熱ローラ用ジャケット室の密封装置
【課題】 気液二相の熱媒体を注入したジャケット室の封入口を密封する密封装置において、貫通孔に可溶性金属を充填した球状の弁を封入口の端縁に均一な接触圧で簡単かつ確実に設置することができるようにすること。
【解決手段】 半径に伸びる孔30Aと孔30Aと連通し直径に伸びる孔30Bとからなる貫通孔を有し、前記貫通孔にハンダなどの所定の温度で溶融する可溶性金属22を充填した球状の弁30を、孔30Aの開口を封入孔16の封入口に対向させ、球状の弁30を封入孔16の封入口端縁16Aに当接して置き、ねじ31をねじ孔25にねじ込み、ねじ31の端面を弁31の球面の一点に押し当てて弁31にねじ31の回転力を伝達することなくねじ締め固定する。
【解決手段】 半径に伸びる孔30Aと孔30Aと連通し直径に伸びる孔30Bとからなる貫通孔を有し、前記貫通孔にハンダなどの所定の温度で溶融する可溶性金属22を充填した球状の弁30を、孔30Aの開口を封入孔16の封入口に対向させ、球状の弁30を封入孔16の封入口端縁16Aに当接して置き、ねじ31をねじ孔25にねじ込み、ねじ31の端面を弁31の球面の一点に押し当てて弁31にねじ31の回転力を伝達することなくねじ締め固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱ローラ用ジャケット室の密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばローラ本体の中空内に誘導コイルあるいは鉄心に誘導コイルを巻回した交番磁束発生機構を設置し、交番磁束発生機構が発生する交番磁束によりジュール発熱する、いわゆる誘導発熱ローラは良く知られている。このような誘導発熱ローラでは一つの誘導コイルの長手方向の中心部における発熱量が多く、端部に行くにしたがい発熱量が小さくなる性質を有し、そのためにローラの長手方向における表面温度が不均一となる。この不均一を解消するためにローラ本体の周壁に長手方向に沿ってジャケット室を設け、このジャケット室に水などの熱媒体を適量注入し、そのあとジャケット室を密封するようにしている。このようにすると発熱量が多い箇所で熱媒体が熱を奪って気化し、気化した熱媒体は発熱量が小さい箇所に移動して熱を放出して液化する。この潜熱移動によりローラ本体の長手方向の表面温度を均一化する。
【0003】
このように気液二相の熱媒体を封入したジャケット室を設けると、ローラ本体が異常に加熱された場合、ジャケット室内部に封入されている気液二相の熱媒体が高温となり、ジャケット室内部の圧力が異常に高められ、その圧力によってジャケット室ひいてはローラ本体が破損乃至は爆発する恐れがある。このおそれを防止するために、ジャケット室内部の圧力が所定の圧力以上になるとジャケット室の密封を解除することが必要となる。
【0004】
図7は、ジャケット室の密封を解除する密封装置を設けた誘導発熱ローラ装置の一例を示すもので、図7において1は片持式のローラ本体で、これに軸2が連結されてあり、固定枠3に支持されている軸受4によって回転自在に支持されている。固定枠3には固定盤5がねじ6によって固定されてあり、この固定盤5はローラ本体1の開口面にこれを覆うように相対して配置されている。
【0005】
この固定盤5にはローラ本体1と同軸の誘導コイル7などからなる交番磁束発生機構8が支持されている。図示の交番磁束発生機構8は鉄心を使用していない例であるが、鉄心を使用する場合はこれも固定盤5に支持するようにしておく。誘導コイル7を、リード線9を介して交流電源によって励磁すると、ローラ本体1の周壁1Aに電流が誘起し、この電流によって周壁1Aがジュール発熱する。
【0006】
周壁1Aの温度は温度センサ11,12によって検出される。温度センサ11が検出した温度に対応して誘起した電圧はリード13を介して、および温度センサ12が検出した温度に対応して誘起した電圧は、回転トランス14を介して、それぞれ外部に導出される。このようにして検出された温度に応じて誘導コイル7の励磁電圧を調整するなどして、周壁1Aの表面温度を所望値に維持する。周壁1Aの肉厚部内に気密のジャケット室15が複数設置されてあり、ここに気液二相の熱媒体が密封されている。この熱媒体の相変化による潜熱の移動によって周壁1Aの全域を均温化させ、均一な温度分布を得るようにしている。
【0007】
ジャケット室15には、ジャケット室15内に通じる小径の封入孔16と、この封入孔16に連続し封入孔16と同心の大径のねじ孔25とからなる外気と連通する連通孔が設けられ、図の例ではローラ本体1の開口端縁に開口するようにこの連通孔が設けられている。ねじ孔25の開口面は固定盤5に対して空隙を介して向き合っており、このねじ孔25に、図8に拡大して示す密封装置19が設けられている。密封装置19は、金属たとえばスチールからなる球状の弁17と、この弁17が固定されてあるねじ18とからなり、弁17にはその中心を通る貫通孔20が形成されており、この貫通孔20にたとえば銅からなるピン21がこれを貫く程度に挿入されている。そしてこのピン21と貫通孔20の内周面との間の微小な間隙20Aには、所定の温度で溶融状態となるたとえばハンダのような可溶性金属22が充填されてある。この可溶性金属22が所定値以下の低い温度状態にあって固体状態にあるとき、ピン21は貫通孔20の内部で固定される。
【0008】
ねじ18には弁17の貫通孔20とほぼ同径の孔23と、これに連続するねじ締め孔24が形成されてあり、この孔23にピン21の端部が挿入される。そしてこのピン21を挿入したままの状態で弁17とねじ18とがたとえば接着剤によって固定される。孔23はねじ18の中心に形成されており、この孔23にピン21を挿入して弁17をねじ18に固定する。そのあとねじ18を弁17が封入孔16の開口(以下、封入口という。)の端縁16Aにこれを弁座として押しつけられるように捩じ込む。これにより封入孔16は確実に封止されることになる。また、ジャケット室15の内部が異常高温状態になると可溶性金属が溶融し、ジャケット室15の内圧でピン21が弁17から抜き取られ、これによりジャケット室15の密封を解除する。
【特許文献1】特公平5−86638号公報
【特許文献2】特開2002−208470号公報
【0009】
以上のように構成した密封装置では、球状の弁17の貫通孔20とねじ18の貫通孔23とを一直線に合せて弁17をねじ18の端面に取り付け、それをねじ孔25に捩じ込み、弁17を封入口の端縁16Aに押し付けて密封している。そのためにねじ18に対し弁17の貫通孔20が偏芯して取付けられた場合には、弁17を封入孔16の封入口端縁16Aに対し均一な接触圧で密封することができず、また、ねじ18で締め込む際の回転力が線接触面を通じて弁17に伝わり、弁17自体にも回転力が発生し、封入孔16の封入口端縁16Aで滑りが生じ、その封入口端縁16Aを損傷し、その結果、ジャケット室15内の熱媒体が漏洩するといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、内部にジャケット室の内部が異常高温状態となったときに溶融状態となる可溶性金属を充填した貫通孔を有する球状弁とその弁をねじ締め固定するねじとからなり、ジャケット室の封入口を弁で密封してなる密封装置において、ジャケット室の封入口端縁に均一な接触圧で簡単に弁を設置することができるようにし、斯かる問題を解消する点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、所定の温度で溶融状態となる可溶性金属を充填した貫通孔を有する球状弁と、前記球状弁をねじ締め固定するねじとを有し、熱ローラ本体の周壁内に形成した気液二相の熱媒体を注入してなるジャケット室の外部と連通する開口に前記球状弁の貫通孔の一方の孔口を当てて、前記ねじで前記熱ローラ本体にねじ締め固定して前記ジャケット室を密封してなる熱ローラ用ジャケット室の密封装置であって、前記球状弁と前記ねじとを前記球状弁の貫通孔の他方の孔口から隔てた一点で接触してなることを主たる特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
発明では、球状弁の貫通孔の孔口をジャケット室の封入口に対向させた状態で、球状弁を封入口端縁に当接して設置し、その弁をねじで締め付けて固定する。その際、弁の貫通孔の孔口とねじとの線接触がなく、ねじと弁の球面との一点で接触するので、ねじの回転力が弁に伝達されず、封入口端縁の弁の回転による損傷を防止することができ、また、封入口に当てた球状弁は、設置した状態を維持し偏芯することもなく、これによりジャケット室が正常な温度状態では密封が確実に維持され、また、ジャケット室が異常高温状態となると弁の貫通孔に充填した可溶性金属が溶融し、ジャケット室内の圧力は弁の貫通孔を経て外部に放出され確実に密封を解除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ジャケット室の封入口端縁に均一な接触圧で簡単かつ確実に弁を設置することができるようにする目的を、球状の弁の貫通孔の孔口をねじの当接面から外し、球状弁の球面とねじの端面とを当接することにより実現した。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例に係る熱ローラ用ジャケット室の密封装置の構成を示す図で、(a)は密封装置の断面図、(b)はねじの平面図である。なお、図8に示す従来の密封装置と同一および対応する部分には同一の符号を付している。図1において、1は図7に示す誘導発熱ローラ装置と同様の中空内に誘導コイルなどの加熱源を備えた熱ローラ本体、15は熱ローラ本体1の周壁の肉厚部内に熱ローラ本体1の長手方向に沿ってドリルなどで形成したジャケット室、16はジャケット室15内に通じる小径の封入孔、25は封入孔16に連続し封入孔16と同心の大径のねじ孔であり、ジャケット室15は封入孔16およびねじ孔25を介して外気と連通している。
【0015】
30は金属たとえばスチールからなる球状弁で、球状弁30には半径に伸びる孔30Aと孔30Aと連通し直径に伸びる孔30B、すなわち略T字状に分岐した球面の3方位置で開口する貫通孔が形成され、この貫通孔内にハンダなどの所定の温度で溶融する可溶性金属22が気密に充填されている。31はねじで、ねじ31の球状弁30と当接する端面は平坦(曲率面であっても良い。)をなし、その周壁には、球状弁30を配置する空間25と外部とを連通する連通路を形成する凹溝31Aが形成され、弁30と当接する反対側の端面にねじ締め孔31Bが形成されている。
【0016】
なお、この連通路はジャケット室15内の異常圧力を放出する通路であって、この例ではねじ31の外周面に凹溝31Aで形成しているが、ねじ31のねじの隙間を利用してもよく、図2に示すようにねじ31の周壁の一部を平面状に切り落として連通路を形成するようにしてもよい。また、図3に示すようにねじ31の端面の外周側の端部からねじ締め孔31Bに伸びる貫通孔31Cを形成し、この貫通孔31Cを連通路としてもよく、さらには図4に示すように熱ローラ本体1に球状弁30を配置する空間25と外部とを連通する連通孔31Dを形成し、この連通孔31Cを連通路としてもよい。すなわち、ねじ31と球状弁30との接触において、連通路を形成する孔口などが接触しない位置であれば足りる。
【0017】
そして、ジャケット室15に気液二相の熱媒体となる水などを適量注入したあと、球状弁30の半径に伸びる孔30Aの孔口を封入孔16の封入口に対向させ、球状弁30を封入孔16の封入口端縁16Aに当接して置き、ねじ31をねじ孔25にねじ込み、ねじ31の端面を弁31の球面に押し当てて弁31をねじ締め固定する。その固定の際、弁30の貫通孔の孔口端縁とねじ31の端面との線接触がなく、ねじ31の端面と弁30の球面との一点で接触するので、ねじ31の回転力が弁に伝達されず、弁30を封入口端縁16Aに対し常に均一な接触圧で密封することができる。
【0018】
この密封によりジャケット室15内の温度が正常の温度(可溶性金属22の溶融温度以下)である場合、可溶性金属22が溶融せずジャケット室15は密封状態が維持され、ジャケット室15内に密封した気液二相の熱媒体は潜熱の移動による均温化機能を達成する。ジャケット室15内の温度が異常に上昇すると、弁30の貫通孔に充填した可溶性金属22が溶融して貫通孔は開通し、ジャケット室15内の圧力は、弁30の半径に伸びる孔30A、直径に伸びる孔30Bおよびこの実施例ではねじ31の凹溝31Aを経由して外部に放出される。
【0019】
なお、以上の実施例では、弁30の貫通孔を半径に伸びる孔30Aと孔30Aと連通し直径に伸びる孔30Bとにより形成しているが、弁30の貫通孔の構成は弁の貫通孔の孔口端縁とねじの端面とが接触しない構成であれば足り、たとえばY字状あるいは斜め直線状の貫通孔としても良い。
【0020】
ところで、ジャケット室内の熱媒蒸気により弁の貫通孔に充填した可溶性金属が侵食され、弁の貫通孔が早期に開通する場合がある。この侵食による早期の開通を防止するために、弁の貫通孔内にたとえば銅からなる棒状或いは球状など適宜形状の障害部材を挿入するとよい。図5は弁の貫通孔内に棒状の障害部材(以下、ピンという。)を挿入した例を示し(図4もピンを挿入した例である。)、図6は弁の貫通孔内に球状の障害部材(以下、ボールという。)を挿入した例を示しものである。なお、図5および図6において、図1に示す実施例の密封装置と同一部分には同一の符号を付している。
【0021】
図5に示す例では、半径に伸びる孔30Aと孔30Aと連通し直径に伸びる孔30Bからなる貫通孔を備える球状弁30で、直径に伸びる孔30B内に直径にまたがって伸びるピン32を挿入し、半径に伸びる孔30A内および直径に伸びる孔30Bの内壁とピン32の外壁との狭い空間内にたとえばハンダのような可溶性金属22が気密に充填されている。この場合、半径に伸びる孔30A内の可溶性金属22が侵食されても、直径に伸びる孔30Bの内壁とピン32の外壁との狭い空間内の可溶性金属22が侵食され難く、弁の貫通孔が早期に開通することを防止することができる。なお、ピン32は通常可溶性金属22により固定され、ジャケット室内の温度が異常に上昇すると、弁30の貫通孔に充填した可溶性金属22が溶融し、ジャケット室内の圧力は、弁30の半径に伸びる孔30A、直径に伸びる孔30Bの内壁とピン32の外壁との空間およびねじ31の凹溝31Aを経由して外部に放出される。
【0022】
図6に示す例では、半径に伸びる孔30Aと孔30Aと連通し直径に伸びる孔30Bからなる貫通孔を備える球状弁30で、半径に伸びる孔30Aのジャケット室の封入口に面する端部にボール33を挿入し、そのボールを可溶性金属22で固定する。この場合、半径に伸びる孔30Aの内壁とボール33との間は狭く、可溶性金属22が侵食され難くなる。なお、ボール33の形状は多角形であってもよいが、ジャケット室内の温度が異常に上昇すると、弁30の貫通孔に充填した可溶性金属22が溶融し、ジャケット室の蒸気圧の放出によりボール33が押し込められる。そのときにおいても蒸気の通る断面を確保するため、半径に伸びる孔30Aの端部にボール33が位置する空間30Cが形成されている。
【0023】
なお、本発明は図7に示す片持式の誘導発熱ローラのみに適用されるものではなく、ローラ本体をその両端で支持する、いわゆる両持式の誘導発熱ローラについても、また、誘導発熱ローラのみならず加熱源をヒータあるいは熱媒流体とする加熱又は奪熱ローラについても適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例に係る密封装置の構成を示す断面図である。
【図2】ねじの他の例を示す平面図である。
【図3】ねじの他の例を示す平面図(a)と断面図(b)である。
【図4】連通路の他の例を示す断面図である。
【図5】弁の他の構造を示す断面図である。
【図6】弁の更に他の構造を示す断面図である。
【図7】誘導発熱ローラ装置の断面図である。
【図8】従来の密封装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 熱ローラ本体
15 ジャケット室
16 封入孔
16A 封入口端縁
22 可溶性金属
25 ねじ孔
30 球状弁
30A 半径に伸びる孔
30B 直径に伸びる孔
31 ねじ
31A、31C、31D 連通路
32 ピン
33 ボール
【技術分野】
【0001】
本発明は熱ローラ用ジャケット室の密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばローラ本体の中空内に誘導コイルあるいは鉄心に誘導コイルを巻回した交番磁束発生機構を設置し、交番磁束発生機構が発生する交番磁束によりジュール発熱する、いわゆる誘導発熱ローラは良く知られている。このような誘導発熱ローラでは一つの誘導コイルの長手方向の中心部における発熱量が多く、端部に行くにしたがい発熱量が小さくなる性質を有し、そのためにローラの長手方向における表面温度が不均一となる。この不均一を解消するためにローラ本体の周壁に長手方向に沿ってジャケット室を設け、このジャケット室に水などの熱媒体を適量注入し、そのあとジャケット室を密封するようにしている。このようにすると発熱量が多い箇所で熱媒体が熱を奪って気化し、気化した熱媒体は発熱量が小さい箇所に移動して熱を放出して液化する。この潜熱移動によりローラ本体の長手方向の表面温度を均一化する。
【0003】
このように気液二相の熱媒体を封入したジャケット室を設けると、ローラ本体が異常に加熱された場合、ジャケット室内部に封入されている気液二相の熱媒体が高温となり、ジャケット室内部の圧力が異常に高められ、その圧力によってジャケット室ひいてはローラ本体が破損乃至は爆発する恐れがある。このおそれを防止するために、ジャケット室内部の圧力が所定の圧力以上になるとジャケット室の密封を解除することが必要となる。
【0004】
図7は、ジャケット室の密封を解除する密封装置を設けた誘導発熱ローラ装置の一例を示すもので、図7において1は片持式のローラ本体で、これに軸2が連結されてあり、固定枠3に支持されている軸受4によって回転自在に支持されている。固定枠3には固定盤5がねじ6によって固定されてあり、この固定盤5はローラ本体1の開口面にこれを覆うように相対して配置されている。
【0005】
この固定盤5にはローラ本体1と同軸の誘導コイル7などからなる交番磁束発生機構8が支持されている。図示の交番磁束発生機構8は鉄心を使用していない例であるが、鉄心を使用する場合はこれも固定盤5に支持するようにしておく。誘導コイル7を、リード線9を介して交流電源によって励磁すると、ローラ本体1の周壁1Aに電流が誘起し、この電流によって周壁1Aがジュール発熱する。
【0006】
周壁1Aの温度は温度センサ11,12によって検出される。温度センサ11が検出した温度に対応して誘起した電圧はリード13を介して、および温度センサ12が検出した温度に対応して誘起した電圧は、回転トランス14を介して、それぞれ外部に導出される。このようにして検出された温度に応じて誘導コイル7の励磁電圧を調整するなどして、周壁1Aの表面温度を所望値に維持する。周壁1Aの肉厚部内に気密のジャケット室15が複数設置されてあり、ここに気液二相の熱媒体が密封されている。この熱媒体の相変化による潜熱の移動によって周壁1Aの全域を均温化させ、均一な温度分布を得るようにしている。
【0007】
ジャケット室15には、ジャケット室15内に通じる小径の封入孔16と、この封入孔16に連続し封入孔16と同心の大径のねじ孔25とからなる外気と連通する連通孔が設けられ、図の例ではローラ本体1の開口端縁に開口するようにこの連通孔が設けられている。ねじ孔25の開口面は固定盤5に対して空隙を介して向き合っており、このねじ孔25に、図8に拡大して示す密封装置19が設けられている。密封装置19は、金属たとえばスチールからなる球状の弁17と、この弁17が固定されてあるねじ18とからなり、弁17にはその中心を通る貫通孔20が形成されており、この貫通孔20にたとえば銅からなるピン21がこれを貫く程度に挿入されている。そしてこのピン21と貫通孔20の内周面との間の微小な間隙20Aには、所定の温度で溶融状態となるたとえばハンダのような可溶性金属22が充填されてある。この可溶性金属22が所定値以下の低い温度状態にあって固体状態にあるとき、ピン21は貫通孔20の内部で固定される。
【0008】
ねじ18には弁17の貫通孔20とほぼ同径の孔23と、これに連続するねじ締め孔24が形成されてあり、この孔23にピン21の端部が挿入される。そしてこのピン21を挿入したままの状態で弁17とねじ18とがたとえば接着剤によって固定される。孔23はねじ18の中心に形成されており、この孔23にピン21を挿入して弁17をねじ18に固定する。そのあとねじ18を弁17が封入孔16の開口(以下、封入口という。)の端縁16Aにこれを弁座として押しつけられるように捩じ込む。これにより封入孔16は確実に封止されることになる。また、ジャケット室15の内部が異常高温状態になると可溶性金属が溶融し、ジャケット室15の内圧でピン21が弁17から抜き取られ、これによりジャケット室15の密封を解除する。
【特許文献1】特公平5−86638号公報
【特許文献2】特開2002−208470号公報
【0009】
以上のように構成した密封装置では、球状の弁17の貫通孔20とねじ18の貫通孔23とを一直線に合せて弁17をねじ18の端面に取り付け、それをねじ孔25に捩じ込み、弁17を封入口の端縁16Aに押し付けて密封している。そのためにねじ18に対し弁17の貫通孔20が偏芯して取付けられた場合には、弁17を封入孔16の封入口端縁16Aに対し均一な接触圧で密封することができず、また、ねじ18で締め込む際の回転力が線接触面を通じて弁17に伝わり、弁17自体にも回転力が発生し、封入孔16の封入口端縁16Aで滑りが生じ、その封入口端縁16Aを損傷し、その結果、ジャケット室15内の熱媒体が漏洩するといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、内部にジャケット室の内部が異常高温状態となったときに溶融状態となる可溶性金属を充填した貫通孔を有する球状弁とその弁をねじ締め固定するねじとからなり、ジャケット室の封入口を弁で密封してなる密封装置において、ジャケット室の封入口端縁に均一な接触圧で簡単に弁を設置することができるようにし、斯かる問題を解消する点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、所定の温度で溶融状態となる可溶性金属を充填した貫通孔を有する球状弁と、前記球状弁をねじ締め固定するねじとを有し、熱ローラ本体の周壁内に形成した気液二相の熱媒体を注入してなるジャケット室の外部と連通する開口に前記球状弁の貫通孔の一方の孔口を当てて、前記ねじで前記熱ローラ本体にねじ締め固定して前記ジャケット室を密封してなる熱ローラ用ジャケット室の密封装置であって、前記球状弁と前記ねじとを前記球状弁の貫通孔の他方の孔口から隔てた一点で接触してなることを主たる特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
発明では、球状弁の貫通孔の孔口をジャケット室の封入口に対向させた状態で、球状弁を封入口端縁に当接して設置し、その弁をねじで締め付けて固定する。その際、弁の貫通孔の孔口とねじとの線接触がなく、ねじと弁の球面との一点で接触するので、ねじの回転力が弁に伝達されず、封入口端縁の弁の回転による損傷を防止することができ、また、封入口に当てた球状弁は、設置した状態を維持し偏芯することもなく、これによりジャケット室が正常な温度状態では密封が確実に維持され、また、ジャケット室が異常高温状態となると弁の貫通孔に充填した可溶性金属が溶融し、ジャケット室内の圧力は弁の貫通孔を経て外部に放出され確実に密封を解除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ジャケット室の封入口端縁に均一な接触圧で簡単かつ確実に弁を設置することができるようにする目的を、球状の弁の貫通孔の孔口をねじの当接面から外し、球状弁の球面とねじの端面とを当接することにより実現した。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例に係る熱ローラ用ジャケット室の密封装置の構成を示す図で、(a)は密封装置の断面図、(b)はねじの平面図である。なお、図8に示す従来の密封装置と同一および対応する部分には同一の符号を付している。図1において、1は図7に示す誘導発熱ローラ装置と同様の中空内に誘導コイルなどの加熱源を備えた熱ローラ本体、15は熱ローラ本体1の周壁の肉厚部内に熱ローラ本体1の長手方向に沿ってドリルなどで形成したジャケット室、16はジャケット室15内に通じる小径の封入孔、25は封入孔16に連続し封入孔16と同心の大径のねじ孔であり、ジャケット室15は封入孔16およびねじ孔25を介して外気と連通している。
【0015】
30は金属たとえばスチールからなる球状弁で、球状弁30には半径に伸びる孔30Aと孔30Aと連通し直径に伸びる孔30B、すなわち略T字状に分岐した球面の3方位置で開口する貫通孔が形成され、この貫通孔内にハンダなどの所定の温度で溶融する可溶性金属22が気密に充填されている。31はねじで、ねじ31の球状弁30と当接する端面は平坦(曲率面であっても良い。)をなし、その周壁には、球状弁30を配置する空間25と外部とを連通する連通路を形成する凹溝31Aが形成され、弁30と当接する反対側の端面にねじ締め孔31Bが形成されている。
【0016】
なお、この連通路はジャケット室15内の異常圧力を放出する通路であって、この例ではねじ31の外周面に凹溝31Aで形成しているが、ねじ31のねじの隙間を利用してもよく、図2に示すようにねじ31の周壁の一部を平面状に切り落として連通路を形成するようにしてもよい。また、図3に示すようにねじ31の端面の外周側の端部からねじ締め孔31Bに伸びる貫通孔31Cを形成し、この貫通孔31Cを連通路としてもよく、さらには図4に示すように熱ローラ本体1に球状弁30を配置する空間25と外部とを連通する連通孔31Dを形成し、この連通孔31Cを連通路としてもよい。すなわち、ねじ31と球状弁30との接触において、連通路を形成する孔口などが接触しない位置であれば足りる。
【0017】
そして、ジャケット室15に気液二相の熱媒体となる水などを適量注入したあと、球状弁30の半径に伸びる孔30Aの孔口を封入孔16の封入口に対向させ、球状弁30を封入孔16の封入口端縁16Aに当接して置き、ねじ31をねじ孔25にねじ込み、ねじ31の端面を弁31の球面に押し当てて弁31をねじ締め固定する。その固定の際、弁30の貫通孔の孔口端縁とねじ31の端面との線接触がなく、ねじ31の端面と弁30の球面との一点で接触するので、ねじ31の回転力が弁に伝達されず、弁30を封入口端縁16Aに対し常に均一な接触圧で密封することができる。
【0018】
この密封によりジャケット室15内の温度が正常の温度(可溶性金属22の溶融温度以下)である場合、可溶性金属22が溶融せずジャケット室15は密封状態が維持され、ジャケット室15内に密封した気液二相の熱媒体は潜熱の移動による均温化機能を達成する。ジャケット室15内の温度が異常に上昇すると、弁30の貫通孔に充填した可溶性金属22が溶融して貫通孔は開通し、ジャケット室15内の圧力は、弁30の半径に伸びる孔30A、直径に伸びる孔30Bおよびこの実施例ではねじ31の凹溝31Aを経由して外部に放出される。
【0019】
なお、以上の実施例では、弁30の貫通孔を半径に伸びる孔30Aと孔30Aと連通し直径に伸びる孔30Bとにより形成しているが、弁30の貫通孔の構成は弁の貫通孔の孔口端縁とねじの端面とが接触しない構成であれば足り、たとえばY字状あるいは斜め直線状の貫通孔としても良い。
【0020】
ところで、ジャケット室内の熱媒蒸気により弁の貫通孔に充填した可溶性金属が侵食され、弁の貫通孔が早期に開通する場合がある。この侵食による早期の開通を防止するために、弁の貫通孔内にたとえば銅からなる棒状或いは球状など適宜形状の障害部材を挿入するとよい。図5は弁の貫通孔内に棒状の障害部材(以下、ピンという。)を挿入した例を示し(図4もピンを挿入した例である。)、図6は弁の貫通孔内に球状の障害部材(以下、ボールという。)を挿入した例を示しものである。なお、図5および図6において、図1に示す実施例の密封装置と同一部分には同一の符号を付している。
【0021】
図5に示す例では、半径に伸びる孔30Aと孔30Aと連通し直径に伸びる孔30Bからなる貫通孔を備える球状弁30で、直径に伸びる孔30B内に直径にまたがって伸びるピン32を挿入し、半径に伸びる孔30A内および直径に伸びる孔30Bの内壁とピン32の外壁との狭い空間内にたとえばハンダのような可溶性金属22が気密に充填されている。この場合、半径に伸びる孔30A内の可溶性金属22が侵食されても、直径に伸びる孔30Bの内壁とピン32の外壁との狭い空間内の可溶性金属22が侵食され難く、弁の貫通孔が早期に開通することを防止することができる。なお、ピン32は通常可溶性金属22により固定され、ジャケット室内の温度が異常に上昇すると、弁30の貫通孔に充填した可溶性金属22が溶融し、ジャケット室内の圧力は、弁30の半径に伸びる孔30A、直径に伸びる孔30Bの内壁とピン32の外壁との空間およびねじ31の凹溝31Aを経由して外部に放出される。
【0022】
図6に示す例では、半径に伸びる孔30Aと孔30Aと連通し直径に伸びる孔30Bからなる貫通孔を備える球状弁30で、半径に伸びる孔30Aのジャケット室の封入口に面する端部にボール33を挿入し、そのボールを可溶性金属22で固定する。この場合、半径に伸びる孔30Aの内壁とボール33との間は狭く、可溶性金属22が侵食され難くなる。なお、ボール33の形状は多角形であってもよいが、ジャケット室内の温度が異常に上昇すると、弁30の貫通孔に充填した可溶性金属22が溶融し、ジャケット室の蒸気圧の放出によりボール33が押し込められる。そのときにおいても蒸気の通る断面を確保するため、半径に伸びる孔30Aの端部にボール33が位置する空間30Cが形成されている。
【0023】
なお、本発明は図7に示す片持式の誘導発熱ローラのみに適用されるものではなく、ローラ本体をその両端で支持する、いわゆる両持式の誘導発熱ローラについても、また、誘導発熱ローラのみならず加熱源をヒータあるいは熱媒流体とする加熱又は奪熱ローラについても適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例に係る密封装置の構成を示す断面図である。
【図2】ねじの他の例を示す平面図である。
【図3】ねじの他の例を示す平面図(a)と断面図(b)である。
【図4】連通路の他の例を示す断面図である。
【図5】弁の他の構造を示す断面図である。
【図6】弁の更に他の構造を示す断面図である。
【図7】誘導発熱ローラ装置の断面図である。
【図8】従来の密封装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 熱ローラ本体
15 ジャケット室
16 封入孔
16A 封入口端縁
22 可溶性金属
25 ねじ孔
30 球状弁
30A 半径に伸びる孔
30B 直径に伸びる孔
31 ねじ
31A、31C、31D 連通路
32 ピン
33 ボール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度で溶融状態となる可溶性金属を充填した貫通孔を有する球状弁と、前記球状弁をねじ締め固定するねじとを有し、熱ローラ本体の周壁内に形成した気液二相の熱媒体を注入してなるジャケット室の外部と連通する開口に前記球状弁の貫通孔の一方の孔口を当てて、前記ねじで前記熱ローラ本体にねじ締め固定して前記ジャケット室を密封してなる熱ローラ用ジャケット室の密封装置であって、前記球状弁と前記ねじとを前記球状弁の貫通孔の他方の孔口から隔てた一点で接触してなることを特徴とする熱ローラ用ジャケット室の密封装置。
【請求項2】
球状弁を配置する空間と外部とを連通する連通路を設けたことを特徴とする請求項1に記載の熱ローラ用ジャケット室の密封装置。
【請求項3】
球状弁の貫通孔の他方の孔口を複数形成してなることを特徴とする請求項1に記載の熱ローラ用ジャケット室の密封装置。
【請求項4】
球状弁の貫通孔内に金属製の適宜形状の障害部材を挿入し、前記障害部材を前記球状弁の貫通孔に充填した可溶性金属で固定してなることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の熱ローラ用ジャケット室の密封装置。
【請求項5】
球状弁の貫通孔に、可溶性金属が溶融したとき前記貫通孔の内部に挿入した金属製の障害部材を退避させる窪みを形成してなることを特徴とする請求項4に記載の熱ローラ用ジャケット室の密封装置。
【請求項1】
所定の温度で溶融状態となる可溶性金属を充填した貫通孔を有する球状弁と、前記球状弁をねじ締め固定するねじとを有し、熱ローラ本体の周壁内に形成した気液二相の熱媒体を注入してなるジャケット室の外部と連通する開口に前記球状弁の貫通孔の一方の孔口を当てて、前記ねじで前記熱ローラ本体にねじ締め固定して前記ジャケット室を密封してなる熱ローラ用ジャケット室の密封装置であって、前記球状弁と前記ねじとを前記球状弁の貫通孔の他方の孔口から隔てた一点で接触してなることを特徴とする熱ローラ用ジャケット室の密封装置。
【請求項2】
球状弁を配置する空間と外部とを連通する連通路を設けたことを特徴とする請求項1に記載の熱ローラ用ジャケット室の密封装置。
【請求項3】
球状弁の貫通孔の他方の孔口を複数形成してなることを特徴とする請求項1に記載の熱ローラ用ジャケット室の密封装置。
【請求項4】
球状弁の貫通孔内に金属製の適宜形状の障害部材を挿入し、前記障害部材を前記球状弁の貫通孔に充填した可溶性金属で固定してなることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の熱ローラ用ジャケット室の密封装置。
【請求項5】
球状弁の貫通孔に、可溶性金属が溶融したとき前記貫通孔の内部に挿入した金属製の障害部材を退避させる窪みを形成してなることを特徴とする請求項4に記載の熱ローラ用ジャケット室の密封装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2006−46629(P2006−46629A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320887(P2004−320887)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】
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