説明

熱圧着ヘッドを用いた実装方法

【課題】短時間で、かつ、高い接続信頼性で電気部品を配線基板上に実装可能な熱圧着ヘッドを用いた実装方法を提供する。
【解決手段】加熱可能な金属製のヘッド本体5にエラストマーからなる弾性圧着部材7を有する熱圧着ヘッド3を用いて配線基板10上に電気部品20を実装する方法であって、配線基板10上の実装領域に接着剤を配置した後、電気部品20を実装領域に配置し、熱圧着ヘッド3を用いて電気部品20を配線基板10上に熱圧着する工程を有する。熱圧着の際、電気部品20の頂部領域21をヘッド本体5の金属部分によって押圧する一方、電気部品20の側部領域22近傍の接着剤30を弾性圧着部材7のテーパ部7aによって押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の電気部品を配線基板上に実装する技術に関し、特に接着剤を用いて電気部品を実装するための熱圧着ヘッドを用いた実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、抵抗器やコンデンサ等の受動部品を配線基板上に実装する場合には、リフロー炉において接続材料としてのはんだを溶融させて実装することが行われている。
【0003】
一方、ICチップ等の電気部品を配線基板上に実装する場合には、パッケージ化してはんだにより実装したり、ICチップを配線基板上に直接搭載してワイヤーボンディングやフリップチップによって実装することが行われている。
このような電気部品を導電性接着剤等を用いてフリップチップ実装する場合、通常は金属・セラミック等の硬質の圧着ヘッドを用いて熱圧着することが行われている。
【0004】
その一方、近年、シリコンラバー等の弾性を有する部材を圧着ヘッドに用いて熱圧着することも行われている。
このような弾性部材を圧着ヘッドとして用いた場合、高さの異なる複数の電気部品の圧着が可能になるとともに、ICチップの他に抵抗器・コンデンサ等の異なる種類の電子部品を同時に一括に圧着することができるというメリットがある(例えば特許文献1参照)。
【0005】
しかし、金属・セラミック等からなる圧着ヘッドを用いた場合には、熱圧着の際に電気部品の周囲の接着剤のフィレット部に対する加熱が不足してボイドが発生することから接続信頼性が低くなるおそれがあるという問題がある。
一方、上述した弾性体からなる圧着ヘッドを用いた場合には、熱圧着の際に圧着ヘッド側からの加熱が十分でないことから実装に長時間を要するという問題がある。
【特許文献1】特開2005−32952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、短時間で、かつ、高い接続信頼性で電気部品を配線基板上に実装可能な熱圧着ヘッドを用いた実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、加熱可能な金属製のヘッド本体にエラストマーからなる弾性圧着部材を有する熱圧着ヘッドを用いて配線基板上に電気部品を実装する方法であって、前記配線基板上の実装領域に接着剤を配置した後、前記電気部品を前記実装領域に配置し、前記熱圧着ヘッドを用いて前記電気部品を前記配線基板上に熱圧着する工程を有し、当該熱圧着の際、前記電気部品の頂部領域を前記ヘッド本体の金属部分によって押圧する一方、前記電気部品の側部領域近傍の接着剤を前記弾性圧着部材によって押圧するものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記弾性圧着部材の前記金属押圧部の周囲の部分がテーパ状に形成されており、当該テーパ部によって前記電気部品の側部領域近傍の接着剤を当該側部領域に向って押圧するものである。
【0008】
本発明の場合、熱圧着の際に、電気部品の頂部領域に対して金属押圧部を密着させて加圧加熱させる一方で、その側部領域近傍の接着剤のフィレット部に対してはエラストマーからなる弾性圧着部材によって加圧加熱させる。その結果、短時間で電気部品の熱圧着を行うとともに、電気部品の周囲の接着剤のフィレット部に対してもボイドの生じないように熱圧着を行うことができ、これにより接着剤を用いて高信頼性の電気部品の接続を行うことができる。
【0009】
本発明において、弾性圧着部材の金属押圧部の周囲の部分がテーパ状に形成された熱圧着ヘッドを用い、当該テーパ部によって電気部品の側部領域近傍の接着剤を当該側部領域に向って押圧するようにすれば、熱圧着の際に弾性圧着部材のテーパ部が電気部品の被押圧面の縁部に当接し、その案内動作によって電気部品が金属押圧部の押圧面に対し円滑に密着するとともに、弾性圧着部材のテーパ部の表面によって電気部品の周囲の接着剤のフィレット部を確実に加圧することができ、これによりボイドの発生を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、短時間で電気部品の熱圧着を行うとともに、電気部品の周囲の接着剤のフィレット部に対してもボイドの生じないように熱圧着を行うことができ、これにより接着剤を用いて高信頼性の電気部品の接続を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る熱圧着ヘッドを用いた実装方法の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1(a)は、本発明に用いる実装装置の例を示す概略部分断面図、図1(b)は、同実装装置における熱圧着ヘッドの押圧側の部分を示す図である。
また、図2(a)(b)は、同熱圧着ヘッドの押圧面と電気部品の頂部領域の寸法関係を示す説明図である。
【0013】
図1(a)(b)に示すように、本例の実装装置1は、配線パターン(図示せず)が形成された配線基板10を載置する基台2と、圧着対象であるICチップ等の電気部品20を加圧及び加熱する熱圧着ヘッド3を備えている。
【0014】
ここで、基台2は所定の金属からなり、その内部には、図示しない加熱用のヒーターが設けられている。そして、基台2上に載置された配線基板10上の所定の位置に接着剤30を介して電気部品20が配置されるようになっている。
【0015】
本発明の場合、接着剤30としては、絶縁性接着剤、異方導電性接着剤のいずれも使用することができる。
これらのうち、異方導電性接着剤は、接続信頼性を向上させる観点から、より好ましいものである。
なお、異方導電性接着剤としては、フィルム状、ペースト状のいずれも使用することができる。
【0016】
一方、熱圧着ヘッド3は、例えばステンレス等の金属材料からなるヘッド本体5を有しており、このヘッド本体5の内部には、加熱用のヒーター6が設けられている。
【0017】
ヘッド本体5は、例えば箱形枠状の金属部材からなり、基台2と対向する部分に凹部5aが設けられている。
そして、ヘッド本体5の凹部5aの電気部品20に対応する位置(例えば中央部分)には、後述する金属押圧部5bが例えば一体成形によりヘッド本体5と一体的に設けられている。
【0018】
さらに、ヘッド本体5の凹部5aには、例えばプレート状のエラストマー(シリコーンゴム等)からなる弾性圧着部材7が凹部5a内に密着するように装着されている。
また、弾性圧着部材7は、金属押圧部5bの周囲において金属押圧部5の押圧面50が凹んだ状態で露出するように装着されている。
この金属押圧部5bは、例えば四角柱状に形成され、その先端部には矩形平面状の押圧面50が形成されている。
【0019】
本発明の場合、金属押圧部5bの押圧面50の大きさは特に限定されることはないが、電気部品20の周囲の接着剤30のフィレット部に対してボイドの生じないように弾性圧着部材7によって確実に加圧加熱する観点からは、電気部品20の押圧される面の大きさより若干小さくなるように構成することが好ましい。
【0020】
例えば、本実施の形態の場合は、図2(a)(b)に示すように、金属押圧部5bの押圧面50の大きさ(外形)が、電気部品20の頂部領域21の大きさ(外形)より若干小さくなるように構成することが好ましい。
【0021】
一方、本発明の場合、特に限定されることはないが、電気部品20の周囲の接着剤30のフィレット部に対してボイドの生じないようにより確実に加圧する観点からは、例えば、図2(a)に示すように、金属押圧部5bの押圧面50と弾性圧着部材7の表面の高さの差Hが、電気部品20の厚さh以上となるように構成することが好ましい。
【0022】
さらに、本発明の場合、特に限定されることはないが、金属押圧部5bの押圧面50を電気部品20の頂部領域21に対して円滑に密着させ、かつ、周囲の接着剤30のフィレット部に対してボイドの生じないようにより確実に加圧する観点からは、弾性圧着部材7の金属押圧部5bの周囲の部分を開口部8の外方に向ってテーパ状に形成することが好ましい。
すなわち、弾性圧着部材7の開口壁面部分に所定の角度のテーパ部7aを形成し、弾性圧着部材7の押圧面50上の開口部8を電気部品20の頂部領域21の大きさより大きくすることが好ましい。
【0023】
なお、弾性圧着部材7に設けるテーパ部7aの角度は、金属押圧部5bの押圧面50と電気部品20の頂部領域21の大きさ、及び、金属押圧部5bの押圧面50に対する弾性圧着部材7の表面の高さHに応じて適宜設定することができる。
【0024】
図3(a)〜(c)は、本発明に係る実装方法の実施の形態を示す工程図、図4(a)(b)は、同実装方法の要部を示す概略図である。
図3(a)に示すように、まず、本実施の形態では、基台2上に載置された配線基板10の実装領域に接着剤30を配置し、さらにこの接着剤30上の所定の位置に電気部品20を配置する。
【0025】
ここで、ヘッド本体5内部のヒーター6を制御して金属押圧部5b及び弾性圧着部材7を所定の温度に加熱するとともに、基台2を所定の温度に加熱しておく。
そして、図示しない保護フィルムを電気部品20上に配置し、所定の条件で仮圧着(位置決め)を行った後、図3(b)に示すように、ヘッド本体5を下降させ、本圧着として、電気部品20に対して所定時間加熱加圧を行う。
【0026】
このヘッド本体5の下降の際、図4(a)に示すように、弾性圧着部材7のテーパ部7aが電気部品20の頂部領域21の縁部21aに当接し、その案内動作によって電気部品20が金属押圧部5bの押圧面50に対し円滑に密着する。
また、図4(b)に示すように、弾性圧着部材7のテーパ部7aの表面によって電気部品20の周囲の接着剤30のフィレット部30fが電気部品20の側部領域22側に向って押圧される。
そして、これにより、図3(c)に示すように、接着剤30のフィレット部30fが十分に押圧された状態で電気部品20が配線基板10上に実装される。
【0027】
以上述べた本実施の形態によれば、熱圧着の際に、電気部品20の頂部領域21に対して金属押圧部5bを密着させて加圧加熱させる一方で、その周囲の接着剤30のフィレット部30fに対してはエラストマーからなる弾性圧着部材7によって加圧加熱させることから、短時間で電気部品20の熱圧着を行うとともに、電気部品20の周囲の接着剤30のフィレット部30fに対してもボイドの生じないように熱圧着を行うことができ、これにより接着剤を用いて高信頼性の電気部品の接続を行うことができる。
【0028】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上述の実施の形態においては、ヘッド本体に金属押圧部を一つ設けて一つの電気部品に対して熱圧着を行うようにしたが、本発明はこれに限られず、ヘッド本体に金属押圧部を複数設け、複数の電気部品を同時に熱圧着することもできる。
【0029】
また、本発明に用いる熱圧着ヘッドの金属押圧部及び押圧面の配置、形状についても、熱圧着の対象となる電気部品に応じて適宜変更することができる。
さらに、本発明は、ICチップ、コンデンサ等の種々の電気部品に適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a):本発明に用いる実装装置の例を示す概略部分断面図(b):同実装装置における熱圧着ヘッドの押圧側の部分を示す図
【図2】(a)(b):同熱圧着ヘッドの押圧面と電気部品の頂部の寸法関係を示す説明図
【図3】(a)〜(c):本発明に係る実装方法の実施の形態を示す工程図
【図4】(a)(b):同実装方法の要部を示す概略図
【符号の説明】
【0031】
1…実装装置
2…基台
3…熱圧着ヘッド
5…ヘッド本体
5a…凹部
5b…金属押圧部
6…ヒーター
7…弾性圧着部材
7a…テーパ部
8…開口部
10…配線基板
20…電気部品
21…頂部領域(被押圧面)
30…接着剤
30f…フィレット部
50…押圧面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱可能な金属製のヘッド本体にエラストマーからなる弾性圧着部材を有する熱圧着ヘッドを用いて配線基板上に電気部品を実装する方法であって、
前記配線基板上の実装領域に接着剤を配置した後、前記電気部品を前記実装領域に配置し、前記熱圧着ヘッドを用いて前記電気部品を前記配線基板上に熱圧着する工程を有し、
当該熱圧着の際、前記電気部品の頂部領域を前記ヘッド本体の金属部分によって押圧する一方、前記電気部品の側部領域近傍の接着剤を前記弾性圧着部材によって押圧する実装方法。
【請求項2】
前記弾性圧着部材の前記金属押圧部の周囲の部分がテーパ状に形成されており、当該テーパ部によって前記電気部品の側部領域近傍の接着剤を当該側部領域に向って押圧する請求項1記載の熱圧着ヘッドを用いた実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−28039(P2008−28039A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197275(P2006−197275)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】