説明

熱収縮性積層フィルムおよび該フィルムを用いた成形品、容器

【課題】 フィルムの収縮仕上がり性、透明性、自然収縮に優れ、かつフィルムの層間剥離が抑制された熱収縮性積層フィルム、および該フィルムからなる熱収縮性ラベルが装着されたプラスチック製容器の提供。
【解決手段】 ポリエステル系樹脂と該ポリエステル系樹脂100質量部に対して反応性を有する変性スチレン系エラストマー1〜20質量部を含有する表裏層と、ポリスチレン系樹脂と該ポリスチレン系樹脂100質量部に対してポリエステル系樹脂1〜30質量部を含有する中間層とにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性積層フィルム、および該フィルムを用いた成形品、容器に関し、より詳しくは、優れた収縮仕上がり性、透明性、および少ない自然収縮率を併有し、かつフィルムの層間剥離が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルム、および該フィルムを用いた成形品、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ジュース等の清涼飲料水は、瓶またはペットボトルといった容器に充填された状態で販売されている。その際、他商品との差別化や商品の視認性向上のために、容器の外側に印刷が施された熱収縮性ラベルが装着されている。この熱収縮性ラベルの素材としては、通常、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン等が用いられる。
【0003】
ポリ塩化ビニル系(以下「PVC系」という)熱収縮性フィルムは、使用後の焼却時に塩化水素等の有害ガスを発生するという問題がある。これに対し、ポリエステル系熱収縮性フィルムは、室温での剛性が良好で、自然収縮(常温よりやや高い温度、例えば夏場においてフィルムが本来の使用前に少し収縮してしまうこと)率が小さいため、自然収縮性は非常に良好である。しかしながら、ポリエステル系熱収縮フィルムは、PVC系と比較すると加熱収縮時に収縮斑やしわが発生しやすいという問題があった。一方、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)を主たる材料とするポリスチレン系熱収縮性フィルムも提案され使用されているが、このポリスチレン系熱収縮性フィルムは、PVC系熱収縮性フィルムと比べて、収縮仕上がり性は良好であるが、自然収縮率が大きい等の問題があった。
【0004】
近年、益々需要の増大が見込まれているペットボトルのラベル用途等では、比較的短時間かつ比較的低温において高度な収縮仕上がり外観が得られること、および小さな自然収縮率を有する熱収縮性フィルムが要求されている。その理由としては、最近のペットボトルおよびビンに装着されるシュリンクフィルムのラベリング工程における低温化のニーズが挙げられる。すなわち、現在、蒸気シュリンカーを用いて熱収縮フィルムをシュリンクさせてラベリングする方法が主流となっているが、無菌充填や内容物の温度上昇による品質低下を回避するためには、シュリンク工程はできるだけ低温で行うことが望ましい。このような理由から、現在のシュリンクフィルム業界では、ラベリング時に蒸気シュリンカー内でできるだけ低温で収縮を開始し、かつ蒸気シュリンカー通過後に優れた収縮仕上がり特性が得られる熱収縮性フィルムの開発が行われている。
【0005】
上記の用途に対しては、主に低温収縮性を兼ね備えつつ、自然収縮が抑えられているポリエステル系熱収縮性フィルムが使用されている。しかし、ポリエステル系熱収縮性フィルムでは低温収縮性は良好なものの、収縮仕上がり性に問題があったため、収縮仕上がり性に優れたスチレン系熱収縮性フィルムの開発が望まれていた。
【0006】
上記課題を解決する手段として、例えば包装材料用途フィルムとして、ポリスチレン系樹脂からなる中間層に、接着層を介してポリエステル系樹脂からなる外面層が積層された積層フィルムが報告されている(特許文献1参照)。しかしながら、この積層フィルムには、フィルムの収縮時に接着層が他層に追従できす層間剥離に代表される外観不良が発現してしまうという問題があった。
【0007】
また、ポリスチレン系樹脂からなる中間層の両側に、ジオール成分として1,4ーシクロヘキサンジメタノールを含有するポリエステル系樹脂ポリエステル系樹脂からなる表裏層が積層されてなるベースフィルムを備えたシュリンクラベルが報告されている(特許文献2参照)。しかしながら、このシュリンクラベルは、層間密着が不十分であり、二次加工の印刷時に層間剥離が生じやすいという問題があった。
【0008】
また、スチレン系樹脂とポリエステル系樹脂との複合樹脂からなる中間層の両側に、ジオール成分として1,4ーシクロヘキサンジメタノールを含有するポリエステル系樹脂ポリエステル系樹脂からなる表裏層が積層されてなるベースフィルムを備えたシュリンクラベルが報告されている(特許文献3参照)。しかしながら、このシュリンクラベルであっても表裏層と中間層の間の層間密着は満足のいくものではなく、二次加工の印刷時に層間剥離が起こるという問題があった。
【0009】
また、層間接着を改良した技術として、内層にビニル芳香族炭化水素と共役ジエン誘導体とのブロック共重合体、両外層に共重合ポリエステル系、接着層にエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体などを用いたフィルムが報告されている(特許文献4参照)。しかし、このフィルムは、内層のビニル芳香族炭化水素と共役ジエン誘導体と接着層のエチレン−酢酸ビニル共重合体との相溶性が劣るため、フィルムの耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂を添加(以下、「再生添加」と称する)した際に、フィルム全体の透明性が低下しやすいといった問題点があった。
【特許文献1】特開昭61−41543号公報(特許請求の範囲、第8頁左上欄第15行目〜第8頁右上欄第9行目)
【特許文献2】特開2002−351332号公報(請求項1、[0020]〜[0027])
【特許文献3】特開2004−170715号公報(請求項1、[0009]〜[0021])
【特許文献4】特許第1821620号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、収縮仕上がり性、透明性に優れ、かつ自然収縮率が小さいフィルムであって、層間剥離が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムを提供することにある。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した前記フィルムを用いた成形品および容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、積層フィルムを形成する中間層と両外層の各組成を鋭意検討した結果、上記従来技術の課題を解決し得るフィルムを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、以下の熱収縮性積層フィルムにより達成される。
(1) ポリエステル系樹脂と該ポリエステル系樹脂100質量部に対して反応性を有する変性スチレン系エラストマー1〜20質量部とを含有する表裏層と、ポリスチレン系樹脂と該ポリスチレン系樹脂100質量部に対してポリエステル系樹脂1〜30質量部とを含有する中間層とからなることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。
(2) 70℃温水中で10秒間加熱したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が5〜25%であり、かつ80℃温水中で10秒間加熱したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が30〜60%である(1)に記載の熱収縮性積層フィルム。
(3) 30℃で30日間保存した後のフィルム主収縮方向の自然収縮率が3.0%以下である(1)または(2)に記載の熱収縮性多層フィルム。
(4) 前記ポリエステル系樹脂が、ジカルボン酸成分およびジオール成分からなり、前記ジカルボン酸成分および前記ジオール成分の少なくとも一方が2種以上の成分で構成され、前記2種以上の成分のうち最多成分を除いた成分の合計の含有率が前記ジカルボン酸成分の総量(100モル%)と前記ジオール成分の総量(100モル%)との合計(200モル%)に対して10〜50モル%である(1)〜(3)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
(5) 前記反応性を有する変性スチレン系エラストマーが、無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、エポキシ変性SEBS、およびエポキシ変性SEPSからなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(4)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
(6) 前記ポリスチレン系樹脂が、スチレン−ブタジエンブロック共重合体であり、該ブロック共重合体を構成するブタジエンの含有率が5〜40モル%である請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱収縮性積層フィルム。
(7) 前記表裏層と前記中間層との積層比が1/1/1〜1/10/1である(1)〜(6)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【0013】
本発明のもう一つの目的は、以下の成形品および容器により達成される。
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを用いて得られることを特徴とする成形品。
(9) 前記成型品が食品容器用ラベルである(8)に記載の成形品。
(10)(8)または(9)に記載の成形品を装着した容器。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、収縮仕上がり性、透明性、自然収縮に優れ、かつフィルム内の層間剥離が抑制された、ペットボトルのラベル用途などに好適な熱収縮性積層フィルムを提供することができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、収縮仕上がり性、透明性、自然収縮に優れた成形品および成形品を装備した容器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、発明の熱収縮性積層フィルム、成形品および容器を詳細に説明する。
なお、本発明における数値範囲の上限値および下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものである。
【0017】
[熱収縮性積層フィルム]
本発明のフィルムは、ポリエステル系樹脂および反応性を有する変性スチレン系エラストマーを含有する表裏層と、ポリスチレン系樹脂およびポリエステル系樹脂を含有する中間層とを有する。
【0018】
<表裏層>
本発明のフィルムにおいて、表裏層はポリエステル系樹脂と反応性を有する変性スチレン系エラストマーとを含有する。
表裏層で用いられるポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分およびジオール成分からなる。ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分とするエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好適に用いられる。
【0019】
ポリエステル系樹脂を構成する主なジカルボン酸成分は、上述のとおりテレフタル酸であり、ジカルボン酸成分100モル%に対してテレフタル酸を40モル%以上、好ましくは45モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上を含有する。また、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分として、例えば、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、デカン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸などを含有することができ、中でもイソフタル酸を好適に含有することができる。
【0020】
ポリエステル系樹脂を構成する主なジオール成分は、上述のとおりエチレングリコールであり、ジオール成分100モル%に対してエチレングリコールを40モル%以上、好ましくは45モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上含有する。また、エチレングリコール以外のジオール成分として、例えば、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、ダイマージオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ネオペンチルヒドロキシピバリン酸エステル、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン等を含有することができ、中でも1,4−シクロヘキサジメタノールを好適に含有することができる。また、1,4−シクロヘキサンジメタノールには、シス型とトランス型の2種類の異性体が存在するが、いずれであってもよい。
【0021】
表裏層で用いられるポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分の少なくとも一方が2種以上の成分で構成されていることが好ましい。本明細書では、これらの2種以上の成分において、主成分、すなわち質量(モル%)が最多のものを第1成分とし、該第1成分よりも少ない成分を第2成分以下の成分(第2成分、第3成分・・・)とする。ジカルボン酸成分とジオール成分とをこのような混合物系にすることにより、得られるポリエステル系樹脂の結晶性を低くできるため、表裏層として用いた場合、表裏層の結晶化の進行を抑えることができる。
【0022】
上記2種以上の成分のうち、第1成分を除いた第2成分以下の成分の合計は、ジカルボン酸成分の総量(100モル%)と前記ジオール成分の総量(100モル%)との合計(200モル%)に対して10モル%以上、好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上であることが望ましい。第2成分以下の成分の合計が10モル%以上であれば、製膜する際の結晶化を抑制でき、再度フィルムを加熱することにより十分な熱収縮特性が得られ、さらにフィルムを背貼りする際の溶剤シール性にも優れる。また、結晶化が抑制できるため、該フィルムのリターンを中間層に行う際、押出温度をポリエステル系樹脂の融点より低くできるため、後述する中間層のスチレン系樹脂に適した押出温度で混練することが可能であり好ましい。一方、第2成分以下の成分の上限は50モル%、好ましくは45モル%、さらにこのましくは40モル%とすることが望ましい。第2成分以下の成分の合計が50モル%以下であれば、共重合成分の第1成分の長所を活かすことができる。
【0023】
表裏層で用いられるポリエステル系樹脂の質量平均分子量は、30,000以上、好ましくは35,000以上、さらに好ましくは40,000であることが望ましい。また、前記ポリエステル系樹脂の質量平均分子量の上限値は、80,000、好ましくは75,000、さらに好ましくは70,000とすることが望ましい。質量平均分子量が30,000以上であれば、樹脂凝集力不足のためにフィルムの強伸度が不足し、脆くなることを抑えることができる。一方、質量平均分子量が80,000以下であれば、溶融粘度が下がるために、製造、生産性的に好ましい。
【0024】
表裏層で用いられるポリエステル系樹脂の極限粘度(IV)は、0.5dl/g以上、好ましくは0.6dl/g以上、さらに好ましくは0.7dl/g以上である。また、前記ポリエステル系樹脂の極限粘度(IV)の上限値は1.5dl/g、好ましくは1.2dl/g、さらに好ましくは1.0dl/gであることが望ましい。極限粘度(IV)が0.5dl/g以上であれば、フィルム強度特性が低下することを抑えられる。一方、極限粘度(IV)が1.5dl/g以下であれば、延伸張力の増大に伴う破断等を防止できる。
【0025】
上記ポリエステル系樹脂の市販品としては、例えば、「PETG6763」(イーストマンケミカル社製)、「SKYREEN PETG」(SKケミカル社製)などが挙げられる。
【0026】
本発明のフィルムの表裏層は、反応性を有する変性スチレン系エラストマーを含有する。表裏層に変性スチレン系エラストマーを含有させることにより、表裏層と中間層の層間接着力を向上させることができ、収縮、製袋加工、販売時に層間剥離に代表される外観不良の発現を抑制することができる。
【0027】
表裏層で用いられる変性スチレン系エラストマーとしては、ポリエステル系樹脂と反応可能な極性基を有し、かつスチレン系樹脂との相溶部を有するブロック共重合体またはグラフト共重合体が挙げられる。ここで、ポリエステル系樹脂と反応可能な極性基とは、ポリエステル系樹脂が有する極性基と反応し得る官能基を指し、具体的には酸無水物基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸塩化物基、カルボン酸アミド基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸塩化物基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩基、エポキシ基、アミノ基、イミド基、オキサゾリン基などが挙げられる。また、スチレン系樹脂との相溶部を有するものとは、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)または変性SPSと親和性のある連鎖を有するものを指し、具体的にはスチレン鎖、スチレン系共重合体セグメントなどを主鎖、ブロックまたはグラフト鎖として有するものや、スチレン系モノマー単位を含有するランダム共重合体などが挙げられる。
【0028】
変性スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブチルアクリレート共重合体ゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンランダム共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンランダム共重合体などを、極性基を有する変性剤により変性したゴムなどが挙げられる。これらの中でも特にSEB、SEBS、SEP、SEPSの変性体を好適に用いることができ、より具体的には、無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、エポキシ変性SEBS、エポキシ変性SEPSなどが挙げられる。
上記の変性スチレン系エラストマーは、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記変性スチレン系エラストマーは、上記表裏層で用いられるポリエステル系樹脂100質量部に対して1〜20質量部、好ましくは3〜18質量部、さらに好ましくは5〜15質量部の範囲で含有させることができる。変性スチレン系エラストマーを1質量部以上含有させた場合、表裏層と中間層の層間接着強度の改善が期待でき、一方、20質量部以下で含有させることにより、フィルムの透明性を維持できるほか、延伸特性、フィルムの腰の強さを維持できる。
【0030】
<中間層>
本発明のフィルムにおいて、中間層はポリスチレン系樹脂とポリエステル系樹脂とを含有する。
中間層で用いられるポリスチレン系樹脂は、スチレン系モノマーの重合体、スチレン系モノマーとそれらと共重合可能な他のモノマーとの共重合体を挙げることができる。
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン等のアルキル置換スチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−4−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン、2−クロロスチレン、4−クロロスチレン等のハロゲン化スチレン等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0031】
スチレン系モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、アクリル酸またはメタクリル酸、アクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチル、アクリル酸エチルまたはメタクリル酸エチル、アクリル酸ブチルまたはメタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルまたはメタクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸(C1〜C8)エステルまたはメタクリル酸(C1〜C8)エステル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミドのようなN−置換マレイミド等のマレイン酸およびその誘導体等から選ばれる1種以上が挙げられる。中でもアクリル酸ブチルを用いることが好ましい。
【0032】
また、上記ポリスチレン系樹脂は、ゴム変性スチレン系樹脂とすることも好ましい。ゴム変性にすることにより、収縮特性が緩やかになるため、ボトル装着時の仕上がりが良好になるほか、フィルムの耐衝撃性も向上する。ゴム変性スチレン系樹脂の製造において用いるゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム等の非スチレン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム等のスチレン系ゴムから選ばれる1種以上が挙げられる。
なお、ブタジエンゴムは、シス−1,4構造の含有率の高いものであっても、シス−1,4構造の含有率の低いものであってもよい。
【0033】
上記ポリスチレン系樹脂は、耐衝撃性の観点からスチレンとブタジエンとの共重合体であることが好ましい。ポリスチレン系樹脂中におけるブタジエンの含有量は5質量%以上、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上とすることができる。また前記ブタジエンの含有量の上限値は、40質量%、好ましくは35質量%、さらに好ましくは、30質量%とすることができる。ブタジエンの含有量が5質量%以上であれば、耐衝撃性の効果が発揮でき、また、上限を40質量%とすることにより、室温近辺でのフィルムの弾性率が保持され、良好な腰の強さが得られる。ポリスチレン系樹脂をスチレン−ブタジエン共重合体にする場合の重合形態は特に限定されるものではなく、ブロック共重合体、ランダム共重合体、およびはテーパーブロック構造を有する共重合体のいずれの態様であってもよいが、ブロック共重合体であることが好ましい。
上記ポリスチレン系樹脂は単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記ポリスチレン系樹脂の分子量は、質量平均分子量(Mw)で100,000以上、好ましくは150,000以上とすることができる。また、前記質量平均分子量(Mw)の上限値は、500,000、好ましくは400,000、さらに好ましくは300,000とすることができる。ポリスチレン系樹脂の分子量が100,000以上であれば、フィルムの劣化が生じるような欠点もなく好ましい。さらに、ポリスチレン系樹脂の分子量が500,000以下であれば、流動特性を調整する必要なく、押出性が低下するなどの欠点もないため好ましい。
【0035】
中間層は、上記ポリスチレン系樹脂のほか、ポリエステル系樹脂を含有する。ここで言うポリエステル系樹脂は、上記表裏層で記述したものと同一のものを用いることができ、中でもジオール成分として、1,4−シクロヘキサンジメタノールを含有している低結晶性のポリエステル系樹脂を好適に用いることができる。中間層にポリエステル系樹脂を含有させることにより、表裏層に含まれるポリエステル系樹脂と相まって表裏層と中間層との層間接着を向上できるという効果が得られるほか、該フィルムのリターンを中間層に配合できるため、コスト的にもメリットがある。中間層におけるポリエステル系樹脂の含有量は、上記ポリスチレン系樹脂100質量部に対して1質量以上、好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上とすることが望ましい。一方、前記ポリエステル系樹脂の含有量の上限値は30質量部、好ましくは20質量部、さらに好ましくは15質量部とすることができる。ポリエチレン系樹脂がポリスチレン系樹脂100質量部に対して1質量部以上含まれていれば、層間接着向上の効果が得られ、また上限を30質量部とすることにより、フィルムの透明性が低下することなく、かつ製膜時の延伸性も良好に維持できる。
【0036】
本発明では、表面層および/または中間層に、上述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、成形加工性、生産性および熱収縮性フィルムの諸物性を改良・調整する目的で、フィルムの耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂(通常は、中間層に添加することが好ましい)やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤などの添加剤を適宜添加することもできる。
【0037】
<フィルムの層構成>
本発明のフィルムの厚みは特に制限はないが、原料コスト等を可能な限り抑える観点からは薄い方が好ましい。具体的には、延伸後の厚さは通常100μm以下であり、90μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、70μm以下であることがさらに好ましく、60μm以下であることが最も好ましい。薄層タイプの場合、フィルムの厚みは40μm程度とすることが望ましい。
【0038】
本発明のフィルムにおいて、表裏層と中間層との厚み比は、前記各作用を損なわないように設定すればよいが、より効果的に発現するためには、上記ポリエステル系樹脂を主とする表裏層と上記ポリスチレン系樹脂を主とする中間層との積層比を1/1/1〜1/10/1、好ましくは1/2/1〜1/8/1、さらに好ましくは1/3/1〜1/6/1であることが望ましい。中間層の厚みを表裏層の厚みと同等以上とすることにより、従来のポリエステル系熱収縮積層フィルムと比較して、ボトル装着時の収縮仕上がり特性を良好とすることができる。一方、中間層の厚みを表裏層の10倍以下とすることにより、収縮仕上がり性は良好であり、かつ従来のポリスチレン熱収縮積層フィルムより自然収縮を小さくすることができ、かつ腰の強いフィルムを得ることができる。
【0039】
<熱収縮率>
本発明のフィルムは、70℃温水中で10秒間加熱したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率の下限値は5%、好ましくは7%、さらに好ましくは10%である。一方、フィルム主収縮方向の熱収縮率の上限値は25%、好ましくは23%、さらに好ましくは20%とすることが望ましい。なお、本明細書において主収縮方向とは、縦方向と横方向のうち延伸方向の大きい方を意味し、例えば、ボトルに装着する場合にはその外周方向に相当する方向である。
【0040】
フィルム主収縮方向の熱収縮率の下限値を5%とすることにより、蒸気シュリンカーでボトル装着を行う際に、局部的に発生し得る収縮ムラを抑え、結果的にシワ、アバタ等の形成を抑えることができる。また、熱収縮率の上限値を25%とすることにより、低温における極端な収縮を抑えることができ、例えば、夏場などの高温環境下においても自然収縮を小さく維持することができる。
【0041】
本発明のフィルムは、80℃温水中で10秒間加熱したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率は30%以上、好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上である。一方、同温度における熱収縮率の上限値は60%以下、好ましくは、55%以下、さらに好ましくは50%以下であることが望ましい。
【0042】
上記収縮率は、ペットボトルの収縮ラベル等、比較的短時間(数秒〜十数秒程度)で収縮加工する場合における適応性の判断指標とすることができる。例えば、ペットボトルの収縮ラベル用途に適用される熱収縮性フィルムに要求される必要な収縮率はその形状によって様々であるが一般に70〜80℃において20〜70%程度である。
【0043】
熱収縮性フィルムは、被覆対象物への熱影響を考慮すれば、できるだけ低い温度で十分熱収縮させることが必要である。工業生産性を考慮すれば、80℃の温水中10秒間加熱したときのフィルムの熱収縮率は30%以上、好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上であれば、蒸気シュリンカー(収縮加工機)を用いた場合に、所定の収縮加工時間内に被覆対象物に十分密着させることができる。一方、80℃温水中で10秒間加熱したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率の上限値を60%、好ましくは58%、さらに好ましくは55%とすることができれば、急激な熱収縮が起こり難いため、ボトル装着時に収縮ムラに起因するシワ、アバタなどの外観不良を生じ難くすることができる。
【0044】
本発明のフィルムが熱収縮性ラベルとして用いられる場合、縦方向(主収縮方向に対して垂直方向)の収縮率は、80℃温水中で10秒間加熱したときは10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。また70℃温水中で10秒間加熱したときの縦方向の収縮率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10%以下のフィルムであれば、収縮後の主収縮方向と直交する方向の寸法自体が短くなったり、収縮後の印刷柄や文字の歪み等が生じやすかったり、角型ボトルの場合においては縦ひけ等のトラブルが発生し難くすることができる。
【0045】
本発明のフィルムの自然収縮率はできるだけ小さいほうが望ましい。本発明のフィルムの自然収縮率は、30℃で30日保存後において3.0%以下、好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。上記条件下における自然収縮率が3.0%であれば、作製したフィルムを長期保存する場合であっても容器等に安定して装着することができ、実用上問題を生じ難い。
【0046】
本発明のフィルムの透明性は、JIS K7105に準拠して測定されたヘーズ値が10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。ヘーズ値が10%以下であれば、フィルムの透明性が得られ、ディスプレー効果を奏することができる。
【0047】
本発明のフィルムの耐破断性は、引張伸びにより評価され、0℃環境下の引張試験において、特にラベル用途ではフィルムの引き取り(流れ)方向(MD)で伸び率が100%以上、好ましくは200%以上、さらに好ましくは300%以上ある。
【0048】
本発明のフィルムの剛性は、フィルムの引き取り方向(MD)および直交方向(TD)の引張弾性率を測定し、両者の平均値で表され、フィルムの腰として評価される。フィルムの剛性は、1000MPa以上であることが好ましく、1200MPa以上であることがより好ましく、1400MPa以上であることがさらに好ましい。
【0049】
本発明のフィルムのシール強度は、後述する実施例で記載された測定方法(23℃50%RH環境下で、T型剥離法にてTD方向に試験速度200mm/分で剥離する方法)を用いて3N/15mm以上、好ましくは5N/15mm以上、より好ましくは7N/15mm以上である。本発明のフィルムは、シール強度が3N/15mm以上であるため、使用時にシール部分が剥がれてしまう等のトラブルが生じることもない。
【0050】
本発明のフィルムは、公知の方法によって製造することができる。フィルムの形態としては平面状、チューブ状の何れであってもよいが、生産性(原反フィルムの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という点から平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、複数の押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイから共押出し、チルドロールで冷却固化し、縦方向にロール延伸をし、横方向にテンター延伸をし、アニールし、冷却し、(印刷が施される場合にはその面にコロナ放電処理をして、)巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が例示できる。また、チューブラー法により製造したフィルムを切り開いて平面状とする方法も適用できる。
【0051】
延伸倍率はオーバーラップ用等、二方向に収縮させる用途では、縦方向が2〜10倍、横方向が2〜10倍、好ましくは縦方向が3〜6倍、横方向が3〜6倍程度である。一方、収縮ラベル用等、主として一方向に収縮させる用途では、主収縮方向に相当する方向が2〜10倍、好ましくは4〜8倍、それと直交する方向が1〜2倍(1倍とは延伸していな場合を指す)、好ましくは1.1〜1.5倍の、実質的には一軸延伸の範疇にある倍率比を選定するのことが望ましい。上記範囲内の延伸倍率で延伸した二軸延伸フィルムは、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が大きくなりすぎることはなく、例えば、収縮ラベルとして用いる場合、容器に装着するとき容器の高さ方向にもフィルムが熱収縮する、いわゆる縦引け現象を抑えることができるため好ましい。
【0052】
[成形品および容器]
本発明のフィルムは、フィルムの収縮仕上がり性、透明性、自然収縮等に優れているため、その用途が特に制限されるものではないが、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の様々な成形品として用いることができる。特に本発明のフィルムを食品容器(例えば清涼飲料水用または食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用ラベルとして用いる場合、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱など)であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗なラベルが装着された容器が得られる。
【実施例】
【0053】
以下に本発明について実施例を用いて説明する。なお、実施例に示す測定値および評価は次のように行った。ここでは、積層フィルムの引き取り(流れ)方向を「縦」方向、その直角方向を「横」方向と記載する。
【0054】
(1)層間強度
フィルムの横方向の両端より10mmの位置で、シクロヘキサン10質量%、n−ヘキサン90質量%からなる混合溶剤を用いて接着し、筒状ラベルを製造した。シール部分を円周と直角方向に5mm幅に切り取り、それを恒温槽付引張試験機((株)インテスコ製「201X」)を使用し、剥離試験を行った。
表裏層−中間層の層間で剥離が生じたものを×、層間ではなくフィルムの界面で剥離したものを○とした。
【0055】
(2)熱収縮率
フィルムを縦100mm、横100mmの大きさに切り取り、70℃および80℃の温水バスに10秒間それぞれ浸漬し、収縮量を測定した。熱収縮率は、縦方向および横方向について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
【0056】
(3)自然収縮率
フィルムから縦100mm、横1000mmの大きさに切り取り、30℃の雰囲気の恒温槽に30日間放置し、主収縮方向について、収縮前の原寸に対する収縮量を測定し、その比率を%値で表示した。
【0057】
(4)ヘーズ
JIS K7105に準拠してフィルム厚み50μmでフィルムのヘーズ値を測定した。
【0058】
(5)収縮仕上がり性
10mm間隔の格子目を印刷したフィルムをMD100mm×TD298mmの大きさに切り取り、TDの両端を10mm重ねて溶剤等で接着し、円筒状フィルムを作製した。この円筒状フィルムを、容量1.5Lの円筒型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を回転させずに、約4秒間で通過させた。各ゾーンでのトンネル内雰囲気温度は、蒸気量を蒸気バルブで調整し、70〜85℃の範囲とした。フィルム被覆後は下記基準で評価した。
○:収縮が十分でシワ、アバタ、格子目の歪みがなく密着性が良好
×:収縮は十分だがシワ、アバタ、格子目の歪みが生じる
【0059】
(実施例1)
上記表裏層となるポリエステル系樹脂(イーズトマンケミカル社製 イースター6763)(以下「PETGと略称する」)100質量部、およびエポキシ変性スチレン系エラストマー(ダイセル化学(株)製 エポフレンドAT501)(以下「変性TPEと略称する」)10質量部をブレンドした組成物、中間層となるSBS−I(スチレン/ブタジエン=90/10)50質量部、SBS−II(スチレン/ブタジエン=71/29)50質量部に対してPETG10質量部をブレンドしたポリマー組成物を、それぞれ同方向2軸押出機を用いて溶融混練し、組成物のペレットを得た。このペレットをそれぞれ別個の押出機に投入後、各層の厚みが表裏層/中間層/表裏層=1/6/1となるよう3層ダイスより共押出し、60℃キャストロールで引き取り、固化させて厚さ200μmの未延伸積層シートを得た。テンター延伸設備内にて温度90℃で一軸方向に5.5倍延伸し、膜厚50μmの熱収縮性フィルムを作製した。この熱収縮積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0060】
(実施例2)
実施例1で表面層に用いたPETGと変性TPEの質量比をPETG100質量部に対して変性TPE15質量部に変更し、中間層におけるSBS−II50質量部に対してPETG20質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法により膜厚50μmの熱収縮性フィルムを作製した。この熱収縮積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0061】
(実施例3)
実施例1で表面層に用いたPETGと変性TPEの質量比をPETG100質量部に対して変性TPE20質量部に変更し、中間層におけるSBS−II50質量部に対してPETG30質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法により膜厚50μmの熱収縮性フィルムを作製した。この熱収縮積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
上記表裏層をポリエステル系樹脂PETG100質量部、中間層をSBS−I50質量部とSBS−II50質量部をブレンドしたポリマー組成物に変更した以外は、実施例1と同様の方法で膜厚50μmの熱収縮性フィルムを作製した。この熱収縮積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0063】
(比較例2)
実施例1における表裏層の組成をPETG100質量部と変性TPE30質量部のブレンドに変更した以外、実施例1と同様の方法で膜厚50μmの熱収縮性フィルムを作製した。この熱収縮積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0064】
(比較例3)
実施例1における表裏層の組成をPETG100質量部と変性TPE20質量部のブレンドに変更し、中間層の組成をSBS−I50質量部とSBS−II50質量部に対してPETG20質量部をブレンドしたポリマーに変更した以外は、実施例1と同様の方法で膜厚50μmの熱収縮性フィルムを作製した。この熱収縮積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0065】
(比較例4)
実施例1における表裏層の組成をPETG100質量部と変性TPE20質量部のブレンドに変更し、中間層の組成をSBS−I50質量部とSBS−II50質量部とをブレンドしたポリマーに変更した以外、実施例1と同様の方法で膜厚50μmの熱収縮性フィルムを作製した。この熱収縮積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0066】
(比較例5)
実施例1における表裏層の組成をPETG100質量部のみに変更した以外、実施例1と同様の方法で膜厚50μmの熱収縮性フィルムを作製した。この熱収縮積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1より本発明で規定する範囲内の中間層および両外層を有する実施例1ないし3のフィルムは、層間接着、自然収縮率、ヘーズ値、収縮仕上がり性がいずれも比較例1ないし5よりも優れていた。これに対し、本発明に規定する範囲外の組成を有する比較例1ないし4のフィルムは、層間接着、自然収縮率、ヘーズおよび収縮仕上がり性のいずれかの特性が本発明のフィルムよりも劣っていた。
これより、本発明のフィルムは、収縮仕上がり性、透明性、自然収縮に優れ、かつフィルム内の層間剥離が抑制された熱収縮性積層フィルムであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のフィルムは、収縮仕上がり性、透明性、自然収縮に優れ、かつフィルム内の層間剥離が抑制された熱収縮性積層フィルムであるため、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の各種の成形品として利用できる。特に製造工程において中間層にリターン可能であるためコスト的にも非常に有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂と該ポリエステル系樹脂100質量部に対して反応性を有する変性スチレン系エラストマー1〜20質量部とを含有する表裏層と、ポリスチレン系樹脂と該ポリスチレン系樹脂100質量部に対してポリエステル系樹脂1〜30質量部とを含有する中間層とからなることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。
【請求項2】
70℃温水中で10秒間加熱したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が5〜25%であり、かつ80℃温水中で10秒間加熱したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が30〜60%である請求項1に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項3】
30℃で30日間保存した後のフィルム主収縮方向の自然収縮率が3.0%以下である請求項1または2に記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項4】
前記ポリエステル系樹脂が、ジカルボン酸成分およびジオール成分からなり、前記ジカルボン酸成分および前記ジオール成分の少なくとも一方が2種以上の成分で構成され、前記2種以上の成分のうち最多成分を除いた成分の合計の含有率が前記ジカルボン酸成分の総量(100モル%)と前記ジオール成分の総量(100モル%)との合計(200モル%)に対して10〜50モル%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項5】
前記反応性を有する変性スチレン系エラストマーが、無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、エポキシ変性SEBS、およびエポキシ変性SEPSからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項6】
前記ポリスチレン系樹脂が、スチレン−ブタジエンブロック共重合体であり、該ブロック共重合体を構成するブタジエンの含有率が5〜40モル%である請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項7】
前記表裏層と前記中間層との積層比が1/1/1〜1/10/1である請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱収縮性積層フィルムを用いて得られることを特徴とする成形品。
【請求項9】
前記成型品が食品容器用ラベルである請求項8に記載の成形品。
【請求項10】
請求項8または9に記載の成形品を装着した容器。

【公開番号】特開2006−35754(P2006−35754A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221841(P2004−221841)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】