説明

無線ICタグにおける静電放電の抑制方法

静電放電制御システムまたは回路は、無線IC(RFID)タグのような電気回路を静電気損傷から保護するために電圧可変物質を用いる。前記回路は二つの分離した電気回路配線と配線間にギャップを含んでいる。前記回路は配線間に接続された集積回路のような電気素子を含んで保護する。前記回路は前記ギャップに隣接して配置され、静電放電事象が発生した場合、第1回路線を第2回路線に直接電気的に連結するために構成された電圧可変物質を含んでいる。電圧可変物質は異方性でありうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
無線IC(“radio freauency identification:RFID”)タグの利用は良く知られている。無線ICタグは従来のバーコードの代替、及び周知の識別ラベルの補足としてしばしば用いられている。任意のチップまたは素子に関わる無線ICタグはある距離を置いて、物体または障害物を高周波に通すことで感知または読まれる。読み取り器でそれぞれのタグをシンプルに問い合わせることによって、全ての商品を同時に棚卸しすることを利用者に可能とさせるため、しばしば無線ICタグはパレット商品につけられる。これに対して、従来のバーコードが使用される場合、パレット上のそれぞれの品目、及びパレット自身は中身や状態を検証するために個々にスキャンされる必要がある。このように、無線ICタグは大きな時間節約、及び効果的な利点を提供している。
【背景技術】
【0002】
無線ICタグは製品の品質、状態、及び位置を保証し、及び探知するために民生用アプリケーションとしても用いられる。技術の成長につれて、無線ICタグはインタラクティブ、またはマルチメディア製品の命令、処方のアドバイス、及びその他の役に立つ情報を提供することに用いられてもよい。
【0003】
無線ICタグは、半導体物質及び絶縁物質から構成される集積回路を一般的に含んでいる。半導体物質(例えばシリコン)及び絶縁物質(例えば二酸化ケイ素)は、タグの一部に形成された過度の電気量が異なる電位差を有する他の物質へ流れることに起因する静電放電(“ESD”)、または突然、及び瞬時の電流による損傷に影響を受けやすい。ESDは半導体物質及び絶縁物質を破壊し、それによって無線ICタグの故障を引き起こす。
【0004】
無線ICタグの利用が一般的になり、その機能や複雑性が増加するにつれて、タグの故障や動作不能は次第に悪い結果を有することになる。それ故、無線ICタグ及び他の同様のデバイス、または回路を、厄介で潜在的に有害な放電事象から保護するシステム、デバイス、及び/または方法を提供することは有益である。
【0005】
静電放電を抑制し、静電放電事象に起因する損傷から保護するシステムや方法がここで開示されている。特に、静電放電制御システムは、非連続的な電気回路の一部の間に蓄積する帯電を補い、均一にするための電圧可変物質を含んでいる静電放電制御システムが開示されている。
【特許文献1】米国特許第7183891号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施形態において、静電放電抑制システムは、第1回路線、及び該第1回路線と連携し、それらの間にギャップを定義するために構成された第2回路線、を有する電気回路を含んでいる。前記システムはさらに、第1回路線と接触するために構成された第1コンタクト、及び第2回路線と接触するために構成された第2コンタクトを有する電気素子を備えている。前記実施形態では、静電放電事象の発生した場合、第1回路線を第2回路線に電気的に直接連結させるための異方性の形状で、ギャップに隣接して配置された電圧可変物質も備えている。
【0007】
もう一つの実施形態において、静電放電抑制システムは、第1回路線、及び該第1回路線と連携し、それらの間にギャップを定義するために構成された第2回路線、を有するアンテナを含んでいる。前記システムはさらに、第1回路線との電気的接続のために構成された第1コンタクトと、第2回路線との電気的接続のために構成された第2コンタクトと、を有する無線ICデバイスを含んでいる。前記実施形態では、静電放電事象の発生した場合、第1回路線を第2回路線に電気的に直接連結させるために構成された異方的に、ギャップに隣接して配置された電圧可変物質も備えている。
【0008】
さらなる実施形態において、静電放電を抑制する方法は、アンテナを提供する段階と、アンテナの第1及び第2部分の間にギャップを定義する段階と、アンテナの第1及び第2部分に無線ICデバイスを電気的に連結させ、ギャップ内に電圧可変物質を堆積する段階と、を含んでいる。ここで、電圧可変物質は、静電放電事象の発生した場合、アンテナの第1及び第2部分を電気的に連結するために異方的に堆積される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ここで提供された開示に従って構成されたシステム及び方法は、静電放電を有利的に抑制、制御し、そして、例えば無線ICタグのような電気素子を静電放電事象に起因する損傷から守りうる。さらに、これらの例となるシステム及び方法は、物質、部品等の間の熱伝導的に不釣合いな組み合わせに起因するストレスに対して、より大きな構造強度、及び抵抗を提供する。追加の特徴及び本発明の利点は以下の詳細な説明及び図面で開示され、明らかにされる。
【0010】
図1は、無線IC(“RFID”)タグ10と連携するために構成された読取機50を含む周知の無線ICシステムを図示している。携帯端末またはスキャナのようなハンドヘルドな素子でありうる読取機50は、電源54に連結されたプロセッサ52及び送受信機(transceiver)56を含んでいる。無線ICタグ10はアンテナ12を含んでおり、該アンテナ12は、追加の製品情報、トラッキング情報、輸送情報、またはいかなる他の所望の製品情報、を蓄積または包含することのできる集積回路チップまたはチップ14に連結されていても、されていなくてもよい。動作において、電源54で作動されたプロセッサ52は、送受信機56によって伝送される信号を提供する。送受信機56によって交信された信号の伝送エネルギーは、無線ICタグ10を読取機50へ誘導的に及び通信的に連結するために働く。電流は、アンテナ12の内部で順に生成される。電流は無線ICタグ10の有無を単純に示すための“ゼロビット”として働きうる。あるいは、電流はチップ14に電力を供給し、それによって蓄積される追加の情報が無線ICタグ10と読取機50の間で交信させることを可能にしている。
【0011】
図示された無線ICタグ10は、内部に電源を持たず、代わりに誘導的に電力が供給され、読取機50によって問い合わせられる受動タグである。本願において、無線ICタグはあるいは、基板上に印刷されたバッテリーを含む半受動素子でありうる。現世代とは対照的に、印刷されたバッテリー電源の追加は、アンテナ12を交信のために最適化することを可能にしている。もう一つの実施形態において、無線ICタグ10は、長寿命バッテリー、一つまたはそれ以上の集積回路14、表示素子、ストレージ素子等を含む能動タグでありうる。
【0012】
本願の開示の目的に対して、無線ICタグ10は、その物理的構成に関係なく100kHzまたはそれ以上の周波数で伝搬される電波を経由して情報を交信するために構成された任意の素子を含んでいる。実際、個々のタグの動作周波数は、もし一般的なタグの全体構成が非常に似ているなら二次的考察で考慮されうる。このように、特定のタグを動作する周波数は一番関心のあるものではなく、むしろ静電放電事象により引き起こされる損傷に対して、一般的なタグまたはタグ構造/形態が影響を受けやすいことに興味がある。
【0013】
図2及び3は本願の開示の教示に従って構成された無線IC(RFID)タグ100の一つの実施形態を図示している。図2は、印刷工程での利用のために構成されたマルチパネル基板102を示している。マルチパネル基板102は、スクリーンプリンタまたはプリンタ(図示せず)と物理的及び/または可視的に整列するため、ツーリングホールまたは基準点(fiducial)104を含んでいる。マルチパネル基板102はさらに、共通のマトリクス内部で支えられた複数の単一パネル106を含んでいる。この配置において、マルチパネル基板102上の各々の単一パネル106は、例えばアンテナ108、バッテリー(図示せず)、有機発光ダイオード(“OLED”)マトリクス(図示せず)、プロセッサ等を定義するために金属インクまたはペーストを用いて同時に印刷されうる。この配置は、多数の無線ICタグの高速な製造を可能にし、これらの素子に対する要求が増加するにつれて有益となる。
【0014】
図3は、マルチパネル基板102の要素として製造されうる無線ICタグ100を層毎に分解した図である。例えば、この例示的な実施形態において、パネル106はマルチパネル基板102から分離され、下部表面上で圧力接着層110を支える。パネル106は例えば、マルチパネル基板102から容易に機械的分離を可能にするあらかじめ切れ目の入れられたパネルでありうる。あるいは、パネル106は従来の方法でマルチパネル基板102から穿孔または切断されうる。単一パネル106が、マルチパネル基板102により形成されたマトリクスからどのように取り除かれるかに関わらず、接着層110は、無線ICタグ100と別の物体との間に機械的結合を形成しうる機構を提供する。パネル106は能動基板であり、無線ICタグ100が用いられている応用に基づいてFR‐4、セラミック、ガラス、可塑性基板、またはそれらの変形、のような堅い基板、でありうることが理解されるだろう。
【0015】
アンテナ108は、例えばインクジェット工程を経てパネル106の上部表面に堆積されてもよい。アンテナ108は第1アンテナ部分114及び第2アンテナ部分116を含んでいる。第1アンテナ部分114は、第1回路線118及び第1パッド122を含んでいる。第2アンテナ部分116は、第2回路配線120及び第2パッド124を備えている。第1及び第2パッド122、124は、チップ14のように集積回路であってもなくてもよいシリコンチップ112を支持または接続するために構成されうる。シリコンチップ112は、例えば、製品の状態、製品の場所、製品利用の指示等、の製品情報の蓄積のような、タスクの変化を実行するために構成またはプログラムされうる。集積回路14に関連して前に議論したように、チップ112は、アンテナ108を通じて生成された誘導電流の形で読取機50から受けたエネルギーによって電力が供給されうる。もしくは、チップ112は、回路の一部であるバッテリー111によって電力が供給されてもよい。バッテリー111は、基板の上に配置された別々のバッテリーであってもよく、または無線IC回路の一部として基板の上に印刷された低コストのバッテリーであってもよい。追加的に、回路は少なくとも集積回路112に接続されたOLEDのような照明源113を含んでいてもよい。
【0016】
図示された実施形態において、電圧可変物質126は、第1及び第2パッド122、124の間で定義されたギャップ128と交差して堆積される。電圧可変物質は、絶縁粒子、半導体粒子、ドープされた半導体粒子、導体粒子、及びそれらの組み合わせ、のような特定の異なる粒子のタイプの一つまたはそれ以上、または全てを支持、及び固定する絶縁結合剤を含んでいてもよい。絶縁結合剤は、導体、金属表面、または非導体、絶縁表面のような、表面に本来の粘着特性または自己粘着を有していても良い。絶縁結合剤は自己硬化結合剤であってもよく、それによって電圧可変物質126はギャップ128及び第1及び第2パッド122、124に塗布されて、その後加熱あるいは硬化することなく用いられる。しかしながら、結合剤を含む電圧可変物質126は硬化を加速させるために加熱または硬化されてもよいことは理解されるべきである。電圧可変物質の他の実施形態は同一出願人による特許文献1(タイトル「電圧可変物質の直接利用、それらを用いた素子、及びそのような素子を製造する方法」)に開示されており、全体の内容は全ての課題に対して参照することにより本書に組み込まれる。電圧可変物質は、パッドの上、及びギャップ内でスクリーン印刷、ステンシル印刷が、加圧された物質源から抑制、及び直接法で施行されるか、または、ピックアンドプレースが施行されてもよい。
【0017】
導体粒子は静電放電抑制システムの実施形態で効果的に用いられている。導体粒子は、アルミニウム、真ちゅう、カーボンブラック、銅、グラファイト、金、鉄、ニッケル、パラジウム、白金、銀、ステンレススチール、スズ、チタン、タングステン、亜鉛、及びそれらの合金、及びその他の金属合金、の粒子を含んでいてもよい。一つの実施形態において好ましくは、粒子は60ミクロン(マイクロメーター)未満の粒子サイズを有している。他の実施形態において、粒子サイズは20ミクロン未満、または10ミクロン未満である。さらにもう一つの実施形態において、平均粒子サイズが、ナノメートルの範囲まで下がって、1ミクロン未満を有する導体粒子が用いられる。
【0018】
半導体または導体粒子は静電放電を抑制、制御するために用いられてもよい。一つの実施形態において、半導体粒子は、ヒュームド・シリカ(“Cab‐O‐Sil”)、シリコンカーバイト、ビスマス、銅、亜鉛、カルシウム、バナジウム、鉄、マグネシウム、カルシウム、及びチタンの酸化物;シリコン、アルミニウム、クロム、チタン、モリブデン、ベリリウム、ホウ素、タングステン、及びバナジウムの炭化物;カドミウム、亜鉛、鉛、モリブデン、及び銀の硫化物;窒化ホウ素、窒化ケイ素、及び窒化アルミニウムのような窒化物;チタン酸バリウム、チタン酸鉄;モリブデン及びクロムのシリサイド;及びクロム、モリブデン、ニオブ及びタングステンのホウ化物を含んでいる。別の実施形態において、半導体粒子は、シリコンカーバイト、チタン酸バリウム、窒化ホウ素、リン化ホウ素、リン化カドミウム、硫化カドミウム、窒化ガリウム、リン化ガリウム、ゲルマニウム、リン化インジウム、酸化マグネシウム、シリコン、酸化亜鉛、及び硫化亜鉛、及びポリピロールまたはポリアニリンのような電気的にいくらか導体のポリマー、の一つかそれ以上の粒子を含んでいる。これらの物質は所望のレベルの電気伝導性を達成するために、例えば燐、ヒ素、またはアンチモンのような適切な電子ドナー、または鉄、アルミニウム、ホウ素、またはガリウムのような電子アクセプタと共にドープされる。絶縁粒子は導体粒子よりもいくらか小さく、好ましくは200から約1000オングストローム(Å)の範囲であり、バルク伝導率は1ジーメンス/m未満である。半導体粒子は、約0.1ミクロンから5ミクロンのようにいくらか大きな粒子サイズを有してもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、絶縁粒子は以下の物質の粒子も含んでいる:ガラス、ガラス球、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、三水和アルミナ、カオリン、カオリナイト、熱可塑性または熱硬化性ポリマーの非常に小さな粒子のようなプラスチック。絶縁粒子は鉄、アルミニウム、亜鉛、チタン、銅の酸化物、及びモンモリロナイトまたはベントナイト型の粘土のような粘土、を含んでいてもよい。
【0020】
他の実施形態において、標準的な動作条件下で絶縁体として作用するガラスまたはポリマーの非常に薄い層は、電圧可変物質として用いられてもよい。これらの物質は、ガラス、またはアラミド繊維のようなNomex(登録商標)またはKevlar(登録商標)繊維として知られているポリマー繊維、の薄いマットまたは層を含んでいる。ポリマーはシリコーンゴム及びエラストマー、天然ゴム、有機ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリル樹脂)、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、フェノールホルムアルデヒド、エポキシ、アルキド、ポリウレタン、ポリイミド、フェノキシ、多硫化物、ポリフェニレン酸化物、ポリビニル塩化物、フルオロポリマー、及びクロロフルオロポリマーを含んでいてもよい。これらの物質、特に非常に薄いマット、つまり低デニール繊維は、電圧可変物質が望まれる層の間を接着するために、液状またはペーストの粘着マトリクスと共に用いられてもよい。静電放電事象が起こるとき、誘電作用が前記物質と交差、または前記物質を通って起こり、その一部である回路を保護しうる。例えば、以下で議論されるように、そのような層またはマットが、高電圧放電のための一つの目的として用いられ、同時にもう一方の物質が低電圧放電、または、通常動作での電気伝導のためのもう一つの目的として用いられてもよい。これらの物質はこのようにして、さらに以下で議論されるように静電放電に対して異方性防護を達成する手段を提供する。
【0021】
電圧可変物質126は、高電場及び異常に高いピークパワーを生み出す過渡電流の電気的ストレスから保護する。前に議論したように、これらの過渡電流の電気的ストレスまたは放電は、回路におけるチップ112または他の高感度電気部品を一時的、または永遠に無機能にさせる。過剰電荷が例えば第1アンテナ部分114上に生み出されるか、または蓄積して、チップ112を通って第2アンテナ部分116へ放電するとき、電気的過渡現象が起こりうる。放電または過渡電流は、サブナノ秒からマイクロ秒回で最大振幅を上昇させ、振幅ピークの繰り返しを得る。
【0022】
ギャップ128の一面に配置された電圧可変物質126は、低電圧または通常の動作電圧で高い電気インピーダンス状態を示す。放電またはビルドアップが起こるとき、電圧可変物質は低インピーダンス状態へと即座に切り替わる。このようにして、上で定義された実施例において、第1アンテナ部分114上に蓄積された電荷は、チップ112を通る代わりに電圧可変物質126を通って、第2アンテナ部分116へ放電する。電気的過渡現象が消えるとき、電圧可変物質126は高抵抗状態に戻る。このようにして、電圧可変物質126は、第1及び第2アンテナ部分114、116の間の電位または電気量を均一にすることによって、これらの過渡現象の間でチップ112を保護する。アンテナ108の第1及び第2アンテナ部分114、116上にためられた電荷または電位は容量結合され、アースへ放電される。
【0023】
あるいは、パネル106または全てのマルチパネル基板102は、電圧可変物質126から製造され、それによって、ギャップ128及び第1及び第2パッド122、124上に追加の物質を堆積させる必要が無くなる。この手順において、第1及び第2アンテナ部分114、116及び第1及び第2パッド122,124は電圧可変物質126上に堆積され、静電放電事象が起こるときだけ電気的に連結される。
【0024】
図3に示されるように、無線ICタグ100はラベル層130をさらに含みうる。ラベル層130は製品情報132、ロゴ134、及び他の所望の情報を含む固定ラベルであってもよい。あるいは、ラベル層130はOLEDラベルのような情報を変化させるアクティブラベルであってもよい。アクティブラベルはチップ112によって制御されてもよく、またはそれ自身のプロセッサやコントローラを含んでもよい。もう一つの実施形態において、電圧可変物質126がアンテナ108の上または下に連続層として印刷されてもよい。
【0025】
図4は、チップ112が第1及び第2パッド122、124に隣接して配置された図3の区切り線III‐IIIに沿った断面図を図示している。この例示的な実施形態において、チップ112は、電圧可変物質126を経てギャップ128及びパッド122,124上(z方向を示す)に固定されている。この実施形態において構成されるような電圧可変物質126はいくつかの利点を提供する。例えば、電圧可変物質126は、チップ112をギャップ128に隣接してパッド122,124へ結合させる自己硬化結合剤であってもなくてもよい絶縁結合剤を含んでいる。この実施例において、チップ112及びパッド122、124の間が圧縮されるとき、参照番号126’で示される電圧可変物質126は通常の動作の間でz方向にだけ電気伝導を可能にする異方性特性を帯びる。これは、チップとパッド間の物質の厚さが、パッド122と124の間の水平方向のようなz軸に垂直な方向と比べてz方向では小さいからである。言い換えれば、無線ICタグ100が作られると、電圧可変物質126’はチップ112及びパッド122,124の間だけで電気通信を促進し、パッド122、124の間の電気通信を阻止または防止する。このように、静電放電事象が発生した場合、電圧可変物質126’がチップ112と第1及び第2アンテナ部分114,116の間の電気通信を抑制及び防護する。この実施例において、それは回路に異方性を加える構成または設計である。他の実施例において、物質自身が方向の違いで異なる特性、つまり、本質的に異方性である特性を有していてもよい。静電放電抑制または制御は回路の保護を達成するためにどちらかの方法、または両者の方法を用いてもよい。
【0026】
図5は、第1及び第2のパッド122,124に隣接して配置されたチップ112を示す図3の区切り線III‐IIIに沿ったもう一つの断面図を示している。この実施形態において、チップ112は、参照番号136によって概して示された導体素子を利用して第1及び第2パッド122,124に固定されてもよい。導体素子136は、第1及び第2パッド122,124とチップ112上の対応する接点の間の電気通信を提供する。電圧可変物質126は、取り付け後チップ112を支持、及び固定するためにアンダーフィル材料として用いられてもよい。アンダーフィルとしての電圧可変物質126の利用は、パネル110とチップ112の間の熱膨張係数の差を補う働きをする。そうでない場合、これらの差は、パネル110及びチップ112が異なる速度で膨張及び/または接触を引き起こし、導体素子136上に周期的なストレスを負わせうる。時間が経つと、導体素子上の前記ストレスは、第1及び第2パッド122,124からチップのクラッキングと分離を引き起こし、それによって無線ICチップ100の機能を減少または破壊しうる。このようにして、この例示的な実施形態において、電圧可変物質126は、物理的な、例えば周期的な、ストレス及び静電放電事象からチップ112を電気的及び機械的に保護するために構成される。
【0027】
図6Aは、図5に示される付記Vにより概して示された拡大断面図を示している。一つの実施形態において、導体素子136は、参照番号136’で概して示された第2のパッド124に治金で結合されたはんだボールである。治金結合は、例えばはんだボール136’と第2パッド124が合金になる点まで加熱されることによって達成される。
【0028】
図6Bは、図5に示される付記Vにより概して示されたもう一つの拡大断面図を示している。この実施形態において、導体素子136は参照番号136’’によって概して示される金バンプである。金バンプ136’’は、チップ112上に機械的に結合または接合され、例えば等方性導電接着剤138を経て第2パッド124に結合される。導電接着剤138は、金バンプ136’’とパネル110上に形成された第2パッド124の間の物理的な接続を達成するために、第2パッド124の表面上に堆積される。図6A及び6Bで用いられた導体素子136、136’、及び136’’に関わらず、電圧可変物質126はチップ112をアンダーフィル(underfill)または支えて、そして、第1及び第2パッド122,124及びギャップ128で終端している第1及び第2アンテナ部分114、116の間の静電放電事象を抑制する。
【0029】
図7は、第1及び第2パッド122,124の上のz方向に存在する図3のチップ112の区切り線III‐IIIに沿ったさらなる断面図を示している。この実施形態において、チップ112は、周知の方法、例えば導体素子136を経て第1及び第2パッド122,124に固定され、電圧可変物質126で封止される。封止(encapsulation)は、チップ112、パッド122,124、及び回路線118,120(図示されていない)を偶然の損傷及び汚染物質への露出から保護する。図のように、電圧可変物質126の封止は、チップ112、及びパッド122、124を完全に覆いアンダーフィルする。この構造において、電圧可変物質126は:(i)ギャップ128と交差する放電に対して保護する;(ii)図6A及び6Bに関連して議論された熱ストレスに対して保護する;(iii)無線ICタグ100全体の物理的構造安定性を強化する。
【0030】
図8A及び8Bは、静電放電防護を含む無線ICタグ150のもう一つの実施形態を示している。無線ICタグ150は印刷されたアンテナ部分を有するフリップチップである。前記タグはダイの概周囲で配置された接触バンプ154、156、158、及び160を備えるチップまたはダイ152である。接触バンプ154,156,158、及び160は、導電性物質、例えば導電接着剤、金、及びスズ‐鉛、スズ‐銀‐銅、スズ‐ビスマス、またはスズ‐銀のようなはんだ、の種類によって任意の周知のバンピング工程で形成されうる。図示された無線ICタグ150はさらに、印刷されたアンテナ部分162,164,166、及び168を含んでいる。印刷されたアンテナ部分162,164,166、及び168は、ダイ152の接触バンプ154,156,158、及び160に接触し、及び一面を覆う。この処理はダイ152及びアンテナの間で達成される電気的接続を可能にする。
【0031】
図8Bは、電圧可変物質126と連携した無線ICタグ150を示している。電圧可変物質126はダイ152上に堆積されうる。電圧可変物質126は印刷されたアンテナ部分162,164,166,168と接触する。この構成において、アンテナ部分162,164,166,168のいずれか一つの上の静電蓄積は、ダイ152が放電によって傷つく前に他のアンテナ部分162,164,166,168の間で分布及び均一化される。上で議論したように、各アンテナ部分162,164,166,168上に均一化された電荷は、容量結合され、アースへ放電されうる。
【0032】
図9は、高速グラフィックアート印刷工程で効果的に集積されうる構造に、非接触アレー処理でチップ112が取り付けられた無線ICデバイスのもう一つの実施形態を示している。例えば、チップ112は、第1及び第2リード線140,142の間に堆積された導体接着剤ドット144を用いて、第1及び第2リード線140,142に固定される。第1及び第2リード線140,142は、導体接着剤144及びシリコンチップ112が適用されることを可能にするため、ストラップまたはテープ146及び巻き付けられたオープンリール上で製造されうる。導体接着剤144は例えば、自己硬化物質のような電圧可変物質でありうることが理解されるだろう。このようにして、チップ112は、電圧可変物質を経てリード線140,142で封止され、支えられ、そうでなければ取り付けられる。結果として生じるチップ及びリード線の集合体は、テープ146から取り除かれ、及び、例えば電圧可変物質126を用いることにより、例えばパッド122,124に伝導的に固定されてもよい。
【0033】
電圧可変物質の要素は、マトリクス、または、粘着性または他の有機型物質及び導電体金属のような充填剤(filler)のような物質の大部分、を含んでいてもよい。図10は、粘着性マトリクス92が導体タングステン粒子96(平均サイズは約100nm(ナノメートル))を取り囲む物質90を描いている。粒子のいくらかは縦横比を有している。つまり、すなわち、一つの次元は他の二つの次元よりも長さが長い。粒子の縦横比は異方性電気特性もたらす。すなわち前記物質は一つの次元が他の次元と比べてより伝導する。
【0034】
本実施例において、前記物質は導体粒子の長軸方向、すなわち図10において上から下よりも右から左でより電気を導く。前記物質が塗布または印刷の間で流入し、粒子が好ましい方向に整列する場合、異方性は強化されるだろう。この場合には、伝導のための好ましい方向はZ方向、すなわち、無線ICデバイスのアンテナまたはパッドと、シリコンチップまたは集積回路部分、の間で導電が望まれる。そのようなZ方向の導電性は、アンテナまたはパッドとチップの間に電圧可変物質の薄い層を用いることによって促進されうる。あるいは、静電放電が助長されるギャップ内に低導電性電圧可変物質、そして該低導電物質の上及びアンテナまたはパッドとチップの間により導電的な物質、を有する異なる物質が用いられてもよい。例えば、マットまたはポリマーを適所に固定するため、そして、アンテナ及び無線ICチップの間にいくらか導電体、または他の装置では他の導電体、を提供するために粘着性ペーストの電圧可変物質の層が用いられうる一方で、上で議論された繊維またはポリマーが、静電放電に対する防護を提供するためにギャップ内で挟まれうる。
【0035】
このような防護システムの例は図11に示される。静電放電システム170は、重合または合成基板のような、回路基板171を含んでいる。基板171は、無線ICアンテナの一部であっても、電気回路の他の部分であってもよい導体172,173、を含んでいる。第1電圧可変物質177は導体間のギャップ176内に配置されうる。物質177は上で議論されたようにガラスまたはポリマーであり、第2電圧可変物質174の層間に挟まれている。第2電圧可変物質174は特定の充填剤を有する粘着性、液体、またはペースト型の物質でありうる。物質174はギャップ176の残りを満たし、導体172、173の頂部を非常に薄い層175(通常の動作において導体172,173と電気素子179の間で電気伝導が起こるほど十分に薄い)で覆ってもよい。いくつかの実施形態において、追加の導体要素178a,178bは、薄層175と電子デバイス179の間に配置されてもよい。標準状態の下、電力または信号は、導体172、第1要素178a、及び素子179の間、及び独立して、素子179、第2要素178b、及び第2導体173の間、で伝導する。静電放電事象が発生するとき、異方性特性で帯電を放電するために、第1電圧可変物質177及び第2電圧物質174はギャップ176を交差して伝導する。
【0036】
ここで述べられた現在好ましい実施形態に対する様々な変形や修正は当業者に対して明らかであることを理解すべきである。そのような変形や修正は所望の利点を減少させることなく、及び本発明の精神及び範囲から逸脱することなくなされうる。そのような変形や修正は本願クレームによって保護されることを意味している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】周知の無線ICタグシステム。
【図2】本願の開示の教示に従って構成された無線ICデバイスの一つの実施例。
【図3】図2で示された無線ICデバイスの分解図。
【図4】図3で示された区切り線III‐IIIに沿った、もう一つの実施形態の無線ICデバイスの断面図。
【図5】図3で示された区切り線III‐IIIに沿った、もう一つの実施形態の無線ICデバイスの断面図。
【図6A】図5の付記Vで示されるような無線ICデバイスの接続部の拡大断面図。
【図6B】図5の付記Vで示されるような無線ICデバイスの接続部の拡大断面図。
【図7】図3で示される区切り線III‐IIIに沿った、もう一つの実施形態の無線ICデバイスの断面図。
【図8A】本願の開示の教示に従って構成された無線ICデバイスのもう一つの実施形態。
【図8B】本願の開示の教示に従って構成された無線ICデバイスのもう一つの実施形態。
【図9】本願の開示の教示に従って構成された無線ICデバイスを用いたチップアッセンブリの実施形態。
【図10】静電放電制御システムの実施形態における電圧可変物質に存在しうる異方性。
【図11】電気素子を保護するために異方性を利用するもう一つの静電放電抑制システム。
【符号の説明】
【0038】
10、100 無線ICタグ
12、108 アンテナ
14 チップ
50 読取機
52 プロセッサ
54 電源
56 送受信機
90 物質
92 粘着性マトリクス
96 導体タングステン粒子
102 マルチパネル基板
104 ツーリングホールまたは基準
106 単一パネル
110 接着層
112 シリコンチップ
114 第1アンテナ部分
116 第2アンテナ部分
118 第1回路線
120 第2回路線
122、124 パッド
126 電圧可変物質
128 ギャップ
130 ラベル層
132 製品情報
134 ロゴ
136 導体素子
136’ はんだボール
136’’ 金バンプ
138 等方性導電接着剤
140 第1リード線
142 第2リード線
144 導体接着剤
150 無線ICタグ
152 ダイ
154、156、158、160 接触バンプ
162、164、166、168 アンテナ部分
170 静電放電システム
171 回路基板
172、173 導体
174 物質
175 薄い層
176 ギャップ
177 第1電圧可変物質
178a 導体素子
178b 導体素子
179 電気素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電放電抑制システムであって、
第1回路線(118)、及び該第1回路線と整列されて、それらの間のギャップ(128)を定義するために構成された第2回路線(120)を有する電気回路(100)と;
第1回路線に接続するために構成された第1コンタクト及び第2回路線に接続するために構成された第2コンタクトを有する電気素子(112)と;
静電放電事象が発生した場合、第1回路線を第2回路線に直接電気的に連結するための異方性の形状で、ギャップに隣接して堆積された電圧可変物質(126)と;
を備えたシステム。
【請求項2】
前記電気回路は無線ICタグ(100)用のアンテナ(108)である請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電気素子は集積回路(112)である請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記電圧可変物質は異方性(177)である請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記電圧可変物質は導電接着剤(144)である請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
可塑性基板または硬質基板(102)をさらに備えた請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記電圧可変物質は前記電気素子の少なくとも一部分でアンダーフィルする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
静電放電抑制システムであって、
第1回路線(118)、及び該第1回路線と整列されて、それらの間のギャップ(128)を定義するために構成された第2回路線(120)を有する電気回路(100)と;
第1回路線との電気接続のために構成された第1コンタクトと、第2回路線との電気接続のために構成された第2コンタクトと、を有する無線ICデバイス(112)と;
異方的にギャップに隣接して堆積され、静電放電事象が発生した場合、第1回路線を第2回路線に直接電気的に連結するために構成された電圧可変物質(126、126’)と;
を備えたシステム。
【請求項9】
前記電圧可変物質は前記無線ICデバイスをアンダーフィルする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記回路内に配置され、回路接続のために印刷されたバッテリーをさらに備えた請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも前記アンテナ及び前記無線ICデバイスを支える基板(102)、及び少なくとも前記無線ICデバイスに接続されたバッテリーをさらに備えた請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記電圧可変物質は、通常動作で前記無線ICデバイスと前記アンテナの間に電気伝導を可能にするように構成され、静電放電事象が発生した場合、前記第1回路線を前記第2回路線に直接電気的に連結するため構成された請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1及び第2回路線の間と前記第1及び第2コンタクトの間の少なくとも一方に導体素子(136、136’、136’’)をさらに備えた請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
静電放電を抑制する方法であって、
アンテナを提供する段階と;
前記アンテナの第1及び第2部分の間にギャップを定義する段階と;
無線ICデバイスを前記アンテナの第1及び第2部分に電気的に連結する段階と;
静電放電事象が発生した場合、前記アンテナの第1及び第2部分を電気的に連結するために異方的に堆積された電圧可変物質を前記ギャップ内に堆積する段階と;
を備えた方法。
【請求項15】
前記アンテナを提供する段階は、アンテナを定義するために電気伝導物質を印刷することを備えた請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記無線ICデバイスに連結された電源または光源を提供する段階をさらに備えた請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記無線ICデバイスを前記アンテナに電気的に連結する前に、前記アンテナ上に導体素子を堆積する段階をさらに備えた請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記電圧可変物質を提供する段階は、前記無線ICデバイスと前記アンテナの間に少なくとも一つの前記電圧可変物質の薄い層を提供し、それによって通常動作で前記無線ICデバイスと前記アンテナの間で電気伝導が存在する段階を備えた請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記電圧可変物質はそれ自身が異方性物質である請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記堆積する段階は、ピックアンドプレース施行、直接施行、印刷、スクリーン印刷、またはステンシル印刷の群から選ばれた請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−529734(P2009−529734A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558557(P2008−558557)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/063709
【国際公開番号】WO2007/106747
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(501246662)リッテルフューズ,インコーポレイティド (26)
【Fターム(参考)】