説明

熱収縮性フィルム

【課題】収縮包装後に再加熱が施される場合においても、良好な収縮特性をもつ熱収縮性フィルムを提供し、特に、電子レンジで内容物と供に加熱される容器の結束帯として用いた場合に、良好な一次加工性と、容器の潰れ防止を両立することができる熱収縮性フィルムを提供する。
【解決手段】乳酸系重合体を主成分とする熱収縮性フィルムであって、少なくとも一方向において80℃温水に浸けた際の、10秒間での収縮率が30%以上かつ60%未満であり、80℃シリコンオイル中における1分後の収縮応力が5MPa未満である。また、前記乳酸系重合体は、D乳酸とL乳酸の構成割合が98:2〜85:15又は2:98〜15:85であることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸系重合体を主成分とする熱収縮性フィルムに関し、特に、電子レンジで内容物と供に加熱される容器の結束帯等、収縮包装後に再加熱が施される用途に好適な熱収縮性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストア等で売られる弁当箱の結束用として、ポリエステル系樹脂から成る延伸フィルムに印刷を施し製袋した熱収縮性結束帯の使用が増加しつつある。しかしながら、ポリエステル系熱収縮フィルムは、収縮応力が大きいため、弁当を電子レンジ等で加熱した際のフィルムの収縮により、弁当箱が潰れるといった問題がある。
【0003】
このため、収縮率を30%未満に下げることによって、収縮応力を5MPa未満にし、電子レンジ加熱時の弁当箱の潰れを防止する技術が提案されている(特許文献1)。
【0004】
一方、これらのポリエステル系樹脂からなる熱収縮性フィルムは、使用後に自然環境下に棄却された場合、安定性が高いが故に分解されることなく自然界に残留するため、景観を害する要因となったり、魚、野鳥その他の生物の生活環境を汚染したり、様々な環境問題の原因となりうることが懸念されている。
【0005】
そこで、環境適性に優れた天然素材容器として、特に容器のフタ部分、窓部分、容器の表面防湿層部分、容器を形成する積層体の構成層部分、容器の結束帯部分、オーバーラップ包装シート状物、粘着ラベルなどに、乳酸系重合体シート状物を用いることが提案されている(特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−67203号公報
【特許文献2】特開2002−46116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コンビニエンスストア等で売られる弁当箱は、あらかじめ、延伸フィルムに印刷を施し製袋した結束帯を加熱収縮させて、弁当箱を結束してある。そして、ユーザーが利用する際は、内容物を温めるため、結束帯が施された弁当箱ごと電子レンジで加熱する。このように、弁当箱の結束帯は、一次加熱(以下、「一次加工」ともいい、この適性を「一次加工性」という。)として、結束帯を収縮させて弁当箱に施すための加熱処理がなされ、さらに2次加熱として、内容物を温める際に電子レンジによる加熱が追加される。
【0008】
ここで、前記特許文献1のポリエステル系熱収縮フィルムには、収縮率を30%未満に下げることによって、収縮応力を5MPa未満となるように設計し、電子レンジ加熱時の弁当箱の潰れを防止する技術が開示されているが、収縮率が30%未満の場合には、弁当箱を結束する際の一次加工が難しく、すわわち、収縮率が低すぎてきれいに結束できないことがわかった。さらにきれいに結束させるため、一次加熱の温度を高温にしたり、処理時間を長くすると、弁当の内容物に影響を及ぼすという問題があった。
一方、一次加工を容易にするために収縮率を上げると、弁当箱の結束はきれいにできるものの、収縮応力が大きくなるため、電子レンジ加熱による2次加熱の際に、弁当箱を潰してしまう。このように従来のポリエステル系熱収縮フィルムは、弁当箱結束時の一次加工性と、電子レンジ加熱時の弁当箱の潰れ防止のバランスを取ることが難しく、使いづらいものであった。
【0009】
また、前記特許文献2には、弁当箱等の容器の結束帯として乳酸系重合体からなるシート状物を用いることが開示されているが、上記の一次加工性や電子レンジ加熱の影響等、具体的な要求品質については何ら開示されていない。
【0010】
本発明は、これらの問題点を解決すべくなされたものであり、すなわち、本発明の目的は、収縮包装後に再加熱が施される場合においても、良好な収縮特性をもつ熱収縮性フィルムを提供することであり、特に、電子レンジで内容物と供に加熱される容器の結束帯として用いた場合に、良好な一次加工性と、容器の潰れ防止を両立することができる熱収縮性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の熱収縮性フィルムは、乳酸系重合体を主成分とする熱収縮性フィルムであって、少なくとも一方向において80℃温水に浸けた際の、10秒間での収縮率が30%以上かつ60%未満であり、80℃シリコンオイル中における1分後の収縮応力が5MPa未満であることを特徴とする。
(2)また、前記乳酸系重合体は、D乳酸とL乳酸の構成割合が98:2〜85:15又は2:98〜15:85であることができる。
(3)本発明においては、乳酸系重合体と、乳酸系重合体以外の脂肪族ポリエステル樹脂と、可塑剤とを含有する中心層を備え、その外側に、乳酸系重合体を90質量%以上含有する外側層を積層してなる構成を備えていることができる。
(4)さらに、前記脂肪族ポリエステル樹脂が、0℃以下にガラス転移温度が少なくとも一つ有するものであり、前記中心層におけるその含有量が10〜25質量%であることが好ましい。
(5)本発明の熱収縮フィルムは、収縮包装後に再加熱が施されるものであることができる。
(6)また、本発明の熱収縮性フィルムは、電子レンジで内容物と供に加熱される容器の結束帯として用いることができる。
(7)さらに、前記容器が食品容器であることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、収縮包装後に再加熱が施される場合においても、優れた収縮特性を有し、かつ収縮による容器等の被着体の潰れを防止でき、さらに環境適性に優れた熱収縮性フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。なお、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また「乳酸系重合体を主成分とする」とは、熱収縮性フィルムの主な機能を決定する成分の一つが乳酸系重合体であり、乳酸系重合体の機能を阻害しない範囲で他の成分を含んでいてもよいという意を包含するものである。一般的には熱収縮性フィルム中の乳酸系重合体の含有割合は少なくとも50%以上、好ましくは80%以上である。
なお、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に含める意を包含するものである。
【0014】
(一次加工)
本発明の熱収縮性フィルムを、弁当箱等の食品容器の結束帯として用いる場合の一次加工(一次加熱)工程について説明する。まず熱収縮性フィルムに印刷を施して、製袋機で筒状に溶剤シールされたフィルムを容器毎の枚葉品にカットする。これを弁当箱等の容器に手作業で装着させ、上下挟み込みベルトコンベアーにフィルム毎容器を流し、サイドに組み込まれた熱風ノズルから加熱エアーを吹き出して、容器側面のフィルムを収縮させることにより容器に結束するのが一般的である。従ってこの場合には、一次加熱は容器側面部分の結束帯の収縮加熱を意味している。
【0015】
(熱収縮率)
本発明の熱収縮性フィルムは、主収縮方向(TD)において80℃温水で10秒間の熱収縮率が30%以上かつ60%未満であることが重要である。熱収縮率を30%以上とすることによって、充分な収縮特性をもたせることができ、特に容器の結束帯として用いた場合には良好な一次加工性を実現することが可能となる。さらに、内容物の保護、高速化といった最近の容器結束帯としての要望に対応するには、熱収縮率は35%以上であることがより好ましい。また、熱収縮率が60%未満であれば、一次加工の際に容器の潰れや切れ等の問題を生じることがない。さらに容器潰れの発生確率を抑えることを考慮すると50%以下とすることがより好ましい。
【0016】
他方、縦収縮率は、低い方が好ましいが、収縮時の横シワなどを解消するために少しは収縮する方が好ましい場合もある。一般的には先に述べたように80℃温水にて10秒間の収縮率が10%以下、より好ましくは7%以下、更により好ましくは5%以下である。10%以上では必要以上にフィルムの縦方向の収縮が目立ち、収縮仕上がり性を悪化させてしまう場合がある。このような縦収縮率を低く抑えるためには縦延伸倍率を1.01〜1.20程度にすることが好ましい。
【0017】
(収縮応力)
また、本発明の熱収縮性フィルムは、80℃シリコンオイル中における1分後の収縮応力が5MPa未満であることが重要である。収縮応力を5MPaとすることで、再加熱の際に容器等の被着体への影響を押さえることができ、特に電子レンジで内容物と供に加熱される容器の結束帯として用いた場合に優位に容器の潰れを防止することができる。さらに収縮応力は、4.0MPa以下であることが好ましく、特に3MPa以下であることが好ましい。
【0018】
以上のように、熱収縮率と収縮応力を適切な範囲に設定することによって、収縮包装後に再加熱が施される場合においても、良好な収縮特性をもつ熱収縮性フィルムを得ることができ、特に、電子レンジで内容物と供に加熱される容器の結束帯として用いた場合に、良好な一次加工性の保持と、容器の潰れ防止という、異なる特性を両立することが可能となるのである。
【0019】
(乳酸系重合体)
本発明の乳酸系重合体は、D−乳酸またはL−乳酸の単独重合体またはそれらの共重合体をいう。即ち、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、或いは、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)、或いはこれらの二種類以上の混合体或いは共重合体を包含する。
【0020】
乳酸系重合体のDL構成比は、D−乳酸とL−乳酸の構成割合が98:2〜85:15又は2:98〜15:85が好ましく、さらに、95:5〜85:15又は5:95〜15:85が好ましい。D−乳酸とL−乳酸の構成割合が100:0若しくは0:100である乳酸系重合体は、非常に高い結晶性樹脂となって融点も高く、耐熱性、機械的物性に優れる傾向となる。しかし、熱収縮性フィルムとして使用する場合には結晶性が非常に高いと、延伸時に延伸配向結晶化が進行してしまうため、熱収縮率を調整することが難しくなり、更には延伸条件において非結晶状態なフィルムを得ても収縮時の熱にて結晶化が進み収縮仕上がり性が低下してしまう。また、DL−乳酸の共重合体の場合、その光学異性体の割合が増えるに従って結晶性が低下することが知られている。よって、熱収縮性フィルムの材料として乳酸系重合体を使用する場合は、前述のDL構成比の範囲内で適度に結晶性を低下させることが好ましい。なお、上記D体、L体を調整する目的で、D−乳酸とL−乳酸の構成割合が異なる2種類以上の乳酸系重合体をブレンドすることも可能である。
【0021】
本発明の乳酸系重合体は、上記いずれかの乳酸と、他のヒドロキシカルボン酸単位との共重合体であっても、また、脂肪族ジオールや脂肪族ジカルボン酸との共重合体であってもよい。ポリ乳酸系重合体に共重合される上記の「他のヒドロキシ−カルボン酸単位」としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳
酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシn−酪酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類などが挙げられる。
乳酸系重合体に共重合される上記「脂肪族ジオール」としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール,1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
また、ポリ乳酸系重合体に共重合される上記「脂肪族ジカルボン酸」としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸などが挙げられる。
【0022】
さらに、必要に応じ、少量共重合成分としてテレフタル酸のような非脂肪族ジカルボン酸及び/又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のような非脂肪族ジオールを用いて共重合させてもよい。また、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えばジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などを共重合させることもできる。
【0023】
乳酸系重合体の重合法としては、縮重合法、開環重合法、その他の公知の重合法を採用することができる。例えば、縮重合法では、L−乳酸或いはD−乳酸或いはこれらの混合物を直接脱水縮重合して任意の組成を持った乳酸系重合体を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合して任意の組成をもつ乳酸系重合体を得ることができる。この際、ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、或いはL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成及び結晶性を有する乳酸系重合体を得ることができる。
【0024】
本発明に用いられる乳酸系重合体の質量平均分子量の好ましい範囲は、5万から40万、より好ましくは10万から25万である。5万以上の分子量であれば好適な実用物性を発揮し、また、40万以下であれば溶融粘度が高過ぎることなく良好な成形加工性を発揮する。なお、ポリ乳酸系重合体の代表的なものとしては、島津製作所製ラクティシリーズ、三井化学製レイシアシリーズ、カーギル・ダウ製Nature Worksシリーズなどが挙げられる。
【0025】
(脂肪族ポリエステル)
本発明においては、乳酸系重合体以外の脂肪族ポリエステルをブレンドすることができる。使用される脂肪族ポリエステルとしては、乳酸系重合体を除く生分解性脂肪族ポリエステル、例えば、乳酸系重合体を除くポリヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合して得られる脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成される脂肪族ポリエステルなどを挙げることができる。なお、本発明で用いる脂肪族ポリエステルは、質量平均分子量1万〜40万、好ましくは分子量5万〜30万、更に好ましくは10万〜30万のポリマーとしての脂肪族ポリエステルであり、可塑剤として使用される低分子量の脂肪族ポリエステルとは区別される。両者の違いは、配合する乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)の低下の有無に現れる。
【0026】
乳酸系重合体以外の上記の「ポリヒドロキシカルボン酸」としては、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体や共重合体を挙げることができる。
【0027】
脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステルとしては、次に説明する脂肪族ジオール及び脂肪族ジカルボン酸の中からそれぞれ1種類或いは2種類以上選んで縮合するか、或いは必要に応じてイソシアネート化合物等でジャンプアップして所望のポリマー(高分子)として得ることができる。この際の「脂肪族ジオール」としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を代表的に挙げることができ、上記の「脂肪族ジカルボン酸」としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸等を代表的に挙げることができる。なお、適量の芳香族ジカルボン酸を共重合した芳香族脂肪族ポリエステルもこれらの範疇に含まれる。なお、芳香族脂肪族ポリエステルにおいて生分解性を発現させるためには芳香族の合間に脂肪族鎖が存在することが必要であり、この際の芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0028】
環状ラクトン類を開環縮合した脂肪族ポリエステルとしては、環状モノマーであるε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等が代表的に挙げられ、これらから1種類又はそれ以上を選択して重合することにより得ることができる。
【0029】
合成系脂肪族ポリエステルとしては、環状酸無水物とオキシラン類、例えば、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピオンオキサイド等との共重合体等を挙げることができる。
【0030】
菌体内で生合成される脂肪族ポリエステルとしては、アルカリゲネスユートロファスを始めとする菌体内でアセチルコエンチームA(アセチルCoA)により生合成される脂肪族ポリエステルなどを挙げることができる。この脂肪族ポリエステルは、主にポリ−β−ヒドロキシ酪酸(ポリ3HB)であるが、プラスチックとしての実用特性向上のために、吉草酸ユニット(HV)を共重合し、ポリ(3HB−CO−3HV)の共重合体にすることが工業的に有利である。一般的には、HV共重合比は0〜40%である。さらに長鎖のヒドロキシアルカノエートを共重合してもよい。
【0031】
本発明に用いられる脂肪族ポリエステルは、脂肪族ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、0℃以下に少なくとも一つあるのが好ましく、より好ましくは−20℃以下である。これによって、熱収縮性フィルムに適切な耐破断性を付与することが可能となる。脂肪族ポリエステルの融点(Tm)については特に限定しないが、融点が100℃以上の脂肪族ポリエステルを含ませることによって、主収縮方向に対して垂直な方向(MD、引取り方向、或いは縦方向とも言う。)の収縮を低減させることが可能となる。特に縦方向の収縮を出来る限り抑えたい用途に有効である。その理由は、明確に判明しているわけではないが、脂肪族ポリエステルは収縮前フィルム中で結晶化しているため、乳酸系重合体が収縮する温度領域(60℃〜100℃の範囲)ではこの脂肪族ポリエステルは収縮時においても結晶状態を保つこととなり、その結果、柱のような役割を果たすことによって縦収縮を抑えているのではないかと考えることができる。なお、本発明に用いる脂肪族ポリエステルは、共重合体であっても構わない。例えば芳香族ジカルボン酸成分を含む芳香族脂肪族ポリエステルやカーボネート基を持つ脂肪族ポリエステルカーボネイト(例えば、14ブタンジオール/コハク酸重合体にカーボネート基を持つ構造など)など、生分解性を有する脂肪族ポリエステルであればよい。
【0032】
脂肪族ポリエステルの含有量は、透明性が求められる用途の場合には、当該脂肪族ポリエステルを含有する層において、10質量%〜40質量%程度であるのが好ましい。これに対し、さらに透明性が非常に高く要求される場合は、10質量%〜25質量%が好ましく、特に10質量%〜20質量%であるのがより好ましい。10質量%以上であれば耐破断性を充分に得られ、また25質量%以下であれば透明性も充分に確保することができる。
【0033】
(可塑剤)
本発明の熱収縮性フィルムには、可塑剤を含有させることができる。可塑剤を含有させることによって、耐破断性を向上させることが可能となる。特に乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体を除く)とを併有する場合には、特定の溶解パラメータ(SP値)を示す可塑剤を含ませることが好ましい。
【0034】
本発明に用いることができる可塑剤は、その溶解パラメータ(SP値)が、乳酸系重合体のSP値と、脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体を除く)のSP値の中間値よりも脂肪族ポリエステルのSP値寄りであることが好ましい。即ち、通常(理論的にも)乳酸系重合体のSP値が脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体を除く)のSP値よりも高いから、その中間値よりも低い値であるのが好ましく、中でも、乳酸系重合体のSP値と脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体を除く)のSP値との間ではなく、脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体を除く)のSP値を越えた範囲の値、即ち脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体を除く)のSP値よりも低い値であるのがより好ましい。
【0035】
具体的に言えば、一般的に乳酸系重合体のSP値は11.12(cal/cm3)1/2であり、脂肪族ポリエステルとしてポリカプロラクトンを用いる場合、そのSP値は10.18(cal/cm3)1/2であるから、可塑剤のSP値は、これらの中間値である10.65よりも低い値が好ましく、中でも10.18よりも低い値であることがより好ましい。その他の脂肪族ポリエステル、例えばポリブチレンサクシネートのSP値は10.87であり、ポリブチレンサクシネート/アジペートのSP値はサクシネートとアジペートの比率により変化するが、ポリブチレンサクシネートのSP値10.87よりも低くなることを考慮すると、本発明に用いることができる可塑剤のSP値の範囲は、8.5〜9.5(cal/cm3)1/2であるのが好ましい。SP値の範囲が、8.5〜9.5(cal/cm3)1/2である可塑剤の例としては、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ(n―オクチル)アジペート、ジ(n―デシル)アジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ(n―ヘキシル)アゼレート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジ(2−エチルヘキシル)ドデカンジオネート等の脂肪酸エステル系可塑剤、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート等のフタル酸エステル系可塑剤、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート等のトリメリット酸エステル系可塑剤などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、上記のSP値は、Fedors法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]によって算出される値である。
【0036】
上記範囲のSP値を有する可塑剤を添加することによって、脂肪族ポリエステルの量を低減しつつフィルムの耐破断性を高めることができ、透明性の低下も最小限に抑えることができる。このような効果が得られる理由は明確ではないが、次のように考えることができる。即ち、乳酸系重合体に脂肪族ポリエステルを添加することによってその耐衝撃性は向上するが、添加する脂肪族ポリエステルの量が多いと乳酸系重合体が本来有する透明性が損なわれてしまう。そこで、可塑剤によって脂肪族ポリエステルを可塑化することにより、脂肪族ポリエステルを可塑化してその耐衝撃性改良能を高めて、より少ない配合量で耐破断性を改良できるようにするのが好ましい。しかし、乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体以外)との混合系においては、乳酸系重合体が形成している海相に脂肪族ポリエステルの島が分散する、いわゆる海−島構造を形成するため、添加する可塑剤にの種類よっては乳酸系重合体相(海相)へ移行して乳酸系重合体相(海相)のガラス転移温度を低下させ、脂肪族ポリエステル相(島相)を可塑化しないことがある。これに対して、上記の特定の可塑剤であれば、そのSP値が脂肪族ポリエステル(乳酸系重合体を除く)のSP値に近くて相溶性が高いため、海相への移行が抑えられ島相への移行が進み、海相のガラス転移温度の低下が抑えられ、島相を形成している脂肪族ポリエステルの軟質性が向上し、かつ屈折率を低下させることができ、その結果、乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルとの屈折率差が小さくなり、透明性を維持しつつ耐破断性を向上させることができるのではないか、と考えることができる。なお、SP値が、本規定の最低値(8.5)より低過ぎると、脂肪族ポリエステル相への移行もしづらくなり、耐破断性向上の効果が得られ難くなると考えられる。
【0037】
可塑剤の含有量は、乳酸系重合体及び脂肪族ポリエステル樹脂の合計量100質量部に対して0.5〜15質量部であるのが好ましく、さらに1〜10質量部であるのが好ましく、特に2〜5質量部であるのがより好ましい。15質量部以下の添加量であれば、混合系樹脂部のガラス転移温度を熱収縮性フィルムとして使用可能な範囲に確保することができる。
【0038】
(積層構成)
本発明の熱収縮性フィルムは、積層構成からなることができる。特に、乳酸系重合体と、乳酸系重合体以外の脂肪族ポリエステル樹脂と、可塑剤とを含有する中心層を備え、その外側に、乳酸系重合体を90質量%以上含有する外側層を積層してなる構成が好ましい。
【0039】
外側層は、乳酸系重合体を主成分として含有することが、透明性を要求される用途において好ましい。乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルは、延伸時の変形挙動が互いに異なるので、両樹脂の混合体を延伸する場合に表面荒れを起こしてヘーズが大幅に上昇して透明性が失われてしまう可能性がある。これは、透過光の拡散が起きるためにヘーズが上昇して透明感が低下するためである。しかし、中心層の表面に透明性の高い乳酸系重合体を主成分とする外側層を積層することにより、透過光の拡散を抑えて透明性を確保することができる。
【0040】
外側層での乳酸系重合体量の含有量は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは100質量%である。ポリ乳酸系重合体量が90質量%以上であれば、延伸時の表面荒れが少なく外側層としての役割を充分に果たすことができる。また、外側層の乳酸系重合体は、中心層を構成する乳酸系重合体と同じ乳酸系重合体であっても、異なるものであってもよい。なお、特に限定しないが、フィルムが熱い状態のまま被覆された状態で接触しあうことによってフィルムが融着し、穴が開いてしまうことを回避するためにも、結晶性をある程度付与させることが好ましい。
【0041】
外側層は、中心層表面の表面荒れの凹凸の平均高さよりも厚くなるように形成するのが好ましい。具体的には、1μm以上、好ましくは2μm以上に形成するのが好ましい。中心層の両外側に外側層を形成する場合、両方の外側層は同一厚み、同一組成とすることが収縮特性やカール防止等の点からは好ましいが、必ずしもそのように限定するものではない。
【0042】
なお、中心層の両外側に外側層を備えていなくても、本発明の特性を阻害しない範囲で、外側層の更に外側に他の層が存在していてもよい。
【0043】
(無機粒子)
また、外層には、フィルム同士の滑り性を向上させる目的で、無機粒子を添加することができる。このような無機粒子は延伸時に表面に移行し、表面を荒らすことによって滑り性を付与する機能を有する。
【0044】
具体的な無機粒子としては、シリカ、タルク、カオリンなどの無機粒子があげられる。平均粒径は0.5〜5μm程度が好ましい。添加量は、最外層樹脂100質量部に対して、0.01部以上5.0部以下添加する事が好ましく、0.05部以上3.0部以下添加することがより好ましい。
【0045】
(製造方法)
次に、本発明の熱収縮性フィルムの製造方法を具体的に説明するが、本発明の熱収縮性フィルムの製造方法が下記製造法に限定されるものではない。
【0046】
乳酸系重合体、必要に応じて脂肪族ポリエステル及びその他の成分を所定配合して混合する。この際、諸物性を調整する目的で、熱安定剤、光安定剤、光吸収剤、滑剤、可塑剤、無機充填剤、着色剤、顔料等を添加することができる。この混合物(混合体)を押出機で溶融させ、押出機の途中のベント溝や注入溝からの液添加によって可塑剤を所定量添加して押出す。但し、予め可塑剤を脂肪族ポリエステルに混合しておいてもよい。
押出に際しては、Tダイ法、チューブラ法などの既存の方法を任意に採用することができる。その際、分解による分子量の低下を考慮して温度設定をする必要がある。
【0047】
溶融押出された樹脂は、冷却ロール、空気、或いは水等で冷却した後、熱風、温水、赤外線、マイクロウエーブ等の適当な方法で再加熱し、ロール法、テンター法、チューブラ法等によって1軸又は2軸に延伸する。この際、延伸温度は、混合比や乳酸系重合体の結晶性など熱収縮性フィルムの要求用途に応じて調整する必要があるが、概ね70〜95℃の範囲で制御すればよい。延伸倍率は、混合比や乳酸系重合体の結晶性等、熱収縮性フィルムの要求用途に応じて調整する必要があるが、概ね主収縮方向においては1.5〜6倍の範囲で適宜決定すればよい。また、1軸延伸にするか2軸延伸にするかは目的の製品の用途によって決定すればよい。
なお、一般的には、横一軸延伸によって縦収縮を抑えるのが最も好ましいが、この場合、当該横一軸方向に対して垂直な方向は未延伸状態となるため、耐破断性が不十分となることがある。このため、当該垂直な方向にも延伸をかけることが好ましいが、例えば、上述の特定の可塑剤を添加することによって、縦収縮率と縦方向の耐破断性を両立させ、横延伸のみ或いは最小限の縦延伸のみで耐破断性を付与することができる。
【0048】
(ヘーズ)
更に、透明性については本発明では特に制限していないが、透明性が重視される使用態様の場合には、ヘーズ値(JIS K 7105)を10%以下、特に7%以下、中でも特に5%以下とするのが好ましい。
【0049】
(加水分解防止剤)
また、本発明にかかる熱収縮性フィルムにおいては、高温度、高湿度における耐久性を付与する目的で、加水分解防止剤を添加することもできる。
【0050】
本発明に好ましく用いられる加水分解防止剤としては、カルボジイミド化合物等が挙げられる。カルボジイミド化合物としては、例えば、下記一般式の基本構造を有するものが好ましいものとして挙げられる。

―(N=C=N−R−)

式中、nは1以上の整数を示し、Rは有機系結合単位を示す。例えば、Rは脂肪族、脂環族、芳香族のいずれかであることができる。また、nは、通常、1〜50の間で適当な整数が選択される。
【0051】
具体的には、例えば、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等、および、これらの単量体が、カルボジイミド化合物として挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は、単独で使用しても、あるいは、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0052】
本発明においては、フィルムを構成する、乳酸系重合体を主成分とする樹脂100質量部に対してカルボジイミド化合物を0.1〜3.0質量部添加することが好ましい。カルボジイミド化合物の添加量が0.1質量部以上であれば、得られるフィルムに耐加水分解性の改良効果が十分に発現される。また、カルボジイミド化合物の添加量が3.0質量部以下であれば、得られるフィルムの着色も少なく、十分な耐久性の向上を図ることができる。
【0053】
(生分解)
本発明の熱収縮性フィルムは、埋め立て処分された場合には微生物による分解が可能で、廃棄に伴う種々の問題が生じない。乳酸系重合体を主成分とする脂肪族ポリエステル系樹脂は、土壌中で、エステル結合が加水分解されて分子量が1,000程度に低下し、引き続き土壌中の微生物等により生分解される。
【0054】
一方、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂は、分子内の結合安定性が高く、エステル結合部の加水分解が起こりにくい。したがって、芳香族ポリエステル系樹脂は、土壌中に埋められても分子量の低下は起こらず、微生物等による生分解も起こらない。その結果、長期にわたって土壌中に残存して、廃棄物埋め立て処理用地の短命化を促進したり、自然の景観や野生動植物の生活環境を損なう等の問題が生じる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、実施例に示す測定値および評価は以下に示すようにして行った。ここで、フィルムの引取り(流れ)方向をMD、その直交方向をTDと表示する。
【0056】
(測定および評価方法)
【0057】
(1)フィルムのTD方向の収縮率
フィルムを測定方向に70mm、これに対する垂直方向に10mmの大きさに切り取りサンプルを作成した。そして、サンプル測定方向に50mm間隔の標線を付し、80℃の温水バスに10秒間浸漬させ、下記式により求めた。式中、Lは収縮後の標線間隔(単位mm)を表す。

収縮率=[(50−L)/50]×100(%)

【0058】
(2)収縮応力
各フィルムをTD方向に幅10mm長さ70mmに切り出し、50mmにてチャックしロードセルにタルミが無い様に固定した。その後、80±0.5℃のシリコンバスに試料片を浸し、1分後の応力を測定した。収縮応力は下記の式に当てはめて計算した。

収縮応力(MPa)=ロードセルにかかる応力(N)/試料片の断面積(mm2)
【0059】
(3)ヘーズ
JIS K7105に準拠してヘーズを測定した。
【0060】
(4)一次加工性
縦22cm、横14.5cm、深さ3.5cmのポリスチレン製の弁当箱に白飯500gを詰め、幅8cmで折り径(二枚に折り畳んだ際の長さ)18.4cmの各フィルムからなる結束帯を弁当箱の中央に被せ、鉄板を上部に乗せて熱風が当たらないようにした。
そして、鉄板を乗せた容器をキャタピラ式ハナガタ製熱風シュリンカー(形式T−350)へ容器のサイドに熱風が当たるように流した。熱風温度190℃,時間5秒で通過させて、弁当箱の蓋が開かずにタイトに結束されているか否かの具合を比較した。
○:弁当箱の蓋が開かずにタイトに結束されている。
△:弁当箱の蓋は開かないがフィルムがゴソゴソで外れそうである。
×(+):弁当箱のつぶれが発生した。
×(−):弁当箱の蓋は若干空き、収縮不足である。
【0061】
(5)弁当箱潰れ
縦22cm、横14.5cm、深さ3.5cmのポリスチレン製の弁当箱に白飯500gを詰め、幅8cmで折り径(二枚に折り畳んだ際の長さ)18.4cmの各フィルムからなる結束帯を弁当箱の中央に被せ、弁当箱の横からヒートガンで加熱して弁当箱の横側のみ収縮させた。その後、500Wの電子レンジにて4分間加熱を行い、弁当箱の潰れ具合を比較した。評価は次の表に示す3段階で行なった。
○:弁当箱のつぶれが発生しなかった。
×:弁当箱のつぶれが発生した。
【0062】
[実施例1]
乳酸系重合体1(カーギル・ダウ社製「NatureWorks4050」、L−乳酸/D−乳酸=94.5/5.5、質量平均分子量:20万)50質量%、乳酸系重合体2(カーギル・ダウ社製「NatureWorks4060」、L−乳酸/D−乳酸=88.0/12.0、質量平均分子量20万)30質量%、ポリカプロラクトン(ダイセル化学社製「セルグーリンPH−7」、融点:61℃、ガラス転移温度:−58℃)12質量%、ポリブチレンサクシネート(昭和高分子社製「ビオノーレ1010」、融点:114℃、ガラス転移温度:−32℃)8質量%からなる樹脂を中間層として、前記乳酸系重合体1を50質量%、前記乳酸系重合体2を50質量%とした混合樹脂(粒径1.6μmのアルミナシリカが0.15%添加されている)を外層原料として、中間層、外層の混合原料を別々の押出機にて190℃〜210℃にて混練し、中間層を構成する混合樹脂100質量部に対してジ(2−エチルヘキシル)アゼレート(DOZ:SP値8.96)を3質量部ベント溝より添加し、200℃でTダイ内で合流させ、表層/中間層/裏層の2種3層構造からなる溶融体を約36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に60℃で1.08倍のロール延伸、次いで、幅方向に65℃で3.5倍延伸し、厚さ50μmの熱収縮フィルム(積層比:5μm/40μm/5μm)を得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0063】
[実施例2]
乳酸系重合体1(カーギル・ダウ社製「NatureWorks4050」、L−乳酸/D−乳酸=94.5/5.5、質量平均分子量:20万)25質量%、乳酸系重合体2(カーギル・ダウ社製「NatureWorks4060」、L−乳酸/D−乳酸=88.0/12.0、質量平均分子量20万)55質量%、ポリカプロラクトン(ダイセル化学社製「セルグーリンPH−7」、融点:61℃、ガラス転移温度:−58℃)12質量%、ポリブチレンサクシネート(昭和高分子社製「ビオノーレ1010」、融点:114℃、ガラス転移温度:−32℃)8質量%からなる樹脂を中間層として、前記乳酸系重合体1を40質量%、前記乳酸系重合体2を60質量%とした混合樹脂(粒径1.6μmのアルミナシリカが0.15%添加されている)を外層原料として、中間層、外層の混合原料を別々の押出機にて190℃〜210℃にて混練し、中間層を構成する混合樹脂100質量部に対してジ(2−エチルヘキシル)アゼレート(DOZ:SP値8.96)を5質量部ベント溝より添加し、200℃でTダイ内で合流させ、表層/中間層/裏層の2種3層構造からなる溶融体を約36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に60℃で1.02倍のロール延伸、次いで、幅方向に65℃で3.5倍延伸し、厚さ50μmの熱収縮フィルム(積層比:5μm/40μm/5μm)を得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0064】
[実施例3]
乳酸系重合体1(カーギル・ダウ社製「NatureWorks4050」、L−乳酸/D−乳酸=94.5/5.5、質量平均分子量:20万)45質量%、乳酸系重合体2(カーギル・ダウ社製「NatureWorks4060」、L−乳酸/D−乳酸=88.0/12.0、質量平均分子量20万)45質量%、脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネート/アジペート(商品名:ビオノーレ#3003 :昭和高分子製)10質量%の混合樹脂を押出機にて190〜210℃で混練りし、200℃でTダイより溶融押出しし、溶融体を約36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に60℃で1.02倍のロール延伸、次いで、幅方向にテンターにて75℃で4.0倍延伸し、約50μmの熱収縮フィルムを得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0065】
[実施例4]
乳酸系重合体(カーギル・ダウ社製「NatureWorks4050」、L−乳酸/D−乳酸=94.5/5.5、質量平均分子量:20万)を押出機にて190〜210℃で混練りし、200℃でTダイより溶融押出しし、溶融体を約36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に60℃で1.02倍のロール延伸、次いで、幅方向にテンターにて78℃で4.0倍延伸し、約50μmの熱収縮フィルムを得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0066】
[比較例1]
実施例2と同じ構成の樹脂を同様の方法で未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に60℃で1.02倍のロール延伸、次いで、幅方向に63℃で5.0倍延伸し、厚さ50μmの熱収縮フィルム(積層比:5μm/40μm/5μm)を得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0067】
[比較例2]
乳酸系重合体1(カーギル・ダウ社製「NatureWorks4050」、L−乳酸/D−乳酸=94.5/5.5、質量平均分子量:20万)45質量%、乳酸系重合体2(カーギル・ダウ社製「NatureWorks4060」、L−乳酸/D−乳酸=88.0/12.0、質量平均分子量20万)45質量%、脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネート/アジペート(昭和高分子製「ビオノーレ3003」、融点:94℃、ガラス転移温度:−45℃)10質量%からなる樹脂を中間層として、前記乳酸系重合体1を40質量%、前記乳酸系重合体2を60質量%とした混合樹脂(粒径1.6μmのアルミナシリカが0.15%添加されている)を外層原料として、中間層、外層の混合原料を別々の押出機にて190℃〜210℃にて混練し、200℃でTダイ内で合流させ、表層/中間層/裏層の2種3層構造からなる溶融体を約36℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に60℃で1.02倍のロール延伸、次いで、幅方向に76℃で4倍延伸し、厚さ50μmの熱収縮フィルム(積層比:6μm/38μm/6μm)を得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0068】
[比較例3]
比較例2と同じ構成の樹脂を同様の方法で未延伸シートを得た。この未延伸シートを長手方向に60℃で1.02倍のロール延伸、次いで、幅方向に76℃で3.0倍延伸し、厚さ50μmの熱収縮フィルム(積層比:6μm/38μm/6μm)を得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0069】
[比較例4]
テレフタル酸32.4kg、エチレングリコール14.5kg、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量1000)12.5kgを原料とし、触媒および助触媒として、テトラブトキシチタネート3.2g、正リン酸1.3g、酢酸コバルト10.0gを使用し、平均粒径2.4μmの無定形シリカ(富士シリシア社製「サイリシア320」)50gを使用し、270℃、400Paでの直接重縮合法により共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、重縮合槽よりストランド状に抜き出し、冷却後、ペレタイザーでカットすることによりペレット形状で回収した。得られた共重合ポリエステル樹脂の固有粘度は0.79、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの共重合量は19.8質量%であった。そして、押出機により、上記の樹脂をTダイ口金から、真空ベントを引きつつ冷却ロール上に押出し、幅150mm厚さ0.20mmのシートを得た。その後、上記シートをT.M.Long社製「フィルムストレッチャー」を標準仕様にて使用し、延伸温度56℃、延伸速度3000%/分でキャスティング押出方向に対して垂直方向に4倍延伸を行い、厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0070】
[比較例5]
以下の共重合ポリエステル樹脂Aと共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂Bを75:25の割合で混合して原料樹脂とし、延伸温度を60℃に変更した以外は、比較例4と同様の方法でシート化および延伸を行い熱収縮性フィルムを得た。得られた熱収縮フィルムの評価結果を表1に示す。
【0071】
<共重合ポリエステル樹脂A>
ジカルボン酸成分がテレフタル酸、ジオール成分がエチレングリコールであり、共重合成分がイソフタル酸10.8モル%(全ジカルボン酸成分に対する割合)と1,4−シクロヘキサンジメタノール19.2モル%(全ジオール成分に対する割合)である共重合ポリエステル樹脂に平均粒径2.4μmの無定形シリカ(富士シリシア社製「サイリシア320」)を0.3質量%加えて調製した。
【0072】
<共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂B>
ジカルボン酸成分がテレフタル酸、ジオール成分が1,4−ブタンジオールであり、共重合成分がイソフタル酸7.5モル%(全ジカルボン酸成分に対する割合)とポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量1000)8質量%(全ジオール成分に対する割合)である。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から明らかなように、実施例1,2,3,4はいずれも一次加工性が良好で電子レンジ加熱による弁当箱の潰れもなかった。また実施例1,2,4はヘーズも低く、透明性に優れていた。
なお、特に実施例1,2は、1000Wの電子レンジにて3分間加熱した場合においても、全く弁当箱の潰れはなく、実施例3,4に比較しても優れたものであった。
【0075】
これに対して、比較例1は収縮率が高いため、一次加工時に弁当箱の潰れが発生した。比較例2は一次加工は問題なくできたが、収縮応力が高いため、電子レンジ加工時に弁当潰れが発生した。比較例3は収縮率が低いため、一次加工時にフィルムがゴソゴソで抜けそうな状態であった。比較例4は、弁当箱のつぶれは発生しなかったものの、収縮率が低いため、一次加工時では弁当蓋が開く状態であった。また、比較例5は一次加工性は良好であったが、収縮応力が高いため弁当箱が潰れてしまった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸系重合体を主成分とする熱収縮性フィルムであって、少なくとも一方向において80℃温水に浸けた際の、10秒間での収縮率が30%以上かつ60%未満であり、80℃シリコンオイル中における1分後の収縮応力が5MPa未満であることを特徴とする熱収縮性フィルム。
【請求項2】
前記乳酸系重合体は、D乳酸とL乳酸の構成割合が98:2〜85:15又は2:98〜15:85であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項3】
乳酸系重合体と、乳酸系重合体以外の脂肪族ポリエステル樹脂と、可塑剤とを含有する中心層を備え、その外側に、乳酸系重合体を90質量%以上含有する外側層を積層してなる構成を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項4】
前記脂肪族ポリエステル樹脂が、0℃以下にガラス転移温度が少なくとも一つ有するものであり、前記中心層におけるその含有量が10〜25質量%であることを特徴とする請求項3に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項5】
収縮包装後に再加熱が施されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項6】
電子レンジで内容物と供に加熱される容器の結束帯として用いられる請求項1から5のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項7】
前記容器が食品容器であることを特徴とする請求項6に記載の熱収縮性フィルム。



【公開番号】特開2006−160788(P2006−160788A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349993(P2004−349993)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】