説明

無線通信装置

【課題】干渉波を正確に検出して他の基地局への干渉波を低減することができる無線通信装置を提供する。
【解決手段】干渉波測定のためスイッチ133、134により信号経路の切り替えを行い、DPDの帰還回路130を用いて、干渉波を測定する。干渉波が閾値を超えたかどうかを比較し、閾値を超えた場合は、送信出力を制限し、またはOFDMやマルチキャリアシステムでは割り当てリソースブロックの変更または制限し、またはMCSを低下させ、相互変調歪みを減少させて、他局への干渉・妨害を抑圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の無線通信装置との干渉を回避することができる無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムでは、同一または隣接する周波数チャネルを用いる、近接する他のシステムの無線基地局からの送信波による干渉が大きな問題である。電波が干渉すると通信品質が劣化するため、無線基地局では、他の無線基地局に影響を及ぼさないように、干渉波を検出して他の無線基地局への干渉波を低減することが求められる。
また、従来技術として、DPD(Digital Pre-Distortion)方式の歪み補償増幅装置を利用して干渉波を検出し、歪み補償を行うものが知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−013576号公報
【特許文献2】特開2006−197545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、無線基地局において、FDD方式を採用する場合は、例えば受信回路を使用して干渉波を測定した場合、送受信の周波数が異なるため送信帯域の状況を測定することは困難である。端末を使用して電波の状況を確認するCQI(Channel Quality Indicator)を利用する方法もあるが、干渉波を正確には検出できない。
また、上述した歪み補償増幅装置を利用した従来技術は、何れも閉じた信号経路(送信経路内)での干渉検出、歪み補償となっており、自身が送信している信号も含んでいるため、誤検出等が発生する恐れがあり、正確な干渉波の検出は困難である。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、干渉波を正確に検出して他の基地局との干渉を回避することができる無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の無線通信装置は、無線の信号を送信する送信回路と、送信回路から出力された信号を放出するアンテナと、前記アンテナから入力した信号を処理する信号処理部と、前記アンテナに対する信号の出力と前記アンテナからの信号の入力とを切り替えるスイッチとを備え、干渉波を測定する際に、前記スイッチは、前記アンテナに対する信号の出力から前記アンテナからの信号の入力に切り替えて、前記信号処理部は、前記アンテナから入力した信号に対する干渉波を検出する。
【0007】
前記信号処理部は、前記干渉波を検出したとき、送信する信号の出力を制限することが好ましい。
また、前記信号処理部は、前記干渉波を検出したとき、送信する信号の帯域幅を狭くすることが好ましい。
また、前記信号処理部は、前記干渉波を検出したとき、送信する信号の多値変調を下げることが好ましい。
【0008】
また、本発明の無線通信装置は、前記送信回路と前記アンテナとの間に結合線路または方向性結合器を備え、前記信号処理部は、前記結合線路または方向性結合器から取り出された信号に基づいて前記干渉波を検出することが好ましい。
【0009】
また、本発明の無線通信装置は、送信信号と受信信号を合成、分離するデュプレクサを備え、前記結合線路または方向性結合器は、前記デュプレクサと前記アンテナとの間に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、DPDの帰還回路を用いて他の基地局からの送信波を測定するので、干渉波を正確に検出でき、また、自局の送信信号の出力を制限し、送信信号の帯域幅を狭めることができるので、他の基地局との干渉を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の無線通信装置が適用される無線機の第1の実施形態に係る構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る無線機の動作を説明するフローチャートである。
【図3】干渉波が存在したときの相互変調歪みの発生を示す図である。
【図4】干渉波が閾値を超えて検出されたときに、希望波の出力を下げて運用したときの状態を示す図である。
【図5】干渉波が閾値を超えて検出されたときに、リソースの割り当てを制限したとき状態を示す図である。
【図6】本発明の無線通信装置が適用される無線機の第2の実施形態に係る構成を示す図である。
【図7】本発明の無線通信装置が適用される無線機の第3の実施形態に係る構成を示す図である。
【図8】帰還回路へ帯域制限を実施するフィルタの特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ここでは、本発明に係る無線通信装置が、基地局等の無線機に適用される場合を例に説明する。図1は、本発明の無線通信装置が適用される無線機の第1の実施形態に係る構成を示す図である。無線機100は、例えば、基地局として用いられ、DPD(Digital Pre-Distortion)の機能を備えており、大別してベースバンド部110と、送信回路120と、DPDの帰還回路130と、図示しない受信回路とで構成される。さらに、ベースバンド部110は、信号処理部及びFFT演算部111と、DPD演算部112と、制御部113と、閾値判定部114から構成される。
【0013】
送信回路120は、同相信号Iをデジタルからアナログに変換するDAC(デジタルアナログ変換器)121と、直交位相信号Qをデジタルからアナログに変換するDAC122と、周波数発振器141(図示しないPLLを含む)と、直交変調器123と、不要成分の除去するフィルタ124と、送信信号の電力をアンテナANTからの出力に必要な電力に増幅する高出力電力増幅器125により構成される。Dup(デュプレクサ)126は送信信号と受信信号を合成、分離する。アンテナANTは、信号を空間へ放射または空間から受信する。
【0014】
一方、帰還回路130は、送信線路に対して設けられた結合線路(方向性結合器でも良い)132と、結合線路132から取り出された送信信号を、アナログからデジタルに変換するADC(アナログデジタル変換器)137に必要なレベルまで増幅する可変利得増幅器(固定利得でも良い)131を有する。DPD演算部112は、ADC137から得られた信号の振幅成分と位相成分を演算し、結合線路132から取り出された送信と送信信号との比較により、歪み補正を行う。スイッチ133,134は、通常動作と干渉波測定動作との信号経路を切り換える。干渉波測定動作時は、Dup(デュプレクサ)126と可変利得増幅器131が直に接続するよう信号経路が切り換えられる。
【0015】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る無線機の動作を説明するフローチャートである。干渉波の測定要求があった場合(S11)、干渉波測定のためスイッチによる信号経路が切り替えられ(S12)、アンテナANTからの干渉波信号を測定する(S13)。閾値判定部114は、干渉波信号の干渉量が閾値を超えたどうかを比較し(S14)、閾値を超えた場合(S14でYesの場合)は、制御部113は、送信信号の出力を制限し、または、送信信号の帯域幅を狭くし(OFDMでは割り当てリソースブロックの変更または制限する)、または、これらの実施に加えて、MCSを低下させ(S15)、スイッチを通常の信号経路に戻す処理を行い(S16)、通常動作に切り替える(S17)。閾値判定(S14)により干渉波が閾値を超えない場合(S14でNoの場合)は、スイッチを通常の信号経路に戻す処理を行い(S16)、通常動作に切り替える(S17)。
【0016】
図3は、横方向を周波数、縦方向を電力とし、希望波に対して干渉波が存在したときの、相互変調歪みの発生を示したものであり、図4は、本発明が適用される無線機により、干渉波信号のレベル(干渉量)が閾値を超えて検出された場合に、相互歪みが発生しないレベルまで希望波の出力を下げて運用したときの状態(送信信号の出力の制限)を示す図である。干渉波は、目的に応じて帯域内でも帯域外でも良い。また、図5は、OFDMやマルチキャリアシステムにおいて、干渉波信号のレベルが閾値を超えて検出された場合に、リソースの割り当て(帯域幅)を制限したときの状態を示す図である。干渉波は、目的に応じて帯域内でも帯域外でも良い。
【0017】
図2で説明した干渉波の測定は、例えば、(1)端末接続が少ないときや、(2)OFDMAにおいてリソースブロックが割り当てられていないときや、(3)スループットが出ない場合に干渉波の影響か否かを判断することを優先するために強制的にリソースブロックを制限して測定に充てたとき、等において実施される。また、信号処理部及びFFT演算部111が、帰還回路から取り出した信号から所定の周波数帯域における信号を監視し、信号のレベルが所定の閾値になったときに暫定的に干渉波があると推定し、図2で説明したように、スイッチによる信号経路の切り替えを行って干渉波を測定するようにしても良い。
【0018】
図6は、本発明の無線通信装置が適用される無線機の第2の実施形態に係る構成を示す図である。第2の実施形態では、回路の簡略化のため、結合線路132の片側をスイッチ回路134へ直接接続することにより、スイッチ133を削除した構成としている。その他は、第1の実施形態と同様である。第2の実施形態では、結合線路を使用することで干渉波のレベルが低下するといった弊害を抑える。
【0019】
図7は、本発明の無線通信装置が適用される無線機の第3の実施形態に係る構成を示す図である。第3の実施形態では、結合線路135とスイッチ136を、送信信号と受信信号を合成、分離するDup(デュプレクサ)126とアンテナANTとの間に設けた構成としている。その他は、第1の実施形態と同様である。DPDの帰還回路130を用いるためADC137の帯域は予め広帯域となっているので、結合線路135とスイッチ136を、Dup126とアンテナANTとの間に設けることにより、Dup126の希望帯域(Dup帯域)内のみではなく、Dup126の希望帯域(Dup帯域)外の干渉波も測定することができる。結合線路135と増幅器131あるいは増幅器131とADC137の間にDPDの動作を補償するためのフィルタ139を設けてもよく、図8に示すように、DPD補償帯域内でDup126の帯域外の干渉波も測定することができる。
【0020】
上述したように、本発明が適用される無線機は、アンテナ端に入力する干渉波のレベルを正確に測定して隣接システムや同一または隣接チャネルに対する干渉波を抑圧することで、他の基地局との干渉を回避することができる。
また、本発明が適用される無線機は、歪み補償回路を転用することで、自身の帯域に留まらず、自身の帯域から3〜7次程度の近傍の干渉波を測定できる。
また、本発明が適用される無線機は、自局の受信機を転用して干渉波を測定する場合よりも広帯域な信号を測定できる(受信機で、干渉波を積極的に除去する構成となるため)。
また、本発明が適用される無線機は、フィルタの出力側(アンテナ側)を測定する構成では、基地局の設置状況、電波の込み具合を測定でき、統計情報を得ることができる。
【符号の説明】
【0021】
100 無線機
110 ベースバンド部
111 信号処理部及びFFT演算部
112 DPD演算部
113 制御部
114 閾値判定部
120 送信回路
121、122 DAC(デジタルアナログ変換器)
123 直交変調器
124、139 フィルタ
125 高出力電力増幅器
126 Dup(デュプレクサ)
130 帰還回路
131 可変利得増幅器
132、135 結合線路
133、134、136 スイッチ
137 ADC(アナログデジタル変換器)
141 周波数発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線の信号を送信する送信回路と、
送信回路から出力された信号を放出するアンテナと、
前記アンテナから入力した信号を処理する信号処理部と、
前記アンテナに対する信号の出力と前記アンテナからの信号の入力とを切り替えるスイッチとを備え、
干渉波を測定する際に、前記スイッチは、前記アンテナに対する信号の出力から前記アンテナからの信号の入力に切り替えて、前記信号処理部は、前記アンテナから入力した信号に対する干渉波を検出する無線通信装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記干渉波を検出したとき、送信する信号の出力を制限する請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、前記干渉波を検出したとき、送信する信号の帯域幅を狭くする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記信号処理部は、前記干渉波を検出したとき、送信する信号の多値変調を下げる請求項2または3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記送信回路と前記アンテナとの間に結合線路または方向性結合器を備え、
前記信号処理部は、前記結合線路または方向性結合器から取り出された信号に基づいて前記干渉波を検出する請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
送信信号と受信信号を合成、分離するデュプレクサを備え、
前記結合線路または方向性結合器は、前記デュプレクサと前記アンテナとの間に設けられている請求項5に記載の無線通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−239009(P2012−239009A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106248(P2011−106248)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】