説明

熱可塑性樹脂フィルムの製造方法

【課題】ダイラインの発生を極めて抑制することが可能な熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、マルチマニホールドダイ1を用いて、溶融された二種以上の熱可塑性樹脂をフィルム状に押し出すことにより、多層の熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法である。マルチマニホールドダイ1は、各マニホールド10とそれぞれ連通する各樹脂流路18と、一端が、樹脂流路18のうちマニホールド10とは離れた側の端部とそれぞれ連通し、他端が、溶融樹脂を外部に吐出する吐出口20と連通する合流流路22とを有する。隣り合う樹脂流路28の間に位置する壁部28の、合流部24に向かう先端部分30には、セラミックス膜32が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のマニホールドと、複数のマニホールドとそれぞれ連通する複数の樹脂流路と、一端が、複数の樹脂流路のうちマニホールドとは離れた側の端部とそれぞれ連通し、他端が、溶融樹脂が外部に吐出される吐出口と連通する合流流路とを有する、マルチマニホールド方式のダイス(いわゆる、マルチマニホールドダイ)が知られている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。マルチマニホールドダイでは、各マニホールドに導入された溶融樹脂を各マニホールドにてそれぞれフィルム状に成形した後、フィルム状とされた溶融樹脂を一つの吐出口から吐出することで多層のフィルムを製造するため、各マニホールドに導入される溶融樹脂の粘度が異なるような場合であっても、各層の厚み偏差が極めて小さく、また、フィルム自体の厚み偏差も極めて小さいフィルムを得ることができる。
【特許文献1】特開2004−291623号公報
【非特許文献1】村上健吉、「押出成形」、株式会社プラスチックス・エージ、1989年12月10日(第7版改訂)、pp.253−254
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、複数の樹脂流路のうち隣り合う樹脂流路の間に位置する壁部の、複数の樹脂流路と合流流路との合流部に向かう先端部分では、溶融樹脂の流れが滞留しやすいので、当該先端部分の壁面に溶融樹脂が付着してたまりやすいものとなっていた。当該先端部分の壁面に付着した溶融樹脂がそのまま固まってしまうと、その後マルチマニホールドダイの吐出口から押し出される多層のフィルムに線状痕(いわゆる、ダイライン)が形成されてしまい、形成されるフィルムの品質に影響を及ぼすという問題があった。特に、当該先端部分はマルチマニホールドダイの内部に存在しているため、いったん当該先端部分に溶融樹脂が付着して固まってしまうと、除去することが非常に困難であった。
【0004】
そこで、本発明は、複数のマニホールドを有するマルチマニホールド方式のダイスを用いて多層の熱可塑性樹脂フィルムを製造する場合において、ダイラインの発生を極めて抑制することが可能な熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、複数のマニホールドを有するマルチマニホールド方式のダイスを用いて、溶融された二種以上の熱可塑性樹脂をフィルム状に押し出すことにより、多層の熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法であって、ダイスは、複数のマニホールドとそれぞれ連通する複数の樹脂流路と、一端が、複数の樹脂流路のうちマニホールドとは離れた側の端部とそれぞれ連通し、他端が、溶融樹脂が外部に吐出される吐出口と連通する合流流路とを有し、複数の樹脂流路のうち隣り合う樹脂流路の間に位置する壁部の、複数の樹脂流路と合流流路との合流部に向かう先端部分には、セラミックス膜が設けられている。
【0006】
本発明に係る熱可塑性樹脂フィルムの製造方法では、マルチマニホールド方式のダイスを用いて多層の熱可塑性樹脂フィルムを製造しており、当該ダイスには、複数の樹脂流路のうち隣り合う樹脂流路の間に位置する壁部の、複数の樹脂流路と合流流路との合流部に向かう先端部分に、セラミックス膜が設けられている。セラミックス材料は溶融樹脂との摩擦が小さい材料であり、また、セラミックス材料は硬く、先端部分の曲率半径を小さくすることが可能であるので、このように溶融樹脂が最も付着しやすい当該先端部分にセラミックス膜が存在することにより、当該先端部分への溶融樹脂の付着を防止することができることとなる。その結果、ダイラインの発生を極めて抑制することが可能となる。
【0007】
好ましくは、セラミックス膜は、壁部の先端部分における曲率半径が0μmであると仮定した場合における先端部分の先端からの長さが5mm以上で且つ20mm以下である。壁部の先端部分における曲率半径が0μmであると仮定した場合における先端部分の先端からの長さが5mmよりも小さい場合には、セラミックス膜による溶融樹脂の付着防止効果が十分に発揮されない傾向にある。壁部の先端部分における曲率半径が0μmであると仮定した場合における先端部分の先端からの長さが20mmよりも大きい場合には、ダイスの製造コストが高くなってしまう傾向にある。
【0008】
好ましくは、壁部の先端部分における曲率半径が50μm以下である。壁部の先端部分における曲率半径が50μmよりも大きい場合には、当該先端部分においてフィルム状の溶融樹脂がさらに滞留しやすくなるので、当該先端部分の壁面に溶融樹脂がより付着してたまりやすくなる傾向にある。
【0009】
好ましくは、セラミックス膜は、溶射によって形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のマニホールドを有するマルチマニホールド方式のダイスを用いて多層の熱可塑性樹脂フィルムを製造する場合において、ダイラインの発生を極めて抑制することが可能な熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(マルチマニホールドダイの構成)
まず、図1及び図2を参照して、本発明に係る熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に用いられるマルチマニホールド方式のダイス(以下、マルチマニホールドダイという)1の構成について説明する。マルチマニホールドダイ1は、いわゆるTダイの一種であり、図1及び図2の紙面に対して垂直方向に延在している(そのため、図1及び図2の紙面に対して垂直方向を、マルチマニホールドダイ1の幅方向とも称する)。マルチマニホールドダイ1は、例えば、ステンレス鋼、ダイス鋼、S45C等の炭素鋼によって形成されている。
【0013】
マルチマニホールドダイ1は、図1に示されるように、マルチマニホールドダイ1の幅方向に延在するマニホールド10をその内部に複数(本実施形態において3つ)有している。各マニホールド10の上部からは、マルチマニホールドダイ1の上面12に向けて、断面円形状の樹脂流路14がそれぞれ延びており、各樹脂流路14は、それぞれ図示しない押出機と接続されている。樹脂流路14と押出機との接続の組み合わせとしては、3台の押出機がそれぞれ異なる樹脂流路14に接続されている場合や、1台の押出機と2つの樹脂流路14が接続され、他の1台の押出機と残りの樹脂流路14とが接続されている場合が挙げられる。
【0014】
つまり、マルチマニホールドダイ1では、3つの樹脂流路14と3つの押出機とがそれぞれ一対一に接続されている。そのため、各樹脂流路14には、押出機によって溶融混練された熱可塑性樹脂(溶融樹脂)が供給されることとなる。各樹脂流路14から各マニホールド10に流入した溶融樹脂は、各マニホールド10においてマルチマニホールドダイ1の幅方向に広げられて(広幅化されて)、フィルム状に成形される。
【0015】
ここで、本実施形態において熱可塑性樹脂フィルムを製造するために用いられる熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、環状オレフィン等のオレフィンの単独重合体又は2種類以上のオレフィンの共重合体、及び1種類以上のオレフィンとこのオレフィンと重合可能な1種類以上の重合性モノマーとの共重合体であるポリオレフィン樹脂、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのアクリル系樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体等のスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のフッ化ビニル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、12−ナイロン等のアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプリブチレンテレフタレート等の飽和エステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、セルロース誘導体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、各種熱可塑性エラストマー、あるいはこれらの架橋物や変性物などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、2種類以上の異なる熱可塑性樹脂のブレンドでもよいし、添加剤が適宜含有されていてもよい。
【0016】
なお、ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン・α−オレフィン共重合体)、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体共重合体等のポリプロピレン系樹脂、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・ビニルシクロヘキサン共重合体、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリ(ブテン−1)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0017】
各マニホールド10の下部からは、マルチマニホールドダイ1の幅方向に延在すると共にマルチマニホールドダイ1の下面16側に向かう樹脂流路18がそれぞれ延びている。各樹脂流路18の下端は、マルチマニホールドダイ1の幅方向に延在すると共にマルチマニホールドダイ1の下面16に向けて延びる合流流路22の上端と接続されている。合流流路22の下端は、マルチマニホールドダイ1の下面16にスリット状に形成された吐出口(リップ口)20と接続されている。つまり、合流流路22の一端は、各樹脂流路18のうち各マニホールド10とは離れた側の端部とそれぞれ連通しており、合流流路22の他端は、溶融樹脂を外部に吐出する吐出口20と連通している。なお、各樹脂流路18と合流流路22との接続部分は、溶融樹脂が合流する合流部24となっている。
【0018】
樹脂流路14,18及び合流流路22の内壁面には、その全面にセラミックス膜が設けられていることが好ましいが、コストの面から、少なくとも図1及び図2に示されるように、合流流路22の吐出口20近傍における内壁面にセラミックス膜26が設けられており、隣り合う樹脂流路18の間に位置する壁部28の、合流部24に向かう先端部分30に、セラミックス膜32が設けられていればよい。これらのセラミックス膜26,32としては、例えば、例えばWCやWCといった炭化タングステン等の金属炭化物、又は、窒化チタン(TiN)、窒化クロム等の金属窒化物を用いることができる。
【0019】
セラミックス膜32の表面の平均粗さRaは、0.2μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることが好ましい。ここで、平均粗さRaとは、JIS B 0601:1994によって定義される「算術平均粗さRa」と同様のものであり、具体的には、非接触式3次元表面形状・粗さ測定器を用いて測定される測定曲線をカットオフ値0.8mmで位相補償型高域フィルターを通して粗さ曲線を求め、この粗さ曲線からその平均線の方向に一定の基準長さを抜き取り、この抜き取り部分の平均線から粗さ曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均することにより求められる。平均粗さRaを小さくする方法としては、例えば、ダイヤモンド砥石を用いた圧力切込加工を用いて研磨する方法や、アイセル株式会社製のラッピングツール(型式:RT−50)を用いて研磨する方法が挙げられる。樹脂流路14,18の内壁面の一部にセラミックス膜を設ける場合には、セラミックス膜部分とその他の部分との継ぎ目の段差が出ないように、上記の方法で研磨することが好ましい。また、これらのセラミックス膜26,32は、セラミック溶射や蒸着等によって形成することができるが、セラミック溶射によって形成するとより好ましい。
【0020】
樹脂流路14、樹脂流路18及び合流流路22の内壁面全面にセラミックス膜が設けられていない場合、樹脂流路14、樹脂流路18及び合流流路22の内壁面のうちセラミックス膜が設けられていない部分には、メッキが施されていればよい。このメッキは特に限定されるものではなく、硬質クロム(ハードクロム)、銅、ニッケル、チタン、亜鉛、ダイアモンドニッケル等であればよいが、製造コストが低いことから硬質クロムがより好ましい。
【0021】
図2に示されるように、セラミックス膜26は、一端から他端までの、壁部34の壁面に沿った長さL1が5mm以上で且つ20mm以下であることが好ましい。また、セラミックス膜32は、Tダイ12の幅方向に対して垂直な断面において、先端部分32の先端32aから各樹脂流路18の上流側に向かう、壁部28の壁面に沿ったそれぞれの長さL2が共に5mm以上で且つ20mm以下であることが好ましい。これらの場合、下限よりも小さいと、セラミックス膜26,32による溶融樹脂の付着防止効果が十分に発揮されない傾向にある。また、これらの場合、上限よりも大きいと、マルチマニホールドダイ1の製造コストが高くなってしまう傾向にある。
【0022】
また、図2に示されるように、合流流路22を構成する壁部34の吐出口20における曲率半径R1が30μm〜50μmであることが好ましい。また、壁部28の先端部分32における曲率半径R2が50μm以下であることが好ましい。これらの場合、上限よりも大きいと、吐出口20又は先端部分32において溶融樹脂の流れが滞留しやすくなるので、合流流路22の吐出口20近傍における内壁面又は先端部分32の壁面(特に、セラミックス膜32によって構成されている先端部分32の壁面)に溶融樹脂がより付着してたまりやすくなる傾向にある。
【0023】
図1に戻って、マルチマニホールドダイ1には、吐出口20の幅を調整するための調整用ボルト36がマルチマニホールドダイ1の長手方向に沿って複数並設されている。これにより、吐出口20から吐出される多層のフィルムの厚みが幅方向において均一となるように調整することが可能となる。
【0024】
(熱可塑性樹脂フィルムの製造方法)
続いて、以上の構成を有するマルチマニホールドダイ1を用いて熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法について説明する。
【0025】
まず、例えば、図示しない3つの押出機に、それぞれ異なる種類の熱可塑性樹脂を投入する。各押出機にて熱可塑性樹脂が溶融混練されると、これらの溶融樹脂は、各樹脂流路14を通って各マニホールド10に到達し、各マニホールド10においてフィルム状に成形される。そして、各マニホールド10によってフィルム状に成形された溶融樹脂が各樹脂流路18を通って合流部24で合流すると、合流部24にてフィルム状の溶融樹脂がそれぞれ重ね合わされ、その後、合流流路22を通って吐出口20から多層のフィルムとして吐出されることとなる。こうして吐出口20から吐出された多層のフィルム状の溶融樹脂を図示しない冷却ロールによって冷却して固化させることで、多層の熱可塑性樹脂フィルムが得られることとなる。
【0026】
以上のような本実施形態においては、マルチマニホールドダイ1を用いて多層の熱可塑性樹脂フィルムを製造しており、マルチマニホールドダイ1には、壁部28の先端部分30に、セラミックス膜32が設けられている。セラミックス材料は溶融樹脂との摩擦が小さい材料であり、また、セラミックス材料は硬く、先端部分の曲率半径を小さくすることが可能であるので、このように溶融樹脂が最も付着しやすい先端部分30にセラミックス膜32が存在することにより、先端部分30への溶融樹脂の付着を防止することができることとなる。その結果、ダイラインの発生を極めて抑制することが可能となる。
【0027】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態ではマルチマニホールドダイ1が3つのマニホールド10を内部に有していたが、2つ以上のマニホールドを内部に有するマルチマニホールドダイであれば本発明を適用可能である。
【実施例】
【0028】
以下、実施例1及び比較例1に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
まず、上記の構成を有するマルチマニホールドダイ1を用意した。このとき使用したマルチマニホールドダイ1では、タングステンカーバイド(WC)をセラミック溶射することによりセラミックス膜26,32を形成した。また、壁部34の壁面に沿った長さL1を15mmに設定し、合流流路22を構成する壁部34の吐出口20における曲率半径R1を40μmに設定した。さらに、Tダイ12の幅方向に対して垂直な断面において、先端部分32の先端32aから各樹脂流路18の上流側に向かう、壁部28の壁面に沿ったそれぞれの長さL2を10mmに設定し、壁部28の先端部分32における曲率半径R2を40μmに設定した。
【0030】
そして、押出機A(φ65mm)に、エチレン−プロピレン系共重合体(Tm(融点)=134℃、MFR(メルトフローレート)=9g/10min)を投入し、押出機B(φ40mm)に、プロピレン−ブテン共重合体(Tm=なし(JIS K 7121に従う示差走査熱量測定において、−100℃〜300℃の範囲に結晶融解ピークを有しない樹脂)、MFR=3g/10min)を投入し、押出機C(φ32mm)に、エチレン−プロピレン系共重合体(Tm=134℃、MFR=9g/10min)を投入した。その後、全ての樹脂温度が230℃となり、層比が押出機A/押出機B/押出機C=10:10:10となるように押出機A〜Cを制御して、マルチマニホールドダイ1を用いて溶融樹脂を押出し、25℃に温度調節した冷却ロールにより冷却固化させることで、三層の熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0031】
(比較例1)
セラミックス膜26,32が存在せず、その代わりに当該部分が硬質クロムによりめっされ、曲率半径R1が100μmに設定され、曲率半径R2が80μmに設定されたマルチマニホールドダイを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1の熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0032】
(評価結果)
実施例1において得られた熱可塑性樹脂フィルムを観察したところ、ダイラインが確認されず、良好な品質であった。一方、比較例1において得られた熱可塑性樹脂フィルムを観察したところ、表面及び層と層の間に細かい縦筋が相当数確認された。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明に係る熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に用いられるマルチマニホールドダイを、当該マルチマニホールドダイの幅方向に対して垂直な断面において示す図である。
【図2】図2は、図1の合流部の近傍を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1…マルチマニホールドダイ、10…マニホールド、14,18…樹脂流路、20…吐出口(リップ口)、22…合流流路、24…合流部、26,32…セラミックス膜、28…壁部、30…壁部の先端部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマニホールドを有するマルチマニホールド方式のダイスを用いて、溶融された二種以上の熱可塑性樹脂をフィルム状に押し出すことにより、多層の熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法であって、
前記ダイスは、
前記複数のマニホールドとそれぞれ連通する複数の樹脂流路と、
一端が、前記複数の樹脂流路のうち前記マニホールドとは離れた側の端部とそれぞれ連通し、他端が、溶融樹脂を外部に吐出する吐出口と連通する合流流路とを有し、
前記複数の樹脂流路のうち隣り合う樹脂流路の間に位置する壁部の、前記複数の樹脂流路と前記合流流路との合流部に向かう先端部分には、セラミックス膜が設けられている熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記セラミックス膜は、前記ダイスの幅方向に対して垂直な断面において、前記先端部分の先端から前記複数の樹脂流路の上流側に向かう、前記壁部の壁面に沿ったそれぞれの長さが、共に5mm以上で且つ20mm以下である請求項1に記載された熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記壁部の前記先端部分における曲率半径が50μm以下である請求項1又は2に記載された熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記セラミックス膜は、溶射によって形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載された熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−73107(P2009−73107A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245674(P2007−245674)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】