説明

無線ICチップおよびこれを用いた位置認識システム並びにセキュリティシステム

【課題】 無線ICチップに、電波の受信が途絶えたならば保持しているデータが消失する仕組みを加え、無線ICチップの利便性を向上させる。
【解決手段】 不揮発性メモリ111を含む回路ユニット110と、揮発性メモリ211を含む回路ユニット210と、不揮発性メモリ111および揮発性メモリ211に対してデータの読み書きを行う読み書き回路と、第1の電波を受信して回路ユニット110に電力を供給する第1の電力供給手段であるアンテナ21およびRFアンプ100と、第1の電波とは周波数が異なる第2の電波を受信して回路ユニット210に電力を供給する第2の電力供給手段であるアンテナ22およびRFアンプ200とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交信用の電波を用いて電力を供給され、当該電波により非接触で情報の読み書きが可能な無線ICチップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線IC(Integrated Circuit)チップを用いて人や物を識別・管理するRF−ID(Radio Frequency Identification)と呼ばれる技術が注目されている。RF−IDで使用される無線ICチップ(RF−IDタグ、無線ICタグ等とも呼ばれる)は、電波や電磁波でリーダー/ライターと交信し、アンテナ側からの非接触電力伝送技術により、電池を持たずに動作することができる(例えば、特許文献1、2、非特許文献1参照)。
【0003】
無線ICチップは、通常、チップ内部に不揮発性メモリを有しており、リーダー/ライターから電波等で交信することにより、この不揮発性メモリに対してデータの読み書きを行うことができる。不揮発性メモリを用いることにより、無線ICチップがリーダー/ライターからの電波を受信しなくなって電力供給が断たれても、書き込まれたデータは消えずに保持される。
【0004】
このことを利用し、流通段階や製造段階にある品物に無線ICチップを付着しておき、各段階で適宜情報を不揮発性メモリに対して読み書きすることにより、品物の物流管理や工程管理を行うことが可能である。
【0005】
【特許文献1】特開2001−291079号公報
【特許文献2】特開2003−331238号公報
【非特許文献1】“基礎から分かる無線ICタグ”、[online]、2004年1月20日、日経BP社、[2004年7月30日検索]、インターネット<http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NBY/RFID/20031204/3/mokuji.jsp>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、不揮発性メモリに書き込まれたデータは、上述したように、無線ICチップがリーダー/ライターからの電波を受信しなくなって電力供給が断たれても保持されるため、既に書き込まれているデータを消去するには、リーダー/ライターを用いて別のデータを上書きする操作が必要であるため、手間を要する。また、リーダー/ライターの電波が届かない状態ではデータの消去ができず利便性を欠く。
【0007】
さらにまた、不揮発性メモリに書き込まれたデータは、リーダー/ライターを用いていつでも読み出すことができる。そのため、情報のセキュリティの観点から、秘匿すべき情報を不揮発性メモリに書き込むような無線ICチップの用い方が困難であった。
【0008】
そこで本発明は、無線ICチップに、リーダー/ライターの電波を受信しているときにのみデータを保持し、電波の受信が途絶えたならばそのデータが消失する仕組みを加え、利便性を向上させた無線ICチップおよびそのような無線ICチップを用いたシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、次のように構成された無線ICチップとして実現される。この無線ICチップは、不揮発性メモリを含む第1の回路ユニットと、揮発性メモリを含む第2の回路ユニットと、不揮発性メモリおよび揮発性メモリに対してデータの読み書きを行う読み書き手段と、第1の電波を受信して第1の回路ユニットに電力を供給する第1の電力供給手段と、第1の電波とは周波数が異なる第2の電波を受信して第2の回路ユニットに電力を供給する第2の電力供給手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、この無線ICチップは、揮発性メモリに対してデータの読み書きを行う読み書き手段と、不揮発性メモリに対してデータの読み書きを行う読み書き手段とを個別に備える構成とすることができる。また、第1の電力供給手段が、第1の回路ユニットにも電力を供給する構成とすることができる。
【0011】
さらに、本発明の無線ICチップは、次のような構成にて実現することもできる。この無線ICチップは、電波を受信してチップ内の回路に電力を供給する電力供給手段と、電力供給手段が第1の電波を受信した場合に、この電力供給手段から電力の供給を受けて動作する第1の回路ユニットと、電力供給手段が第1の電波とは周波数が異なる第2の電波を受信した場合に、この電力供給手段から電力の供給を受けて動作し、この電力供給手段が第2の電波を受信しているあいだメモリに所定のデータを保持する第2の回路ユニットとを備えることを特徴とする。
【0012】
ここで、この無線ICチップにおいて、第1の回路ユニットは、電力供給手段が第2の電波を受信した場合に、この電力供給手段から電力の供給を受けて動作し、第2の回路ユニットのメモリにデータの書き込みを行う構成とすることができる。
【0013】
さらに本発明は、上記の無線ICチップと、第1の領域全体で無線ICチップとの交信が可能な第1の電波でこの無線ICチップとの交信を行うリーダーと、第1の領域内に設定された第2の領域内でのみ無線ICチップとの交信が可能な第2の電波で無線ICチップとの交信を行うライターとを備えるシステムとしても実現される。このシステムにおいて、無線ICチップは、第1の電波または第2の電波を受信してチップ内の回路に電力を供給する電力供給手段と、電力供給手段が第1の電波を受信した場合に、この電力供給手段から電力の供給を受けて動作する第1の回路ユニットと、電力供給手段が第2の電波を受信した場合に、この電力供給手段から電力の供給を受けて動作し、電力供給手段が第2の電波を受信しているあいだメモリにデータを保持する第2の回路ユニットとを備える。また、リーダーは、無線ICチップが第1の領域内に位置する場合に、無線ICチップと交信して第1の回路ユニットを動作させ、メモリに保持されているデータを読み出す。さらに、ライターは、無線ICチップが第2の領域内に位置する場合に、無線ICチップと交信して第2の回路ユニットを動作させ、メモリに所定のデータを書き込むことを特徴とする。第2の領域は第1の領域内に複数箇所設定され、個々の第2の領域に対応する各ライターが、対応する第2の領域内に位置する無線ICチップのメモリに、各々固有のデータを書き込む構成とすることもできる。
【0014】
あるいは、このシステムにおいて、無線ICチップは、第1の電波または第2の電波を受信してチップ内の回路に電力を供給する電力供給手段と、この電力供給手段が第1の電波を受信した場合に、この電力供給手段から電力の供給を受けて動作する第1の回路ユニットと、電力供給手段が第2の電波を受信した場合に、この電力供給手段から電力の供給を受けて動作する第2の回路ユニットとを備える構成としても良い。この場合、第1の回路ユニットまたは第2の回路ユニットのいずれか一方は、揮発性メモリと、この揮発性メモリに対してデータを書き込む書き込み手段とを備える。他方の回路ユニットは、不揮発性メモリと、揮発性メモリに特定のデータが保持されていることを条件にこの不揮発性メモリに格納されたデータを読み出す読み出し手段とを備える。また、リーダーは、無線ICチップが第1の領域内に位置する場合に、無線ICチップと交信して第2の回路ユニットまたは第1の回路ユニットを動作させ、不揮発性メモリに書き込まれているデータを読み出す。さらに、ライターは、無線ICチップが第2の領域内に位置する場合に、無線ICチップと交信して第1の回路ユニットまたは第2の回路ユニットを動作させ、揮発性メモリに特定のデータを書き込む。
【0015】
あるいは、このシステムにおいて、無線ICチップは、第1の電波または第2の電波を受信してチップ内の回路に電力を供給する電力供給手段と、この電力供給手段が第1の電波を受信した場合に、この電力供給手段から電力の供給を受けて動作する第1の回路ユニットと、電力供給手段が第2の電波を受信した場合に、この電力供給手段から電力の供給を受けて動作する第2の回路ユニットとを備える構成とすることもできる。この場合、第1の回路ユニットまたは第2の回路ユニットのいずれか一方は、揮発性メモリと、この揮発性メモリに対してデータを書き込む書き込み手段とを備える。他方の回路ユニットは、不揮発性メモリと、この不揮発性メモリに対してデータの読み書きを行う読み書き手段と、揮発性メモリに保持されているデータを暗号キーとして不揮発性メモリに対して読み書きされるデータの暗号処理を実行する暗号回路とを備える。また、リーダーは、無線ICチップが第1の領域内に位置する場合に、無線ICチップと交信して第2の回路ユニットまたは第1の回路ユニットを動作させ、不揮発性メモリに対するデータの読み書き、およびこのデータに対する暗号キーを用いた暗号処理を実行させる。さらに、ライターは、無線ICチップが第2の領域内に位置する場合に、無線ICチップと交信して第1の回路ユニットまたは第2の回路ユニットを動作させ、揮発性メモリに暗号キーとなるデータを書き込む。
【発明の効果】
【0016】
以上のように構成された本発明によれば、無線ICチップに、リーダー/ライターの電波を受信しているときにのみデータを保持し、電波の受信が途絶えたならばそのデータが消失する仕組みを実現し、無線ICチップの利便性を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
図1は、無線ICチップの構成を概略的に示す図である。
図1に示すように、無線ICチップ10は、リーダー/ライターと無線通信するためのアンテナ20と、データの処理(アンテナ20を用いた送受信を含む)および蓄積を行うICモジュール30を備える。無線ICチップ10の形状は、ラベル型、カード型など様々であり、用途に応じて使い分けることができる。
【0018】
アンテナ20は、電波(電磁波)により送信された無線信号を検出し、電気信号に変換して出力する。ICモジュール30は、この電気信号を動作電力として動作すると共に、この電気信号に含まれる情報にしたがって処理(演算、メモリへの受信データの書き込み、メモリからのデータの読み出しおよび送信など)を実行する。
【0019】
図2は、本実施形態におけるICモジュール30の構成を示す図である。
図1では単一のアンテナ20が記載されているが、図2に示すように本実施形態では、2種類の周波数の電波によって無線ICチップ10を動作させデータの送受信が行えるように、2つのアンテナ21、22が設けられる。また、本実施形態のICモジュール30は、アンテナ21、22にそれぞれ接続された2つのRFアンプ(高周波増幅回路)100、200と、2組の回路ユニット110、210とを備える。そして、回路ユニット110には不揮発性メモリ111が搭載され、回路ユニット210には揮発性メモリ211が搭載される。
【0020】
RFアンプ100は、アンテナ21から電気信号を入力し増幅して出力する。この電気信号は、リーダー/ライターから送信された情報を含む。また、この電気信号は、ICモジュール30の動作電力として、回路ユニット110に供給される。RFアンプ200は、アンテナ22から電気信号を入力し増幅して出力する。この電気信号は、リーダー/ライターから送信された情報を含む。また、この電気信号は、ICモジュール30の動作電力として、回路ユニット210に供給される。
【0021】
回路ユニット110は、演算処理やメモリに対するデータの読み書き等の処理を行うための回路を必要に応じて備えるが、その具体的構成は無線ICチップ10の使用目的や使用方法等に応じて適宜定められるため、詳しくは後述する。ただし、上述したように、回路ユニット110はメモリとして不揮発性メモリ111を備える。これにより、回路ユニット110において保持されるデータは、RFアンプ100からの電力供給が断たれても消えることなく維持される。
【0022】
回路ユニット210は、演算処理やメモリに対するデータの読み書き等の処理を行うための回路を必要に応じて備えるが、その具体的構成は無線ICチップ10の使用目的や使用方法等に応じて適宜定められるため、詳しくは後述する。ただし、上述したように、回路ユニット210はメモリとして揮発性メモリ211を備える。これにより、回路ユニット210において保持されるデータは、RFアンプ200からの電力供給が断たれると、消失してしまう。
【0023】
以上のように、回路ユニット110、210の具体的な回路構成は、無線ICチップ10の使用目的や使用方法等に応じて適宜決定される。しかしながら少なくとも、回路ユニット110は、その処理において、回路ユニット210の揮発性メモリ211に保持されるデータの種類や有無により影響を受ける構成とする。具体的には、例えば、
(1)回路ユニット110に、揮発性メモリ211に対するデータの読み書きを行う読み書き手段を設ける。
(2)回路ユニット110における不揮発性メモリ111に対するデータの読み書きを行う場合の実行条件として、揮発性メモリ211に保持されているデータを用いる。
(3)回路ユニット110におけるデータ処理において、揮発性メモリ211に保持されている暗号キーを用いた暗号処理を行う。
等が考えられる。
【0024】
このような構成とすることにより、アンテナ22により電波を受信され回路ユニット210に電力が供給されて揮発性メモリ211に所定のデータが保持されている場合と、回路ユニット210への電力の供給が断たれて揮発性メモリ211に格納されたデータが消失した場合とで、回路ユニット110は異なる動作をすることとなる。以下、本実施形態の無線ICチップ10の具体的な適用例を挙げ、回路ユニット110、210の具体的な構成および動作と、無線ICチップ10の使用方法を説明する。
【0025】
<適用例1:位置認識システム>
本実施形態の無線ICチップ10を用いて、倉庫内で管理されている品物の位置情報を詳細かつ正確に認識可能な位置認識システムを実現することができる。
図3は、本システムで用いる無線ICチップ10に搭載されるICモジュール30の具体的な構成を示す図である。
図3を参照すると、無線ICチップ10のICモジュール30は、2つのRFアンプ100、200と、2組の回路ユニット110、210とを備えている。
【0026】
回路ユニット110は、不揮発性メモリ111と、読み書き回路112と、演算回路113と、認証回路114とを備える。一方、回路ユニット210は、揮発性メモリ211のみを備える。また、回路ユニット110は、RFアンプ100およびRFアンプ200から電力供給を受けて動作する。一方、回路ユニット210は、RFアンプ200のみから電力供給を受けて動作する。
【0027】
回路ユニット110の読み書き回路112は、アンテナ21、22で受信されRFアンプ100、200で電気信号に変換された受信信号に基づき、回路ユニット110に搭載された不揮発性メモリ111および回路ユニット210に搭載された揮発性メモリ211の双方に対してデータの読み書きを行う。したがって、読み書き回路112は、回路ユニット110がRFアンプ200から電力を供給されている場合、またはRFアンプ100とRFアンプ200の双方から電力を供給されている場合、言い換えれば、アンテナ22が電波を受信している場合、またはアンテナ21とアンテナ22の双方が電波を受信している場合は、不揮発性メモリ111および揮発性メモリ211の双方に対してデータの読み書きを行うことができる。これに対し、回路ユニット110がRFアンプ100のみから電力を供給されている場合、言い換えれば、アンテナ21のみが電波を受信している場合は、不揮発性メモリ111のみに対してデータの読み書きを行うことができ、揮発性メモリ211に対してはアクセスすることができない。
【0028】
なお、読み書き回路112は、回路ユニット210に電力が供給されていない場合に、意味を持たない(言い換えれば、揮発性メモリ211に意味のあるデータが書き込まれていないことを意味する)固定値を揮発性メモリ211からの読み取りデータとして認識することとしている。これは、回路ユニット210に電力が供給されていない場合に、読み書き回路112が揮発性メモリ211からデータを読み取ろうとしてランダムな値を認識してしまうと、認識された値が、揮発性メモリ211に書き込まれている値なのか、揮発性メモリ211にアクセスできないために認識してしまったランダムな値なのかを識別することができないためである。この意味を持たない固定値としては、具体的には、例えば「00」や「FF」が割り当てられる。
【0029】
また、回路ユニット110の演算回路113は、アンテナ21、22で受信されRFアンプ100、200で電気信号に変換された受信信号に基づき、無線ICチップ10の使用目的に応じた、各種の論理演算や算術演算を行う。
認証回路114は、アンテナ21、22で受信されRFアンプ100、200で電気信号に変換された受信信号に基づき、ICモジュール30が動作する前提として、ユーザやリーダー/ライターの認証処理を行う。
【0030】
図4は、本適用例の位置認識システムが適用される倉庫の概観を示す図であり、図4(A)は倉庫を上から見た様子を示し、図4(B)は倉庫を横から見た様子を示す。
図4に示す倉庫には、倉庫の内部全域(領域a)で無線ICチップ10との交信が可能なリーダー/ライター310が設けられている。そして、特に図示しないが、リーダー/ライター310は、位置解析を行う解析装置(コンピュータ)に接続されている。この解析装置は、リーダー/ライター310が無線ICチップ10から読み出したデータに基づいて、当該無線ICチップ10が倉庫内のどの位置にあるかを認識する。
【0031】
また、倉庫内部には、適当な位置に、品物を置く1または複数のパレット400が設けられている。そして、各パレット400の設置位置に、当該パレット400をほぼ覆う範囲(領域b)で無線ICチップ10との交信が可能なリーダー/ライター320が設けられている。各パレット400には固有の識別データが設定されており、個々のパレット400に対応する各リーダー/ライター320は、対応するパレット400上(領域b内)にある無線ICチップ10の回路ユニット210の揮発性メモリ211に、そのパレット400の識別データを書き込むものとする。
【0032】
ここで、無線ICチップ10は、通信に使用される電波の周波数が規格によって定められているが、どの周波数を用いるかによって、通信可能な距離が変わる。例えば、13.56MHzでは通信距離が1.5m、UHF帯(860MHz〜960MHz)では3〜7m等となっている。そこで、リーダー/ライター310では遠距離でも無線ICチップ10と通信可能な周波数を用い、パレット400付近に設置されるリーダー/ライター320では近距離でのみ無線ICチップ10と通信可能な周波数を用いることにより、上記のような設定が可能となる。
【0033】
これに応じて、無線ICチップ10においても、アンテナ21、22が受信する電波の周波数が特定されることとなる。本適用例では、アンテナ21はリーダー/ライター310の電波(f1)を受信し、アンテナ22はリーダー/ライター320の電波(f2)を受信することとする。これにより、回路ユニット110は、無線ICチップ10が付着された品物が倉庫内(領域a)に存在すれば動作することとなる。一方、回路ユニット210は、この無線ICチップ10が付着された品物が倉庫内のいずれかのパレット400上(領域b)に置かれている場合に動作することとなる。
【0034】
さて、上記のように構成されたシステムにおいて、無線ICチップ10が付着された品物Aが、倉庫内に運び込まれ、いずれかのパレット400上に置かれる場合を考える。この品物Aに付着された無線ICチップ10の回路ユニット110の不揮発性メモリ111には、品物Aの識別データが記録されているものとする。品物Aが倉庫内に入った時点で、リーダー/ライター310が無線ICチップ10と交信可能となる。このとき、無線ICチップ10の回路ユニット210には電力が供給されていないので、回路ユニット110の読み書き回路112は不揮発性メモリ111のみからデータの読み出しが可能である。したがって、リーダー/ライター310は、不揮発性メモリ111に格納されている品物Aの識別データを読み出して図示しない解析装置に送信する。解析装置は、リーダー/ライター310から受信したデータに基づき、品物Aが倉庫内に入ったことを認識する。
【0035】
また、この時点では、読み書き回路112は、揮発性メモリ211のデータとして上述した意味を持たない固定値(「00」や「FF」)を認識する。リーダー/ライター310は、不揮発性メモリ111から読み出されたデータと共にこの固定値も取得し、解析装置に送信する。解析装置は、この固定値を受信することにより、品物Aがいずれのパレット400上にも置かれていないことを認識する。
【0036】
次に、この品物Aが倉庫内のいずれかのパレット400上に置かれると、このパレット400に対応するリーダー/ライター320が無線ICチップ10と交信可能となる(以下、この品物Aが置かれたパレット400をパレット400aと記す)。そして、リーダー/ライター320により、無線ICチップ10の回路ユニット110の読み書き回路112が制御され、このパレット400aの識別データが回路ユニット210の揮発性メモリ211に書き込まれる。
【0037】
揮発性メモリ211にデータが書き込まれると、リーダー/ライター310は、回路ユニット110の読み書き回路112を制御して、この揮発性メモリ211に書き込まれたパレット400aの識別データを読み出し、図示しない解析装置に送信する。解析装置は、リーダー/ライター310から受信したパレット400aの識別データに基づいて、品物Aがパレット400a上に置かれていることを認識する。
【0038】
次に、パレット400a上に置かれている品物Aを他のパレット400(以下、このパレットをパレット400bと記す)上に移動する場合を考える。品物Aがフォークリフトその他の運搬手段によりパレット400a上から離れると、パレット400aに対応するリーダー/ライター320の電波(f2)は無線ICチップ10に届かなくなる。そのため、回路ユニット210への電力供給が断たれ、揮発性メモリ211に書き込まれたデータが消失する。したがって、リーダー/ライター310は、パレット400aの識別データの代わりに上述した固定値を取得し、図示しない解析装置に送信する。解析装置は、リーダー/ライター310からの受信データがパレット400aの識別データから固定値に変わったことにより、品物Aがパレット400a上から離れたことを認識する。なお、この品物Aが通路を移動している間は、いずれのパレット400に対応するリーダー/ライター320も無線ICチップ10と交信することができない。したがって、解析装置は、リーダー/ライター310からの受信データに基づき、品物Aがいずれのパレット400上にも置かれていないことを認識する。
【0039】
そして、この品物Aが倉庫内のパレット400b上に置かれると、このパレット400bに対応するリーダー/ライター320が無線ICチップ10と交信可能となる。そして、リーダー/ライター320により、このパレット400bの識別データが回路ユニット210の揮発性メモリ211に書き込まれ、リーダー/ライター310により、この揮発性メモリ211に書き込まれたパレット400bの識別データが読み出されて図示しない解析装置に送信される。解析装置は、リーダー/ライター310から受信したパレット400bの識別データに基づき、無線ICチップ10が付着された品物Aがパレット400b上に移動したことを認識する。
【0040】
以上のように、無線ICチップ10が付着された品物の倉庫内における位置が管理される位置認識システムを用いて、倉庫内に搬入された品物がどのパレット400上にあるかを正確に検索することができる。したがって、例えば倉庫管理者が所定の品物を出庫しようとする場合、リーダー/ライター310を用いて所望の品物に付着された無線ICチップ10の回路ユニット210の揮発性メモリ211に書かれている位置情報を読むことにより、所望の品物が倉庫内のどこにあるかを知ることができる。
【0041】
また上述したように、本システムによれば、無線ICチップ10が付着された品物がパレット400上から離れた場合は、揮発性メモリ211に書き込まれたパレット400の識別データが自動的に消失する。したがって、品物が倉庫から出荷された後や、倉庫内の通路などパレット400以外の場所に品物がこぼれ落ちた場合などは、解析装置においてその品物がいずれのパレット400上にも置かれていないことがわかるので、より正確かつ詳細な品物の位置認識が可能である。
【0042】
さらに、製品の製造現場のように、品物が頻繁に移動するような状況では、本適用例の位置認識システムを用いて、品物の位置認識を連続的に行うことにより、所望の品物が移動する様子をリアルタイムで把握することも可能である。
【0043】
<適用例2:セキュリティシステム>
本実施形態の無線ICチップ10を用いて、チップ内のメモリに格納された情報の読み出しを制御して機密性を確保するセキュリティシステムを実現することができる。
図5は、本システムで用いる無線ICチップ10のに搭載されるICモジュール30具体的な構成を示す図である。
図5を参照すると、無線ICチップ10のICモジュール30は、2つのRFアンプ100、200と、2組の回路ユニット110、210とを備えている。
【0044】
回路ユニット110は、不揮発性メモリ111と、演算回路113と、認証回路114と、読み出し回路115と、AND回路116とを備える。このうち、演算回路113および認証回路114は、上述した適用例1の演算回路113および認証回路114と同様であるので、同一の符号を付して説明を省略する。回路ユニット210は、揮発性メモリ211と書き込み回路212とを備える。また、回路ユニット110はRFアンプ100のみから電力供給を受けて動作し、回路ユニット210はRFアンプ200のみから電力供給を受けて動作する。
【0045】
回路ユニット110の読み出し回路115は、アンテナ21で受信されRFアンプ100で電気信号に変換された受信信号に基づき、不揮発性メモリ111に格納されているデータの読み出しを行う。一方、回路ユニット210の書き込み回路212は、アンテナ22で受信されRFアンプ200で電気信号に変換された受信信号に基づき、揮発性メモリ211に対してデータの書き込みを行う。
【0046】
回路ユニット110の読み出し回路115は、AND回路116を介して不揮発性メモリ111および回路ユニット210の揮発性メモリ211に接続されている。このため、読み出し回路115は、揮発性メモリ211にデータ「1」が書き込まれている場合にのみ不揮発性メモリ111に格納されているデータを読み出すことができ、揮発性メモリ211にデータ「0」が書かれている場合は不揮発性メモリ111に格納されているデータを読み出すことができない。したがって、RFアンプ200から回路ユニット210に電力が供給されず、揮発性メモリ211の内容が「0」にクリアされている場合は、読み出し回路115は不揮発性メモリ111に格納されているデータの読み出しができないこととなる。
【0047】
なお、本適用例では、上述した適用例1とは異なり、回路ユニット110はRFアンプ100のみから電力供給を受け、回路ユニット210はRFアンプ200のみから電力供給を受ける。これにより、回路ユニット110の読み出し回路115は、必ずアンテナ21、22の両方が電波を受信しているときにしか不揮発性メモリ111からデータを読み出せないこととなり、セキュリティのレベルを増すことができる。
【0048】
図6は、本適用例において無線ICチップ10に対するデータの読み書きを行うためのシステム構成を示す図である。
本適用例では、無線ICチップ10の回路ユニット110の不揮発性メモリ111に格納されているデータ(機密情報)を読み出すためのリーダー/ライター510と、回路ユニット210の揮発性メモリ211にデータ「1」を書き込むためのリーダー/ライター520とが使用される。図6に示すように、リーダー/ライター520は、ハイセキュリティエリア600に設置されており、セキュリティのレベルに応じて設定される条件を満足した場合にのみ、ハイセキュリティエリア600内に無線ICチップ10を持ち込むことができるものとする。また、ハイセキュリティエリア600は電波が漏れないようにシールドされている。
【0049】
リーダー/ライター510およびリーダー/ライター520は、それぞれ異なる周波数の電波で無線ICチップ10と交信する。そして、無線ICチップ10において、アンテナ21はリーダー/ライター510の電波(f1)を受信し、アンテナ22はリーダー/ライター520の電波(f2)を受信することとする。これにより、無線ICチップ10の回路ユニット210は、ハイセキュリティエリア600でリーダー/ライター520との交信が可能な範囲内に位置する場合にのみ動作することとなる。
【0050】
なお、図6に示した例では、リーダー/ライター510が無線ICチップ10と通信可能な範囲(領域a)が広く、リーダー/ライター520が無線ICチップ10と通信可能な範囲(領域b)が狭く記載されている。しかし、本適用例では、リーダー/ライター510が無線ICチップ10と交信するための周波数とリーダー/ライター520が無線ICチップ10と交信するための周波数とが異なっていれば良く、その通信可能な範囲の広狭は問題とならない。実際には、システムの実施態様に応じて、所望の通信範囲(通信距離)を確保できる周波数を用いれば良い。
【0051】
さて、上記のように構成されたシステムにおいて、リーダー/ライター510を用いて無線ICチップ10の回路ユニット110の不揮発性メモリ111に格納されている情報を読み出そうとする場合を考える。無線ICチップ10がハイセキュリティエリア600外にある場合、リーダー/ライター520の電波(f2)は無線ICチップ10に到達しない。そのため、回路ユニット210に電力が供給されず、揮発性メモリ211の内容は「0」である。したがって、回路ユニット110の読み出し回路115は、不揮発性メモリ111に格納されているデータ(機密情報)を読み出すことができない。
【0052】
所定の条件を満足して無線ICチップ10がハイセキュリティエリア600内に持ち込まれてリーダー/ライター520に近づくと、リーダー/ライター520が無線ICチップ10と交信可能となる。そして、リーダー/ライター520からの電波(f2)がアンテナ22により受信され、RFアンプ200から回路ユニット210に電力が供給されて、書き込み回路212が揮発性メモリ211にデータ「1」を書き込む。なお、書き込み回路212は、電力が供給された場合に自動的に揮発性メモリ211にデータ「1」を書き込むように設定しても良いし、リーダー/ライター520からの受信信号にしたがって揮発性メモリ211に受信データ(データ「1」)を書き込むようにしても良い。
【0053】
揮発性メモリ211にデータ「1」が書き込まれると、回路ユニット110の読み出し回路115は、不揮発性メモリ111に格納されているデータ(機密情報)を読み出すことが可能となる。そこで、リーダー/ライター510によって読み出し回路115を制御することにより、不揮発性メモリ111に格納されているデータ(機密情報)が読み出されることとなる。
【0054】
次に、無線ICチップ10をリーダー/ライター520から離し、リーダー/ライター520から通信可能な範囲(領域b)を外れると、リーダー/ライター520の電波(f2)は無線ICチップ10に届かなくなる。そのため、回路ユニット210への電力供給が断たれ、揮発性メモリ211に書き込まれたデータが消失し、メモリ内容は「0」となる。したがって、再びリーダー/ライター510から不揮発性メモリ111に格納されているデータ(機密情報)を読み指すことができなくなる。
【0055】
なお、本適用例では、不揮発性メモリ111に機密情報を格納することとしたが、回路ユニット110に、不揮発性メモリ111の他に別の不揮発性メモリを設けて機密性のない情報を格納するようにしても良い。この場合、この別の不揮発性メモリは、AND回路116を介すことなく、読み出し回路115に直接接続される。このようにすれば、機密性のない情報については、いつでもリーダー/ライター510を用いて読み出すことが可能となる。
【0056】
<適用例3:暗号を用いたセキュリティシステム>
本実施形態の無線ICチップ10を用いて、暗号を用いた、適用例2とは異なるセキュリティシステムを実現することができる。
図7は、本システムで用いる無線ICチップ10に搭載されるICモジュール30の具体的な構成を示す図である。
図7を参照すると、無線ICチップ10のICモジュール30は、2つのRFアンプ100、200と、2組の回路ユニット110、210とを備えている。
【0057】
回路ユニット110は、不揮発性メモリ111と、演算回路113と、認証回路114と、読み出し回路115と、暗号回路117とを備える。回路ユニット210は、揮発性メモリ211と書き込み回路212とを備える。このうち、回路ユニット110の演算回路113、認証回路114および読み出し回路115と、回路ユニット210の書き込み回路212は、上述した適用例2の演算回路113、認証回路114、読み出し回路115および書き込み回路212と同様であるので、同一の符号を付して説明を省略する。また、回路ユニット110はRFアンプ100のみから電力供給を受けて動作し、回路ユニット210はRFアンプ200のみから電力供給を受けて動作する。
【0058】
回路ユニット110の暗号回路117は、演算回路113によって処理されるデータに対する暗号処理(データの暗号化および暗号データの復号)を実行する。この暗号回路117による暗号処理では、回路ユニット210の揮発性メモリ211に書き込まれたデータが暗号キーとして使用される。したがって、RFアンプ200から回路ユニット210に電力が供給されて揮発性メモリ211に暗号キーが書き込まれている場合にのみ暗号回路117はデータの暗号処理を実行できることとなる。
【0059】
また、暗号回路117は、不揮発性メモリ111に対して読み書きされるデータの暗号処理を行うことができる。すなわち、不揮発性メモリ111にデータが書き込まれる際に、その書き込みデータを暗号化したり、不揮発性メモリ111に格納されている暗号データが読み出される際に、その読み出しデータを復号したりすることができる。
【0060】
なお、本適用例においても、適用例2と同様に、回路ユニット110はRFアンプ100のみから電力供給を受け、回路ユニット210はRFアンプ200のみから電力供給を受ける。これにより、回路ユニット110の暗号回路117は、必ずアンテナ21、22の両方が電波を受信しているときにしかデータの暗号処理を実行できないこととなり、セキュリティのレベルを増すことができる。
【0061】
図8は、本適用例において無線ICチップ10に対するデータの読み書きを行うためのシステム構成を示す図である。
本適用例では、無線ICチップ10の回路ユニット110の不揮発性メモリ111に格納されているデータ(機密情報)を読み出すためのリーダー/ライター710と、回路ユニット210の揮発性メモリ211に暗号キーを書き込むためのリーダー/ライター720とが使用される。図8に示すように、リーダー/ライター720は、ハイセキュリティエリア800に設置されており、セキュリティのレベルに応じて設定される条件を満足した場合にのみ、ハイセキュリティエリア800内に無線ICチップ10を持ち込むことができるものとする。また、ハイセキュリティエリア800は電波が漏れないようにシールドされている。
【0062】
リーダー/ライター710およびリーダー/ライター720は、それぞれ異なる周波数の電波で無線ICチップ10と交信する。そして、無線ICチップ10において、アンテナ21はリーダー/ライター710の電波(f1)を受信し、アンテナ22はリーダー/ライター720の電波(f2)を受信することとする。これにより、無線ICチップ10の回路ユニット210は、ハイセキュリティエリア800でリーダー/ライター720との交信が可能な範囲内に位置する場合にのみ動作することとなる。
【0063】
なお、図8に示した例では、リーダー/ライター720が無線ICチップ10と通信可能な範囲(領域b)が広く、リーダー/ライター710が無線ICチップ10と通信可能な範囲(領域a)が狭く記載されている。しかし、本適用例では、リーダー/ライター720が無線ICチップ10と交信するための周波数とリーダー/ライター710が無線ICチップ10と交信するための周波数とが異なっていれば良く、その通信可能な範囲の広狭は問題とならない。実際には、システムの実施態様に応じて、所望の通信範囲(通信距離)を確保できる周波数を用いれば良い。
【0064】
さて、上記のように構成されたシステムにおいて、リーダー/ライター710を用いて無線ICチップ10の回路ユニット110の不揮発性メモリ111に格納されている情報を読み出そうとする場合を考える。不揮発性メモリ111には暗号化されたデータが格納されているものとする。無線ICチップ10がハイセキュリティエリア800外にある場合、リーダー/ライター720の電波(f2)は無線ICチップ10に到達しない。そのため、回路ユニット210に電力が供給されず、揮発性メモリ211には暗号キーとなるデータが保持されていない。したがって、回路ユニット110の読み出し回路115が不揮発性メモリ111に格納されているデータ(機密情報)を読み出しても、暗号回路117は読み出されたデータを復号することができない。したがって、リーダー/ライター710において取得されるデータは暗号化されたままの意味のないデータとなる。
【0065】
所定の条件を満足して無線ICチップ10がハイセキュリティエリア800内に持ち込まれてリーダー/ライター720に近づくと、リーダー/ライター720が無線ICチップ10と交信可能となる。そして、リーダー/ライター720からの電波(f2)がアンテナ22により受信され、RFアンプ200から回路ユニット210に電力が供給される。また、リーダー/ライター720からの電波(f2)に含まれる信号に基づいて、書き込み回路212が揮発性メモリ211に暗号キーを書き込む。
【0066】
揮発性メモリ211に暗号キーが書き込まれると、回路ユニット110の暗号回路117は、この暗号キーを用いて不揮発性メモリ111から読み出された暗号データを復号することが可能後なる。したがって、リーダー/ライター710によって読み出し回路115を制御して不揮発性メモリ111からデータを読み出し、さらに読み出されたデータを暗号回路117にて復号することにより、所望のデータ(機密情報)が取得されることとなる。
【0067】
次に、無線ICチップ10をリーダー/ライター720から離し、リーダー/ライター720から通信可能な範囲(領域b)を外れると、リーダー/ライター720の電波(f2)は無線ICチップ10に届かなくなる。そのため、回路ユニット210への電力供給が断たれ、揮発性メモリ211に書き込まれた暗号キーが消失する。したがって、再び暗号回路117は不揮発性メモリ111から読み出されたデータ(機密情報)を復号できなくなり、リーダー/ライター710において取得されるデータは暗号化されたままの意味のないデータとなる。
【0068】
なお、本適用例では、不揮発性メモリ111から読み出されたデータを復号する場合について、リーダー/ライター710、720との関係を説明したが、これらの関係は、不揮発性メモリ111に格納するデータを暗号化する場合や、不揮発性メモリ111に対するデータの読み書き以外の処理でデータの暗号処理を実行する場合も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施形態の無線ICチップの構成を示す図である。
【図2】本実施形態におけるICモジュールの構成を示す図である。
【図3】本実施形態を用いた位置認識システムにおける無線ICチップに搭載されるICモジュールの具体的な構成を示す図である。
【図4】本実施形態を用いた位置認識システムが適用される倉庫の概観を示す図であり、図4(A)は倉庫を上から見た様子を示し、図4(B)は倉庫を横から見た様子を示す図である。
【図5】本実施形態を用いたセキュリティシステムにおける無線ICチップに搭載されるICモジュールの具体的な構成を示す図である。
【図6】本実施形態を用いたセキュリティシステムにおいて無線ICチップに対するデータの読み書きを行うためのシステム構成を示す図である。
【図7】本実施形態を用いた他のセキュリティシステムにおける無線ICチップに搭載されるICモジュールの具体的な構成を示す図である。
【図8】本実施形態を用いた他のセキュリティシステムにおいて無線ICチップに対するデータの読み書きを行うためのシステム構成を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
10…無線ICチップ、21、22…アンテナ、30…ICモジュール、100、200…RFアンプ、110、210…回路ユニット、111…不揮発性メモリ、112…読み書き回路、113…演算回路、114…認証回路、115…読み出し回路、116…AND回路、117…暗号回路、211…揮発性メモリ、212…書き込み回路、310、320、510、520、710、720…リーダー/ライター、400…パレット、600、800…ハイセキュリティエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不揮発性メモリを含む第1の回路ユニットと、
揮発性メモリを含む第2の回路ユニットと、
前記不揮発性メモリおよび前記揮発性メモリに対してデータの読み書きを行う読み書き手段と、
第1の電波を受信して前記第1の回路ユニットに電力を供給する第1の電力供給手段と、
前記第1の電波とは周波数が異なる第2の電波を受信して前記第2の回路ユニットに電力を供給する第2の電力供給手段と
を備えることを特徴とする無線ICチップ。
【請求項2】
前記揮発性メモリに対してデータの読み書きを行う読み書き手段と、前記不揮発性メモリに対してデータの読み書きを行う読み書き手段とを個別に備えることを特徴とする請求項1に記載の無線ICチップ。
【請求項3】
前記第1の電力供給手段は、前記第1の回路ユニットにも電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の無線ICチップ。
【請求項4】
前記揮発性メモリに特定の値が記憶されている場合以外は前記読み書き手段による前記不揮発性メモリからデータの読み出しを阻害する中継手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線ICチップ。
【請求項5】
前記第1の回路ユニットは、前記揮発性メモリに書き込まれる暗号キーを用いて前記不揮発性メモリに対して読み書きされるデータの暗号処理を実行する暗号回路を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線ICチップ。
【請求項6】
電波を受信してチップ内の回路に電力を供給する電力供給手段と、
前記電力供給手段が第1の電波を受信した場合に、当該電力供給手段から電力の供給を受けて動作する第1の回路ユニットと、
前記電力供給手段が前記第1の電波とは周波数が異なる第2の電波を受信した場合に、当該電力供給手段から電力の供給を受けて動作し、当該電力供給手段が当該第2の電波を受信しているあいだメモリに所定のデータを保持する第2の回路ユニットと、
を備えることを特徴とする無線ICチップ。
【請求項7】
前記第1の回路ユニットは、前記電力供給手段が前記第2の電波を受信した場合にも、当該電力供給手段から電力の供給を受けて動作することを特徴とする請求項6に記載の無線ICチップ。
【請求項8】
前記第1の回路ユニットは、前記電力供給手段が前記第2の電波を受信した場合に、前記第2の回路ユニットのメモリにデータの書き込みを行うことを特徴とする請求項7に記載の無線ICチップ。
【請求項9】
前記第1の回路ユニットは、
メモリと、
前記第2の回路ユニットのメモリに特定の値が保持されていることを条件に前記第1の回路ユニットのメモリにアクセス可能なアクセス手段と
を備えることを特徴とする請求項6に記載の無線ICチップ。
【請求項10】
前記第1の回路ユニットは、前記第2の回路ユニットのメモリに保持された暗号キーを用いてデータの暗号処理を実行する暗号回路を備えることを特徴とする請求項6に記載の無線ICチップ。
【請求項11】
無線ICチップと、
第1の領域全体で前記無線ICチップとの交信が可能な第1の電波で当該無線ICチップとの交信を行うリーダーと、
前記第1の領域内に設定された第2の領域内でのみ前記無線ICチップとの交信が可能な第2の電波で当該無線ICチップとの交信を行うライターとを備え、
前記無線ICチップは、
前記第1の電波または前記第2の電波を受信してチップ内の回路に電力を供給する電力供給手段と、
前記電力供給手段が前記第1の電波を受信した場合に、当該電力供給手段から電力の供給を受けて動作する第1の回路ユニットと、
前記電力供給手段が前記第2の電波を受信した場合に、当該電力供給手段から電力の供給を受けて動作し、当該電力供給手段が当該第2の電波を受信しているあいだメモリにデータを保持する第2の回路ユニットとを備え、
前記リーダーは、前記無線ICチップが前記第1の領域内に位置する場合に、当該無線ICチップと交信して前記第1の回路ユニットを動作させ、前記メモリに保持されているデータを読み出し、
前記ライターは、前記無線ICチップが前記第2の領域内に位置する場合に、当該無線ICチップと交信して前記第2の回路ユニットを動作させ、前記メモリに所定のデータを書き込むことを特徴とする位置認識システム。
【請求項12】
前記第2の領域は前記第1の領域内に複数箇所設定され、個々の当該第2の領域に対応する各ライターは、対応する当該第2の領域内に位置する前記無線ICチップの前記メモリに、各々固有のデータを書き込むことを特徴とする請求項11に記載の位置認識システム。
【請求項13】
無線ICチップと、
第1の領域全体で前記無線ICチップとの交信が可能な第1の電波で当該無線ICチップとの交信を行うリーダーと、
前記第1の領域内に設定された第2の領域内でのみ前記無線ICチップとの交信が可能な第2の電波で当該無線ICチップとの交信を行うライターとを備え、
前記無線ICチップは、
前記第1の電波または前記第2の電波を受信してチップ内の回路に電力を供給する電力供給手段と、
前記電力供給手段が前記第1の電波を受信した場合に、当該電力供給手段から電力の供給を受けて動作する第1の回路ユニットと、
前記電力供給手段が前記第2の電波を受信した場合に、当該電力供給手段から電力の供給を受けて動作する第2の回路ユニットとを備え、
前記第1の回路ユニットまたは前記第2の回路ユニットのいずれか一方は、
揮発性メモリと、
前記揮発性メモリに対してデータを書き込む書き込み手段とを備え、
前記第1の回路ユニットまたは前記第2の回路ユニットの他方は、
不揮発性メモリと、
前記揮発性メモリに特定のデータが保持されていることを条件に前記不揮発性メモリに格納されたデータを読み出す読み出し手段とを備え、
前記リーダーは、前記無線ICチップが前記第1の領域内に位置する場合に、当該無線ICチップと交信して前記第2の回路ユニットまたは前記第1の回路ユニットを動作させ、前記不揮発性メモリに書き込まれているデータを読み出し、
前記ライターは、前記無線ICチップが前記第2の領域内に位置する場合に、当該無線ICチップと交信して前記第1の回路ユニットまたは前記第2の回路ユニットを動作させ、前記揮発性メモリに前記特定のデータを書き込むことを特徴とするセキュリティシステム。
【請求項14】
無線ICチップと、
第1の領域全体で前記無線ICチップとの交信が可能な第1の電波で当該無線ICチップとの交信を行うリーダーと、
前記第1の領域内に設定された第2の領域内でのみ前記無線ICチップとの交信が可能な第2の電波で当該無線ICチップとの交信を行うライターとを備え、
前記無線ICチップは、
前記第1の電波または前記第2の電波を受信してチップ内の回路に電力を供給する電力供給手段と、
前記電力供給手段が前記第1の電波を受信した場合に、当該電力供給手段から電力の供給を受けて動作する第1の回路ユニットと、
前記電力供給手段が前記第2の電波を受信した場合に、当該電力供給手段から電力の供給を受けて動作する第2の回路ユニットとを備え、
前記第1の回路ユニットまたは前記第2の回路ユニットのいずれか一方は、
揮発性メモリと、
前記揮発性メモリに対してデータを書き込む書き込み手段とを備え、
前記第1の回路ユニットまたは前記第2の回路ユニットの他方は、
不揮発性メモリと、
前記不揮発性メモリに対してデータの読み書きを行う読み書き手段と、
前記揮発性メモリに保持されているデータを暗号キーとして前記不揮発性メモリに対して読み書きされるデータの暗号処理を実行する暗号回路とを備え、
前記リーダーは、前記無線ICチップが前記第1の領域内に位置する場合に、当該無線ICチップと交信して前記第2の回路ユニットまたは前記第1の回路ユニットを動作させ、前記不揮発性メモリに対するデータの読み書き、および当該データに対する前記暗号キーを用いた暗号処理を実行させ、
前記ライターは、前記無線ICチップが前記第2の領域内に位置する場合に、当該無線ICチップと交信して前記第1の回路ユニットまたは前記第2の回路ユニットを動作させ、前記揮発性メモリに前記暗号キーとなるデータを書き込むことを特徴とするセキュリティシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−178910(P2006−178910A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374264(P2004−374264)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【復代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
【復代理人】
【識別番号】100118201
【弁理士】
【氏名又は名称】千田 武
【復代理人】
【識別番号】100118108
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 洋之
【Fターム(参考)】