地点Dの分割領域にいると誤検出されてしまうことになる。
【0097】
これに対し、本実施形態では、S620にて、ノイズレベルの時系列データからノイズ源の挙動を分析してノイズ源がどのように移動しているかを推定することができるので、ノイズ源が地点Cを通過する際に、地点Cにノイズレベルデータを送信可能な通信端末6が存在しない(或いは通信端末6がノイズ源からのノイズの影響を受けてノイズレベルデータを送信できない)場合であっても、S610にて検出したノイズ源の位置を補正し、最終的に得られる検出結果(ノイズ源の位置、ノイズレベル、移動方向、速度)を、実際のノイズ源の挙動に対応させることができる。
【0098】
つまり、本実施形態では、一度検出して記憶部22に記憶したノイズ源の位置については、新たなノイズレベルデータの取得がなくても、その移動方向と速度とからノイズ源の位置を更新し続けることができる。
【0099】
次に、S620にて、ノイズマップの分析がなされ、ノイズ源の位置、ノイズレベル、移動方向、及び、速度が特定されると、S630に移行して、自端末近傍で自端末と同一方向に移動するノイズ源が存在するか否かを判断する。
【0100】
そして、S630にて、自端末近傍で自端末と同一方向に移動するノイズ源が存在すると判断されると、S640に移行して、表示部24に、運転者に対し自端末をノイズ源から離れるように指示するメッセージ、例えば、「車間距離を空けましょう」というようなメッセージ、を表示部24に表示する。
【0101】
一方、S630にて、自端末近傍で自端末と同一方向に移動するノイズ源は存在しないと判断されるか、或いは、S640にて、表示部24にメッセージを表示すると、S650に移行する。
【0102】
そして、S650では、記憶部22に記憶されているノイズ源の検出結果から、通信対象となる他の通信端末6と自端末との間、及び、これら各部の近傍に位置するノイズ源を検出し、そのノイズ源のノイズレベルに基づき、通信パラメータを制御する。
【0103】
また、S650にて、通信パラメータを制御すると、S660に移行して、上述したS40と同様、所定時間(T秒)が経過するのを待ち、所定時間(T秒)が経過すると、再度S610に移行する。
【0104】
従って、このノイズマップ分析処理は、第1ノイズマップ更新処理と同様、制御部20において定期的に実行されることになる。
なお、650において実行される通信パラメータの制御は、ノイズ源のノイズレベル及び位置に応じて、送信時の送信電力、送信データの変調パラメータ(変調方式、符号化率等)、復調部36でのキャリアセンスレベル(CSレベル)、高周波増幅器32の増幅率(受信利得)等を制御することにより実行されるが、この通信パラメータの制御については、上述した特許文献1に記載されているので、詳細な説明は省略する。
【0105】
以上説明したように、本実施形態の通信端末6によれば、周囲のノイズレベルを測定して、その測定結果(ノイズレベルデータ)と自端末の位置情報とを他の通信端末6に無線送信すると共に、自端末で測定したノイズレベルデータと位置情報、及び、他の通信端末6から取得したノイズレベルデータと位置情報を用いて、記憶部22に記憶されたノイズマップを更新する。
【0106】
そして、そのノイズマップを分析することにより、ノイズ源の位置、ノイズレベル、移動方向、速度を特定し、そのノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう通信パラメータを制御すると共に、運転者に対し、そのノイズ源から離れるように案内する。
【0107】
従って、本実施形態の無線通信システムによれば、各通信端末6が、ノイズ源から影響を受けるノイズレベルだけでなく、ノイズ源の位置や挙動(移動方向、速度)に応じて、通信条件(通信パラメータや自端末の位置)を制御することができるようになり、特許文献1に記載の無線通信システムに比べ、周囲のノイズにより通信不良が発生するのを抑制することができる。
【0108】
つまり、例えば、図1に示すように、通信端末6a、6cの付近にノイズ源となる通信端末6b、6dが存在している状態で、通信端末6a、6c間で無線通信を行う場合、通信パラメータの制御だけでは、各通信端末6a、6cが通信端末6b、6dからのノイズの影響を受けて、通信不可能となることが考えられる。
【0109】
しかし、本実施形態では、各通信端末6a、6cがノイズ源からのノイズの影響を受けている場合(つまり自端末周囲のノイズレベルが高い場合)には、各通信端末6a、6cに設けられた制御部20が、自端末を搭載した自動車の運転者に対し、そのノイズ源から遠ざかるように案内するので、通信不良が発生する確率を低減できる。
【0110】
なお、本実施形態においては、受信部30に設けられたノイズレベル測定部40が、本発明のレベル測定手段に相当し、位置情報取得部26が、本発明の位置検出手段に相当し、送信部10の変調部12が、本発明のノイズ情報送信手段に相当し、受信部30の復調部36が、本発明のノイズ情報抽出手段に相当し、制御部20に接続された記憶部22が、本発明のノイズマップ記憶手段に相当する。
【0111】
また、制御部20にて実行される第1ノイズマップ更新処理及び第2ノイズマップ更新処理は、本発明のノイズマップ更新手段に相当し、制御部20にて実行されるノイズマップ分析処理は、本発明の制御手段に相当する。
【0112】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて種々の態様をとることができる。
(変形例1)
例えば、上記実施形態では、制御部20は、通信端末6をノイズ源から離すために、表示部24に、運転者に対するメッセージを表示するものとして説明したが、例えば、通信端末6を搭載した自動車にナビゲーションシステムが搭載されている場合には、そのナビゲーションシステムを利用して、車両がノイズ源から離れるように走行路を誘導するようにしてもよい。
【0113】
また、通信端末6をノイズ源から離すための案内は、メッセージや走行経路を表示するのではなく、音声若しくは警報音を発生することにより行うようにしてもよく、表示と音による案内を組み合わせてもよい。
【0114】
また、通信端末6が搭載される自動車に、駆動系若しくは制動系を制御する電子制御装置(ECU)が搭載されている場合、制御部20は、そのECUに対し制動指令或いは加速指令を行うことで、自動車の走行速度を緩やかに変化させ、通信端末6を、自端末と同方向に移動するノイズ源から自動で遠ざけるように構成してもよい。
(変形例2)
また、上記実施形態では、自端末を含む所定の地図領域を複数の分割領域に区切ってノイズマップを作成するものとして説明したが、無線通信システムが上記実施形態と同じ自動車用の無線通信システムの場合には、例えば、図11に示すように、所定の地図領域内の道路(具体的には地図データを構成している道路ベクトルデータ)を単位長さ(例えば10m程度)に区切ってノイズマップを作成し、そのノイズマップの道路領域毎に、ノイズレベルを記憶するようにしてもよい。
【0115】
なお、この場合、ノイズレベルを記憶する道路領域(換言すれば道路ベクトルデータ)は、そのノイズレベルに対応した位置情報に基づき選択することになるが、この選択には、従来からナビゲーションシステムで行われているマップマッチングの技術を用いることができる。
(変形例3)
また次に、上記実施形態では、ノイズマップ分析処理において、ノイズマップを分析することにより、ノイズ源の位置、ノイズレベル、移動方向、及び速度を検出し、その検出結果に基づき、通信条件を制御するものとして説明したが、例えば、車車間通信による衝突回避システムのように、ノイズマップを地図データや道路ベクトルデータと関連づけることにより、通信すべき相手の位置を過去の事故類型から予測し、その予測した相手の位置にノイズ源があるかどうかを判断して、そのノイズ源の影響を受けることのないよう通信条件(この場合、通信パラメータ)を制御するようにしてもよい。
【0116】
そして、このようにすれば、各通信端末6は、自端末と実際に通信可能な通信端末だけでなく、ノイズ源からのノイズの影響を受けて、自端末と直接通信ができない通信装置が存在する場合であっても、通信パラメータ等の制御によって、その通信装置との間の通信品質を改善し、衝突回避等の安全性を向上することができる。
(変形例4)
一方、上記実施形態では、ノイズマップは、無線通信システムを構成する通信端末6が個々に更新するものとして説明したが、制御部20が、第2ノイズマップ更新処理にてノイズマップを更新する際には、他の通信端末6から取得したノイズレベルデータ及び位置情報だけでなく、他の通信端末6にて生成されたノイズマップを用いるようにしてもよい。
【0117】
そして、このようにすれば、各通信端末6は、自端末で生成したノイズマップを、他の通信端末6にて生成されたノイズマップを用いて補間することができることになり、そのノイズマップから、ノイズ源をより広範囲に、しかもより正確に検出することができるようになる。
【0118】
なお、このためには、変調部12が、図5に示す手順で自端末のノイズレベルデータ及び位置情報を含む送信パケットを生成する際に、本発明(請求項3)のノイズマップ送信手段として機能して、送信パケットに記憶部22に記憶されたノイズマップを含めるようにし、復調部36が、図6に示す手順で他の通信端末6から送信されたノイズレベルデータ及び位置情報を抽出する際に、本発明(請求項3)のノイズマップ抽出手段として機能して、復調データからノイズマップも抽出し、これら各データを制御部20に入力するようにすればよい。
(変形例5)
また、上記実施形態や変形例4では、各通信端末6から送信されたノイズレベルデータ及び位置情報やノイズマップは、他の通信端末6が受信して、自端末でノイズマップを更新するのに用いるものとして説明したが、各通信端末6から送信されたノイズレベルデータ、位置情報、ノイズマップ等の情報は、路側局2(2a、2b、…)が一旦受信して、周囲の通信端末6に再送信するようにしてもよい。
【0119】
また、この場合、路側局2が各通信端末6から取得したノイズレベルデータ、位置情報、ノイズマップ等の情報は、センターサーバ4を経由して、他の路側局2にも伝送し、他の路側局2からも再送信させるようにしてもよい。
【0120】
そして、このようにすれば、一つの通信端末6にて得られるノイズレベルデータ及び位置情報や、ノイズマップ等の情報が、より広範囲にわたって他の通信端末6に伝達されることになり、各通信端末6で生成されるノイズマップの範囲を広くし、しかも、ノイズマップの精度を向上することができる。
(変形例6)
また次に、ノイズマップは、無線通信システムを構成する通信端末6が生成するのではなく、各通信端末6と無線通信が可能な路側局2、若しくは、路側局2に接続されたセンターサーバ4にて生成し、各通信端末6は、路側局2から、その生成されたノイズマップを取得し、通信条件を制御するようにしてもよい。
【0121】
そして、この場合、各通信端末6では、変調部12が、図5に示す手順にて自端末で得られるノイズレベルデータと位置情報とを送信し、復調部36が、図6に記載のものと略同様の手順にて路側局2からの送信データに含まれるノイズマップを抽出して制御部20へ出力し、制御部20が、そのノイズマップを記憶部22に格納して、図8に示すノイズマップ分析処理をするようにすればよい。
【0122】
従って、各通信端末6において、制御部20は、第1ノイズマップ更新処理及び第2ノイズマップ更新処理を実行する必要がないので、制御部20を構成するマイクロコンピュータの処理負荷を軽減することができ、延いては、各通信端末6のコストを上記実施形態に記載のものよりも低減することができる。
【0123】
なお、各通信端末6の基地局となる路側局2は、図2に示した通信端末6の構成から、表示部24や位置情報取得部26を削除し、制御部20にセンターサーバ4を接続した構成となる。
【0124】
このため、本変形例6を実現する際には、路側局2内の復調部を、本発明(請求項4)のノイズ情報抽出手段として機能させ、路側局2内の変調部を、本発明(請求項4)のノイズマップ送信手段として機能させ、路側局2内の記憶部を、本発明(請求項4)のノイズマップ記憶手段として機能させ、路側局2内の制御部若しくはセンターサーバ4において、図7に示す第2ノイズマップ更新処理を実行することで、本発明(請求項4)のノイズマップ更新手段としての機能を実現するようにすればよい。
(変形例7)
また更に、上記実施形態及び各変形例では、無線通信システムを構成する複数の通信端末6は、全て移動体に搭載されるものとして説明したが、通信端末6は、住宅や会社等の特定の場所に固定される固定局であってもよい。
【0125】
そして、通信端末6が固定局の場合、通信端末6をノイズ源から離すことはできないものの、通信端末6を上記同様に構成すれば、ノイズ源の位置、ノイズレベル、挙動(移動方向、速度)を特定できるので、ノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう、通信パラメータを制御して、通信品質を確保することはできる。
【0126】
また、この場合、路側局4等の基地局や他の通信端末6を中継局として利用し、その中継局を介して所望の通信端末6と通信を行うようにすることで、通信条件として、通信経路を変更させることもできる。
(変形例8)
また、上記実施形態では、移動体に搭載される複数の通信端末6は、それぞれ、自端末のノイズ情報を他の通信端末6に送信することにより、自端末のノイズ情報と他の通信端末6から得られるノイズ情報とに基づきノイズマップを更新するものとして説明したが、各通信端末6は、自端末のノイズ情報を他の通信端末6に送信することなく、自端末のノイズ情報だけでノイズマップを更新するようにしてもよい。
【0127】
つまり、このようにしても、ノイズマップは、通信端末6自身の位置変化(移動)に応じて適宜更新されることになり、例えば、自端末を搭載した車両とともにノイズ源が移動しているような場合には、ノイズマップからその旨を検出して、自端末を搭載した車両がノイズ源から離れるように案内することができる。
【符号の説明】
【0128】
2(2a,2b)…路側局、4…センターサーバ、6(6a,6b,6c,6d)…通信端末、8…アンテナ、9…送受信切替部、10…送信部、12…変調部、14…周波数変換器、16…高周波増幅器、20…制御部、22…記憶部、24…表示部、26…位置情報取得部、30…受信部、32…高周波増幅器、34…周波数変換器、36…復調部、40…ノイズレベル測定部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通信端末が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて用いられる無線通信装置、及びこの無線通信装置にて構成される無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の通信端末が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う多対多型無線通信システムにおいて、各通信端末が、他システムや隣接チャンネルからの干渉波の影響を受けることなく、良好な無線通信を実行できるようにした無線通信装置が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
この提案の無線通信装置においては、測定手段が、他の複数の通信端末との間で無線通信するのに用いる無線通信チャンネルでのノイズレベルを測定し、送信手段が、その測定されたノイズレベルを、送信データの一部として他の複数の通信端末に送信する。
【0004】
また、受信手段は、他の通信端末からの送信電波を受信すると、その受信信号から受信データを復元し、更に、その復元した受信データに含まれるノイズレベル(つまり、受信データを送信してきた通信端末周囲のノイズレベル)を抽出する。
【0005】
そして、制御手段が、測定手段にて測定された当該無線通信装置周囲のノイズレベルと、受信手段にて抽出された他の複数の通信端末周囲のノイズレベルとに基づき、他の複数の通信端末との間で無線通信を行うための通信パラメータを制御する。
【0006】
従って、上記提案の無線通信装置によれば、当該無線通信装置周囲のノイズレベルと、通信相手となる複数の通信端末周囲のノイズレベルとに基づき、これら複数の通信端末との間でノイズ(つまり干渉波)の影響を受けることなく無線通信を行うのに必要な通信パラメータを設定できることになり、ブロードキャスト型の無線通信システム等、多対多の通信を行う無線通信システムにおいて、各通信端末間での通信品質を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−016561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記提案の無線通信装置によれば、他の通信端末周囲のノイズレベルに基づき通信パラメータを設定するが、通信パラメータを制御することによる通信品質を向上するには限界があり、通信パラメータの制御で得られる通信品質の改善効果よりもノイズレベルが大きい場合には、所望の通信品質を確保することができず。通信端末間で正常な無線通信を実行できないことがある。
【0009】
また、上記特許文献1では、各通信端末が、ノイズレベルに加えて、通信端末の位置を送信することで、他の通信端末との間の距離を検出できるようにし、その距離に応じて通信パラメータを制御することも提案されている。
【0010】
しかし、この提案の技術では、ノイズ源の位置やノイズ源のノイズレベルは検出できないことから、例えば、無線通信装置と他の通信端末との間にノイズ源がある場合、そのノイズ源の影響を受けることのないように通信パラメータを制御することは難しいという問題もある。
【0011】
また、無線通信装置が、自動車等の移動体に搭載される場合や、携帯可能な携帯型の場合、ノイズ源の位置を特定できれば、無線通信装置をノイズ源から離すことで通信品質を向上できるが、上記提案の無線通信装置ではノイズ源の位置を特定することができないので、このような対策をとることもできない。
【0012】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、複数の通信端末が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて、各通信端末がノイズ源の位置やノイズレベルを特定して、ノイズ源の影響を受けることのないよう通信条件を制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の無線通信装置においては、レベル測定手段が、当該無線通信装置が他の通信端末との間で無線通信するのに利用する無線通信チャンネルでの周囲のノイズレベルを測定し、位置検出手段が、無線通信装置の位置を検出する。
【0014】
また、本発明の無線通信装置には、当該無線通信装置を含む所定の地図領域を複数に分割した分割領域毎にノイズレベルを記述したノイズマップを記憶するノイズマップ記憶手段とが備えられている。
【0015】
そして、ノイズマップ更新手段が、レベル測定手段及び位置検出手段を介して得られる当該無線通信装置周囲のノイズ情報に基づき、ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを更新し、制御手段が、ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップに基づき、当該無線通信装置周囲のノイズ源の位置及びノイズレベルを特定して、通信品質がそのノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう通信条件を制御する。
【0016】
従って、請求項1に記載の無線通信装置によれば、当該無線通信装置や周囲のノイズ源の移動に応じてノイズマップを更新しつつ、そのノイズマップから得られる当該無線通信装置と周囲のノイズ源との位置関係及びノイズ源のノイズレベルに基づき、通信条件を制御することができる。
【0017】
よって、本発明の無線通信装置によれば、上述した従来装置に比べ、周囲のノイズにより通信不良が発生する確率を低減することができる。
ここで、制御手段がノイズ源からのノイズの影響を受けることのないように制御する通信条件としては、上述した特許文献1に記載のように、例えば、送信時の送信電力や変調方式、送信データの符号化率、受信時の受信感度やキャリアセンスレベル、等の通信パラメータを用いることができる。
【0018】
しかし、本願発明によれば、ノイズマップ上でノイズ源の位置及びノイズレベルを特定できることから、無線通信装置が、自動車等の移動体に搭載される場合や、携帯可能な携帯型の場合には、無線通信装置の位置や速度、移動方向を、通信条件として制御するようにしてもよい。つまり、無線通信装置がノイズ源から離れるように、無線通信装置の位置や速度、移動方向を制御するのである。
【0019】
また、このように、制御手段により、無線通信装置がノイズ源から離れるように制御する場合、無線通信装置が自動車等の移動体に搭載されていれば、その移動体の走行制御系に制御指令を出力することで、移動体の位置や速度、移動方向を直接制御させることもできるが、例えば、移動体の運転者や携帯型無線通信装置の使用者に対し、ノイズ源から離れるように警報を発する制御を行うだけであってもよい。
【0020】
次に、請求項2に記載の無線通信装置には、更に、レベル測定手段にて測定されたノイズレベル及び位置検出手段にて検出された位置を、当該無線通信装置周囲のノイズ情報として、他の通信端末に無線送信するノイズ情報送信手段と、他の通信端末からの送信電波を受信することにより得られる受信データの中からノイズ情報を抽出するノイズ情報抽出手段と、が備えられている。
【0021】
そして、ノイズマップ更新手段が、ノイズ情報抽出手段にて抽出された他の通信端末周囲のノイズ情報と、レベル測定手段及び位置検出手段を介して得られる当該無線通信装置周囲のノイズ情報とに基づき、ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを更新する。
【0022】
従って、請求項2に記載の無線通信装置においては、当該無線通信装置周囲のノイズ情報(位置及びノイズレベル)だけでなく、他の通信端末周囲のノイズ情報(位置及びノイズレベル)をも利用して、ノイズマップを更新することができ、そのノイズマップから、当該無線通信装置周囲のノイズ源の位置及びノイズレベルをより正確に特定することができるようになる。
【0023】
よって、請求項2に記載の無線通信装置によれば、通信品質がそのノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう、通信条件をより最適に制御することができるようになり、請求項1に記載の無線通信装置に比べ、周囲のノイズにより通信不良が発生する確率をより低減することができる。
【0024】
次に、請求項3に記載の無線通信装置は、上述した請求項1又は請求項2に記載の無線通信装置に、更に、ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを他の通信端末に無線送信するノイズマップ送信手段と、他の通信端末からの送信電波を受信することにより得られる受信データの中から、他の通信端末から送信されてきたノイズマップを抽出するノイズマップ抽出手段とを設け、制御手段が、このノイズマップ抽出手段にて抽出されたノイズマップと、ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップとに基づき、ノイズ源の位置及びノイズレベルを特定するようにしている。
【0025】
従って、この請求項3に記載の無線通信装置によれば、無線通信装置自身が作成したノイズマップだけでなく、他の通信端末が作成したノイズマップをも利用して、ノイズ源の位置及びノイズレベルを特定できることから、無線通信装置周囲に存在するノイズ源をより広範囲に、しかもより正確に検出することができるようになる。
【0026】
よって、無線通信装置が移動体用或いは携帯型である場合、運転者や使用者に対し、ノイズ源が多い地域を避けるように案内することができ、ノイズによる通信不良が発生する確率をより良好に低減することができる。
【0027】
次に、請求項4に記載の無線通信装置は、複数の通信端末と基地局とが共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行い、しかも、各通信端末が、無線通信チャンネルでの周囲のノイズレベル及び通信端末の位置を、通信端末周囲のノイズ情報として無線送信するよう構成された無線通信システムにおいて、基地局として利用される無線通信装置に関する発明である。
【0028】
本発明の無線通信装置には、上記請求項1〜3に記載の無線通信装置と同様、当該無線通信装置を含む所定の地図領域を複数に分割した分割領域毎にノイズレベルを記述したノイズマップを記憶するノイズマップ記憶手段が備えられている。
【0029】
そして、この無線通信装置においては、ノイズ情報抽出手段が、各通信端末からの送信電波を受信することにより得られる受信データの中からノイズ情報を抽出し、ノイズマップ更新手段が、ノイズ情報抽出手段にて抽出されたノイズ情報に基づき、ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを更新し、ノイズマップ送信手段が、ノイズマップ更新手段にて更新されたノイズマップを各通信端末に無線送信する。
【0030】
従って、請求項4に記載の無線通信装置によれば、周囲の通信端末から得られるノイズ情報に基づきノイズマップを生成して、周囲の通信端末に提供することができる。
よって、請求項4に記載の無線通信装置を上記無線通信システムの基地局として利用し、その周囲の通信端末に、上述の制御手段を設けて、基地局から無線送信されてくるノイズマップに基づきノイズ源を特定して通信条件を制御するようにすれば、各通信端末が相互に無線通信を行う際に通信不良が発生する確率を低減することができる。
【0031】
ここで、請求項1〜4に記載の無線通信装置に設けられるノイズマップ更新手段は、レベル測定手段及び位置検出手段を介して得られるノイズ情報、若しくは、他の通信端末から得られるノイズ情報、に基づき、ノイズレベルが測定されたノイズマップ上の分割領域を特定して、その特定した分割領域のノイズレベルを、ノイズ情報から得られるノイズレベルに書き換えるようにしてもよい。
【0032】
しかし、受信信号レベルが、ノイズと無線通信の所望信号とを確実に判別できないほど低レベルである場合、所望信号をノイズだと判断されて、通信条件が誤制御されることも考えられる。
【0033】
このため、ノイズマップ更新手段は、請求項5に記載のように、ノイズ情報を構成するノイズレベルが予め設定されたしきい値以上であるときに、そのノイズ情報に基づきノイズマップを更新するようにするとよい。
【0034】
つまり、このようにすれば、受信信号レベルが、ノイズと無線通信の所望信号とを確実に判別できないほど低レベルである場合に、所望信号をノイズだと判断されることによってノイズマップが不必要に更新されて、制御手段による通信条件の制御が誤って実施されるのを防止できる。
【0035】
また、ノイズマップ更新手段は、請求項6に記載のように、ノイズマップにおいてノイズレベルが更新されない分割領域については、ノイズレベルを時間と共に減少させるようにするとよい。
【0036】
つまり、ノイズマップを更新すべきノイズ情報が得られない場合であっても、ノイズ源からのノイズが零になったとは限らないし、ノイズ源が移動することによってノイズレベルが低下し、ノイズマップを更新すべきノイズ情報が得られないことも考えられる。
【0037】
そこで、請求項6に無線通信装置では、ノイズマップにおいてノイズ情報に基づきノイズレベルが更新されない分割領域については、ノイズレベルを時間と共に減少させることで、各分割領域でのノイズレベルの変化を、より現実的な変化に近似させ、制御手段が、その変化に対応して、より適正にノイズ源の位置及びノイズレベルを特定できるようにしているのである。
【0038】
よって、請求項6に記載の無線通信装置によれば、ノイズマップを、ノイズ源の挙動に対応してより最適に更新することができ、制御手段は、このノイズマップを利用して通信条件をより最適に制御することが可能となる。
【0039】
次に、請求項7に記載の無線通信装置においては、ノイズマップは、当該無線通信装置を含む所定の地図領域内の道路を単位長さ毎に分割して、その分割した道路領域毎にノイズレベルを記憶することにより構成されており、ノイズマップ更新手段は、ノイズ情報に含まれる位置情報に基づき、当該ノイズ情報に対応した道路領域を特定し、その道路領域のノイズレベルを当該ノイズ情報に基づき更新する。
【0040】
従って、この無線通信装置によれば、ノイズ源が道路上に存在するものとして、ノイズマップが生成されることになる。よって、請求項7に記載の無線通信装置は、ノイズマップを利用する通信端末が自動車等の移動体に搭載される無線通信システムに適用すれば、移動体が道路上を走行する際に、移動体に搭載された通信端末が、道路上若しくは他の移動体に設けられたノイズ源からのノイズの影響を受けて、通信不良が発生するのを防止できる。
【0041】
一方、請求項8に記載の発明は、複数の通信端末及び基地局が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行い、基地局が、周囲の通信端末から、無線通信チャンネルでのノイズレベル及び通信端末の位置を表すノイズ情報を取得して、当該基地局周囲の地図領域を複数に分割した分割領域毎にノイズレベルを記述したノイズマップを更新し、そのノイズマップを無線送信するよう構成された無線通信システムにおいて、複数の通信端末として用いられる無線通信装置に関する発明である。
【0042】
そして、本発明の無線通信装置においては、レベル測定手段が、無線通信チャンネルでの周囲のノイズレベルを測定し、位置検出手段が、当該無線通信装置の位置を検出し、ノイズ情報送信手段が、レベル測定手段にて測定されたノイズレベル及び位置検出手段にて検出された位置を、当該無線通信装置周囲のノイズ情報として、基地局に無線送信する。
【0043】
また、基地局からは、ノイズマップが送信されてくるので、制御手段が、そのノイズマップに基づき、当該無線通信装置周囲のノイズ源の位置及びノイズレベルを特定して、そのノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう通信条件を制御する。
【0044】
従って、請求項8に記載の無線通信装置は、上述した請求項4に記載の無線通信装置を基地局とする無線通信システムにおける通信端末として利用するようにすれば、通信端末側でノイズマップを生成することなく、他の通信端末との間で無線通信を行う際に通信不良が発生する確率を低減することができるようになる。
【0045】
なお、請求項1〜3若しくは請求項8に記載の無線通信装置において、制御手段は、請求項9に記載のように、ノイズマップを定期的に監視して、地図領域内でノイズレベルの大きい領域が推移する方向と速度とを検出することで、ノイズ源の位置及びノイズレベルに加えて、ノイズ源の移動状態を特定し、その特定したノイズ源の位置、ノイズレベル及び移動状態に基づき、ノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう通信条件を制御するようにしてもよい。
【0046】
つまり、このようにすれば、例えば、ノイズ源が自動車等の移動体である場合に、そのノイズ源の移動方向を検出して、その後の移動方向を推定しながら、通信条件を制御することができるようになり、ノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう、通信条件を、より適正に制御することが可能となる。
【0047】
次に、請求項10に記載の発明は、複数の通信端末が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う無線通信システムに関する発明であり、複数の通信端末が、請求項1〜3に記載の無線通信装置にて構成されていることを特徴とする。従って、請求項10に記載の無線通信システムによれば、上述した請求項1〜3に記載の無線通信装置と同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、請求項11に記載の無線通信システムは、複数の通信端末と基地局とが共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う無線通信システムに関する発明であり、基地局が、請求項4に記載の無線通信装置にて構成されており、複数の通信端末が、請求項8に記載の無線通信装置にて構成されていることを特徴とする。
【0049】
従って、請求項11に記載の無線通信システムによれば、基地局側でノイズマップを生成して、各通信端末に提供することができるようになり、各通信端末は、ノイズマップを生成することなく、基地局側から提供されるノイズマップを利用して通信条件を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施形態の無線通信システム全体の構成を表す概略構成図である。
【図2】実施形態の無線通信装置(通信端末)の構成を表すブロック図である。
【図3】ノイズレベル測定部の動作を表すフローチャートである。
【図4】制御部にて実行される第1ノイズマップ更新処理を表すフローチャートである。
【図5】変調部の動作を表すフローチャートである。
【図6】復調部の動作を表すフローチャートである。
【図7】制御部にて実行される第2ノイズマップ分析処理を表すフローチャートである。
【図8】制御部にて実行されるノイズマップ分析処理を表すフローチャートである。
【図9】ノイズマップ更新処理にて更新されるノイズマップを表す説明図である。
【図10】ノイズマップ分析処理でノイズマップからノイズ源を分析する手順を説明する説明図である。
【図11】ノイズマップの他の構成例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1に示すように、本実施形態の無線通信システムは、自動車の走行路付近に配置された路側局2(2a,2b,…)と、各路側局2に有線にて接続されて無線通信システム全体を管理するためのセンターサーバ4と、自動車に搭載されて周囲の車両や路側局2との間で無線通信を行う通信端末6(6a,6b,6c,6d,…)とにより構成される。
【0052】
この通信端末6は、本発明(特に請求項1〜3)に記載の無線通信装置に相当し、予め設定された周波数帯の無線通信チャンネルを使って他の通信端末6や路側局2との間で無線通信を行うものであり、図2に示すように、送受信切替部9を介してアンテナ8に接続された送信部10と受信部30とを備える。
【0053】
また、通信端末6には、送信部10の送信電力や受信部30の受信利得等、当該通信端末6が無線通信を行う際の通信パラメータを制御する制御部20、後述のノイズマップが記憶された記憶部22、制御部20から出力されるメッセージを表示するための表示部24、及び、通信端末6(換言すれば通信端末6を搭載した自動車)の位置をGPS受信機等から取得するための位置情報取得部26、が備えられている。なお、制御部20は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを中心に構成されている。
【0054】
ここで、送信部10には、送信データを所定の送信信号に変調する変調部12、変調部12からの送信信号を無線通信チャンネルの周波数帯に周波数変換する周波数変換器14、及び、周波数変換器14にて周波数変換された送信信号を増幅する高周波増幅器16が設けられている。そして、送信部10は、高周波増幅器16にて増幅された送信信号を、送受信切替部9を介してアンテナ8に出力することで、送信信号をアンテナ8から無線送信させる。
【0055】
また、受信部30には、アンテナ8にて受信され、送受信切替部9を介して入力される受信信号を増幅する高周波増幅器32、高周波増幅器32で増幅された受信信号をベースバンドの受信信号に周波数変換する周波数変換器34、周波数変換器34にて周波数変換された受信信号から、他の通信端末6若しくは路側局2が送信してきたデータ(受信データ)を復元する復調部36、及び、周波数変換器34から無線通信チャンネルに対応した受信信号を取り込み、そのノイズレベルを測定するノイズレベル測定部40が設けられている。
【0056】
ノイズレベル測定部40は、通信端末6が無線通信に利用する無線通信チャンネルにおいて、他のシステムや隣接チャネルから受けている干渉電力や熱雑音等の総ノイズレベルを測定するためのものである。
【0057】
このノイズレベルの測定方法としては、従来から各種方法が知られているが、本実施形態では、復調部36が復調処理を行っていないときに、受信信号の信号レベルを常時測定し、その測定値から高周波増幅器32と周波数変換器34の利得を減算することで、ノイズレベルを算出する。
【0058】
このため、ノイズレベル測定部40には、復調部36から、復調処理を行っているか否か(例えば、他の通信端末からの送信信号に含まれるプリアンブルを検出したか否か)を表す信号(後述の復調待機信号)が入力され、制御部20から、高周波増幅器32と周波数変換器34の受信利得を表す信号が入力される。
【0059】
また、ノイズレベル測定部40は、ノイズレベルの時間変動を平滑化する移動平均機能と、外部から読み出されるまで移動平均の結果の最大値をノイズレベルの測定結果として保持しておく最大値保持機能を有する。
【0060】
つまり、ノイズレベル測定部40は、図3のフローチャートに示す手順で、ノイズレベルを算出する。
すなわち、ノイズレベル測定部40は、まず、復調部36から復調処理を実行していないことを表す復調待機信号が入力されたか否かを判断することにより、復調待機信号が入力されるのを待つ(S110)。
【0061】
次に、復調部36から復調待機信号が入力されると(S110−YES)、周波数変換器34から復調部36に出力される受信信号の信号レベル(例えば検波電圧)を取り込み、その信号レベルから高周波増幅器32と周波数変換器34の利得を減算することで、ノイズレベルを算出し(S120)、その算出したノイズレベルを移動平均する(S130)。
【0062】
そして、その移動平均したノイズレベルと、それまでに算出されたノイズレベル(移動平均値)の最大値とを比較し(S140)、今回算出したノイズレベル(移動平均値)が最大値よりも大きい場合(S140−YES)には、今回算出したノイズレベル(移動平均値)を最大値として更新し(S150)、S110に移行する。
【0063】
また、逆に、今回算出したノイズレベル(移動平均値)が最大値以下である場合(S140−NO)には、そのままS210に移行する。
このようにノイズレベル測定部40で算出されるノイズレベル(移動平均値)の最大値は、制御部20にて読み出されるまで保持され、制御部20にて読み出されると、初期値(最小値)に設定され、その後、ノイズレベル測定部40は、新たにノイズレベルの測定を開始する。また、ノイズレベル測定部40にて算出されたノイズレベル(最大値)は、変調部12にも出力される。
【0064】
次に、記憶部22に記憶されるノイズマップは、図9に例示するように、通信端末6自身(以下、自端末ともいう)を含む所定の地図領域を、単位面積(例えば、10m四方程度)毎に、網目状の境界線(図9に点線で示す)にて複数に分割し、その分割領域毎に、その分割領域で発生しているノイズレベルを記述したデータテーブルであり、各分割領域のノイズレベルは、制御部20にて実行される第1ノイズマップ更新処理及び第2ノイズマップ更新処理により更新される。
【0065】
図4は、制御部20にて実行される第1ノイズマップ更新処理を表すフローチャートである。
図4に示すように、第1ノイズマップ更新処理では、まず、S210にて、ノイズレベル測定部40及び位置情報取得部26から、無線チャンネルのノイズレベル(詳しくは上述した最大値)を表すノイズレベルデータと、自端末の位置を表す位置情報とを読み込む。
【0066】
次に、S220では、その読み込んだノイズレベルデータに基づき、無線チャンネルのノイズレベルは予め設定されたしきい値以上であるか否かを判定する。
そして、S220にて、ノイズレベルがしきい値以上であると判定されると、S230に移行し、S210にて読み込んだ位置情報に基づき、ノイズマップ上で自端末が位置する分割領域を特定して、その分割領域のノイズレベルとして、S210にて読み込んだノイズレベルデータを書き込むことにより、ノイズマップを更新する。
【0067】
この結果、例えば、図9において、自端末が通信端末6aであり、その付近にノイズ源となる他車両(通信端末6b)が存在し、自端末のノイズレベル測定部40にて測定されたノイズレベルがしきい値以上である場合には、自端末が位置する分割領域(図9に示す通信端末6a周囲の斜線部分)のノイズレベルとして、ノイズレベル測定部40にて測定されたノイズレベルが記憶されることになる。
【0068】
また、制御部20は、S230にてノイズマップを更新するか、或いは、S220にて自端末周囲のノイズレベルはしきい値以上ではないと判断すると、S240にて、所定時間(T秒:例えば、0.1〜1秒程度)が経過するのを待ち、所定時間(T秒)が経過すると、再度S210に移行する。
【0069】
なお、第1ノイズマップ更新処理では、S230にてノイズマップを更新するに当たって、S220にてノイズレベルがしきい値以上か否かを判断するが、これは、受信電力が小さな所望信号をノイズとして誤認識しないようにするためである。
【0070】
つまり、本実施形態では、しきい値として、復調部36にて所望信号のプリアンブルを確実に検出でき、且つ、無線通信システムに影響を与える電力(例えば、−90dBm)を設定することで、受信電力が小さな所望信号をノイズとして誤認識することのないようにしているのである。
【0071】
従って、ノイズレベル測定部40にて測定されたノイズレベルがしきい値よりも小さな場合には、そのノイズレベルによりノイズマップが更新されることはない。
但し、制御部20は、上述の第1ノイズマップ更新処理や、後述の第2ノイズマップ更新処理にて、ノイズレベルが更新されないノイズマップ上の分割領域については、その分割領域に対し記憶されているノイズレベルを、時間と共に小さくなるように更新する(例えばノイズレベルがしきい値に達するまで1秒あたり3dB減算する)。
【0072】
この結果、通信端末6が存在する密度が低い場合でもノイズ源の位置を短時間(数秒〜十数秒)記憶しておくことができると共に、ノイズ源となる車両が移動している場合など、図10(a)に示すようにノイズ源の位置がA→B→C→D…というように時々刻々と変化する場合にも、図10(b)に示すように、ノイズレベルが高い分割領域(地点)が時間と共にA→B→C→D…と徐々に変化することで追随することができる。
【0073】
次に、制御部20は、上記第1ノイズマップ更新処理とは別に、第2ノイズマップ更新処理を実行することによっても、ノイズマップを更新するが、この第2ノイズマップ更新処理を実行するに当たって、本実施形態の通信端末6では、変調部12が図5のフローチャートに示す手順で動作し、復調部36が図6のフローチャートに示す手順で動作する。
【0074】
すなわち、変調部12においては、図5に示すように、外部から送信データの送信要求が入力されたか否かを判断し(S310)、送信要求が入力されたと判断すると(S310−YES)、ノイズレベル測定部40にて測定されたノイズレベル(上述の最大値)を表すノイズレベルデータと、位置情報取得部26を介して得られる自端末の位置を表す位置情報とを読み出す(S320)。
【0075】
そして、その読み出したノイズレベルデータと位置情報とを、送信データに挿入することで、MACヘッダ、ネットワークヘッダ、ノイズレベルデータ、位置情報、送信データ、FCS(Frame Check Sequence)等からなる送信パケットを生成し、この送信パケットにて搬送波を変調して、周波数変換器14に出力することで、これら各データを無線送信させる(S330)。
【0076】
このため、本実施形態の無線通信システムにおいて、自動車に搭載された各通信端末6(6a,6b,6c,6d,…)からは、ノイズレベルデータと位置情報を含む送信パケットが無線送信されることになる。
【0077】
一方、復調部36においては、周波数変換器34から入力される受信信号に、他の通信端末6(若しくは路側局2)からの送信パケットが含まれているか否かを判断し(S410)、送信パケットが含まれていれば、そのパケットの中からデータを復元する復調処理を実行する(S420)。
【0078】
そして、その復調処理にて復元された復調データの中から、他の通信端末6で得られたノイズレベルデータと位置情報とを抽出し、これら各データを制御部に出力する(S430)。
【0079】
なお、復調部36は、S410にて、受信信号に、他の通信端末6(若しくは路側局2)からの送信パケットが含まれていないと判断された場合には、ノイズレベル測定部40へ復調待機信号を出力する(S440)ことで、ノイズレベル測定部40に、ノイズレベルを測定させる。
【0080】
このように、本実施形態の通信端末6においては、自端末で測定したノイズレベルデータと位置情報とを送信部10を介して他の通信端末6に送信し、受信部30にて他の通信端末6から送信されてきたノイズレベルデータと位置情報とが復元されると、これら各データが制御部20に入力される。
【0081】
そして、制御部20は、図7に示す第2ノイズマップ更新処理を実行することにより、受信部30(詳しくは復調部36)から入力された他の通信端末6のノイズレベルデータ及び位置情報を用いて、ノイズマップを更新する。
【0082】
つまり、図7に示すように、制御部20にて実行される第2ノイズマップ更新処理では、まず、S510にて、受信部30の復調部36にて、他の通信端末6(若しくは路側局2)からの送信パケットが受信されるのを待つ(S510)。
【0083】
そして、受信部30の復調部36にて、他の通信端末6からの送信パケットが受信されると、復調部36から、その送信パケットを復元することにより得られるノイズレベルデータと位置情報が入力されるので、制御部20では、S510にて、受信部30の復調部36にて送信パケットが受信されたと判断すると、他の通信端末6からのノイズレベルデータ及び位置情報が入力されたか否かを判断する(S520)。
【0084】
この判断処理にて、受信部30の復調部36から、他の通信端末6からのノイズレベルデータ及び位置情報が入力されたと判断されると(S520−YES)、その入力されたノイズレベルデータに基づき、このノイズレベルデータを送信してきた他の通信端末6の周囲のノイズレベルは、予め設定されたしきい値以上であるか否かを判定する(S530)。なお、このしきい値は、第1ノイズマップ更新処理におけるS220の判定処理で使用されるしきい値と同じである。
【0085】
そして、他の通信端末6の周囲のノイズレベルは、しきい値以上であると判定すると(S530−YES)、復調部36からノイズレベルデータと共に入力された他の通信端末6の位置情報に基づき、ノイズマップ上で、これら各データを送信してきた他の通信端末6が位置する分割領域を特定し、その分割領域のノイズレベルとして、復調部36から入力されたノイズレベルデータを書き込むことにより、ノイズマップを更新する(S540)。
【0086】
この結果、例えば、図9において、ノイズレベルデータ及び位置情報を自端末6aに送信してきた他の通信端末が通信端末6cであり、その付近にノイズ源となる他車両(通信端末6d)が存在し、他の通信端末6cから送信されてきたノイズレベルがしきい値以上である場合には、他の通信端末6cが位置する分割領域(図9に示す通信端末6c周囲の斜線部分)のノイズレベルとして、ノイズレベル測定部40にて測定されたノイズレベルが記憶されることになる。
【0087】
なお、S540にてノイズマップを更新した場合や、S520にて他の通信端末6からのノイズレベルデータ及び位置情報は入力されていないと判断した場合、或いは、S530にて、他の通信端末6のノイズレベルはしきい値以上ではないと判断された場合には、S510に戻って、受信部30にて他の通信端末6からの送信パケットが受信されるのを待機する。
【0088】
以上説明したように、本実施形態の通信端末6で生成されるノイズマップにおいては、自端末の現在位置や自端末の走行経路に対応する分割領域だけでなく、他の通信端末6の現在位置や他の通信端末6の走行経路に対応する分割領域にも、最新のノイズレベル若しくは時間と共に減少されるノイズレベルが記憶されることになる。
【0089】
従って、このように更新されるノイズマップを利用すれば、制御部20は、自端末周囲のノイズ源の位置を把握することができる。また、このノイズマップは、第1ノイズマップ更新処理により定期的に更新され、また、第2ノイズマップ更新処理の動作によって他の通信端末6からのデータ受信時にも更新されることから、制御部20は、このノイズマップの経時変化を監視することにより、ノイズ源の移動方向や移動速度を把握することもできる。
【0090】
そこで、本実施形態の通信端末6は、制御部20において、単に記憶部22内のノイズマップを更新するだけではなく、その更新された最新のノイズマップを分析することにより、ノイズ源の位置やそのノイズレベル、ノイズ源の移動方向や移動速度、等を検出し、自端末がノイズ源からのノイズの影響を受けることなく無線通信できるように、送信電力や受信利得等の通信パラメータを制御し、しかも、車両運転者に対し自端末(つまり自動車)がノイズ源から離れるように案内する、ノイズマップ分析処理を実行するようにされている。
【0091】
図8は、このノイズマップ分析処理を表すフローチャートである。
図8に示すように、ノイズマップ分析処理では、まずS610にて、記憶部22に記憶されたノイズマップから各分割領域のノイズレベルを読み出し、ノイズレベルが極大点となる分割領域を、ノイズ源として検出する。
【0092】
そして、続くS620では、ノイズマップの更新毎に記憶部22に記憶されるノイズレベルの時系列データから、ノイズマップ上でノイズレベルの大きい範囲が推移する方向とその速度を分析することにより、S610にて検出したノイズ源がどのように移動しているかを検出し、その検出結果(ノイズ源の位置、ノイズレベル、移動方向、速度)を、ノイズ源の識別情報(ID)と共に記憶部22に記憶する。
【0093】
ここで、図10(c)に示すように、ノイズマップ上で連続する分割領域A〜Jに対し、ノイズレベルが記憶されている場合、S610では、分割領域毎に、隣接する分割領域とノイズレベルを比較することで、隣接する分割領域のノイズレベルよりもノイズレベルが高い分割領域(図10(c)では、分割領域CとG)を、ノイズ源として検出する。
【0094】
また、図10(a)に示すようにノイズ源の位置がA→B→C→D…と変化する場合、ノイズ源周囲に通信端末6を搭載した自動車が存在すれば、ノイズ源から離れた通信端末6であっても、S610の処理によって、その自動車の通信端末6からの送信データ(ノイズレベルデータ及び位置情報)に基づいてノイズ源の位置を正確に検出できる。
【0095】
つまり、この場合、ノイズマップ上の分割領域である地点A〜Dのノイズレベルは、図10(b)に示すように変化することから、ノイズ源の移動に応じて、ノイズ源の位置をA→B→C→D…と検出することができる。
【0096】
しかし、ノイズ源が地点Cの分割領域を通過する際、地点Cの分割領域内にノイズレベルを送信可能な通信端末6が存在しなければ、図10(b)に示す地点Cのノイズレベルが得られない。従って、この場合、S610の処理では、ノイズ源が地点Cの分割領域を通過するときに、ノイズ源は、地点B若しくは地点Dの分割領域にいると誤検出されてしまうことになる。
【0097】
これに対し、本実施形態では、S620にて、ノイズレベルの時系列データからノイズ源の挙動を分析してノイズ源がどのように移動しているかを推定することができるので、ノイズ源が地点Cを通過する際に、地点Cにノイズレベルデータを送信可能な通信端末6が存在しない(或いは通信端末6がノイズ源からのノイズの影響を受けてノイズレベルデータを送信できない)場合であっても、S610にて検出したノイズ源の位置を補正し、最終的に得られる検出結果(ノイズ源の位置、ノイズレベル、移動方向、速度)を、実際のノイズ源の挙動に対応させることができる。
【0098】
つまり、本実施形態では、一度検出して記憶部22に記憶したノイズ源の位置については、新たなノイズレベルデータの取得がなくても、その移動方向と速度とからノイズ源の位置を更新し続けることができる。
【0099】
次に、S620にて、ノイズマップの分析がなされ、ノイズ源の位置、ノイズレベル、移動方向、及び、速度が特定されると、S630に移行して、自端末近傍で自端末と同一方向に移動するノイズ源が存在するか否かを判断する。
【0100】
そして、S630にて、自端末近傍で自端末と同一方向に移動するノイズ源が存在すると判断されると、S640に移行して、表示部24に、運転者に対し自端末をノイズ源から離れるように指示するメッセージ、例えば、「車間距離を空けましょう」というようなメッセージ、を表示部24に表示する。
【0101】
一方、S630にて、自端末近傍で自端末と同一方向に移動するノイズ源は存在しないと判断されるか、或いは、S640にて、表示部24にメッセージを表示すると、S650に移行する。
【0102】
そして、S650では、記憶部22に記憶されているノイズ源の検出結果から、通信対象となる他の通信端末6と自端末との間、及び、これら各部の近傍に位置するノイズ源を検出し、そのノイズ源のノイズレベルに基づき、通信パラメータを制御する。
【0103】
また、S650にて、通信パラメータを制御すると、S660に移行して、上述したS40と同様、所定時間(T秒)が経過するのを待ち、所定時間(T秒)が経過すると、再度S610に移行する。
【0104】
従って、このノイズマップ分析処理は、第1ノイズマップ更新処理と同様、制御部20において定期的に実行されることになる。
なお、650において実行される通信パラメータの制御は、ノイズ源のノイズレベル及び位置に応じて、送信時の送信電力、送信データの変調パラメータ(変調方式、符号化率等)、復調部36でのキャリアセンスレベル(CSレベル)、高周波増幅器32の増幅率(受信利得)等を制御することにより実行されるが、この通信パラメータの制御については、上述した特許文献1に記載されているので、詳細な説明は省略する。
【0105】
以上説明したように、本実施形態の通信端末6によれば、周囲のノイズレベルを測定して、その測定結果(ノイズレベルデータ)と自端末の位置情報とを他の通信端末6に無線送信すると共に、自端末で測定したノイズレベルデータと位置情報、及び、他の通信端末6から取得したノイズレベルデータと位置情報を用いて、記憶部22に記憶されたノイズマップを更新する。
【0106】
そして、そのノイズマップを分析することにより、ノイズ源の位置、ノイズレベル、移動方向、速度を特定し、そのノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう通信パラメータを制御すると共に、運転者に対し、そのノイズ源から離れるように案内する。
【0107】
従って、本実施形態の無線通信システムによれば、各通信端末6が、ノイズ源から影響を受けるノイズレベルだけでなく、ノイズ源の位置や挙動(移動方向、速度)に応じて、通信条件(通信パラメータや自端末の位置)を制御することができるようになり、特許文献1に記載の無線通信システムに比べ、周囲のノイズにより通信不良が発生するのを抑制することができる。
【0108】
つまり、例えば、図1に示すように、通信端末6a、6cの付近にノイズ源となる通信端末6b、6dが存在している状態で、通信端末6a、6c間で無線通信を行う場合、通信パラメータの制御だけでは、各通信端末6a、6cが通信端末6b、6dからのノイズの影響を受けて、通信不可能となることが考えられる。
【0109】
しかし、本実施形態では、各通信端末6a、6cがノイズ源からのノイズの影響を受けている場合(つまり自端末周囲のノイズレベルが高い場合)には、各通信端末6a、6cに設けられた制御部20が、自端末を搭載した自動車の運転者に対し、そのノイズ源から遠ざかるように案内するので、通信不良が発生する確率を低減できる。
【0110】
なお、本実施形態においては、受信部30に設けられたノイズレベル測定部40が、本発明のレベル測定手段に相当し、位置情報取得部26が、本発明の位置検出手段に相当し、送信部10の変調部12が、本発明のノイズ情報送信手段に相当し、受信部30の復調部36が、本発明のノイズ情報抽出手段に相当し、制御部20に接続された記憶部22が、本発明のノイズマップ記憶手段に相当する。
【0111】
また、制御部20にて実行される第1ノイズマップ更新処理及び第2ノイズマップ更新処理は、本発明のノイズマップ更新手段に相当し、制御部20にて実行されるノイズマップ分析処理は、本発明の制御手段に相当する。
【0112】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて種々の態様をとることができる。
(変形例1)
例えば、上記実施形態では、制御部20は、通信端末6をノイズ源から離すために、表示部24に、運転者に対するメッセージを表示するものとして説明したが、例えば、通信端末6を搭載した自動車にナビゲーションシステムが搭載されている場合には、そのナビゲーションシステムを利用して、車両がノイズ源から離れるように走行路を誘導するようにしてもよい。
【0113】
また、通信端末6をノイズ源から離すための案内は、メッセージや走行経路を表示するのではなく、音声若しくは警報音を発生することにより行うようにしてもよく、表示と音による案内を組み合わせてもよい。
【0114】
また、通信端末6が搭載される自動車に、駆動系若しくは制動系を制御する電子制御装置(ECU)が搭載されている場合、制御部20は、そのECUに対し制動指令或いは加速指令を行うことで、自動車の走行速度を緩やかに変化させ、通信端末6を、自端末と同方向に移動するノイズ源から自動で遠ざけるように構成してもよい。
(変形例2)
また、上記実施形態では、自端末を含む所定の地図領域を複数の分割領域に区切ってノイズマップを作成するものとして説明したが、無線通信システムが上記実施形態と同じ自動車用の無線通信システムの場合には、例えば、図11に示すように、所定の地図領域内の道路(具体的には地図データを構成している道路ベクトルデータ)を単位長さ(例えば10m程度)に区切ってノイズマップを作成し、そのノイズマップの道路領域毎に、ノイズレベルを記憶するようにしてもよい。
【0115】
なお、この場合、ノイズレベルを記憶する道路領域(換言すれば道路ベクトルデータ)は、そのノイズレベルに対応した位置情報に基づき選択することになるが、この選択には、従来からナビゲーションシステムで行われているマップマッチングの技術を用いることができる。
(変形例3)
また次に、上記実施形態では、ノイズマップ分析処理において、ノイズマップを分析することにより、ノイズ源の位置、ノイズレベル、移動方向、及び速度を検出し、その検出結果に基づき、通信条件を制御するものとして説明したが、例えば、車車間通信による衝突回避システムのように、ノイズマップを地図データや道路ベクトルデータと関連づけることにより、通信すべき相手の位置を過去の事故類型から予測し、その予測した相手の位置にノイズ源があるかどうかを判断して、そのノイズ源の影響を受けることのないよう通信条件(この場合、通信パラメータ)を制御するようにしてもよい。
【0116】
そして、このようにすれば、各通信端末6は、自端末と実際に通信可能な通信端末だけでなく、ノイズ源からのノイズの影響を受けて、自端末と直接通信ができない通信装置が存在する場合であっても、通信パラメータ等の制御によって、その通信装置との間の通信品質を改善し、衝突回避等の安全性を向上することができる。
(変形例4)
一方、上記実施形態では、ノイズマップは、無線通信システムを構成する通信端末6が個々に更新するものとして説明したが、制御部20が、第2ノイズマップ更新処理にてノイズマップを更新する際には、他の通信端末6から取得したノイズレベルデータ及び位置情報だけでなく、他の通信端末6にて生成されたノイズマップを用いるようにしてもよい。
【0117】
そして、このようにすれば、各通信端末6は、自端末で生成したノイズマップを、他の通信端末6にて生成されたノイズマップを用いて補間することができることになり、そのノイズマップから、ノイズ源をより広範囲に、しかもより正確に検出することができるようになる。
【0118】
なお、このためには、変調部12が、図5に示す手順で自端末のノイズレベルデータ及び位置情報を含む送信パケットを生成する際に、本発明(請求項3)のノイズマップ送信手段として機能して、送信パケットに記憶部22に記憶されたノイズマップを含めるようにし、復調部36が、図6に示す手順で他の通信端末6から送信されたノイズレベルデータ及び位置情報を抽出する際に、本発明(請求項3)のノイズマップ抽出手段として機能して、復調データからノイズマップも抽出し、これら各データを制御部20に入力するようにすればよい。
(変形例5)
また、上記実施形態や変形例4では、各通信端末6から送信されたノイズレベルデータ及び位置情報やノイズマップは、他の通信端末6が受信して、自端末でノイズマップを更新するのに用いるものとして説明したが、各通信端末6から送信されたノイズレベルデータ、位置情報、ノイズマップ等の情報は、路側局2(2a、2b、…)が一旦受信して、周囲の通信端末6に再送信するようにしてもよい。
【0119】
また、この場合、路側局2が各通信端末6から取得したノイズレベルデータ、位置情報、ノイズマップ等の情報は、センターサーバ4を経由して、他の路側局2にも伝送し、他の路側局2からも再送信させるようにしてもよい。
【0120】
そして、このようにすれば、一つの通信端末6にて得られるノイズレベルデータ及び位置情報や、ノイズマップ等の情報が、より広範囲にわたって他の通信端末6に伝達されることになり、各通信端末6で生成されるノイズマップの範囲を広くし、しかも、ノイズマップの精度を向上することができる。
(変形例6)
また次に、ノイズマップは、無線通信システムを構成する通信端末6が生成するのではなく、各通信端末6と無線通信が可能な路側局2、若しくは、路側局2に接続されたセンターサーバ4にて生成し、各通信端末6は、路側局2から、その生成されたノイズマップを取得し、通信条件を制御するようにしてもよい。
【0121】
そして、この場合、各通信端末6では、変調部12が、図5に示す手順にて自端末で得られるノイズレベルデータと位置情報とを送信し、復調部36が、図6に記載のものと略同様の手順にて路側局2からの送信データに含まれるノイズマップを抽出して制御部20へ出力し、制御部20が、そのノイズマップを記憶部22に格納して、図8に示すノイズマップ分析処理をするようにすればよい。
【0122】
従って、各通信端末6において、制御部20は、第1ノイズマップ更新処理及び第2ノイズマップ更新処理を実行する必要がないので、制御部20を構成するマイクロコンピュータの処理負荷を軽減することができ、延いては、各通信端末6のコストを上記実施形態に記載のものよりも低減することができる。
【0123】
なお、各通信端末6の基地局となる路側局2は、図2に示した通信端末6の構成から、表示部24や位置情報取得部26を削除し、制御部20にセンターサーバ4を接続した構成となる。
【0124】
このため、本変形例6を実現する際には、路側局2内の復調部を、本発明(請求項4)のノイズ情報抽出手段として機能させ、路側局2内の変調部を、本発明(請求項4)のノイズマップ送信手段として機能させ、路側局2内の記憶部を、本発明(請求項4)のノイズマップ記憶手段として機能させ、路側局2内の制御部若しくはセンターサーバ4において、図7に示す第2ノイズマップ更新処理を実行することで、本発明(請求項4)のノイズマップ更新手段としての機能を実現するようにすればよい。
(変形例7)
また更に、上記実施形態及び各変形例では、無線通信システムを構成する複数の通信端末6は、全て移動体に搭載されるものとして説明したが、通信端末6は、住宅や会社等の特定の場所に固定される固定局であってもよい。
【0125】
そして、通信端末6が固定局の場合、通信端末6をノイズ源から離すことはできないものの、通信端末6を上記同様に構成すれば、ノイズ源の位置、ノイズレベル、挙動(移動方向、速度)を特定できるので、ノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう、通信パラメータを制御して、通信品質を確保することはできる。
【0126】
また、この場合、路側局4等の基地局や他の通信端末6を中継局として利用し、その中継局を介して所望の通信端末6と通信を行うようにすることで、通信条件として、通信経路を変更させることもできる。
(変形例8)
また、上記実施形態では、移動体に搭載される複数の通信端末6は、それぞれ、自端末のノイズ情報を他の通信端末6に送信することにより、自端末のノイズ情報と他の通信端末6から得られるノイズ情報とに基づきノイズマップを更新するものとして説明したが、各通信端末6は、自端末のノイズ情報を他の通信端末6に送信することなく、自端末のノイズ情報だけでノイズマップを更新するようにしてもよい。
【0127】
つまり、このようにしても、ノイズマップは、通信端末6自身の位置変化(移動)に応じて適宜更新されることになり、例えば、自端末を搭載した車両とともにノイズ源が移動しているような場合には、ノイズマップからその旨を検出して、自端末を搭載した車両がノイズ源から離れるように案内することができる。
【符号の説明】
【0128】
2(2a,2b)…路側局、4…センターサーバ、6(6a,6b,6c,6d)…通信端末、8…アンテナ、9…送受信切替部、10…送信部、12…変調部、14…周波数変換器、16…高周波増幅器、20…制御部、22…記憶部、24…表示部、26…位置情報取得部、30…受信部、32…高周波増幅器、34…周波数変換器、36…復調部、40…ノイズレベル測定部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信端末が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて、前記複数の通信端末として用いられる無線通信装置であって、
前記無線通信チャンネルでの周囲のノイズレベルを測定するレベル測定手段と、
当該無線通信装置の位置を検出する位置検出手段と、
当該無線通信装置を含む所定の地図領域を複数に分割した分割領域毎にノイズレベルを記述したノイズマップを記憶するノイズマップ記憶手段と、
前記レベル測定手段及び前記位置検出手段を介して得られる当該無線通信装置周囲のノイズ情報に基づき、前記ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを更新するノイズマップ更新手段と、
前記ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップに基づき、当該無線通信装置周囲のノイズ源の位置及びノイズレベルを特定し、該ノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう通信条件を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記レベル測定手段にて測定されたノイズレベル及び前記位置検出手段にて検出された位置を、当該無線通信装置周囲のノイズ情報として無線送信するノイズ情報送信手段と、
他の通信端末からの送信電波を受信することにより得られる受信データの中から、前記ノイズ情報を抽出するノイズ情報抽出手段と、
を備え、前記ノイズマップ更新手段は、前記ノイズ情報抽出手段にて抽出された他の通信端末周囲のノイズ情報と、前記レベル測定手段及び前記位置検出手段を介して得られる当該無線通信装置周囲のノイズ情報とに基づき、前記ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを更新することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを他の通信端末に無線送信するノイズマップ送信手段と、
他の通信端末からの送信電波を受信することにより得られる受信データの中から、他の通信端末から送信されてきたノイズマップを抽出するノイズマップ抽出手段と、
を備え、前記制御手段は、前記ノイズマップ抽出手段にて抽出されたノイズマップと、前記ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップとに基づき、当該無線通信装置周囲のノイズ源の位置及びノイズレベルを特定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
複数の通信端末及び基地局が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行い、しかも各通信端末が、前記無線通信チャンネルでの周囲のノイズレベル及び通信端末の位置を、通信端末周囲のノイズ情報として無線送信するよう構成された無線通信システムにおいて、前記基地局として利用される無線通信装置であって、
前記各通信端末からの送信電波を受信することにより得られる受信データの中から、前記ノイズ情報を抽出するノイズ情報抽出手段と、
当該無線通信装置を含む所定の地図領域を複数に分割した分割領域毎にノイズレベルを記述したノイズマップを記憶するノイズマップ記憶手段と、
前記ノイズ情報抽出手段にて前記ノイズ情報が抽出されると、該ノイズ情報に基づき、前記ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを更新するノイズマップ更新手段と、
前記ノイズマップ更新手段にて更新されたノイズマップを、前記各通信端末に無線送信するノイズマップ送信手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
前記ノイズマップ更新手段は、前記ノイズ情報を構成するノイズレベルが予め設定されたしきい値以上であるときに、前記ノイズマップを当該ノイズ情報に基づき更新することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記ノイズマップ更新手段は、前記ノイズマップにおいて、前記ノイズ情報に基づきノイズレベルが更新されない分割領域については、ノイズレベルを時間と共に減少させることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記ノイズマップは、当該無線通信装置を含む所定の地図領域内の道路を単位長さ毎に分割して、その分割した道路領域毎にノイズレベルを記憶することにより構成されており、
前記ノイズマップ更新手段は、前記ノイズ情報に含まれる位置情報に基づき、当該ノイズ情報に対応した道路領域を特定し、該道路領域のノイズレベルを当該ノイズ情報に基づき更新することを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
複数の通信端末及び基地局が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行い、前記基地局が、周囲の通信端末から前記無線通信チャンネルでのノイズレベル及び通信端末の位置を表すノイズ情報を取得して、当該基地局周囲の地図領域を複数に分割した分割領域毎にノイズレベルを記述したノイズマップを更新し、該ノイズマップを無線送信するよう構成された無線通信システムにおいて、前記複数の通信端末として用いられる無線通信装置であって、
前記無線通信チャンネルでの周囲のノイズレベルを測定するレベル測定手段と、
当該無線通信装置の位置を検出する位置検出手段と、
前記レベル測定手段にて測定されたノイズレベル及び前記位置検出手段にて検出された位置を、当該無線通信装置周囲のノイズ情報として、前記基地局に無線送信するノイズ情報送信手段と、
前記基地局から無線送信されてくるノイズマップに基づき、当該無線通信装置周囲のノイズ源の位置及びノイズレベルを特定して、該ノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう通信条件を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記ノイズマップを定期的に監視し、前記地図領域内でノイズレベルの大きい領域が推移する方向と速度とを検出することで、ノイズ源の位置及びノイズレベルに加えて、ノイズ源の移動状態を特定し、該特定したノイズ源の位置、ノイズレベル及び移動状態に基づき、該ノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう通信条件を制御することを特徴とする請求項1〜3、8の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項10】
複数の通信端末が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて、
前記複数の通信端末は、請求項1〜3の何れか1項に記載の無線通信装置にて構成されていることを特徴とする無線通信システム。
【請求項11】
複数の通信端末及び基地局が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて、
前記基地局は、請求項4に記載の無線通信装置にて構成され、前記複数の通信端末は、請求項8に記載の無線通信装置にて構成されていることを特徴とする無線通信システム。
【請求項1】
複数の通信端末が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて、前記複数の通信端末として用いられる無線通信装置であって、
前記無線通信チャンネルでの周囲のノイズレベルを測定するレベル測定手段と、
当該無線通信装置の位置を検出する位置検出手段と、
当該無線通信装置を含む所定の地図領域を複数に分割した分割領域毎にノイズレベルを記述したノイズマップを記憶するノイズマップ記憶手段と、
前記レベル測定手段及び前記位置検出手段を介して得られる当該無線通信装置周囲のノイズ情報に基づき、前記ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを更新するノイズマップ更新手段と、
前記ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップに基づき、当該無線通信装置周囲のノイズ源の位置及びノイズレベルを特定し、該ノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう通信条件を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記レベル測定手段にて測定されたノイズレベル及び前記位置検出手段にて検出された位置を、当該無線通信装置周囲のノイズ情報として無線送信するノイズ情報送信手段と、
他の通信端末からの送信電波を受信することにより得られる受信データの中から、前記ノイズ情報を抽出するノイズ情報抽出手段と、
を備え、前記ノイズマップ更新手段は、前記ノイズ情報抽出手段にて抽出された他の通信端末周囲のノイズ情報と、前記レベル測定手段及び前記位置検出手段を介して得られる当該無線通信装置周囲のノイズ情報とに基づき、前記ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを更新することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを他の通信端末に無線送信するノイズマップ送信手段と、
他の通信端末からの送信電波を受信することにより得られる受信データの中から、他の通信端末から送信されてきたノイズマップを抽出するノイズマップ抽出手段と、
を備え、前記制御手段は、前記ノイズマップ抽出手段にて抽出されたノイズマップと、前記ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップとに基づき、当該無線通信装置周囲のノイズ源の位置及びノイズレベルを特定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
複数の通信端末及び基地局が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行い、しかも各通信端末が、前記無線通信チャンネルでの周囲のノイズレベル及び通信端末の位置を、通信端末周囲のノイズ情報として無線送信するよう構成された無線通信システムにおいて、前記基地局として利用される無線通信装置であって、
前記各通信端末からの送信電波を受信することにより得られる受信データの中から、前記ノイズ情報を抽出するノイズ情報抽出手段と、
当該無線通信装置を含む所定の地図領域を複数に分割した分割領域毎にノイズレベルを記述したノイズマップを記憶するノイズマップ記憶手段と、
前記ノイズ情報抽出手段にて前記ノイズ情報が抽出されると、該ノイズ情報に基づき、前記ノイズマップ記憶手段に記憶されたノイズマップを更新するノイズマップ更新手段と、
前記ノイズマップ更新手段にて更新されたノイズマップを、前記各通信端末に無線送信するノイズマップ送信手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
前記ノイズマップ更新手段は、前記ノイズ情報を構成するノイズレベルが予め設定されたしきい値以上であるときに、前記ノイズマップを当該ノイズ情報に基づき更新することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記ノイズマップ更新手段は、前記ノイズマップにおいて、前記ノイズ情報に基づきノイズレベルが更新されない分割領域については、ノイズレベルを時間と共に減少させることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記ノイズマップは、当該無線通信装置を含む所定の地図領域内の道路を単位長さ毎に分割して、その分割した道路領域毎にノイズレベルを記憶することにより構成されており、
前記ノイズマップ更新手段は、前記ノイズ情報に含まれる位置情報に基づき、当該ノイズ情報に対応した道路領域を特定し、該道路領域のノイズレベルを当該ノイズ情報に基づき更新することを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
複数の通信端末及び基地局が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行い、前記基地局が、周囲の通信端末から前記無線通信チャンネルでのノイズレベル及び通信端末の位置を表すノイズ情報を取得して、当該基地局周囲の地図領域を複数に分割した分割領域毎にノイズレベルを記述したノイズマップを更新し、該ノイズマップを無線送信するよう構成された無線通信システムにおいて、前記複数の通信端末として用いられる無線通信装置であって、
前記無線通信チャンネルでの周囲のノイズレベルを測定するレベル測定手段と、
当該無線通信装置の位置を検出する位置検出手段と、
前記レベル測定手段にて測定されたノイズレベル及び前記位置検出手段にて検出された位置を、当該無線通信装置周囲のノイズ情報として、前記基地局に無線送信するノイズ情報送信手段と、
前記基地局から無線送信されてくるノイズマップに基づき、当該無線通信装置周囲のノイズ源の位置及びノイズレベルを特定して、該ノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう通信条件を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記ノイズマップを定期的に監視し、前記地図領域内でノイズレベルの大きい領域が推移する方向と速度とを検出することで、ノイズ源の位置及びノイズレベルに加えて、ノイズ源の移動状態を特定し、該特定したノイズ源の位置、ノイズレベル及び移動状態に基づき、該ノイズ源からのノイズの影響を受けることのないよう通信条件を制御することを特徴とする請求項1〜3、8の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項10】
複数の通信端末が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて、
前記複数の通信端末は、請求項1〜3の何れか1項に記載の無線通信装置にて構成されていることを特徴とする無線通信システム。
【請求項11】
複数の通信端末及び基地局が共通の無線通信チャンネルを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて、
前記基地局は、請求項4に記載の無線通信装置にて構成され、前記複数の通信端末は、請求項8に記載の無線通信装置にて構成されていることを特徴とする無線通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−169838(P2012−169838A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28819(P2011−28819)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]