説明

無繋索配管系検査システム

外部の制御およびデータ収集装置とワイヤーで接続されていない無繋索で移動可能な自律型検査ヘッドによって管を検査する装置および方法。検査ヘッドは、非破壊センサーを検査ヘッド内で電子的且つ機械的に制御するのに必要なすべての手段を一体化する、該ヘッドに取り付けられたモジュールとともに管内を移動する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本願は2009年5月14日付け仮出願第61/178,190号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は広くは熱交換器配管系の非破壊検査に係わり、特に小径の配管系内を行き来できる繋索を必要としない自蔵式の検査システムに係わる。
【背景技術】
【0003】
原子力発電所において使用される蒸気発生器は極めて大型の熱交換器であり、原子炉によって加熱された1次流体からの熱が2次流体に伝達され、2次流体が蒸気に変換され、タービン発電機を駆動するのに利用される。蒸気発生器はほぼ円筒形の鋼製シェル内に収納されている。多数のU字形熱交換管がシェル内に収容され、その端部が鋼製シェルの底部近傍の水平な管シートまたは管板に形成された孔に挿入されている。これらの管は原子炉内で加熱された1次流体を搬送するのに利用される。蒸気を発生させるのに利用される2次流体が蒸気発生器に導入されると、加熱されている管の外周を流動する2次流体の大部分が蒸気に変換され、蒸気は鋼製シェルの頂部に設けた出口ノズルを通って蒸気発生器から排出される。
【0004】
従来、原子力発電所における蒸気発生器配管系は極めて苛酷な運転条件に曝され、応力腐食割れ、機械的摩耗、壁の薄化および孔食が発生し易かった。この危険性に対処するため、配管系に障害が生ずる前に蒸気発生器配管系の劣化を検査することによって、放射性1次冷却材が2次側へ漏出して運転停止を余儀なくされる事態を防止すべく、多くの技術が開発されている。蒸気発生器配管系は多くの場合、複数タイプの渦電流法を利用して検査されるが、その大部分は、蒸気発生器の1次側の管板下側から蒸気発生配管系へプローブを挿入するものである。蒸気発生器の下方半球状入出側に設けたマンウェイから管板下方へプローブを導入し、さらに、それぞれの管へ下方からプローブを挿入することによって対応の管をマッピングする。
【0005】
このような目的に使用される渦電流プローブの一例として、比較的硬いコアに2つのコイルを巻着することによってテスト・コイルを形成した「ボビン」タイプがある。ボビン-タイプのプローブは広く採用され、比較的高い成果を挙げているが、剛度が比較的高いため、湾曲部を有する管へ押し込むのが困難である。
【0006】
これとは異なるタイプの渦電流プローブとして、回転パンケーキ・コイル型プローブがある。回転パンケーキ・コイル型プローブはモーター駆動される鞘体に取り付けるのが普通であり、鞘体と共に回転しながら管内を移動して管内面を螺旋走査する。パンケーキ形渦電流コイルの軸心は管内面と直径方向に位置し、コイルが管内面の形状に追随し、比較的一定した離間距離を維持することを可能にする関節機構にコイルを取り付けるのが普通である。
【0007】
第3のタイプの渦電流プローブでは、40個もの個別コイルがプローブに巻着される。プローブが管内を軸方向移動するのに伴って、個々のコイルは熱交換器配管のそれぞれ向き合う表面に関する個別の出力を提供する。
【0008】
概して、上記プローブはいずれも熱交換器配管系内を移動する過程においてプローブをセンタリングする必要がある。典型例として、プローブ周面上の、多くの場合2つの軸方
向に離隔した位置において半径方向に膨らむ柔軟なパッドを利用してプローブをセンタリングする。蒸気発生器配管系を検査するための渦電流検査法は高精度ではあるが、比較的低速度であり、典型的には可撓性のシャフトによって配管系の長さ方向に沿って押されるプローブを一定速度で挿入できることが好ましい。プローブが配管形の湾曲部位を移動する際に推進用の可撓性シャフトによって発生する側面荷重や、それほど深刻ではないまでも、直線部位においてシャフトがオフ・センター位置にあるために生ずる側面荷重がプローブのセンタリングまたはプローブの前進を妨げる可能性がある。プローブをセンタリングするための、さらに改良を加えた手段が2009年10月20日に出願され、本発明の譲受人に譲渡された、共に係属中の出願第12/582,196号に記載されている。
【0009】
さらにまた、既存の検査装置は大掛かりであり、管に検査プローブを押し込むために使用される長い可撓性シャフトは極めて汚染され易い。しかも、シャフトは座屈し易く、これが検査作業中に問題を惹き起こす。
【0010】
そこで、本発明の目的は検査プローブを管内に推し進めるための可撓性シャフトを不要にすることにある。
【0011】
また、検査時間をスピードアップし、センサーに給電してその出力をデータ収集ステーションに送信する給電・通信ケーブルに起因してセンサーに加わる抗力を軽減するように改良された管内へのセンサー駆動手段を提供することも本発明の目的である。
【発明の概要】
【0012】
本発明の上記目的は、基本的には、検査対象の管の内壁と移動可能にフィットするように寸法設定され、雄および雌いずれか一方の分離可能連結手段を有する非破壊検査プローブ・センサーによって達成される。本発明の非破壊検査プローブ・システムは管の内壁と移動可能にフィットするように寸法設定され、雄および雌の前記一方の分離可能連結手段と連結可能な雄および雌の他方を有し、連結されると、非破壊検査センサーと電気的に交信し、管の内部から外側へ延びる如何なる繋索をも使用せずに非破壊検査センサーと一体に管の内部を移動しながらセンサーからデータを受信するように構成された電子モジュールをも含む。電子モジュールは非破壊センサーとともに管内を移動しながら、管内部から外部へ延設される繋索無しにセンサーから信号を受信するように構成されている。電子モジュールは好ましくは非破壊検査センサーからのデータを記憶するためのメモリーを含み、望ましくは、それぞれの管の検査が終了するごとに電子モジュールのメモリーからデータ収集センターへデータが伝送される。好ましくは、電子モジュールが管内における非破壊検査センサーの移動速度を調節するための制御手段を含む。1つの実施態様では、速度を調節する制御手段が管内部における非破壊検査センサーの抗力を制御する。
【0013】
他の実施態様では、電子モジュールが非破壊検査センサーからのデータを遠隔データ収集センターへ送信するためのデータ通信プロトコルを含む。データ通信プロトコルは無線データ伝送方法であり、データは間歇的に伝送されることが望ましい。
【0014】
本発明の非破壊検査プローブ・システムは管内を非破壊検査センサーが移動できるようにこれを駆動する駆動システムをも含む。管は第1および第2端を有し、駆動システムが第1および第2端間に圧力差を発生させて非破壊検査センサーを駆動する。好ましくは圧縮ガス、例えば、圧縮空気を管内に噴射することによって圧力差を発生させる。他の実施態様では、駆動システムが電動機によって駆動されるホイールから成り、駆動ホイールおよび電動機が電子モジュールに積載されていることが好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明の電子モジュールは非破壊検査センサーに給電するとともに、駆動信号を送信する。この場合、電子モジュールは駆動信号周波数および駆動信号タイミング
を制御する。好ましくは電子モジュールが欠陥の無い管に対する非破壊検査センサーの応答に相当する基準信号をも発信するとともに、駆動信号に対する非破壊検査センサーのインピーダンスを測定する。電子モジュールは好ましくはデータを管内部における非破壊検査センサーの位置と相関させる。この場合、電子モジュールは非破壊検査センサーの位置および欠陥を遠隔データ・センターに通報する。
【0016】
管が独自の識別子を有するさらに他の実施態様では、電子モジュールはこの独自の識別子を読み取り、これをデータとともに記憶するモニターを有する。1つの実施態様では、独自の識別子が無線周波数識別タグ(RFIDタグ)であり、電子モジュールがRFIDタグを読取るモニターを有する。
【0017】
本発明は、電子モジュールに接続された検査プローブと、いずれも管の外側へ延びる繋索無しに管の内壁と移動自在にフィットするように寸法設定された検査プローブおよび電子モジュールとで、第1および第2端を有する管を検査する方法をも提供する。この方法は、第1ロボットを使用して、電子モジュールと接続している検査プローブを管の第1端に導入するステップを含む。次のステップとして、管の第1端から第2端に向かって、電子モジュールと接続している検査プローブを吹込みまたは吸引作用によって管内移動させ、検査プローブを管内移動させながら管を検査し、第2ロボットを使用して、電子モジュールと接続しているプローブを管の第2端から取り出す。複数の管が互に平行に支持されて管束を形成する他の実施態様では、第1ロボットを順次使用して検査プローブを第1管へ、第2検査プローブを第2管へそれぞれ導入し、第1検査プローブを第1管内で、第2検査プローブを第2管内で、それぞれ同時に吹込みまたは吸引作用でそれぞれ移動させ、第2ロボットが第1管から第1検査プローブを、第2管から第2検査プローブを順次取り出すステップを含むことが好ましい。第1および第2管が互いに平行に支持されて管束を形成する他の実施態様では、第2ロボットを使用して、電子モジュールに接続している検査プローブを第2管の第2端に導入し、電子モジュールに接続している検査プローブを第2管の第2端から第1端に向かって吹込みまたは吸引作用によって移動させる。次に、第1ロボットを使用して、電子モジュールと接続している検査プローブを第2管の第1端から取り出す。
【0018】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例に取り、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の非破壊検査プローブ・システムを利用可能な立て型蒸気発生器の部分破断斜視図である。
【図2】図2は検査される蒸気発生器配管内における本発明の非破壊検査プローブ・システムを一部断面で示す平面図である。
【図3】図3は蒸気発生装置配管系に対する本発明の非破壊検査プローブ・システムの挿入・抜き出しに利用することができるロボット・システムを一部断面で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面の図1は、管束12を形成する複数のU字形管を利用して管内を流動する1次流体からの熱を伝達するに必要な加熱面を提供することにより管の外側を囲む2次流体を気化または沸騰させる蒸気発生器10を示す。蒸気発生器10は、縮径下方部分14、円錐状中央部分20および拡径上方部分15を含み、上法部分15がその上端を覆う頂部筐体または皿型ヘッド16によって閉鎖され、下方部分の下端がほぼ半球状のチャンネル・ヘッド18によって閉鎖された直立円筒状シェルを有する容器から成る。チャンネル・ヘッド18に取り付けられた管板22はU字形管の端部を挿着するための複数の孔が形成さ
れている。チャンネル・ヘッド18内にはその中央に仕切り板26が設けられているが、この仕切り板がチャンネル・ヘッドを管束12のためのヘッダーとして機能する2つのコンパートメント28、30に分割する。コンパートメント30は1次流体を流入させるコンパートメントであり、これと流体連通する1次流体注入ノズル32を有する。コンパートメント28は1次流体を排出させるコンパートメントであり、これと流体連通する1次流体排出ノズル34を有する。こうして、1次流体コンパートメント30に流入する1次流体、即ち、原子炉冷却材が管束12内を流動し、出口ノズル34から排出される。
【0021】
管束12はラッパ管36に囲まれ、ラッパ管36とシェル下方部分および円錐状部分14、20との間にそれぞれ管状通路38が形成されている。ラッパ管36の頂部は下方デッキ・プレート40によって覆われ、デッキ・プレート40には複数のライザー管44と流体連通する複数の開口42が形成されている。ライザー管内には、蒸気が1次遠心分離機を通過する際に、蒸気と同伴する水分の一部を回転させ、遠心分離するための旋回羽根46が設けられている。この1次遠心分離機において蒸気から分離された水は下方デッキ・プレートの頂面へ戻される。1次遠心分離機を通過した後、蒸気は2次分離器48を通過し、皿型ヘッド16の中心に配置された蒸気出口50に達する。
【0022】
この発生器の給水入口構造はフィードリングと呼称されるほぼ水平な部分54とフィードリングから上方へ突出する放出ノズル56とを有する給水注入管52を含む。給水注入管52から供給された給水はフィードリング54を通って放出ノズル56から放出され、蒸気から分離されて再循環している水と混合される。混合された流体は下方デッキ・プレート40の上方から管状流路38へ流下する。次いで、水はラッパ管36の下方部分において管束に沿って上方へ流動し、加熱されて蒸気を発生する。
【0023】
以上に述べた蒸気発生器はそれぞれの管がその長さ方向中間部分でU字形湾曲部24を1個有するので、「U字形湾曲」デザインと呼称されるものである。ほかにも、「U字形」ではなく曲率半径の小さい(典型的には9インチ)2つの湾曲部と直線部分とを有する「四角形湾曲」など種々のデザインが知られている。管束の各端部にプレナムを設けた完全に直線的な管を採用する蒸気発生器も存在する。特定の管形状および湾曲に関係なく、本発明を管の検査に適用することができる。
【0024】
蒸気発生器の稼働中、管の周りにスラッジが付着し、管束中を行き来する剥れた部分が、管束の管に応力腐食割れ、機械的摩耗、壁の薄化および孔食を発生され易くする極めて苛酷な運転条件を発生させる。この危険性に対処するため、配管系に障害が生ずる前に蒸気発生器配管系の劣化を検査して運転停止を余儀なくされる事態を防止するべく多くの技術が開発されている。蒸気発生器配管系は多くの場合、多様なタイプの渦電流法を利用して検査され、渦電流法の大部分は、蒸気発生器の1次側の管板22下側から蒸気発生配管系へプローブを挿入することが多い。蒸気発生器の管板22の下方の半球状入出側に設けたマンウェイから管板へプローブを導入し、さらに、それぞれの管へ下方からプローブを挿入することによって対応の管をマッピングする。
【0025】
渦電流による蒸気発生器配管系検査方法は精度こそ高いが、比較的低速であり、コストが高い。本発明は検査プロセスを簡単にするとともにスピードアップし、検査精度をさらに高めることを目的とする。
【0026】
本発明は、制御またはデータ収集装置への取り付けがワイヤーによるものでない無繋索で移動可能な、または自律型検査ヘッドによって配管系を検査するシステムおよび関連の方法を提供する。検査ヘッドは、プローブの電子的および機械的制御に必要なすべての手段を一体化する、ヘッドに取り付けられたモジュールと共に管内を移動する。このシステムは、寸法が著しく制限され、高度の一体化が要求される小径の管、例えば、外径が5/
8乃至7/8インチ(1.59乃至2.22cm)の管に使用すると特に有益である。
【0027】
図2は、蒸気発生器の管60に挿入される本発明の非破壊検査プローブ・システム58の好ましい実施態様の1例を示す。非破壊検査プローブ・システム58は、迅速分離手段68を含む短い可撓シャフト66を介して電子モジュール70と接続するプローブ・ヘッド64に内蔵されている渦電流コイル62のような非破壊検査センサーを含むが、電子モジュール70は非破壊プローブ検査システム58が配管60内を移動する際、コイル62に給電し、プローブ・ヘッド64の速度を制御し、センサーによる検査データを収集し、管をマッピングするのに必要なすべての支援ハードウェアおよびソフトウェアを含む。渦電流プローブ、ここでは「ボビン」型プローブを非破壊検査センサー62として図示しているが、センサーは如何なる種類の渦電流プローブであってもよく、例えば、超音波プローブ、カメラまたはその他の非破壊センサーまたはサンプリング装置であってもよい。迅速分離手段68はできれば、電子モジュール70とセンサー・ヘッド64を迅速且つ確実に接続して電気的結合状態を維持することによりセンサー62に駆動電流を供給し、センサーからの出力を受信するネジまたはバヨネット・カップリングなどのような確実なプラグおよびソケット接続手段であればよい。
【0028】
電子モジュール70はプローブ・ヘッド64により検査を行うのに必要な多くの機能を統合する。これらの機能には下記の諸機能が含まれるが、下記の機能に限定されるものではない:
1.プローブ・ヘッド64に対して駆動信号、典型的には、複合的な無線周波数信号を提供し;
2.種々の規定信号形態に合うようにプログラム可能な駆動周波数を提供し;
3.プローブが無垢の管内に位置する場合を想定した基準信号を提供し;
4.印加信号に対するプローブのインピーダンスの抵抗および無効成分の双方を測定し;
5.プローブの位置に応じたインピーダンス情報をデジタル化して記録し;
6.連続的にまたは管端部に到着した時点で、得られたデータを外部システムに伝送し;
7.管に沿って移動する過程でプローブの速度を制御し;
8.位置をモニターし、欠陥を通告するため外部システムと交信する。
上記の機能を支援するため、電子モジュールは電源、例えば、バッテリー、通信システム、例えば、WI−FI、データ記憶および処理用電子回路、および、例えば、2009年、10月20日付けで共に係属中の出願第12/582,196号(発明の名称:「渦電流検査プローブ」)に記載されているような速度制御システムを含む。
【0029】
典型的には、本発明の非破壊検査プローブ・システムは管内に配置された搬送ロボットによって蒸気発生器の管60の一端へ搬送され、搬送ロボットによって供給される空気圧により管内へ押入される。このような目的に利用できるロボット・システムの詳細は1994年10月11日付け米国特許第5,355,068号に記載されており、本明細書では図3に略示した。添付図面中、同じ参照番号は同じ構成部分を示す。一般に、ロボット・システム72は、アーム74の動きとエンドエフェクタ76の動作との両方を同時制御する制御回路装置78の指令下に、本発明の非破壊検査プローブ・システムを蒸気発生器の管60へ挿入したり、該管から抜き出したりするのに利用できるエンドエフェクタ76を操作することができるロボット・アーム74を含む。制御回路装置78は、図2に示す電子モジュール70に無線指令信号を送り、本発明の非破壊検査プローブ・システム58によって無線送信される検査データおよびマッピング信号を受信することもできる。蒸気発生器を停止し、排水した後、熱交換器の管60および管板22へのアクセスを可能にするマンウェイ80がチャンネル・ヘッド18の凸壁に設けられている。但し、稼動履歴のある蒸気発生器のチャンネル・ヘッド18は放射性を帯びているから、直接チャンネル・
ヘッド18へ足を踏み入れる作業員がマンウェイ80を利用するよりも、遠隔制御機器を導入するのにマンウェイ80を利用することが多い。マンウェイ80の外周縁部分は管状フランジ82で囲まれるが、このフランジ82には一定間隔で複数のボルト孔84が穿孔されており、正常運転状況の下ではチャンネル・ヘッド18に(図示しない)マンウェイ・ハッチを固定するのに利用される。これらのボルト孔84はチャンネル・ヘッド18内で操作されるエンドエフェクタ76の種々の部品の固定点として活用できるだけでなく、ロボット・アーム74を組み込むための位置決め取り付け手段としても活用できる。
【0030】
上述したように、ロボット・アーム74は特に本発明の非破壊検査プローブ・システムの操作、蒸気発生器の管60への該システムの挿入、蒸気発生器の管60からの抜取り、蒸気発生器の管60内での検査プローブ・システムの駆動のためのエンドエフェクタの配管86への圧縮空気の供給を行なうのに好適であり、これらの動作はすべて制御ケーブル88を介して制御回路装置78から制御される。
【0031】
典型的には、本発明の非破壊検査プローブ・システム58はロボット・アーム74によって蒸気発生器の管端部へ搬送され、管60に挿入され、搬送用ロボット・システム72によって供給される圧縮空気の作用下に管内へ押入される。蒸気発生器の管60の反対端において、第2ロボットが仕切り板26の他方の側で本発明の無繋索移動可能なプローブ・システムを捕捉し、データをオフロードし、(必要なら)電子モジュールの電源を再充電し、プローブを次の検査対象となる管へ移動させ、無繋索移動可能なプローブ・システムを第1ロボットへ帰還させる。必要な検査を行なうのに要する回数に亘ってこのサイクルが繰返されることになる。非破壊検査プローブ・システム58は繰返し何回も保守領域へ移動させられるが、例えば、もし摩耗したら、プローブ・ヘッド64を取り替えることができる。
【0032】
図2を参照して述べたように、2009年10月20日付けで共に係属中の出願第12/582,196号に開示される如く、電子モジュール70の接触ホイール90によりシステムに抗力を加えてプローブ・ヘッド64の速度を制御することができる。また、圧縮空気またはその他の気体を利用して管の両端間に差圧を発生させる代わりに、ホイール90によって検査プローブ・システム58を駆動して管60内を移動させることもできる。さらにまた、他の実施態様では、上記のようにチャンネル・ヘッド18に設けた仕切り板26のそれぞれの側に設けたロボット・アーム74を利用することにより、多数の非破壊検査プローブ・システムをチャンネル・ヘッドの同じ側の異なる管に順次導入し、チャンネル・ヘッドの第2の側の第2ロボットによって順次回収し、これらを順次第2の側の管に再挿入することによって検査プロセスをスピードアップすることも可能である。
【0033】
電子モジュール70は検査プローブ・システムの位置をマッピングするためのエンコーダー92を含むことも可能である。マッピングされた位置を電子モジュール70に記憶されているデータと相関させることによって、検出された欠陥場所を同定することができる。
【0034】
さらに他の実施態様では、蒸気発生器のそれぞれの管が電子モジュール70によって読み取られる独自の識別子を有し、個々の管についてマッピングされたデータが該当する管と相関される。独自の識別子としては、特殊なマークまたは無線周波数識別タグ若しくは本発明の非破壊検査プローブ・システムが特定の経路を移動して回収したデータに対応する管を同定する他の任意の特殊な手段を利用することができる。
【0035】
以上、本発明の具体的な実施態様を詳述したが、当業者には明らかなように、開示内容全体に照らして、細部に種々の変更、代案を試みることができる。例えば、圧縮ガスを利用して管内で本発明の非破壊検査プローブ・システムを駆動する代わりに、管の下流端に
真空を作用させることによっても同じ目的を達成することができる。従って、以上に開示した具体的な実施態様は飽くまでも説明のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびこれの均等物によって定められるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管(60)の内部を全長に亘って検査するための非破壊検査プローブ・システム(58)であって、
管(60)の内壁と移動可能にフィットするように寸法設定され、雄および雌いずれか一方の分離可能連結手段(68)を有する非破壊検査プローブ・センサー(62)と;
管(60)の内壁と移動可能にフィットするように寸法設定され、雄および雌の前記一方の分離可能連結手段(68)と連結可能な雄および雌の他方を有し、連結されると、非破壊検査センサー(62)と電気的に交信し、管(60)の内部から外側へ延びる如何なる繋索をも使用せずに非破壊検査センサー(62)と一体に管(60)の内部を移動しながらセンサー(62)からデータを受信するように構成された電子モジュール(70)とから成る非破壊検査プローブ・システム(58)。
【請求項2】
電子モジュール(70)が非破壊検査センサー(62)からのデータを記憶するためのメモリーを含む請求項1に記載の非破壊検査プローブ・システム(58)。
【請求項3】
管(60)の検査終了時に電子モジュールのメモリーからデータ収集センター(78)へデータが伝送される請求項2に記載の非破壊検査プローブ・システム(58)。
【請求項4】
電子モジュール(70)が管(60)内における非破壊検査センサー(62)の移動速度を調節するための制御手段を含む請求項1に記載の非破壊検査プローブ・システム(58)。
【請求項5】
電子モジュール(70)が非破壊検査センサー(62)からのデータを遠隔データ収集センター(78)へ送信するためのデータ通信プロトコルを含み、データ通信プロトコルが無線データ伝送方法である請求項1に記載の非破壊検査プローブ・システム(58)。
【請求項6】
管(60)内を非破壊検査センサー(62)が移動できるようにこれを駆動する駆動システム(76)を含む請求項1に記載の非破壊検査プローブ・システム(58)。
【請求項7】
管(60)が第1および第2端を有し、駆動システム(76)が第1および第2端間に圧力差を発生させる請求項6に記載の非破壊検査プローブ・システム(58)。
【請求項8】
電子モジュール(70)が非破壊検査センサー(62)に対して駆動信号を送信し、駆動信号周波数および駆動信号タイミングを制御する請求項1に記載の非破壊検査プローブ・システム(58)。
【請求項9】
電子モジュール(70)が欠陥の無い管(60)に対する非破壊検査センサー(62)の応答に相当する基準信号を発する請求項8に記載の非破壊検査プローブ・システム(58)。
【請求項10】
電子モジュール(70)が駆動信号に対する非破壊検査センサー(62)のインピーダンスを測定する請求項8に記載の非破壊検査プローブ・システム(58)。
【請求項11】
電子モジュール(70)が遠隔データ・センターに非破壊検査センサー(62)の位置を通告し、欠陥を通報する請求項1に記載の非破壊検査プローブ・システム(58)。
【請求項12】
管(60)が独自の識別子を有し、電子モジュール(70)がこの独自の識別子を読み取り、データとともに記憶するモニターを有する請求項1に記載の非破壊検査プローブ・システム(58)。
【請求項13】
電子モジュール(70)に接続された検査プローブと、いずれも管(60)の外側へ延びる繋索無しに管(60)の内壁と移動自在にフィットするように寸法設定された検査プローブおよび電子モジュール(70)とで、第1および第2端を有する管(60)を検査する方法であって、
第1ロボットを使用して電子モジュール(70)と接続している検査プローブを管(60)の第1端に導入し;
管(60)の第1端から第2端に向かって、電子モジュール(70)と接続している検査プローブを吹込みまたは吸引作用によって管内移動させ;
検査プローブを管(60)内移動させながら管(60)を検査し;
第2ロボットを使用して、電子モジュール(70)と接続しているプローブを管(60)の第2端から取り出す
ステップから成る検査方法。
【請求項14】
管(60)が互いに平行に支持されて管束を形成する第1および第2管から成る請求項13に記載の管(60)の検査方法であって、第1ロボットを順次使用して検査プローブを第1管へ、第2検査プローブを第2管へそれぞれ導入し、第1検査プローブを第1管内で、第2検査プローブを第2管内で、それぞれ同時に吹込みまたは吸引作用でそれぞれ移動させ、第2ロボットが第1管から第1検査プローブを、第2管から第2検査プローブを順次取り出すステップを含む検査方法。
【請求項15】
管(60)が互いに平行に支持されて管束を形成する第1および第2管から成る請求項13に記載の管(60)の検査方法であって、
第2ロボットを使用して、電子モジュール(70)に接続している検査プローブを第2管の第2端に導入し;
電子モジュール(70)に接続している検査プローブを第2管の第2端から第1端に向かって吹込みまたは吸引作用によって移動させ;
第1ロボットを使用して、電子モジュール(70)と接続している検査プローブを第2管(60)の第1端から取り出すステップを含む検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−526993(P2012−526993A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511038(P2012−511038)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/034872
【国際公開番号】WO2010/132750
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(501010395)ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー (78)
【Fターム(参考)】