説明

熱交換器用流体分配マニフォルドおよび該熱交換器用流体分配マニフォルドを取入れたパワーエレクトロニクス・モジュール

【課題】熱交換器に分配する冷却流体を均一とした熱交換器用流体分配マニフォルドおよび該熱交換器用流体分配マニフォルドを取入れたパワーエレクトロニクス・モジュールを提供する。
【解決手段】熱交換器用流体分配マニフォルド100は、冷却流体チャンバ105を画成するマニフォルド本体102と、チャンバ内に冷却流体を導入すべく構成された単一の流体取入口110と、チャンバから冷却流体を排出すべく構成された複数の流体吐出口120とを含む。少なくとも2つの流体吐出口は単一の流体取入口から不等距離だけ離間され、且つ、各流体吐出口における冷却流体流量は実質的に均一である。熱交換器用流体分配マニフォルドは、冷却流体チャンバに沿う複数の誘引壁部を更に含む。各誘引壁部は、個々の流体吐出口の近傍に配置され、冷却流体流量が実質的に均一であり且つ圧損合計が約2kPa未満である如く、最適化されたスプライン状特定構造を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概略的には熱交換器用流体分配マニフォルドに関し、更に詳細には、最適化された誘引壁部(serpentine wall)を有することで実質的に均一な冷却流体流を提供するという熱交換器用流体分配マニフォルドに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの如き発熱デバイスに対しては吸熱デバイスが結合されることで、熱が除去されると共に、上記発熱デバイスの最高動作温度が低下され得る。上記発熱デバイスにより発生された熱を、対流的な熱伝達により受容し、該発熱デバイスから斯かる熱を除去するために、冷却流体が使用され得る。パワーエレクトロニクス用途に対する典型的な熱交換器は多くの場合、効率的に熱負荷を処理するために、システム内の複数の箇所へと冷却流体を分配することが必要とされる。しかし、もしこれらの箇所が流体取入口から等しい距離に配置されなければ、各吐出口間において流体流の差が生ずることが多い。付加的に、上記取入口から各吐出口までの圧損は、相対距離の関数として変化し得る。構造の全体にわたる圧損を最小限とすることで、熱交換器に対する圧送要件および関連する支援機器を最小限とすることが好適であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
故に、熱交換器に対して冷却流体を提供する代替的な熱交換器用流体分配マニフォルドに対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、熱交換器用流体分配マニフォルドは、冷却流体チャンバを画成するマニフォルド本体と、単一の流体取入口と、複数の流体吐出口とを含む。上記単一の流体取入口は、上記マニフォルド本体の上記冷却流体チャンバ内へと冷却流体を導入すべく構成される。上記複数の流体吐出口は、上記冷却流体チャンバから冷却流体を排出すべく構成される。上記複数の流体吐出口の内の少なくとも2つの流体吐出口は上記単一の流体取入口から不等距離だけ離間され、且つ、各流体吐出口における冷却流体流量は実質的に均一である。
【0005】
別実施形態において、熱交換器用流体分配マニフォルドは、冷却流体チャンバを画成するマニフォルド本体と、単一の流体取入口と、複数の流体吐出口と、上記冷却流体チャンバに沿う複数の誘引壁部とを含む。上記単一の流体取入口は、上記マニフォルド本体の上記冷却流体チャンバ内へと冷却流体を導入すべく構成される。上記複数の流体吐出口は、上記冷却流体チャンバから冷却流体を排出すべく構成される。上記複数の流体吐出口の内の少なくとも2つの流体吐出口は上記単一の流体取入口から不等距離だけ離間され、且つ、各流体吐出口における冷却流体流量は実質的に均一である。各誘引壁部は、個々の流体吐出口の近傍に配置されたスプライン状特定構造を備え、上記スプライン状特定構造は、各流体吐出口における冷却流体流量が実質的に均一であり且つ上記マニフォルド本体内の圧損合計が約2kPa未満である如く、幾何学的に最適化される。
【0006】
更に別の実施形態において、パワーエレクトロニクス・モジュールは、熱交換器用流体分配マニフォルドと、熱交換器モジュールと、パワーエレクトロニクス・デバイスとを含む。上記熱交換器用流体分配マニフォルドは、冷却流体チャンバを画成するマニフォルド本体と、単一の流体取入口と、複数の流体吐出口とを含んでいる。上記単一の流体取入口は、上記マニフォルド本体の上記冷却流体チャンバ内へと冷却流体を導入すべく構成される。上記複数の流体吐出口は、上記冷却流体チャンバから冷却流体を排出すべく構成される。上記複数の流体吐出口の内の少なくとも2つの流体吐出口は上記単一の流体取入口から不等距離だけ離間され、且つ、各流体吐出口における冷却流体流量は実質的に均一である。上記熱交換器モジュールは、熱交換表面と交換器吐出口とを含む。上記熱交換器モジュールは、上記熱交換器用流体分配マニフォルドの少なくともひとつの流体吐出口に対して流体連結される。冷却流体は、上記単一の流体取入口から上記流体吐出口を通り上記熱交換器モジュール内へと流入する。上記パワーエレクトロニクス・デバイスは、上記熱交換表面にて上記熱交換器モジュールに対し熱的に結合される。
【0007】
本明細書中に記述される実施形態により提供されるこれらのおよび付加的な特徴は、図面と併せて以下の詳細な説明を考慮すれば更に十分に理解されよう。
【0008】
図面中に示された実施形態は本質的に例証的かつ例示的であり、特許請求の範囲により定義された主題を制限することを意図していない。以下における図示実施形態の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で表されるという以下の各図と併せて読破されたときに理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本明細書中に示され且つ記述されたひとつ以上の実施形態に係る熱交換器用流体分配マニフォルドの斜視図である。
【図2】図1に示された熱交換器用流体分配マニフォルドの冷却流体チャンバの斜視図である。
【図3】図1に示された熱交換器用流体分配マニフォルドの断面図である。
【図4】本明細書中に示され且つ記述されたひとつ以上の実施形態に係るパワーエレクトロニクス・モジュールの側面図である。
【図5】本明細書中に示され且つ記述されたひとつ以上の実施形態に係る熱交換器用流体分配マニフォルドの斜視図である。
【図6】図5に示された熱交換器用流体分配マニフォルドの冷却流体チャンバの斜視図である。
【図7】図5に示された熱交換器用流体分配マニフォルドの断面図である。
【図8】本明細書中に示され且つ記述されたひとつ以上の実施形態に係るパワーエレクトロニクス・モジュールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は概略的に、熱交換器用流体分配マニフォルドの一実施形態を示している。該熱交換器用流体分配マニフォルドは概略的に、冷却流体チャンバを画成するマニフォルド本体と、単一の流体取入口と、複数の流体吐出口とを備える。上記単一の流体取入口にては、水、エチレングリコール、冷却剤などの如き冷却流体が上記熱交換器用流体分配マニフォルドに進入し、上記冷却流体チャンバを踏破して各流体吐出口に至り得る。上記冷却流体は、各流体吐出口を通り上記熱交換器用流体分配マニフォルドを退出し、パワーエレクトロニクス・デバイスの如き発熱デバイスに対して熱的に結合された熱交換器モジュールへと経路設定され得る。上記冷却流体チャンバは、各流体吐出口における冷却流体流量が実質的に均一であり、且つ、上記冷却流体チャンバ内における圧損合計が最小限とされる如く構成される。一実施形態において、上記マニフォルド本体は、各流体吐出口に対して非常に接近されたスプライン状特定構造を備える誘引壁部を有している。上記誘引壁部およびスプライン状特定構造の形状は、冷却流体流の速度の方向が制御されることで、各流体吐出口における冷却流体流量が実質的に均一であることを確実とする如く最適化される。本明細書においては、熱交換器用流体分配マニフォルドおよびパワーエレクトロニクス・モジュールの種々の実施形態が記述される。
【0011】
次に図1を参照すると、熱交換器用流体分配マニフォルドの一実施形態100が示される。該熱交換器用流体分配マニフォルド100は概略的に、冷却流体チャンバ105を有するマニフォルド本体102と、その内部に配設された単一の流体取入チャネル111および複数の流体吐出チャネル122とを備える。上記流体取入チャネルは、(不図示の)冷却流体源に対して接続された流体ライン152(図4参照)に対して流体連結され得る。一実施形態において、上記冷却流体源は車両のラジエータであり得る。以下において更に詳細に記述される如く、冷却流体は、流体ラインおよび流体取入チャネル111/流体取入口110を介して熱交換器用流体分配マニフォルド100に進入し、且つ、複数の流体吐出口120/流体吐出チャネル122を介して熱交換器用流体分配マニフォルド100を退出し得る。図1に示された如く、冷却流体チャンバ105における流体取入口110は、流体取入チャネル111に対して接続されまたは別様に結合される。同様に、各流体吐出口120は、個々の流体吐出チャネル122に対して接続されまたは別様に結合される。
【0012】
マニフォルド本体102は、たとえばアルミニウムの如き金属材料で作成され得る。該マニフォルド本体102はまた、堅固なプラスチックの如き断熱材料で作成されても良い。一実施形態においてマニフォルド本体102は、第1半体および第2半体を備える。該第1および第2半体は、機械加工もしくは型成形され得る。相互に結合されたとき、上記第1および第2半体は、冷却流体チャンバ105、単一の流体取入チャネル111、および、複数の流体吐出チャネル122の如き、熱交換器用流体分配マニフォルド100の内部特定構造を画成する。上記第1および第2半体は、溶着、接着剤、または、他の任意の結合方法により相互に結合され得る。別実施形態においてマニフォルド本体102は、本明細書において記述された各内部特定構造および各構成要素を含むべく型成形された単一の構成要素である。
【0013】
図2は、図1に示された熱交換器用流体分配マニフォルド100内に配設された冷却流体チャンバ105を示している。該冷却流体チャンバ105は、該冷却流体チャンバ105の第1側面106上にて中央配置された単一の流体取入口110を有している。上述された如く、冷却流体は矢印150により表される如く冷却流体チャンバ105に進入し得る。複数の流体吐出口120は単一の流体取入口110の回りに格子パターンで配置され、該単一の流体取入口110は格子パターンの中心に配置される。冷却流体は、矢印160により表される如く、各流体吐出口を通り上記冷却流体チャンバから流出し得る。各流体吐出口120は、第1側面106とは逆側となる冷却流体チャンバ105の第2側面107上に配置される。図1から図3に示された実施形態は24個の流体吐出口120を有するが、更に多いまたは更に少ない個数の流体吐出口が利用され得る。
【0014】
上記流体取入口と、各流体吐出口との間の距離は、流体吐出口毎に変化する。たとえば、内側の流体吐出口120aと流体取入口110との間の距離は、最外側の流体吐出口120eと流体取入口110との間の距離よりも大きい。上記流体取入口と種々の流体吐出口との間の距離は等しくないことから、直線状の壁部を有する冷却流体チャンバは、各流体吐出口120における不均一な冷却流体流量、ならびに、相対的に大きな圧損合計を引き起こす。本明細書中で用いられる如く、圧損合計(total pressure drop)とは、上記冷却流体チャンバ内において、上記流体取入口から、最も遠い流体吐出口までの圧損である。上記熱交換器用流体分配マニフォルドを通して冷却流体を循環させるための圧送要件を最小限とするために、上記圧損合計は可及的に低くされねばならない。更に、上記熱交換器用流体分配マニフォルドに対して結合された各熱交換器のために一貫した効果的な冷却を達成するために、各流体吐出口に対する冷却流体流量は実質的に等しくされねばならない。一実施形態において、夫々の流体吐出口間における冷却流体流量の最大差は、1.000×10-3kg/s未満である。
【0015】
依然として図2を参照すると、冷却流体チャンバ105は複数の誘引壁部130を備える。各誘引壁部130は、各流体吐出口に接近して配置された複数の個別的なスプライン状特定構造133から構成される。ひとつのスプライン状特定構造(spline feature)とは、ひとつの鋭角点もしくは遷移点から、別の鋭角点もしくは遷移点まで延在する湾曲壁部分により画成される。たとえば、図2に示されたスプライン状特定構造133aは、遷移点134と遷移点135との間に配置される。各誘引壁部130および対応するスプライン状特定構造133の形状およびサイズは最適化されることで、冷却流体チャンバ105内における圧損合計が減少されると共に、各流体吐出口120における均一な冷却流体流量が提供される。本明細書中で用いられる如く、最適化されるという語句は、各流体吐出口において実質的に均一な冷却流体流量を提供すべく各誘引壁部が幾何学的に設計されることを意味する。各誘引壁部130は、熱交換器用流体分配マニフォルド100の全体にわたり冷却流体を均一に案内すべく構成される。
【0016】
各スプライン状特定構造133の性質および形状は、冷却流体チャンバ105内において予想される流速場により左右される。図3は、熱交換器用流体分配マニフォルド100内における冷却流体流を示している。各矢印140は、冷却流体の流れ方向を表している。直線状の壁部を有するマニフォルドにおいては、残存する流体が流体取入口から離間して進行するにつれ、冷却流体の速度は静的圧力の上昇により低下する。故に、流体流量は、最初の吐出口から、流体取入口から最も遠い最後の吐出口に向けて、直線状に変化して増大する。しかし、本明細書中に記述される実施形態は、各誘引壁部130を利用して冷却流体チャンバ105の面積ならびに各壁部を最適化することで、均一な冷却流体流分配を実現すると共に、圧力損失を最小限としている。各誘引壁部130は、冷却流体流の速度場を変化させる。
【0017】
図2および図3を参照すると、冷却流体チャンバ105内には複数の内部経路設定特定構造170も配置されることで、冷却流体の最適な経路設定が実現され得る。各内部経路設定特定構造170は、誘引壁部の近傍には配置されない内側の流体吐出口120a〜dに対し、誘引壁部130のスプライン状特定構造133と同一の効果を提供する。図2および図3に示された如く、各内部経路設定特定構造170は、冷却流体流の矢印140により示された如き径方向に沿う内側の流体吐出口120a〜dを僅かに通過して対称的に配置される。各内部経路設定特定構造170は、その流体吐出口に臨む湾曲壁部を有する。
【0018】
各誘引壁部130および各内部経路設定特定構造170は、各流体吐出口と上記流体取入口との間における不等距離に関わらず、実質的に等しい冷却流体速度を維持すべく構成される。斯かる様式にて、冷却流体は熱交換器用流体分配マニフォルド100の全体にわたり均一に且つ効率的に分配される。一実施形態において、熱交換器用流体分配マニフォルド100内における圧損合計は、2kPa未満である。但し、遙かに少ない圧損合計が達成可能であり得る。
【0019】
上記冷却流体チャンバの誘引壁部130、スプライン状特定構造133および内部経路設定特定構造170の幾何学形状は、最適化手順の使用により決定され得る。一実施形態において、上記最適化手順は、有限要素解析パッケージと結合された勾配利用オプティマイザ(gradient-based optimizer)を用いて決定された最適化チャネル位相幾何形状により開始される。位相幾何形状(topology)という語句は、上記誘引壁部、スプライン状特定構造および内部経路設定特定構造の構成を指している。先ず、等しい流体吐出口の速度の境界条件を前提として、包括的設計領域が最適化されることで、流体流抵抗が最小化される。次に、結果的に最適化された位相幾何形状が、更なる流体流解析のための初期の条件もしくは示唆として利用される。更に詳細には、結果的な位相幾何形状は、次続的な流体流の数値シミュレーションにおいて使用される(たとえばコンピュータ支援式の設計モジュールなどの)完全分配マニフォルド構造モデルへと合成される。次に、上記冷却流体チャンバの各特定構造の最終形状の手作業による調節が実施されることで、位相幾何形状の最適化結果が更に解釈され且つ全体的な流量分配が適切に平衡化され得る。
【0020】
一例として且つ限定的なものとしてで無く、図1から図3に示された熱交換器用流体分配マニフォルドの幾何学形状に関してコンピュータ・シミュレーションが実施された。各流体吐出口における圧損合計および流体流速度が決定された。シミュレートされた熱交換器用流体分配マニフォルドは、長さが120mm、幅が80mm、且つ、深さが3mmである冷却流体チャンバを有していた。上記単一の流体取入口は6mmの直径を有し、且つ、各流体吐出口は3mmの直径を有していた。上記流体取入口にて上記熱交換器用流体分配マニフォルド内へと導入された冷却流体の速度は、約2.0m/sであった。流体吐出口の各々における冷却流体の速度は平均すると0.5m/sであり、各流体吐出口間の最大差は0.05m/sであった。また、各流体吐出口における平均の質量流量は2.6×10-3kg/sであり、各流体吐出口間における質量流量の最大差は0.5×10-3kg/sであった。シミュレートされた熱交換器用流体分配マニフォルド内の圧損合計は、約2kPaであった。
【0021】
次に図4を参照すると、上述され且つ図1から図3に示された熱交換器用流体分配マニフォルド100を取入れたパワーエレクトロニクス・モジュール180が示される。該パワーエレクトロニクス・モジュール180は、熱交換器用流体分配マニフォルド100と、複数の熱交換器モジュール190と、基材層192と、複数のパワーエレクトロニクス・デバイス184とを備える。図示実施形態においては、熱交換器用流体分配マニフォルド100のひとつの流体吐出チャネル122毎に、個別的な熱交換器モジュール190が結合される。故に、熱交換器用流体分配マニフォルド100に対して流体連結された24個の熱交換器モジュール190が在る。別実施形態においては、2つ以上の流体吐出チャネル毎に単一の熱交換器モジュールが流体連結され得る。更に別の実施形態においては、上記マニフォルドの流体吐出口の全てに対し、唯一の熱交換器デバイスもしくはモジュールが結合され得る。
【0022】
熱交換器モジュール190に対しては、熱交換表面191にて、IGBT、RC-IGBT、ダイオード、MOSFETの如きパワーエレクトロニクス・デバイス184が熱的に結合される。別実施形態においては、ひとつの熱交換モジュールに対し、1個より多いパワーエレクトロニクス・デバイスが熱的に結合され得る。パワーエレクトロニクス・デバイス184により発せられた熱は熱交換器モジュール190内を循環する冷却流体へと伝達されることで、パワーエレクトロニクス・デバイス184が冷却される。各熱交換器モジュール190は、熱源から熱を除去すべく冷却流体を利用する任意の形式の熱交換器とされ得る。一実施形態においては、各熱交換器モジュールと各パワーエレクトロニクス・デバイスとの間に、選択的な熱伝導基材層192が配置される。各パワーエレクトロニクス・デバイス184、各熱交換器モジュール190、および、熱伝導基材層192は、半田付け、ろう付け、または、他の熱的な結合方法により相互に結合され得る。
【0023】
熱交換器用流体分配マニフォルド100は、流体取入チャネル111に対して結合された流体ライン152を介し、(不図示の)冷却流体源に対して流体連結され得る。上述された如く、冷却流体は、流体ライン152および流体取入チャネル111を通り熱交換器用流体分配マニフォルド100に進入すると共に、複数の流体吐出口120および流体吐出チャネル122を通り熱交換器用流体分配マニフォルド100を退出する。冷却流体は、各流体吐出チャネル122を通り、熱交換器モジュール190内へと通過する。各パワーエレクトロニクス・デバイス184により発せられた熱は、各熱交換器モジュール190内を循環する冷却流体へと伝達される。各熱交換器モジュール190内で暖められた冷却流体は、(不図示の)吐出ポートを通り退出し、上記冷却流体源へと戻り得る。
【0024】
次に図5を参照すると、熱交換器用流体分配マニフォルドの別実施形態200が示される。該実施形態は、該熱交換器用流体分配マニフォルド200の縁部における単一の流体取入口210と、該流体取入口に関して方向Xに沿い配置された複数の流体吐出口220とを備える。熱交換器用流体分配マニフォルド200は概略的に、冷却流体チャンバ205を有するマニフォルド本体202と、その内部に配設された複数の流体吐出チャネル222とを備える。各流体吐出口220は、個別的な流体吐出チャネル222に対して接続されまたは別様に結合される。流体取入口210は、(不図示の)冷却流体源に対して接続された流体ライン252(図8参照)に対して流体連結され得る。冷却流体は、流体ラインおよび流体取入口210を介して熱交換器用流体分配マニフォルド200に進入すると共に、複数の流体吐出口220/流体吐出チャネル222を介して熱交換器用流体分配マニフォルド200を退出し得る。
【0025】
図1から図4に示された実施形態に関して記述された如く、マニフォルド本体202は、たとえばアルミニウムの如き金属材料で作成され得る。該マニフォルド本体202はまた、堅固なプラスチックの如き断熱材料から作成されても良い。一実施形態において、上記マニフォルド本体は、第1半体および第2半体を備える。別実施形態においてマニフォルド本体202は、本明細書中に記述された内部特定構造および構成要素を含むべく型成形された単一の構成要素である。
【0026】
図6は、図5に示された熱交換器用流体分配マニフォルド200内に配設された冷却流体チャンバ205を示している。該冷却流体チャンバ205は、第1端部207上に配置された単一の流体取入口210を有している。冷却流体は、矢印250により表される如く冷却流体チャンバ205に進入し得る。複数の流体吐出口220は、第1端部207から、該第1端部207とは逆側となる第2端部に向けて、2列で配置される。別実施形態において、上記複数の流体吐出口は、単一の列、または、2つより多い列で配置され得る。更に、図5から図7に示された実施形態は12個の流体吐出口220を有するが、更に多いまたは更に少ない個数の流体吐出口220が利用され得る。
【0027】
上記流体取入口と各流体吐出口との間の距離は、流体吐出口毎に変化する。たとえば、流体取入口210との間の距離は、複数の流体吐出口220の列に沿い、方向Xに増大する。上記流体取入口と種々の流体吐出口との間の距離は不等であることから、直線状の壁部を有する冷却流体チャンバは、各流体吐出口220における不均一な冷却流体流量、ならびに、相対的に大きな圧損合計を引き起こす。
【0028】
依然として図6を参照すると、冷却流体チャンバ205は、上述の誘引壁部130と形状が類似する複数の誘引壁部230を備える。誘引壁部230およびスプライン状特定構造233の幾何学形状は、上述の最適化手順の使用により決定され得る。図5から図7に示された誘引壁部230は、各流体吐出口の近傍に配置された複数の個別的なスプライン状特定構造233から構成される。各誘引壁部230および対応するスプライン状特定構造233は最適化されることで、冷却流体チャンバ205内における圧損合計が減少されると共に、各流体吐出口220における均一な冷却流体流量が提供される。各誘引壁部230は、熱交換器用流体分配マニフォルド200の全体にわたり冷却流体を均一に案内すべく構成される。
【0029】
図7は、熱交換器用流体分配マニフォルド200内における冷却流体流を示している。矢印240は、冷却流体の流れ方向を表している。図5から図7に示された実施形態は、各誘引壁部230を利用して熱交換器用流体分配マニフォルド200の冷却流体チャンバ205の面積ならびに各壁部を最適化することで、均一な冷却流体流分配を実現すると共に、圧力損失を最小限としている。
【0030】
各誘引壁部230の幾何学形状は、各流体吐出口と上記流体取入口との間における不等距離に関わらず、実質的に等しい冷却流体速度を維持すべく設計される。斯かる様式にて、冷却流体は熱交換器用流体分配マニフォルド200の全体にわたり均一に且つ効率的に分配される。
【0031】
一例として且つ限定的なものとしてで無く、図5から図7に示された熱交換器用流体分配マニフォルドの幾何学形状に関してコンピュータ・シミュレーションが実施されることで、各流体吐出口における圧損合計および流体流速度が決定された。シミュレートされた熱交換器用流体分配マニフォルドは、長さが130mm、幅が40mm、且つ、深さが3mmである冷却流体チャンバを有していた。上記単一の流体取入口は20mmの長さを有し、且つ、各流体吐出口は3mmの直径を有していた。上記流体取入口にて上記熱交換器用流体分配マニフォルド内へと導入された冷却流体の速度は、0.8m/sであった。流体吐出口の各々における冷却流体の速度は平均すると約0.79m/sであり、各流体吐出口間の最大差は約0.05m/sであった。また、各流体吐出口における平均の質量流量は3.6×10-3kg/sであり、各流体吐出口間における質量流量の最大差は0.5×10-3kg/sであった。シミュレートされた熱交換器用流体分配マニフォルド内の圧損合計は、0.5kPaであった。
【0032】
次に図8を参照すると、上述され且つ図1から図3に示された熱交換器用流体分配マニフォルド200を取入れたパワーエレクトロニクス・モジュール280が示される。該パワーエレクトロニクス・モジュール280は、熱交換器用流体分配マニフォルド200と、複数の熱交換器モジュール290と、選択的な基材層292と、複数のパワーエレクトロニクス・デバイス284とを備える。図示実施形態においては、熱交換器用流体分配マニフォルド200のひとつの流体吐出チャネル222毎に、個別的な熱交換器モジュール290が結合される。故に、熱交換器用流体分配マニフォルド200に対して流体連結された12個の熱交換器モジュール290が在る。別実施形態においては、2つ以上の流体吐出チャネル毎に単一の熱交換器モジュールが流体連結され得る。更に別の実施形態においては、上記マニフォルドの流体吐出口の全てに対し、唯一の熱交換器デバイスもしくはモジュールが結合され得る。
【0033】
図4に関して上述された如く、熱交換器モジュール290に対しては、熱交換表面291にて、(たとえばIGBT、RC-IGBT、ダイオード、MOSFETなどの)パワーエレクトロニクス・デバイス284が熱的に結合される。別実施形態においては、ひとつの熱交換モジュールに対し、1個より多いパワーエレクトロニクス・デバイスが熱的に結合され得る。各熱交換器モジュール290は、熱源から熱を除去すべく冷却流体を利用する任意の形式の熱交換器とされ得る。一実施形態においては、各熱交換器モジュールと各パワーエレクトロニクス・デバイスとの間に、選択的な熱伝導基材層292が配置される。各パワーエレクトロニクス・デバイス294、各熱交換器モジュール290、および、熱伝導基材層292は、半田付け、ろう付け、または、他の熱的な結合方法により相互に結合され得る。
【0034】
熱交換器用流体分配マニフォルド200は、流体取入チャネル211に対して結合された流体ライン252を介し、(不図示の)冷却流体源に対して流体連結され得る。上述された如く、冷却流体は、流体ライン250および流体取入チャネル211を通り熱交換器用流体分配マニフォルド200に進入すると共に、複数の流体吐出口220および流体吐出チャネル222を通り熱交換器用流体分配マニフォルド200を退出する。冷却流体は、各流体吐出チャネル222を通り、熱交換器モジュール290内へと通過する。各パワーエレクトロニクス・デバイス284により発せられた熱は、各熱交換器モジュール290内を循環する冷却流体へと伝達される。各熱交換器モジュール290内で暖められた冷却流体は、(不図示の)吐出ポートを通り退出し、上記冷却流体源へと戻り得る。
【0035】
次に、本明細書中に記述された熱交換器用流体分配マニフォルドは、流体吐出口の各々における冷却流体流量が実質的に均一である如く、冷却流体流を最適化すべく設計された誘引壁部を備えた冷却流体チャンバを有することを理解すべきである。上記各誘引壁部はまた、上記熱交換器用流体分配マニフォルド内における圧損合計を最小限とするものでもある。減少された圧損合計によれば、上記マニフォルドを通して冷却流体を提供するために必要とされる圧送要件が最小限とされると共に、実質的に均一な冷却流体流量によれば、該マニフォルドに対して結合された各熱交換器が等しい流量にて等しい量の冷却流体を受容することが確実とされる。本明細書中に記述された上記熱交換器用流体分配マニフォルドは、ひとつ以上の熱交換器とひとつ以上のパワーエレクトロニクス・デバイスとを有するパワーエレクトロニクス・モジュールに取入れられ得る。
【0036】
本明細書において“実質的に”という語句は、任意の量的な比較、値、測定値、または、他の表現に帰属し得る本来的な不確実性の程度を表すべく使用され得ることを銘記されたい。本明細書においてこの語句はまた、問題となる主題の基本機能の変化に帰着することなく、量的表現が所定基準から変動し得る程度を表すためにも使用される。
【0037】
本明細書においては特定の実施形態が図示かつ記述されたが、権利請求された主題の精神および有効範囲から逸脱せずに他の種々の変更および改変が為され得ることを理解すべきである。更に、本明細書においては権利請求された主題の種々の見地が記述されたが、斯かる見地は組み合わせて利用される必要はない。故に、添付の各請求項は、権利請求された主題の有効範囲内である全ての斯かる変更および改変を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0038】
100 熱交換器用流体分配マニフォルド
102 マニフォルド本体
105 冷却流体チャンバ
110 流体取入口
120 流体吐出口
130 誘引壁部
133、133a スプライン状特定構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却流体チャンバを画成するマニフォルド本体と、
前記マニフォルド本体の前記冷却流体チャンバ内へと冷却流体を導入する単一の流体取入口と、
前記冷却流体チャンバから冷却流体を排出する複数の流体吐出口であって、該複数の流体吐出口の内の少なくとも2つの流体吐出口は前記単一の流体取入口から不等距離だけ離間され、且つ、各流体吐出口における冷却流体流量は実質的に均一である、という複数の流体吐出口とを備える、熱交換器用流体分配マニフォルド。
【請求項2】
当該熱交換器用流体分配マニフォルドは、前記冷却流体チャンバの周縁部に沿う複数の誘引壁部を更に備え、
各誘引壁部は、個々の流体吐出口の近傍に配置されたスプライン状特定構造を備える、請求項1に記載の熱交換器用流体分配マニフォルド。
【請求項3】
前記複数の誘引壁部の前記スプライン状特定構造は、各流体吐出口における冷却流体流量が実質的に均一である如く幾何学的に最適化される、請求項2に記載の熱交換器用流体分配マニフォルド。
【請求項4】
前記複数の誘引壁部の前記スプライン状特定構造は、前記マニフォルド本体内の圧損合計が約2kPa未満である如く幾何学的に最適化される、請求項2に記載の熱交換器用流体分配マニフォルド。
【請求項5】
冷却流体チャンバを画成するマニフォルド本体と、
前記マニフォルド本体の前記冷却流体チャンバ内へと冷却流体を導入する単一の流体取入口と、
前記冷却流体チャンバから冷却流体を排出する複数の流体吐出口であって、該複数の流体吐出口の内の少なくとも2つの流体吐出口は前記単一の流体取入口から不等距離だけ離間され、且つ、各流体吐出口における冷却流体流量は実質的に均一である、という複数の流体吐出口と、
前記冷却流体チャンバの周縁部に沿う複数の誘引壁部であって、各誘引壁部は、個々の流体吐出口の近傍に配置されたスプライン状特定構造を備え、前記スプライン状特定構造は、各流体吐出口における冷却流体流量が実質的に均一であり且つ前記マニフォルド本体内の圧損合計が約2kPa未満である如く、幾何学的に最適化されるという複数の誘引壁部とを備える、熱交換器用流体分配マニフォルド。
【請求項6】
熱交換器用流体分配マニフォルドであって、
冷却流体チャンバを画成するマニフォルド本体と、
前記マニフォルド本体の前記冷却流体チャンバ内へと冷却流体を導入する単一の流体取入口と、
前記冷却流体チャンバから冷却流体を排出する複数の流体吐出口であって、該複数の流体吐出口の内の少なくとも2つの流体吐出口は前記単一の流体取入口から不等距離だけ離間され、且つ、各流体吐出口における冷却流体流量は実質的に均一である、という複数の流体吐出口とを備えるという、
熱交換器用流体分配マニフォルドと、
熱交換表面と交換器吐出口とを有する熱交換器モジュールであって、該熱交換器モジュールは前記熱交換器用流体分配マニフォルドの少なくともひとつの流体吐出口に対して流体連結され、冷却流体は前記単一の流体取入口から前記流体吐出口を通り該熱交換器モジュール内へと流入するという熱交換器モジュールと、
前記熱交換表面にて前記熱交換器モジュールに対し熱的に結合されたパワーエレクトロニクス・デバイスとを備える、パワーエレクトロニクス・モジュール。
【請求項7】
当該パワーエレクトロニクス・モジュールは、前記冷却流体チャンバの周縁部に沿う複数の誘引壁部を更に備え、前記各誘引壁部は、個々の流体吐出口の近傍に配置されたスプライン状特定構造を備え、前記複数の誘引壁部の前記スプライン状特定構造は、各流体吐出口における冷却流体流量が実質的に均一である如く幾何学的に最適化される、請求項6に記載のパワーエレクトロニクス・モジュール。
【請求項8】
前記マニフォルド本体内の圧損合計は約2kPa未満である、請求項6に記載のパワーエレクトロニクス・モジュール。
【請求項9】
前記スプライン状特定構造の形状は、前記単一の流体取入口からの各流体吐出口の距離と、冷却流体流速場とに対して調和する、請求項1、請求項5または請求項6のいずれか一つの請求項に記載のパワーエレクトロニクス・モジュール。
【請求項10】
前記複数の流体吐出口に向けて冷却流体を均一に経路設定するために、前記冷却流体チャンバ内に配置されたひとつ以上の冷却流体用内部経路設定特定構造を更に備える、請求項1、請求項5または請求項6のいずれか一つの請求項に記載の熱交換器用流体分配マニフォルド。
【請求項11】
前記複数の流体吐出口は、前記冷却流体チャンバ内に格子パターンで均一に配置され、
前記単一の流体取入口は、前記複数の流体吐出口に関して中央箇所に配置され、当該熱交換器用流体分配マニフォルドは、前記複数の流体吐出口に向けて冷却流体を均一に経路設定するために、前記単一の流体取入口に関して前記冷却流体チャンバ内に径方向に配置された少なくとも4つの冷却流体用内部経路設定特定構造を更に備える、請求項1、請求項5または請求項6のいずれか一つの請求項に記載の熱交換器用流体分配マニフォルド。
【請求項12】
前記単一の流体取入口は前記マニフォルド本体の端部に配置され、
前記複数の流体吐出口は、前記単一の流体取入口に関する単一方向に沿う少なくとも2つの列にて、前記冷却流体チャンバ内に配置される、請求項1、請求項5または請求項6のいずれか一つの請求項に記載の熱交換器用流体分配マニフォルド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−69916(P2012−69916A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−158004(P2011−158004)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【Fターム(参考)】