説明

熱処理炉

【課題】 被処理物の冷却時の温度差を低減化できる熱処理炉を提供する。
【解決手段】 ヒータ23をそなえた熱処理室(降温保持室13)の壁部に冷却用ガスの流入口41と流出口42とを設け、前記熱処理室の外部において流入口41と流出口42とを接続するガス循環路45に、冷却用ガス温度調節用のクーラ47および冷却用ガス循環用の送風機46を設けた熱処理炉において、流入口41と流出口42を、通気性を有する仕切板状の蓄熱体50でそれぞれ覆った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属材料から成る被処理物の熱処理をおこなう熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼材料などから成る被処理物を高温に加熱後、冷却用ガスによりガス冷却するバッチ式熱処理炉においては、ひとつの熱処理室で加熱工程と冷却工程を連続しておこなうため、熱処理室の壁部に設けた冷却用ガスの流入口と流出口に開閉用の扉を設け、この扉を閉めた状態で被処理物を加熱後、扉を開けて冷却用ガスを流通させて被処理物の冷却をおこなう構成の炉が用いられている(たとえば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−66090号公報(第2−3頁、図1,図3)
【0003】
ところが上記構成の炉においては、冷却工程開始時に扉を開放した際、熱処理室を包囲する鋼製の炉殻やこの炉殻に接続した冷却用ガス流通用の鋼製のダクト等は熱処理室内温度よりは大巾に低温(たとえば常温)であるため、開口状態の流入口および流出口を介してこれらの低温の鋼製部材に直面する側の被処理物の放射熱損失により、被処理物の急激な温度低下を生じ、この温度低下は流入口および流出口から離れた位置にある被処理物には生じないため、被処理物の位置によって温度差が生じ、被処理物の品質のばらつきの原因となっている。
【0004】
また上記のバッチ式の炉の他、ローラハース炉などの連続式の熱処理炉においても、隣接する前段側の加熱室において高温に加熱された被処理物を受入れて冷却用ガスにより所定の温度に冷却する熱処理室も、上記と同様な構成が採用されているので、上記と同様な問題点を有するものである。そしてこの連続式および前記バッチ式の炉においても、特にたとえば1000℃程度に加熱した被処理物を、加温ガスにより冷却してマルテンサイト変態点であるMs点の直上温度に所定時間等温保持する降温保持処理をおこなう場合には、位置によって被処理物が過冷却され、降温保持処理後の急冷(焼入)による最終処理物の品質のばらつきが生じるという問題点を有するものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は上記従来の問題点を解決しようとするもので、被処理物の冷却時の温度差を低減化できる熱処理炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の熱処理炉は、ヒータをそなえた熱処理室の壁部に冷却用ガスの流入口と流出口とを設け、前記熱処理室の外部において前記流入口と前記流出口とを接続するガス循環路に、冷却用ガス温度調節用のクーラおよび冷却用ガス循環用の送風機を設けた熱処理炉において、前記流入口と前記流出口を、通気性を有する仕切板状の蓄熱体でそれぞれ覆ったことを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、ひとつの熱処理室において被処理物のヒータによる加熱工程と冷却用ガスによる冷却工程を連続しておこなう場合は、加熱工程時において加熱され蓄熱体が昇温蓄熱状態にあり、また別の加熱室において加熱された被処理物を熱処理室に受入れて冷却用ガスによる冷却をおこなう場合は、冷却工程開始前にヒータにより熱処理室内を昇温し蓄熱体を昇温蓄熱状態とすることにより、冷却用ガス送入による冷却工程開始時には冷却用ガスが蓄熱体通過により昇温して、被処理物への冷風吹付によるガス吹付側の部分的な過冷却が防止されるとともに、流入口および流出口の外側にある炉体やダクトなどの低温部材と被処理物の間に昇温状態の蓄熱体が介在して被処理物から上記低温部材への熱放射を抑制するので、この熱放射による被処理物の部分的な温度低下が防止され、被処理物の温度差が少量に抑制されるのである。
【0008】
また請求項2記載の熱処理炉は、請求項1記載の熱処理炉において、前記ガス循環路に、冷却用ガス温度調節用のヒータを設けたものである。
【0009】
この請求項2記載の発明によれば、ヒータにより冷却用ガスを所望の温度に加温して熱処理室内に送入でき、冷却用ガスの流入口側に位置する被処理物の部分的な過冷却を防止して、冷却時の温度差を一層確実に低減化できる。
【0010】
また請求項3記載の熱処理炉は、請求項1または2記載の熱処理炉において、前記蓄熱体が、通電により発熱する発熱導体材から成り、前記通電用の電源に接続されているものである。
【0011】
この発明において蓄熱体は、各種の金属材料やカーボン、セラミックなどで構成することができるが、請求項3記載の構成とすれば、通電により蓄熱体自身を昇温させることにより、蓄熱体を流通する冷却用ガスを所望の温度に加温して被処理物の部分的な過冷却を防止できるとともに、被処理物から流入口および流出口の外側にある低温部材への熱放射を一層確実に抑制して、被処理物の温度差を低減化できる。
【0012】
また請求項4記載の熱処理炉は、請求項1または2または3記載の熱処理炉において、前記蓄熱体がC/Cコンポジットから成るものである。
【0013】
この請求項4記載の発明によれば、炭素繊維複合炭素材であるC/Cコンポジットは高温(たとえば2000℃)に耐えるので、処理室内温度が高温の場合でも、蓄熱体の変形や破損が生じることがなく、長寿命の蓄熱体が得られる。
【0014】
また請求項5記載の熱処理炉は、請求項1または2または3記載の熱処理炉において、前記蓄熱体が耐熱合金から成るものである。
【0015】
この請求項5記載の発明によれば、溶接により所望の形状の蓄熱体を容易に製造することができる。
【0016】
また請求項6記載の熱処理炉は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の熱処理炉において、前記蓄熱体が、開口巾寸法より大きいガス流通方向寸法を有する格子状に形成された蓄熱体から成るものである。
【0017】
この請求項6記載の発明によれば、冷却用ガスを整流して均一分布状態で被処理物への吹付および排風をおこなうことができ、被処理物を均一冷却できるとともに、たとえば穴あき板などに比べて通気抵抗が小さいので、冷却用ガス循環用のファンも小型小動力のもので済む。
【0018】
また請求項7記載の熱処理炉は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の熱処理炉において、前記熱処理室が、加熱後の被処理物を冷却してマルテンサイト変態開始温度であるMs点の直上温度に所定時間等温保持する降温保持室であって、前記流入口から降温保持室内へ送入される前記冷却用ガスが、ガス温を前記Ms点より5〜100℃高い温度に調整した加温ガスであるものである。
【0019】
この請求項7記載の発明によれば、被処理物はMs点以上の温度に保持する必要があり、たとえば小サイズの被処理物多数個を一度に冷却および等温保持処理する場合に一部の被処理物がMs点温度以下に過冷却されると、歪みの発生や後続の急冷工程での焼入不均一など、不良品を発生することになるが、熱処理炉の構成を請求項1ないし6記載の構成とすることにより、被処理物のMs点以下への過冷却を防止して、被処理物の降温保持処理を確実におこない不良品発生を防止することができる。なお降温保持室内へ送入される冷却用ガスのガス温は、上記調整範囲[Ms点+(5〜100)℃]よりも低温であると被処理物がMs点以下に過冷却されやすく、また上記調整範囲よりも高温であると被処理物の降温時間が長くなるので、好ましくないため、上記調整範囲に限定するものである。但し、大サイズの被処理物を冷却する場合は、小サイズの被処理物を冷却する場合ほど、過冷却による歪みの発生や後続の急冷工程での焼入不均一などの問題は生じない。よって、大サイズの被処理物を冷却する場合は、冷却時間を短縮するため、冷却当初のみMs点以下の温度の加温ガスにより冷却し、所定時間経過後に、ガス温を上記調整範囲[Ms点+(5〜100)℃]として冷却および等温保持してもよく、この形態も請求項7記載の発明に含まれるものとする。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、昇温蓄熱状態にある蓄熱体による、冷却用ガスの昇温作用および被処理物から流入口および流出口の外側部材への熱放射の抑制作用により、熱処理室内における被処理物の冷却時の温度差を低減化できる。
【0021】
また上記の効果に加えて、請求項2記載の発明によれば、冷却用ガスをヒータにより加熱することにより、被処理物の部分的な過冷却を防止してその温度差を一層確実に低減化できる。
【0022】
また上記の効果に加えて、請求項3記載の発明によれば、蓄熱体自身を昇温させることにより、被処理物の部分的な過冷却とともに流入口および流出口の外側の低温部材への熱放射を一層確実に抑制して、被処理物の温度差を低減化できる。
【0023】
また上記の効果に加えて、請求項4記載の発明によれば、長寿命の蓄熱体が得られ、請求項5記載の発明によれば、所望の形状の蓄熱体を容易に得ることができる。
【0024】
また上記の効果に加えて、請求項6記載の発明によれば、冷却用ガスを整流して被処理物を均一冷却でき、冷却用ガス循環用のファンも小型小動力もので済む。
【0025】
また上記の効果に加えて、請求項7記載の発明によれば、被処理物のMs点以下への過冷却を防止して、被処理物の降温保持処理を確実におこなうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図1〜図3に示す一例により、この発明の実施の形態を説明する。図中、1は熱処理炉で、この例では被処理物Wを真空加熱後ガス焼入れするローラハース式真空炉から成る。2は、円筒状の鋼製の炉体で、3は被処理物装入用の入口、4は同じく取出用の出口で、それぞれエアシリンダ式の開閉装置5により開閉駆動される扉6,7をそなえている。炉体2内は、前室11、加熱室12、本発明における熱処理室である降温保持室13、冷却室14の四つに区画され、加熱室12および降温保持室13は、図示しない真空排気装置に接続され、降温保持室13および冷却室14は、図示しない窒素ガス供給源に接続されている。15は炉長全長にわたって設けた、被処理物搬送用のハースロールで、この例ではC/Cコンポジット製のカーボンロールから成る。上記の降温保持室13は、加熱室12で高温に加熱された被処理物を、所定の温度に冷却し該冷却温度に所定時間等温保持する熱処理室である。
【0027】
加熱室12は、四周を黒鉛製の断熱壁20により囲繞され、室内に電熱式のヒータ21をそなえ、また降温保持室13は、加熱室12と同様な断熱壁22により四周を囲繞された室内に電熱式のヒータ23をそなえるとともに、後述する蓄熱体50をそなえている。冷却室14は、雰囲気ガス冷却用のクーラ24と、雰囲気ガス循環用のファン(図示しない)をそなえている。そして上記各室間の扉25,26,27は、エアシリンダ式の開閉装置28により開閉されるようになっている。
【0028】
この例における熱処理対象物である被処理物Wは、図1には略図示してあるが、図2に示すように鋼製の多数個の小物部品から成り、円板状の底板31上に複数枚の円板状の棚板32をスペーサを介して多段積みして成る被処理物保持体30の各段部に、それぞれ複数個載せられ、この被処理物保持体30をトレイ35上に載置して炉内移送し後述の熱処理をおこなう。トレイ35はカーボン製の角板状を呈し、被処理物保持体30はトレイ35の中央部に載置される。
【0029】
また図2に示すように降温保持室13の断熱壁22の側壁部には、冷却用ガスの流入口41と流出口42が対向して設けられ、流入口41に連通する炉体2の給気口43と、流出口42に連通する炉体2の排気口44との間をダクト45aで接続したガス循環路45には、冷却用ガス循環用の送風機46と、冷却用ガス温度調節用のクーラ47およびヒータ48が設けてある。49はクーラ47とヒータ48の切替用のバルブである。そして流入口41および流出口42は、通気性を有する仕切板状の蓄熱体50でそれぞれ覆ってある。この蓄熱体50としてこの例では、多数枚の狭巾のステンレス板を格子状に枠組みして溶接により一体化し、その格子状体の各開口巾寸法より大きいガス流通方向寸法Sを有するものを用いている。51,52は一端部が蓄熱体50に接続された通電用の棒状の導電体で、その炉外に位置する他端部に形成した端子53,54は、図示しない交流電源に接続されている。
【0030】
次に上記構成の熱処理炉1における被処理物Wの処理方法の例を、図3も参照しつつ説明する。先ず、空気焼入鋼(この例では冷間ダイス鋼SKD11)製の被処理物Wを、被処理物保持体30に段積みし、これをトレイ35の中央部に載置した状態で入口3から前室11内に装入後、扉25を開いて加熱室12内に移送し、この加熱室12内を真空排気して所定の真空雰囲気中でヒータ21により被処理物Wを、図3にも示すように1000℃に加熱する。
【0031】
この加熱工程終期に、降温保持室13内も加熱室12内と同程度に真空排気するとともに、ヒータ23により降温保持室13内を約500℃に昇温させ、蓄熱体50,50も通電によって約500℃に昇温させておく。加熱工程後、昇温した被処理物Wを、扉26を開いて降温保持室13内に移送し、被処理物保持体30の両側部が流入口41および流出口42に対面する所定の位置に到達したらトレイ35を停止させる。
【0032】
そして扉26を閉じて窒素ガスの導入により降温保持室13内をほぼ大気圧の窒素ガス雰囲気とし、ガス循環路45の送風機46を運転して、ヒータ48により被処理物Wのマルテンサイト変態開始点温度であるMs点(SKD11の場合約400℃)より高い450℃に加温した窒素ガスを、流入口41から降温保持室13内へ送入して被処理物保持体30に吹付け、被処理物Wを冷却し、冷却時間t経過により前記Ms点の直上温度である500℃に降温した被処理物Wを、この温度に所定の保持時間tだけ保持して等温保持処理をおこなう。図3に示す被処理物の温度曲線は、被処理物保持体30上の全被処理物Wの平均的な温度を示し、実際には各被処理物の位置などによって降温遅れなどがあるため、上記の保持時間tの等温保持により全被処理物を等温化し、後工程での焼入れによる品質の均一化をはかるものである。
【0033】
上記の冷却工程と等温保持工程から成る降温保持処理の完了時点で、ガス循環路45による冷却用ガスの循環吹付は停止し、扉27を開きハースロール15によりトレイ35を冷却室14内に移送し、この冷却室14内において冷却用ガスの吹付けにより被処理物Wの急冷処理をおこなって、ガス焼入品を得、熱処理全工程を終了する。後続の被処理物Wに対しても上記と同工程で熱処理をおこなえばよい。
【0034】
上記の降温保持室13における処理工程においては、冷却用ガスの流入口41および流出口42を蓄熱体50で覆った構成としたので、降温保持工程開始前のヒータ23による加熱、およびこの例ではさらに通電による蓄熱体50自身の発熱によって、蓄熱体50を蓄熱・昇温状態としておくことにより、ガス循環路45による冷却用ガスの循環開始時に低温のダクト系内の流通により昇温が不充分な低温の冷却用ガスが流入口41から流入する場合でも、このガスは蓄熱体50により昇温するので被処理物Wの過冷却を防止することができ、これに加えて、高温の被処理物Wが降温保持室13内へ送入されたとき、流入口41および流出口42の外側にある給気口43部や排気口44部やこれらに接続されたダクト45aなどの低温部材への被処理物Wからの熱放射が、昇温状態の蓄熱体50により抑制され、被処理物Wの流入口41および流出口42に対面する側の部分的な温度低下が防止されるので、被処理物Wの均一な冷却が達成される。
【0035】
さらに蓄熱体50は開口巾寸法より大きいガス流通方向寸法Sを有する格子状を呈しているので、この格子状体による整流作用によって、冷却用ガスは均一分布状態で被処理物Wへ吹付けられるので、被処理物は一層確実に均一冷却されるのである。
【0036】
この発明は上記の例に限定されるものではなく、たとえば被処理物保持体30としては、金網などの通気性を有するバスケットなどを用いてもよく、また各室の圧力や加熱・冷却温度は被処理物Wの材質や形状などに応じて、上記以外のものとしてもよい。また蓄熱体50としては、穴あき板形式のものなどを用いてもよい。また上記の例では、冷却用ガスの流入口41と流出口42は断熱壁22の側壁部に設けたが、これらの流入口と流出口を断熱壁22の底壁部と頂壁部に対向する形で設け、これらの流入口と流出口を蓄熱体50で覆い、通気性を有するトレイ35を用いるなどしてもよい。またガス循環路45は、炉体2の外部に設けたが、炉体2内、すなわち炉体2と断熱壁22の間の空間部にガス循環路45を形成してもよい。
【0037】
またこの発明は、上記の連続式熱処理炉のほか、一室で被処理物の高温度への加熱と、それに続く上記の冷却と等温保持をおこなう、加熱室を兼ねた降温保持室に、前室を兼ねた冷却室を連設した2つの熱処理室から成るバッチ式の熱処理炉などにも、適用できるものであり、この場合は蓄熱体50をC/Cコンポジット製のものとすれば、加熱時の高温に対しても良好な耐久性が得られ、また被処理物が大サイズの場合などは、冷却用ガスはヒータを用いずにクーラのみにより温度調整をおこなうこともできる。さらにこの発明は、上記の降温保持室から成る熱処理室のほか、加熱後の被処理物を冷却用ガスによりガス焼入れする熱処理室をそなえた熱処理炉や、上記のガス焼入れではなく油焼入れをおこなう熱処理炉などにも、適用できるものである。
【実施例】
【0038】
上記構成の熱処理炉1(降温保持室13の容積=5m)により被処理物W(直径10mm,長さ30mmのSKD11製品)を被処理物保持体30に500個積載した状態で、上記の例の処理方法と温度等を同条件で、加熱および降温保持処理をおこない、降温保持室13(ガス循環路45の循環風量=120m/分)における冷却時間t=30分、保持時間t=30分の降温保持処理直後の被処理物の温度Tを測定した結果を次に示す。
[実施例1] 被処理物の冷却開始前から等温保持終了時まで蓄熱体50の通電を継続しつつ、降温保持処理をおこなったところ、被処理物Wの温度Tは420℃〜450℃の範囲にあり、良好な均一冷却状態であった。
[実施例2] 蓄熱体50の通電は冷却開始前も含めて一切おこなわず、その他は実施例1と同条件で降温保持処理をおこなったところ、被処理物Wの温度Tは410℃〜460℃の範囲にあり、均一冷却状態であった。
[比較例] 蓄熱体50を流入口41および流出口42部から取外し、その他は実施例1と同条件で降温保持処理をおこなったところ、被処理物の温度Tは390℃〜480℃の範囲にばらつき、一部の被処理物はMs点以下に過冷却されていた。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施の形態の一例を示す熱処理炉の縦断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1の熱処理炉による熱処理の例を示す被処理物の処理温度曲線である。
【符号の説明】
【0040】
1…熱処理炉、13…降温保持室、15…ハースロール、23…ヒータ、30…被処理物保持体、35…トレイ、41…流入口、42…流出口、45…ガス循環路、46…送風機、47…クーラ、48…ヒータ、50…蓄熱体、51…導電体、52…導電体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータをそなえた熱処理室の壁部に冷却用ガスの流入口と流出口とを設け、前記熱処理室の外部において前記流入口と前記流出口とを接続するガス循環路に、冷却用ガス温度調節用のクーラおよび冷却用ガス循環用の送風機を設けた熱処理炉において、
前記流入口と前記流出口を、通気性を有する仕切板状の蓄熱体でそれぞれ覆ったことを特徴とする熱処理炉。
【請求項2】
前記ガス循環路に、冷却用ガス温度調節用のヒータを設けた請求項1記載の熱処理炉。
【請求項3】
前記蓄熱体が、通電により発熱する発熱導体材から成り、前記通電用の電源に接続されている請求項1または2記載の熱処理炉。
【請求項4】
前記蓄熱体がC/Cコンポジットから成る請求項1または2または3記載の熱処理炉。
【請求項5】
前記蓄熱体が耐熱合金から成る請求項1または2または3記載の熱処理炉。
【請求項6】
前記蓄熱体が、開口巾寸法より大きいガス流通方向寸法を有する格子状に形成された蓄熱体から成る請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の熱処理炉。
【請求項7】
前記熱処理室が、加熱後の被処理物を冷却してマルテンサイト変態開始温度であるMs点の直上温度に所定時間等温保持する降温保持室であって、前記流入口から降温保持室内へ送入される前記冷却用ガスが、ガス温を前記Ms点より5〜100℃高い温度に調整した加温ガスである請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の熱処理炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−266615(P2006−266615A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86473(P2005−86473)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】