説明

熱発電型携帯機器

【課題】消費電力を低減でき、さらには電気的ノイズも少ない計時用水晶発振回路、さらに時計用水晶発振回路の温度補償法を行う熱発電型携帯機器を提供する事を目的とする。
【解決手段】水晶振動子109を有する水晶発振回路108と、熱源と温度差とに基づき発電する熱発電素子102と、熱発電素子から出力される発電電圧から制御電圧を生成し、制御電圧の値に基づいて水晶発振回路108の負荷容量値を電圧制御し、水晶発振回路108の発振周波数の温度特性を制御する制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腕時計等に搭載される計時用水晶発振器の温度補償を行う熱発電型携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力源として熱発電素子を用い、熱発電素子を裏蓋と本体内部の放熱リングとの間に設置し、人体の腕から体温が裏蓋を介して伝達される発熱側の温度と放熱側の温度との温度差によって発電電圧を得る熱発電腕時計が知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、腕時計等の計時機能を有する機器には、音叉型水晶振動子を用いた水晶発振回路が搭載されている。計時精度は、この水晶発振回路から出力される計時信号の温度特性に大きく左右されるので、近年において、計時用水晶発振器の温度補償技術が注目されている。
【0003】
図11は従来の計時用水晶発振器の温度補償を説明するブロック図である。図11において、水晶振動子1101、反転増幅器1102、ゲート容量1103及びドレイン容量1104にてコルピッツ型の水晶発振回路1105が構成されている。この水晶振動子1101は周波数32.768KHzの音叉型水晶振動子である。この水晶発振回路1105から出力された信号は周波数分周回路1106で分周され、周期一秒のパルス信号に変換される。ここで、水晶振動子1101の固有周波数は周囲の温度に対して変化する性質を持っており、水晶発振回路1105と通常の周波数分周回路の組み合わせのみでは、パルス信号の周期は正確に一秒とはならず、水晶振動子1101の固有周波数の周波数温度特性を反映して、温度に依存してしまい、高精度な計時ができないという問題がある。この問題を解決するために、温度センサ1108で計測された温度情報と、メモリ1109に前もって記録されている情報をもとにして、周波数分周回路1106は、分周比を温度変化に対して可変できる機能を有している。すなわち、周波数分周回路1106の分周比を温度に対して、デジタル的に変化させて、パルス信号1107の周期の温度安定性を向上させている。
【0004】
図12は図11で説明した従来の温度補償を用いたパルス信号の温度特性を説明する特性図である。横軸は温度、縦軸は変化率である。特性曲線1201は、図11の発振回路1105から出力される発振周波数の温度変化曲線であり、上に凸に放物線状をしている。この放物線状の温度特性が、音叉型水晶振動子の物性値で決定される固有の温度特性であって、後述する直列共振周波数Frの温度変化曲線である。こ特性曲線1201の頂点温度Tpは、通常20℃に設定されている。しかしこの頂点温度Tpは水晶振動子のカット角を変更する事によって自由に変化させる事が可能である。それに対して、特性曲線1202は図11で説明したパルス信号1107の周期の温度補償後の温度変化曲線であって、特性曲線1201の温度特性と比較して、その温度変化は抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3054933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術に係る計時用水晶発振器の温度補償、特に腕時計においては、温度センサ1108、メモリ1109及び分周回路1106を駆動するために、過大電力を必要とするために、バッテリ寿命が短くなってしまうという問題があった。さらに分周比変更時に発生する電気的ノイズも問題となっている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、消費電力を低減でき、さらには電気的ノイズも少ない計時用水晶発振回路、さらに時計用水晶発振回路の温度補償法を行う熱発電型携帯機器を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の熱発電型携帯機器の第1の特徴は、水晶振動子を有する水晶発振回路と、熱源と温度差とに基づき発電する熱発電素子と、前記熱発電素子から出力される発電電圧から制御電圧を生成し、前記制御電圧の値に基づいて前記水晶発振回路の負荷容量値を電圧制御し、前記水晶発振回路の発振周波数の温度特性を制御する制御部とを有する事を要旨とする。
かかる特徴によれば、前記温度センサおよび前記メモリを駆動させる事なく、前記水晶発振回路の発振周波数の温度特性を制御することが可能となり、消費電力の低減ができる。
【0009】
また本発明の燃料電池の第2の特徴は、第1の特徴の熱発電型携帯機器において、前記水晶振動子は、音叉型水晶振動子であり、前記音叉型水晶振動子の前記発振周波数の前記温度特性における頂点温度は、前記熱源の温度と略同一であり、前記制御電圧の温度依存性が、前記頂点温度を対称点とした上に凸のV字型であるV字型特性に設定されている事を要旨とする。
かかる特徴によれば、音叉型水晶振動子の有する頂点温度を対称点とした温度特性に起因する周波数変動を小さくすることができる。
【0010】
また本発明の燃料電池の第3の特徴は、第2の特徴の熱発電型携帯機器において、前記V字型特性に対して、正係数をもつ二次曲線成分を含ませた事を要旨とする。
かかる特徴によれば、音叉型水晶振動子の有する頂点温度を対称点とした温度特性の二次曲線成分をも制御可能となり、周波数変動をきわめて小さくすることができる。
【0011】
また本発明の燃料電池の第4の特徴は、第2または3のいずれかの特徴の熱発電型携帯機器において、前記制御部は、前記熱発電素子より出力された発電電圧を昇圧及び蓄電する機能を有すると共に、前記昇圧または前記蓄電された前記発電電圧を用いて、前記水晶発振回路を駆動させる事を要旨とする。
かかる特徴によれば、水晶発振回路の駆動に必要な電力をも、熱発電素子より出力された電圧で駆動できるので、さらに消費電力を低減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の如く、熱源側温度と放熱側温度との温度差に基づき発電する熱発電素子と、該発電部材から出力される発電電圧から、放物線状の周波数温度特性を持つ水晶振動子搭載の水晶発振回路の負荷容量値を電圧制御するための制御電圧を生成し、該制御電圧によって、この水晶発振回路の発振周波数の温度特性を改善する方法(温度補償法)を採用すれば、図12にて説明した従来の温度補償法に比較して、温度補償に必要な電力が熱発電素子から供給されるので、大幅な消費電力の削減が実現できるという極めて大きな効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る熱発電型計時機能付生体携帯機器の温度補償方法の第一の実施例を説明するブロック図。
【図2】本発明に係る熱発電型計時機能付生体携帯機器の温度補償方法の第二の実施例を説明するブロック図。
【図3】水晶振動子1101の等価回路図。
【図4】水晶発振回路の発振周波数F0の負荷容量依存性を示す特性曲線図。
【図5】可変容量ダイオードのV字型印加電圧特性を示す特性図。
【図6】本発明に係る可変容量ダイオードに印加される印加電圧VRの温度変化と該可変容量ダイオードで構成された負荷容量CLの温度変化を説明する第一の特性図。
【図7】本発明に係る発振周波数の温度特性を説明する第一の特性図。
【図8】本発明に係る可変容量ダイオードに印加される印加電圧VRの温度変化と可変容量ダイオードで構成された負荷容量CLの温度変化を説明する第二の特性図。
【図9】本発明に係る発振周波数の温度特性を説明する第二の特性図。
【図10】本発明に係る熱発電素子を用いたV字型印加電圧発生機構を説明するためのブロック図。
【図11】従来の計時用水晶発振器の温度補償を説明するブロック図。
【図12】従来の温度補償を用いたパルス信号の温度特性を説明する特性図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
図1、図11〜12に基づいて、本発明の実施の形態1における熱発電型携帯機器の実施例を説明する。
【0015】
まず、水晶発振回路における負荷容量と発振周波数の関係を以下で説明する。図11記載の水晶発振回路1105における負荷容量CLは、ゲート容量1103とドレイン容量1104でほぼ決定される。ゲート容量1103及びドレイン容量1104の値をそれぞれ、図11記載のように、Cg、Cdとすれば、水晶発振回路1105の負荷容量は両容量の直列合成容量として定義できる。すなわち水晶発振回路1105の負荷容量CL
【0016】
【数1】

【0017】
と書ける。
図3は、図11記載の水晶振動子1101の等価回路図であって、水晶振動子1101は、等価インダクタンス301、等価容量302、等価抵抗303及び並列容量304で等価構成されている。ここで、等価インダクタンス301、等価容量302、等価抵抗303及び並列容量304をそれぞれ、図3記載の如くLm、Cm、Rm及びC0とすると、水晶振動子1101の直列共振周波数Frは、
【0018】
【数2】

【0019】
となる。この直列共振周波数Fr、[数1]で与えられた負荷容量CL及び図3記載の等価素子を用いて、水晶発振回路1105にて励振される発振周波数F0は、
【0020】
【数3】

【0021】
となる。
図4は、図11と図12を基にして、水晶発振回路1105の発振周波数F0の負荷容量依存性を示す特性曲線図であって、横軸が負荷容量CL、縦軸が発振周波数F0の変化率ΔF0/Frである。この発振周波数F0の変化率ΔF0/Frは、[数3]を基にして
【0022】
【数4】

【0023】
と定義されおり、これを図示したのが図4記載の特性曲線401である。
【0024】
水晶発振回路1105の発振周波数F0の周波数温度特性は、[数3]から、水晶振動子1101の直列共振周波数Frの温度特性、等価容量Cm、並列容量C0及び負荷容量CLの温度特性で決定される事が判明する。実際には、等価容量Cm、並列容量C0の温度特性は極めて影響が小さく、発振周波数F0の周波数温度特性は、前述の直列共振周波数Frの温度特性と負荷容量CLの温度特性で決定される。それゆえ、直列共振周波数Frの温度変化に対する周波数変動を負荷容量CLの温度変化量で補償し、発振周波数F0の周波数温度特性を改善する事が可能である。
【0025】
図5は、可変容量ダイオードの印加電圧特性を示す特性図であって、横軸は印加電圧VR、縦軸は容量値Cvである。また、特性曲線501が、容量値の印加電圧を示す特性曲線である。この特性曲線501が示すように可変容量ダイオードの容量値Cvは印加電圧VRの増加に従って減少する特性を示す。それゆえ、負荷容量がゲート側およびドレイン側の容量素子のすべて、または一部を可変容量ダイオードとする構成の水晶発振回路において、温度変化を電圧変化に変換し、その電圧変化を負荷容量変化に変換することで発振周波数の温度特性の改善、すなわち温度補償が実現できる。
【0026】
以下で、音叉型水晶振動子を用いた水晶発振回路の温度補償を中心に説明する。図6は本発明に係る可変容量ダイオードに印加される印加電圧VRの温度変化と該可変容量ダイオードで構成された負荷容量CLの温度変化を説明する第一の特性図である。本図の横軸は温度であり、縦第一軸は印加電圧VR、縦第二軸は負荷容量値CLである。V字型印加電圧特性曲線601が印加電圧VRの温度変化を示す特性曲線であり、基準温度TSを対称中心とした上に凸のV字型の特性曲線となっている。この特性曲線601に連動して、可変容量ダイオードで構成された負荷容量の温度依存性を示す特性曲線が図6記載の負荷容量特性曲線602であって、基準温度TSを対称中心とした上に凸のV字型の特性曲線となっている。この負荷容量特性曲線602は[数3]を介在して、発振周波数F0の周波数温度特性を補償するように設定されている。この設定は、V字型印加電圧特性曲線601に対応させるべく使用する可変容量ダイオード及び組み合わせる容量素子の定格を選定する事で容易にできる事は言うまでなく、単なる設計的事項にすぎない。
【0027】
図7は、本発明に係る水晶発振回路の負荷容量に対して図6記載の負荷容量特性曲線602を採用した場合の発振周波数の温度特性を説明する第一の特性図であって、縦軸は周波数変化率、横軸は温度である。負荷容量CLの温度依存性がない場合の発振周波数の温度特性は本図記載の補償前温特曲線701であって、音叉型水晶振動子の直列共振周波数Frの温度変化曲線にほぼ等しい温度変化曲線である。この補償前温特曲線701の頂点温度を、カット角を調整し図6記載の基準温度TSと同じ温度に設定すると共に負荷容量に対して図6記載の負荷容量特性曲線602を採用した場合の発振周波数の温度特性が、本図記載の補償後温特曲線702である。この補償後温特曲線702をみればわかるとおり、負荷容量CLに温度特性を持たせる事によって、温度に対して安定な周波数温度特性が得られる事が判明する。
【0028】
図8は本発明に係る可変容量ダイオードに印加される印加電圧VRの温度変化と該可変容量ダイオードで構成された負荷容量CLの温度変化を説明する第二の特性図である。本図の横軸は温度であり、縦第一軸は印加電圧VR、縦第二軸は負荷容量値CLである。V字型印加電圧特性曲線801が印加電圧VRの温度変化を示す特性曲線であり、図6記載のV字型印加電圧特性曲線601と同様に基準温度TSを対称中心とした上に凸のV字型の特性曲線となっている。ただし、このV字型印加電圧特性曲線801は、図6記載のV字型印加電圧特性曲線601に比較して、下に凸の二次曲線成分を含んでいる点が相違している。このV字型印加電圧特性曲線801に連動して、可変容量ダイオードで構成された負荷容量の温度依存性を示す特性曲線が図8記載の負荷容量特性曲線802であって、基準温度TSを対称中心とした上に凸のV字型の特性曲線となっている。この負荷容量特性曲線802は、図6記載の負荷容量特性曲線602と比較して上に凸の二次曲線成分は小さくなっている。この負荷容量特性曲線802と図6記載の負荷容量特性曲線602の二次曲線成分に違いは、V字型印加電圧特性曲線801が下に凸の二次曲線成分をもっている事に起因している。この負荷容量特性曲線802は[数3]を介在して、発振周波数F0の周波数温度特性を補償するように設定されている。この設定は、V字型印加電圧特性曲線801に対応させるべく使用する可変容量ダイオード及び組み合わせる容量素子の定格を選定する事で容易にできる事は言うまでなく、単なる設計的事項にすぎない。
【0029】
図9は、本発明に係る水晶発振回路の負荷容量に対して図8記載の負荷容量特性曲線802を採用した場合の発振周波数の温度特性を説明する第二の特性図であって、縦軸は周波数変化率、横軸は温度である。負荷容量CLの温度依存性がない場合の発振周波数の温度特性は、本図記載の補償前温特曲線901であって、音叉型水晶振動子の直列共振周波数Frの温度変化曲線にほぼ等しい温度変化曲線である。この補償前温特曲線901の頂点温度を、カット角を調整して図8記載の基準温度TSと同じ温度に設定すると共に負荷容量に対して図8記載の負荷容量特性曲線802を採用した場合の発振周波数の温度特性が、本図記載の補償後温特曲線902である。この補償後温特曲線902をみればわかるとおり、負荷容量特性曲線801を採用することで、図7記載の補償後温特曲線702に比較して二次曲線成分も小さくなっており、さらに温度に対して安定な周波数温度特性が得られる事が判明する。この理由は、V字型印加電圧特性曲線801が下に凸の二次曲線成分をもっている事に起因している。
【0030】
以上が、本発明に係る負荷容量変化を用いた温度補償の説明である。次に本発明に係る負荷容量を制御するためのV字型印加電圧の発生機構について説明する。図10は本発明に係る熱発電素子を用いたV字型印加電圧発生機構を説明するブロック図である。本発明に係る熱発電素子1001は一面を温度T0で一定の発熱部1002に接触し、他の面は外界への放熱部1003に連結されている。この発熱部1002と放熱部1003の温度差ΔTに比例して、熱発電素子1001から発電電圧ΔVが出力される。
ここで、温度差ΔTを
【0031】
【数5】

【0032】
とすると、発電電圧ΔVは比例定数をkとして
【0033】
【数6】

【0034】
となるので、放熱部1003の温度が発熱部1002の温度T0より低い場合は負電圧、温度T0より高い場合は正電圧となる。それゆえ、この発電電圧ΔVをモニタする事で温度T0を基準温度とする温度差を感知する温度差センサとしての機能もある。
【0035】
この発電電圧ΔVは、スィッチング回路1004及び昇圧回路1005と蓄電回路1006に入力される。この蓄電回路1006から供給される電力で昇圧/制御回路1007とスィッチング回路1004を駆動させている。この昇圧/制御回路1007は発電電圧ΔVをモニタし、放熱部1003の温度Tが、発熱部1002の温度T0以下になり、負電圧となるとスィッチング回路1004を起動させ発電電圧の符号を反転させる。この一連の電圧制御は昇圧/制御回路1007に内蔵されているV字型電圧制御回路1008で行われ、このV字型電圧制御回路1008とスィッチング回路1004にて、温度T0を対称中心としたV字型電圧信号が生成される。このV字型電圧信号は昇圧/制御回路1007に内蔵されている増幅回路1009で所望の電圧に増幅されて図6並びに図8記載のV字型印加電圧として出力され、水晶発振回路の負荷容量構成部1010に入力される。この一連の動作は、すべて熱発電素子1001より供給される電圧で行われるので、なんら他の電力供給源は必要としない。
【0036】
以上の説明から、図6及び図8記載のV字型印加電圧特性曲線の対称中心の基準温度TS、及び音叉型水晶振動子の直列共振周波数の周波数温度特性における頂点温度を、発熱部1002の温度T0と等しく設定し、さらに所望のV字型印加電圧特性曲線になるべく増幅回路1009の増幅率を設定すれば、水晶発振回路の発振周波数の温度補償が実現できる事になる。なお本発明に係る温度補償方法は、音叉型水晶振動子に限定されるものでなく、その放物線状の周波数温度特性を持つ水晶振動子ならば、すべてにおいて適応できる温度補償方法である。また、図10記載の温度一定の発熱部1002は、体温が一定な生体表面等を想定しているが、かならずしも生体にこだわるものでなく、あくまでも温度が一定な場所及び環境ならば有効である事をここに明記する。
【0037】
以下、本発明の実施形態に係る熱発電型携帯機器の温度補償方法について説明する。図1は本発明に係る熱発電型携帯機器の温度補償方法の第一の実施例を説明するブロック図である。本図は図10で説明したV字型電圧発生部101と水晶発振回路108より構成されており、V字型電圧発生部101は、図10の説明と同じく、熱発電素子102、スィッチング回路103、昇圧回路104、蓄電回路105、V字型電圧制御回路106及び増幅回路107で構成されている。このV字型電圧発生部101におけるV字型電圧発生及び制御に関しては、図10の説明で述べたのでここでは省略する。水晶発振回路108は、水晶振動子109、ゲート容量110、ドレイン容量111、反転増幅器112及びバッファ113で構成されている。水晶振動子109は音叉型水晶振動子に代表される放物線状の周波数温度特性を持つ水晶振動子であり、その放物線の頂点温度は前述したように図10記載の発熱部1002の温度と略同一温度に設定されている。特に腕時計等に代表される生体装着型の計時装置においては、この頂点温度はほぼ生体の体温と等しく設定される。この水晶発振回路108の負荷容量を構成している部分が図記載の負荷容量構成部114である。本図における負荷容量構成部114は、単純にゲート容量110とドレイン容量111をそれぞれ、一個の可変容量ダイオードに置き換えた構成をとっている。この時、ゲート容量110の容量値をCvg、ドレイン容量の容量値をCvdとすれば、この負荷容量構成部114で決定される本発明に係る電圧可変型負荷容量CvLは、
【0038】
【数7】

【0039】
となる。
図1記載のV字型電圧発生部101で生成されたV字型電圧は、水晶発振回路108の負荷容量構成部114のゲート容量110とドレイン容量111の双方に印加される。その結果、水晶発振回路108にて励振される発振周波数は温度補償され、温度変化に対して安定な周波数温度特性を持つ。この温度補償された発振周波数が、本図記載の分周回路115に入力され、この分周回路115にて周期一秒のパルス信号に変換される。
【0040】
図6記載の直線的なV字型印加電圧特性曲線601を生成する場合、本図記載のV字型電圧発生部101の増幅回路107は線形増幅回路となる。それに対して、図8記載の下に凸の二次曲線成分を含んだV字型印加電圧特性曲線801を生成する場合、本図記載のV字型電圧発生部101の増幅回路107は非線形増幅回路となる。
【0041】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における熱発電型計時機能付生体携帯機器の実施例を説明する。 図2は本発明に係る熱発電型携帯機器の温度補償方法の第2の実施例を説明するブロック図である。本図は実施の形態1の図1と同様にV字型電圧発生部201と水晶発振回路208より構成されており、V字型電圧発生部201は、図1の説明と同じく、熱発電素子202、スィッチング回路203、昇圧回路204、蓄電回路205、V字型電圧制御回路206及び増幅回路207で構成されている。このV字型電圧発生部201におけるV字型電圧発生及び制御に関しては、図10の説明で述べたのでここでは省略する。水晶発振回路208は、水晶振動子209、ゲート容量210、ドレイン容量211、反転増幅器212及びバッファ213で構成されている。水晶振動子209は音叉が型水晶振動子に代表される放物線状の周波数温度特性を持つ水晶振動子であり、その放物線の頂点温度は前述したように図10記載の発熱部1002の温度と略同一温度に設定されている。特に腕時計等に代表される生体装着型の計時装置においては、この頂点温度はほぼ生体の体温と等しく設定される。この水晶発振回路208の負荷容量を構成している部分が図記載の負荷容量構成部214である。図2における負荷容量構成部214は、単純にゲート容量210とドレイン容量211をそれぞれ、一個の可変容量ダイオードに置き換えた構成をとっている。この時、ゲート容量110の容量値をCvg、ドレイン容量の容量値をCvdとすれば、この負荷容量構成部114で決定される本発明に係る電圧可変型負荷容量CvLは、図1と同じく[数7]で与えられる。
【0042】
このV字型電圧発生部201で生成されたV字型電圧は、水晶発振回路208の負荷容量構成部214のゲート容量210とドレイン容量211の双方に印加される。その結果、水晶発振回路208にて励振される発振周波数は温度補償され、温度変化に対して安定な周波数温度特性を持つ。この温度補償された発振周波数が、本図記載の分周回路215に入力され、この分周回路215で周期一秒のパルス信号に変換され、他の構成素子216を駆動させる。
【0043】
図6記載の直線的なV字型印加電圧特性曲線601を生成する場合、本図記載のV字型電圧発生部201の増幅回路207は線形増幅回路となる。それに対して、図8記載の下に凸の二次曲線成分を含んだV字型印加電圧特性曲線801を生成する場合、本図記載のV字型電圧発生部201の増幅回路207は非線形増幅回路となる。
【0044】
この図2で説明する熱発電型携帯機器の温度補償方法の第二の実施例は、V字型電圧発生部201の蓄電回路205で蓄積された電力は、V字型電圧発生回路201を駆動させるだけでなく、水晶発振回路208及び分周回路215さらには他の構成素子216をも駆動させるという特徴を持っている。
【0045】
以上、本発明に係る熱発電型携帯機器の温度補償方法における負荷容量構成部の可変容量ダイオードの電気的配線及びV字型印加電圧の印加方法は、必ずしも、図1及び図2記載の構成に限定されることはなく、製品の仕様などで便宜設計変更できることゆうまでもない。さらに、V字型電圧発生部の熱発電素子は、必ずしも、図1及び図2記載の如く、一個の熱発電素子の配置構成に限定されることはなく、二個の熱発電素子を互いに極性を変えて配置する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
101 V字型電圧発生部
102 熱発電素子
103 スィッチング回路
104 昇圧回路
105 蓄電回路
106 V字型電圧制御回路
107 増幅回路
108 水晶発振回路
109 水晶振動子
111 ゲート容量
112 ドレイン容量
113 バッファ
114 負荷容量構成部
115 分周回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子を有する水晶発振回路と、
熱源と温度差とに基づき発電する熱発電素子と、
前記熱発電素子から出力される発電電圧から制御電圧を生成し、前記制御電圧の値に基づいて前記水晶発振回路の負荷容量値を電圧制御し、前記水晶発振回路の発振周波数の温度特性を制御する制御部とを有する事を特徴とする熱発電型携帯機器。
【請求項2】
前記水晶振動子は、音叉型水晶振動子であり、
前記音叉型水晶振動子の前記発振周波数の前記温度特性における頂点温度は、前記熱源の温度と略同一であり、
前記制御電圧の温度依存性が、前記頂点温度を対称点とした上に凸のV字型であるV字型特性に設定されている事を特徴とした請求項1に記載の熱発電型携帯機器。
【請求項3】
前記V字型特性に対して、正係数をもつ二次曲線成分を含ませた事を特徴とする請求項2に記載の熱発電型携帯機器。
【請求項4】
前記制御部は、前記熱発電素子より出力された発電電圧を昇圧及び蓄電する機能を有すると共に、前記昇圧または前記蓄電された前記発電電圧を用いて、前記水晶発振回路を駆動させる事を特徴とした請求項2または請求項3に記載の熱発電型携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−106081(P2013−106081A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246670(P2011−246670)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】